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審決分類 審判 全部申し立て 産業上利用性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1333257
異議申立番号 異議2017-700591  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-13 
確定日 2017-10-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6043008号発明「1回当たり100?200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTH含有骨粗鬆症治療/予防剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6043008号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 [第1]手続の経緯

特許第6043008号の請求項1?2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成22年9月8日(優先権主張 平成21年9月9日)を国際出願日とする特願2011-530844号の一部を平成27年5月25日に新たな特許出願とした特願2015-105265号の一部を平成28年4月18日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月18日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人金山愼一(以下、「申立人A」という。)及び河部秀男(以下、「申立人B」という。)によりそれぞれ特許異議の申立てがされたものである。


[第2]本件発明

本件特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明2」という。また、これらをまとめて単に「本件発明」ということがある。)。

「 【請求項1】
1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする、PTH(1-34)又はその塩を有効成分として含有する、骨粗鬆症治療剤ないし予防剤であって、下記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者を対象とする、骨粗鬆症治療剤ないし予防剤;
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである中等度腎機能障害を有する。
【請求項2】
請求項1に記載の骨粗鬆症治療剤ないし予防剤であって、同剤を請求項1に係る骨粗鬆症患者に投与した際の副作用発現率に関する安全性が、1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩を下記(1)?(4’)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に週1回投与した際に発生する副作用発現率に関する安全性と同等である、請求項1に記載の骨粗鬆症治療剤ないし予防剤;
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4’)腎機能正常者。 」


[第3]申立理由の概要

1. 申立人Aの主張する申立理由

申立人Aは、証拠として以下の甲第1?7号証を異議申立書(以下、「申立書A」という。)の添付書類として提出し、以下の申立理由Aを主張している。

甲第1号証: Osteoporosis International,1999,9,p.296-306(以下、「甲A1」という。)

甲第2号証: 知財高裁判決平成27年(行ケ)10241号(平成28年11月28日)(以下、「甲A2」という。)

甲第3号証: Osteoporosis International,2007,18,p.59-68(以下、「甲A3」という。)

甲第4号証: 「FORTEO^(TM)」の米国添付文書(2002年)(以下、「甲A4」という。)(決定注:「FORTEO」は登録商標と認める。以下においても同様である。)

甲第5号証: 「Drugs@FDA:FDA Approved Drug Products」のフォルテオの検索ページ(以下、「甲A5」という。)

甲第6号証: 「フォルテオ(R)皮下注キット600μg」の添付文書(以下、「甲A6」という。)(決定注:「(R)」は丸囲い文字のRである。また、「フォルテオ」は登録商標と認める。両者について以下においても同様である。)

甲第7号証: 「テリボン(R)皮下注用56.5μg」の添付文書(以下、「甲A7」という。)(決定注:「テリボン」は登録商標と認める。以下においても同様である。)

申立理由A
本件発明1及び2は、甲A1に記載された発明、甲A3に記載された発明及び甲A4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2. 申立人Bの主張する申立理由

申立人Bは、証拠として以下の甲第1?13号証を異議申立書(以下、「申立書B」という。)の添付書類として提出し、以下の申立理由B1?B3を主張している。

甲第1号証: Fujita et al.,Osteoporosis International,1999,9(4),p.296-306(以下、「甲B1」という。)

甲第2号証: FORTEO(R) teriparatide(rDNA origin)injection 750mcg(決定注:mcgはμgのことであり、以下では「μg」と記載する。)/3mL,文章改訂2008年2月27日,Eli Lilly and Company(米国)(以下、「甲B2」という。)

甲第3号証: D.M.Black et al.,J Clin Endocrinol Metab.,2008 June,93(6),p.2166-2172(以下、「甲B3」という。)

甲第4号証: 折茂肇ら日本骨代謝学会骨粗鬆症診断基準検討委員会,日本骨代謝学会雑誌,2001,18(3)、p.76-82(以下、「甲B4」という。)

甲第5号証: 病院の検査の基礎知識 運営事務局,「病院の検査の基礎知識」[平成29年4月28日検索],インターネット,http://medical-checkup.info/(以下、「甲B5」という。)

甲第6号証: 「骨粗鬆症治療剤 フォルテオ 皮下注キット600μg テリパラチド(遺伝子組換え)注射剤」医薬品インタビューフォーム,2015年8月(改訂10版),日本イーライリリー株式会社(以下、「甲B6」という。)

甲第7号証: 知って得する骨密度講座(その4)[平成29年4月29日検索],インターネット,http://gecommunity.on.arena.ne.jp/archive/bmd_shittoku/ost_04.html(以下、「甲B7」という。)

甲第8号証: 「骨粗鬆症治療剤 テリボン 皮下注用56.5μg(注射用テリパラチド酢酸塩)」医薬品インタビューフォーム,製造承認年月日2011年9月26日,2015年11月(改訂8版),旭化成ファーマ株式会社(以下、「甲B8」という。)

甲第9号証: Miller et al.,Osteoporos International,2007 Jan,18(1),p.59-68(以下、「甲B9」という。)

甲第10号証: 「副甲状腺機能診断薬 テリパラチド酢酸塩 静脈注用100「旭化成」(注射用テリパラチド酢酸塩)」医薬品インタビューフォーム,2010年9月(改訂3版),旭化成ファーマ株式会社(以下、「甲B10」という。)

甲第11号証: 知的財産高等裁判所平成28年11月28日判決言渡平成27年(行ケ)第10241号審決取消請求事件判決文(以下、「甲B11」という。)

甲第12号証: 特願2016-82589の審査において、平成28年8月19日付で特許出願人が提出した意見書(以下、「甲B12」という。)

甲第13号証: 〔審査ハンドブック、付属書B「特許実用新案審査基準」の特定技術分野への適用例〕,第3章医薬発明,2.2新規性(第29条第1項)の項(以下、「甲B13」という。)

(1) 申立理由B1
本件発明1は、甲B1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2) 申立理由B2
(申立理由B2-ア) 本件発明1は、甲B1に記載された発明、又は、甲B1に記載された発明及び甲B4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(申立理由B2-イ) 本件発明1は、甲B1に記載された発明及び甲B2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(申立理由B2-ウ) 本件発明1は、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明及び甲B3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(申立理由B2-エ) 本件発明2は、甲B1に記載された発明及び甲B9の記載事項、又は、甲B1に記載された発明、甲B4の記載事項及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(申立理由B2-オ) 本件発明2は、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(申立理由B2-カ) 本件発明2は、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明、甲B3に記載された発明及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3) 申立理由B3
本件発明1?2は、甲B1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものでない。
また、本件発明1?2は、同法第29条第1項柱書における「産業上利用することができる発明」に該当せず、特許を受けることができるものでない。
よって、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。


[第4] 甲号証の記載事項

甲A1、甲A3及び甲A4、並びに、甲B1?甲B5及び甲B9には、それぞれ以下の記載がある(下線は当合議体による。以下同様)。

なお、甲A1、甲A3及び甲A4、並びに、甲B1?甲B3及び甲B9は英文であるため、日本語の訳文にて、それぞれ記す。

1. 甲A1の記載事項

甲A1は甲B1と同一の文献であるから、甲A1には、下記4.に挙げた甲B1-1?甲B1-9と同様の事項が記載されている。

2. 甲A3の記載事項

(甲A3-1) 第59頁表題
「 骨粗鬆症と軽度又は中等度の腎障害を有する閉経後の女性におけるテリパラチド 」
(決定注:「テリパラチド」と「hPTH(1-34)」なる記載は同義であるから、以下、両者を「ヒトPTHのN末端の1?34番目のアミノ酸残基からなるペプチド」を意味するものとして使用する。)

(甲A3-2) 第59頁左欄第4?11行
「 方法 骨折予防試験から得られたデータを用いて、骨粗鬆症と軽度又は中等度の腎障害を有する閉経後の女性におけるテリパラチド[rhPTH(1-34)]の安全性と効果を調査した。患者は、2.0mg/dl以下の血清クレアチニン濃度と、通常の血清副甲状腺ホルモン(PTH)濃度を有することが要求された。患者は、ランダムにプラセボもしくは20又は40μg/日のテリパラチドの毎日の皮下注射を投与されるために無作為化された。・・・ 」

