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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C02F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C02F
管理番号 1333244
異議申立番号 異議2017-700642  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-21 
確定日 2017-09-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6050766号発明「汚泥脱水装置及びその運転方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6050766号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6050766号の請求項1に係る特許についての出願は、平成26年1月17日の出願であって、平成28年12月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 河野康子により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6050766号の請求項1の特許に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
汚泥脱水装置本体の一端に汚泥投入部、他端に脱水汚泥の排出部を有し、
該汚泥脱水装置本体の内部に、前記汚泥投入部から投入された汚泥を、脱水しながら前記排出部に向けて搬送する空間搬送経路を有し、
該空間搬送経路の上方には、前記空間搬送経路内を移動する汚泥同士の押圧状態を形成する可動可能な傾斜板を備え、
該空間搬送経路の下方には、該空間搬送経路の幅方向に亘って複数の回転軸を並設してなり、
前記各回転軸には、それぞれ楕円形に形成された複数の回転板を装着し、隣接する前記回転軸に設けられた複数の回転板の位相を90°ずつずらして配置してなり、
前記各回転板間に、前記汚泥投入部から前記排出部に亘って直線状に延びる案内部材を複数並設して案内面を形成し、
前記案内面に、前記隣接する案内部材間の隙間と、隣接する回転軸相互の回転板間の隙間とを少なくとも有し、該隙間から、脱水ろ液を落下させるように構成してなることを特徴とする汚泥脱水装置の運転方法であって、
前記案内部材上に捕集された汚泥を、回転する前記回転板の外周面によって前記排出部に向けて搬送しながら脱水する過程で、前記回転板が、前記排出部に近づくにつれて前記案内部材の上端面からの突出量を小さくし、搬送力を低下していくことにより、汚泥が徐々に停滞して、汚泥の滞留部を形成し、
前記滞留部の上面の汚泥を、傾斜状に配設された傾斜板の下面と衝突させて圧接させることにより搬送力を低下させ、
滞留部の下部の汚泥が前記回転板の回転によって排出部に向けて搬送される過程で、搬送力を低下させた滞留部の上部の汚泥は、その搬送速度の差異によって前記案内部材の案内面に向かって移動させて、その結果、前記滞留部の後端面に円弧状の汚泥面を形成させ、
滞留部の上部の汚泥を前記案内部材の案内面に向かって移動させる過程で、前記滞留部を圧縮又は圧搾させて脱水運転することを特徴とする汚泥脱水装置の運転方法。

第3 申立理由の概要
異議申立人は、後記する甲各号証を証拠として提出し、以下の概要の申立理由1,2により、請求項1に係る特許は取り消されるべきである旨を主張している。

<申立理由1>進歩性要件違反
本件発明に係る特許は、同発明が、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術事項、及び、甲第3号証に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
<申立理由2>サポート要件違反、実施可能要件違反
