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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01N
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  A01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01N
管理番号 1333215
異議申立番号 異議2016-701061  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-17 
確定日 2017-09-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5919006号発明「散布性および付着性の改良された水性懸濁農薬製剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5919006号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1、2]について訂正することを認める。 特許第5919006号の請求項1に係る特許を維持する。 特許第5919006号の請求項2に係る特許についての異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5919006号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成24年1月30日を出願日として特許出願され、平成28年4月15日に特許権の設定登録がされ、同年5月18日にその特許公報が発行され、同年11月17日に、その請求項1、2に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 森 治 (以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年3月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月29日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求があり、同年7月26日付けで特許異議申立人から意見書の提出があったものである。

第2 訂正の適否についての判断
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である平成29年5月29日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。

1 訂正の内容
訂正内容は、平成29年5月29日付けの訂正請求書に添付した特許請求の範囲の記載のとおりに訂正するものである。

訂正事項 : 請求項2を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正の目的の適否
訂正事項は、請求項を削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)新規事項の有無
訂正事項は、請求項を削除したもので、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項は、請求項を削除したもので、実質上特許請求の範囲特許請求の範囲の拡張・変更するものとはいえないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 一群の請求項
訂正前の請求項1及び2は、請求項2が請求項1を引用しているが、訂正により請求項2が削除され、訂正後の請求項の中に一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係その他経済産業省令で定める関係を有する請求項はない。
したがって、訂正後の請求項1は、特許法第120条の5第4項に適合する一群の請求項を構成しない。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1、2]についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05?10.0重量部)、増粘剤および水を含有する水性懸濁農薬製剤を、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程を有することを特徴とする、水性懸濁農薬製剤の調製方法。
【請求項2】(削除) 」

第4 取消理由

1 特許異議申立人が申し立てた取消理由
特許異議申立人が申し立てた取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1:訂正前の請求項1に係る特許は、甲第4号証及び甲第4号証の2の記載事項より、その出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由2:訂正前の請求項1に係る特許は、甲第4号証及び甲第4号証の2の記載事項より、その出願前に日本国内において頒布された甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由3:訂正前の請求項1に係る特許は、その出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明、並びに、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第12号証の1?3の技術的事項及び甲第12号証の4に記載された事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由4:訂正前の請求項1に係る特許は、その出願前に日本国内において頒布された甲第2号証に記載された発明、甲第3号証の2及び甲第12号証の4に記載された事項、並びに、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証の1、甲第12号証の1?3の技術的事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由5:訂正前の請求項2に係る特許は、その出願前に日本国内において頒布された甲第1号証に記載された発明、甲第4号証及び甲第4号証の2の記載事項、甲第6?9号証に記載された技術的事項及び甲第12号証の4に記載された事項、並びに、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証の1?4、甲第8号証の2及び甲第12号証の1?3の技術的事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由6:訂正前の請求項2に係る特許は、その出願前に日本国内において頒布された甲第2号証に記載された発明、甲第4号証及び甲第4号証の2の記載、甲第3号証の2、甲第6?9号証及び甲第10号証の1、2に記載された技術的事項、並びに、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証の1、甲第5号証の1?4、甲第8号証の2及び甲第12号証の1?4の技術的事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由7:訂正前の請求項2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由8:訂正前の請求項2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由9:訂正前の請求項2に係る特許については、その発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由10:平成27年7月27日付けの手続補正による補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、訂正前の請求項2に係る特許は、同法第17条の2第3項の規定を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2004-26845号公報
甲第2号証:特開平9-278602号公報
甲第3号証の1:クリミネ工業株式会社の公式ホームページ,[online]「高純度ソジウム・モンモリロナイト クニピア」[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.kunimine.co.jp/kaseihin/kasei_01.htm
甲第3号証の2:特開平5-39202号公報
甲第4号証:実験成績証明書
作成日:平成28年11月9日
住所:茨城県つくば市御幸が丘45
実験及び作成者:保土谷JRFコントラクトラボ株式会社
甲第4号証の2:甲第4号証の実験成績証明書が、保土谷JRFコントラクトラボ株式会社 合成部部長 納谷 朗が実験及び作成したことを陳述する陳述書
甲第5号証の1:北興化学工業株式会社の公式ホームページ,[online]2016年,「エーワン〇Rフロアブル」,[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.hokkochem.co.jp/archives/nouyaku/%e3%82%a8%e3%83%bc%e3%83%af%e3%83%b3%e3%83%95%e3%83%ad%e3%82%a2%e3%83%96%e3%83%ab(審決注:〇RはRの丸付き文字を表す。以下同様。)
甲第5号証の2:独立行政法人農林水産消費安全技術センターの公式ホームページ,農薬登録情報検索システム[online],「農薬登録情報 登録番号第22610号」の検索結果,[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.acis.famic.go.jp/search/vt11g303.do
甲第5号証の3:独立行政法人農林水産消費安全技術センターの公式ホームページ,農薬登録情報検索システム[online],「農薬登録情報 登録番号第22610号」「農薬の名称 ホクコーエーワンフロアブル」についての含有成分,性状等についての情報,[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.acis.famic.go.jp/search/vt11g304.do
甲第5号証の4:北興化学工業株式会社の公式ホームページ[online]2015年「ホクコーエーワンフロアブルの製品安全データシート」,[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.hokkochem.co.jp/wp-content/uploads/22610_sds.pdf
甲第6号証:特開平10-117659号公報
甲第7号証:特開平11-169055号公報
甲第8号証:「フロアブル剤専用MODEL:F-2.5蓄圧式噴霧機取扱説明書」ヤマト農磁株式会社発行
甲第8号証の2:独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 東北農業研究センター編集・発行,「りんごの特別栽培で新たに顕在化した害虫の合理的防除に関する検討会 講演要旨集」(平成24年12月18日)p.5?8
甲第9号証:特開平8-149号公報
甲第10号証の1:CDS Tomlin編,「Pesticide Manual Thirteenth Edition」(2003) p.853?854,BCPC発行
甲第10号証の2:甲第10号証の1の部分訳
甲第10号証の3:独立行政法人 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の公式ホームページ,当該ホームページでピリブチカルブの農薬抄録を掲載していること[online],2010年11月2日[平成28年11月14日検索],インターネットURL:http://www.acis.famic.go.jp/syouroku/pyributicarb/index.htm
甲第10号証の4:独立行政法人 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の公式ホームページ,ピリブチカルブ農薬抄録 抄録(1/3)[online],2010年11月2日,「農薬抄録 ピリブチカルブ[除草剤]」[平成28年11月14日検索],インターネットURL:http://www.acis.famic.go.jp/syouroku/pyributicarb/pyributicarb_01.pdf
甲第11号証の1:特開2013-155137号公報
甲第11号証の2:独立行政法人 工業所有権情報・研修館 特許情報プラットホーム(J-PlatPat) 特許・実用新案、意匠、商標の簡易検索[online],本件の平成27年7月27日付け手続補正書[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/tokujitsu/pfwj/BTmPFWJ_GM402GetContentsAction.action
甲第12号証の1:Elementis Specialtiesの公式ホームページ[online],「Personal Care」[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.elementis-specialties.com/esweb/esweb.nsf/pages/consumer?opendocument
甲第12号証の2:Elementis Specialtiesの公式ホームページ[online],「Crop Protection」[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.elementis-specialties.com/ esweb/esweb.nsf/pages/cropprotection
甲第12号証の3:Elementis Specialtiesの公式ホームページ,作物保護用レオロジー添加剤 抄録[online],2009年,「作物保護剤とレオロジー」[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.yumpu.com/en/document/view/17197844/rheological-additives-for-crop-protection-elementis-specialties/5
甲第12号証の4:甲第12号証の3の部分訳

2 当審が通知した取消理由の概要
訂正前の請求項1、2に係る特許に対して平成29年3月28日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。

理由1:訂正前の請求項2に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由2:平成27年7月27日付けの手続補正による補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、訂正前の請求項2に係る特許は、同法第17条の2第3項の規定を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第1号の規定により取り消されるべきものである。