(甲A3-3) 第60頁左欄第22?31行
「 研究参加者

骨折予防試験の方法と結果は以前に公表されている[6]。手短に言うと、この二重盲検試験において、年齢が42?86歳にわたる1637人の外来の閉経後女性が毎日カルシウム(1000mg)とビタミンD(400-1200IU)の補給とともにプラセボ(n=544)、テリパラチド 20μg/day(n=541)、又はテリパラチド40μg/day(n=552)の毎日の自己投与の皮下注射を受けるために無作為化された。研究への包含は2mg/dl以下の血清クレアチニン・・・を必要とした。 」

(甲A3-4) 第61頁左欄第28?35行
「 血清はベースラインと1(n=1492)、3(n=1498)、6(n=1501)、12(n=1397)及び18ヶ月(n=1161)の試験薬の最終投与後およそ4?6時間に採取した。スクリーニングにおける2.0mg/dlを超えた血清クレアチニン濃度は除外基準であった。すべての診察における11.0mg/dl(2.75mmol/l)を超える血清カルシウム濃度だけでなく、投与後4?6時間の10.6mg/dl(2.65mmol/l、正常の上限)を超える血清カルシウム濃度の発生は報告された。 」

(甲A3-5) 第61頁左欄第39行?同右欄第2行
「 糸球体濾過率

GFRはCockcroft-Gault方程式を用いて見積もられた[13]:

女性におけるクレアチニンクリアランス(ml/min)
=(140-年齢)(Kgでの体重)(0.85)/(血清クレアチニン)(72kg)

腎機能は正常(GFR 80ml/min以上)、軽度障害(GFR 50-79ml/min)、中等度障害(GFR 30-49ml/min)、又は重度障害(GFR 30ml/min未満)に分類された。 」

(甲A3-6) 第64頁右欄第7?17行及び第65頁表3
「 正常又は軽度又は中等度の腎障害を有する患者における治療下発現及び腎臓関連の有害事象の発生を表3に示した。治療下発現及び腎臓関連の有害事象の発生は、正常及び軽度及び中等度のベースラインの腎臓障害カテゴリーの中で一貫していた。テリパラチドによる平均GFRの変化はベースラインの腎臓機能の影響を受けなかった(・・・)。




(甲A3-7) 第65頁左欄第12?16行
「 40μg/dayのテリパラチドで処置された患者においては、投与後4?6時間で11mg/dlだけでなく10.6mg/dlを超えるカルシウムの上昇が相対的によりよく起こり、またこの高カルシウム症の増加した発生は正常、軽度及び中等度の腎障害を有する患者の間で同様であった。 」

(甲A3-8) 第67頁右欄第39?43行
「 結論として、テリパラチドの投与を受け、軽度又は中等度の腎障害を有し、しかし通常の内在性PTHレベルを有する患者において有害事象の増加は観察されず、同様のBMDと骨折減少応答が認められた。 」

(甲A3-9) 第67頁右欄第52行?第68頁左欄第1行
「 痛風、関節痛、腎結石のリスクの増加に関するエビデンスは、どの腎機能又は試験薬のグループにおいても見られなかった。 」


3. 甲A4の記載事項

(甲A4-1) 第1頁表題
「 フォルテオ(商標)
テリパラチド(rDNA起源)注射剤
750μg/3mL 」

(甲A4-2) 第2頁第38行?第3頁第3行
「 特別な集団
・・・
腎機能不全-軽度又は中等度の腎機能不全[クレアチニンクリアランス(CrCl)30?72mL/min]を有し、テリパラチドの単回投与を受けた11名の患者で、何ら薬物動態的な相違がないことが確認された。重度の腎機能不全(CrC1が<30mL/min)を有する5名の患者では、テリパラチドのAUC及びT_(1/2)が、それぞれ73%及び77%増加した。テリパラチドの最大血清濃度は増加しなかった。慢性腎不全のために透析を行っている患者では試験を行っていない。(参照:「使用上の注意」) 」

(甲A4-3) 第11頁第1?7行
「 効能・効果
フォルテオは、骨粗鬆症を有し、骨折リスクが高い閉経後の女性の治療に適応される。上記女性には、医師の評価に基づいて、骨粗鬆症性骨折の既往歴がある女性、又は複数の骨折危険因子を有する女性、又は先の骨粗鬆症治療が失敗したか若しくは不耐容であった女性が含まれる(参照:「黒枠警告」)。骨粗鬆症を有する閉経後の女性では、フォルテオはBMDを増加させ、椎骨及び非椎骨の骨折のリスクを低減する。 」

(甲A4-4) 第17頁第22?24行
「 用法・用量
フォルテオは、大腿部又は腹壁に皮下投与を行わなければならない。推奨投与量は、一日一回20μgである。 」


4. 甲B1の記載事項

(甲B1-1) 第296頁表題
「 ヒト副甲状腺ホルモン(1-34)の骨粗鬆症に対する間欠毎週投与の効果:3種類の投与量を用いた無作為化二重盲検前向き試験 」

(甲B1-2) 第296頁左欄第1行?右欄第7行
「 要約 骨粗鬆症治療における可能性のある骨形成促進剤としてのヒト副甲状腺ホルモンのアミノ末端ペプチド1-34(hPTH(1-34))の効果を検討するために、71の施設において骨粗鬆症患者220名を対象として無作為に二重盲検下にて3群に割り付け、hPTH(1-34)の50単位(L群)、100単位(M群)又は200単位(H群)の毎週皮下注射が開始された。投与後48週目には、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による腰椎骨密度(BMD)はL、M及びH群でそれぞれ、0.6%、3.6%および8.1%増加した。また、MとH群での薬物への応答はL群より有意に高かった・・・。腰椎測定の変動係数が1-2.5%に留まることから、3.6%及び8.1%の増加は有意であると思われる。ラジオグラメトリによる中手骨のBMDと皮層の厚さの測定では、有意な変化はみられなかった。・・・各群の30-40%で、背部痛の改善がみられた。・・・hPTH(1-34)の間欠的毎週投与によって、骨粗鬆症で腰椎のBMDが増加し、骨粗鬆症治療に有用であることを示唆していた。 」

(甲B1-3) 第297頁左欄第27行?右欄第17行
「 試験対象

・・・試験は、厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された年齢範囲が45から95歳の被験者220名を対象として実施した。このシステムは、単に骨粗鬆症を非外傷性脊椎骨折が存在する、または脊椎骨折が2箇所に存在するものとして定義するのではなく、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義するものである。スコアの合計が4以上の場合(骨粗鬆症と定義)をこの治験への組み入れ基準とした。・・・X線上の骨減少は、腰椎の側面X線写真で骨梁の希薄化、つまり(1)横骨梁欠損による縦骨梁の明瞭化、(2)縦骨梁の粗化および(3)縦骨梁の減少が認められた場合とした。X線上の骨減少は、BMDで若年成人の平均値から20%または2.5SDの減少に相当した。・・・X線上の骨減少度がグレード1から3、またはBMDが若年成人の平均値から2.5SD未満の場合はスコア3とした。椎体骨折が1箇所の場合はスコア1、骨折が2箇所以上の場合はスコア2とした。大腿骨頸部骨折がある場合はスコア3とし、橈骨遠位端骨折がある場合はスコア1とした。骨軟化症、原発性副甲状腺機能亢進症および腎性骨異栄養症といった他の骨量減少の原因を除外するために、骨粗鬆症の診断を支持する因子として、正常血清カルシウム、リンおよびアルカリホスファターゼ値がスコア1であることとした。ただし、ひとつ以上の異常がある場合にスコア1を差し引いた。同様に、被験者が閉経前である場合には、スコア1を差し引いた。
2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNが示す腎機能の低下を伴う被験者、過敏症の既往歴がある被験者及び自覚症状の自己評価において信頼性に問題のある被験者は除外した。・・・ 」

(甲B1-4) 第297頁右欄第43行?第298頁左欄第24行
「 hPTH(1-34)(テリパラチド酢酸塩)の調製と投与方法

・・・各バイアルは、およそ15、30または60μgのペプチドに相当する、50、100または200テリパラチド酢酸塩単位を含んだ。・・・
予備試験の結果によると、hPTH(1-34)を100または200単位、26週間、1週1回投与したところ腰椎BMDが増加していた。そこで、試験期間を48週間に設定した。この期間は、骨折の危険性と不安が常にある患者を対象として通常の骨測定、血液と尿の採取を行っても脱落率が過度とならずに、十分な制御下で多施設試験を実施できる限界であると思われた。・・・」

