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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1333156
審判番号 不服2016-11734  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-04 
確定日 2017-10-24 
事件の表示 特願2012-189107「パネル部材および光学デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月17日出願公開,特開2014- 48343,請求項の数(19)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成24年8月29日の出願であって,平成28年4月26日付けで拒絶理由が通知され,同年6月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年6月29日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年8月4日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出され,当審において,平成29年7月7日付けで拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年8月29日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願の請求項1及び8に係る発明
本願の請求項1ないし19に係る発明は,平成29年8月29日提出の手続補正書によって補正された請求項1ないし19に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ,そのうちの請求項1及び8の記載は次のとおりである。なお,請求項2ないし7は,いずれも,請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであり,請求項9ないし19は,いずれも,請求項1又は8の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって,請求項2ないし7及び9ないし19に係る発明は,いずれも,請求項1又は8に係る発明の発明特定事項を全て有し,他の発明特定事項を付加したものに該当する。

「【請求項1】
対向して配置された第1面および第2面を有する光制御シートと,
前記光制御シートの前記第2面に対向して配置された光反射シートと,を備え,
前記光制御シートの第2面は,前記光制御シートのシート面と平行な一方向に配列された複数の第1傾斜面と,前記一方向に配列された複数の第2傾斜面と,を含み,前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は前記一方向に交互に配列され,
前記光制御シートの法線方向と前記一方向との両方に平行な断面において,前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は,前記光制御シートの法線方向に関して逆方向に傾斜し,
前記第1傾斜面が,前記光制御シートの法線方向と前記一方向との両方に平行な断面において,前記光制御シートのシート面に対してなす角度θaは,前記光反射シートの側で小さくなるように変化し,
前記第1傾斜面の前記角度θa,及び,前記第2傾斜面が,前記光制御シートの法線方向と前記一方向との両方に平行な断面において,前記光制御シートのシート面に対してなす角度θbは,前記光制御シートへ前記第1面から入射して前記第1傾斜面へ進む光の少なくとも一部分が,前記第1傾斜面で全反射して前記第2傾斜面へ向かい,前記第2傾斜面でさらに全反射して前記光制御シートの前記第1面へ向かい,前記第1面から外部へ出射されるような角度に設定されている,パネル部材。」(以下,当該請求項1に係る発明を「本願発明」という。)
「【請求項8】
シート状の本体部と,前記本体部上に一方向に沿って配列された複数の単位要素と,を有する光制御シートと,
前記光制御シートの前記単位要素が設けられている側に配置された光反射シートと,を備え,
各単位要素は,一方向における一側に配置された第1傾斜面と,一方向における他側に配置された第2傾斜面と,を有し,
前記光制御シートの法線方向と前記一方向との両方に平行な断面において,前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は,前記光制御シートの法線方向に対して逆方向に傾斜し,
前記第1傾斜面が,前記光制御シートの法線方向と前記一方向との両方に平行な断面において,前記光制御シートのシート面に対してなす角度θaは,前記光反射シートの側で小さくなるように変化し,
前記第1傾斜面の前記角度θa,及び,前記第2傾斜面が,前記光制御シートの法線方向と前記一方向との両方に平行な断面において,前記光制御シートのシート面に対してなす角度θbは,前記光制御シートへ入射して前記第1傾斜面へ進む光の少なくとも一部分が,前記第1傾斜面で全反射して前記第2傾斜面へ向かい,前記第2傾斜面でさらに全反射して前記光制御シートから外部へ出射されるような角度に設定されている,パネル部材。」


第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,概略次のとおりである。

本願の請求項3ないし9及び12ないし23(審決注:平成28年6月13日提出の手続補正書による補正後の請求項3ないし9及び12ないし23であり,平成29年8月29日提出の手続補正書による補正後の請求項1ないし19に対応する。)に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び周知の事項に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開平11-174214号公報
引用文献2:特開2012-133081号公報
引用文献3:特開2008-299219号公報

引用文献1又は引用文献2に記載された発明において,引用文献3に示されるような周知の技術を適用して,本願の請求項3ないし9及び12ないし23に係る発明のように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。


第4 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は,概略次のとおりである。

本願の請求項1ないし19(審決注:平成28年8月4日提出の手続補正書による補正後の請求項1ないし19である。)の記載は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載により,あるいは,当該記載や示唆がなくとも出願時の技術常識に照らし,当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでないから,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。


第5 原査定の拒絶の理由についての判断
1 引用文献1に記載された発明を主引例とする拒絶の理由について
(1)引用例
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
引用文献1は,本願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,指向性反射板およびそれを用いた反射型表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来,反射型表示装置は,図4に示すように,例えば液晶表示パネルなどの透過型表示パネル1と,この表示パネル1の後面に対向させて配置された散乱反射板2とにより構成されている。
【0003】この反射型表示装置は,表示パネル1の前方から入射する自然光や室内光などの外光を前記散乱反射板2により反射し,その反射光で表示パネル1を後面から照明して表示するものであり,前方から入射した外光は,図に矢線で示すように,表示パネル1を透過して散乱反射板2により反射され,広範囲に拡散した光となって表示パネル1にその後面から入射して,この表示パネル1の前方に出射する。
【0004】なお,反射型表示装置は,一般に,その画面の上縁側から主に外光を取り込むように,前面画面の法線に対して画面の上縁側(図4において左側)に傾いた方向を明るい外光が得られる方向に向けて使用されており,その表示は,正面方向,つまり画面の法線近傍の方向,あるいはやや画面の下縁側に傾いた方向の付近から観察されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし,上記散乱反射板2を用いた従来の反射型表示装置は,その表示が暗いという問題をもっている。これは,前記散乱反射板2で反射された光は,表示パネル1に入射しない方向にまで広く拡散し,照明光として利用できる反射光が,表示パネル1に入射する拡散範囲の光だけであり,また,表示パネル1に入射してもその前方に出射する光の広がり角が大きく,表示の観察方向に向かって出射する光の輝度が低いためである。
【0006】すなわち,表示装置の表示は,上述したように正面方向(画面に垂直な方向の付近)から観察されるのが普通であるが,従来の反射型表示装置は,表示パネル1の前面に出射する光の広がり角が大きく,その出射光のうちの一部の正面方向に向かって出射する光が観察者に観察され,他の斜め方向に向かって出射する光は観察者にはほとんど見えないため,観察される表示が暗くなってしまう。
【0007】この発明は,所定の方向に高輝度の反射光を出射することができる指向性反射板を提供するとともに,所定の方向から観察される表示を充分に明るくすることができる反射型表示装置を提供することを目的としたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明の指向性反射板は,平担な反射面を有する反射部材と,前面が平坦で,後面に所定方向に沿う溝状凹部が複数列に形成され,前記後面を前記反射部材の反射面に対向させて配置された第1の導光部材と,前記第1の導光部材の各溝状凹部内を占有する前記第1の導光部材よりも屈折率の小さい第2の導光部材とからなり,前記第1の導光部材の溝状凹部は,前記反射部材の反射面の法線に対する傾き角度が異なる少なくとも2つの傾斜面を有し,前記傾斜面と前記第2の反射部材との境界面が,前記境界面への入射光をその入射角に応じて反射または透過させる光学界面を形成し,前記第1の導光部材の前面から所定の入射角度範囲で入射した光を所定の方向に前記入射光の入射角度範囲より小さい広がり角で出射することを特徴とするものであり,この指向性反射板によれば,所定の方向に高輝度の反射光を出射することができる。
【0009】また,この発明の反射型表示装置は,透過型表示パネルと,この表示パネルの後面に対向させて配置された,前面からの入射光を反射し,その反射光を所定の方向に前記入射光の入射角度範囲より小さい広がり角で前面に出射する指向性反射板とを備えたことを特徴とするものであり,この反射型表示装置によれば,所定の方向から観察される表示を充分に明るくすることができる。」

