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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1333212
異議申立番号 異議2017-700122  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-09 
確定日 2017-08-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5965657号発明「タイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5965657号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-15]及び訂正明細書について訂正することを認める。 特許第5965657号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由
第1 主な手続の経緯等

特許第5965657号(設定登録時の請求項の数は15。以下、「本件特許」という。)は、平成24年2月7日にされた特願2012-24462号の出願に係るものであって、平成28年7月8日に設定登録された。
特許異議申立人 三和圭二郎(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成29年2月9日(受入日:同年同月10日)に、本件特許の請求項1ないし15に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。
当合議体において、平成29年4月10日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、同年6月12日(受入日:同年同月同日)に訂正請求書(当該訂正請求書による訂正を以下、「本件訂正」という。)及び意見書を提出したので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人から意見書が提出されなかったものである。


第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正による訂正の内容は以下の(1)ないし(3)のとおりである。 なお、下線部は訂正個所である。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含むゴム成分」とあるのを、
「(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含む合成ゴム成分」 に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用している請求項2ないし15についても同様の訂正をする。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「(B)ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、」
とあるのを、
「(B)ロジン系樹脂、C_(5)留分とC_(9)留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C_(9)留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、」
に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用している請求項2ないし15についても同様の訂正をする。

(3) 訂正事項3
明細書の段落【0063】に、
「また、本発明のコム組成物には、」
とあるのを、
「また、本発明のゴム成分には、」
に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前請求項1において、「(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含むゴム成分」と特定しているが、「合成ゴムを含むゴム成分」の記載からみて、ゴム成分には、天然ゴムを含み得ると解し得るものである。
これに対して、訂正後の請求項1は、「(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含む合成ゴム成分」とするものであるから、ゴム成分が合成ゴム成分であり、実質的に天然ゴムを含まないことを明確化するものである。
したがって、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2) 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1において、「(B)ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、」とあるのを、訂正後では、テルペン系樹脂を削除し、さらに、「石油系樹脂」にあっては、「C_(5)留分とC_(9)留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C_(9)留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂」に減縮し、「フェノール系樹脂」を、「アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂」に減縮するものである。
したがって、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3) 訂正事項3について
訂正前の明細書段落【0063】の「また、本発明のコム組成物には、天然ゴムを含まない」との記載における「コム」は「ゴム」の明らかな誤記であり、また、「組成物」は、特許請求の範囲との用語の整合性を考慮すると、「成分」の誤記であると認めることができるから、「また、本発明のゴム成分には、」とする当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正請求は、全ての請求項について行われているので、当該明細書の訂正に係る全ての請求項について行われている。

(4) そして、これら訂正は一群の請求項ごとに適法に請求されたものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1ないし3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正することを認める。


第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認容されるので、本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明15」という。)は、平成29年6月12日(受入日:同年同月同日)に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
(A)(A-1)シス-1,4-結合の含有量が75モル%以上の共役ジエン系重合体の活性末端を、少なくともヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性してなる変性共役ジエン系重合体10?50質量%と、(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含む合成ゴム成分と、ゴム成分100質量部に対し、(B)ロジン系樹脂、C_(5)留分とC_(9)留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C_(9)留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80?200℃である熱可塑性樹脂5?60質量部と(D)オイル30質量部以上を含むことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
(A)ゴム成分100質量部に対し、さらに(C-1)シリカ50?95質量%及び(C-2)カーボンブラック50?5質量%からなる補強用充填剤40?140質量部を加えた請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
(A)ゴム成分100質量部に対し、(D)オイル50?135質量部を加えた請求項2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
(E)シランカップリング剤を(C-1)成分のシリカに対して5?20質量%の割合で含む請求項2又は3に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
(A)ゴム成分100質量部に対し、(F)下記一般式(VII)で表される無機フィラー5?30質量部を含む請求項1?4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
aM^(1)・bSiO_(y)・cH_(2)O・・・・・・(VII)
[式中、M1 は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、a、b、y及びcは、それぞれ1?5の整数、0?10の整数、2?5の整数、及び0?10の整数である。]
【請求項6】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下に第1次変性と同じ又は異なるヒドロカルビルオキシシラン化合物により第2次変性してなるものである請求項1?5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものである請求項1?5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項8】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下に末端に導入されたヒドロカルビルオキシシラン化合物残基と未反応ヒドロカルビルオキシシラン化合物とを縮合反応させてなるものである請求項1?5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項9】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、第2次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものである請求項6に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項10】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、縮合反応後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものである請求項8に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項11】
ヒドロカルビルオキシシラン化合物が、下記一般式(I)、(II)、(III)で表わされる化合物及びその部分縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1?10のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
一般式(I)
【化1】

[式中、A^(1)は、(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R^(1)は単結合又は二価の不活性炭化水素基であり、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、nは0?2の整数であり、R^(2)が複数ある場合、複数のR^(2)は同一でも異なっていてもよく、OR^(3)が複数ある場合、複数のOR^(3)は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない]
一般式(II)
【化2】

[式中、A^(2)は、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、スルフィド及びマルチスルフィドの中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R^(4)は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、mは0?2の整数であり、R^(5)が複数ある場合、複数のR^(5)は同一でも異なっていてもよく、OR^(6)が複数ある場合、複数のOR^(6)は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。]
一般式(III)
【化3】

[式中、A^(3)は、アルコール、チオール、一級アミン及びそのオニウム塩、環状二級アミン及びそのオニウム塩、非環状二級アミン及びそのオニウム塩、環状三級アミンのオニウム塩、非環状三級アミンのオニウム塩、アリール又はアリールアルキルSn結合を有する基、スルフォニル、スルフィニル及びニトリルから選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基、R^(7)は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R^(8)及びR^(9)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、qは0?2の整数であり、R^(8)が複数ある場合、複数のR^(8)は同一でも異なっていてもよく、OR^(9)が複数ある場合、複数のOR^(9)は同一でも異なっていてもよい。]
【請求項12】
多価アルコールのカルボン酸部分エステルが、ソルビタン脂肪酸のモノエステル,ジエステル又はトリエステルである請求項7、9及び10のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項13】
縮合促進剤が、下記一般式(IV)、一般式(V)及び一般式(VI)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種と水とからなるものである請求項6又は8に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
一般式(IV)
Sn(OCOR^(10))_(2)・・・・・・(IV)
[式中、R^(10)は、炭素数2?19の有機基であり、複数ある場合は同一でも異なっていてもよい]
で表される酸化数2のスズの炭素数3?20のカルボン酸塩、
一般式(V)
R^(11)_(r)SnA^(4)_(t)B^(1)_((4-t-r))・・・・・・(V)
[式中、rは1?3の整数、tは1又は2の整数であり、かつ、t+rは3又は4の整数である。R^(11)は炭素数1?30の脂肪族炭化水素基、B^(1)はヒドロキシル基又はハロゲンである。A^(4)は、(a)炭素数2?30の脂肪族カルボン酸残基、(b)炭素数5?30の1,3-ジカルボニル含有基、(c)炭素数3?30のヒドロカルビルオキシ基、及び(d)炭素数1?20のヒドロカルビル基及び/又は炭素数1?20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換(同一でも異なっていてもよい)されたシロキシ基から選ばれる基であり、R^(11)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、A^(4)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい]
で表される酸化数4のスズ化合物、
一般式(VI)
A^(5)_(x)TiB^(2)_((4-x) )・・・・・・(VI)
[式中、xは2又は4の整数である。A^(5)は(1)炭素数3?30のヒドロカルビルオキシ基、(2)炭素数1?30のアルキル基及び/又は炭素数1?20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換されたシロキシ基であり、A^(5)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい。B^(2)は、炭素数5?30の1,3-ジカルボニル含有基であり、B^(2)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい]
で表される酸化数4のチタン化合物。
【請求項14】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、変性ポリブタジエンである請求項1?13のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項15】
請求項1?14のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドゴムに用いた空気入りタイヤ。」


第4 取消理由の概要
平成29年4月10日付けで通知した取消理由は、本件特許の請求項1ないし15に係る発明は、本件特許の出願日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであり(以下、「取消理由A」という。)、また、本件特許の請求項1ないし15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由B」という。)、というものである。
刊行物1:特開2007-262206号公報(異議申立人の証拠方法である甲第1号証。以下、「甲1文献」という。)
刊行物2:特開2009-263587号公報(異議申立人の証拠方法である甲第2号証。以下、「甲2文献」という。)


第5 当合議体の判断

当合議体は、以下述べるように、本件特許の本件訂正発明1ないし15は取消理由で通知した刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、その発明に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、取り消すべきものではないと判断する。
また、当合議体は、以下述べるように、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものではないと判断する。
そして、当合議体は、以下述べるように、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものではないと判断する。
さらに、当合議体は、以下述べるように、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものではないと判断する。

