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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G10K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G10K |
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管理番号 | 1333145 |
審判番号 | 不服2016-8716 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-13 |
確定日 | 2017-10-24 |
事件の表示 | 特願2014-180772「コンデンサで電子ホーンの駆動信号周波数を調整する方法及び回路」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月26日出願公開、特開2015- 38615、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2006年2月13日を国際出願日とする特願2008-554574号の一部を平成26年9月5日に新たな出願としたものであって、手続きの概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成27年 6月17日(起案日) 意見書 :平成27年10月19日 手続補正 :平成27年10月19日 拒絶査定 :平成28年 2月 9日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成28年 6月13日 手続補正 :平成28年 6月13日 理由補充 :平成28年 7月22日 拒絶理由通知(当審) :平成29年 3月21日(起案日) 意見書 :平成29年 6月29日 手続補正 :平成29年 6月29日 第2 本願発明 本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成29年6月29日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「 【請求項1】 発振周波数を有する信号を生成する発振回路と、前記発振周波数を有する前記信号に対して周波数分割を行って分周された信号を生成する分周回路とを含み、前記分周された信号に基づいて駆動信号を生成して電子ホーンを駆動して音響を発生する、共振周波数を有する車両用の電子ホーン用駆動回路であって、 前記発振回路は可変コンデンサを含み、該可変コンデンサの容量値を調整して前記発振周波数を連続的に変更することによって、前記駆動信号の周波数を前記電子ホーンの前記共振周波数と一致させることを特徴とする電子ホーン用駆動回路。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 請求項1ないし20に対して引用文献1ないし3 引用文献1:特表2001-512254号公報 引用文献2:特開昭63-67917号公報 引用文献3:特開平10-224146号公報 2.原査定の理由についての判断 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(平成13年8月21日公開)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。) ア.「【請求項5】 電気警音器用の定周波数音響発生を制御するための装置であって、 一定の周波数を有する基準パルス信号を生成するための基準信号生成ユニットと、 前記基準信号生成ユニットによって生成された前記基準信号の周波数を、前記警音器動作周波数範囲内の特定の周波数に近接した所定の値に予め分周するための前分周ユニットと、 所定の警音器周波数パラメータに従って、前記前分周ユニットにおいて生成されたパルス信号の周波数を補正し、出力パルス信号の周波数を前記特定の周波数に一致させるための周波数補正ユニットと、 所定のデューティサイクルパラメータに従って、前記警音器が最適な発音特性を獲得するように、前記周波数が補正されたパルス信号のデューティサイクルを調整するためのデューティサイクル調整ユニットと、 前記デューティサイクル補正ユニットから出力される信号をバッファおよび増幅し、前記バッファおよび増幅されたパルス信号を前記電気警音器に送信し、前記警音器を駆動して作動させるためのバッファおよび増幅ユニットとを有する装置。」 イ.「【請求項6】 前記特定の周波数が、前記電気警音器の機械的共振周波数であり、前記デューティサイクルパラメータは、前記電気警音器が最適な発音特性を獲得するための最適なパルスデューティサイクルであることを特徴とする請求項5に記載の装置。」 ウ.「【発明の詳細な説明】 本発明は、自動車の電気警音器に関し、特に、電気警音器用の定周波数音響発生の制御方法および装置に関する。本発明はまた、一定の周波数および連続した調整可能なデューティサイクルを有する信号源を生成する方法に関する。」 エ.「【0001】 今日、自動車の電気警音器の基本的な音響発生原理は、警音器が電磁石を用いて振動板を駆動し、次に振動板が空気を押して音を発生するものである。このような種類の警音器における電磁石の引力は接触子によって制御される。警音器が作動すると、接触子は非常に高い周波数(一般に300から600Hz)で動作しているため、大きな電流のオン-オフによって大きなスパークが発生し得る。電気スパークによって接触子が腐食すると、警音器の寿命は短くなり、同時に、警音器が生産ラインから離れるときに設定される標準周波数および音響レベルから連続して逸脱する。これにより、音の変動、音の低下およびノイズの増加など、いくらかの欠点がもたらされる。さらに、発音周波数を警音器の固有の機械的共振点(周波数)と一致させ、最大の発音効率および最大のエネルギー節約を成し遂げることが非常に困難である。