b 「【0014】
【実施例】図1および図2はこの発明の第1の実施例を示しており,図1は指向性反射板を備えた反射型表示装置の側面図,図2は前記指向性反射板の一部分の拡大側面図である。
【0015】この実施例の表示装置は,図1に示すように,透過型表示パネル10と,この表示パネル10の後面に対向させて配置された指向性反射板11とからなっている。なお,前記表示パネル10は,例えば液晶表示パネルであり,この液晶表示パネルは,アクティブマトリックス型,単純マトリックス型,セグメント型などのいずれでもよく,また,その表示方式も,TN(ツィステッドネマティック)方式,STN(スーパーツィステッドネマティック)方式,ECB(複屈折効果)方式,動的散乱効果方式,強誘電性液晶を用いる方式などの光の透過率を制御する表示方式であればいずれでもよい。
【0016】前記指向性反射板11は,図1および図2に示すように,鏡面反射をする平担面状の反射面12aを有する反射部材12と,前面が平坦で,後面に所定方向に沿う溝状凹部14を互いに平行に複数列に形成し,前記後面を前記反射部材12の反射面12aに対向させて配置された第1の導光部材13と,この第1の導光部材4の各溝状凹部14内に設けられた前記第1の導光部材13よりも屈折率の小さい第2の導光部材15とからなっている。 前記反射部材12は,例えば樹脂フィルムの少なくとも一方の面全体に銀またはアルミニウムなどを蒸着またはメッキした平担面状の反射膜であり,その反射面12aは鏡面となっている。
【0017】前記第1の導光部材13は,アクリルまたはトリアセチルセルロース(TAC)などの透明樹脂材料(望ましくは光学異方性を持たない透明樹脂材料)からなっており,その後面の全域に,その横幅(図において紙面の表裏方向の幅)全長にわたる長さの溝状凹部14が複数列互いに平行に形成されている。
・・・(中略)・・・
【0020】前記第1の導光部材13の後面に形成された前記溝状凹部14は,互いに逆向きに傾斜する2つの側面を有する断面V字状の溝状凹部であり,これらの溝状凹部14の両側面は,前記第1の導光部材13の前面の法線に対し,前記溝状凹部14の深さ方向に向かって互いに異なる傾き角度で傾斜している。
【0021】これらの溝状凹部14は,所定の間隔で互いに平行に形成されており,また,前記第1の導光部材13の各溝状凹部14の間の平坦な部分の後面はそれぞれ,この導光部材13の前面と平行な面となっている。
【0022】なお,図1では便宜上,第1の導光部材13の各溝状凹部14を大きく誇張して示しているが,例えば,第1の導光部材13の後面に形成された前記各溝状凹部14の幅(V字型の溝の最も広い幅)は,40?100μm程度の極く小さい幅に設定されており,そのときの,各溝状凹部14は,50?150μm間隔に平行に設定され,反射部材と接する部分の各後面の幅は,前記溝状凹部14の幅の1/4?1/2の比程度に設定されている。
【0023】前記第1の導光部材13は,その各溝状凹部14の間の部分の面を前記反射部材12の反射面12aに接面させて,この反射部材12上に図示しない透明な粘着剤(両面粘着テープでもよい)により貼り付けられている。
【0024】また,前記第1の導光部材13の各溝状凹部14内を占有するように設けられた第2の導光部材15は,例えば空気層が用いられる。したがって,この第2の導光部材15の屈折率は前記第1の導光部材13の屈折率よりも小さい。
【0025】そして,前記第1の導光部材13と前記第2の導光部材15との界面は,その面への入射光をその入射角に応じて反射または透過させる光学界面16a,16bとなっている。
【0026】この光学界面16a,16bはそれぞれ,第1の導光部材13の前面および反射部材12の反射面12aの法線に対する一方の光学界面16aの傾き角度θ1と,他方の光学界面16bの傾き角度θ2とは,θ1>θ2の関係にある。
【0027】上記指向性反射板11では,図1に示したように,前記溝状凹部14の両側の光学界面16a,16bのうちの反射部材12の反射面12aの法線に対する傾き角度が大きい方の光学界面16a(傾き角度θ1)が,表示装置の主な外光取り込み方向である画面(表示パネル10の前面)の上縁側(図1において左側)に向けて,そして前記傾き角度の小さい方の光学界面16b(傾き角度θ2)が画面の下縁側に位置する観察者に向けて,表示パネル10の背後に配置されている。
【0028】この表示装置は,その表示装置の画面を,つまり表示パネル10の前面に入射する自然光や室内光などの外光を前記指向性反射板11により反射し,その反射光で表示パネル10を後面から照明して表示するものであり,表示パネル10の前面に入射した外光は,図に矢線で示すように,表示パネル10を透過して指向性反射板11により反射され,表示パネル10にその後面から再度入射して,この表示パネル10の前面より出射する。
【0029】この場合,反射型表示装置は,その画面に垂直な方向に対して画面の上縁側に傾いた方向を明るい外光が得られる方向に向けて,下縁側に傾いた方向から観察するのが普通であるため,外光は主に画面の上縁側から取り込まれる。
・・・(中略)・・・
【0039】前記第1の導光部材13の前面から出射する光は,図1に示すように,第1の導光部材13の前面に入射した光の入射角度範囲よりも小さい広がり角の光であり,その出射方向は,前記第1および第2の導光部材13,15の屈折率と,前記溝状凹部14の両側の光学界面16a,16bの傾き角度θ1,θ2とによって決まる。
【0040】すなわち,上記指向性反射板11は,第1の導光部材13の前面から入射した所定の入射角度範囲の入射光および反射部材12で反射された反射光を,前記第1の導光部材13と第2の導光部材15との界面である光学界面16a,16bで屈折させ,前記反射光を前記第1の導光部材13の前面から,所定の方向に前記入射光の入射角度範囲より小さい広がり角で出射するものであり,前記溝状凹部14の両側の光学界面16a,16bのうちの反射部材12の反射面12aの法線に対する傾き角度が大きい方の光学界面16aの傾き方向から様々な入射角で入射した光の反射光を所定の方向に集光させて出射する。
【0041】この指向性反射板11の反射光の出射方向は,上述したように,前記第1および第2の導光部材13,15の屈折率と,前記両側の光学界面16a,16bの傾き角度θ1,θ2とによって決まるため,これらを適切に選ぶことにより,指向性反射板11の正面方向,つまり第1の導光部材13の前面の法線近傍の方向に光を出射することができる。
【0042】図1および図2に示した指向性反射板11は,前記第2の導光部材15が屈折率が1の空気層であり,第1の導光部材13の屈折率が1.63±0.05,前記溝状凹部14の両側の光学界面16a,16bのうちの主な光の入射方向に傾斜した一方の光学界面16aの傾き角度θ1が30°±5°,他方の光学界面16aの傾き角度θ2が20°±5°のものであり,この指向性反射板11は,前記傾き角度が大きい方の光学界面16aの傾き方向から様々な入射角で入射した光の反射光を正面方向に集光させて出射するものである。
・・・(中略)・・・
【0046】したがって,この反射型表示装置によれば,表示パネル11に,所定の方向より外光を入射させて,観察者のほうに小さい広がり角の反射光を出射させることができ,所定の方向から観察される表示を充分に明るくすることができる。」