1 取消理由Aについて
(1) 甲1文献の記載及び甲1発明
甲1文献の実施例1及び特許請求の範囲の記載からみて、甲1文献には、「SBR-1を70質量%、SBR-2を15質量%、製造例1で製造された変性ポリブタジエンAである、シス-1,4-結合の含有量が96.8%であり、活性末端が3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPMOS)により変性してなる変性BRを15質量%、SBR-1に含まれているオイルを26.3質量%、A/OMIXオイルを7.5質量%、スピンドルオイルを10質量%、カーボンブラックを15質量%、シリカを75質量%、シランカップリング剤を6質量%、を含有するタイヤトレッド用ゴム組成物。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(2) 本件訂正発明1と甲1発明との対比
ア 本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の相違点1で相違し、当該相違点以外の点では一致するものであると認められる。

(相違点1)
本件特許発明1では、タイヤトレッド用ゴム組成物に、「(B)ロジン系樹脂、C_(5)留分とC_(9)留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C_(9)留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80?200℃である熱可塑性樹脂5?60質量部」を含むことが特定されているのに対し、甲1発明では上記の点が特定されていない点。

イ 以下、相違点1について検討する。
甲1文献には、タイヤトレッド用ゴム組成物に、ロジン系樹脂、C_(5)留分とC_(9)留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C_(9)留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80?200℃である熱可塑性樹脂5?60質量部を含むことについては、何ら記載されておらず、それを示唆する記載もない。
そして、甲2文献には、オールシーズン用タイヤのトレッドに好適なゴム組成物であり(段落【0099】)、ゴム成分に、石油樹脂に例示される脂肪族系炭化水素樹脂、脂環式系炭化水素樹脂、テルペン樹脂及びテルペンフェノール樹脂から選ばれた少なくとも1種である、軟化点が、50?150℃である熱可塑性樹脂を、ゴム成分100質量部に対して、前記熱可塑性樹脂5?20質量部を配合させることが開示されている(請求項1、20?22、段落【0075】?【0080】)ものの、タイヤトレッド用ゴム組成物に、ロジン系樹脂、C_(5)留分とC_(9)留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C_(9)留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80?200℃である熱可塑性樹脂5?60質量部を含むことについては、何ら記載されておらず、それを示唆する記載もない。
そうすると、甲1発明に、上記相違点1に係る構成について何ら記載や示唆のない甲1文献や甲2に記載された事項とを組み合わせても、タイヤトレッド用ゴム組成物に、ロジン系樹脂、C_(5)留分とC_(9)留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C_(9)留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80?200℃である熱可塑性樹脂5?60質量部を含むことは、たとえ当業者であっても容易になし得ることであるとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1発明及び甲1?甲2文献に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(3) 本件訂正発明2ないし15について
本件請求項2ないし15は、直接あるいは間接的に本件請求項1または本件請求項2を引用するものであるから、本件訂正発明2ないし15は、(2)で述べたのと同じ理由により、甲1発明及び甲1?甲2文献に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

2 取消理由Bについて
取消理由Bは、上記訂正事項1による訂正により、本件請求項1の(A)のゴム成分中に、天然ゴムを含まないことが明らかとなったことから、取消理由Bは解消している。
したがって、本件請求項1、本件請求項1を直接又は間接的に引用する本件請求項2ないし15に係る発明は、明確でないものとはいえない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

(1)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)について
異議申立人は、特許異議申立書において、請求項1、6ないし15に係る特許は、充填剤の特定がなく、充填剤を実質的に含まないタイヤトレッドゴム用組成物が含まれるところ、充填剤を実質的に含まないタイヤトレッド用ゴム組成物を当業者が実施することができないと主張している。
しかしながら、少なくとも本件特許明細書の実施例の記載に基づけば、その限りにおいて本件訂正発明を実施することができることは明らかであって、この点は異議申立人も争っていない。
そして、本件訂正発明1、6ないし15において、本件特許明細書の実施例において具体的に用いられているゴム組成物以外のもの、例えば、充填剤を実質的に含まないものにおいても、本件特許明細書の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、原料の配合を適宜変更することにより、当業者であれば本件訂正発明1、6ないし15に係るタイヤトレッドゴム用組成物を容易に製造することができると認められるのであるから、本件特許明細書の記載が、当業者にとり過度の試行錯誤が必要になるものであるとはいえない。
そうすると、本件特許の請求項1、6ないし15に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでないから、この主張は採用することができない。