近年、電子技術の発達と共に、様々な種類の電子装置が接触子に代わるものとして発明されている。このような電子装置では、電磁石が振動板を駆動するためのパルス電流(信号)を生成するために、接触子の代わりに電気回路が用いられる。しかし、パルス電流は、各警音器の固有の機械的共振点に従って個別に調整されるため、すべての電子装置は、様々な種類の多重調波発振器、時間ベース回路、パルス幅調整および制御回路などの、抵抗器およびコンデンサによって周波数が調整された回路で構成される。この種の回路は、半導体装置、抵抗器、ならびにコンデンサの温度および電圧特徴に影響され、出力周波数は周囲温度および自動車の電圧の影響を受けるため、出力周波数を警音器の固有の機械的共振周波数と一致した周波数で安定して保持することができない。従って、上記の警音器は接触子を有する警音器よりも寿命が長いが、いくらかの欠点も有する。例えば、周囲温度および自動車電圧の変動により、回路の駆動周波数が変化する。これによって、最終的に警音器の発音周波数が変化し、出力音響レベルもかなり減少する。従って、上記の警音器はこれまで広範囲には用いられていなかった。」 上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。 a.引用文献1には、「自動車の電気警音器用の定周波数音響発生の制御装置」が記載されている(摘示事項ウ.)。 b.電気警音器用の定周波数音響発生を制御するための装置は、一定の周波数を有する基準パルス信号を生成するための基準信号生成ユニットと、前記基準信号生成ユニットによって生成された前記基準信号の周波数を、前記警音器動作周波数範囲内の特定の周波数に近接した所定の値に予め分周するための前分周ユニットと、所定の警音器周波数パラメータに従って、前記前分周ユニットにおいて生成されたパルス信号の周波数を補正し、出力パルス信号の周波数を前記特定の周波数に一致させるための周波数補正ユニットと、所定のデューティサイクルパラメータに従って、前記警音器が最適な発音特性を獲得するように、前記周波数が補正されたパルス信号のデューティサイクルを調整するためのデューティサイクル調整ユニットと、前記デューティサイクル補正ユニットから出力される信号をバッファおよび増幅し、前記バッファおよび増幅されたパルス信号を前記電気警音器に送信し、前記警音器を駆動して作動させるためのバッファおよび増幅ユニットとを有する(摘示事項ア.)。 c.前記特定の周波数が、前記電気警音器の機械的共振周波数である(摘示事項イ.)。 以上を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「自動車の電気警音器用の定周波数音響発生を制御するための装置であって、 一定の周波数を有する基準パルス信号を生成するための基準信号生成ユニットと、 前記基準信号生成ユニットによって生成された前記基準信号の周波数を、前記警音器動作周波数範囲内の特定の周波数に近接した所定の値に予め分周するための前分周ユニットと、 所定の警音器周波数パラメータに従って、前記前分周ユニットにおいて生成されたパルス信号の周波数を補正し、出力パルス信号の周波数を前記特定の周波数に一致させるための周波数補正ユニットと、 所定のデューティサイクルパラメータに従って、前記警音器が最適な発音特性を獲得するように、前記周波数が補正されたパルス信号のデューティサイクルを調整するためのデューティサイクル調整ユニットと、 前記デューティサイクル補正ユニットから出力される信号をバッファおよび増幅し、前記バッファおよび増幅されたパルス信号を前記電気警音器に送信し、前記警音器を駆動して作動させるためのバッファおよび増幅ユニットとを有し、 前記特定の周波数が、前記電気警音器の機械的共振周波数である装置。」 (2)対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 ア.発振回路 引用発明は、一定の周波数を有する基準パルス信号を生成するための基準信号生成ユニットを有するから、本願発明と引用発明とは、「発振周波数を有する信号を生成する発振回路」を含む点で一致する。 イ.分周回路 引用発明は、基準信号生成ユニットによって生成された基準信号の周波数を、警音器動作周波数範囲内の特定の周波数に近接した所定の値に予め分周するための前分周ユニットを有するから、本願発明と引用発明とは、「前記発振周波数を有する前記信号に対して周波数分割を行って分周された信号を生成する分周回路」を含む点で一致する。 ウ.音響の発生 引用発明は、前分周ユニットにおいて生成されたパルス信号の周波数を補正するための周波数補正ユニットと、周波数が補正されたパルス信号のデューティサイクルを調整するためのデューティサイクル調整ユニットと、デューティサイクル補正ユニットから出力される信号をバッファおよび増幅し、バッファおよび増幅されたパルス信号を電気警音器に送信し、警音器を駆動して作動させるためのバッファおよび増幅ユニットとを有するから、引用発明の「バッファおよび増幅されたパルス信号」は、「分周された信号に基づいて生成した駆動信号」といえる。 したがって、本願発明と引用発明とは、「前記分周された信号に基づいて駆動信号を生成して電子ホーンを駆動して音響を発生する」点で一致する。 エ.電子ホーン用駆動回路 引用発明は、自動車の電気警音器用の定周波数音響発生を制御するための装置であって、電気警音器を駆動して作動させるための構成を有し、電気警音器は機械的共振周波数を有するから、本願発明と引用発明とは、「共振周波数を有する車両用の電子ホーン用駆動回路」である点で一致する。 オ.駆動信号の周波数を電子ホーンの共振周波数と一致させるための構成 引用発明は、前分周ユニットにおいて生成されたパルス信号の周波数を補正し、出力パルス信号の周波数を特定の周波数に一致させるための周波数補正ユニットを有し、特定の周波数が、電気警音器の機械的共振周波数であるから、本願発明と引用発明とは、「前記駆動信号の周波数を前記電子ホーンの前記共振周波数と一致させる」点で一致する。 