(甲B1-5) 第299頁左欄第10行?第300頁左欄第3行
「結果

表1は、試験への参加が許可された被験者における治験組み入れ基準の詳細をまとめたものである。
試験に当初登録した被験者220名を無作為に二重盲検下で割り付け[50単位投与群(L)に73名、100単位投与群(M)に75名および200単位投与群(H)に72名]、そのうち41名は骨粗鬆症の診断基準に適合せず、また試験前に投与されていた薬の休薬期間が不十分であったため不適格とした。
正確なBMD測定を阻害する腰椎の退行性変化と圧迫変化を有する患者および指定時間以外に測定した患者を除外したところ、不適格者にはさらに64名が含まれた。このため、腰椎BMDに及ぼす効果の分析は被験者115名で実施した。内訳はL群で39名、M群で38名およびH群で38名であった(表2)。被験者61名が、副作用、中途での心変わりにより試験を拒絶、合併症の悪化などの理由で試験を完了できなかったが、最初の3ヵ月以内に脱落しない限り、分析グループに含むものとした。
被験者の治療開始時の特徴を各グループで比較したものを表3に示した。3群とも被験者が一様に分布していることを確認した。




(甲B1-6) 第300頁左欄第4?10行
「 自覚症状

主として背部痛からなる自覚症状は、L群で被験者52名中21名(40%)、M群で被験者60名中18名(30%)およびH群で被験者47名中17名(36%)に、中等度またはやや改善がみられた。群間に有意な差は認められなかった(表4)。




(甲B1-7) 第300頁左欄第11行?右欄最終行
「 骨測定

試験期間48週間中の腰椎BMDにおける変化を図1に示した。腰椎BMDは、試験開始時と比較して、治療後24と48週目に用量依存的に増加し、L、MおよびH群でそれぞれ0.6%、3.6%および8.1%であった。・・・年齢が64歳以下と65歳以上、体重が49kg以下と50kg以上、閉経後10年未満、10から20年、20年以上、および脊椎骨折が0、1および2箇所以上を有するサブグループに被験者を分類して比較したところ、サブグループ間で薬物に対する応答は同程度であった。第2中手骨(皮質骨からなる)のX線写真上の骨密度には有意な差は何ら認められず、皮質骨と各群のX線写真上の骨量減少度が変化せずに一定に保たれていることを示していた。L群で被験者3名、M群で5名およびH群で0名に椎体骨折が発生したが、各群間の差は有意ではなかった。




(甲B1-8) 第301頁左欄第1行?右欄第4行
「 生化学的パラメーター

・・・表6は治療中に発生した副作用をまとめたものである。29例で、被験者が幾つかの症状のため試験から脱落した。副作用の総数はhPTH(1-34)の用量が増加するのに合致して増加した・・・




(甲B1-9) 第303頁右欄第17?23行
「 ・・・hPTH(1-34)が中手骨(ほとんどが皮質骨からなる)の骨密度を減少させることなく、腰椎BMD(主に海綿骨からなる)を、48週という比較的短期間で有意に用量依存性に増加させたことから、hPTH(1-34)による骨粗鬆症治療はきわめて将来有望であると思われる。 」

5.甲B2の記載事項

甲B2は、テリパラチド注射剤の2002年11月26日の米国での承認時の添付文書である甲A4の、2008年2月27日の改定後の添付文書であり、当該文書には、上記甲A4-1?甲A4-4と同様の事項が記載されている。

6. 甲B3の記載事項

(甲B3-1) 第2166頁表題
「 骨密度とリモデリングにおける週1回の副甲状腺ホルモン(1-84)のランダム化試験 」

(甲B3-2) 第2166頁要約第5?7行
「 45?70歳で-1.0と-2.0の間の大腿頸部BMDのTスコアを有する閉経後の女性50名が・・・二重盲検、ランダム化、プラセボ比較試験に参加した。 」

(甲B3-3) 第2166頁要約第8?9行
「 被験者は1か月間毎日PTH(1-84)(100μg)又はプラセボの皮下注射を受け、続いて11か月間毎週注射(PTH又はプラセボ)を受けた。 」

(甲B3-4) 第2166頁要約第14?16行
「 12か月目に、腰椎面積BMDがPTHで処置された女性でプラセボと比較して2.1%増加した(P=0.03)。椎体骨梁容積BMDは、PTHで処置された女性でプラセボ群と比較して3.8%増加した(P=0.08)。 」

(甲B3-5) 第2166頁要約第21?22行
「 1か月の毎日投与後の週1回のPTHは閉経後女性において椎体BMD、橈骨海綿骨、及び骨形成マーカーを増加させる。 」

(甲B3-6) 第2167頁左欄第16?27行
「 他のアプローチにおいて、週1回のPTH(1-34)が1年を超えてBMDを有意に増加させることが示された(6)。その最大用量群(200IU/週)では、腰椎BMDにおいて約8%の増加があった。・・・より頻度の少ないPTH投与がBMDに正の影響を与えるか否かについての疑問を扱うために、我々は、4週間にわたる毎日のPTH(1-84)の負荷投与と、それに続く毎週治療を用いる計画で閉経後女性において12か月の二重盲検、ランダム化、プラセボ比較試験を行った。 」

(甲B3-7) 第2167頁左欄第30?40行
「 我々は、閉経後少なくとも5年であり、-1.0から-2.0のtotal hip面積BMD(aBMD)のTスコアを有し、骨粗鬆症性骨折の履歴又はX線検査における形態骨折の存在がない45歳から70歳の間の年齢の女性を組み入れた(募集の目標は50人であった。)。・・・さらに、・・・40ml/min未満のクレアチニンクリアランスを示す女性を除外した。 」


7. 甲B4の記載事項

(甲B4-1) 第77(19)頁の表1






8. 甲B5の記載事項

(甲B5-1) 「腎臓と泌尿器の病気の検査」なる表題のウェブページのハードコピーの第2/8頁第1?10行
「 尿素窒素の基準値
尿素窒素の基準値は8?21mg/dlですが、食事や年齢、性別などによって変動がみられます。

検査結果の判定
基準値を超えていたら、腎機能を調べるための様々な検査をします40mg/dlを超えたら腎不全が考えられ、さらに100mg/dl以上になったら尿毒症の起こる可能性が高く、かなり危険な状態です。 」

(甲B5-2) 「腎臓と泌尿器の病気の検査」なる表題のウェブページのハードコピーの第7/8頁第3?27行
「 クレアチニンとは?
・・・
基準値の範囲
・男性・・・0.5?1.1mg/dl
・女性・・・0.4?0.8mg/dl
・・・
検査結果の判定
血液中のクレアチニンの数値が高いのは、腎機能が低下していることを示唆し・・・ます。日本人間ドック学会の判定基準では、男性が1.2?1.3mg/dl、女性が0.9?1.0mg/dlは、場合により経過観察が必要とされています。
一般に中程度の腎不全では1.5mg/dlを超え、重症では2.4mg/dl以上になります。 」


9. 甲B9の記載事項

甲B9は甲A3と同一の文献であるから、甲B9には、上記甲A3-1?甲A3-9と同様の事項が記載されている。


[第5] 参考文献及びその記載事項

参考文献1: 「C. 産婦人科検査法 22. 骨量測定」,日産婦誌,2007,59(10),p.N-624?N629

(参考記載1) 第N-624頁の図C-22-1






[第6] 当合議体の判断

甲A1と甲B1は同じ証拠であり、申立人Bは、甲B1に基づき、本件特許発明は新規性を有しない旨の主張も行っているので(申立人Aは進歩性を有しない旨の主張のみ)、申立理由B1及び申立理由B2-アを先に検討し、その後に申立理由A及び申立理由B2-イ?申立理由B3を検討する。

1. 申立理由B1(新規性)及び申立理由B2-ア(進歩性)について

申立理由B1の要旨は、上記[第3]2.(1)で述べたとおり、本件発明1は、甲B1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではない、というものである。
また、申立理由B2-アの要旨は、上記[第3]2.(2)で述べたとおり、本件発明1は、甲B1に記載された発明、又は、甲B1に記載された発明及び甲B4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というものである。