(2)サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について
異議申立人は、特許異議申立書において、本件請求項1、6ないし15に係る特許は、充填剤の特定がなく、充填剤を実質的に含まないタイヤトレッドゴム用組成物が含まれるところ、実施例、比較例において、充填剤を実質的に含まない組成物は製造されていないから、明細書の記載を請求項1に記載の範囲まで拡張することはできないと主張している。
しかしながら、本件特許明細書の記載によれば、特にその実施例及び比較例を対比すれば、本件訂正発明1、6ないし15の構成を備えることにより、グリップ性能に優れると共に、耐摩耗性を有するタイヤトレッド用ゴム組成物を提供するという本件訂正発明1、6ないし15が解決しようとする課題を解決することができることが理解される。
そうすると、確かに、本件特許明細書の実施例において具体的に用いられているのは、充填剤を使用したもののみではあるものの、現在の明細書の記載及び提出された証拠からは、本件訂正発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物により、本件の課題が解決できると認識できるから、本件特許請求の範囲の記載は発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えているとはいえない。
また、異議申立人は、証拠として、本件特許明細書に記載の実施例の条件で充填剤の量や有無を追試したとする甲第3号証の実験報告書を提出し、シリカを含まずカーボンブラックを含む実験例I、カーボンブラックを含まずシリカを含む実験例II、充填剤を含まない実験例IIIのゴム組成物が、比較例に比してグリップ性、耐摩耗性の少なくともいずれかが劣り、本件訂正発明1、6ないし15のゴム組成物は、その発明が解決しようとする課題を解決しない旨を主張している。
しかしながら、甲第3号証の実験報告書「3.評価方法」に記載の、実施例I?IIIに係る耐摩耗性及びグリップ性の評価方法と、本件特許明細書の段落【0091】及び【0092】に記載の、比較例及び実施例に係る耐摩耗性及びグリップ性の評価方法とは異なるものである。そうすると、評価方法が異なる、実施例I?IIIの数値と、実施例1、2、6、7の数値とを直接比較して、その優劣を評価することは、評価方法として妥当であるとはいえない。
また、実施例I?IIIと比較例1の組成物の配合を比較すると、実施例I?IIIと比較例とは、充填剤の種類や配合量も異なるし、ゴム成分の種類や、樹脂の配合の有無も異なるものであるから、実施例I?IIIと比較例1とを直接比較することに、何らかの意義を見出すこともできない。
したがって、甲第3号証を証拠とする異議申立人の主張も、採用することができない。
そうすると、本件特許の請求項1、6ないし15に係る特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでないから、この主張は採用することができない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
タイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。さらに詳しくは、グリップ性能に優れると共に、耐摩耗性に優れた変性共役ジエン系重合体を含有するタイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速走行で使用される空気入りタイヤのトレッドゴムには、乾燥路面でのタイヤの制動・駆動性能であるドライグリップ性能および湿潤路面上におけるタイヤの制動・駆動性能であるウエットグリップ性能ともに高い性能が要求される。その中でも、特に湿潤路面上におけるウエットグリップ性能の向上は、安全性の面からも非常に重要な特性となっている。
【0003】
グリップ性能を向上させる目的で、ゴム組成物にプロセスオイル等のオイルの配合を多くすることが行われているが、オイルを増量すると耐摩耗性が悪化し、オイルを減量するとグリップ性能が悪化するという問題がある。
【0004】
そこで、オイルの配合を多くすることなく、耐摩耗性とグリップ性能の良好なゴム組成物を生産性よく得るために、補強用充填剤としてカーボンブラック又はシリカを単独で用いるのみでなく、シリカとカーボンブラックを併用し、さらに、このような多様な充填剤に対して広く相互作用をもち、充填剤の良好な分散性と、ゴム組成物の耐摩耗性とを与えるよう、ゴム成分を改良する変性ゴムの技術開発が多くなされてきた。その中でも特に、アルキルリチウム又はリチウムアミドを重合開始剤とするアニオン重合により得られた重合体の活性末端に、ジアルキルアミノ基を有するアルコキシシランを導入した変性重合体が開示されている(特許文献1、2参照)。しかしながら、このような変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物は、ドライ操縦性が低下するという問題があった。
このように、グリップ性能及び耐摩耗性が高いレベルでバランスしたゴム組成物は、これまで得られにくいのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6-53763号公報
【特許文献2】特公平6-57767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、グリップ性能に優れると共に、耐摩耗性を有するタイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いてなる空気入りタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の方法で得られた変性共役ジエン系重合体とジエン系合成ゴムを所定の割合で含むゴム成分に対し、樹脂を所定の割合で配合してなるゴム組成物により、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)(A-1)シス-1,4-結合の含有量が75モル%以上の共役ジエン系重合体の活性末端を、少なくともヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性してなる変性共役ジエン系重合体5?50質量%と(A-2)ジエン系合成ゴムを含むゴム成分(A)と、その100質量部に対し、(B)樹脂5?60質量部を含むタイヤトレッド用ゴム組成物である。
(2)さらに、(A)成分100質量部に対し、(C-1)シリカ50?95質量%及び(C-2)カーボンブラック50?5質量%からなる補強用充填剤(C)を40?140質量部含むタイヤトレッド用ゴム組成物が好ましい態様であり、
(3)さらに、(A)成分100質量部に対し、(D)オイル等の軟化剤を50?135質量部を含むタイヤトレッド用ゴム組成物であることがより好ましい。
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体は、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下にヒドロカルビルオキシシラン化合物により第2次変性してもよく、第1次変性後、多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、グリップ性能に優れると共に、耐摩耗性を有するタイヤトレッド用ゴム組成物、及びそれを用いてなる空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物(以下、単にゴム組成物と称することがある)は、必須成分として、(A)(A-1)変性共役ジエン系重合体と(A-2)ジエン系合成ゴムを含む成分と、(B)樹脂を含むものであり、これに補強用充填剤として、シリカ、カーボンブラック、無機フィラー及びオイル等の軟化剤、さらに必要に応じて適宜選択したその他成分を含有してなる。
【0010】
(A)ゴム成分
(A-1)変性共役ジエン系重合体
(A)成分のゴム成分に含まれる(A-1)変性共役ジエン系重合体としては、シス-1,4-結合の含有量が75モル%以上の共役ジエン系重合体の活性末端を、少なくともヒドロカルビルオキシシランに化合物により変性してなるものが用いられる。
変性共役ジエン系重合体の中間体として用いられるシス-1,4-結合の含有量が75モル%以上の活性末端を有する共役ジエン系重合体は、共役ジエン系モノマー単独、または、他のモノマーと共に、下記の重合触媒を用い、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法等の方法、好ましくは溶液重合法にて重合することにより、製造することができる。重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
【0011】
原料モノマーの共役ジエン化合物としては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3-ブタジエンが特に好ましい。
また、これらの共役ジエン化合物に少量の他の炭化水素系モノマーを少量共存させてもよいが、共役ジエン化合物は、全モノマー中80モル%以上であることが好ましい。
【0012】
重合触媒としては、以下に示す(x)成分、(y)成分及び(z)成分のそれぞれの中から選ばれる少なくとも1種の化合物を組み合わせてなるものが好ましい。
[(x)成分]
下記の(x1)?(x4)から選ばれる希土類化合物で、そのまま不活性有機溶媒溶液として用いても、不活性固体上に担持して用いてもよい。
(x1)酸化数3の希土類化合物で、炭素数2?30のカルボン酸基、炭素数2?30のアルコキシ基、炭素数6?30のアリーロキシ基、及び炭素数5?30の1,3-ジカルボニル含有炭化水素基の内から自由に選ばれる配位子を合計三つ有するもの、又はこれとルイス塩基化合物(特に、遊離カルボン酸、遊離アルコール、1,3-ジケトン、環状エーテル、直鎖状エーテル、トリヒドロカルビルホスフィン、トリヒドロカルビルホスファイト等から選ばれる)の錯化合物である。具体的には、ネオジムトリ-2-エチルヘキサノエート、それとアセチルアセトンとの錯化合物、ネオジムトリネオデカノエート、それとアセチルアセトンとの錯化合物、ネオジムトリ-n-ブトキシド等がある。
【0013】
(x2)希土類の3ハロゲン化物とルイス塩基の錯化合物である。例えばネオジム三塩化物のTHF錯体がある。
(x3)少なくとも一つの(置換)アリル基が直接希土類原子に結合した、酸化数3の有機希土類化合物である。例えばテトラアリルネオジムとリチウムの塩がある。
(x4)少なくとも一つの(置換)シクロペンタジエニル基が直接希土類原子に結合した酸化数2又は3の有機希土類化合物、又はこの化合物とトリアルキルアルミニウム又は非配位性アニオンと対カチオンからなるイオン性化合物との反応生成物である。例えば、ジメチルアルミニウム(μ-ジメチル)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウムがある。
【0014】
上記希土類化合物の希土類元素としては、ランタン、ネオジム、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウムが好ましく、これらの中でも、ランタン、ネオジム、サマリウムがさらに好ましい。
上記(x)成分の中では、ネオジムのカルボン酸塩及びサマリウムの置換シクロペンタジエニル化合物が好ましい。
【0015】
[(y)成分]
次の一つから選ばれる少なくとも1種類の有機アルミニウム化合物で、複数を同時に用いることができる。
(y1)式R^(12)_(3)Alで表わされるトリヒドロカルビルアルミニウム化合物(ただし、R^(12)は炭素数1?30の炭化水素基で、互いに同一であっても異なっていてもよい)。
(y2)式R^(13)_(2)AlH又はR^(13)AlH_(2)で表わされるヒドロカルビルアルミニウム水素化物(ただし、R^(13)は炭素数1?30の炭化水素基で、互いに同一であっても異なっていてもよい)。
(y3)炭素数1?30の炭化水素基をもつヒドロカルビルアルミノキサン化合物。
上記(y)成分としては、例えばトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムヒドリド、アルキルアルミニウムジヒドリド、アルキルアルミノキサンがある。これらの化合物は混合して用いてもよい。(y)成分の中では、アルミノキサンと他の有機アルミニウム化合物との併用が好ましい。
【0016】
[(z)成分]
次の一から選ばれる化合物であるが、(x)がハロゲン又は非配位性アニオンを含む場合、及び(y)がアルミノキサンを含む場合は必ずしも必要ない。
(z1)加水分解可能なハロゲンを有する周期表(短周期型)II、III、IV族に属する元素の無機又は有機化合物又はこれらとルイス塩基の錯化合物である。例えばアルキルアルミニウム二塩化物、ジアルキルアルミニウム塩化物、四塩化珪素、四塩化スズ、塩化亜鉛とアルコール等ルイス塩基との錯体、塩化マグネシウムとアルコール等ルイス塩基との錯体等である。
(z2)少なくとも一つの三級アルキルハライド、ベンジルハライド、及びアリルハライドから選ばれる構造を有する有機ハロゲン化物である。例えば塩化ベンジル、塩化t-ブチル、臭化ベンジル、臭化t-ブチル等である。
(z3)亜鉛のハロゲン化物又はこれとルイス塩基の錯化合物である。
(z4)非配位性アニオンと対カチオンからなるイオン性化合物である。例えばトリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0017】
上記触媒の調製は、予備的に、上記の(x)、(y)、(z)成分以外に、必要に応じて、重合用モノマーと同じ共役ジエン化合物及び/又は非共役ジエンモノマーを併用してもよい。また、(x)成分又は(z)成分の一部又は全部を不活性な固体上に担持して用いてもよく、この場合はいわゆる気相重合で行うことができる。
上記触媒の使用量は、適宜設定することができるが、通常(x)成分はモノマー100g当たり0.001?0.5ミリモル程度である。また、モル比で(y)成分/(x)成分は5?1000程度、(z)成分/(x)成分は0.5?10程度である。
【0018】
溶液重合の場合において用いられる溶媒としては、反応に不活性な有機溶媒、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶媒が挙げられる。具体的には、炭素数3?8のものが好ましく、例えばプロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく二種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
この重合反応における温度は、好ましくは-80?150℃、さらに好ましくは-20?120℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常はモノマーを実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
この重合反応においては、触媒、溶媒、モノマー等、重合に関与する全ての原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を実質的に除去したものを用いることが望ましい。
【0020】
本発明で使用する変性共役ジエン系重合体は、このようにして得られたシス-1,4-結合の含有量が75モル%以上の活性末端を有する共役ジエン系重合体(中間重合体)の該活性末端を、少なくともヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性してなるものであるが、以下に示す5種の態様がある。
【0021】
まず第1の態様は、前記中間重合体の活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下にヒドロカルビルオキシシラン化合物により第2次変性してなる変性共役ジエン系重合体である。
第2の態様は、前記中間重合体の活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなる変性共役ジエン系重合体である。
第3の態様は、前記中間重合体の活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下に末端に導入されたヒドロカルビルオキシシラン化合物残基と未反応ヒドロカルビルオキシシラン化合物とを縮合反応させてなる変性共役ジエン系重合体である。
第4の態様は、前記第1の態様において、第2次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなる変性共役ジエン系重合体である。
第5の態様は、前記第3の態様において、縮合反応後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなる変性共役ジエン系重合体である。
【0022】
前記の各態様における、第1次変性の反応において、使用する中間重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性を有するものが好ましい。
変性に用いられるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、下記一般式(I)、一般式(II)、一般式(III)で表わされる化合物及びその部分縮合物から選ばれる少なくとも一種の化合物を挙げることができる。
【0023】
【化1】

