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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01B
管理番号 1333260
異議申立番号 異議2017-700672  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-07-10 
確定日 2017-10-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6056105号発明「発泡シースケーブル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6056105号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6056105号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成25年5月7日の出願であって、平成28年12月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対して、平成29年7月10日に特許異議申立人 藤井 正剛により特許異議の申立てがされたものである。

第2.本件特許発明
本件特許第6056105号の請求項1?3の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明3」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
導体に絶縁体を被覆した絶縁電線に発泡シースを被覆してなる発泡シースケーブルにおいて、
前記発泡シースは、表層部と、表層部よりも内側となる層と、に分けたとき、発泡セルのセル径を前記表層部へ向かって小さく形成するとともに、該発泡セルの単位面積当たりの個数を多くし且つ該発泡セル同士の間隔を小さく形成する
ことを特徴とする発泡シースケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡シースケーブルにおいて、
前記発泡セルは、
前記単位面積を0.04mm^(2)とし、前記発泡シースの厚みを1.35mm?1.5mmとし、前記表層部を前記発泡シースの表面から前記発泡シースの厚み方向に0.2?0.4mmまでの層としたとき、
前記表層部は、前記発泡セルのセル径を0.06mm?0.01mm、該発泡セルの単位面積当たりの個数を6?20個とし、
前記表層部よりも内側となる層は、前記発泡セルのセル径を0.15mm?0.06mm、該発泡セルの単位面積当たりの個数が1?6個としたものである
ことを特徴とする発泡シースケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発泡シースケーブルにおいて、
前記表層部よりも内側となる層のうち、前記表層部側となる層を中層部、前記絶縁体側となる層を深層部としたとき、
前記表層部と、前記表層部よりも内側となる層との発泡率の差は、前記深層部と、前記表層部との発泡率の差の0?±6%である
ことを特徴とする発泡シースケーブル。」

第3.特許異議申立人の主張の概要
1.特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証?甲第7号証を提出し、以下のように主張している。

ア.特許異議申立理由(特許法第29条2項)
請求項1?3に係る発明は、下記の甲第1号証に記載の発明に、甲第2?7号証に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであって、請求項1?3に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


甲第1号証: 特開2010-113835号公報
甲第2号証: 実願昭52-069419号(実開昭53-163674 号のマイクロフィルム)
甲第3号証: 実願平3-33707号(実開平4-127917号のマ イクロフィルム)
甲第4号証: 特開2002-150847号公報
甲第5号証: 日本工業規格 JIS C3342: 600Vビニル被 覆ビニルシースケーブル(VV)
甲第6号証: 特開平2-276109号公報
甲第7号証: 特開2010-215796号公報

第4.甲号証の記載事項
1.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。以下、同じ。)
(1)「【0006】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1は本発明のケーブルの一例の、一部を断面図で示した説明図である。導体1aと絶縁層1bからなる電線は、発泡シース2により被覆されている。シースの表皮部2aは発泡率が低い。一方、中間部2bは発泡率が高く、深層部2cは発泡率が低い。これによりシース2が絶縁電線1と接触する面積を上げ、電線1とシース2が長手方向にずれるという課題を解決した。
【0007】
図2に、本発明のケーブルの、各部位におけるシースの発泡率の一例を模式的なグラフで示した。均一な発泡ではなく、シースの厚み方向で中央部(中間部)に発泡のピークを設け、表皮層及び絶縁電線との接触部(深層部)は発泡が少ない。この構成により、シース全体では柔軟性や軽量性などの特性を維持したまま、シースと絶縁電線をより密着させることができる。
なお、ここでいう「厚み」とは、図5の矢印Aで示した長さをいう。
【0008】
本発明において、絶縁層、シースの素材は、ビニル化合物など、通常用いられているものを用いることができ、特に制限はないが、具体的には例えば塩化ビニル樹脂を用いることができる。シースの厚さも通常に実施されている厚さでよいが、好ましくは1.4?1.5mmである。電線の導体についても特に制限はなく、一般的に使用されている銅線、アルミニウムなどを用いることができる。
本発明において、発泡シースの表層厚みの中間部から厚さ方向に絶縁電線へ向かって該発泡シースの発泡率を小さくしたことは、ケーブルの断面および比重により確認できる。
本発明では、絶縁層接触部からその厚さ方向に0.1?0.2mmまでの発泡率を8%以下にすることが好ましく、1.0?6.0%がさらに好ましい。
なお、本発明における発泡率とは、シースを厚み方向に表層部、中間部、深層部に分けたときの各部位における、該層全体の体積中の、気泡の体積の割合(%)である。表層部はシース表面から、シース厚み全体の10?30%を占めることが好ましく、15?25%がさらに好ましい。また、深層部は電線接触部から、シース厚み全体の10?30%を占めることが好ましく、15?25%がさらに好ましい。上記両層の間に中間層が存在する。
図2に示したグラフの発泡率のピークは、15?30%が好ましい。
【0009】
本発明において発泡率の上記のような制御は、例えば導体を被覆している絶縁層を十分冷却してから発泡シースを被覆することで行える。シース中央に比べ絶縁層との接触部位の方が冷却されるため、シースの発泡率が一様ではなくなる。このときの冷却温度は15?25℃が好ましい。
本発明の絶縁電線の数は特に制限はなく、1本または複数本でも良い。」
(2)「