理由3:訂正前の請求項2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由4:訂正前の請求項2に係る特許については、その発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由5:請求項1に係る発明は、甲第4号証及び甲第4号証の2の記載事項より、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1又は2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第29条の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由6:請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1、2に記載された発明、刊行物3?5に記載の技術的事項及び電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報1、2に示される技術的事項に基いて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

刊行物1:特開2004-26845号公報(甲第1号証)
刊行物2:特開平9-278602号公報(甲第2号証)
刊行物3:特開平5-39202号公報(甲第3号証の2)
刊行物4:特開平10-117659号公報(甲第6号証)
刊行物5:特開平11-169055号公報(甲第7号証)

電子的技術情報1:Elementis Specialtiesの公式ホームページ,作物保護用レオロジー添加剤 抄録[online],2009年,「作物保護剤とレオロジー」[平成28年11月14日検索],インターネットURL:https://www.yumpu.com/en/document/view/17197844/rheological-additives-for-crop-protection-elementis-specialties/5、http://www.elementisspecialties.com/esweb/esweb.nsf/pages/consumer?opendocument、及び、http://www.elementisspecialties.com/esweb/esweb.nsf/pages/cropprotection(甲第12号証の1?4)
電子的技術情報2:独立行政法人 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の公式ホームページ,ピリブチカルブ農薬抄録 抄録(1/3)[online],2010年11月2日,「農薬抄録 ピリブチカルブ[除草剤]」[平成28年11月14日検索],インターネットURL:http://www.acis.famic.go.jp/syouroku/pyributicarb/index.htm、及び、http://www.acis.famic.go.jp/syouroku/pyributicarb/pyributicarb_01.pdf(甲第10号証の3、甲第10号証の4)

甲第4号証:実験成績証明書
作成日:平成28年11月9日
住所:茨城県つくば市御幸が丘45
実験及び作成者:保土谷JRFコントラクトラボ株式会社
甲第4号証の2:甲第4号証の実験成績証明書は、保土谷JRFコントラクトラボ株式会社 合成部部長 納谷 朗が実験及び作成したことを陳述する陳述書

なお、当審が通知した取消理由1は特許異議申立人が申し立てた取消理由7と、当審が通知した取消理由2は特許異議申立人が申し立てた取消理由10と、当審が通知した取消理由3は特許異議申立人が申し立てた取消理由8と、当審が通知した取消理由4は特許異議申立人が申し立てた取消理由9と、当審が通知した取消理由5は特許異議申立人が申し立てた取消理由1、2と、及び、当審が通知した取消理由6は特許異議申立人が申し立てた取消理由3?6と、それぞれ同じである。

なお、特許異議申立人が提出した証拠の内、甲第3号証の1は、甲第3号証の2と同じく、甲第2号証に記載の「クニピアF」が液体農薬で増粘剤として使用されることを示すものである。
甲第5号証の1?4は、甲第4号証(実験成績証明書)の実施例4、5で用いた農薬製品「ホクコーエーワン○Rフロアブル」の含有成分、性状及び流通時期についての情報が示されているものであり、甲第1、2号証と同じく、請求項1に係る発明は、甲第4号証及び甲第4号証の2の記載事項より、当該甲第5号証の1?4に示される農薬製品「ホクコーエーワン○Rフロアブル」と同一であることを示すものである。
甲第8号証は、甲第4号証(実験成績証明書)の実施例5で用いた「フロアブル剤専用蓄圧式散布機」の取扱説明書、甲第8号証の2は、甲第8号証が頒布されたこと及びその公知日を示すものであり、甲第6、7号証と同じく、水性懸濁農薬製剤を蓄圧式散布機を用いて散布することは周知技術であることを示すものである。
甲第9号証は、甲第6、7号証と同じく、水性懸濁農薬製剤の散布に蓄圧式散布機を用いることは公知であり、蓄圧式散布機への空気の加圧充填作業は力のいる作業であることを示すものである。
甲第10号証の1、2は、甲第10号証の3、4と同じく、ピリブチカルブが水田で除草剤として使用されることは周知事項であることを示すものである。
このように、特許異議申立人の提出した証拠の内容は、当審が通知した取消理由で用いた刊行物及び電子的技術情報に示される技術的事項に全て網羅されており、特許異議申立人の証拠を考慮して判断しても結論に影響はないといえる。

第5 当審の判断
当審は、本件発明1は、特許異議申立人が申し立てた取消理由及び当審が通知した取消理由によっては、取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。
さらに、訂正前の請求項2に係る特許は、訂正により削除されているので、訂正前の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
なお、訂正前の請求項2に係る特許について請求項2は削除されたので、訂正前の請求項2に係る特許について当審が通知した取消理由1?4(特許異議申立人が申し立てた取消理由7?10に該当)については、以下判断をしない(その際用いた刊行物4、5及び電子的技術情報2を判断に用いないこととなる)。

1 理由5(特許法第29条第1項第3号)及び理由6(特許法第29条第2項)について

(1)刊行物の記載について

ア 刊行物1
1a「【請求項1】20℃の水に対する溶解度が100ppm以下である除草活性成分と保護コロイド剤(ただし、水溶性セルロースエーテルを除く。)および水よりなることを特徴とする、湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤。
【請求項2】請求項1の保護コロイド剤がポリビニルアルコールであることを特徴とする、湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤。
【請求項3】請求項2のポリビニルアルコールが平均重合度2000以下でケン化度が69?90モル%であることを特徴とする、湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤。」

1b「【技術分野】【0001】本発明は、製剤を水で希釈することなく容器からそのまま水田に滴下することにより散布でき、稲の移植前処理、移植同時処理、移植後処理のできる湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤に関する。
・・・・・
【0004】水を分散媒とした湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤は、薬剤散布時に、水で希釈することなく容器からそのまま田面水に滴下できるため、安全性、経済性、省力化などの点で優れた剤型である。しかし、これまでの湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤は、長期貯蔵中に分散質が沈降したり、田面水中での除草活性成分の拡散が不充分なため、除草効果が充分発揮されなかったり、また、製剤処方中に非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤などの界面活性剤を含むため、散布時、稲体へ薬剤が付着しやすく薬害を発生するなどの問題を生じやすかった。
【0005】従って、従来の湛水下水田への直接散布用水性懸濁剤に代わって製剤安定性、散布時における除草活性成分の水中拡散性が優れ、稲体に対して薬害のない水性懸濁製剤の開発が望まれており、本発明はこれらの要望に合致した湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤を提供せんとするものである。 【課題を解決するための手段】
【0006】そこで本発明者らは、良好なる製剤安定性と水中拡散性の改善および薬剤の稲体への付着を防ぎ薬害を防ぐことを目的とし鋭意研究した。その結果、20℃の水に対する溶解度が100ppm以下の除草活性成分と、保護コロイド剤(ただし、水溶性セルロースエーテルを除く。)および水よりなる水性懸濁製剤がこれらの目的に対して優れた効果を示すことを見い出し、本発明を完成するに至った。」