本件発明に係る特許は、同発明が発明の詳細な説明に記載されたものでないか、又は、発明の詳細な説明の記載が、同発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第6項第1号又は特許法第36条第4項第1号の規定に適合しない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

<証拠>
○甲第1号証:実用新案登録第3181644号
○甲第2号証:特開2003-211293号公報
○甲第3号証:特開2006-116391号公報
○甲第4号証:本件に関する平成28年10月24日付け意見書

第4 当審の判断
A.申立理由1について
1.甲第1号証の記載
甲第1号証には次の記載がある。
(ア)「【0018】図1は、本発明の要部構成を示す側面図であり、図2,図3は、本発明を適用した固液分離装置の構成を示す全体側面図及び全体平面図である。図示する固液分離装置1は、固体と液体(主に水)が混合した処理物を前方に送りながら該処理物の脱液(主に脱水)を行うものであり、上部側の装置本体2と、該装置本体2を下支えする下部側の下部フレーム3とを備えている。」
(イ)「【0021】該装置本体2は、上下両側が開放されたボックス状の枠体2aと、枠体2aの一部を構成して互いが平行に対向した左右一対の板状のサイドフレーム4,4と、左右のサイドフレーム4,4間に配置されて処理物の処理を行う処理部6と、左右一方側のサイドフレーム4における他方側とのサイドフレーム4との対向面と反対側の面(外面)側に配置されて処理部6を駆動させる駆動機構7と、処理部6の直上に配置されて該処理物の圧搾処理を行う圧搾機構8とを備えている。」
(ウ)「【0023】・・・処理部6は、左右のサイドフレーム4,4間に回転自在に支持された左右方向の複数の回転軸9と、左右のサイドフレーム4,4間に位置し且つ枠体2a側に支持固定されて前後方向に延びる複数のガイドバー(ガイド部材)11と、回転軸9と一体回転する側面視円形または楕円形の複数の回転板(回転体)12とを備えている。」
(エ)「【0030】そして、第1回転板12Aの前方に第2回転板12Bが配され、第2回転板12Bの前方に第3回転板12Cが配され、第3回転板12Cの前方に第4回転板12Dが配されている。また、前後で隣接する回転板12,12の距離は、互いの回転軌跡Dの半径が小さくなる程、短く設定される。さらに、前後で隣合う楕円状の回転板12A,12B,12C同士は、回転軌跡Dが側面視で重複するように配置されるとともに、互いの位相が1/4周期ずらされている他、前後で隣接する円状の回転板12Dと、楕円状の回転板12Cとは、回転軌跡Dが側面視で非ラップな状態となる。ちなみに、第4回転板12Dの回転軌跡Dは、該回転板12自体の側面形状と同一となる。」
(オ)「【0031】上記ガイドバー11は、下方に向かって徐々に左右幅が縮小する方形状または三角形状の断面形状を有して前後方向に形成され、この前後方向に延びるガイドバー11が、左右方向で隣接する回転列Lの各間(回転板12,12の各間)における回転軸9の直上近傍に配置されている。このため、左右方向に並列された前後方向の複数のガイドバー11と、前後方向に並列された左右方向の複数の回転軸9とは、平面視で、互いに交差して格子状をなしている。そして、左右で隣接するガイドバー11の間に前後方向に細長く延びるスリット(隙間)17が形成される。」
(カ)「【0032】搬送面の上流側(後端部)から処理物を導入し、各回転板12を正転方向(図1に矢印で示す反時計回り)に回転駆動させると、搬送面がウェーブ状をなし、回転板12がガイドバー11から上方突出する際に、該回転板12の外縁部分が前方に変位して処理物を順次前方に搬送する。」
(キ)「【0033】この搬送過程において、処理物中の液体が、左右で隣接する回転板12,12の間、及び前後で隣接する回転板12,12の間から落下し、上記スリット17をすり抜けて、排液タンク3内に貯留される。この回転板12,12間やスリット17を液体がすり抜ける作用によって、処理物中から液体が順次分離されて固体の比率が次第に高くなるようにして、該処理物が前方に送られる。」
