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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G06M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06M
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G06M
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06M
管理番号 1333186
異議申立番号 異議2016-701037  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-08 
確定日 2017-08-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5916032号発明「薬剤検査支援装置及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5916032号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-20〕、21について訂正することを認める。 特許第5916032号の請求項1-7、9-21に係る特許を維持する。 特許第5916032号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5916032号の請求項1ないし21に係る特許についての出願は、平成24年9月27日に特許出願され、平成28年4月15日にその特許権についての設定登録がなされ、その特許について、特許異議申立人 大倉忠義より特許異議の申立てがなされ、平成29年3月23日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年5月19日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人 大倉忠義から平成29年7月18日付けで意見書が提出されたものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の「ア」ないし「シ」のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「一覧作成手段と備えたことを特徴とする薬剤検査支援装置。」とあるのを「一覧作成手段と備え、 前記一覧表が、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示されたものであることを特徴とする薬剤検査支援装置。」と訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から8何れかに記載」とあるのを、「請求項1から7何れかに記載」と訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1から9何れかに記載」とあるのを、「請求項1から7及び9何れかに記載」と訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1から12何れかに記載」とあるのを、「請求項1から7及び9から12何れかに記載」と訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項14に「請求項1から13何れかに記載」とあるのを、「請求項1から7及び9から13何れかに記載」と訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項16に「請求項1から15何れかに記載」とあるのを、「請求項1から7及び9から15何れかに記載」と訂正する。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項17に「請求項1から16何れかに記載」とあるのを、「請求項1から7及び9から16何れかに記載」と訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項19に「請求項1から18何れかに記載」とあるのを、「請求項1から7及び9から18何れかに記載」と訂正する。

コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項20に「請求項1から18何れかに記載」とあるのを、「請求項1から7及び9から18何れかに記載」と訂正する。

サ 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12に「調剤の際に際に」とあるのを、「調剤の際に」と訂正する。

シ 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項21に「表示する一覧表」とあるのを、「表示し、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示された一覧表」と訂正する。」

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、「表示したものである」と「表示されたものである」との表現上の相違を除けば、本件訂正前の請求項8に「前記一覧表が、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示したものであることを特徴とする請求項1から7何れかに記載の薬剤検査支援装置。」と記載された発明である。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「願書に添付した明細書等」という。)に記載された事項の範囲内において、請求項1を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
また、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項8を削除するものである。
よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3ないし10について
訂正事項3ないし10は、請求項9、10、13、14、16、17、19、20がそれぞれ引用する請求項を減らす訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内において請求項9、10、13、14、16、17、19、20をそれぞれ限定したものといえる。よって、訂正事項3ないし10は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項11について
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項12に記載された「調剤の際に際に」が、「調剤の際に」の誤記であることは明らかであるから、訂正事項11は、誤記の訂正を目的とするものである。
よって、訂正事項11は、願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内のものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項12について
訂正事項12は、本件訂正前の請求項8に「前記一覧表が、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示したものであることを特徴とする請求項1から7何れかに記載の薬剤検査支援装置。」とあった記載に基づいて、本件訂正前の請求項21における「表示する一覧表を作成するステップ」を、「表示し、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示された一覧表を作成するステップ」と減縮するものである。
よって、訂正事項12は、願書に添付した明細書等に記載された事項の範囲内において、請求項21を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
また、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

カ 一群の請求項について
請求項2-20は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正前の請求項1ないし20に対応する本件訂正後の請求項1ないし20は、一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし20、21についての訂正を認める。