1c「【0007】また、本発明の保護コロイド剤としてポリビニルアルコール、特に特定の平均重合度、ケン化度のポリビニルアルコールを使用することにより、製剤安定性、水中拡散性の良好な湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤を見いだした。すなわち、第1の本発明の要旨とするところは、20℃の水に対する溶解度が100ppm以下である除草活性成分と、保護コロイド剤(ただし、水溶性セルロースエーテルを除く。)および水よりなることを特徴とする、湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤にある。
【0008】本発明において使用しうる除草活性成分とは、20℃の水に対する溶解度が100ppm以下の除草活性成分であればよく、1種または2種以上を併用しても何ら問題はない。
【0009】このような除草活性成分として・・ビフェノックス・・
・・・・・
【0012】本発明に使用できる保護コロイド剤とは、例えば、ポリビニルアルコール・・
・・・・・
【0015】保護コロイド剤の製剤中の含有量は、0.1?20重量%、好ましくは0.5?15重量%である。
・・・・・
【0017】増粘剤としては・・キサンタンガム・・
・・・・・
【0019】本発明の水性懸濁製剤は、代かき作業時以降の水田が湛水状態であれば水深には関係なく使用することができる。つまり田植え時のような土壌表面にわずかな水層が存在するような状態から、水田全面に水深3?5cmの水を張った状態まで、土壌表面が乾ききった状態でなければ散布が可能である。・・
・・・・・
【0021】本発明の水性懸濁製剤の散布は、原液をそれ以上の水に希釈することなく用いるか、あるいは少量の水を用いて2?5倍の高濃度希釈液とし、水田に滴下処理を行えばよく、粒剤のように水田全面に均一散布する必要はない。また、散布の方法は、原液または高濃度希釈液を例えば500ml容量のプラスチック製容器に入れて手振りするか、または加圧式散布機を用いて噴射または噴霧すればよい。さらに近年普及しているRCヘリコプターからの空中散布または滴下も可能である。また、潅漑水の流入に際して水田の水の取り入れ口(水口)で流入水に滴下処理を行い、流入水と共に水田に流し込んでもよい。
・・・・・
【発明の効果】【0023】本発明の湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤を実施することにより、次のような作用効果がもたらされる。第1に散布時に薬剤が稲体に付着することがないため、稲に対する薬害が少なく、しかも高い除草効果を示す。第2に長期にわたり製剤の安定性がよく、しかも田面水中での除草活性成分の拡散性がよい。第3に水を分散媒とした製剤であるため、発火性、引火性などの危険が少なく、人体に対する刺激性、臭気による環境衛生上の問題がない。第4に代かき作業時以降、稲の移植前、移植同時処理、移植後に散布でき、特に、稲の移植以降、湛水状態であれば、何れの時期においても散布でき、水で希釈することなく薬剤を容器に入れたまま畦畔より滴下するか、入水時に水口に滴下して流入水と共に流し込むだけでよく、薬剤散布作業が省力化できる。
・・・・・
【0025】なお、実施例中の部は、すべて重量%を示す。」

1d「【実施例4】【0032】水66部に平均重合度500s、ケン化度80.0?83.0モル%のポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールPVA-405」株式会社クラレ製)4部を溶解し、ビフェノックス原体21部とプロピレングリコール3部を加え、ダイノミルKDL型を用いて粉砕液の平均粒子径が3μmになるように微粉砕した。
【0033】なお、粉砕用メディアとしては、直径0.7?1.2mmの硬質ガラスビーズを用いた。この粉砕液に2%キサンタンガム水溶液6部を加え、スリーワンモータを用いて均一に混合して水性懸濁製剤を得た。」

1e「【0060】(試験例1)水稲付着および薬害試験
1/5000アールのワグネルポットに水田土壌を充填し、水を加えて化成肥料(N:P:K=17:17:17)2gを混入し代かきを行った後、2.5葉期の水稲苗(品種:日本晴)をポットあたり2本移植した。試験は1処理区3ポット(合計6本)で実施し、水稲移植5日後に実施例に準じて調製した水性懸濁製剤50μlを水稲の第2葉の葉身中央部に葉面より1cmの高さからマイクロシリンジで滴下して葉身に薬剤が付着した株数を調査した。また薬剤処理5日後に下記の基準により水稲薬害程度を調査した(表1?表2中の薬害程度は6株の平均値)。結果は表1?表2に示す。
【0061】調査基準
0:薬害なし
1:付着部に薬痕が残る
2:付着葉の1/4以下が褐変
3:付着葉の1/4?1/2が褐変
4:付着葉の1/2?3/4が褐変
5:付着葉の3/4以上が褐変
6:付着葉が枯死
7:付着葉が枯死し、さらに新葉(第4葉)の1/2以下が褐変
8:付着葉が枯死し、さらに新葉(第4葉)の1/2以上が褐変
9:付着葉および新葉が枯死
10:稲全体が枯死
【0062】(試験例2)長期保存安定性試験
実施例に準じて調製した水性懸濁製剤30mlを容量30ml(φ17mm×長さ180mm)の試験管に入れ、密栓をし、20℃または40℃の恒温室に静置する。20℃で3か月、40℃で3か月後の分離状態を試験管中の懸濁層が下層に沈降し、上層に生じた水層(上スキ層)と全層の高さ(cm)を測定し、懸濁安定性を下記式により算出した。結果は表1?表2に示す。
【0063】

【0064】(試験例3)拡散性試験
1区画の面積が9(3m×3m)の試験区(湛水深5cm)を作り、その中央(A点)に実施例に準じて調製した試料を水面から1mよりピペットで表1?表2に示した処理薬量の面積相当量を直接滴下した。処理3時間後に試験区の中央(A点)および4隅(B?E点の各地点)についての水深5cm?水面までの水をおのおの20mlずつ採取し、水中の除草活性成分濃度をHPLCにて分析した。
【0065】なお、水の採取は、内径1cm長さ8cmのガラス管を用い、田面水へガラス管を深さ5cmまで静かに入れ、ガラス管上部にゴム栓をし、静かに引き抜き、田面水約4mlを採取し、この操作を同一地点で5回繰り返して、1地点あたり合計20mlの水を採取する方法を用いた。そして、拡散性は、次式により除草活性成分が試験区内の水中に均一に拡散した場合の理論水中濃度に対する割合で示した。
【0066】

【0067】結果は表1?表2に示す。
・・・・・
【0069】【表2】



イ 刊行物2
2a「【請求項1】1種又は2種以上の水難溶性農薬原体と、ホモポリサッカライドと、スメクタイト系粘土鉱物質とを含有することを特徴とする水懸濁状農薬製剤。
【請求項2】ヘテロポリサッカライドガムを併用することを特徴とする請求項1に記載の水懸濁状農薬製剤。
【請求項3】カルボキシメチルセルロースを併用することを特徴とする請求項1又は2に記載の水懸濁状農薬製剤。
【請求項4】ホモポリサッカライドがプルランであることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の水懸濁状農薬製剤。
【請求項5】水懸濁状農薬製剤の粘度が室温で10?200mPa・sであることを特徴とする請求項1?4のいずれか一つに記載の水懸濁状農薬製剤。」

2b「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、水に難溶性の農薬原体を有効成分とし、低粘度で、且つ長期にわたって安定な性状を保持する水懸濁状農薬製剤に関する。
・・・・・
【0003】このため、近年微粒子化された農薬原体を水等に分散懸濁化した水懸濁状農薬製剤、即ちゾル剤又はフロアブル剤と呼ばれる液状の製剤品(以下、これらをゾル剤と称する場合がある。)が多く用いられるようになってきた。・・・
・・・・・
【0008】【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、水中での分散性がよく、粘性が低く、長期間保存しても沈降分離を殆ど生ぜず、長期にわたり良好な粘度特性及び保存安定性を有する、水難溶性農薬原体を含む水懸濁状農薬製剤を提供することにある。
・・・・・
【0010】即ち、本発明は、1種又は2種以上の水難溶性農薬原体と、ホモポリサッカライドと、スメクタイト系粘土鉱物質とを含有することを特徴とする水懸濁状農薬製剤である。また、本発明は、該水懸濁状農薬製剤に更にヘテロポリサッカライドガムを併用することを特徴とする水懸濁状農薬製剤や、カルボキシメチルセルロースを併用することを特徴とする水懸濁状農薬製剤を含むものである。」