c 「【0059】
【発明の効果】この発明の指向性反射板は,反射部材の反射面に,後面に所定方向に沿う溝状凹部を複数列に形成された第1の導光部材の前記後面を対向させ,この第1の導光部材の各溝状凹部内に前記第1の導光部材よりも屈折率の小さい第2の導光部材を設けて,前記第1の導光部材と前記第2の導光部材との界面を,その面への入射光をその入射角に応じて反射または透過させる光学界面とするとともに,前記光学界面をそれぞれ,前記反射部材の反射面の法線に対し,互いに異なる向きと傾き角度で傾斜する傾斜面としたものであるから,前記第1の導光部材の前面に入射した所定の入射角度範囲の入射光および前記反射部材で反射された反射光を前記光学界面で屈折させ,前記反射光を前記第1の導光部材の前面より,所定の方向に前記入射光の入射角度範囲より小さい広がり角で出射して,所定の方向に高輝度の反射光を出射することができる。
【0060】また,この指向性反射板の反射光の出射方向は,前記第1および第2の導光部材の屈折率と,前記両側の光学界面の傾き角度とによって決まり,これらを適当に選ぶことにより,反射板の正面方向,つまり前記第1の導光部材の前面の法線近傍の正面方向に光を出射することができる。」

d 「【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施例を示す指向性反射板を備えた反射型表示装置の側面図。
【図2】前記指向性反射板の一部分の拡大側面図。
・・・(中略)・・・
【図4】従来の反射型表示装置の側面図。
・・・(中略)・・・
【図1】

【図2】

・・・(中略)・・・
【図4】




(イ)引用文献1に記載された発明
前記(ア)で摘記した引用文献1の記載から,引用文献1に次の発明が記載されていると認められる。

「前方から入射する自然光や室内光などの外光を透過型表示パネル10の後面で反射し,その反射光によって透過型表示パネル10を後面から照明して表示する反射型表示装置において,外光を反射するための反射板として用いられる指向性反射板11であって,
鏡面反射をする平担面状の反射面12aを有する反射部材12と,
前面が平坦で,後面に所定方向に沿う溝状凹部14が所定の間隔で互いに平行に複数列に形成され,各溝状凹部14の間の平坦な部分がそれぞれ前記前面と平行な面となっている第1の導光部材13と,
を有し,
前記反射部材12と前記第1の導光部材13は,透明な粘着剤により,前記第1の導光部材13の後面の各溝状凹部14の間の平坦な部分を前記反射部材12の反射面12aに接面させて貼り付けられ,前記各溝状凹部14内が空気層とされており,
前記第1の導光部材13の溝状凹部14は,互いに逆向きに傾斜する2つの側面を有する断面V字状であって,これらの溝状凹部14の両側面は,前記第1の導光部材13の前面の法線に対し,前記溝状凹部14の深さ方向に向かって互いに異なる傾き角度θ1,θ2で傾斜していて,前記両側面と前記空気層との界面が,当該界面への入射光をその入射角に応じて反射又は透過させる光学界面16a,16bを形成し,前記傾き角度θ1と前記傾き角度θ2はθ1>θ2の関係にあり,
前記第1の導光部材13の前面から入射した所定の入射角度範囲の入射光および反射部材12で反射された反射光15を,前記第1の導光部材13の前面から,所定の方向に前記入射光の入射角度範囲より小さい広がり角で出射するように前記傾き角度θ1,θ2が設定されている,
指向性反射板11。」(以下,「引用発明」という。)