(ク)「【0034】最下流側まで送られた処理物は十分に脱液がされて固体に近い状態になり、この脱液された処理物は、排出口18から排出され、排出ガイド部材19上を滑落して前方斜め下方に案内される。このようにして、処理物の固体と液体の分離(固液分離)が行われる。」
(ケ)「【0043】圧搾機構8は、搬送面の直上近傍に位置し且つ装置本体2の上端後方寄り部分を支点に上下揺動自在に支持された圧搾板(圧搾部材)33と、圧搾板33を下方に弾力的に押圧するエアシリンダ34と、圧搾板33の前部に設けられ且つ圧搾板33の下面側で圧搾された処理物中から搾り出された液体を圧搾板33の上面側に導出させる導出手段36とを備えている。」
(コ)「【0046】この圧搾板33の下方への押圧によって、該圧搾板33と搬送面との間に位置する処理物が上側から下方に押圧されて圧搾され、処理物内からの液体の分離が促進される。なお、このエアシリンダ34の代わりに、圧搾板33を下方に弾力的に押圧するガススプリングや圧縮スプリング等の付勢部材を用いてもよい。」
(サ)「【0050】上記流路は、圧搾板33の上面に形成される。具体的には、圧搾板33が、搬送面(ガイドバー11)に対しては送り方向下流側に向かって下方傾斜した状態となるが、水平方向に対しては送り方向上流側に下方傾斜するように、装置本体2の傾斜姿勢での傾きを設定している。このため、圧搾板33の上面側に導出された液体は、この傾斜によって、圧搾板の後部側に案内される。そして、圧搾板33の後部側まで案内された液体は、サイドフレーム4に穿設された排出孔4a(図2参照)から漏れ出て、排液タンク3内に落下する。」
(シ)「【0051】該構成の圧搾機構8によれば、複数の回転板12により順次前方に送られる処理物は、圧搾板33によって圧搾され、該処理物中から搾り出された液体は、導出孔33aと回転部材39との間に形成されたクリアランスを介して、圧搾板33の上面側に導出され、上述した流路を形成する圧搾板33の上面の傾斜を流れ落ちて、排出孔4aまで達し、該排出孔4aから漏れ出た液体は、スリット17を介して落下した液体と合流するように排液タンク3に貯留される。」
(ス)「【0053】以上のように構成された固液分離装置1によれば、回転板12の回転軌跡Dの半径が送り方向に向かって順次小さくなるため、圧搾板33と搬送面との間の空間が送り方向に向かって次第に狭くなる。このため、急減な脱液が防止されて段階的に脱液処理が行われ、効率的に処理物中から液体を分離させることができる。」
(セ)「本発明の要部構成を示す側面図」(【0017】)と題される【図1】、「本発明を適用した固液分離装置の構成を示す全体側面図」(【0017】)と題される【図2】を以下に示す。

2.甲第1号証に記載された発明
i)上記甲第1号証の記載事項(ア)?(セ)には、「固液分離装置」の構成とその機能について記載されているが、同「装置」における「固体と液体(主に水)が混合した処理物」の「脱液(主に脱水)」を行う操作に着目すれば、「固液分離装置の運転方法」について記載されているとみることができる。
そこで、上記甲第1号証の記載事項を検討していく。
ii)同(セ)の【図2】及び同(カ)(ク)をみると、「固液分離装置」は、「処理物を導入」する「搬送面の上流側(後端部)」と、「最下流側」に「脱液された処理物」の「排出口18」を有することが記載され、同(セ)の【図2】及び同(ア)(イ)(ケ)(サ)には、「固液分離装置」の内部に、「搬送面の上流側(後端部)」から「導入」された「処理物」を、「脱水」しながら「前方」の「排出口18」に送る「サイドフレーム間に配置」された「処理部6」を有し、「処理部6」の「直上に配置されて該処理物の圧搾処理」を行う「圧搾機構8」を構成する「上下揺動自在に支持された」「圧搾板33」を備えることが記載されている。