・上記(2)の【図1】によれば、導体1aは絶縁層1bで被覆されているものと認められる。
・また、【図1】によれば、表皮部2aの気泡の径よりも、中間部2bの気泡の径の方が大きくなっているものとものと認められる。
・上記(1)の段落【0008】の記載によれば、発泡率とは、シースを厚み方向に表層部、中間部、深層部に分けたときの各部位における、該層全体の体積中の、気泡の体積の割合(%)であって、また、【図1】等の記載を鑑みれば、該記載の「表層部」と他に記載される「表皮部」は同じものと認められる。
さらに、段落【0006】の記載によれば、シースの表皮部2aは発泡率が低く、中間部2bは発泡率が高く、深層部2cは発泡率が低く、また、段落【0008】の記載によれば、絶縁層接触部からその厚さ方向に0.1?0.2mmまでの発泡率を8%以下にすることが好ましく、1.0?6.0%がさらに好ましいものである。
したがって、甲第1号証には、発泡シース2を厚み方向に表皮部2a、中間部2b、深層部2cに分けたときの各部位における、該層全体の体積中の、気泡の体積の割合(%)である発泡率が、前記発泡シース2の表皮部2aは低く、中間部2bは高く、深層部2cは低く、絶縁層接触部からその厚さ方向に0.1?0.2mmまででは8%以下にすることが好ましく、1.0?6.0%がさらに好ましい、ことが記載されているといえる。

以上総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。

「導体1aを絶縁層1bで被覆した電線が、発泡シース2により被覆されているケーブルにおいて、
発泡シース2を厚み方向に表皮部2a、中間部2b、深層部2cに分けたときの各部位における、該層全体の体積中の、気泡の体積の割合(%)である発泡率が、前記発泡シース2の表皮部2aは低く、中間部2bは高く、深層部2cは低く、絶縁層接触部からその厚さ方向に0.1?0.2mmまででは8%以下にすることが好ましく、1.0?6.0%がさらに好ましく、
表皮部2aの気泡の径よりも、中間部の気泡の径の方が大きくなっており、
発泡シース2の厚さは、1.4?1.5mmであって、
表層部はシース表面から、シース厚み全体の10?30%を占めることが好ましく、15?25%がさらに好ましく、深層部は電線接触部から、シース厚み全体の10?30%を占めることが好ましく、15?25%がさらに好ましい、
ケーブル。」