3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし21に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明21」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
処方箋情報に基づいて調剤され、分包袋に分包される薬剤を検査する薬剤検査支援装置において、
調剤され得る薬剤の薬剤マスタ画像を含む薬剤データベースからの薬剤マスタ画像と、調剤された薬剤を撮影した撮影画像とを照合し、前記撮影画像中に存在する薬剤がどの薬剤に該当するか判別する第1の薬剤判別手段と、
前記分包袋に分包される薬剤のー覧表であって、処方箋に従って調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像と、前記撮影画像における各薬剤と判別された薬剤領域画像とを位置を揃えて表示する一覧表を作成する一覧作成手段と備え、
前記一覧表が、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示されたものであることを特徴とする薬剤検査支援装置。
【請求項2】
前記一覧作成手段は、前記薬剤領域画像と前記薬剤マスタ画像との大きさが揃うように前記薬剤領域画像を拡大又は縮小して一覧表に表示することを特徴とする請求項1に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項3】
前記一覧作成手段が、前記薬剤領域画像と前記薬剤マスタ画像との方向が揃うように前記薬剤領域画像を回転させて一覧表に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項4】
前記一覧作成手段が、各薬剤の特徴空間上での位置と他の薬剤の特徴空間上での位置との差に従った並び順で前記薬剤マスタ画像を並べることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項5】
前記一覧作成手段が前記作成した一覧表を表示装置上に表示し、ユーザが前記一覧表上で薬剤領域画像を選択すると、該選択された薬剤領域画像を拡大表示することを特徴とする請求項1から4何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項6】
前記一覧表が、薬剤師によるチェック欄を更に含むことを特徴とする請求項1から5何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項7】
前記一覧作成手段が、前記作成した一覧表を前記処方箋情報に対応付けて記憶装置に記憶することを特徴とする請求項1から6何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項8】 (削除)
【請求項9】
前記処方箋情報に基づいて、調剤された薬剤及び個数が処方箋情報と合致するか否かを判断する検査結果判定手段を更に備え、前記一覧表が、検査結果判定手段による判断の結果を表示する欄を有することを特徴とする請求項1から7何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項10】
前記薬剤データベースから、前記調剤されるべき薬剤及び該薬剤に類似する薬剤の薬剤マスタ画像を取得する比較対象選定手段を更に備え、前記第1の薬剤判別手段が、前記撮影画像を前記薬剤データベースから取得された薬剤マスタ画像と照合するものであることを特徴とする請求項1から7及び9何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項11】
前記比較対象選定手段が、処方箋情報に基づいて、前記薬剤データベースから、処方箋情報に含まれる薬剤及び該薬剤に類似する薬剤の薬剤マスタ画像を取得するものであることを特徴とする請求項10に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項12】
前記比較対象選定手段が、調剤の際に使用された薬剤を特定するための払出し情報に基づいて、前記薬剤データベースから、前記払出し情報に含まれる薬剤及び該薬剤に類似する薬剤の薬剤マスタ画像を取得するものであることを特徴とする請求項10に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項13】
前記撮影画像が、前記調剤された薬剤が分包された分包袋を撮影した画像であることを特徴とする請求項1から7及び9から12何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項14】
前記分包袋には、服用時点ごとに服用すべき薬剤が分包されることを特徴とする請求項1から7及び9から13何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項15】
前記一覧作成手段が、前記一覧表において服用時点が同じ分包袋を連続的に並べて配置することを特徴とする請求項14に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項16】
前記第1の薬剤判別手段が、前記撮影画像から文字を抽出して認識し、認識した文字に基づいて前記撮影画像中に存在する薬剤を判別することを特徴とする請求項1から7及び9から15何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項17】
調剤された薬剤の撮影画像から各薬剤の外形特徴及びサイズ特徴を抽出し、該抽出した外形特徴及びサイズ特徴と、調剤されるべき薬剤の外形特徴及びサイズ特徴と比較して薬剤の一次判別を行う第2の薬剤判別手段を更に有し、
前記第1の薬剤判別手段が、前記第2の薬剤判別手段で判別不能な薬剤について、前記撮影画像と前記薬剤マスタ画像との照合を行うことを特徴とする請求項1から7及び9から16何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項18】
前記第2の薬剤判別手段が、撮像手段とは反対側から前記調剤された薬剤に照明光を照射して撮影された撮影画像から、外形特徴及びサイズ特徴を抽出するものであることを特徴とする請求項17に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項19】
前記薬剤データベースに前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が存在しないとき、ユーザに、前記撮影画像に含まれる調剤されるべき薬剤の部分画像の指定を促し、該指定された部分画像を薬剤マスタ画像として前記薬剤データベースに追加登録するデータベース登録手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から7及び9から18何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項20】
前記薬剤データベースに前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が存在しないとき、遠隔のマスタデータベースにアクセスし、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像を取得するデータベース登録手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から7及び9から18何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項21】
薬剤検査支援装置が、処方箋情報に基づいて調剤され、分包袋に分包される薬剤を検査する薬剤検査支援方法であって、
前記薬剤検査支援装置が、調剤され得る薬剤の薬剤マスタ画像を含む薬剤データベースからの薬剤マスタ画像と、調剤された薬剤を撮影した撮影画像とを照合し、前記撮影画像中に存在する薬剤がどの薬剤に該当するかを判別するステップと、
前記薬剤検査支援装置が、前記分包袋に分包される薬剤の一覧表であって、処方箋に従って調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像と、前記撮影画像における各薬剤と判別された薬剤領域画像とを位置を揃えて表示し、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示された一覧表を作成するステップとを有することを特徴とする薬剤検査支援方法。」

(2)取消理由の概要
本件訂正前の請求項1ないし21に係る特許に対して平成29年3月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1 本件特許の請求項1、3、7、9、13、14、16、21に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
甲第1号証:国際公開第2012/005004号

2 本件特許の請求項1-3、5-9、13-21に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された事項及び周知の事項(甲第7号証)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
甲第1号証:国際公開第2012/005004号
甲第4号証:特開2004-203433号公報
甲第7号証:特開2002-238980号公報

(3)甲号証の記載
ア 甲第1号証の記載事項等
甲第1号証(国際公開第2012/005004号)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「[0001] 本発明は、分包体に封入された錠剤の監査を支援する錠剤監査支援方法及び錠剤監査支援装置に関する。」

「[0002] 病院施設又は薬局などで行われる調剤作業は、処方箋に応じて過不足のない正確な調剤が行われることが望まれている。カプセル錠剤又は固形錠剤の調剤は、錠剤分包機を用いて、薬包シートの分包体に、処方箋に応じた錠剤を区分封入することにより行われる。」

「[0014] (実施の形態1)
図1は錠剤監査支援装置11の要部を示す概略構成図であり、図2は画像処理部19の基本動作を示すフローチャートである。
[0015] 図1に示すように、錠剤監査支援装置11は、移送部15と、撮像部18と、反射光照明部16と、透過光照明部17と、制御処理部31と、表示部20と、を備える。移送部15は、2枚のフィルム間に、調剤済の錠剤12を封入した分包体13を複数連ねた薬包シート14を、送り出す機構である。撮像部18の一例としてのCCDカメラは、薬包シート14を撮像することにより、画像を取得する。反射光照明部16の一例としての白色LEDは、薬包シート14を撮像部18と同じ側から照らす。透過光照明部17の一例としての赤色LEDは、薬包シート14を撮像部18と反対側から照らす。制御処理部31の一例としてのコンピュータは、画像処理部19を有する。画像処理部19は、撮像部18が取得した画像より、錠剤の画像である錠剤画像を作成する。表示部20の一例としてのLCDは、画像処理部19で作成された錠剤画像を表示する。」