【0024】
[式中、A^(1)は、(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R^(1)は単結合又は二価の不活性炭化水素基であり、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、nは0?2の整数であり、R^(2)が複数ある場合、複数のR^(2)は同一でも異なっていてもよく、OR^(3)が複数ある場合、複数のOR^(3)は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない]
【0025】
一般式(I)において、A^(1)における官能基の中で、イミンはケチミン、アルジミン、アミジンを包含し、(チオ)カルボン酸エステルは、アクリレートやメタクリレート等の不飽和カルボン酸エステルを包含する。又、(チオ)カルボン酸の金属塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Sn、Zn等を挙げることができる。
【0026】
R^(1)のうちの二価の不活性炭化水素基としては、炭素数1?20のアルキレン基を好ましく挙げることができる。このアルキレン基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよいが、特に直鎖状のものが好適である。この直鎖状のアルキレン基の例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
R^(2)及びR^(3)としては、炭素数1?20のアルキル基、炭素数2?18のアルケニル基、炭素数6?18のアリール基、炭素数7?18のアラルキル基等を挙げることができる。アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、枝分かれ状、環状いずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。また、アリール基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、その例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。さらに、アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等があげられる。
【0027】
nは0?2の整数であるが0が好ましく、また、この分子中には活性プロトン及びオニウム塩を有しないことが必要である。
【0028】
一般式(I)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、2-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン及びこれらの化合物におけるエポキシ基をチオエポキシ基に置き換えたものを好ましく挙げることができるが、これらの中で、特に3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好適である。
【0029】
イミン基含有ヒドロカルビルオキシシアン化合物として、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルエチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-エチリデン-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、N-(シクロヘキシリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等を好ましく挙げることができるが、これらの中で特に、N-(1-メチルプロピリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン及びN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミンが好適である。
【0030】
さらに、その他のヒドロカルビルオキシ化合物として、以下のものを挙げることができる。すなわち、イミン(アミジン)基含有化合物としては、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール、3-〔10-(トリエトキシシリル)デシル〕-4-オキサゾリン等が挙げることができるが、これらの中で、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、1-〔3-(トリエトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾール及び1-〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕-4,5-ジヒドロイミダゾールを好ましく挙げることができる。また、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-イソプロポキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-メチルジエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール等が挙げられ、なかでも、好ましいのはN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾールである。
【0031】
カルボン酸エステル基含有化合物としては、3-メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられ、なかでも、好ましいのは3-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランである。
【0032】
さらに、イソシアネート基含有化合物としては、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられ、これらのうち、好ましいのは3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランである。
【0033】
また、カルボン酸無水物含有化合物としては、3-トリエトキシシリルプロピルサクシニック無水物、3-トリメトキシシリルプロピルサクシニック無水物、3-メチルジエトキシシリルプロピルサクシニック無水物等が挙げられ、このうち、好ましいのは3-トリエトキシシリルプロピルサクシニック無水物である。
【0034】
これらのヒドロカルビルオキシシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物も用いることができる。
【0035】
次に、ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、また一般式(II)
【化2】

[式中、A^(2)は、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、スルフィド及びマルチスルフィドの中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R^(4)は単結合または二価の不活性炭化水素基、R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、mは0?2の整数であり、R^(5)が複数ある場合、複数のR^(5)は同一でも異なっていてもよく、OR^(6)が複数ある場合、複数のOR^(6)は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。]
で表される化合物及び/又はその部分縮合物が使用できる。
【0036】
一般式(II)表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物及び/又はその部分縮合物は、活性末端との直接反応は実質的に起こらず、反応系に未反応として残存するため、活性末端に導入されたヒドロカルビルオキシシラン化合物残基との縮合に消費される。
【0037】
上記一般式(II)において、A^(2)のうちの非環状三級アミンは、N,N-(二置換)アニリン等のN,N-(二置換)芳香族アミンを含有し、また環状三級アミンは、環の一部として(チオ)エーテルを含むことができる。R^(4)のうちの二価の不活性炭化水素基、R^(5)及びR^(6)については、それぞれ前記一般式(I)におけるR^(1)、R^(2)及びR^(3)について説明したものと同じである。この分子中には活性プロトン及びオニウム塩は有しないことが必要である。
【0038】
一般式(II)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば非環状三級アミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3-ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2-ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2-ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3-ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン等が挙げられ、これらの中でも、3-ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン及び3-ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランが好ましい。
【0039】
また、環状三級アミン基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物として、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリメトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリメトキシ)シラン、(1-ヘキサメチレンイミノ)メチル(トリエトキシ)シラン、2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリエトキシ)シラン、2-(1-ヘキサメチレンイミノ)エチル(トリメトキシ)シラン、3-(1-ピロリジニル)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ピロリジニル)プロピル(トリメトキシ)シラン、3-(1-ヘプタメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ドデカメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(ジエトキシ)エチルシランを挙げることができる。なかでも3-(1-ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シランが好適である。
【0040】
さらに、その他のヒドロカルビルオキシシラン化合物として、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2-(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、4-エチルピリジン等を挙げることができる。
【0041】
これらのヒドロカルビルオキシシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物も用いることができる。
【0042】
ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、さらに一般式(III)
【化3】