(1) 甲B1に記載された発明
ア. 甲B1は、3種類の投与量を用いた無作為化二重盲検前向き試験による、ヒト副甲状腺ホルモン(1-34)の骨粗鬆症に対する間欠毎週投与の効果に関する文献である(前記甲B1-1)。
そして、甲B1には、ヒト副甲状腺ホルモンのアミノ末端ペプチド1-34(hPTH(1-34))の骨粗鬆症治療に対する効果を検討するために、骨粗鬆症患者220名を対象として、無作為に二重盲検下にて3群に割り付け、hPTH(1-34)の50単位(L群)、100単位(M群)又は200単位(H群)を、毎週皮下注射し、骨形成促進剤としての可能性について検討したことが記載され(前記甲B1-2及び甲B1-4)、前記試験は、厚生省による委員会が提唱した診断基準、すなわち、複数の因子をスコア化してスコアの計が4より高い場合を骨粗鬆症と定義する診断基準において骨粗鬆症とされた、年齢範囲が45歳から95歳の被験者220人を対象として実施したこと、及び、2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNが示す腎機能の低下を伴う被験者は除外対象であったことが記載されている(前記甲B1-3)。
また、甲B1には、腰椎BMDに及ぼす効果の分析は、被験者115人で実施し、内訳は、L群で39名、M群で38名及びH群で38名であったことが記載され(前記甲B1-5)、腰椎BMDは、試験開始時と比較して、治療後24週と48週目に用量依存的に増加し、腰椎BMDは、L、M及びH群でそれぞれ0.6%、3.6%及び8.1%増加し、さらに、主として背部痛からなる自覚症状は、群間に有意な差は認められなかったもののH群で被験者47人中17人(36%)に中等度以上の改善がみられたこと、第2中手骨の骨密度には有意な差は認められなかったこと、群間に有意な差は認められなかったもののH群での椎体骨折の発生は0人だったことが記載され(前記甲B1-6及び甲B1-7)、副作用の総数は、hPTH(1-34)の用量が増加するのに合致して増加したことが記載されている(前記甲B1-8)。
さらに、甲B1には、hPTH(1-34)の週1回の間欠投与が、中手骨の骨密度を減少させることなく、腰椎BMDを、48週という比較的短期間で有意に用量依存的に増加させたことから、hPTH(1-34)による骨粗鬆症治療は極めて将来有望であると思われると記載されている(前記甲B1-9)。

イ. これらを総合すれば、甲B1には、厚生省による委員会が提唱した、複数の因子をスコア化してスコアの計が4以上である場合を骨粗鬆症と定義する診断基準において骨粗鬆症とされた、年齢範囲が45歳から95歳の被験者(ただし、当該被験者は2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNが示す腎機能の低下を伴う者を含まない)に対し、hPTH(1-34)の200単位を毎週皮下注射したところ(以下、甲B1に記載されたhPTH(1-34)のH群への投与、すなわち、hPTH(1-34)200単位の毎週皮下注射による投与を「甲B1のhPTH(1-34)の週1回200単位投与」という。)、被験者の腰椎BMDを8.1%増加させる一方、第2中手骨の骨密度は変化させず、椎体骨折の発生もなかったことが記載されていると認められ、甲B1には、甲B1のhPTH(1-34)の週1回200単位投与の骨形成促進剤としての治療効果が記載されているといえる。また、甲B1には、甲B1のhPTH(1-34)の週1回200単位投与による副作用はあったものの、hPTH(1-34)による骨粗鬆症治療は極めて将来有望であると思われることが記載されていると認められ、甲B1には、hPTH(1-34)の週1回の間欠投与によって骨粗鬆症を治療することを示唆する記載があると認められる。

ウ. 以上によれば、甲B1には、

「 hPTH(1-34)の200単位を毎週皮下注射する、hPTH(1-34)を有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤であって、厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された、年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し、スコアの合計が4以上である場合の患者(ただし、当該患者は2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNが示す腎機能の低下を伴う者を含まない)に投与される、骨粗鬆症治療剤。 」(以下、「甲B1発明」という。)

が記載されているといえる。

(2) 対比及び判断
ア. 対比
本件発明1と甲B1発明とを対比すると、両者は投与対象に関し、本件発明1は、
「 下記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである中等度腎機能障害を有する。 」
を対象とするのに対し、甲B1発明は、
「 厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された、年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し、スコアの合計が4以上の場合の患者(ただし、当該患者は2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNが示す腎機能の低下を伴う者を含まない) 」
を対象とする点において相違する(以下、「相違点B1」という。)。

イ. 相違点B1についての判断
(ア) 甲B1のhPTH(1-34)の週1回200単位投与の対象であるH群の72人の患者の治療開始時の背景について、甲B1には、その平均年齢が71.7±10.78歳であることが記載されており、また、椎体骨折数、大腿骨折数及び橈骨遠位端骨折数が0である者がそれぞれ、29人、69人及び69人もいたことが記載されているから(甲B1-5)、当該H群の患者の中には、年齢が65歳未満である者や既存の骨折がない者が含まれていることが認められる。
また、当該H群の患者からは、2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNが示す腎機能の低下を伴う者が除外されている。
ここで、血清クレアチニンの基準値は、男性0.5?1.1mg/dl、女性0.4?0.8mg/dlであり、男性が1.2?1.3mg/dl、女性が0.9?1.0mg/dlでは、場合により経過観察が必要であり、中程度の腎不全では1.5mg/dlを超え、重症では2.4mg/dl以上になり、BUNの基準値は8?21mg/dlであり、40mg/dlを超えたら腎不全が考えられるという技術常識(甲B5-1及び甲B5-2)を踏まえると、当該H群の患者には、腎機能が正常である患者や軽度の腎機能障害を有する患者が多数含まれるといえる。
そうすると、甲B1発明に係るhPTH(1-34)の週1回200単位投与を受ける患者群の中に、年齢が65歳以上であり(本件発明1の患者に係る上記(1)の条件)、既存の骨折を有し(同(2)の条件)、骨密度が若年成人平均値の80%未満である、及び/又は、骨萎縮度が萎縮度I度以上であり(同(3)の条件)、かつ、中等度腎機能障害を有する(同(4)の条件)という全ての条件を満たす骨粗鬆症患者が必ず存在するとまでは、甲B1の記載から読み取ることはできない。
まして、甲B1発明では、上述したとおり、骨粗鬆症患者から2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNが示す腎機能の低下を伴う者を除外しているところ、薬物の投与時に、腎障害を有する者では、薬物排泄が十分に行われず、腎機能が正常な者と比較して副作用の発現が増加する可能性があることが、当業者の技術常識であることを考慮すると、甲B1の記載から、腎機能の低下を伴う患者を、さらには、腎機能低下がより進行した中等度腎機能障害を有する者を、ことさらに選択して、週1回200単位のhPTH(1-34)を投与することが読み取れるとはいえない。
よって、相違点B1は実質的な相違点であるといえ、本件発明1が甲B1に記載された発明であるとはいえない。

(イ) さらに、上記(ア)で述べた事項を踏まえると、甲B1の記載からは、甲B1に記載の試験において、H群72人中30人において副作用が発生し、それによって16人が脱落した(甲B1-8の表6)とされるhPTH(1-34)200単位の週1回投与という高用量を、腎機能低下がより進行した患者である、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に適用した際に、副作用や有害事象がどの程度生じるかについては把握できないといえる。
そうすると、甲B1の記載からは、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に対し、hPTH(1-34)の200単位を週1回の頻度で、重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが予測できるとはいえない。
また上記(ア)で述べたとおり、もとより、甲B1に記載の上記試験は、腎機能低下がより進行した者を除外して行われたものであって、腎機能の低下を伴う患者を、ことさらに選択して、週1回200単位のhPTH(1-34)を投与するものではない。
よって、甲B1の記載から、甲B1発明において、その対象患者を、「厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された、年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し、スコアの合計が4以上の場合の患者(ただし、当該患者は2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNが示す腎機能の低下を伴う者を含まない)」に代えて、腎機能低下がより進行した、中等度腎機能障害を有することを条件の1つとする、本件発明1の上記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者とする動機付けが得られるとはいえないし、また、本件発明1に係る中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に週1回200単位のhPTH(1-34)を投与した際の副作用発現率が、上記(1)?(3)の条件を満たすものの腎機能が正常である骨粗鬆症患者における副作用発現率と差異がないことが、甲B1の記載から予測できたともいえない。
よって、本件発明1が、甲B1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、甲B4は、原発性骨粗鬆症の診断基準(甲B4-1)を記載した文献に過ぎず、当該診断基準をみても、甲B1発明において、その対象患者を、腎機能低下がより進行した、中等度腎機能障害を有することを条件の1つとする、本件発明1の上記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者とする動機付けを見いだせないから、甲B1に記載された発明及び甲B4の記載事項を併せみても、本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ) 以上に説示した事項を踏まえると、本件発明1が、甲B1に記載された発明であるとはいえず、また、本件発明1が、甲B1に記載された発明、又は、甲B1に記載された発明及び甲B4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3) 小括
上記(1)?(2)での検討のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B1について、本件発明1が、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないとはいえず、また、申立理由B2-アについて、本件発明1が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。