「[0029] また、個別錠剤画像26は、個々の錠剤のカラー画像であるため、たとえば、個別錠剤画像26を横方向に並べて、表示部20に錠剤群画像23として表示することも可能である。これにより、反射光画像21のような錠剤12がバラバラの画像よりも、視認性に優れた表示が可能になり、分包体13のすべての錠剤12を確認しやすくなる。」

「[0031] 次に、処方箋情報等を利用する錠剤監査支援装置11について詳細を説明する。図1に示すように、錠剤監査支援装置11は、移送部15、反射光照明部16、透過光照明部17、撮像部18、制御処理部31及び表示部20を備える。それに加え、錠剤監査支援装置11は、バーコードリーダ32を備える。制御処理部31は、画像処理部19と共に、制御部33及び記録部34を有する。」

「[0033] バーコードリーダ32は、分包体13に印刷されたバーコードを読み取る。各分包体13のバーコードには、分包体13の処方箋コード及び分包体番号などが記録されている。制御処理部31の制御部33は、バーコードリーダ32で取得した分包体13の処方箋コードをデータ管理部36に問い合わせ、分包体13の処方箋情報を取得して保持する。なお、処方箋情報は、処方箋コード、患者コード、患者の名前、分包パターン、処方日数などの情報である。分包パターンとは、朝・昼・晩型の分包パターン又は朝・晩型の分包パターン又は晩型の分包パターンなどの、患者の一日分の分包体を指定するための情報である。たとえば、朝・昼・晩型の分包パターンでは、朝用の分包体、昼用の分包体、晩用の分包体が連続して周期的に所定日数分だけ続いている。通常、朝用の分包体及び昼用の分包体及び晩用の分包体に封入される錠剤は、錠剤の種類及び個数は異なっている。そのため、処方箋情報には、各分包体に封入される複数の錠剤に対して、各錠剤の錠剤コード及び錠剤名及び個数などが含まれている。」

「[0035] なお、データ管理部36は、医局で作成された処方箋情報等を保存するデータベースであり、錠剤監査支援装置11へ処方箋情報を送信する。また、データ管理部36は、錠剤監査支援装置11より処理の進行状況等の各種情報を受信し、保存する。また、データ管理部36のデータベースは、処方される錠剤に関して、各錠剤の錠剤コード又はサンプル画像又は形状又は大きさ(投影面積)又は体積又は色又は文字情報などを記憶している。」

「[0083] (実施の形態3)
図17は、本発明の実施の形態3の錠剤監査支援装置11における錠剤群画像61を示す図である。
[0084] 本発明の実施の形態3における錠剤監査支援装置11は、実施の形態1の錠剤監査支援装置11と同じ構成要素からなる。そして、画像処理部19で行われる画像処理ステップ(ステップS25とステップS26)において、処方箋情報として処方錠剤の錠剤サンプル画像62と処方個数をデータ管理部36より取得する。画像処理部19は、個別錠剤画像26と錠剤サンプル画像62を比較して、画像処理部19で得られたすべての個別錠剤画像26を処方箋情報の錠剤サンプル画像62への類似度合いに応じて分類する。画像処理部19は、分類ごとに、個別錠剤画像26の個数と処方箋情報の処方個数を比較する。画像処理部19は、両個数が同一であれば表示部20に「OK」を表示させ、両個数が不一致であれば表示部20に「NG」を表示させる。また、画像処理部19は、個別錠剤画像26の総個数と処方箋情報の錠剤の処方総個数を比較して、両個数が同一であれば「OK」を表示部20に表示させ、両個数が不一致であれば「NG」を表示部20に表示させる。
[0085] このような構成により、個別錠剤画像26の総個数と処方箋情報の錠剤の処方総個数との比較結果を表示しているので、錠剤個数の監査結果を容易に得ることができる。また、個別錠剤画像26を処方箋情報の錠剤サンプル画像62への類似度合いに応じて分類し、分類された個別錠剤画像26の個数と処方箋情報の処方個数との比較結果を表示しているので、種類別の錠剤個数の監査結果を容易に得ることができる。また、個別錠剤画像26の総個数のチェック結果と分類された個別錠剤画像26のチェック結果が両方とも「OK」ならば、監査の自動チェック結果を「OK」として表示し、いずれか一方が「NG」ならば監査の自動チェック結果を「NG」として表示する。これにより、分包体13に含まれる錠剤12に対して、処方箋情報の錠剤サンプル画像に基づく錠剤監査の支援を行うことができる。
[0086] また、錠剤サンプル画像62と個別錠剤画像26を並べた錠剤群画像61を作成して表示することにより、個別錠剤画像26の錠剤と錠剤サンプル画像62の比較が容易になり、監査者による正確かつ迅速な視認監査を支援することができる。すなわち、画像処理部19と表示部20は、処方箋情報に基づいて錠剤サンプル画像62を取得し、複数個のカラーの個別錠剤画像26の中から錠剤サンプル画像62に類似するカラーの個別錠剤画像26を推定し、推定したカラーの個別錠剤画像26を錠剤サンプル画像62の近傍に配置して表示している。これにより、カラーの個別錠剤画像26と錠剤サンプル画像62の比較が容易になり、視認監査が容易になる。」