2c「【0012】【発明の実施の形態】本発明に使用可能な水難溶性農薬原体は、水に難溶性であれば特に制限はなく・・このような農薬原体としては、例えば、O-3-tert-ブチルフェニル-6-メトキシ-2-ピリジル(メチル)チオカルバマート(ピリブチカルブ)・・・
・・・・・
【0017】本発明で使用されるホモポリサッカライドは、1種の単糖より構成される多糖類を表わし、例えばプルラン、カードラン等が挙げられる。プルランは、微生物の発酵作用により生産される直鎖状高分子量の多糖類で、構成単糖類はグルコースからなる。
【0018】本発明で使用されるスメクタイト系粘土鉱物質には、天然及び合成のスメクタイト粘土鉱物が含まれる。スメクタイトとは、通常葉ろう石及び滑石の粘土構造において、種々の金属原子の置換によって得られる膨張性粘土鉱物の一群を示し、例えばモンモリロナイト・・等を例示することができ、好ましくはモンモリロナイト、ベントナイトが良い。
【0019】これらのスメクタイト系粘土鉱物質は、例えば・・クニピアF(クニミネ工業株式会社製、登録商標)・・等の商品名で市販されている。
・・・・・
【0022】本発明の水懸濁状農薬製剤は、上記組成に更にヘテロポリサッカライドガム及び/又はカルボキシメチルセルロースを併用することにより、その保存安定性が更に改善される。・・・
・・・・・
【0035】次に、本発明のゾル剤の製造法の概略を示す。まず、ホモポリサッカライド及びスメクタイト系粘土鉱物質を所定量の水性溶媒に加え、撹拌機にて分散させた後、界面活性剤、農薬原体を加える。更に必要に応じて凍結防止剤、消泡剤等を加え、撹拌機により混合分散させる。
【0036】次に、この混合物を湿式粉砕機、例えばダイノミルKDL型(WAB社製)、システムゼータLMZ型(アシザワ株式会社製)、パールミルTEX型(アシザワ株式会社製)等を用いて農薬原体の大部分が10μm以下、好ましくは0.1?7μmの範囲の平均粒子径となるように湿式粉砕を行い、目的の水懸濁状農薬製剤(ゾル剤)を得る。」

2d「【0038】【実施例】・・尚、以下の「部」は「重量部」を表わす。
・・・・・
【0043】[実施例5]プルラン2部、クニピアF1部及びカルボキシメチルセルロース0.1部を水77.2部に混合分散させ、これにポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(松本油脂株式会社製)0.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル化塩(同上)1.0部を加えて混合溶解させた後、ピリブチカルブ原体12部、変性シリコーンエマルジョン0.1部及びエチレングリコール6部を加え、湿式粉砕機にて粉砕し均質なゾル剤を得た。
【0044】[実施例6]プルラン2部、クニピアF1部及びカルボキシメチルセルロース0.2部を水77.1部に混合分散させ、これにポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(ローヌプーラン株式会社製)0.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル化塩(同上)1.0部を加えて混合溶解させた後、ピリブチカルブ原体12部、変性シリコーンエマルジョン0.1部及びエチレングリコール6部を加え、湿式粉砕機にて粉砕し均質なゾル剤を得た。
・・・・・
【0046】[実施例8]プルラン2部、クニピアF1部及びカルボキシメチルセルロース0.1部を水66.2部に混合分散させ、これにポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル(同上)0.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル化塩(同上)1.0部及びアルキルアリールスルホン酸ナトリウム共重合物1部を加えて混合溶解させた後、ピリブチカルブ原体10部、ビフェノックス1部、ブロモブチド12部、変性シリコーンエマルジョン0.1部及びエチレングリコール6部を加え、湿式粉砕機にて粉砕し均質なゾル剤を得た。
【0047】[実施例9]プルラン2部、クニピアF1部及びカルボキシメチルセルロース0.2部を水73.5部に混合分散させ、これにショ糖脂肪酸エステル(同上)0.8部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテル硫酸エステル化塩(同上)1.0部を加えて混合溶解させた後、ピリブチカルブ原体10部、テニルクロール原体4部、ベンスルフロンメチル1.4部、変性シリコーンエマルジョン0.1部及びエチレングリコール6部を加え、湿式粉砕機にて粉砕し均質なゾル剤を得た。
・・・・・
【0060】(試験例1)保存安定性の測定
調製したゾル剤を500mlのガラス瓶に入れ、40℃の恒温器に3カ月間静置保存し、ゾル剤の分離沈降性を測定した。測定は、液全体の高さに対する上澄液部の高さの割合(%)で算出した。また測定終了後、光学顕微鏡(×400)及び粒度分布測定装置(LS230:コールター社製)を用いて、凝集物の形成の有無を確認した。保存安定性は上澄液部の割合が小さいほど良好であり、また凝集物の形成はゾル剤として不適である。
【0061】(試験例2)粘度測定
試験例1で用いたゾル剤のガラス瓶の倒立を10回繰り返し行った後、粘度を測定した。測定にはB型粘度計(BM型、東京計器株式会社製)を用い、測定条件はローターNo.3、ローター回転数60rpm、製剤温度20±0.4℃で行った。粘度は経時的変化が少ないものほど良好である。
【0062】(試験例3)水中における分散性
250mlメスシリンダーに水250mlを入れ、ピペットにてゾル剤を滴下して分散状態を観察し、次の4段階での評価を行った。分散状態は良好なものほど好ましい。
【0063】
◎:分散状態が極めて良好。薬剤は水の中で拡散するように分散する。
○:分散状態が良好。薬剤は水の中で一部拡散しながら液滴の形で水中を落ちていくが、底に着くまでには分散してしまう。
△:分散状態がやや悪い。薬剤の大部分が液滴の形で底まで落ちるが、メスシリンダーを振れば分散する。
×:分散状態が悪い。薬剤は液滴の形で底まで落ち、メスシリンダーを振っても容易に分散しない。
【0064】(試験例4)容器残量の測定
ゾル剤100gを一般的な液状農薬保存用の100mlポリエチレン容器に入れ、容器残量の割合(%)を測定した。その方法はポリエチレン容器の倒立を10回繰り返し行った後、容器を10秒間倒立してゾル剤を取り出し、ポリエチレン容器の自重を引いた容器残量からその割合を算出した。容器残量は少ないほど好ましい。
【0065】【表1】



2e「【0067】【発明の効果】本発明は、○1長期間保存しても沈降分離を殆ど生じることがなく、ハードケーキング及び凝集物を形成することがない。○2粘性が低く、使用時の湿式粉砕効率が向上することにより生産性が向上し、保存容器への充填包装が容易である。更に、使用時の正確に計量できることにより、安定した防除効果が得られることや、容器中の薬液残量の確認が容易であること、水中での分散性がよく、散布液調製が容易に行えること、また空中又は直播き散布における原液散布において散布装置内の目づまり等がなく、安定した薬剤散布が可能であること、使用後、容器中の薬液残量が少ないこと等の効果に加え、○3低粘度領域、即ち100mPa・s以下の粘度においても、長期にわたって良好な粘度特性及び保存安定性を有する、優れた水懸濁状農薬製剤を提供できる。」(当審注:○1?○3は、それぞれ1?3の丸付き数字を表す。以下同様。)

ウ 刊行物3
3a「【請求項1】融点が100℃以下で水に対する溶解度(20?25℃)が0.5%重量部以下の農薬原体、界面活性剤、および水相からなることを特徴とする転相乳化された水中油型農薬組成物。」

3b「【0032】参考例1
・・・クニピアF(クニミネ工業(株)製増粘剤、ソジウム・モンモリナイト)・・」

エ 刊行物4
4a「【請求項1】蓄圧式散布容器のノズルから水稲用液状農薬を直射的に湛水下水田へ散布する方法。
・・・・・
【請求項3】水稲用液状農薬の形態が水和剤もしくは顆粒水和剤を水に懸濁させた形態、フロアブル形態また乳剤形値である請求項1記載の方法。」

4b「【0004】・・蓄圧式散布容器とは、液状農薬を充填後に容器内を加圧・蓄圧することのできる散布容器であつて、散布に際し、ノズルへの通路を開くことによりノズルから容器内の液状農薬を噴射する形式のものを意味する。また、直射的に散布とは、ノズルから、まとまつた薬液流として、水田の目的箇所に散布することを意味する。」