2.甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、以下の事項が記載又は示されている。
(1)「心線上にポリエチレンやポリスチレンなどの高発泡プラスチックを被覆して誘電率を低下させた絶縁電線は既に同軸ケーブルの分野で実用に供されている。この場合の絶縁層の気泡率は約80%と高いため強度が低く、発泡しないプラスチックの約1/10まで低下し、また気泡率が高いため耐水性も低下して初期には約1.2であつた誘電率が時間の経過とともに徐々に上昇し、高発泡化して誘電率を低下させた効果が相殺される結果となる。」(1頁15行-2頁4行)
(2)「このように高発泡プラスチック絶縁電線は初期の電気特性にはすぐれているものの、機械的強度や耐水性等で実際の使用上に問題を生じ易く、実用可能範囲は狭かつた。この問題を解決する方法として高発泡プラスチックの外側に非発泡のプラスチックの補強層を施すことが考えられ、発泡ポリスチレンと非発泡ポリエチレンの組合せが一部で実用化されている。しかし、この場合は発泡層と非発泡層との間で発泡度が急激に変り、またポリスチレンとポリエチレンとは全く異質のプラスチックであるため発泡層と非発泡層が一体化せず完全な複合材料としての補強効果は望めず、機械的強度の改善効果は予想外に少ない。」(2頁5-18行)
(3)「また本考案で心線側から外表面に向つて連続的に発泡度を低下せしめることにより、異種の補強層を施す場合と異なり完全な複合体となるので、外表面に衝撃等の外力が加わつた場合のエネルギーの吸収性にすぐれ、また応力が除かれると容易に原形に復原する。更に摩擦等の外力に対しては外表面の低発泡層もしくは非発泡層が補強効果を有するなど、各種の機械的、物理的外力に対してすぐれた効果を有する。そして外表面からの水の浸入を完全に防ぐことも可能で、初期の電気的特性を長期間保持し得る。」(4頁15行-5頁5行)
(4)「絶縁層の発泡度を心線側から外表面に向って順次低下させるには、発泡時の温度を心線及び心線上の接着層側で高く表面層側で低くすればよく、この両者の温度差を大きくとるほど発泡度分布、いいかえれば誘電率の分布がきれいに出る。」(5頁16行-6頁1行)
(5)「心線1上に低密度ポリエチレンからなる接着層2を設けたコアに、ポリエチレン3を接着層側90℃、表面層側20℃で押出し発泡被覆させて得た、9Cサイズの高発泡ポリエチレン絶縁電線の断面図を第1図に示す。気泡4は心線側が大きく外表面に向つて徐々に小さくなつている。」(6頁6-12行)
(6)「




以上総合すると、甲第2号証には、以下の技術事項(以下、「甲2記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「心線上にポリエチレンやポリスチレンなどの高発泡プラスチックを被覆して誘電率を低下させた絶縁電線において、心線側から外表面に向つて連続的に発泡度を低下せしめることにより、外表面の低発泡層もしくは非発泡層が補強効果を有し、各種の機械的、物理的外力に対して強度が上がること。」

3.甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 導体表面に絶縁層として熱可塑性樹脂を被覆した発泡絶縁電線において、該熱可塑性樹脂が、導体表面より100μm以内では気泡率が10%以下であり、その径方向に沿って外側に向かうにつれて気泡率が増加する不均一分布構造を有し、かつ全体の気泡率が50%以上、平均気泡径が20μm以下であることを特徴とする発泡絶縁電線。」
(2)「【0007】
本考案はこれらの問題点を解決するためになされたものであり、気泡径が小さく、気泡率が高い熱可塑性樹脂発泡体からなる絶縁層を有し、製造後の変形がなく、しかも信号伝送速度の速い発泡絶縁電線を提供することを目的とする。」
(3)「【0010】
本考案において、熱可塑性樹脂の平均気泡径を20μm以下と規定したのは、平均気泡径が20μm、特に50μmを超えると、機械的強度が低下して変形が生じやすくなるためである。」
(4)「【0014】
本考案において、熱可塑性樹脂について、導体表面から100μm以内での気泡率が10%以下と規定したのは以下のような理由による。導体表面から100μm以内での気泡率が10%を超えると、発泡に伴う樹脂の膨張により、導体との密着力が低下する。また、気泡率が10%以下であっても導体表面から100μmという制限を小さくする(例えば50μm)と、高発泡領域が導体に接近するため、やはり樹脂の膨張による影響が生じる。」
(5)「




以上総合すると、甲第3号証には、以下の技術事項(以下、「甲3記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「導体表面に絶縁層として熱可塑性樹脂を被覆した発泡絶縁電線において、、熱可塑性樹脂の気泡の平均気泡径が20μm以下であって、その径方向に沿って外側に向かうにつれて気泡率を増加させることで、発泡に伴う樹脂の膨張による導体との密着力の低下を防止すること。」