また、図17の記載は、次のとおりである。

(ア)甲第1号証の段落[0001]より、「分包体に封入された錠剤の監査を支援する錠剤監査支援装置」との技術事項を読み取ることができる。

(イ)甲第1号証の段落[0084]には、「本発明の実施の形態3における錠剤監査支援装置11は、実施の形態1の錠剤監査支援装置11と同じ構成要素からなる。」と記載されているから、実施の形態3における錠剤監査支援装置11について、以下のとおり、実施の形態1に関する甲第1号証の記載より、次のa?dを読み取ることができる。

a 甲第1号証の段落[0031]より、錠剤監査支援装置11は、「反射光照明部16、透過光照明部17、撮像部18、制御処理部31及び表示部20を備え」、「制御処理部31は、画像処理部19と共に、制御部33及び記録部34を有する」ものであることが読み取れる。

b 甲第1号証の段落[0015]より、「撮像部18」「は、薬包シート14を撮像することにより、画像を取得」し、「画像処理部19は、撮像部18が取得した画像より、錠剤の画像である錠剤画像を作成する」ことが読み取れる。

c 甲第1号証の段落[0035]より、「データ管理部36は、医局で作成された処方箋情報等を保存するデータベースであり」、「処方される錠剤に関して、各錠剤の錠剤コード又はサンプル画像又は形状又は大きさ(投影面積)又は体積又は色又は文字情報などを記憶している」ことが読み取れる。

d 甲第1号証の段落[0033]より、「制御処理部31の制御部33は」、「分包体13の処方箋コードをデータ管理部36に問い合わせ、分包体13の処方箋情報を取得して保持」し、「処方箋情報には、各分包体に封入される複数の錠剤に対して、各錠剤の錠剤コード及び錠剤名及び個数などが含まれている」ことが読み取れる。

(ウ)甲第1号証の段落[0084]より、実施の形態3における錠剤監査支援装置11について、「画像処理部19で行われる画像処理ステップ」「において、処方箋情報として処方錠剤の錠剤サンプル画像62をデータ管理部36より取得」し、「画像処理部19は、個別錠剤画像26と錠剤サンプル画像62を比較して、画像処理部19で得られたすべての個別錠剤画像26を処方箋情報の錠剤サンプル画像62への類似度合いに応じて分類する」との技術事項を読み取ることができる。

(エ)甲第1号証の段落[0086]より、実施の形態3における錠剤監査支援装置11について、「画像処理部19と表示部20は、処方箋情報に基づいて錠剤サンプル画像62を取得し、複数個のカラーの個別錠剤画像26の中から錠剤サンプル画像62に類似するカラーの個別錠剤画像26を推定し、推定したカラーの個別錠剤画像26を錠剤サンプル画像62の近傍に配置して表示し」、「錠剤サンプル画像62と個別錠剤画像26を並べた錠剤群画像61を作成して表示する」との技術事項を読み取ることができる。

上記(ア)?(エ)より、甲第1号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「分包体に封入された錠剤の監査を支援する錠剤監査支援装置11であって、
反射光照明部16、透過光照明部17、撮像部18、制御処理部31及び表示部20を備え、制御処理部31は、画像処理部19と共に、制御部33及び記録部34を有し、
撮像部18は、薬包シート14を撮像することにより、画像を取得し、画像処理部19は、撮像部18が取得した画像より、錠剤の画像である錠剤画像を作成し、
データ管理部36は、医局で作成された処方箋情報等を保存するデータベースであり、処方される錠剤に関して、各錠剤の錠剤コード又はサンプル画像又は形状又は大きさ(投影面積)又は体積又は色又は文字情報などを記憶し、
制御処理部31の制御部33は、分包体13の処方箋コードをデータ管理部36に問い合わせ、分包体13の処方箋情報を取得して保持し、処方箋情報には、各分包体に封入される複数の錠剤に対して、各錠剤の錠剤コード及び錠剤名及び個数などが含まれており、
画像処理部19で行われる画像処理ステップにおいて、処方箋情報として処方錠剤の錠剤サンプル画像62をデータ管理部36より取得し、画像処理部19は、個別錠剤画像26と錠剤サンプル画像62を比較して、画像処理部19で得られたすべての個別錠剤画像26を処方箋情報の錠剤サンプル画像62への類似度合いに応じて分類し、
画像処理部19と表示部20は、処方箋情報に基づいて錠剤サンプル画像62を取得し、複数個のカラーの個別錠剤画像26の中から錠剤サンプル画像62に類似するカラーの個別錠剤画像26を推定し、推定したカラーの個別錠剤画像26を錠剤サンプル画像62の近傍に配置して表示し、錠剤サンプル画像62と個別錠剤画像26を並べた錠剤群画像61を作成して表示する、
錠剤監査支援装置11。」

イ 甲第4号証について
甲第4号証(特開2004-203433号公報)には、図13とともに、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は病院や調剤薬局などにおいて、処方箋により指定された所定数量の薬剤を容器(袋や瓶など)に充填して供給する薬剤供給装置に関するものである。」