4c「【0013】【実施例】実施例1
30a(30×100m)区画の水田4筆に定法によりイネを移植し、水深を4cmに保った。移植7日後に下記の薬剤を散布した。市販のイマゾスルフロン・ピリブチカルブ・ダイムロンフロアブル〔商品名アワードフロアブル、以下アワードという;ピリブチカルブ:O-3-tert-ブチルフェニル=6-メトキシ-2-ピリジル(メチル)チオカーバメート;ダイムロン:1-(α,α-ジメチルベンジル)-3-(パラトリル)尿素〕、ベンスルフロンメチル・ピリブチカルブ・ダイムロンフロアブル〔商品名カルショットフロアブル、以下カルショットという〕、ベンスルフロンメチル・テニルクロール・ダイムロンフロアブル〔商品名クサメッツフロアブル、以下クサメッツという;テニルクロール:2-クロロ-N-(3-メトキシ-2-テニル)-2,’,6’-ジメチルアセトアニリド〕の各原液を1500ml用意した。また、ピラゾスルフロンエチル・カフェンストロール顆粒水和剤(試験名NC-355顆粒水和剤、以後NC-355という)180gを水で溶かし1500mlとした溶液を用意した。それら液状農薬を図1に示す蓄圧式散布器の容器(2000ml容量)に充填し、ポンプを作動して容器内の圧力が約5kg/cm2 になるまで加圧・蓄圧した。この蓄圧式散布器を持ち、畦畔より、3?4歩に一度の割合(1.5?2m間隔)で、ノズルを若干横方向に振つて、畦畔から約6mの地点に薬剤を散布する。この操作を繰り返しながら畦畔を一周して、30×100m区画の水田の畦畔から約6mの地点に合計1500mlの薬剤を額縁状に散布した。・・」

オ 刊行物5
5a「【請求項1】除草活性成分と水を必須成分として含有する除草剤フロアブルを、原液かまたはこれを水で希釈して耐圧容器に入れて加圧し、該容器に連結した細孔を有するノズルを用いて散布することを特徴とする、湛水田における除草剤フロアブルの散布方法。」

5b「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、湛水田における除草剤フロアブル(懸濁剤)の省力的な散布方法に関する。
・・・・・
【0014】(a)蓄圧式噴霧器HS-401X型(株式会社工進技研製)を改良し、直噴専用のφ1?2mmの丸孔を有するノズルの着脱が可能で、パッキンを耐薬品性パッキンに変更したもの。」

5c「【0024】試験例1 クサメッツフロアブル(北興化学工業株式会社製の市販除草剤フロアブルの商品名)の原液または表1に示すようにそれぞれ水で希釈してこれを直噴専用の表1に示す丸孔を有するノズルをそれぞれ取り付けた散布器具の耐圧容器内に3リットル入れ、蓋(ポンプ)を閉めて、ポンプにより表1に示す値にそれぞれ加圧した。
【0025】そして、クサメッツフロアブルの原液または希釈薬液を上記の散布器より散布し、吐出時間、吐出量、ノズルの角度、製剤の飛距離、飛散状況等を調べた。」

カ 電子的技術情報1
e1a「(右上標題)作物保護製剤とレオロジー
・・・・・
ずり流動化を示す流動は、製品の適用時の性能を変更する際に役立つ(図3)。しかし、懸濁液のコントロールのためには、低ずり速度での粘度が極めて重要である。懸濁液は重力に抵抗するのに十分に高い降伏点となるようにすることが最も効果的である。」(5頁左欄6?12行)

e1b「図3



キ 電子的技術情報2(甲10の4)
e2a「 農薬抄録
ピリブチカルブ
[除草剤]
・・・・・
(作成会社名)日本曹達株式会社
(作成責任者・所属)農業化学品事業部農業化学品登録グループ」(表紙)

e2b「

」(適用-2)

e2c「

」(適用-4)

ク 甲第4号証及び甲第4号証の2
甲第4号証は、平成28年11月9日に保土谷JRFコントラクトラボ株式会社名で実験及び作成された実験成績証明書であり、甲第4号証の2として、この「実験成績証明書」は同社合成部部長 納谷 朗が実験及び作成をしたことを陳述する陳述書が提出されているものである。甲第4号証には、次のことが示されている。

「 実験結果
以下の実験例において、20℃の粘度は、レオメーター(AR-G2(TA Instruments社製))を使用し、ずり速度を0から10000まで5分かけて上げていき、測定した。
実験例1
粘度計校正用標準液JS20(日本グリース株式会社製、校正値:16.781mPa・s)の20℃の粘度を測定したところ、ずり速度38.8(1/s)の時は15.5mPa・s、ずり速度4693(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度5253(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度5847(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度6636(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度7261(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度8314(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度9366(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度10320(1/s)の時は15.6mPa・sであった。
実験例2
水66部に平均重合度500、ケン化度80.0?83.0モル%のポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールPVA-405」株式会社クラレ製)4部を溶解し、ビフェノックス原体21部とプロピレングリコール3部を加え、自転・公転ミキサー(商品名「あわとり練太郎」株式会社シンキー製)を用いて粉砕液の平均粒子径が3μmになるように微粉砕した。
なお、粉砕用メディアとしては、直径0.7?1.2mmの硬質ガラスビーズを用いた。この粉砕液に2%キサンタンガム水溶液6部を加え、ポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA AG社製)を用いて均一に混合して製剤Aを得た。
得られた製剤Aの20℃の粘度を測定したところ、ずり速度38.8(1/s)の時は15.3mPa・s、ずり速度4694(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度5254(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度5848(1/s)の時は15.5mPa・s、ずり速度6638(1/s)の時は15.4mPa・s、ずり速度7262(1/s)の時は15.3mPa・s、ずり速度8316(1/s)の時は15.2mPa・s、ずり速度9367(1/s)の時は15.2mPa・s、ずり速度10320(1/s)の時は15.1mPa・sであった。
実験例3
プルラン2部、クニピアF1部及びカルボキシメチルセルロース(商品名「NS-300」五徳薬品株式会社製)0.1部を水77.2部に混合分散させ、これにポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名「ノニポール85」三洋化成工業株式会社製)0.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル化塩(商品名「ニューカルゲンFS-3EG」竹本油脂株式会社製)1.0部を加えて混合溶解させた後、ピリブチカルブ原体12部、変性シリコーンエマルジョン0.1部及びエチレングジコール6部を加え、湿式粉砕機にて粉砕し製剤Bを得た。
得られた製剤Bの20℃の粘度を測定したところ、ずり速度38.7(1/s)の時は33.8mPa・s、ずり速度4691(1/s)の時は17.3mPa・s、ずり速度5253(1/s)の時はl7.2mPa・s、ずり速度5846(1/s)の時は17.0mPa・s、ずり速度6636(1/s)の時は16.8mPa・s、ずり速度7260(1/s)の時は16.6mPa・s、ずり速度8315(1/s)の時は16.5mPa・s、ずり速度9366(1/s)の時は16.3mPa・s、ずり速度10320(1/s)の時は16.2mPa・sであった。」(2頁1行?下から3行)

(2)刊行物に記載された発明

ア 刊行物1に記載された発明
刊行物1は、「20℃の水に対する溶解度が100ppm以下である除草活性成分と保護コロイド剤(ただし、水溶性セルロースエーテルを除く。)および水よりなることを特徴とする、湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤」(1a 請求項1)に関し記載するものであって、実施例4には「水66部に平均重合度500s、ケン化度80.0?83.0モル%のポリビニルアルコール(商品名「クラレポバールPVA-405」株式会社クラレ製)4部を溶解し、ビフェノックス原体21部とプロピレングリコール3部を加え、ダイノミルKDL型を用いて粉砕液の平均粒子径が3μmになるように微粉砕した。なお、粉砕用メディアとしては、直径0.7?1.2mmの硬質ガラスビーズを用いた。この粉砕液に2%キサンタンガム水溶液6部を加え、スリーワンモータを用いて均一に混合して水性懸濁製剤を得た。」(1d)と、この「湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤」を具体的に調製して得たことが記載されており、当該湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤の調製方法が記載されているといえる。