もっとも、「前記駆動信号の周波数を前記電子ホーンの前記共振周波数と一致させる」ための構成について、本願発明は、「前記発振回路は可変コンデンサを含み、該可変コンデンサの容量値を調整して前記発振周波数を連続的に変更することによって、」駆動信号の周波数を電子ホーンの共振周波数と一致させるのに対し、引用発明は、「所定の警音器周波数パラメータに従って、前記前分周ユニットにおいて生成されたパルス信号の周波数を補正」する「周波数補正ユニット」によって、出力パルス信号の周波数を電気警音器の機械的共振周波数に一致させる点で相違する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 <一致点> 「発振周波数を有する信号を生成する発振回路と、前記発振周波数を有する前記信号に対して周波数分割を行って分周された信号を生成する分周回路とを含み、前記分周された信号に基づいて駆動信号を生成して電子ホーンを駆動して音響を発生する、共振周波数を有する車両用の電子ホーン用駆動回路であって、 前記駆動信号の周波数を前記電子ホーンの前記共振周波数と一致させる電子ホーン用駆動回路。」の点。 そして、次の点で相違する。 <相違点> 「前記駆動信号の周波数を前記電子ホーンの前記共振周波数と一致させる」ための構成について、本願発明は、「前記発振回路は可変コンデンサを含み、該可変コンデンサの容量値を調整して前記発振周波数を連続的に変更することによって、」駆動信号の周波数を電子ホーンの共振周波数と一致させるのに対し、引用発明は、「所定の警音器周波数パラメータに従って、前記前分周ユニットにおいて生成されたパルス信号の周波数を補正」する「周波数補正ユニット」によって、出力パルス信号の周波数を電気警音器の機械的共振周波数に一致させる点。 (3)判断 そこで、上記相違点について検討する。 引用発明は、抵抗器およびコンデンサによって周波数が調整された回路は、抵抗器、ならびにコンデンサの温度および電圧特徴に影響され、出力周波数は周囲温度および自動車の電圧の影響を受けるため、出力周波数を警音器の固有の機械的共振周波数と一致した周波数で安定して保持することができない(摘示事項エ.)ことを踏まえて、「一定の周波数を有する基準パルス信号を生成するための基準信号生成ユニット」を採用したものであるから、引用発明において、かかる事情を無視してまで、「一定の周波数を有する基準パルス信号を生成するための基準信号生成ユニット」に代えて、コンデンサによって周波数が調整される発振回路を採用する動機付けがなく、該置き換えを当業者が容易に想到し得るとはいえない。 引用文献2は、抵抗又はコンデンサの値を調整する手段を有することにより、発振周波数のバラツキを少なくさせることが周知であることを示し、引用文献3は、RC発振回路において、コンデンサを可変容量コンデンサとし、可変容量コンデンサの容量を調整して期待する発振周波数に合わせ込むことが周知であることを示すに過ぎず、いずれも、上記の事情を無視してまで、「一定の周波数を有する基準パルス信号を生成するための基準信号生成ユニット」に代えて、コンデンサによって周波数が調整される発振回路を採用することを示唆するものではない。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 請求項2ないし16に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 請求項17に係る発明は、本願発明を方法の発明として表現したものであるので、本願発明と同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 請求項19ないし20に係る発明は、請求項17に係る発明をさらに限定したものであるので、請求項17に係る発明と同様に、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 第4 平成29年3月21日付けで通知した当審拒絶理由について 1.平成29年3月21日付けで通知した当審拒絶理由の概要 本件出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項1、17の「連続的な可変コンデンサ」なる記載の「連続的な」が「可変コンデンサ」のどのような態様を表しているのか不明であるから、請求項1ないし20に係る発明は明確であるとはいえない。 (2)請求項15が引用する請求項1には「デジタル回路」なる記載がないから、請求項15、16に係る発明は明確であるとはいえない。 2.平成29年3月21日付けで通知した当審拒絶理由についての判断 平成29年6月29日付け手続補正により、請求項1、17の「連続的」は、可変コンデンサではなく、周波数調整の態様を表していることが明らかになった。 よって、不備(1)は解消した。 同手続補正により、請求項15の「デジタル回路」は、同項が引用する請求項1に記載がある「駆動回路」に補正された。 よって、不備(2)は解消した。 そうすると、もはや、平成29年3月21日付けで通知した当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。 第5 むすび 上記のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-10-12 |
出願番号 | 特願2014-180772(P2014-180772) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G10K)
P 1 8・ 537- WY (G10K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 冨澤 直樹 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
安藤 一道 関谷 隆一 |
発明の名称 | コンデンサで電子ホーンの駆動信号周波数を調整する方法及び回路 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 竹内 茂雄 |