2. 申立理由A(進歩性)について

申立理由Aの要旨は、上記[第3]1.で述べたとおり、本件発明1及び2は、甲A1に記載された発明、甲A3に記載された発明及び甲A4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というものである。

(1) 本件発明1について
ア. 各甲号証に記載された発明
(ア) 甲A1に記載された発明
甲A1は、甲B1と同一の文献であるから、甲A1には、上記1.(1)ウ.で説示した甲B1発明が記載されているといえる。

(イ) 甲A3に記載された発明
上記甲A3-1?甲A3-9の記載事項を踏まえると、甲A3には、42?86歳の閉経後女性に対してテリパラチド[rhPTH(1-34)]を投与する従前の骨折予防試験に基づいて、骨粗鬆症と軽度又は中等度の腎障害を有する閉経後の女性にテリパラチド[rhPTH(1-34)]20又は40μgを毎日皮下投与した際の安全性と効果を調査した結果が記載されており、また、より多いテリパラチドの投与量である40μg/日の投与に関連する結果として、40μg/日のテリパラチドで処置された患者において、投与後4?6時間で11mg/dlだけでなく10.6mg/dlを超えるカルシウムの上昇が相対的によりよく起こり、またこの高カルシウム症の増加した発生は正常、軽度及び中等度の腎障害を有する患者の間で同様であったこと(甲A3-7)、テリパラチドの投与を受け、軽度又は中等度の腎障害を有し、しかし通常の内在性PTHのレベルを有する患者では、有害事象の増加は観察されず、同様のBMDと骨折減少応答が認められたこと(甲A3-8)、及び、痛風、関節痛、腎結石のリスクの増加に関するエビデンスは、どの腎機能又は試験薬のグループにおいても見られなかったこと(甲A3-9)が記載されているといえる。

(ウ) 甲A4に記載された発明
上記甲A4-1?甲A4-4の記載事項を踏まえると、甲A4には、テリパラチド注射剤であるフォルテオが、骨粗鬆症を有し、骨折リスクが高い閉経後の女性の治療に適用され、大腿部又は腹壁に1日1回20μgの用量で皮下投与されるものであって、また、特別な集団のうちの腎機能不全患者における当該薬剤の薬物動態に関し、「軽度又は中等度の腎機能不全[クレアチニンクリアランス(CrCl)30?72mL/min]を有し、テリパラチドの単回投与を受けた11名の患者で、何ら薬物動態的な相違がないことが確認された。重度の腎機能不全(CrClが<30mL/min)を有する5名の患者では、テリパラチドのAUC及びT_(1/2)が、それぞれ73%及び77%増加した。」(甲A4-2)ことが記載されている。

イ. 対比及び判断
(ア) 上記1.(2)ア.及び同イ.(ア)で述べた理由から、本件発明1と甲B1発明とは、医薬の投与対象に関し、上記相違点B1において相違するといえ、また、当該相違点B1は実質的な相違点である。

(イ) 一方、確かに、甲A3及び甲A4には、骨粗鬆症と軽度又は中等度の腎障害を有する閉経後の女性にhPTH(1-34)の20又は40μgを毎日皮下投与した場合には、有害事象や高カルシウム症等の発生やhPTH(1-34)の薬物動態において、腎機能が正常である患者との差異がみられなかったことが記載されている。
しかしながら、甲B1発明で用いられた200単位のhPTH(1-34)は、約60μgのペプチドを含むから(上記甲B1-4)、1回あたりの投与量に関し、甲A3及び甲A4に記載されたhPTH(1-34)の20μg及び40μg投与はそれぞれ、甲B1発明の投与量の1/3程度及び2/3程度の量に過ぎず、甲A3及び甲A4には、甲B1発明に対応するhPTH(1-34)の週1回200単位投与のごとくの、20又は40μgよりも1回あたりの投与量が多い用法で、hPTH(1-34)を中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者を治療することに関し、何ら記載されていない。

(ウ) また、薬物の投与量を増加させると、薬物動態が変化することによって、腎障害を有する者において、薬物排泄が十分に行われず、腎機能が正常な者と比較して副作用の発現が増加する可能性があることは、当業者の技術常識であると認められるところ、そのように薬物の投与量を増加させた場合に、腎障害を有する者と腎機能が正常な者との間で副作用の発現の程度に差異が生じるか否かを実際に実験を行うことなく予測することは困難であるといわざるを得ない。
そうすると、甲A3及び甲A4における中等度腎障害患者へのhPTH(1-34)の20又は40μgの投与において、有害事象や高カルシウム症等の発生やhPTH(1-34)の薬物動態に関し、腎機能が正常である患者との差異がみられないとしても、その結果から、当該20又は40μgの投与の3倍又は1.5倍の用量に相当する、200単位のhPTH(1-34)を投与する場合において、中等度腎障害患者と腎機能が正常である患者との間で、当該有害事象等に差異がなく、中等度腎機能障害患者で重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが予測できるとはいえない。

さらに、甲A3及び甲A4におけるhPTH(1-34)の20又は40μgの投与が毎日1回であるから、1週あたりの投与量の総量は140又は280μgである一方、甲B1発明のhPTH(1-34)の1週あたりの投与量は約60μg(200単位)であるから、1週あたりの投与量の総量では、甲A1発明のhPTH(1-34)の投与量は、甲A3及び甲A4に記載のhPTH(1-34)の投与量より少ないといえる。
しかしながら、薬物の1回あたりの投与量がより多い用法では、1回あたりの投与量がより少ない用法と比べて、1回の投与後における薬物の最高血中濃度(Cmax)や血中濃度時間曲線下面積(AUC)等が大きくなることにより、副作用の発現が増加する可能性があることは技術常識から明らかであるから、たとえ甲B1発明のhPTH(1-34)の1週あたりの投与量の総量が、甲A3及び甲A4におけるそれと比較して少ないとしても、それらの事項から、200単位のhPTH(1-34)を投与する場合において、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者と腎機能が正常である骨粗鬆症患者との間で、上記有害事象等に差異がなく、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者で重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが予測できるとはいえない。

(エ) すなわち、甲A3及び甲A4には、それらで用いられたhPTH(1-34)製剤よりも1回あたりの投与量が多いhPTH(1-34)の200単位を中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に適用することが記載されておらず、さらに、甲A3及び甲A4の記載から、hPTH(1-34)の週1回200単位を中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に適用した場合に、当該患者と腎機能が正常である患者との間で、当該有害事象等に差異がなく、中等度腎機能障害患者で重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが示唆されているともいえない。
そうすると、甲A1に記載された発明、甲A3に記載された発明及び甲A4に記載された発明から、甲B1発明において、その対象患者を、「厚生省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された、年齢範囲が45歳から95歳の被験者のうち、複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し、スコアの合計が4以上の場合の患者(ただし、当該患者は2mg/dlより高い血清クレアチニン又は30mg/dlより高いBUNが示す腎機能の低下を伴う者を含まない)」に代えて、腎機能低下がより進行した、中等度腎機能障害を有することを条件の1つとする、本件発明1の上記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者とする動機付けが得られるとはいえないし、また、本件発明1に係る中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に週1回200単位のhPTH(1-34)を投与した際の副作用発現率が、上記(1)?(3)の条件を満たすものの腎機能が正常である骨粗鬆症患者における副作用発現率と差異がないことが、甲A1、甲A3及び甲A4の記載から予測できたともいえない。
よって、本件発明1が、甲A1に記載された発明、甲A3に記載された発明及び甲A4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2) 本件発明2について
本件発明2は本件発明1をさらに減縮した発明であるから、本件発明2もまた、上記(1)で説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲A1に記載された発明、甲A3に記載された発明及び甲A4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 小括
上記(1)及び(2)での検討のとおりであるから、申立人Aが主張する申立理由Aについて、本件発明1?2が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。