そうすると、刊行物1には、
「水66部に平均重合度500、ケン化度80.0?83.0モル%のポリビニルアルコール4部を溶解し、ビフェノックス原体21部とプロピレングリコール3部を加え、微粉砕し、この粉砕液に2%キサンタンガム水溶液6部を加え、均一に混合する、湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤の調製方法」
の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

イ 刊行物2に記載された発明
刊行物2は、「1種又は2種以上の水難溶性農薬原体と、ホモポリサッカライドと、スメクタイト系粘土鉱物質とを含有することを特徴とする水懸濁状農薬製剤」(2a 請求項1)に関し記載するものであって、実施例5には「プルラン2部、クニピアF1部及びカルボキシメチルセルロース0.1部を水77.2部に混合分散させ、これにポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(松本油脂株式会社製)0.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル化塩(同上)1.0部を加えて混合溶解させた後、ピリブチカルブ原体12部、変性シリコーンエマルジョン0.1部及びエチレングリコール6部を加え、湿式粉砕機にて粉砕し均質なゾル剤を得た。」(2d【0043】)と、この「水懸濁状農薬製剤」を具体的に調製し「均質なゾル剤」として得たことが記載されており、当該水懸濁状農薬製剤の調製方法が記載されているといえる。

そうすると、刊行物2には
「プルラン2部、クニピアF1部及びカルボキシメチルセルロース0.1部を水77.2部に混合分散させ、これにポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.6部、ポリオキシエチレンアリールフェニルエーテルリン酸エステル化塩1.0部を加えて混合溶解させた後、ピリブチカルブ原体12部、変性シリコーンエマルジョン0.1部及びエチレングリコール6部を加え、湿式粉砕機にて粉砕する、水懸濁状農薬製剤の調製方法」
の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比・判断

ア 引用発明1との対比・判断

(ア)対比
a 引用発明1の「ビフェノックス原体」は除草活性成分(1b)であるから、本件発明1の「農薬活性成分」に相当する。

b 引用発明1の「ポリビニルアルコール4部」は保護コロイド剤(1b)である。
そして、「4部」は、「実施例中の部は、すべて重量%を示す」(1c)ことから、水性懸濁製剤全体において4重量%であるといえ、これは水性懸濁製剤100重量部中4重量部といえる。
そうすると、引用発明1の「ポリビニルアルコール4部」は、本件発明1の「保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05?10.0重量部)」に該当する。

c 引用発明1の「キサンタンガム」は増粘剤であるから(1b)、本件発明1の「増粘剤」に相当する。

d 引用発明1の「水性懸濁製剤」は、除草活性成分(1b)である「ビフェノックス原体」を含むもので、農薬活性成分を含む農薬製剤といえるから、本件発明1の「水性懸濁農薬製剤」に相当する。

e 引用発明1の「水・・に・・ポリビニルアルコール4部を溶解し、ビフェノックス原体・・を加え・・微粉砕し、この粉砕液に・・キサンタンガム・・を加え・・混合」して得られる「水性懸濁製剤」は、前記a?dで述べたことを踏まえると、本件発明1の「農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05?10.0重量部)、増粘剤および水を含有する水性懸濁農薬製剤」に相当する。

f 引用発明1の「水性懸濁製剤の調製方法」は、前記dで述べたことを踏まえると、本件発明1の「水性懸濁農薬製剤の調製方法」に相当する。

そうすると、本件発明1と引用発明1とは、
「農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05?1 0.0重量部)、増粘剤および水を含有する水性懸濁農薬製剤の調製方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:水性懸濁農薬製剤の調製方法が、本件発明1では、水性懸濁農薬製剤を、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程を有しているのに対し、引用発明1では、そのような調製する工程を有しているか明らかでない点

(イ)判断

a 相違点1について

(a)新規性について
本件発明1の、水性懸濁農薬製剤の、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程について、本件明細書には「【0026】・・調製した水性懸濁農薬製剤のずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度は、測定し確認する。ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度の測定は、レオメーターを用いて計ればよい。」と記載され、水性懸濁農薬製剤を調製した後に、該水性懸濁農薬製剤の、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度をレオメーターを用いて測定し、5?50mPa・sにあることを確認することといえる。
そして、具体的な測定・確認方法として、本件明細書には「【0029】・・ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度は、レオメーター(RHEOSTRESS 6000(Thermo社製))を使用し、ずり速度を0から10000まで5分かけて上げていき、ずり速度38.4(1/s)、5000(1/s)および10000(1/s)の粘度を測定した。・・あわせて5000?10000(1/s)のずり速度全域の粘度を確認した」と記載されている。
それ故、本件発明1の、水性懸濁農薬製剤の、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程としては、レオメーターを用いて、調製した水性懸濁農薬製剤のずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を、レオメーターを使用し、ずり速度を0から10000まで5分かけて上げていき、ずり速度38.4(1/s)及び5000?10000(1/s)のずり速度全域の粘度を測定し、5?50mPa・sの範囲内であることを確認すれば良いといえる。

甲第4号証の実験例2には、引用発明1の調製方法により得られた水性懸濁農薬製剤である製剤Aのずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を、レオメーター(AR-G2(TA Instruments社製))を使用し、ずり速度を0から10000まで5分かけて上げていき、ずり速度38.4(1/s)及び5000?10000(1/s)のずり速度全域における20℃の粘度を測定したところ、ずり速度38.4(1/s)の時は15.3mPa・s、ずり速度4694(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度5254(1/s)の時は15.6mPa・s、ずり速度5848(1/s)の時は15.5mPa・s、ずり速度6638(1/s)の時は15.4mPa・s、ずり速度7262(1/s)の時は15.3mPa・s、ずり速度8316(1/s)の時は15.2mPa・s、ずり速度9367(1/s)の時は15.2mPa・s、及び、ずり速度10320(1/s)の時は15.1mPa・sであったことが記載されている。
この測定方法は、引用発明1により調製された製剤Aについて、レオメーターを使用し、ずり速度を0から10000まで5分かけて上げていき、ずり速度38.4(1/s)及び5000?10000(1/s)のずり速度全域における20℃の粘度を測定していることから、前記本件明細書に記載の測定方法と同じ方法であり、その測定結果、引用発明1により調製された水性懸濁農薬製剤である製剤Aは、ずり速度38.4(1/s)及び5000?10000(1/s)のずり速度全域における20℃の粘度が5?50mPa・sの範囲内のものといえる。

しかし、これは、前記本件明細書に記載の測定方法と同じ方法で測定した結果、引用発明1により調製された水性懸濁農薬製剤である製剤Aは、結果として、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度が5?50mPa・sという本件発明1の数値範囲内にあるといえるにとどまり、引用発明1の水性懸濁製剤の調製方法において、特定のずり速度における粘度が特定範囲内となるようにすることを意図し、製剤Aを、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sの範囲内になるよう制御しながら調製しているものではなく、そのような調製工程を有するものとはいえない。
そうすると、引用発明1の水性懸濁農薬製剤の調製方法は、水性懸濁製剤を、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程を有している方法とはいえず、相違点1は実質的な相違点と認められる。
したがって、本件発明1は、甲第4号証及び甲第4号証の2の記載によっても、刊行物1に記載された発明とはいえない。

(b)容易想到性について

i 動機付けについて
本件発明1は、蓄圧式散布機からの散布飛距離が長く、面積の大きい水田に有効成分を均一に拡散させることができ、かつ薬剤が稲体へ付着しにくいため散布された薬剤を水田中にロスなく投下させることができる水性懸濁農薬製剤の調製方法を提供することを課題とするものである(本件明細書【0009】)。この課題を解決するため、本件発明1は、蓄圧式散布機からの散布飛距離を長くし、薬剤が稲体へ付着しにくくすべく、農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05?10.0重量部)、増粘剤及び水を含有する水性懸濁農薬製剤を、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程を有することを特徴としているものである。