4.甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本願請求項1に記載の平型ビニル絶縁ビニルシースケーブルは、導体に絶縁体を被覆した絶縁線心を並列し一括してシースを被覆してなる平型ビニル絶縁ビニルシースケーブルにおいて、前記シースを軟質塩化ビニルをベースに発泡率13?32%に構成したものである。このように軟質塩化ビニルを発泡させるのは、シース内の気泡作用によって外気温が低温の場合の柔軟性を向上させるためで、軟質塩化ビニルの発泡率を上げると低温における柔軟性が向上し、シースを切裂く場合、シース内に存在する気泡によって材料切断の際の切断面積が小さくなり、切裂き荷重の低減効果が著しく大きくなる。さらに、軟質塩化ビニルを発泡させるのは、シース表面の発泡により重ね巻きしたときのシース間のシース材料の接着面積を減少せしめ、高温接着性の著しい低下を図るためと、シースと絶縁体との接着面積を減少せしめ、高温接着性の著しい低下を図り、シース引き抜き荷重の低減を図るためである。」
(2)「【0024】また、表1において、低温切裂荷重(N)は、平型ケーブル10を-10℃の雰囲気中に放置し、平型ケーブル10のシース温度が-10℃になった状態で、シース切裂荷重は、平型ケーブル10の2本の絶縁線心4を分けるように2本の絶縁線心4の間にカッターナイフ等の刃物を切り入れ、シース5を刃物で切裂いたときの荷重(N)を測定したものである。」
(3)「【0031】また、表1から、VVF(ビニル絶縁ビニルシースケーブル)についての測定結果を見ると、低温切裂荷重(N)は、発泡剤の配合量が0.04重量部の実施例1の低温切裂荷重(N)が『55N』、発泡剤の配合量が0.08重量部の実施例2の低温切裂荷重(N)が『49N』、発泡剤の配合量が0.14重量部の実施例3の低温切裂荷重(N)が『41N』と、発泡剤の配合量が増加するに伴って低温切裂荷重(N)が低くなっていることが判る。これは、発泡剤の作用によるものであることが判る。また、実施例1?実施例3の低温切裂荷重(N)がいずれも従来例1(発泡剤の配合量0)、比較例1(発泡剤の配合量0.03重量部)の高温接着荷重『12N』よりも小さい値となっている。これは、実施例1?実施例3の発泡剤の配合量が0.04重量部以上配合されていることによる。一方、実施例3に配合されている発泡剤の配合量0.14重量部よりも多い0.20重量部配合している比較例2は、発泡剤の作用で高温接着荷重が『3N』と小さくなっている。
【0032】また、表1から、VVF(ビニル絶縁ビニルシースケーブル)についての測定結果を見ると、シース引抜荷重(N)は、発泡剤の配合量が0.04重量部の実施例1のシース引抜荷重(N)が『3.5N』、発泡剤の配合量が0.08重量部の実施例2のシース引抜荷重(N)が『2.7N』、発泡剤の配合量が0.14重量部の実施例3のシース引抜荷重(N)が『2.0N』と、発泡剤の配合量が増加するに伴ってシース引抜荷重(N)が小さくなっていることが判る。これは、発泡剤の作用によるものであることが判る。また、実施例1?実施例3のシース引抜荷重(N)がいずれも従来例1(発泡剤の配合量0)のシース引抜荷重『3.8N』、比較例1(発泡剤の配合量0.03重量部)のシース引抜荷重『3.6N』よりも小さい値となっている。これは、実施例1?実施例3の発泡剤の配合量が0.04重量部以上配合されていることによる。一方、実施例3に配合されている発泡剤の配合量0.14重量部よりも多い0.20重量部配合している比較例2は、発泡剤の作用でシース引抜荷重(N)が『1.8N』と小さくなっている。」

以上総合すると、甲第4号証には、以下の技術事項(以下、「甲4記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「導体に絶縁体を被覆した絶縁線心を並列し一括してシースを被覆してなる平型ビニル絶縁ビニルシースケーブルにおいて、シース内に気泡を存在させることにより、カッターの刃にかかる抵抗を小さくすること。」