3. 申立理由B2-イ(進歩性)について

申立理由B2-イの要旨は、上記[第3]2.(2)で述べたとおり、本件発明1は、甲B1に記載された発明及び甲B2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というものである。

(1) 当合議体の判断
ア. 甲B2に記載された発明
甲B2は、上記1.(1)ウ.で述べたテリパラチド注射剤であるフォルテオの2002年11月26日の米国での承認時の添付文書である甲A4(申立書A第12頁第16?23行)の、2008年2月27日の改訂後の文書であり、当該甲B2には、上記甲A4-1?甲A4-4と同様の事項が記載されている。
すなわち、甲B2には、「テリパラチド注射剤であるフォルテオが、骨粗鬆症を有し、骨折リスクが高い閉経後の女性の治療に適用され、大腿部又は腹壁に1日1回20μgの用量で皮下投与されるもの」(以下、「甲B2発明」という。)であって、また、特別な集団のうちの腎機能不全患者における当該薬剤の薬物動態に関し、「軽度又は中等度の腎機能不全[クレアチニンクリアランス(CrCl)30?72mL/min]を有し、テリパラチドの単回投与を受けた11名の患者で、何ら薬物動態的な相違がないことが確認された。重度の腎機能不全(CrClが<30mL/min)を有する5名の患者では、テリパラチドのAUC及びT_(1/2)が、それぞれ73%及び77%増加した。」ことが記載されている。

イ. 対比及び判断
(ア) 本件発明1と甲B2発明とは、hPTH(1-34)の用法及び用量に関して、本件発明1が週1回200単位の投与(約60μgのペプチド。上記甲B1-4)であるのに対し、甲B2発明は1日1回20μgの投与である点で相違し、また、投与対象に関して、本件発明1は、
「 下記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである中等度腎機能障害を有する。 」
を対象とするのに対し、甲B2発明は、
「 骨粗鬆症を有し、骨折リスクが高い閉経後の女性 」
を対象とする点において相違する。

(イ) a. 上記相違点について検討すると、まず甲B2は、上記ア.で説示したとおり、骨粗鬆症を有し、骨折リスクが高い閉経後の女性に、hPTH(1-34)を1日1回20μgの用法・用量で投与して、骨粗鬆症に対する治療効果を奏するものとして米国で承認された医薬品の添付文書であるから、甲B2それ自体から、甲B2発明の用法・用量を変更するという課題は読み取れない。
また、上記1.(2)イ.で述べたとおり、甲B1の記載から、腎機能の低下を伴う患者を、さらには、腎機能低下がより進行した中等度腎機能障害を有する者を、ことさらに選択して、週1回200単位のhPTH(1-34)を投与することは読み取れず、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に対し、hPTH(1-34)の200単位を週1回の頻度で、重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが予測できるともいえない上、上記2.(1)イ.(イ)?同(エ)で甲A4について述べた理由と同様の理由により、甲B2の記載から、1回あたりの投与量の多いhPTH(1-34)の週1回200単位を中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に適用した場合に、当該患者と腎機能が正常である患者との間で、当該有害事象等に差異がなく、中等度腎機能障害患者で重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが予測できるともいえないことを踏まえると、甲B2発明において、その用法及び用量を週1回200単位投与に変更した後に、さらに投与対象を中等度腎機能障害を有することを含む本件発明1の(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に変更することが容易であるとはいえない。

b. また、上記ア.で述べたとおり、甲B2には、特別な集団のうちの腎機能不全患者における当該薬剤の薬物動態に関し、「軽度又は中等度の腎機能不全[クレアチニンクリアランス(CrCl)30?72mL/min]を有し、テリパラチドの単回投与を受けた11名の患者で、何ら薬物動態的な相違がないことが確認されたことが記載されているが、上記a.で説示した理由と同様に、甲B1の記載から、腎機能の低下を伴う患者を、さらには、腎機能低下がより進行した中等度腎機能障害を有する者を、ことさらに選択して、週1回200単位のhPTH(1-34)を投与することは読み取れず、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に対し、hPTH(1-34)の200単位を週1回の頻度で、重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが予測できるとはいえない上、甲B2の記載から、1回あたりの投与量の多いhPTH(1-34)の週1回200単位を中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に適用した場合に、当該患者と腎機能が正常である患者との間で、当該有害事象等に差異がなく、中等度腎機能障害患者で重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが予測できるともいえないことを踏まえると、甲B2に記載された、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者へのhPTH(1-34)の1日1回20μg投与の適用を、hPTH(1-34)の週1回200単位投与に変更する動機付けが、甲B1及び甲B2の記載から得られるとはいえない。

c. そうすると、甲B1に記載された発明及び甲B2に記載された発明に基づいて、本件発明1に係る(1)?(4)の条件を全て充足する骨粗鬆症患者にhPTH(1-34)の週1回200単位投与を適用することを当業者が容易に着想できたとはいえず、また、本件発明1に係る中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に週1回200単位のhPTH(1-34)を投与した際の副作用発現率が、上記(1)?(3)の条件を満たすものの腎機能が正常である骨粗鬆症患者における副作用発現率と差異がないことが、甲B1及び甲B2の記載から予測できたともいえない。

(ウ) 以上に説示した事項を踏まえると、本件発明1が、甲B1に記載された発明及び甲B2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2) 小括
上記(1)での検討のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B2-イについて、本件発明1が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。


4. 申立理由B2-ウ(進歩性)について

申立理由B2-ウの要旨は、上記[第3]2.(2)で述べたとおり、本件発明1は、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明及び甲B3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というものである。

(1) 当合議体の判断
ア. 甲B3に記載された発明
(ア) 甲B3には、甲B1に記載された骨粗鬆症患者へのhPTH(1-34)の週1回200単位投与試験を踏まえて、より頻度の少ないPTH投与がBMDに正の効果を有し得るか否かを調べるために、50名の閉経後の45才?70才の女性であって、大腿頚部BMDのTスコアが-1.0から-2.0であり、骨粗鬆症性骨折の履歴又はX線検査において形態骨折の存在がない患者に対し、1ヶ月間毎日PTH(1-84)(100μg)又はプラセボの皮下注射を行った後、11ヶ月間毎週1回PTH又はプラセボの投与を行う、無作為のダブルブラインド、プラセボコントロール試験を行なったことが記載されており(甲B3-1?甲B3-7)、また、クレアチニンクリアランスが40ml/min未満である女性は除外対象であったこと(甲B3-7)も記載されている。

(イ) ここで、WHOにおける骨粗鬆症の診断基準が、骨密度が若年成人平均値(YAM)から1SD(標準偏差)以上減少した場合を骨量減少(骨減少症)、2.5SD以上減少した場合を骨粗鬆症と定義していること(参考記載1)を踏まえると、甲B3に記載の上記患者は、大腿頚部BMDのTスコアが-1.0から-2.0であるから、骨粗鬆症患者ではなく骨減少症患者であるといえる。また、日本骨代謝学会による骨粗鬆症の診断基準において、骨密度がYAMの80%(YAMから1.5SD減少した場合に相当)未満70%(YAMから2.5SD減少した場合に相当)以上であって、脆弱性骨折を有しない場合は骨量減少、脆弱性骨折を有する場合は骨粗鬆症と定義されていること(参考記載1)に照らしても、甲B3に記載の上記患者は、骨粗鬆症性骨折の履歴又はX線検査において形態骨折の存在がないことから、骨粗鬆症患者ではなく、むしろ骨減少症患者であるといえる。
また、甲B3に記載の試験では、被験者からクレアチニンクリアランスが40ml/min未満である女性が除外されているから、甲A3-5の記載事項を踏まえると、重度の腎機能障害を有する患者と中等度の腎機能障害を有する患者のうちクレアチニンクリアランスが40ml/min未満である者とが除外されているといえ、そうすると、甲B3に記載のPTH(1-84)の投与を受けた患者には、それら以外の腎機能が正常である者や軽度の腎機能障害を有する者が多数含まれているといえる。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)で述べた事項を踏まえると、甲B3には、

「 閉経後の45?70歳の女性であって、大腿頚部BMDのTスコアが-1.0から-2.0であり、骨粗鬆症性骨折の履歴又はX線検査において形態骨折の存在がない骨減少症の患者(ただし、クレアチニンクリアランスが40ml/min未満である女性を含まない)に対し、1ヶ月間毎日PTH(1-84)(100μg)の皮下注射を行った後、11ヶ月間毎週1回PTH(1-84)の投与を行うための、骨減少症治療剤 」(以下、甲B3発明」という。)