他方、引用発明1の調製方法により得られる「湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤」は、良好なる製剤安定性、散布時における除草活性成分の水中拡散性の改善、及び、薬剤の稲体への付着を防ぎ薬害を防ぐ湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤を提供するという課題を解決すべく発明されたものである(1b【0005】、【0006】)。そして、引用発明1の調製方法により得られる「湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤」は、保護コロイド剤としてポリビニルアルコール、特に特定の平均重合度及びケン化度のポリビニルアルコールを使用することにより、前記課題を解決したものである(1c【0007】)。
この課題の「散布時における除草活性成分の水中拡散性の改善」に関し、引用発明1の調製方法により得られる水性懸濁製剤の散布は、「水田に滴下処理を行えばよく、粒剤のように水田全面に均一散布する必要はない」(1c【0021】)ものであり、本件発明1の調製方法により調製される水性懸濁農薬製剤の散布のような、蓄圧式散布機からの散布飛距離を長くして散布するものではない。
刊行物1には、水性懸濁製剤の散布として「加圧式散布機を用いて噴射又は噴霧すればよい」(1c【0021】)と記載されてはいるが、「散布の方法は、原液または高濃度希釈液を例えば500ml容量のプラスチック製容器に入れて手振りするか、または加圧式散布機を用いて噴射または噴霧すればよい。さらに近年普及しているRCヘリコプターからの空中散布または滴下も可能である。また、潅漑水の流入に際して水田の水の取り入れ口(水口)で流入水に滴下処理を行い、流入水と共に水田に流し込んでもよい」(1c【0021】)というように、多くの態様の一つとして例示されているものにすぎない。そして、実際に実施例の「(試験例3)拡散性試験」では「実施例・・調製した試料を・・処理薬量の面積相当量を直接滴下した」(1e【0064】)と記載され、水性懸濁製剤を直接滴下しており、噴射又は噴霧をしていない。
そうすると、引用発明1の調製方法により得られる水性懸濁製剤は、本件発明1の調製方法により調製される水性懸濁農薬製剤のような、蓄圧式散布機からの散布飛距離を長くして、面積の大きい水田に有効成分を拡散させることを課題とするもの(本件明細書【0009】)とは異なるものといえる。

したがって、引用発明1の調製方法により得られる水性懸濁製剤には、蓄圧式散布機からの散布飛距離を長くしようという動機付けがあるとはいえず、かつ、散布飛距離を長くするために、特定のずり速度における特定温度の粘度を特定範囲に調製しようとする動機付けがあるともいえない。

ii 構成の容易想到性について
電子的技術情報1は、「作物保護製剤とレオロジー」(e1a)についての技術情報であり、「ずり流動化を示す流動は、製品の適用時の性能を変更する際に役立つ」(e1a)として図3(e1b)が示されてはいる。
しかし、図3を検討すると、図3左上に「適用後(post-application)」として示されている範囲の下(図3左下)には、「垂れ(sag)」及び「平滑化(levelling)」という記載があり、これらは、農薬製剤の適用後には関連のない事項と考えられるから、農薬製剤とは関連のない用語といえる。さらに、図3下に記載されている「外観及び触感(appearance and feel)」、「ブラッシング(brushing)」及び「ローリング(rolling)」という記載も、通常、農薬製剤に関する技術用語とは認められず、通常、塗料に関する技術用語と考えられる。そうすると、図3には、農薬製剤に関する技術的事項が示されているとはいえない。
また、図3において、色の部分は何を意味するのか、色の部分はそれぞれどこからどこまでの範囲を意味するのか、図3の左上から右下へ引かれている太い線は何を意味しているのか等、図3に示されている事項の説明が一切なく、図3に示されていることをどのように解釈すれば良いのか明確には分からない。
したがって、図3に示されている事項を解釈しても農薬製剤の調製に明確に適用することはできない。

仮に、図3に示されている事項を解釈して農薬製剤の調製に適用するとしても、図3に、懸濁液をスプレーとして適用する際の適切なずり速度及び粘度として薄桃色で示される範囲は、ずり速度5000?10000以上(1/s)における懸濁液の粘度が0.01?約1Pa・sすなわち10?約1000mPa・sであり、本件発明1の、ずり速度5000?10000以上(1/s)における懸濁液の粘度が5?50mPa・sである範囲を示すものとはいえない。

したがって、引用発明1において、相違点1の構成を備えることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

b 本件発明1の効果について
本件明細書の段落【0012】に記載されているように、本件発明1により調製された水性懸濁農薬製剤は、(1)蓄圧式散布機内の圧力が0.05Mpa以下の低圧であっても散布飛距離が長く面積の大きい水田に有効成分を均一に拡散させることができ、かつ(2)薬剤が稲体へ付着しにくいため散布された薬剤を水田中にロスなく投下させることができることであると認められる。そして、これらの効果を客観的に裏付ける実験結果(実施例1?18)が、本件明細書の表1(【0064】)に具体的に示されている。
このような効果、特に(1)蓄圧式散布機内の圧力が0.05Mpa以下の低圧であっても散布飛距離が長くなることについては、刊行物1及び電子的技術情報1の記載から、当業者が予測し得たものとはいえない。

c 小括
したがって、本件発明1は、本件出願前に頒布された刊行物1に記載された発明とはいえず、また、刊行物1に記載された発明及び電子的技術情報1に示された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 引用発明2との対比・判断

(ア)対比
a 引用発明2の「ピリブチカルブ原体」は農薬原体(2c【0012】)であるから、本件発明1の「農薬活性成分」に相当する。

b 引用発明2の「カルボキシメチルセルロース0.1部」は、水ゾル剤を加えた水懸濁状農薬製剤に更にこれを加えることにより該製剤の保存安定性が改善されるものであり(2c【0022】)、保護コロイド剤といえる。
そして、「0.1部」は、「尚、以下の「部」は「重量部」を表わす」(2d【0038】)ことから、水懸濁状農薬製剤100重量部中に0.1重量部であるといえる。
そうすると、引用発明2の「カルボキシメチルセルロース0.1部」は、本件発明1の「保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05?10.0重量部)」に該当する。

c 引用発明2の「クニピアF」は、刊行物2の「【0018】本発明で使用されるスメクタイト系粘土鉱物質・・スメクタイトとは、通常葉ろう石及び滑石の粘土構造において、種々の金属原子の置換によって得られる膨張性粘土鉱物の一群を示し・・・これらのスメクタイト系粘土鉱物質は、例えば・・クニピアF(クニミネ工業株式会社製、登録商標)・・等の商品名で市販されている。」との記載(2c【0018】、【0019】)、及び、刊行物3の「クニピアF(クニミネ工業(株)製増粘剤、ソジウム・モンモリナイト)」(3b【0032】)との記載より、増粘剤であるといえるから、本件発明1の「増粘剤」に相当する。

d 引用発明2の「水懸濁状農薬製剤」は、本件発明1の「水性懸濁農薬製剤」に相当する。

e 引用発明2の「・・クニピアF・・及びカルボキシメチルセルロース0.1部を水77.2部に混合分散させ・・た後、ピリブチカルブ原体・・を加え、湿式粉砕機にて粉砕」して得られる「水懸濁状農薬製剤」は、前記a?dで述べたことを踏まえると、本件発明1の「農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05?10.0重量部)、増粘剤および水を含有する水性懸濁農薬製剤」に相当する。

f 引用発明2の「水性懸濁製剤の調製方法」は、前記dで述べたことを踏まえると、本件発明1の「水性懸濁農薬製剤の調製方法」に相当する。

そうすると、本件発明1と引用発明2とは、
「農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05?10.0重量部)、増粘剤および水を含有する水性懸濁農薬製剤の調製方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:水性懸濁農薬製剤の調製方法が、本件発明1では、水性懸濁農薬製剤を、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程を有しているのに対し、引用発明2では、そのような調製する工程を有しているか明らかでない点

(イ)判断

a 相違点2について

(a)新規性について
前記ア(イ)a(a)で述べたように、本件発明1の、水性懸濁農薬製剤の、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程としては、レオメーターを用いて、調製した水性懸濁農薬製剤のずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を、レオメーターを使用し、ずり速度を0から10000まで5分かけて上げていき、ずり速度38.4(1/s)及び5000?10000(1/s)のずり速度全域の粘度を測定し、5?50mPa・sの範囲内であることを確認すれば良いといえる。