[式中、A^(3)は、アルコール、チオール、一級アミン及びそのオニウム塩、環状二級アミン及びそのオニウム塩、非環状二級アミン及びそのオニウム塩、環状三級アミンのオニウム塩、非環状三級アミンのオニウム塩、アリール又はアリールアルキルSn結合を有する基、スルフォニル、スルフィニル及びニトリルから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R^(7)は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R^(8)及びR^(9)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、qは0?2の整数であり、R^(8)が複数ある場合、複数のR^(8)は同一でも異なっていてもよく、OR^(9)が複数ある場合、複数のOR^(9)は同一でも異なっていてもよい。]で表される化合物及び/又は部分縮合物が使用できる。
【0043】
上記一般式(III)において、A^(3)のうちの一級アミンはアニリン等の芳香族アミンを包含し、また非環状二級アミンはN-(一置換)アニリン等のN-(一置換)芳香族アミンを包含する。さらに、非環状三級アミンのオニウム塩は、N,N-(二置換)アニリン等のN,N-(二置換)芳香族アミンのオニウム塩を包含する。また。環状二級アミンや環状三級アミンの場合は、環の一部として(チオ)エーテルを含むことができる。R^(7)のうちの二価の不活性炭化水素基、R^(8)及びR^(9)については、それぞれ前記一般式(I)におけるR^(1)、R^(2)及びR^(3)について説明したものと同じである。
【0044】
一般式(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、オクタデシルジメチル(3-トリメチルシリルプロピル)アンモニウムクロリド、オクタデシルジメチル(3-トリエチルシリルプロピル)アンモニウムクロリド、シアノメチルトリメトキシシラン、シアノメチルトリエトキシシラン、スルホニルメチルトリメトキシシラン、スルホニルメチルトリエトキシシラン、スルフィニルメチルトリメトキシシラン、スルフィニルメチルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
【0045】
これらのヒドロカルビルオキシシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物も用いることができる。
なお、上記の一般式(I)、(II)、(III)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物とは、ヒドロカルビルオキシシラン化合物のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものを言う。
【0046】
本発明において、縮合促進剤の存在下にて、残存又は新たに加えられたヒドロカルビルオキシシラン化合物と反応させる前記第1の態様、第3の態様、第4の態様、及び第5の態様の場合には、まず活性末端を有する中間重合体と、反応系に加えられた実質上化学量論量のヒドロカルビルオキシシラン化合物とが反応して、実質的に該末端の全てにヒドロカルビルオキシシリル基が導入され(第1次変性)、さらに上記で導入されたヒドロカルビルオキシシリル基にヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させることにより、該活性末端に当量より多くのヒドロカルビルオキシシラン化合物残基が導入される。
【0047】
本発明において、ヒドロカルビルオキシシラン化合物がアルコキシシリル化合物である場合、前記第1の態様、第3の態様、第4の態様、及び第5の態様におけるアルコキシシリル基同士の縮合反応は、(残存又は新たに加えられた)遊離アルコキシシランと重合体末端のアルコキシシリル基の間で起こることが、また場合によっては重合体末端のアルコキシシリル基同士で起こることが好ましく、遊離アルコキシシラン同士の反応は不必要である。従って、アルコキシシラン化合物を新たに加える場合は、そのアルコキシシリル基の加水分解性が、重合体末端のアルコキシシリル基の加水分解性を凌駕しないようにすることが効率の点から好ましい。例えば、一次変性のアルコキシシランIには加水分解性の大きなトリメトキシシリル基含有化合物を用い、新たに添加するアルコキシシランIIにはこれより加水分解性の劣るアルコキシシリル基(例えばトリエトキシシリル基)を含有する化合物を用いる組み合わせが、好適である。逆に、例えば、アルコキシシランIをトリエトキシシリル基含有、かつ同IIをトリメトキシシリル基含有とすることは、本発明の範囲に含まれるものの、反応効率の観点からは好ましくない。
【0048】
本発明における変性反応は、溶液反応及び固相反応のいずれでもよいが、溶液反応(重合時に使用した未反応モノマーを含んだ溶液でもよい)が好適である。また、この変性反応の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いて行ってもよく、多段連続式反応器やインラインミキサ等の装置を用いて連続式で行ってもよい。また、変性反応は、重合反応終了後、脱溶媒処理、水処理、熱処理、重合体単離に必要な諸操作等を行う前に実施することが肝要である。
変性反応の温度は、共役ジエン系重合体の重合温度をそのまま用いることができる。具体的には20?100℃が好ましい範囲として挙げられる。温度が低くなると重合体の粘度が上昇する傾向があり、温度が高くなると重合活性末端が失活し易くなるので好ましくない。
【0049】
次に、前記第2次変性を促進するためには、縮合促進剤の存在下で行なうことが好ましい。この縮合促進剤としては、一般にアルコキシ縮合硬化型室温架橋(RTV)シリコーンのための硬化触媒として知られている金属化合物と、水との組み合わせが使用できる。例えば、スズのカルボン酸塩及び/又はチタンアルコキシドと水との組み合わせを好ましく挙げることが出来る。縮合促進剤の水の反応系中への投入方法には特に制限が無い。アルコール等の水と相溶な有機溶媒の溶液としてもよいし、種々の化学工学的手法を用いて水を直接炭化水素溶液中に注入・分散・溶解させてもよい。
【0050】
このような縮合促進剤としては、一般式(IV)、一般式(V)及び一般式(VI)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種と水とからなるものであることが好ましい。
【0051】
一般式(IV)で表される酸化数2のスズの炭素数3?20のカルボン酸塩:
Sn(OCOR^(10))_(2)・・・・・・(IV)
[式中、R^(10)は、炭素数2?19の有機基であり、複数ある場合は同一でも異なっていてもよい。]
【0052】
一般式(V)で表される酸化数4のスズ化合物:
R^(11)_(r)SnA^(4)_(t)B^(1)_((4-t-r))・・・・・・(V)
[式中、rは1?3の整数、tは1又は2の整数であり、かつ、t+rは3又は4の整数である。R^(11)は炭素数1?30の脂肪族炭化水素基、B^(1)はヒドロキシル基又はハロゲンである。A^(4)は、(a)炭素数2?30の脂肪族カルボン酸残基、(b)炭素数5?30の1,3-ジカルボニル含有炭化水素基、(c)炭素数3?30のヒドロカルビルオキシ基、及び(d)炭素数1?20のヒドロカルビル基及び/又は炭素数1?20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換(同一でも異なっていてもよい)されたシロキシ基から選ばれる基であり、R^(11)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、A^(4)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい。]
【0053】
一般式(VI)で表される酸化数4のチタン化合物:
A^(5)_(x)TiB^(2)_((4-x))・・・・・・(VI)
[式中、xは2又は4の整数である。A^(5)は(1)炭素数3?30のヒドロカルビルオキシ基、(2)炭素数1?30のアルキル基及び/又は炭素数1?20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換されたシロキシ基であり、A^(5)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい。B^(2)は、炭素数5?30の1,3-ジカルボニル含有炭化水素基であり、B^(2)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい。]
【0054】
前記一般式(IV)で表される酸化数2のスズのカルボン酸塩としては、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ、ジオレイン酸スズ及びジラウリン酸スズ等が、前記一般式(V)で表される酸化数4のスズの化合物のうち、(a)のスズのカルボン酸塩としては、四価のジヒドロカルビルスズのジカルボン酸塩(ビス(ヒドロカルビルジカルボン酸)塩を含む)、モノカルボン酸塩ヒドロキシド等が、(b)炭素数5?30の1,3-ジカルボニル含有炭化水素基を有するものとしては、ビス(1,3-ジケトネート)等が、(c)炭素数3?30のヒドロカルビルオキシ基を有するものとしては、アルコキシハライドが、(d)炭素数1?20のヒドロカルビル基及び/又は炭素数1?20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換(同一でも異なっていてもよい)されたシロキシ基を有するものとしては、アルコキシ(トリヒドロカルビルシロキシド)、アルコキシ(ジヒドロカルビルアルコキシシロキシド)、ビス(トリヒドロカルビルシロキシド)、ビス(ジヒドロカルビルアルコキシシロキシド)等が好適に挙げられる。スズに縮合した炭化水素基としては炭素数が4以上のものが望ましく、炭素数4?8のものがより好ましい。
【0055】
また、前記一般式(VI)で表される酸化数4のチタン化合物としては、酸化数4のチタンのテトラアルコキシド又はテトラキス(トリヒドロカルビルオキシシロキシド)、あるいはジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン等のジアルコキシビス(1,3-ジケトネート)チタン等が挙げられる。
【0056】
縮合促進剤における水としては、単体やアルコール等の溶液、炭化水素溶媒中の分散ミセル等の形態が好適に用いられるほか、必要ならば固体表面の吸着水や水和物の水和水等の反応系中で水を放出し得る化合物が潜在的に含んだ水分も有効に用いることが出来る。
【0057】
縮合促進剤を形成する金属化合物及び水は、反応系に別々に投入しても、使用直前に混合して混合物として投入してもよいが、混合物の長期保存は金属化合物の分解を招くので好ましくない。
【0058】
縮合促進剤の使用量として、前記金属化合物の金属及び反応に有効な水のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビルオキシシリル基総量に対するモル比が、共に0.1以上であることが好ましい。上限は目的や反応条件によっても異なるが、縮合処理以前の段階で重合体末端に縮合されたヒドロカルビルオキシシリル基総量に対するモル比が0.5?3程度の有効な水が存在することが好ましい。金属化合物の金属と反応に有効な水とのモル比は、求められる反応条件によっても異なるが、1:0.5?1:20程度が好適である。
【0059】
本発明において、(A-1)成分として用いられる変性共役ジエン系重合体における前記第2の態様、第4の態様及び第5の態様においては、多価アルコールのカルボン酸部分エステルを、重合末端に導入されたヒドロカルビルオキシシラン化合物由来の基と反応させ、該基を安定化させる操作が施される。
ここで、多価アルコールのカルボン酸部分エステルとは、多価アルコールとカルボン酸とのエステルであり、かつ水酸基を一つ以上有する部分エステルを意味する。具体的には、炭素数4以上の糖類又は変性糖類と脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。このエステルは、さらに好ましくは、(イ)多価アルコールの脂肪酸部分エステル、特に炭素数10?20の飽和高級脂肪酸又は不飽和高級脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル(モノエステル、ジエステル、トリエステルのいずれでもよい)、(ロ)多価カルボン酸と高級アルコールの部分エステルを、多価アルコールに1ないし3個結合させたエステル化合物等が挙げられる。
【0060】
上記の部分エステルの原料に用いられる多価アルコールとしては、好ましくは少なくとも三つの水酸基を有する炭素数5又は6の糖類(水素添加されていても、水素添加されていなくてもよい)、グリコールやポリヒドロキシ化合物等が用いられる。また、原料脂肪酸としては、好ましくは炭素数10?20の飽和又は不飽和脂肪酸であり、例えばステアリン酸,ラウリン酸,パルチミン酸が用いられる。
【0061】
多価アルコールの脂肪酸部分エステルの中ではソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、具体的には、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタントリステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル及びソルビタントリオレイン酸エステル等が挙げられる。
また、市販品としては、ICI社の商標としての「SPAN60」(ソルビタンステアリン酸エステル)、「SPAN80」(ソルビタンモノオレイン酸エステル)、「SPAN85」(ソルビタントリオレイン酸エステル)等がある。
部分エステルの添加量は、中間重合体に付与されたヒドロカルビルオキシシリル基の1モルに対して0.2?10モル程度、特に1?10モルが好ましい。
【0062】
このようにして製造された(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体としては、シス-1,4-結合量が75モル%以上の変性ポリブタジエンが、タイヤトレッド用ゴム組成物の性能の点から好適である。
この(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体は、補強用充填剤、特にシリカに対する分散改良効果が大きく、全体的にE’(動的貯蔵弾性率)を全温度域で低下させるが、特に低温側のE’の低下を大きくすることが可能となる。したがって、タイヤのグリップ性能をより高めることができる。
また、損失係数(tanδ)においても低減効果が大きく、通常のポリブタジエンゴムを使用した場合と比較すると、0℃での低下を小さくしながら、高温(60℃)の低下をより大きくすることが可能なため、高充填シリカ配合においても、グリップ性能と低燃費性のバランス向上にも同時に作用する。さらに、補強用充填剤の分散改良効果により、耐摩耗性を向上させることができる。
【0063】
本発明のゴム組成物においては、(A)ゴム成分中の(A-1)変性共役ジエン系重合体の含有量は、5?50質量%、好ましくは10?40質量%の範囲である。この含有量が5質量%未満では前記効果が充分に発揮されないし、50質量%を超えると作業性が悪化する。