が記載されているといえる。

イ. 対比及び判断
(ア) 本件発明1と甲B3発明とを対比すると、両者は、
a. 薬理成分とその投与の態様が、本件発明1は、1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩の週1回投与であるのに対し、甲B3発明は、1ヶ月間毎日のPTH(1-84)(100μg)の皮下注射と、その後の11ヶ月間毎週1回PTH(1-84)の投与である点、
及び、
b. 投与対象が、本件発明1は、
「 下記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者
(1)年齢が65歳以上である
(2)既存の骨折がある
(3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である、および/または、骨萎縮度が萎縮度I度以上である
(4)クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである中等度腎機能障害を有する。 」
であるのに対し、甲B3発明は、
「 閉経後の45?70歳の女性であって、大腿頚部BMDのTスコアが-1.0から-2.0であり、骨粗鬆症性骨折の履歴又はX線検査において形態骨折の存在がない骨減少症の患者(ただし、クレアチニンクリアランスが40ml/min未満である女性を含まない) 」
である点で相違する。

(イ) 以下、上記相違点について検討する。
まず甲B3発明は、使用する薬理成分もその投与頻度も本件発明1と異なっているし、甲B3発明の投与対象には、本件発明1の投与対象には含まれない、年齢が65歳未満である者、既存の骨折を有しない者、骨密度が若年成人平均値の80%以上である者(-1.0?-1.5未満のTスコアは、骨密度が若年成人平均値の80%以上に相当する。参考記載1)、及び、腎機能が正常である者や軽度の腎機能障害を有する者が含まれ(上記ア.(イ))、しかも、甲B3発明の投与対象は、骨減少症患者であって、骨粗鬆症患者ですらない。
さらに、上記ア.(イ)で述べたとおり、甲B3発明を用いる甲B3に記載の試験は、腎機能低下がより進行した者を除外して行われたものであるところ、薬物の投与時に、腎障害を有する者では、薬物排泄が十分に行われず、腎機能が正常な者と比較して副作用の発現が増加する可能性があることが、当業者の技術常識であることを考慮すると、甲B3の記載から、腎機能のより低下した、中等度腎機能障害を有する者を、ことさらに選択して、hPTHを投与することが読み取れるとはいえない。
そして、本件発明1と薬理成分、その投与頻度や投与対象が異なり、中等度腎機能障害を有する者を選択して投与することも読み取れない甲B3の記載から、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に対し、hPTH(1-34)の200単位を週1回の頻度で、重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが予測できるとはいえない。
加えて、上記1.及び3.で既に述べたとおり、、甲B1及び甲B2の記載から、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に対し、hPTH(1-34)の200単位を週1回の頻度で、重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが予測できるとはいえない。
そうすると、甲B3発明と、甲B1に記載された発明及び甲B2に記載された発明とを併せみても、甲B3発明において、1ヶ月間毎日のPTH(1-84)(100μg)の皮下注射と、その後の11ヶ月間毎週1回PTH(1-84)の投与を、1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩の週1回投与に変更し、しかも、その投与対象を「閉経後の45?70歳の女性であって、大腿頚部BMDのTスコアが-1.0から-2.0であり、骨粗鬆症性骨折の履歴又はX線検査において形態骨折の存在がない骨減少症の患者(ただし、クレアチニンクリアランスが40ml/min未満である女性を含まない)」から、腎機能低下がより進行した、中等度腎機能障害を有することを条件の1つとする、本件発明1の上記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者とする動機付けが得られるとはいえない。また、本件発明1の副作用発現率に関する安全性が、重篤な病態にあり、骨折のリスクがより増大している状態にある骨粗鬆症患者のうちの腎機能が正常である者と同等であるという本件発明1の効果が甲B1?甲B3の記載から予測できたともいえない。

(ウ) 以上に説示した事項を踏まえると、本件発明1が、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明及び甲B3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 小括
上記(1)での検討のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B2-ウについて、本件発明1が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。


5. 申立理由B2-エ(進歩性)について

申立理由B2-エの要旨は、上記[第3]2.(2)で述べたとおり、本件発明2は、甲B1に記載された発明及び甲B9の記載事項、又は、甲B1に記載された発明、甲B4の記載事項及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というものである。

(1) 当合議体の判断
ア. まず上記1.で申立理由B2-アについて説示したとおり、甲B1に記載された発明、又は、甲B1に記載された発明及び甲B4の記載事項から、甲B1発明の投与対象を、腎機能低下がより進行した、中等度腎機能障害を有することを条件の1つとする、本件発明1の上記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者とする動機付けが得られるとはいえず、また、本件発明1に係る中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に週1回200単位のhPTH(1-34)を投与した際の副作用発現率が、上記(1)?(3)の条件を満たすものの腎機能が正常である骨粗鬆症患者における副作用発現率と差異がないことが、甲B1の記載、又は、甲B1及び甲4の記載から予測できたともいえない。

次に、甲B9は、甲A3と同一の文献であるから、甲B9には、上記2.(1)ア.(イ)で説示した事項が記載されているといえる。
また、上記2.(1)イ.(イ)?同(エ)で甲A3の記載事項について述べた理由と同様の理由から、甲B9には、甲B9に記載の試験で用いられたhPTH(1-34)製剤よりも1回あたりの投与量が多いhPTH(1-34)の200単位を中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に適用することが記載されておらず、さらに、甲B9の記載から、hPTH(1-34)の週1回200単位を中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に適用した場合に、当該患者と腎機能が正常である患者との間で、当該有害事象等に差異がなく、中等度腎機能障害患者で重篤な副作用を生じさせず、安全に投与できることが示唆されているともいえない。

そうすると、甲B1に記載された発明、又は、甲B1に記載された発明及び甲B4の記載事項と、甲B9の記載事項とを併せみても、甲B1発明の投与対象を、腎機能低下がより進行した、中等度腎機能障害を有することを条件の1つとする、本件発明1の上記(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者とする動機付けが得られるとはいえないし、また、本件発明1に係る中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に週1回200単位のhPTH(1-34)を投与した際の副作用発現率が、上記(1)?(3)の条件を満たすものの腎機能が正常である骨粗鬆症患者における副作用発現率と差異がないことが、甲B1、甲B4及び甲B9の記載から予測できたともいえない。
したがって、本件発明2が、甲B1に記載された発明及び甲B9の記載事項、又は、甲B1に記載された発明、甲B4の記載事項及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ. 申立人の主張について
(ア) 申立書B第21頁第12?18行の記載を踏まえると、申立人Bの主張する本申立理由は、次のとおりのものである。

本件発明2は、本件特許発明1に「クレアチニンクリアランスが30以上50未満ml/minである中等度腎機能障害を持つ特定の骨粗鬆症患者に200単位のPTH(1-34)を毎週投与した際の副作用発生率に関する安全性が、腎機能正常者に200単位のPTH(1-34)を毎週投与した際の副作用発生率に関する安全性と同等である」との効果を要件として加えただけの発明である。
申立理由B2-アについての主張のとおり、本件発明1は甲B1に記載された発明、又は、甲B1に記載された発明及び甲B4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件発明2において、本件発明1に付加された上記効果も甲B9に記載されたか又は甲B9の記載から自明の効果である。

(イ) しかしながら、上記1.で当該申立理由B2-アについて検討したとおり、本件発明1は、甲B1に記載された発明、又は、甲B1に記載された発明及び甲B4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないものである。
さらに、上記ア.で検討したとおり、本件発明2が、甲B1に記載された発明及び甲B9の記載事項、又は、甲B1に記載された発明、甲B4の記載事項及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、申立人Bの上記主張は採用できない。

(2) 小括
上記(1)での検討のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B2-エについて、本件発明2が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。


6. 申立理由B2-オ(進歩性)について

申立理由B2-オの要旨は、上記[第3]2.(2)で述べたとおり、本件発明2は、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というものである。