そして、同(セ)の【図2】及び同(ケ)(コ)(サ)(シ)には、「圧搾板33」は、「圧搾板33と搬送面との間に位置する処理物」を、「搬送面(ガイドバー11)に対しては送り方向下流側に向かって下方傾斜した状態」で配置され、「導出孔33a」と「回転部材39」とそれらの「間に形成されたクリアランス」を有する「圧搾板33」の「下面」と「回転部材39」とで「圧搾」し、「該処理物中から搾り出された液体」は、同「クリアランス」から「圧搾板33の上面側に導出」されるものであることが記載されている。
iii)同(セ)の【図2】及び同(ウ)には、「処理部6」の下方には、「サイドフレーム間」に亘って「複数の回転軸9」が備えられ、「複数の回転軸9」には、「回転軸9と一体回転」する「楕円形の複数の回転板(回転体)12」を備え、同(セ)の【図1】及び同(エ)には、「前後で隣接する回転板12,12」は「互いの位相が1/4周期ずらされて」配置されていることが記載されている。
iv)同(ウ)(オ)(カ)(キ)には、「複数の回転板(回転体)12」間に、「処理物」を「導入」する「搬送面の上流側(後端部)」から、「脱液された処理物」の「排出口18」に亘って直線状に「前後方向に延びる複数のガイドバー(ガイド部材)11」でなる「搬送面」が形成され、同「搬送面」の「左右で隣接するガイドバー11の間に前後方向に細長く延びる」「スリット17」と、「前後で隣接する回転板12,12の間」の隙間から、「液体が順次分離」されて「処理物中の液体」が「落下」するように構成してなる「固液分離装置の運転方法」が記載されているといえる。
v)同(カ)(キ)には、「搬送面」を形成する「ガイドバー11」上に「導入」された「処理物」を、「各回転板12」を「回転駆動」させ「該回転板12の外縁部分が前方に変位」して同「処理物を順次前方に搬送」させながら「液体が順次分離」する過程で、同(セ)の【図1】及び同(ス)から「回転板12の回転軌跡Dの半径が送り方向に向かって順次小さくなる」ことが記載されている。
vi)以上から、本件請求項1の記載に則して整理すれば、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「固液分離装置が、処理物を導入する搬送面の上流側(後端部)と、最下流側に脱液された処理物の排出口を有し、
固液分離装置の内部に、搬送面の上流側(後端部)から導入された処理物を、脱水しながら前方の排出口に送るサイドフレーム間に配置された処理部を有し、
処理部の直上で、搬送面に対しては送り方向下流側に向かって下方傾斜した状態で、上下揺動自在に支持され、導出孔と回転部材とそれらの間に形成されたクリアランスを有する圧搾板であって、圧搾板と搬送面との間に位置する処理物を圧搾板の下面と回転部材とで圧搾し、該処理物中から搾り出された液体を、同クリアランスから圧搾板の上面側に導出させる、圧搾板を備え、
処理部の下方には、サイドフレーム間に亘って複数の回転軸が備えられ、 複数の回転軸には、回転軸と一体回転する楕円形の複数の回転板(回転体)を備え、前後で隣接する回転板は互いの位相が1/4周期ずらされて配置されており、
複数の回転板(回転体)間に、処理物を導入する搬送面の上流側(後端部)から、脱液された処理物の排出口に亘って直線状に前後方向に延びる複数のガイドバーでなる搬送面が形成され、
前記搬送面の、左右で隣接するガイドバーの間に前後方向に細長く延びるスリットと、前後で隣接する回転板間の隙間から、液体が順次分離されて、処理物中の液体が落下するように構成してなる固液分離装置の運転方法であって、
搬送面を形成するガイドバー上に導入された処理物を、各回転板を回転駆動させ該回転板の外縁部分が前方に変位して同処理物を順次前方に搬送させながら液体を順次分離する過程で、回転板の回転軌跡Dの半径が送り方向に向かって順次小さくなっている、
固液分離装置の運転方法。」

3.本件発明と引用発明の対比
i)引用発明の「固液分離装置が、処理物を導入する搬送面の上流側(後端部)と、最下流側に脱液された処理物の排出口を有し、」と、本件発明の「汚泥脱水装置本体の一端に汚泥投入部、他端に脱水汚泥の排出部を有し、」とは、「処理物脱水装置本体の一端に処理物投入部、他端に脱水処理物の排出部を有し、」の点で一致する。