イ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載
引用文献3は,本願の出願前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献3には次の記載がある。(下線は,後述する引用文献3記載事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は,投射装置から投射された画像を映し出す反射型スクリーン及び表示システムに関し,特に,近い距離から画像を投射可能な反射型スクリーン及び表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
CRTや液晶を用いて画像を拡大して投影するプロジェクタ,透明なシート上に描かれた画像を拡大して投影するOHP(オーバーヘッドプロジェクタ)では,画像をスクリーンに投影することが一般的である。プロジェクタ等をスクリーンの正面に設置することが好ましいが,視聴者の位置等の制約からプロジェクタ等をスクリーンの正面からずらす場合が少なくない。
【0003】
例えば,スクリーンの下方にプロジェクタ等を配置した場合,スクリーンの下方と上方とでは投射光のスクリーンへの入射角が異なることから下方から上方にかけて輝度が低下するという問題がある。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,プロジェクタ等の配置的な制約からスクリーンとプロジェクタ等の距離はますます至近になる傾向がある。・・・(中略)・・・従来の反射型のスクリーンでは,プロジェクタ等からのスクリーンへの入射角が大きくなると実質的な明るさが低下する。
【0008】
例えば入射角20度近傍に対し入射角50度になると,実質光量比が50%となるなど,従来のスクリーンでは,入射角に応じて周辺の輝度(実質明るさ)が低下するという問題がある。この輝度の低下は,プロジェクタ等の焦点距離から定められた正規の投影位置が至近であるほど,正規の投影位置からの距離の変化に敏感に生じる。投影位置が比較的遠いプロジェクタ等の場合,スクリーンの拡散面が光を拡散するためスクリーンとの距離が変化してもそれほど急激な輝度の低下は生じない。
【0009】
したがって,プロジェクタ等のスクリーンでは,投影位置が至近になるほど配置的な制約から生じる距離の変化を吸収して輝度ムラ及び輝度低下を抑制することが要求される。
・・・(中略)・・・
【0011】
そこで,本発明は,至近距離から投射光が投射される場合に,投射位置が変動しても輝度変動及び輝度ムラを低減して,高品質な画像を表示するスクリーン,及び,投射装置と組み合わせた表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に鑑み,本発明は,至近距離の投射装置から投射された画像を映し出す反射型スクリーンであって,位置Aから投射された投射光を略同一方向に反射する第1反射面と,位置Aとは異なる位置Bから投射された投射光を略同一方向に反射する第2反射面と,を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば,スクリーンに入射する投射光の入射角によって,スクリーン面の輝度低下を防止すると共に,投射装置とスクリーンの位置関係が変わっても,輝度変化を抑制することができる。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0038】
至近距離から投射光が投射される場合に,投射位置が変動しても輝度変動及び輝度ムラを低減して,高品質な画像を表示するスクリーン,及び,投射装置と組み合わせた表示システムを提供することができる。」