一方、(A-2)ジエン系合成ゴムとしては、例えばポリイソプレン合成ゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。この(A-2)成分のジエン系合成ゴムは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明のゴム成分には、天然ゴムを含まない。
【0064】
本発明のゴム組成物においては、良好なグリップ性能、低燃費性及び耐摩耗性を有する等の性能、並びに補強性を付与するために、変性共役ジエン系重合体に加えて、(B)成分の樹脂の補強用充填剤として、(C-1)シリカ及び(C-2)カーボンブラックを含有させる。
【0065】
(C-1)成分シリカとしては、特に制限はなく、従来ゴムの補強用充填剤として慣用されているものの中から任意に選択して用いることができる。例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、なかでも低発熱性並びにグリップ性の向上効果が顕著である湿式シリカが好ましい。この湿式シリカは、補強性、加工性、グリップ性、耐摩耗性のバランス等の面から、BET法による窒素吸着比表面積(N_(2)SA)が70?280m^(2)/gであることが好ましく、140?250m^(2)/gであることがより好ましい。好適な湿式シリカとしては、例えば東ソー・シリカ(株)製のAQ、VN3、LP、NA等、デグッサ社製のウルトラジルVN3(N_(2)SA:210m^(2)/g)等が挙げられる。
【0066】
(C-2)成分のカーボンブラックとしては特に制限はなく、例えばSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が用いられ、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを用いることにより、グリップ性能及び耐摩耗性の改良効果は大きくなるが、特に耐摩耗性に優れるHAF、ISAF、SAFがより好ましい。
【0067】
(C)成分の補強用充填剤において、シリカとカーボンブラックの含有割合は、所望の性能を有するゴム組成物を得る見地から、シリカが50?95質量%で、カーボンブラックが50?5質量%であり、好ましくはシリカが60?90質量%で、カーボンブラックが10?40質量%である。
また、(C)成分の補強用充填剤の含有量は、前記(A)成分であるゴム成分100質量部に対して、40?140質量部の範囲で選定される。この含有量が40質量部未満では補強効果が充分に発揮されず、140質量部を超えると作業性が悪化する。
さらに、所望の性能を有し、かつ作業性の良好なゴム組成物を得る上から、前記シリカの含有量は、前記(A)成分のゴム成分100質量部に対して通常20?133質量部程度、好ましくは24?126質量部であり、一方、カーボンブラックの含有量は、(A)成分のゴム成分100質量部に対して、通常2?70質量部程度、好ましくは4?63質量部である。
【0068】
本発明のゴム組成物においては、(C-1)成分のシリカの性能をさらに向上させる目的で、(E)シランカップリング剤を含有させることができる。
シランカップリング剤としては、例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられるが、これらの中で補強性改善効果等の点から、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド及び3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好適である。これらのシランカップリング剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分として、分子末端にシリカとの親和性の高い官能基が導入された変性共役ジエン重合体が用いられているため、シランカップリング剤の配合量は、通常の場合より低減することができる。好ましいシランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類等により異なるが、シリカに対して、通常5?20質量%の範囲で選定される。この量が少ないとカップリング剤としての効果が充分に発揮されにくく、また、多いとゴム成分のゲル化を引き起こす虞がある。カップリング剤としての効果及びゲル化防止等の点から、このシランカップリング剤の好ましい配合量は、5?18質量%の範囲である。
【0070】
本発明のゴム組成物において、物性を改良する目的で所望により、(F)無機フィラーを含有させることができる。この無機フィラーとしては、下記一般式(VII)で表される化合物を挙げることができる。
【0071】
aM^(1)・bSiO_(y)・cH_(2)O・・・・・・(VII)
[式中、M^(1)は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、a、b、y及びcは、それぞれ1?5の整数、0?10の整数、2?5の整数、及び0?10の整数である。尚、上記式において、b、cがともに0である場合には、該無機化合物はアルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの金属、金属酸化物、金属水酸化物又は炭酸塩となる。]
【0072】
上記式で表わされる無機フィラーとしては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al_(2)O_(3))、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al_(2)O_(3)・H_(2)O)、ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)_(3)]、炭酸アルミニウム[Al_(2)(CO_(3))_(2)]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)_(2)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO_(3))、タルク(3MgO・4SiO_(2)・H_(2)O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO_(2)・9H_(2)O)、チタン白(TiO_(2))、チタン黒(TiO_(2n-1))、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)_(2)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al_(2)O_(3))、クレー(Al_(2)O_(3)・2SiO_(2))、カオリン(Al_(2)O_(3)・2SiO_(2)・2H_(2)O)、パイロフィライト(Al_(2)O_(3)・4SiO_(2)・H_(2)O)、ベントナイト(Al_(2)O_(3)・4SiO_(2)・2H_(2)O)、ケイ酸アルミニウム(Al_(2)SiO_(5)、Al_(4)・3SiO_(4)・5H_(2)O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg_(2)SiO_(4)、MgSiO_(3)等)、ケイ酸カルシウム(Ca_(2)・SiO_(4)等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al_(2)O_(3)・CaO・2SiO_(2)等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO_(4))、炭酸カルシウム(CaCO_(3))、酸化ジルコニウム(ZrO_(2))、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)_(2)・nH_(2)O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO_(3))_(2)]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が使用できる。また、前記一般式(VII)中のM^(1)がアルミニウム金属、アルミニウムの酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はアルミニウムの炭酸塩から選ばれる少なくとも一つである場合が好ましい。
上記式で表されるこれらの無機フィラーは、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
(F)無機フィラーは、ゴム成分100質量部に対し、5?30質量部配合することが好ましく、10?25質量部配合することがより好ましい。
【0073】
本発明のゴム組成物には、グリップ性を改良する目的で(B)樹脂を含有させる。使用できる樹脂としては、分子量が数百から数千の熱可塑性樹脂で、天然ゴムや合成ゴムに配合することによって粘着性を付与する樹脂が挙げられ、種々の天然樹脂及び合成樹脂を使用することができる。
具体的には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂などの分子量が好ましくは、500?5000、より好ましくは700?4000の合成樹脂が使用できる。
【0074】
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変性ロジンのグリセリン、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられ、テルペン系樹脂としては、α-ピネン系、β-ピネン系、ジペンテン系等のテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。
これらの天然樹脂の中でも、配合されたゴム組成物の耐摩耗性とグリップ特性の観点から、重合ロジン、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂が好ましい。
【0075】
石油系樹脂は、例えば石油化学工業のナフサの熱分解により、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎原料とともに副生するオレフィンやジオレフィン等の不飽和炭化水素を含む分解油留分を混合物のままフリーデルクラフツ型触媒により重合して得られる。
該石油系樹脂としては、ナフサの熱分解によって得られるC_(5)留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂、ナフサの熱分解によって得られるC_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、前記C_(5)留分とC_(9)留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、水素添加系,ジシクロペンタジエン系等の脂環式化合物系石油樹脂、スチレン,置換スチレン,スチレンと他のモノマーとの共重合体等のスチレン系樹脂等の石油系樹脂が挙げられる。
【0076】
ナフサの熱分解によって得られるC_(5)留分には、通常1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエンなどのジオレフィン系炭化水素等が含まれる。
また、C_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂とは、ビニルトルエン、インデンを主要なモノマーとする炭素数9の芳香族を重合した樹脂であり、ナフサの熱分解によって得られるC_(9)留分の具体例としては、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、γ-メチルスチレン等のスチレン同族体やインデン、クマロン等のインデン同族体等が挙げられる。
商品名としては、三井化学製ペトロジン、ミクニ化学製ペトライト、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー、東ソー製ペトコール、ペトロタック等がある。
【0077】
さらに、前記C_(9)留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂が、グリップ性及び工場作業性の両立を可能にする樹脂として、本発明では、好適に使用される。
変性石油樹脂としては、不飽和脂環式化合物で変性したC_(9)系石油樹脂、水酸基を有する化合物で変性したC_(9)系石油樹脂、不飽和カルボン酸化合物で変性したC_(9)系石油樹脂等が挙げられる。
【0078】
好ましい不飽和脂環式化合物としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなど、また、アルキルシクロペンタジエンのディールスアルダー反応生成物として、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン/メチルシクロペンタジエン共二量化物、トリシクロペンタジエン等が挙げられ、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。
ジシクロペンタジエン変性C_(9)系石油樹脂は、ジシクロペンタジエンおよびC_(9)留分両者の存在下、熱重合等で得ることができる。
ジシクロペンタジエン変性C_(9)系石油樹脂としては、例えばJX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー130Sが挙げられる。
【0079】
また、水酸基を有する化合物としては、アルコール化合物やフェノール化合物が挙げられる。
アルコール化合物の具体例としては、例えば、アリルアルコール、2-ブテン-1,4ジオール等の二重結合を有するアルコール化合物が挙げられる。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、p-t-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール等のアルキルフェノール類を使用できる。
これらの水酸基含有化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0080】
水酸基含有C_(9)系石油樹脂は、石油留分とともに(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を熱重合して石油樹脂中にエステル基を導入した後、該エステル基を還元する方法、石油樹脂中に二重結合を残存又は導入した後、当該二重結合を水和する方法、等によっても製造できる。
本発明では、水酸基含有C_(9)系石油樹脂として、前記のように各種の方法により得られるものを使用できるが、性能面、製造面から見て、フェノール変性石油樹脂等を使用するのが好ましく、フェノール変性石油樹脂は、C_(9)留分をフェノールの存在下でカチオン重合して得られ、変性が容易であり、低価格である。
フェノール変性C_(9)系石油樹脂としては、例えばJX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー-E-130が挙げられる。
【0081】
さらに、不飽和カルボン酸化合物で変性したC_(9)系石油樹脂としては、C_(9)系石油樹脂をエチレン性不飽和カルボン酸で変性したものを使用することができる。
かかるエチレン性不飽和カルボン酸の代表的なものとして、(無水)マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、テトラヒドロ(無水)フタール酸、(メタ)アクリル酸またはシトラコン酸などが挙げられる。
不飽和カルボン酸変性C_(9)系石油樹脂は、C_(9)系石油樹脂及びエチレン系不飽和カルボン酸を熱重合することで得ることができる。