「【0039】
次に、薬剤フィーダ57の動作について説明する。この薬剤フィーダ57はタブレットケース3・・に収納されていない薬剤、即ち、さほど頻繁に処方されない薬剤の包装、或いは、タブレットケース3からの薬剤に追加して包装するために用いられるものであり、この薬剤フィーダ57にて包装すべき薬剤に関するデータも前述の処方データに含まれてパソコンPCから送信されてくる。
【0040】
今、薬剤フィーダ57を用いて包装すべき薬剤として錠剤A、B、C、Dがあり、朝、昼、夕、就寝前の服用時期別の数量が図13の如き処方データであったものとする。図13は1週間の処方データを示しており、日曜、火曜、水曜、金曜及び土曜は同一の処方であるが、月曜と木曜(例えば透析日)は異なるものとなっている。」

また、図13の記載は、次のとおりである。

よって、甲第4号証には、「包装すべき薬剤に関するデータとして、包装すべき薬剤と服用時期とを行と列に配置してなる処方データ」が記載されていると認められる。

ウ 甲第7号証について
甲第7号証(特開2002-238980号公報)の段落【0008】には、「また、分包順序には、服用時期を時間順に「朝、昼、夕、朝、昼、夕」と繰り返す反復分包と、服用時期を「朝、朝、昼、昼、夕、夕」と連続させる連続分包とがあり、両方の指定に対応できなければならない。」と記載されている。

(4)対比・判断
ア 対比
本件特許明細書の段落【0080】?【0082】の記載を踏まえつつ、本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)甲第1号証の段落[0002]に「カプセル錠剤又は固形錠剤の調剤は、錠剤分包機を用いて、薬包シートの分包体に、処方箋に応じた錠剤を区分封入することにより行われる。」と記載されていることから、引用発明において、「分包体13」に封入される「錠剤」の「調剤」が、「処方箋に応じ」て行われていることは明らかである。
よって、引用発明における「分包体に封入された錠剤の監査を支援する錠剤監査支援装置11」は、後述する相違点1を除いて、本件発明1における「処方箋情報に基づいて調剤され、分包袋に分包される薬剤を検査する薬剤検査支援装置」に相当するといえる。

(イ)引用発明における「データ管理部36」は、「医局で作成された処方箋情報等を保存するデータベースであり、処方される錠剤に関して、各錠剤の」「サンプル画像」「を記憶し」ているから、本件発明1における「調剤され得る薬剤の薬剤マスタ画像を含む薬剤データベース」に相当する。
また、引用発明における「データ管理部36より取得」される「錠剤サンプル画像62」は、本件発明1における「薬剤データベースからの薬剤マスタ画像」に相当する。

(ウ)引用発明において、「撮像部18」が「薬包シート14を撮像することにより、画像を取得し」、「画像処理部19」が「撮像部18が取得した画像より」「作成し」た「錠剤の画像である錠剤画像」が、本件発明1における「調剤された薬剤を撮影した撮影画像」に相当する。

(エ)引用発明における「画像処理部19」は、「個別錠剤画像26と錠剤サンプル画像62を比較して、画像処理部19で得られたすべての個別錠剤画像26を処方箋情報の錠剤サンプル画像62への類似度合いに応じて分類」している。ここで、「類似度合いに応じて分類」するとは、具体的には、「複数個のカラーの個別錠剤画像26の中から錠剤サンプル画像62に類似するカラーの個別錠剤画像26を推定」することであるから、引用発明において、上記「類似度合いに応じて分類」する「画像処理部19」とは、個別錠剤画像26が、どの錠剤サンプル画像62に該当するかを判別するための手段を示したものであるといえる。
よって、引用発明における「画像処理部19」は、上記「(イ)」及び「(ウ)」における対比を踏まえれば、本件発明1における「調剤され得る薬剤の薬剤マスタ画像を含む薬剤データベースからの薬剤マスタ画像と、調剤された薬剤を撮影した撮影画像とを照合し、前記撮影画像中に存在する薬剤がどの薬剤に該当するか判別する第1の薬剤判別手段」に相当するといえる。

(オ)引用発明における「画像処理部19と表示部20」は、「錠剤サンプル画像62に類似する」と「推定したカラーの個別錠剤画像26を錠剤サンプル画像62の近傍に配置して表示し、錠剤サンプル画像62と個別錠剤画像26を並べた錠剤群画像61を作成して表示する」ものであるから、上記「(ア)」における対比を踏まえれば、本件発明1における「前記分包袋に分包される薬剤の一覧表であって、処方箋に従って調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像と、前記撮影画像における各薬剤と判別された薬剤領域画像とを位置を揃えて表示する一覧表を作成する一覧作成手段」とは、「前記分包袋に分包される薬剤を並べた表示形態であって、処方箋に従って調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像と、前記撮影画像における各薬剤と判別された薬剤領域画像とを位置を揃えて表示する表示形態を作成する作成手段」である点で共通する。

以上のことから、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「処方箋情報に基づいて調剤され、分包袋に分包される薬剤を検査する薬剤検査支援装置において、
調剤され得る薬剤の薬剤マスタ画像を含む薬剤データベースからの薬剤マスタ画像と、調剤された薬剤を撮影した撮影画像とを照合し、前記撮影画像中に存在する薬剤がどの薬剤に該当するか判別する第1の薬剤判別手段と、
前記分包袋に分包される薬剤を並べた表示形態であって、処方箋に従って調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像と、前記撮影画像における各薬剤と判別された薬剤領域画像とを位置を揃えて表示する表示形態を作成する作成手段と備えたことを特徴とする薬剤検査支援装置。」