ii)引用発明の「処理部」は本件発明の「空間搬送経路」にあたるから、引用発明の「固液分離装置の内部に、搬送面の上流側(後端部)から導入された処理物を、脱水しながら前方の排出口に送るサイドフレーム間に配置された処理部を有し、」と、本件発明の「該汚泥脱水装置本体の内部に、前記汚泥投入部から投入された汚泥を、脱水しながら前記排出部に向けて搬送する空間搬送経路を有し、」とは、「該処理物脱水装置本体の内部に、前記処理物投入部から投入された処理物を、脱水しながら前記排出部に向けて搬送する空間搬送経路を有し、」の点で一致する。
iii)引用発明の「圧搾板」は「処理物」を「圧搾」するから「処理物同士の押圧状態を形成する」ものであって、「圧搾板」は本件発明の「傾斜板」にあたり、「上下揺動自在に支持され」は「可動可能」にあたり、「処理物」は「搬送面」上を移動するものである。
したがって、引用発明の「処理部の直上で、搬送面に対しては送り方向下流側に向かって下方傾斜した状態で、上下揺動自在に支持され、導出孔と回転部材とそれらの間に形成されたクリアランスを有する圧搾板であって、圧搾板と搬送面との間に位置する処理物を圧搾板の下面と回転部材とで圧搾し、該処理物中から搾り出された液体を、同クリアランスから圧搾板の上面側に導出させる、圧搾板を備え、」と、本件発明の「該空間搬送経路の上方には、前記空間搬送経路内を移動する汚泥同士の押圧状態を形成する可動可能な傾斜板を備え、」とは、「該空間搬送経路の上方には、前記空間搬送経路内を移動する処理物同士の押圧状態を形成する可動可能な傾斜板を備え、」の点で一致する。
iv)引用発明の「サイドフレーム間」は本件発明の「空間搬送経路の幅方向」にあたるから、引用発明の「処理部の下方には、サイドフレーム間に亘って複数の回転軸が備えられ、」と、本件発明の「該空間搬送経路の下方には、該空間搬送経路の幅方向に亘って複数の回転軸を並設してなり、」とは、「該空間搬送経路の下方には、該空間搬送経路の幅方向に亘って複数の回転軸を並設してなり、」の点で一致する。
v)引用発明の「前後で隣接する回転板」は、本件発明の「隣接する前記回転軸に設けられた複数の回転板」にあたり、それらの「回転板は互いの位相が1/4周期ずらされて配置され」は、「隣接する前記回転軸に設けられた複数の回転板の位相を90°ずつずらして配置し」にあたる。
よって、引用発明の「複数の回転軸には、回転軸と一体回転する楕円形の複数の回転板(回転体)を備え、前後で隣接する回転板は互いの位相が1/4周期ずらされて配置されており、」と、本件発明の「前記各回転軸には、それぞれ楕円形に形成された複数の回転板を装着し、隣接する前記回転軸に設けられた複数の回転板の位相を90°ずつずらして配置してなり、」とは、「前記各回転軸には、それぞれ楕円形に形成された複数の回転板を装着し、隣接する前記回転軸に設けられた複数の回転板の位相を90°ずつずらして配置してなり、」の点で一致する。
vi)引用発明の「ガイドバー」「搬送面」は、本件発明の「案内部材」「案内面」にそれぞれあたるので、引用発明の「複数の回転板(回転体)間に、処理物を導入する搬送面の上流側(後端部)から、脱液された処理物の排出口に亘って直線状に前後方向に延びる複数のガイドバーでなる搬送面が形成され、」と、本件発明の「前記各回転板間に、前記汚泥投入部から前記排出部に亘って直線状に延びる案内部材を複数並設して案内面を形成し、」とは、「前記各回転板間に、前記処理物投入部から前記排出部に亘って直線状に延びる案内部材を複数並設して案内面を形成し、」の点で一致する。
vii)引用発明の「前記搬送面の、左右で隣接するガイドバーの間に前後方向に細長く延びるスリット」、「前後で隣接する回転板間の隙間」は、本件発明の「前記案内面に、前記隣接する案内部材間の隙間」、「隣接する回転軸相互の回転板間の隙間」にそれぞれあたる。