b 「【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下,本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0040】
図1(a)は,スクリーン100と投射装置50からなる表示システム10の一例を示す。投射装置50は,スクリーン100に対し至近な距離(例えば,100cm未満)に設置された場合でも50インチ程度から好ましくは100インチ程度のスクリーン100の全面に長方形の画像を投射することができる画角を有する。そして,スクリーン100に対し正面(光軸との交点O’が略中央にあたる)に配置された場合だけでなく,スクリーン100と光軸の交点Oがスクリーン100の下端略中央に配置された場合にもスクリーン100の全面に長方形の画像を投射するレンズシフト機能を備える。
【0041】
本実施形態のスクリーン100は,このような至近距離に設置する投射装置50に対し,例えば交点O付近と離れた位置の輝度ムラを低減するだけでなく,至近距離であるが故にスクリーン100に対しわずかな距離を移動しただけで大きく低下しうる輝度を,距離変動に対しロバストにすることを可能にする。
【実施例1】
【0042】
図1(a)のように投射装置50を配置した場合,投射装置50とスクリーン100との等距離線は図1(b)のように交点Oを中心とした同心円を描く。したがって,この同心円の半径方向に沿って,投射光14の入射角が大きくなる。以下では,交点Oを中心とする同心円の半径方向に沿って遠近方向(交点Oから離れるほど遠い)を定義する。また,投射装置50は図示するようにスクリーン100の下端にあるとして説明するが,右端,左端,左右上下の頂点のいずれにあってもよく,その場合,スクリーン100上の遠近方向も投射装置50の位置に対し相対的に定まるものになる。
【0043】
図2,3は,本実施例のスクリーン100を構成する反射面11の断面図の一例を示す図である。図2(a)と図3(a)は,投射装置50とスクリーン100の側面図を,図2(b)と図3(b)は図1(a)に示したスクリーン100のLL線断面図をそれぞれ示す。
【0044】
本実施例のスクリーン100の反射面11は,投射距離Aに対応した一連の反射面12Aと,投射距離Bに対応した一連の反射面12Bとから構成される。一連の反射面12Aには,スクリーン100から所定の投射距離Aだけ離れた位置に設置された投射装置50から投射される投射光14の反射光15が観察者側へ向かって反射するような傾斜角度αが形成されている。
ここで,投射距離Aに設置された投射装置50に対して,最適な反射光15となるような角度に設定された一連の反射面12Aの要素を反射素子面(Rf1_i)と定義する。すなわち,反射素子面Rf1_1,反射素子面Rf1_2,反射素子面Rf1_3…から一連の反射面12Aが構成される。
【0045】
一連の反射面12Aは反射素子面Rf1_iが連なって構成され,交線d,m,uに示すようにスクリーン100への入射角が遠方ほど大きくなることに対応して,各反射素子面Rf1_iは遠方ほどスクリーン100に対する傾斜角度αが大きくなっている。構成上独立した反射素子面(Rf1_i)は,遠方に行くほど傾斜角度αが大きくなるという点で互いに関連しており,1つのグループとして扱ってもよい。傾斜角度αは,反射素子面Rf1_i毎に全て異なるように一様に大きくなっていてもよいし,所定数毎に段階的に大きくなっていてもよい。
【0046】
図2(a)に示すように,一連の反射面12Aの傾斜角度αは,投射距離Aにおいて,投射光14が観察者側に向かうような角度に設定した。最も好適な傾斜角度αは,投射光14とこの投射光14の正反射光が観察者側に向かうような角度である。交点Oから遠方に行くほど,一連の反射面12Aの角度を大きくすることにより効率よく観察者側に投射光14が反射されるようになる。
また,ここでいう観察者側とは,投射装置50から投射した画像を本実施形態のスクリーン100に映し出したときに画像を観察している,あるいは,鑑賞している人物等の方向を示す。具体的には,スクリーン面の法線方向が望ましい。また,スクリーン100からある一定の距離だけはなれた位置を想定し,その位置へ向かうような方向でもよい。
【0047】
図3(a)(b)は,図2(a)(b)と同様な構成を示す図であるが,図3(a)(b)は,投射装置50が投射距離Aよりも短い投射距離Bにて画像を投射する点で異なる。同様に,投射距離Bに設置された投射装置50に対して,最適な反射光15となるような角度に設定された一連の反射面12Bの要素を反射素子面(Rf2_i)と定義する。
【0048】
一連の反射面12Bは,一連の反射面12Aと同様,反射素子面Rf2_iが連なって構成され,交線d,m,uに示すようにスクリーン100への入射角が遠方ほど大きくなることに対応して,各反射素子面Rf2_iは遠方ほどスクリーン100に対する傾斜角度βが大きくなっている。
【0049】
構成上独立した反射素子面(Rf2_i)は,遠方に行くほど傾斜角度βが大きくなるという点で互いに関連しており,1つのグループとして扱ってもよい。傾斜角度βは,反射素子面Rf2_i毎に全て異なるように一様に大きくなっていてもよいし,所定数毎に段階的に大きくなっていてもよい。
【0050】
図3(a)に示すように,一連の反射面12Bの傾斜角度βは,投射距離Bにおいて,投射光14が観察者側に向かうような角度に設定されている。最も好適な傾斜角度βは,投射光14とこの投射光14の正反射光が観察者側に向かうような角度である。交点Oから遠方に行くほど,一連の反射面12Bの角度を大きくすることにより効率よく観察者側に投射光14が反射されるようになる。
【0051】
投射距離A>投射距離Bの関係から明らかなように,スクリーン100上の位置が同じであれば,傾斜角度β>傾斜角度αである。
【0052】
一連の反射面12A,12Bの配置方向について説明する。一般には,スクリーン100の投射画面は横長の長方形であるので投射光束は投射装置50の投射レンズから放射線状にスクリーン100に向かって投射される。したがって,投射レンズの光軸とスクリーン100が交わる位置を中心とした同心円の半径方向に沿って一連の反射面12Aが形成されていることが望ましい。
【0053】
図4は,投射装置50の位置と一連の反射面12A,12Bの形成方向の関係を説明する図である。図4(a)は,光軸とスクリーン100の交点Oから同心円の半径方向に沿って遠方になるほど一連の反射面12A,12Bの傾斜角α,βが大きくなっている。
【0054】
また,図4(b)に示すように,投射装置50の光軸とスクリーン100の交点Oがスクリーン100の左端上にある場合,その交点Oから同心円の半径方向に沿って遠方になるほど一連の反射面12A,12Bの傾斜角α,βが大きくなる。なお,必ずしも厳密に同心円を描かないとしてもよく,極端な例としては,図4(c)に示すように,光軸とスクリーン100の交点Oが左端にある場合,右方向に行くほど傾斜角を大きくしてもよい。
【0055】
本実施例のスクリーン100は,反射素子面(Rf1_i)と,反射素子面(Rf2_i)がスクリーン100内に混在していることを特徴とする。図5は,本実施形態のスクリーン100の断面図を示す。図5のスクリーン100は,反射素子面Rf1_iを所定数おきにRf2_iで置き換えた構成を有する(Rf2_iをRf1_iで置き換えてもよい)。
【0056】
ほぼ同位置では傾斜角度β>傾斜角度αであるので,同心円の半径方向に沿って所定数以上の反射素子面(Rf1_i及びRf2_i)を取り出せば,傾斜角度βの領域と傾斜角度αの領域が交互に現れながら(1周期),徐々に傾斜角度α及びβが大きくなっていく。
【0057】
ここで図5(a)では,反射素子面Rf2_iはスクリーン100上の位置の中央程度までしか配置されていない。したがって,上部では投射距離Aに対応する反射素子面Rf1_iしかないが,中央部までは傾斜角度が2種類混在したような断面構造を有している。また,交点Oに近づくほど,反射素子面Rf1_iとRf2_iの傾斜角度αとβは同じような角度となっていく。
【0058】
より好ましくは,図5(b)に示すように,下部から上部まで反射素子面Rf1_iとRf2_iを混在させる構成とすることで,ズーム機能を備えた投射装置50や焦点距離の異なる複数の投射装置50などへの対応が容易となる。
・・・(中略)・・・
【0060】
スクリーン100は,鋸歯状に形成された反射面11をPVCフィルム,アクリルなどの透明部材13で全体を被覆して構成されている。投射光14は透明部材13の界面から入射し透明部材13を通過した後,鋸歯状に形成された反射面11に反射し,再び透明部材13を通過した後,界面から観察者側に進行する。一連の反射面12A,12Bは,投射光14が観察者側に反射する傾斜角度α,βでそれぞれ傾斜している。一連の反射面12A,12Bは一辺が数mm?数十umの正方形又は長方形である。
・・・(中略)・・・
【0065】
ところで,これまでスクリーン100は,平面側(透明部材13側)から投射光14を入射させる構造の実施例を示したが,図6に示すように,投射光14が直接反射面11で反射して観察者側にむかわせる構造でもかまわない。・・・(中略)・・・
【実施例2】
【0080】
実施例1では,反射面11を鋸波状の平面で構成したが,無限数の反射素子面Rf_i(n:1,2,3,…)を想定すれば,反射素子面Rfn_iを混在させることで反射面11を複数の曲面により構成できる。このような構成とすることで,反射面11の拡散効果が高まり,平面で構成したときに適正な投射距離に対し投射位置がずれても画面内の均一性の低下を起しにくくなる。
【0081】
図14は,反射面11を凹面21で構成したスクリーン100の断面図を示す。1つ1つの凹面21が,図5,図7(a)又は(b)の1周期に相当し,1つの凹面21に無限数の反射素子面Rfn_iが含まれる構成に相当する。
【0082】
1つの凹面21は,一方(交点側)の傾斜角がほぼゼロで,他方(遠方側)の傾斜角は最も近い投射距離に最適化された反射素子面Rfn_iの傾斜角になっている。また,各凹面21の傾斜角の平均は,遠方側へいくほど大きくなる。
【0083】
所定の投射距離から投射された投射光14は,凹面21内の各部にてそれぞれ正反射し,反射光15にある程度の角度θdをつけることができる。すなわち,すべての反射光15が観察者側への並行光とはならないが,ある程度の幅をもたせることで視野角特性を広げることができるので,周辺の凹面21からの反射と合わせ,投射位置が変わっても画面内の均一性の低下を抑制できる。凹面21の湾曲は遠方に行くほど大きいので,実施例1と同様に遠方で輝度が低下することもない。」