5.甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「e)シース シースは、単心ケーブル(二層構造)ではb)の絶縁体上に、多心丸形ケーブルではd)の線心のより合わせ上に、ビニルを表3?表6の厚さに被覆する。平形ケーブルではc)の線心の所要条数を並列にした上、ビニルを表7及び表8の厚さに被覆する。シースの色は、通常丸形の場合は黒、平形の場合は灰色とする。シースの平均厚さは、6.2(構造)により試験を行ったとき、表3?表8の値の90%以上とし、最小厚さは、丸形で表3?表6の値の85%以上、平形で表7及び表8の値の80%以上とする。
なお、ケーブルの表面には、6.1(外観)により試験を行ったとき、有害な傷があってはならない。」(9頁)

・甲第5号証の8頁の「表7-600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形 2心」の表によれば、シースの厚さは1.5mmであることが記載されており、そして、上記(1)の記載によれば、シースの平均厚さは、表の値の90%以上であるから、1.5mm×90%=1.35mmとなり、シースの平均厚さは1.35?1.5mmと認められる。

以上総合すると、甲第5号証には、以下の技術事項(以下、「甲5記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「シースの平均厚さが1.35?1.5mmであること。」

6.甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「(1)導体外周に中空球を混合したエネルギー線硬化型樹脂組成物の被覆層を有してなる絶縁電線において、該被覆層中の中空球の外径が導体の近傍で最大であり、かつ被覆層の外周に向かって次第に小さくなっていることを特徴とする絶縁電線。」(特許請求の範囲の請求項1)
(2)「該絶縁電線の被覆断面を観察したところ中心の導体に最も近い部分で中空球の大きさが40?50μmφ、被覆断面中央部分で20?30μmφ、最外被部分で10?20μmφと予熱した導体に近いほど膨張度の大きい分布であった。」(5頁右上欄11-15行)
(3)「



以上総合すると、甲第6号証には、以下の技術事項(以下、「甲6記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「導体外周に中空球を混合したエネルギー線硬化型樹脂組成物の被覆層を有してなる絶縁電線において、中心の導体に最も近い部分で中空球の大きさが40?50μmφ、被覆断面中央部分で20?30μmφ、最外被部分で10?20μmφとすること。」

7.甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、発泡度が均一で、発泡度が高く、気泡径が小さく、低誘電率である、発泡絶縁体を製造可能な発泡樹脂組成物及びその製造方法、並びにこれを用いた屈曲等に耐える機械的強度を有する発泡絶縁電線を提供することにある。」
(2)「【0062】
したがって、本実施形態に係る発泡樹脂組成物を用いることにより、発泡度が高く発泡度が均一であり、気泡径が小さく、かつ、質量部換算で発泡核剤添加量が少ない発泡絶縁体を形成できるため、従来の発泡核剤を用いた発泡絶縁電線よりも低スキューかつ機械的強度に優れた発泡絶縁電線1を製造できる。」

以上総合すると、甲第7号証には、以下の技術事項(以下、「甲7記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「発泡絶縁電線において、発泡度を均一にすることで機械的強度を得ること。」


第5.対比・判断
ア.本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると以下のとおりである。

a.甲1発明の「導体1a」、「絶縁層1b」、「電線」、及び「発泡シース2」は、各々、本件特許発明1の「導体」、「絶縁体」、「絶縁電線」、及び「発泡シース」に相当する。
そして、甲1発明の「ケーブル」は、「発泡シース2により被覆されている」から、甲1発明の「ケーブル」は、本件特許発明1の「導体に絶縁体を被覆した絶縁電線に発泡シースを被覆してなる発泡シースケーブル」に相当する。
b.甲1発明の「表皮部2a」、「中間部2b」は、「発泡シース2を厚み方向に」「分けた」「各部位」であるから、甲1発明の「表皮部2a」、「中間部2b」は、各々、本件特許発明1の「表層部」、「表層部よりも内側となる層」に相当し、さらに、甲1発明の「気泡」は、本件特許発明1の「発泡セル」に相当する。
そして、甲1発明の「表皮部2aの気泡の径よりも、中間部の気泡の径の方が大きくなって」いることは、本件特許発明1の「前記発泡シースは、表層部と、表層部よりも内側となる層と、に分けたとき、発泡セルのセル径を前記表層部へ向かって小さく形成する」ことに相当する。