(相違点1)
本件発明1では、
(a)分包袋に分包される薬剤を並べた表示形態が「前記分包袋に分包される薬剤の一覧表」であって、「前記一覧表が、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示されたものであ」り、また、
(b)撮影画像における各薬剤と判別された薬剤領域画像とを位置を揃えて表示する表示形態を作成する作成手段が、「一覧表を作成する一覧作成手段」であるのに対し、
引用発明では、「画像処理部19と表示部20」が、「錠剤サンプル画像62に類似する」と「推定したカラーの個別錠剤画像26」を「錠剤サンプル画像62の近傍に配置して表示し、錠剤サンプル画像62」と、「分包体13」に封入される「錠剤」についての「個別錠剤画像26」とを「並べた錠剤群画像61を作成して表示」しているものの、当該表示形態が、「一覧表」であるといえるか、また、錠剤サンプル画像62と、分包体13に封入された錠剤についての個別錠剤画像26とを並べた表示形態を作成する「画像処理部19と表示部20」が、一覧表を作成する「一覧作成手段」であるといえるのか、明らかでない点。

イ 判断
(ア)特許法第29条第1項第3号について
上記(相違点1)は、少なくとも「ア」「(相違点1)」「(a)」の構成を本件発明1が備えている点で、実質的な相違点であるから、本件発明1は、引用発明ではない。
また、本件発明3、7、9、13、14、16も、上記相違点1に係る本件発明1の構成を発明特定事項としているから、引用発明ではない。
さらに、本件発明21も、上記相違点1に係る本件発明1の構成と同様の構成を発明特定事項としているから、引用発明ではない。
よって、本件請求項1、3、7、9、13、14、16、21に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。

(イ)特許法第29条第2項について
甲第4号証には、「包装すべき薬剤に関するデータとして、包装すべき薬剤と服用時期とを行と列に配置してなる処方データ」が記載されているが、該処方データは、「処方箋により指定された所定数量の薬剤を容器(袋や瓶など)に充填」(甲第4号証の段落【0001】)する際の、「包装すべき薬剤に関するデータ」であって、分包袋に封入された「薬剤」についてのデータではないから、甲第4号証に示されたデータ形式を引用発明において採用し、上記「ア」「(相違点)」「(a)」に係る本件発明1の構成とすべき動機付けは見いだせない。
また、甲第4号証に示されたデータ形式を引用発明において採用したとしても、「錠剤サンプル画像62」と服用時期とを行と列に配置したデータ、あるいは「推定したカラーの個別錠剤画像26」と服用時期とを行と列に配置したデータが表示されることとなるにすぎず、「錠剤サンプル画像62」と服用時期とを行と列に配置し、「推定したカラーの個別錠剤画像26」が「錠剤サンプル画像62」に対応した位置に表示されることにはならない。
さらに、甲第2号証(特開2011-233135号公報)、甲第3号証(特開平8-137946号公報)、甲第5号証(特開平11-206854号公報)、甲第6号証(特開2007-54430号公報)及び甲第7号証(特開2002-238980号公報)にも、上記相違点1に係る本件発明1の構成は記載されていない。
そして、上記相違点1に係る事項により、本件発明1は、「本実施形態では、一覧作成手段18が、処方箋に従って調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像と、撮影画像における各薬剤と判別された薬剤領域画像とを位置を揃えて表示する一覧表を作成する。例えば一覧表の列を薬剤に対応させ、各列に、薬剤マスタ画像と当該薬剤と判別された薬剤領域画像とを表示することで、薬剤師は、各分包袋に処方箋通りに薬剤が分包されているか否かを、容易に目視確認することができる。また、薬剤判別手段13にて誤判定があったときは、一列に並ぶ薬剤領域画像の中に異なる薬剤の画像が混じることになるため、薬剤判別手段13の誤判定を容易に認識することができる。」(明細書段落【0058】)という顕著な作用効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、上記「ア」「(相違点1)」「(a)」に係る構成を備える点で、引用発明及び甲第2-7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
また、本件発明2、3、5-7、9、13-20も、上記「ア」「(相違点1)」「(a)」に係る本件発明1の構成を発明特定事項としているから、引用発明及び甲第2-7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものではない。
さらに、本件発明21も、上記「ア」「(相違点1)」「(a)」に係る本件発明1の構成と同様の構成を発明特定事項としているから、引用発明及び甲第2-7号証に記載された事項に基いて、当業者が容易になし得たものではない。

以上のとおり、本件請求項1-3、5-7、9、13-21に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(5)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人が、本件訂正前の特許請求の範囲及び明細書に関して行った主張、並びにこれに対する当審の判断は、以下のとおりである。
ア 請求項4について(特許法第36条第4項第1号)
(特許異議申立人の主張)
(ア)請求項4には、「各薬剤の特徴空間上での位置と他の薬剤の特徴空間上での位置との差に従った並び順で前記薬剤マスタ画像を並べる」と記載されている。「特徴空間上での位置との差」を求めるには、特徴空間を形成する特徴量の設定が必要になるが、特徴量を設定する具体的な基準や手順等が記載されていない。