c 「【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】スクリーンに対する投射装置の位置の一例を示す図である。
【図2】スクリーンを構成する反射面の断面図の一例を示す図である。
【図3】スクリーンを構成する反射面の断面図の一例を示す図である。
【図4】投射装置の位置と一連の反射面の形成方向の関係を説明する図である。
【図5】本実施例のスクリーンの断面図である。
【図6】投射光が直接反射面で反射して観察者側に向かうスクリーンの断面図の一例である。
・・・(中略)・・・
【図14】反射面を凹面で構成したスクリーンの断面図を示す。
・・・(中略)・・・
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


・・・(中略)・・・
【図14】



(イ)引用文献3に記載された技術事項
引用文献3の記載中で,「反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)」という文言が,図2,3等から看取される,反射型スクリーン100の一方の表面に形成された楔状の突部の2つの面(図14においては一方の面が凹面となっている。)について,投射光14を反射する方の面(図14においては凹面。)のみを指しているのか,それとも,その双方を指しているのかが明確に特定し難いが,便宜上,当該表現を前者を指すものとして用い,他方の面をそれぞれ「接続面Rf1_i」,「接続面Rf2_i」と表現すると,前記(ア)で摘記した引用文献3の記載から,引用文献3に次の技術事項が記載されていると認められる。

「100cm未満といった至近距離に設置された投射装置50から投射された画像を映し出すことができる反射型スクリーン100であって,
前記投射装置50から投射された投射光14を反射して観察者側に向かわせる反射面11を有しており,
当該反射面11が,
所定の投射距離Aだけ離れた位置に設置された投射装置50から投射される投射光14の反射光15が観察者側へ向かって反射するような傾斜角度αで形成された複数の反射素子面(Rf1_i)と,隣接する反射素子面(Rf1_i)の間を接続する面であって当該反射素子面(Rf1_i)とは逆方向の傾斜角度で形成された複数の接続面(Rf1’_i)とから構成される一連の反射面12Aと,
前記投射距離Aよりも短い投射距離Bだけ離れた位置に設置された投射装置50から投射される投射光14の反射光15が観察者側へ向かって反射するような傾斜角度βで形成された複数の反射素子面(Rf2_i)と,隣接する反射素子面(Rf2_i)間を接続する面であって当該反射素子面(Rf2_i)とは逆方向の傾斜角度で形成された複数の接続面(Rf2’_i)とから構成される一連の反射面12Bと,
から構成され,
前記一連の反射面12A,12Bは,前記投射装置50の投射レンズの光軸と反射型スクリーン100が交わる位置を中心とした同心円の半径方向に沿って,所定数の反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)毎に交互に形成され,
前記一連の反射面12A,12Bの形成位置に応じて,投射光14の入射角が大きくなるほど,各反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)の傾斜角度α,βが大きくなるよう設定されている反射型スクリーン100において,
前記反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)を,一方の傾斜角がほぼゼロで,他方の傾斜角は最も近い投射距離に最適化された傾斜角になっている凹面21で構成することによって,
投射光14が凹面21内の各部にてそれぞれ正反射して,反射光15が観察者側への並行光とはならないが,ある程度の幅をもたせることができ,投射位置が変わっても画面内の均一性の低下を抑制できること。」(以下,「引用文献3記載事項」という。)

(2)本願発明について
ア 対比
(ア) 引用発明の「『第1の導光部材13』の『前面』」,「『第1の導光部材13』の『後面』」,「第1の導光部材13」,「反射部材12」,「『溝状凹部14』の『2つの側面』のうちの一方」,「『溝状凹部14』の『2つの側面』のうちの他方」及び「指向性反射板11」は,本願発明の「『光制御シート』の『第1面』」,「『光制御シート』の『第2面』」,「光制御シート」,「光反射シート」,「第1傾斜面」,「第2傾斜面」及び「パネル部材」にそれぞれ相当する。

(イ) 引用発明の「第1の導光部材13」(本願発明の「光制御シート」に相当する。以下,「ア 対比」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()中の文言は,当該引用発明の構成に対応する本願発明の発明特定事項を指す。)は,前面が平坦で,後面に所定方向に沿う溝状凹部14が所定の間隔で互いに平行に複数列に形成され,各溝状凹部14の間の平坦な部分がそれぞれ前記前面と平行な面となっているから,「前面」(第1面)と「後面」(第2面)は「対向して配置されている」といえる。
したがって,引用発明の「第1の導光部材13」は,本願発明の「光制御シート」と,「対向して配置された第1面および第2面を有する」点で一致する。

(ウ) 引用発明の「反射部材12」(光反射シート)は,その反射面12aが,「第1の導光部材13の後面」(光制御シートの第2面)の各溝状凹部14の間の平坦な部分に接面させて貼り付けられているから,「光制御シートの前記第2面に対向して配置されている」といえる。
したがって,引用発明の「反射部材12」は,本願発明の「光反射シート」と,「光制御シートの第2面に対向して配置された」点で一致する。

(エ) 引用発明の「第1の導光部材13の後面」(光制御シートの第2面)には,所定方向に沿う溝状凹部14が所定の間隔で互いに平行に複数列に形成され,各溝状凹部14の間の平坦な部分がそれぞれ前記前面と平行な面となっており,前記溝状凹部14は,互いに逆向きに傾斜する2つの側面を有する断面V字状であるところ,「溝状凹部14の2つの側面」(第1傾斜面,第2傾斜面)が「第1の導光部材13」(光制御シート)のシート面と平行な一方向に交互に配列されたものであることは自明であるから,引用発明の「第1の導光部材13の後面」は,本願発明の「光制御シートの第2面」と,「光制御シートのシート面と平行な一方向に配列された複数の第1傾斜面と,前記一方向に配列された複数の第2傾斜面と,を含」む点で一致し,引用発明の「溝状凹部14の2つの側面」は,本願発明の「第1傾斜面および第2傾斜面」と,「一方向に交互に配列され」た点で一致する。