甲第4号証の実験例3には、引用発明2の調製方法により得られた水懸濁状農薬製剤である製剤Bのずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を、レオメーター(AR-G2(TA Instruments社製))を使用し、ずり速度を0から10000まで5分かけて上げていき、ずり速度38.4(1/s)及び5000?10000(1/s)のずり速度全域における20℃の粘度を測定したところ、ずり速度38.7(1/s)の時は33.8mPa・s、ずり速度4691(1/s)の時は17.3mPa・s、ずり速度5253(1/s)の時は17.2mPa・s、ずり速度5846(1/s)の時は17.0mPa・s、ずり速度6636(1/s)の時は16.8mPa・s、ずり速度7260(1/s)の時は16.6mPa・s、ずり速度8315(1/s)の時は16.5mPa・s、ずり速度9366(1/s)の時は16.3mPa・s、ずり速度10320(1/s)の時は16.2mPa・sであったことが記載されている。
この測定方法は、引用発明2により調製された製剤Bについて、レオメーターを使用し、ずり速度を0から10000まで5分かけて上げていき、ずり速度38.4(1/s)及び5000?10000(1/s)のずり速度全域における20℃の粘度を測定していることから、前記本件明細書に記載の測定方法と同じ方法であり、その測定結果、引用発明2により調製された水懸濁状農薬製剤である製剤Bは、ずり速度38.4(1/s)及び5000?10000(1/s)のずり速度全域における20℃の粘度が5?50mPa・sの範囲内のものといえる。

しかし、これは、前記本件明細書に記載の測定方法と同じ方法で測定した結果、引用発明2により調製された水性懸濁農薬製剤である製剤Bは、結果として、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度が5?50mPa・sという本件発明1の数値範囲内にあるといえるにとどまり、引用発明2の水性懸濁農薬製剤の調製方法において、特定のずり速度における粘度が特定範囲内となるようにすることを意図し、製剤Bを、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sの範囲内になるよう制御しながら調製しているものではなく、そのような調製工程を有するものとはいえない。
そうすると、引用発明2の水性懸濁農薬製剤の調製方法は、水性懸濁農薬製剤を、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程を有している方法とはいえず、相違点2は実質的な相違点と認められるから、本件発明1は、甲第4号証及び甲第4号証の2の記載によっても、刊行物2に記載された発明とはいえない。

(b)容易想到性について

i 動機付けについて
本件発明1の課題、及び、該課題を解決するための本件発明1の技術的特徴については、前記ア(イ)a(b)で述べたとおりである。

他方、引用発明2の調製方法により得られる「水懸濁状農薬製剤」は、水中での分散性がよく、粘性が低く、長期間保存しても沈降分離を殆ど生ぜず、長期にわたり良好な粘度特性及び保存安定性を有する水懸濁状農薬製剤を提供するという課題を解決すべく発明されたものである(2b【0008】)。この課題には、本件発明1の調製方法により調製される水性懸濁農薬製剤のような、蓄圧式散布機からの散布飛距離を長くして、面積の大きい水田に有効成分を拡散させようという課題はない。

したがって、引用発明2の調製方法により得られる水懸濁状農薬製剤には、蓄圧式散布機からの散布飛距離を長くしようという動機付けがあるとはいえず、かつ、散布飛距離を長くするために、特定のずり速度における特定温度の粘度を特定範囲に調製しようとする動機付けがあるともいえない。

ii 構成の容易想到性について
電子的技術情報1の図3(e1a)に示されている事項を解釈して農薬製剤の調製に明確に適用すべき根拠はないこと、及び、仮に、図3に示されている事項を解釈して農薬製剤の調製に適用するとしても、水性懸濁農薬製剤を、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sという特定範囲に調製しようとする記載や示唆がないことは、前記ア(イ)a(b)で述べたとおりである。

したがって、引用発明2において、相違点2の構成を備えることは、当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

b 本件発明1の効果について
本件発明1の効果については、前記ア(イ)bに記載したとおりである。
このような効果、特に(1)蓄圧式散布機内の圧力が0.05Mpa以下の低圧であっても散布飛距離が長くなることについては、刊行物2、3の記載及び電子的技術情報1に示される事項から、当業者が予測し得たものとはいえない。

c 小括
したがって、本件発明1は、本件出願前に頒布された刊行物2に記載された発明とはいえず、並びに、刊行物2に記載された発明、刊行物3に記載された技術的事項及び電子的技術情報1に示される技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成29年7月26日付け意見書において、引用発明1、2により調製された水性懸濁農薬製剤は、甲第4号証の実施例2、3の実験結果より、それぞれずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度は5?50mPa・sであることが確認でき、水性懸濁農薬製剤の調製方法としては、結果として、水性懸濁農薬製剤を、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程をそれぞれ有していることになるから、本件発明1は刊行物1、2に記載された発明である、及び、電子的技術情報1の図3に示される技術的事項を考慮して、引用発明1、2において、水性懸濁農薬製剤をずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程を有することは、当業者が容易に想到し得たことといえ、該粘度として0.01?0.05Pa・sを含む範囲を特定することに格別の困難性はないから、本件発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び電子的技術情報1に示される技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨、主張している。
しかしながら、前記ア(イ)a(a)で述べたように、引用発明1、2により調製された水性懸濁農薬製剤はそれぞれずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度が5?50mPa・sであることが確認できたとしても、引用発明1、2の水性懸濁農薬製剤の調製方法において、特定のずり速度における粘度が特定範囲内となるようにすることを意図し、該方法により得られる製剤をずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sの範囲内になるよう制御しながら調製しているものではなく、そのような調製工程を有するものとはいえないから、本件発明1は刊行物1、2に記載された発明とはいえない。
また、電子的技術情報1の図3に示される技術的事項を考慮しても、引用発明1、2において、水性懸濁農薬製剤をずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を、該図3の右下の薄桃色で示される範囲外である5mPa・s?10mPa・s未満の範囲を含み、かつ、上限をこの薄桃色の範囲の上限よりかなり小さな50mPa・sである、5?50mPa・sの範囲に特定することは、特段の示唆もない以上、該範囲を特定することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。そして、本件明細書の表1(【0064】)には、刊行物1、2及び電子的技術情報1に記載も示唆もされていない本件発明1の効果である、蓄圧式散布機内の圧力が0.05Mpa以下の低圧であっても散布飛距離が長くなるという効果を、本件発明1は有することが具体的に示されている。したがって、本件発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び電子的技術情報1に示される技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
以上のとおりであるから、特許異議申立人の前記主張を採用することはできない。

エ まとめ
したがって、本件発明1は、本件出願前に頒布された刊行物1、2に記載された発明とはいえず、また、刊行物1、2に記載された発明、刊行物3に記載された技術的事項及び電子的技術情報1に示される技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

よって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第2号の規定に該当し取り消されるべきものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、ほかに本件発明1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

さらに、請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項2に係る特許に関する申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬活性成分、保護コロイド剤(製剤100重量部中に0.05?10.0重量部)、増粘剤および水を含有する水性懸濁農薬製剤を、ずり速度5000?10000(1/s)における20℃の粘度を5?50mPa・sに調製する工程を有することを特徴とする、水性懸濁農薬製剤の調製方法。
【請求項2】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-30 
出願番号 特願2012-17215(P2012-17215)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A01N)
P 1 651・ 561- YAA (A01N)
P 1 651・ 537- YAA (A01N)
P 1 651・ 113- YAA (A01N)
P 1 651・ 536- YAA (A01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 千弥子  
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 齊藤 真由美
木村 敏康
登録日 2016-04-15 
登録番号 特許第5919006号(P5919006)
権利者 北興化学工業株式会社
発明の名称 散布性および付着性の改良された水性懸濁農薬製剤  
代理人 中村 理弘  
代理人 中村 理弘  
代理人 山田 泰之  
代理人 山田 泰之  

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