(1) 当合議体の判断
ア. まず上記3.で申立理由B2-イについて説示したとおり、甲B1に記載された発明及び甲B2に記載された発明に基づいて、本件発明1に係る(1)?(4)の条件を全て充足する骨粗鬆症患者にhPTH(1-34)の週1回200単位投与を適用することを当業者が容易に着想できたとはいえず、また、本件発明1に係る中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に週1回200単位のhPTH(1-34)を投与した際の副作用発現率が、上記(1)?(3)の条件を満たすものの腎機能が正常である骨粗鬆症患者における副作用発現率と差異がないことが、甲B1及び甲B2の記載から予測できたともいえない。
さらに、上記5.(1)ア.で述べたとおり、甲B9の記載から、hPTH(1-34)の200単位を中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に適用した際に、当該患者と腎機能が正常である患者との間で、当該有害事象等に差異がなく、中等度腎機能障害を有する患者で重篤な副作用を生じないことが示唆されているとはいえない。

そうすると、甲B1に記載された発明及び甲B2に記載された発明と、甲B9の記載事項を併せみても、甲B2発明のhPTH(1-34)の用法・用量を1日1回20μgから週1回200単位投与に変更した上で、さらに投与対象を、腎機能低下がより進行した、中等度腎機能障害を有することを含む本件発明1の(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に変更することまで、当業者が容易に想到し得たとはいえないし、また、甲B2に記載された、中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者へのhPTH(1-34)の1日1回20μg投与を、週1回200単位投与に変更する動機付けが得られるとはいえない。
さらに、本件発明1の効果が甲B1、甲B2及び甲B9の記載から予測できたともいえない。

イ. 以上に説示した事項を踏まえると、本件発明2が、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2) 小括
上記(1)での検討のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B2-オについて、本件発明2が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。


7. 申立理由B2-カ(進歩性)について

申立理由B2-カの要旨は、上記[第3]2.(2)で述べたとおり、本件発明2は、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明、甲B3に記載された発明及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というものである。

(1) 当合議体の判断
ア. まず上記4.で申立理由B2-ウについて説示したとおり、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明及び甲B3に記載された発明から、甲B3発明における薬理成分及び投与頻度をPTH(1-34)の週1回200単位投与に変更し、さらにその投与対象を中等度腎機能障害を有することを含む本件発明1の(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に変更する動機付けは得られず、また、本件発明1の効果が甲B1?甲B3の記載から予測できたともいえない。
さらに、上記5.(1)ア.で説示したとおり、甲B9の記載から、hPTH(1-34)の200単位を中等度腎機能障害を有する骨粗鬆症患者に適用した際に、当該患者と腎機能が正常である患者との間で、当該有害事象等に差異がなく、中等度腎機能障害を有する患者で重篤な副作用を生じないことが示唆されているとはいえない。

そうすると、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明及び甲B3に記載された発明と、甲B9の記載事項を併せみても、甲B3発明における投与対象を、腎機能低下がより進行した、中等度腎機能障害を有することを含む本件発明1の(1)?(4)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に変更する動機付けは得られず、また、本件発明1の効果が甲B1?甲B3及び甲B9の記載から予測できたともいえない。

イ. 以上に説示した事項を踏まえると、本件発明2が、甲B1に記載された発明、甲B2に記載された発明及び甲B3に記載された発明及び甲B9の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2) 小括
上記(1)での検討のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B2-カについて、本件発明2が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。


8. 申立理由B3(新規性及び産業上の利用可能性)について

申立理由B3の要旨は、上記[第3]2.(3)で述べたとおり、本件発明1?2は、甲B1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものでなく、また、本件発明1?2は、同法第29条第1項柱書における「産業上利用することができる発明」に該当せず、特許を受けることができるものでない、というものである。

(1) 新規性について
ア. 本件発明1?2が甲B1に記載された発明であるといえないことは、上記1.における申立理由B1についての検討で説示した理由のとおりである。

イ. (ア) 申立人Bは、申立理由B3のうち新規性について、概略、以下のとおり主張する(申立書B第26頁第18行?第27頁第15行、及び、同第29頁第15?17行)。

本件発明1?2の構成のうち、医薬発明として有効成分は「PTH(1-34)」であり、医薬品としての効能効果に該当する適応症は「骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」、用法用量は「1回当たり200単位のPTH(1-34)又はその塩が週1回投与されること」であり、これら医薬品としての基本的な事項は甲B1に記載されている。
本件発明1?2は、それらの基本的な事項が甲B1において公知である状況で、患者が本件発明1の上記「(1)?(4)のすべての条件を満たす」という、医薬品の投与対象である患者の特性を発明特定事項として加えたものであり、医薬用途発明として新規性が認められない発明である。
また当時の技術常識に従えば、本件発明1?2の上記「(1)?(4)のすべての条件を満たす」骨粗鬆症患者に対する週1回200単位のPTH(1-34)の投与は許されている。

(イ) 上記(ア)の主張について検討すると、まず、ある疾患の患者のうちの特定の患者群に投与するための医薬であることが規定されている医薬発明は、当該特定の患者群において当該疾患を治療又は予防することがその用途であるといえる。
また、当該特定の患者群に対して、当該疾患の治療又は予防のために当該医薬を投与することが、その出願前に頒布された刊行物に記載されているか、又は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであることが示されなければ、当該医薬発明は特許法第29条第1項第3号に該当するものでなく、新規性を有しないとはいえない。
ここで、本件発明1?2は、本件発明1の上記「(1)?(4)のすべての条件を満たす」骨粗鬆症患者において、骨粗鬆症を治療又は予防することがその用途であり、また、上記ア.で説示した理由のとおり、甲B1に、本件発明1の上記「(1)?(4)のすべての条件を満たす」骨粗鬆症患者に対して、骨粗鬆症の治療又は予防のために、PTH(1-34)の週1回200単位投与を適用することが記載されているとはいえない。
よって、本件発明1?2は、甲B1に記載された発明からみて新規性を有するといえ、また、申立人Bの上記主張を採用することはできない。

(2) 産業上の利用可能性について
ア. 本件発明1?2は、「骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」という医薬組成物に係る物の発明であるから、特許法第29条第1項柱書にいう「産業上利用することができる発明」に該当するものといえる。

イ. 申立人Bは、医薬発明において有効成分、効能効果、用法用量と無関係な要因で患者の特性を発明特定事項にすることは、実質上の治療方法の発明に該当し、産業上の利用可能性がない旨主張する(申立書B第28頁第15?17行)。
しかしながら、上記ア.で説示したとおり、本件発明1?2は、「骨粗鬆症治療剤ないし予防剤」という医薬組成物に係る物の発明であって、このことは患者の特性が発明特定事項に含まれることによって変わるものではない。
よって、本件発明1?2が人間を治療する方法の発明であるといえず、申立人Bの上記主張を採用することはできない。

(3) 小括
上記(1)及び(2)での検討のとおりであるから、申立人Bが主張する申立理由B3について、本件発明1?2が特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものでなく、また、本件発明1?2が、同法第29条第1項柱書における「産業上利用することができる発明」に該当せず、特許を受けることができるものでないとはいえない。

(4) 付言
なお、申立書B第26?28頁における申立理由B3についての申立人の主張の内容は、本件発明1?2の特許法第29条第1項第1号又は第2号該当性を述べるもののようにも見受けられるが、上記(1)ア.で述べたとおり、本申立理由の証拠として提出された甲B1に本件発明1?2が記載されているとはいえないから、甲B1の記載を証拠として、本件発明1?2が本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明、又は、公然実施をされた発明であるともいえない。
また、上記主張中で挙げられた甲B2、甲B6及び甲B9に記載されたPTH(1-34)を含む医薬は、いずれも本件発明1?2と用量が異なる医薬であるし、さらに、当該主張中で、本件発明1の実施品を記載したとされる甲B8において、本件特許の出願前に本件発明1?2に係る骨粗鬆症治療剤ないし予防剤が、本件発明1の上記(1)?(4)の全ての条件を満たす患者に投与するためのものとして公然知られ、又は、公然実施されたことを示す記載は見いだせない。
よって、本件発明1?2が、特許法第29条第1項第1号又は第2号に該当するものとはいえない。


9. むすび

以上に述べたとおり、特許異議の申立ての理由(申立理由A及び同B1?B3)及び証拠によっては、本件発明1?2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-09-27 
出願番号 特願2016-82589(P2016-82589)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 113- Y (A61K)
P 1 651・ 14- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 天野 貴子  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 大久保 元浩
渡邉 潤也
登録日 2016-11-18 
登録番号 特許第6043008号(P6043008)
権利者 旭化成ファーマ株式会社
発明の名称 1回当たり100?200単位のPTHが週1回投与されることを特徴とする、PTH含有骨粗鬆症治療/予防剤  
代理人 細田 芳徳  
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