(イ)また、特徴空間上での位置、すなわち特徴量がわかったとしても、特徴量との差に従った並び順が明確でなく、また、異議申立書第46頁に提示した設例では、特徴量との差に従った並び順に矛盾が生じる場合がある。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が請求項4に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。

(当審の判断)
(ア)上記「(特許異議申立人の主張)」「(ア)」について、本件明細書の段落【0078】に「外形特徴及びサイズ特徴」と例示されているとおり、薬剤の特徴量としては、例えば、外形特徴及びサイズ特徴を数値化したものを用いればよいことは、常識的に明らかである。

(イ)次に、上記「(特許異議申立人の主張)」「(イ)」について、本件明細書の段落【0047】には「一覧作成手段18は、一覧表の作成に際しては、薬剤間の類似度に従って薬剤をソートして並べてもよい。例えば、各薬剤の薬剤マスタ画像から特徴量を抽出したときの各薬剤の特徴空間上での位置と他の薬剤の特徴空間上での位置との差に従った並び順で薬剤(薬剤マスタ画像)を並べてもよい。例えば、他の薬剤との類似度が低い(特徴量の差が大きい)薬剤ほど図4の紙面向って左側に配置し、類似度が高い(特徴量の差が小さい)薬剤ほど右側に配置するようにしてもよい。その場合、紙面向って左側の薬剤は一目で判別が可能な薬剤で、右に向かっていくほど類似した薬剤となり、注意深く観察する必要がある薬剤になる。」と、薬剤間の類似度に従った薬剤の並べ形の例が、具体的に示されている。
また、請求人の提示した設例は、薬剤間の特徴量の差について、距離に関する定理である三角不等式(薬剤x,y間の特徴量の差をd(x,y)と記載すると、任意の薬剤X、Y、Z間の特徴量の差について、d(X,Z)≦d(X,Y)+d(Y,Z)の関係式が満たされていること)が満足されていない希な設例であって、本件請求項4に係る発明について、このような希な設例についてまで、実施可能であることが説明されていなければならないものではない。

(ウ)よって、本件請求項4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

イ 請求項4について(特許法第36条第6項第1号)
特許異議申立人は、上記「ア」「(特許異議申立人の主張)」「(ア)」に記載したのと同様の理由により、請求項4に係る発明は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではない旨主張するが、該主張に理由がないことは、上記「ア」「(当審の判断)」「(ア)」にて述べたとおりである。
よって、本件請求項4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしてない特許出願に対してされたものではない。

ウ 請求項9について(特許法第36条第6項第2号)
異議申立人は、調剤された薬剤の個数を判断する場合において、処方箋情報のみに基づいて個数が処方箋情報と合致するか否か判断することはできないから、調剤された薬剤の個数を判断する具体的手段等の記載のない請求項9の記載は、特許を受けようとする発明が明確でない、と主張している。
しかし、本件特許明細書の段落【0034】に「リーダ32は、処方箋情報を読み取る。リーダ32は、例えば紙に記載された処方箋からOCR(Optical Character Recognition)により処方された薬剤、その個数、及び服用時点などの情報を読み取る。」(下線は、当審で付与した。)と記載されているとおり、異議申立人の主張は、「処方箋情報のみに基づいて個数が処方箋情報と合致するか否か判断することはできない」とする前提において失当である。
よって、本件請求項9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

エ 請求項4、10-12に係る発明ついて(特許法第29条第2項)
特許異議申立人は、請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、請求項10-12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、10-12に係る発明についての特許は、取り消されるべきものである旨主張している。
しかし、本件訂正後の請求項4、10-12に係る発明(本件発明4、10-12)は、上記「(4)」「ア」「(相違点1)」「(a)」に係る本件発明1の構成を発明特定事項としているから、甲第1号証?甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないことは、上記「(4)」「イ」「(イ)」で述べたとおりであって、特許異議申立人の主張は理由がない。
よって、本件請求項4、10-12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