本発明においては、マレイン酸変性C_(9)系石油樹脂が好ましい。
不飽和カルボン酸変性C_(9)系石油樹脂としては、例えばJX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー160が挙げられる。
【0082】
また、本発明では、ナフサの熱分解によって得られるC_(5)留分とC_(9)留分の共重合樹脂を好適に使用することができる。
ここでC_(9)留分としては、特に制限はないが、ナフサの熱分解によって得られたC_(9)留分であることが好ましい。
具体的には、SCHILL&SEILACHER社製StruktolシリーズのTS30、TS30-DL、TS35、TS35-DL等が挙げられる。
【0083】
前記フェノール系樹脂としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、具体的にはノボラック型アルキルフェノール樹脂である商品名ヒタノール1502(日立化成工業社製)、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂である商品名コレシン(BASF社製)等が挙げられる。
【0084】
また、石炭系樹脂としては、クマロンインデン樹脂等が挙げられ、キシレン系樹脂としては、キシレンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
その他ポリブテンも粘着付与性を有する樹脂として使用することができる。
これらの合成樹脂の中で、配合されたゴム組成物の耐摩耗性とグリップ性能の観点から、C_(5)留分とC_(9)留分の共重合樹脂、C_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂及びクマロンインデン樹脂が好ましい。
【0085】
(B)成分の樹脂は軟化点が200℃(測定法:ASTM E28-58-T)以下であることが好ましく、さらには80?150℃の範囲であることが好ましい。
軟化点が200℃を超えると、ヒステリシスロス特性の温度依存性が高くなりすぎる場合があり、また加工性を悪化させる場合がある。また、80℃未満ではグリップ性能が劣る場合がある。
これらの観点から軟化点は90?120℃の範囲がより好ましい。
上記樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
(B)樹脂は、ゴム成分100質量部に対し、5?60質量部、好ましく、10?35質量部配合する。
【0086】
本発明のゴム組成物には、物性を改良する目的で(D)プロセスオイル等の軟化剤を含有させることができる。使用できるオイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、ゴム成分100質量部に対して、50?135質量部が好ましく、135質量部以下であれば加硫ゴムの引張強度、低発熱性が良好となる。
【0087】
本発明のゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を含有させることができる。
加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1?10.0質量部が好ましく、0.5?5.0質量部がより好ましい。加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1?5.0質量部が好ましく、更に好ましくは0.2?3.0質量部である。
【0088】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と樹脂、必要に応じて適宜選択したその他の成分をバンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、タイヤ用途として、タイヤトレッドに用いられる。加硫条件としては、温度100?190℃程度である。
【0089】
本発明の空気入りタイヤは、上記のゴム組成物をトレッドに用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階でタイヤトレッドに加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。このようにして得られた空気入りタイヤは、グリップ性能に優れると共に、耐摩耗性にも優れており、オールシーズン用タイヤ等として好適である。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
各例で得られたゴム組成物の加硫ゴム物性は、下記の方法に従って測定した。
【0091】
(1)耐摩耗性
比較例及び実施例に係る空気入りタイヤを車輌に装着し、5万キロ走行後の残溝測定から摩耗量を算出した。結果は、走行距離/(走行前溝深さ-走行後溝深さ)を計算し、比較例1の結果を100とし、指数表示した。数値が大きいほど耐摩耗性に優れることを示す。
【0092】
(2)限界グリップ
比較例及び実施例に係る空気入りタイヤを車輌に装着し、テストコースにてラップタイムを測定した。結果は、比較例1の結果を100とし、指数表示した。数値が大きいほどグリップ性に優れることを示す。
【0093】
製造例1
変性ポリブタジエン(変性BR)の製造
(1)触媒の調整
乾燥・窒素置換された、ゴム栓付き容積約100mlのガラス瓶に、以下の順番に、ブタジエンのシクロヘキサン溶液(15.2重量%)7.11g、ネオジムネオデカノエートのシクロヘキサン溶液(0.56M)0.59ml、メチルアルミノキサンMAO(東ソーアクゾ製PMAO)のトルエン溶液(アルミニウム濃度として3.23M)10.32ml、水素化ジイソブチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.90M)7.77mlを投入し、室温で2分間熟成した後、塩素化ジエチルアルミ(関東化学製)のヘキサン溶液(0.95M)1.45mlを加えて、室温で時折撹拌しながら15分間熟成した。こうして得られた触媒溶液中のネオジムの濃度は、0.011M(モル/リットル)であった。
【0094】
(2)中間重合体の製造
乾燥・窒素置換された、ゴム栓付き容積約900mlのガラス瓶に、乾燥精製された1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及び乾燥シクロヘキサンを各々装入し、1,3-ブタジエン12.5質量%のシクロヘキサン溶液が400g投入された状態とした。次に、(1)において調整した触媒溶液2.28ml(ネオジム換算0.025mmol)を投入し、50℃温水浴中で1.0時間重合を行い、中間重合体を製造した。得られた重合体のミクロ構造は、シス-1,4-結合95.5%、トランス-1,4-結合含有量3.9%、ビニル結合含有量0.6%であつた。これらのミクロ構造は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)によって求めた。
【0095】
(3)第1次変性処理
第1次変性剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPMOS)のヘキサン溶液(1.0M)として、GPMOSがネオジムに対して23.5モル当量になるよう前記(2)で得た重合液に投入し、50℃で60分間処理することにより、第1次の変性を行った。
【0096】
(4)第2次変性以降の処理
続いて、縮合促進剤として、ビス(2-エチルヘキサノエート)スズ(BEHAS)のシクロヘキサン溶液(1.01M)を1.76ml(70.5eq/Nd相当)と、イオン交換水32μl(70.5eq/Nd相当)を投入し、50℃温水浴中で1.0時間処理した。その後、重合系に老化防止剤2,2-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)のイソプロパノール5%溶液2mlを加えて反応の停止を行い、更に微量のNS-5を含むイソプロパノール中で再沈殿を行い、ドラム乾燥することにより変性BRを得た。得られたBRのムーニー粘度ML_(1+4)(100℃)を、(有)東洋精機製作所製のRLM-01型テスターを用いて100℃で測定したところ、93であった。変性後のミクロ構造も中間重合体のミクロ構造と同様であった。
【0097】
実施例1?7及び比較例1?17
表1?3に示す配合組成のゴム組成物を調製し、各ゴム組成物をそれぞれタイヤサイズ195/60R15の乗用車用空気入りタイヤのトレッドに配設してタイヤを試作した。各タイヤの性能評価結果を表1?3に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
注(表1?3)
1)天然ゴム:RSS#4
2)スチレン-ブタジエン共重合体ゴム:JSR(株)製「SBR1500」
3)ポリブタジエンゴム:JSR(株)製「BR01」
4)製造例1の変性ポリブタジエン
5)三共油化工業株式会社製「A/OMIX」
6)樹脂:東ソー製「ペトロタック90」
7)東ソー・シリカ(株)製「AQ」
8)ISAF(N220)、東海カーボン(株)製「シースト6」
9)デグサ社製「Si69」
10)ワックス:日本精鑞製マイクロクリスタリンワックス オゾエース-0111
11)N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン:大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
12)ジフェニルグアニジン:大内新興化学工業社製「ノクセラーD」
13)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド:大内新興化学工業社製「ノクセラーCZ」
14)ジベンゾチアジルジスルフィド:大内新興化学工業社製「ノクセラーDM」
【0102】
第1?3表から分かるように、実施例1の組成物は、SBRの一部を天然ゴムに換えたもの、変性BRの代わりにBRを使用したもの、樹脂の分をオイルに換えた比較例に比べて、耐摩耗性、グリップ性能とも、比較例の組成物よりも良好である。実施例2は、変性BRと樹脂を多く含む組成物、実施例3は樹脂を多く含む組成物、実施例4は樹脂は少なく、代わりにオイルを多く含む組成物であるが、これらはいずれも耐摩耗性、グリップ性能が高いことが分かる。実施例5?7は充填剤のシリカ及びカーボンブラックの量やオイルの量を本発明の範囲内で替えたものであるが、比較例と比べて耐摩耗性及びグリップ性能がバランスよく向上している。比較例のものは、耐摩耗性又はグリップ性能のどちらかは良くても、両方がともに優れているものはない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、グリップ性能に優れると共に、耐摩耗性を有し、例えばオールシーズン用タイヤ向け等として好適に用いられる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(A-1)シス-1,4-結合の含有量が75モル%以上の共役ジエン系重合体の活性末端を、少なくともヒドロカルビルオキシシラン化合物により変性してなる変性共役ジエン系重合体10?50質量%と、(A-2)天然ゴムを含まず、ジエン系合成ゴムを含む合成ゴム成分と、ゴム成分100質量部に対し、(B)ロジン系樹脂、C_(5)留分とC_(9)留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、C_(9)留分を(共)重合して得られる芳香族系共重合樹脂、C_(9)留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種であって、その軟化点が80?200℃である熱可塑性樹脂5?60質量部と(D)オイル30質量部以上を含むことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
(A)ゴム成分100質量部に対し、さらに(C-1)シリカ50?95質量%及び(C-2)カーボンブラック50?5質量%からなる補強用充填剤40?140質量部を加えた請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
(A)ゴム成分100質量部に対し、(D)オイル50?135質量部を加えた請求項2記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
(E)シランカップリング剤を(C-1)成分のシリカに対して5?20質量%の割合で含む請求項2又は3に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項5】
(A)ゴム成分100質量部に対し、(F)下記一般式(VII)で表される無機フィラー5?30質量部を含む請求項1?4のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
aM^(1)・bSiO_(y)・cH_(2)O・・・・・・(VII)
[式中、M^(1)は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、又はこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり、a、b、y及びcは、それぞれ1?5の整数、0?10の整数、2?5の整数、及び0?10の整数である。]
【請求項6】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下に第1次変性と同じ又は異なるヒドロカルビルオキシシラン化合物により第2次変性してなるものである請求項1?5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものである請求項1?5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項8】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、活性末端をヒドロカルビルオキシシラン化合物により第1次変性後、さらに縮合促進剤の存在下に末端に導入されたヒドロカルビルオキシシラン化合物残基と未反応ヒドロカルビルオキシシラン化合物とを縮合反応させてなるものである請求項1?5のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項9】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、第2次変性後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものである請求項6に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項10】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、縮合反応後、さらに多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させてなるものである請求項8に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項11】
ヒドロカルビルオキシシラン化合物が、下記一般式(I)、(II)、(III)で表わされる化合物及びその部分縮合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1?10のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
一般式(I)
【化1】