(オ) 引用発明の「溝状凹部14の2つの側面」(第1傾斜面,第2傾斜面)は,断面V字状の溝状凹部14における互いに逆向きに傾斜する2つの側面であるところ,「第1の導光部材13」(光制御シート)の法線方向と2つの側面の配列方向との両方に平行な断面において,「第1の導光部材13」(光制御シート)の法線方向に関して逆方向に傾斜していることは自明であるから,本願発明の「第1傾斜面および第2傾斜面」と,「光制御シートの法線方向と一方向(複数の第1傾斜面,第2傾斜面の配列方向)との両方に平行な断面において,光制御シートの法線方向に関して逆方向に傾斜」している点で一致する。

(カ) 引用発明の「溝状凹部14の2つの側面のうちの一方が第1の導光部材13と2つの側面の配列方向との両方に平行な断面において,第1の導光部材13のシート面に対してなす角度」(角度θa)は「90°-θ1」及び「90°-θ2」のうちの一方であり,「溝状凹部14の2つの側面のうちの他方が第1の導光部材13と2つの側面の配列方向との両方に平行な断面において,第1の導光部材13のシート面に対してなす角度」(角度θb)は「90°-θ1」及び「90°-θ2」のうちの他方になるところ,傾き角度θ1及びθ2が,第1の導光部材13の前面から入射した所定の入射角度範囲の入射光および反射部材12で反射された反射光を,第1の導光部材13の前面から,所定の方向に入射光の入射角度範囲より小さい広がり角で出射するように設定されているから,「90°-θ1」及び「90°-θ2」についても,「第1の導光部材13の前面から入射した所定の入射角度範囲の入射光および反射部材12で反射された反射光を,第1の導光部材13の前面から,所定の方向に入射光の入射角度範囲より小さい広がり角で出射するように」設定されたものであるといえる。
したがって,引用発明は,本願発明と,「第1傾斜面が,光制御シートの法線方向と一方向(複数の第1傾斜面,第2傾斜面の配列方向)との両方に平行な断面において,光制御シートのシート面に対してなす角度θa,及び,第2傾斜面が,光制御シートの法線方向と一方向(複数の第1傾斜面,第2傾斜面の配列方向)との両方に平行な断面において,光制御シートのシート面に対してなす角度θbが,それぞれ所定の角度に設定されている」点で共通する。

(キ) 前記(ア)ないし(カ)に照らせば,本願発明と引用発明は,
「対向して配置された第1面および第2面を有する光制御シートと,
前記光制御シートの前記第2面に対向して配置された光反射シートと,を備え,
前記光制御シートの第2面は,前記光制御シートのシート面と平行な一方向に配列された複数の第1傾斜面と,前記一方向に配列された複数の第2傾斜面と,を含み,前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は前記一方向に交互に配列され,
前記光制御シートの法線方向と前記一方向との両方に平行な断面において,前記第1傾斜面および前記第2傾斜面は,前記光制御シートの法線方向に関して逆方向に傾斜し,
前記第1傾斜面が,前記光制御シートの法線方向と前記一方向との両方に平行な断面において,前記光制御シートのシート面に対してなす角度θa,及び,前記第2傾斜面が,前記光制御シートの法線方向と前記一方向との両方に平行な断面において,前記光制御シートのシート面に対してなす角度θbが,それぞれ所定の角度に設定されている,パネル部材。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:
本願発明では,角度θaが光反射シートの側で小さくなるように変化するのに対して,
引用発明では,(90°-θ1)及び(90°-θ2)のいずれも変化しない点。

相違点2:
本願発明では,「角度θa,θb」が,光制御シートへ第1面から入射して第1傾斜面へ進む光の少なくとも一部分が,第1傾斜面で全反射して第2傾斜面へ向かい,第2傾斜面でさらに全反射して光制御シートの第1面へ向かい,第1面から外部へ出射されるような角度に設定されているのに対して,
引用発明では,「(90°-θ1)及び(90°-θ2)」(角度θa,θb)が,「第1の導光部材13の前面」(第1面)から入射した所定の入射角度範囲の入射光および反射部材12で反射された反射光を,「第1の導光部材13の前面」(第1面)から,所定の方向に入射光の入射角度範囲より小さい広がり角で出射するような角度に設定されており,当該角度が本願発明のような角度であるのか否かは不明な点。

イ 判断
事案に鑑み,まず相違点1について判断する。
(ア) 引用発明は,前方から入射する自然光や室内光などの外光を透過型表示パネル10の後面で反射し,その反射光によって透過型表示パネル10を後面から照明して表示する反射型表示装置において,外光を反射するための反射板として用いられる指向性反射板11であり,引用発明において,第1の導光部材13の前面における各点に入射する外光は,決まった方向から来るのでなく,様々な方向から来るのであって,引用発明は,このような外光のうちの所定の入射角度範囲の入射光をこれよりも小さな広がり角で出射するものである。また,引用発明の第1の導光部材13の後面における光学界面16a,16bは,当該光学界面16a,16bへの入射光をその入射角に応じて反射又は透過させるという作用,機能を有するものである。
これに対して,引用文献3記載事項が前提とするのは,100cm未満といった至近距離に設置された投射装置50から投射された画像を映し出すことができる反射型スクリーン100であり,引用文献3記載事項が前提とする反射型スクリーン100において,前面の各点に入射する投射光14は,様々な方向から来るものではなく,決まった方向(投射装置50が設置された位置)から来るものであって,当該反射スクリーン100は,このような投射光14を観察者側へ反射できるようにしたものである。また,引用文献3に,反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)の具体的構造等についての説明はないものの,【0065】や図6に投射光14の入射側の面に形成する態様が記載されていることからみて,全反射を利用したものでなく,金属を蒸着する等の鏡面反射を利用したものであることが当業者に自明であるから,引用文献3記載事項が前提とする反射型スクリーン100の反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)は,入射した投射光14を入射角によらず常に反射するよう構成されたものである。
すなわち,引用発明が用いられる反射型表示装置と引用文献3記載事項の前提である投射装置50及び反射型スクリーン100からなる表示装置とは,表示装置という点で共通するものの原理の異なる装置であり,引用発明の「第1傾斜面」や「第2傾斜面」と引用文献3記載事項の「反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)」とは,異なる作用,機能を果たすものである。
そうすると,当業者は,引用文献3記載事項における「反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)」の形状を,引用発明における「第1傾斜面」や「第2傾斜面」の形状として採用しようとすることはないというべきである。