オ まとめ
よって、異議申立人の主張は理由がない。

4 むすび
以上のとおり、本件請求項1-7、9-21に係る特許については、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1-7、9-21に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項8に係る特許は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項8に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処方箋情報に基づいて調剤され、分包袋に分包される薬剤を検査する薬剤検査支援装置において、
調剤され得る薬剤の薬剤マスタ画像を含む薬剤データベースからの薬剤マスタ画像と、調剤された薬剤を撮影した撮影画像とを照合し、前記撮影画像中に存在する薬剤がどの薬剤に該当するか判別する第1の薬剤判別手段と、
前記分包袋に分包される薬剤の一覧表であって、処方箋に従って調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像と、前記撮影画像における各薬剤と判別された薬剤領域画像とを位置を揃えて表示する一覧表を作成する一覧作成手段と備え、
前記一覧表が、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示されたものであることを特徴とする薬剤検査支援装置。
【請求項2】
前記一覧作成手段は、前記薬剤領域画像と前記薬剤マスタ画像との大きさが揃うように前記薬剤領域画像を拡大又は縮小して一覧表に表示することを特徴とする請求項1に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項3】
前記一覧作成手段が、前記薬剤領域画像と前記薬剤マスタ画像との方向が揃うように前記薬剤領域画像を回転させて一覧表に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項4】
前記一覧作成手段が、各薬剤の特徴空間上での位置と他の薬剤の特徴空間上での位置との差に従った並び順で前記薬剤マスタ画像を並べることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項5】
前記一覧作成手段が前記作成した一覧表を表示装置上に表示し、ユーザが前記一覧表上で薬剤領域画像を選択すると、該選択された薬剤領域画像を拡大表示することを特徴とする請求項1から4何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項6】
前記一覧表が、薬剤師によるチェック欄を更に含むことを特徴とする請求項1から5何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項7】
前記一覧作成手段が、前記作成した一覧表を前記処方箋情報に対応付けて記憶装置に記憶することを特徴とする請求項1から6何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項8】 (削除)
【請求項9】
前記処方箋情報に基づいて、調剤された薬剤及び個数が処方箋情報と合致するか否かを判断する検査結果判定手段を更に備え、前記一覧表が、検査結果判定手段による判断の結果を表示する欄を有することを特徴とする請求項1から7何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項10】
前記薬剤データベースから、前記調剤されるべき薬剤及び該薬剤に類似する薬剤の薬剤マスタ画像を取得する比較対象選定手段を更に備え、前記第1の薬剤判別手段が、前記撮影画像を前記薬剤データベースから取得された薬剤マスタ画像と照合するものであることを特徴とする請求項1から7及び9何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項11】
前記比較対象選定手段が、処方箋情報に基づいて、前記薬剤データベースから、処方箋情報に含まれる薬剤及び該薬剤に類似する薬剤の薬剤マスタ画像を取得するものであることを特徴とする請求項10に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項12】
前記比較対象選定手段が、調剤の際に使用された薬剤を特定するための払出し情報に基づいて、前記薬剤データベースから、前記払出し情報に含まれる薬剤及び該薬剤に類似する薬剤の薬剤マスタ画像を取得するものであることを特徴とする請求項10に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項13】
前記撮影画像が、前記調剤された薬剤が分包された分包袋を撮影した画像であることを特徴とする請求項1から7及び9から12何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項14】
前記分包袋には、服用時点ごとに服用すべき薬剤が分包されることを特徴とする請求項1から7及び9から13何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項15】
前記一覧作成手段が、前記一覧表において服用時点が同じ分包袋を連続的に並べて配置することを特徴とする請求項14に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項16】
前記第1の薬剤判別手段が、前記撮影画像から文字を抽出して認識し、認識した文字に基づいて前記撮影画像中に存在する薬剤を判別することを特徴とする請求項1から7及び9から15何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項17】
調剤された薬剤の撮影画像から各薬剤の外形特徴及びサイズ特徴を抽出し、該抽出した外形特徴及びサイズ特徴と、調剤されるべき薬剤の外形特徴及びサイズ特徴と比較して薬剤の一次判別を行う第2の薬剤判別手段を更に有し、
前記第1の薬剤判別手段が、前記第2の薬剤判別手段で判別不能な薬剤について、前記撮影画像と前記薬剤マスタ画像との照合を行うことを特徴とする請求項1から7及び9から16何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項18】
前記第2の薬剤判別手段が、撮像手段とは反対側から前記調剤された薬剤に照明光を照射して撮影された撮影画像から、外形特徴及びサイズ特徴を抽出するものであることを特徴とする請求項17に記載の薬剤検査支援装置。
【請求項19】
前記薬剤データベースに前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が存在しないとき、ユーザに、前記撮影画像に含まれる調剤されるべき薬剤の部分画像の指定を促し、該指定された部分画像を薬剤マスタ画像として前記薬剤データベースに追加登録するデータベース登録手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から7及び9から18何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項20】
前記薬剤データベースに前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が存在しないとき、遠隔のマスタデータベースにアクセスし、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像を取得するデータベース登録手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から7及び9から18何れかに記載の薬剤検査支援装置。
【請求項21】
薬剤検査支援装置が、処方箋情報に基づいて調剤され、分包袋に分包される薬剤を検査する薬剤検査支援方法であって、
前記薬剤検査支援装置が、調剤され得る薬剤の薬剤マスタ画像を含む薬剤データベースからの薬剤マスタ画像と、調剤された薬剤を撮影した撮影画像とを照合し、前記撮影画像中に存在する薬剤がどの薬剤に該当するかを判別するステップと、
前記薬剤検査支援装置が、前記分包袋に分包される薬剤の一覧表であって、処方箋に従って調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像と、前記撮影画像における各薬剤と判別された薬剤領域画像とを位置を揃えて表示し、行及び列の一方が処方箋に従って調剤されるべき薬剤に対応し、他方が分包袋に対応しており、前記調剤されるべき薬剤の薬剤マスタ画像が前記行及び列の一方に並べて配置され、かつ、各分包袋について、前記撮影画像に含まれる各薬剤の薬剤領域画像が前記判別された薬剤に対応した位置に表示された一覧表を作成するステップとを有することを特徴とする薬剤検査支援方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-14 
出願番号 特願2012-213634(P2012-213634)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G06M)
P 1 651・ 113- YAA (G06M)
P 1 651・ 121- YAA (G06M)
P 1 651・ 536- YAA (G06M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安田 昌司  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清水 稔
須原 宏光
登録日 2016-04-15 
登録番号 特許第5916032号(P5916032)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 薬剤検査支援装置及び方法  
代理人 柳田 征史  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 佐久間 剛  
代理人 福田 浩志  
代理人 福田 浩志  
代理人 佐久間 剛  
代理人 加藤 和詳  
代理人 柳田 征史  
代理人 中島 淳  

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