したがって、引用発明の「前記搬送面の、左右で隣接するガイドバーの間に前後方向に細長く延びるスリットと、前後で隣接する回転板間の隙間から、液体が順次分離されて、処理物中の液体が落下するように構成してなる固液分離装置の運転方法であって、」と、本件発明の「前記案内面に、前記隣接する案内部材間の隙間と、隣接する回転軸相互の回転板間の隙間とを少なくとも有し、該隙間から、脱水ろ液を落下させるように構成してなることを特徴とする汚泥脱水装置の運転方法であって、」とは、「前記案内面に、前記隣接する案内部材間の隙間と、隣接する回転軸相互の回転板間の隙間とを少なくとも有し、該隙間から、脱水ろ液を落下させるように構成してなる処理物脱水装置の運転方法であって、」の点で一致する。
viii)引用発明の「回転板の外縁部分」は、本件発明の「回転板の外周面」にあたり、引用発明の「回転板の回転軌跡Dの半径が送り方向に向かって順次小さくなって」は、甲第1号証の記載事項(セ)の【図1】から、
「回転板」が、「処理物の排出口」に近づくにつれて「ガイドバー」の上端面からの突出量が小さくなっていくことを示すものであり、
それにより「処理物」の搬送力は低下し、「処理物が徐々に停滞して、処理物の滞留部を形成」するものといえるから、本件発明の「回転板が、前記排出部に近づくにつれて前記案内部材の上端面からの突出量を小さくし、搬送力を低下していくことにより、処理物が徐々に停滞して、処理物の滞留部を形成し、」にあたるといえる。
したがって、引用発明の「搬送面を形成するガイドバー上に導入された処理物を、各回転板を回転駆動させ該回転板の外縁部分が前方に変位して同処理物を順次前方に搬送させながら液体を順次分離する過程で、回転板の回転軌跡Dの半径が送り方向に向かって順次小さくなっており、
」と、本件発明の「前記案内部材上に捕集された汚泥を、回転する前記回転板の外周面によって前記排出部に向けて搬送しながら脱水する過程で、前記回転板が、前記排出部に近づくにつれて前記案内部材の上端面からの突出量を小さくし、搬送力を低下していくことにより、処理物が徐々に停滞して、処理物の滞留部を形成し、」とは、「前記案内部材上に捕集された処理物を、回転する前記回転板の外周面によって前記排出部に向けて搬送しながら脱水する過程で、前記回転板が、前記排出部に近づくにつれて前記案内部材の上端面からの突出量を小さくし、搬送力を低下していくことにより、処理物が徐々に停滞して、処理物の滞留部を形成し、」の点で一致する。
ix)甲第1号証の記載事項(セ)の【図1】から、引用発明の「圧搾板」は、「下方傾斜した状態」で「処理物」の上面を「圧搾」しており、「圧搾」すれば「処理物」の搬送力は低下するといえるので、引用発明においても、「前記滞留部の上面の処理物を、傾斜状に配設された傾斜板の下面と衝突させて圧接させることにより搬送力を低下させ」ているものといえる。
x)すると、本件発明と引用発明とは、
「処理物脱水装置本体の一端に処理物投入部、他端に脱水処理物の排出部を有し、
該処理物脱水装置本体の内部に、前記処理物投入部から投入された処理物を、脱水しながら前記排出部に向けて搬送する空間搬送経路を有し、
該空間搬送経路の上方には、前記空間搬送経路内を移動する処理物同士の押圧状態を形成する可動可能な傾斜板を備え、
該空間搬送経路の下方には、該空間搬送経路の幅方向に亘って複数の回転軸を並設してなり、
前記各回転軸には、それぞれ楕円形に形成された複数の回転板を装着し、隣接する前記回転軸に設けられた複数の回転板の位相を90°ずつずらして配置してなり、
前記各回転板間に、前記処理物投入部から前記排出部に亘って直線状に延びる案内部材を複数並設して案内面を形成し、
前記案内面に、前記隣接する案内部材間の隙間と、隣接する回転軸相互の回転板間の隙間とを少なくとも有し、該隙間から、脱水ろ液を落下させるように構成してなる処理物脱水装置の運転方法であって、
前記案内部材上に捕集された処理物を、回転する前記回転板の外周面によって前記排出部に向けて搬送しながら脱水する過程で、前記回転板が、前記排出部に近づくにつれて前記案内部材の上端面からの突出量を小さくし、搬送力を低下していくことにより、処理物が徐々に停滞して、処理物の滞留部を形成し、
前記滞留部の上面の処理物を、傾斜状に配設された傾斜板の下面と衝突させて圧接させることにより搬送力を低下させる、