[式中、A^(1)は、(チオ)エポキシ、(チオ)イソシアネート、(チオ)ケトン、(チオ)アルデヒド、イミン、アミド、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル、(チオ)カルボン酸エステル、(チオ)カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物及び炭酸ジヒドロカルビルエステルから選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R^(1)は単結合又は二価の不活性炭化水素基であり、R^(2)及びR^(3)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、nは0?2の整数であり、R^(2)が複数ある場合、複数のR^(2)は同一でも異なっていてもよく、OR^(3)が複数ある場合、複数のOR^(3)は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない]
一般式(II)
【化2】

[式中、A^(2)は、環状三級アミン、非環状三級アミン、ピリジン、スルフィド及びマルチスルフィドの中から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する一価の基、R^(4)は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R^(5)及びR^(6)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基または炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、mは0?2の整数であり、R^(5)が複数ある場合、複数のR^(5)は同一でも異なっていてもよく、OR^(6)が複数ある場合、複数のOR^(6)は同一でも異なっていてもよく、また分子中には活性プロトン及びオニウム塩は含まれない。]
一般式(III)
【化3】

[式中、A^(3)は、アルコール、チオール、一級アミン及びそのオニウム塩、環状二級アミン及びそのオニウム塩、非環状二級アミン及びそのオニウム塩、環状三級アミンのオニウム塩、非環状三級アミンのオニウム塩、アリール又はアリールアルキルSn結合を有する基、スルフォニル、スルフィニル及びニトリルから選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基、R^(7)は単結合又は二価の不活性炭化水素基、R^(8)及びR^(9)は、それぞれ独立に炭素数1?20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6?18の一価の芳香族炭化水素基を示し、qは0?2の整数であり、R^(8)が複数ある場合、複数のR^(8)は同一でも異なっていてもよく、OR^(9)が複数ある場合、複数のOR^(9)は同一でも異なっていてもよい。]
【請求項12】
多価アルコールのカルボン酸部分エステルが、ソルビタン脂肪酸のモノエステル,ジエステル又はトリエステルである請求項7、9及び10のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項13】
縮合促進剤が、下記一般式(IV)、一般式(V)及び一般式(VI)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種と水とからなるものである請求項6又は8に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
一般式(IV)
Sn(OCOR^(10))_(2) ・・・・・(IV)
[式中、R^(10)は、炭素数2?19の有機基であり、複数ある場合は同一でも異なっていてもよい]
で表される酸化数2のスズの炭素数3?20のカルボン酸塩、
一般式(V)
R^(11)_(r)SnA^(4)_(t)B^(1)_((4-t-r)) ・・・・・(V)
[式中、rは1?3の整数、tは1又は2の整数であり、かつ、t+rは3又は4の整数である。R^(11)は炭素数1?30の脂肪族炭化水素基、B^(1)はヒドロキシル基又はハロゲンである。A^(4)は、(a)炭素数2?30の脂肪族カルボン酸残基、(b)炭素数5?30の1,3-ジカルボニル含有基、(c)炭素数3?30のヒドロカルビルオキシ基、及び(d)炭素数1?20のヒドロカルビル基及び/又は炭素数1?20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換(同一でも異なっていてもよい)されたシロキシ基から選ばれる基であり、R^(11)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、A^(4)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい]
で表される酸化数4のスズ化合物、
一般式(VI)
A^(5)_(x)TiB^(2)_((4-x)) ・・・・・・(VI)
[式中、xは2又は4の整数である。A^(5)は(1)炭素数3?30のヒドロカルビルオキシ基、(2)炭素数1?30のアルキル基及び/又は炭素数1?20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換されたシロキシ基であり、A^(5)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい。B^(2)は、炭素数5?30の1,3-ジカルボニル含有基であり、B^(2)が複数ある場合は同一でも異なっていてもよい]
で表される酸化数4のチタン化合物。
【請求項14】
(A-1)成分の変性共役ジエン系重合体が、変性ポリブタジエンである請求項1?13のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
【請求項15】
請求項1?14のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドゴムに用いた空気入りタイヤ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-22 
出願番号 特願2012-24462(P2012-24462)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山村 周平  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 堀 洋樹
大島 祥吾
登録日 2016-07-08 
登録番号 特許第5965657号(P5965657)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 タイヤトレッド用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ  
代理人 藤本 英介  
代理人 宮尾 明茂  
代理人 藤本 英介  
代理人 神田 正義  
代理人 馬場 信幸  
代理人 神田 正義  
代理人 馬場 信幸  
代理人 宮尾 明茂  
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