(イ) 加えて,引用文献1の【0002】ないし【0009】の記載(前記(1)ア(ア)a)から理解されるように,引用発明は,外光を反射するための反射板として散乱反射板を用いた場合の,出射する光の広がり角が大きいため,観察される表示が暗くなってしまうという問題を解決するために,指向性反射板としたものである。
これに対して,引用文献3記載事項における「反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)」における凹面形状は,投射光14が凹面21内の各部にてそれぞれ正反射して,反射光15が観察者側への並行光とはならないが,ある程度の幅をもたせることができ,投射位置が変わっても画面内の均一性の低下を抑制できるようにするために採用される構成であるところ,当該形状を引用発明において採用したのでは,出射する光の広がり角が大きくなってしまい,引用発明の技術的意義を損なってしまうことになってしまう。
そうすると,引用文献3記載事項における「反射素子面(Rf1_i),(Rf2_i)」の形状を,引用発明における「第1傾斜面」や「第2傾斜面」の形状として採用することには,阻害要因があるというべきである。

(ウ) 前記(ア)及び(イ)のとおりであるから,引用発明において引用文献3記載事項を適用することが,当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
また,反射型表示装置における外光を反射するための指向性反射板において,相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように構成することが周知の事項であったことを示す証拠も見当たらないから,引用発明において相違点1に係る本願発明の発明特定事項を採用することが,原査定の拒絶の理由でいうような周知の事項に基づいて容易になし得たことであるともいえない。
そして,本願発明は,相違点1に係る本願発明の発明特定事項を具備することによって,本件明細書の【0092】に記載された「第1傾斜面で反射した光が,その後に,第2傾斜面に入射することなく,パネル部材の出光面となる第1面へ進むことを効果的に防止できる」という効果,又は【0095】に記載された「パネル部材上での各位置の輝度の角度分布がなだらかになる」という効果を奏するものと認められる。
したがって,相違点2について判断するまでもなく,本願発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)請求項8に係る発明について
請求項8には,相違点1に係る本願発明の発明特定事項と同じ発明特定事項が記載されているから,本願発明と同様の理由で,請求項8に係る発明は,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)請求項2ないし7及び9ないし19に係る発明について
請求項2ないし7はいずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであり,請求項9ないし19はいずれも請求項1又は8の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって,請求項2ないし7及び9ないし19に係る発明は,いずれも,請求項1又は8に係る発明の発明特定事項を全て有し,他の発明特定事項を付加したものに該当するところ,前記(2)及び(3)で述べたとおり,請求項1及び8に係る発明が,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない以上,請求項2ないし7及び9ないし19に係る発明も,同様の理由で,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。

2 引用文献2に記載された発明を主引例とする拒絶の理由について
引用文献2には,前方のプロジェクター等の画像投射装置からの投射光を反射して投影画像を映し出すスクリーンに関する発明が記載されているところ,当該スクリーンに関する発明において,投射光を反射する反射面は,基板1の主面1a上に,アルミ蒸着等により形成された複数のプリズム部分2aの表面部分に形成された光反射部PPにより構成され(【0031】,【0034】等),隣接する前記光反射部PPの間を接続する面は,光吸収部ASとして構成されており(【0036】等),本願発明の「第1傾斜面」及び「第2傾斜面」のように,光の少なくとも一部分を「全反射」するものではない。
そして,この点は,引用文献3にも記載されていない(前記1(1)イ(ア)を参照。)。
また,前方のプロジェクター等の画像投射装置からの投射光を反射して投影画像を映し出すスクリーンにおいて,投射光を反射する反射面を,入射光の少なくとも一部分を「全反射」し,その余の入射光を屈折させるような面で構成することが,本願の出願前に周知であったことを示す証拠も見当たらない。
したがって,引用文献2に記載された発明に,引用文献3記載事項を適用しても,本願発明の構成には至らないし,引用文献2に記載された発明において,投射光を反射する反射面を前述のような構成とすることが,原査定の拒絶の理由でいうような周知の事項に基づいて容易になし得たことであるともいえないから,本願発明は引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また,「第1傾斜面」及び「第2傾斜面」が,光の少なくとも一部分を「全反射」することは,本願の請求項8に記載された発明特定事項であるから,本願発明と同様の理由で,引用文献2に記載された発明に,引用文献3記載事項を適用しても,本願の請求項8に係る発明の構成には至らないし,引用文献2に記載された発明において,投射光を反射する反射面を前述のような構成とすることが,原査定の拒絶の理由でいうような周知の事項に基づいて容易になし得たことであるともいえないから,本願の請求項8に係る発明は引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
さらに,請求項2ないし7はいずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであり,請求項9ないし19はいずれも請求項1又は8の記載を直接又は間接的に引用する形式で記載されたものであって,請求項2ないし7及び9ないし19に係る発明は,いずれも,請求項1又は8に係る発明の発明特定事項を全て有し,他の発明特定事項を付加したものに該当するところ,前述のとおり,本願の請求項1及び8に係る発明が,引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでない以上,本願の請求項2ないし7及び9ないし19に係る発明も,同様の理由で,引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでない。
したがって,本願の請求項1ないし19に係る発明は,引用文献2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものでない。


第6 当審拒絶理由についての判断
平成29年8月29日提出の手続補正書による補正によって,請求項1及び8において「光制御シートへ第1面から入射して第1傾斜面へ進む光の少なくとも一部分が,第1傾斜面で全反射して第2傾斜面へ向かい,第2傾斜面でさらに全反射して光制御シートの第1面へ向かい,第1面から外部へ出射され」ることが特定されたことで,補正後の各請求項の記載は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載や出願時の技術常識に照らし,当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとなり,サポート要件違反は解消された。


第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-11 
出願番号 特願2012-189107(P2012-189107)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 537- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 南 宏輔大隈 俊哉  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 清水 康司
河原 正
発明の名称 パネル部材および光学デバイス  
代理人 朝倉 悟  
代理人 永井 浩之  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 中村 行孝  
代理人 堀田 幸裕  
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