処理物脱水装置の運転方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)脱水される「処理物」について、本件発明では「汚泥」であるのに対して、引用発明では「固体と液体(主に水)が混合」した「処理物」である点。
(相違点2)本件発明の「汚泥」が搬送される「空間搬送経路」の上方の「傾斜板」は、「汚泥同士の押圧状態を形成」するための板状の部材であるのに対して、引用発明の「処理物」が搬送される空間の上方の「圧搾板」は、「圧搾板」に設けられた「導出孔」と、これに設けられた「回転部材」との「間に形成されたクリアランスを有」し、「圧搾板の下面」と「導出孔」に設けられた「回転部材とで圧搾し、該処理物中から搾り出された液体を、同クリアランスから圧搾板の上面側に導出させる」ものである点。
(相違点3)脱水運転に際しての処理物の挙動について、本件発明では「滞留部の下部の汚泥が前記回転板の回転によって排出部に向けて搬送される過程で、搬送力を低下させた滞留部の上部の汚泥は、その搬送速度の差異によって前記案内部材の案内面に向かって移動させて、その結果、前記滞留部の後端面に円弧状の汚泥面を形成させ、滞留部の上部の汚泥を前記案内部材の案内面に向かって移動させる過程で、前記滞留部を圧縮又は圧搾させて脱水運転」されるように汚泥が挙動するものであるのに対して、引用発明では脱水運転の際の処理物の挙動について不明な点。

4.相違点の検討
事案に鑑み相違点2について検討する。
引用発明の「圧搾板」から本件発明の「傾斜板」を容易に想到し得るかを、両者を用いて脱水運転した際の処理物の挙動から考察する。
ここで、引用発明の脱水対象である「液体と固体が混合した処理物」と本件発明の「汚泥」とは、液体と固体が混合したものであって、搬送されるもの(以下、「液体を含む固体(処理物)」という。)である点で一致する。
i)本件発明では、「滞留部」の「案内部材」側では、「脱水ろ液」すなわち水分は「隣接する案内部材間の隙間と、隣接する回転軸相互の回転板間の隙間」から「落下」するので、「滞留部」の「案内部材」側すなわち「液体を含む固体(処理物)」の下側では水分が減少するが、「滞留部」の「傾斜板」側すなわち「液体を含む固体(処理物)」の上側では、「傾斜板」は「板状の部材」であり水分は「液体を含む固体(処理物)」から出ていかないから、水分を多く含んでいるものといえる。
これに対して、引用発明では、「滞留部」の「ガイドバー」側では、「左右で隣接するガイドバーの間に前後方向に細長く延びるスリットと、前後で隣接する回転板間の隙間から、液体が順次分離」されて、「液体を含む固体(処理物)」中の水分が「落下」するので、「滞留部」の「ガイドバー」側すなわち「液体を含む固体(処理物)」の下側では水分が減少し、「滞留部」の「圧搾板」側すなわち「液体を含む固体(処理物)」の上側でも、「圧搾板」は「導出孔と回転部材」との「間に形成されたクリアランスを有」するので、「液体を含む固体(処理物)」がその上側から圧搾され、「液体を含む固体(処理物)」中から「搾り出され」た水分が、「同クリアランスから圧搾板の上面側に導出さ」れることから、水分が減少するといえる。
すると、引用発明では、「液体を含む固体(処理物)」の上側でも下側でも水分が減少するのに対し、本件発明では、「液体を含む固体(処理物)」の下側のみで水分が減少するといえるので、本件発明の「傾斜板」と引用発明の「圧搾板」との構成上の相違により、両者で「液体を含む固体(処理物)」の水分の分布状態が相違することになり、それを原因として、相違点3の脱水運転の際の「液体を含む固体(処理物)」の挙動の差違が生じるものといえる。
したがって、本件発明の「傾斜板」と引用発明の「圧搾板」とは、構成的にも機能的にも相違するものといえる。
ii)そこで、上記相違点2に関して、甲第2号証、甲第3号証に記載の技術手段についてみてみると、それらには、複数の回転板により「液体を含む固体(処理物)」を搬送し、板状の部材で押圧する固液分離装置が示されているが、当該板状の部材は引用発明でいう「クリアランス」を有するものではないから、「液体を含む固体(処理物)」がその上側から圧搾され、「液体を含む固体(処理物)」中から「搾り出され」た水分が、同「クリアランスから板状の部材の上面側に導出さ」れるものではない。