そうすると、両者は、

「導体に絶縁体を被覆した絶縁電線に発泡シースを被覆してなる発泡シースケーブルにおいて、
前記発泡シースは、表層部と、表層部よりも内側となる層と、に分けたとき、発泡セルのセル径を前記表層部へ向かって小さく形成する
発泡シースケーブル。」

の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本件特許発明1では、「前記発泡シースは、表層部と、表層部よりも内側となる層と、に分けたとき、」「前記表層部へ向かって」「該発泡セルの単位面積当たりの個数を多くし且つ該発泡セル同士の間隔を小さく形成する」のに対して、甲1発明では、表皮部2aと中間部2bの気泡の個数、及び、気泡同士の間隔に関して、そのような特定がされていない点。


相違点について検討する。
甲第2?甲第7号証には、発泡セルの位面積当たりの個数、発泡セル同士の間隔に関する記載はない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明、甲2?甲7記載の技術事項に基づいて、当業者が容易になし得るものではない。

特許異議申立人は、「前記表層部へ向かって」「該発泡セルの単位面積当たりの個数を多く」する点は、文言上の明示はないものの甲第2号証より看取できるとともに、甲第3号証にも記載されており、また、「該発泡セル同士の間隔を小さく形成する」点については甲第3号証に記載されおり、さらに、甲第4号証にも記載されるように、カッターの刃に掛かる抵抗を小さくするために多数の気泡を存在させることは技術常識であるから、本件特許発明1は、甲1発明に該技術常識を考慮して甲第2号証又は甲第3号証に記載の事項を適用して、当業者が容易に発明できた旨を主張している。
しかしながら、通常、甲第4号証の、発泡シース内に気泡を多数存在させることで、カッターの刃に掛かる抵抗が小さくなるという技術事項を知った当業者は、甲1発明に甲第4号証に記載の事項を適用するのであって、甲1発明に甲第2号証、甲第3号証に記載の事項を適用する理由はない。また、甲1発明に甲第4号証に記載の事項を適用しても、甲1発明の発泡シース内で表皮部、中間部、深層部に拘わらず一様に気泡の数を増やすことになるのであって、上記相違点に係る構成は導出されない。
また、確かに甲第2号証の第1図によれば、外表面(本願の「表層部」に相当。)の気泡の数は心線側(本願の「表層部よりも内側となる層」に相当。)に比べ多くなっているようにも見えるが、甲第2号証には、外表面及び心線部における気泡の単位面積当たりの具体的な個数に関する記載はなく、さらに、甲第2号証のものは、外表面を低発泡層もしくは非発泡層とすることで、発泡プラスチックの外表面の機械的、物理的外力に対して強度をあげたものであるから、外表面で気泡の数を多くする必要はなく、さらに、非発泡層とした場合には気泡の数はゼロであってもよいものであるから、「前記表層部へ向かって」「該発泡セルの単位面積当たりの個数を多く」なっているとは認められない。
さらに、甲第3号証のものは、径がほぼ同じ大きさである気泡の気泡率を導体表面から径方向外側に向かって増加させるものであって、「発泡セルのセル径を前記表層部へ向かって小さく形成するとともに、該発泡セルの単位面積当たりの個数を多くし且つ該発泡セル同士の間隔を小さく形成する」ものではない。

イ.本件特許発明2?3について
本件特許発明2?3は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加して限定したものであるから、本件特許発明2?3は、上記ア.と同様の理由により、当業者が甲1発明、甲2?甲7記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

以上のとおり、本件特許発明1?3は、甲1発明、甲2?甲7記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

第6.むすび

したがって、特許異議の申し立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1?3は取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1?3を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-09-28 
出願番号 特願2013-97773(P2013-97773)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 千葉 輝久
山澤 宏
登録日 2016-12-16 
登録番号 特許第6056105号(P6056105)
権利者 矢崎エナジーシステム株式会社
発明の名称 発泡シースケーブル  
代理人 北村 吉章  
代理人 永田 元昭  
代理人 西村 弘  
代理人 永田 良昭  
代理人 大田 英司  
代理人 小林 保  
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