すると、引用発明と甲第2号証、甲第3号証に記載の技術手段とは、それらの前提技術が異なり、両者を組み合わせることはできない。
したがって、甲第2号証及び甲第3号証に記載の技術手段を勘案しても、引用発明の「圧搾板」から本件発明の「傾斜板」を容易に想到し得えるものではない。
iii)以上から、相違点2に係る本件発明の特定事項は、引用発明から、又は引用発明へ甲第2号証及び甲第3号証に記載の技術手段を適用することにより、容易に想到しえるものとはいえない。
なお、甲第4号証は審査段階の意見書であり、異議申立人は、当該意見書の記載は技術的合理性がない旨を主張していると認められるが、当該主張は本件発明の進歩性そのものに関する主張ではないから、当該主張をもって本件発明の進歩性が否定されることにはならない。

5.申立理由1についての結言
以上から、本件発明に係る特許は、同発明が、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術手段、及び、甲第3号証に記載の技術手段に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものでなく、取り消されるべきものでない。

B.申立理由2について
1.申立理由2の概要
「滞留部の形成」及び「滞留部の圧縮又は圧搾」の条件は、本件特許明細書に記載が無く、特許請求の範囲に発明特定事項として記載されてもいない。
よって、本件発明に係る特許は、同発明が発明の詳細な説明に記載されたものでないか、又は、発明の詳細な説明の記載が、同発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法第36条第6項第1号又は特許法第36条第4項第1号の規定に適合しない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

2.当審の判断
「滞留部の形成」及び「滞留部の圧縮又は圧搾」の条件は例えば実施例等をみれば具体的に記載されており、同条件は、本件特許明細書に開示され、特許請求の範囲に発明特定事項(「汚泥脱水装置の運転方法であって、」以降の記載事項)としても一応記載されていることは明らかである。
したがって、本件はサポート要件、実施可能要件を満たさないとする特許異議申立人の主張は採用できず、本件発明に係る特許は、同発明が発明の詳細な説明に記載されたものであり、また、発明の詳細な説明の記載は、同発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号又は特許法第36条第4項第1号の規定に適合する特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものでない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-09-12 
出願番号 特願2014-7239(P2014-7239)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C02F)
P 1 651・ 121- Y (C02F)
P 1 651・ 536- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 富永 正史  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 中澤 登
山崎 直也
登録日 2016-12-02 
登録番号 特許第6050766号(P6050766)
権利者 三井造船環境エンジニアリング株式会社
発明の名称 汚泥脱水装置及びその運転方法  
代理人 丸山 重輝  
代理人 丸山 英一  
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