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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
管理番号 1333270
異議申立番号 異議2017-700595  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-13 
確定日 2017-10-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第6047677号発明「セメント硬化体除去方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6047677号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許第6047677号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成28年3月8日(優先権主張平成27年4月10日)の出願であって、同年11月25日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人中川賢治により特許異議の申立てがされたものである。

II.本件特許発明
特許第6047677号の請求項1ないし5の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものである(以下、請求項1ないし5の特許に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。)。
「【請求項1】
セメント硬化体が付着した付着建材から前記セメント硬化体を除去するセメント硬化体除去方法であって、
前記付着建材から前記セメント硬化体を除去するセメント硬化体除去環境の下に、前記付着建材を配置する除去工程であって、前記セメント硬化体除去環境は、前記付着建材に付着した前記セメント硬化体の少なくとも一部を浸漬可能な酸溶液を備える酸環境を含む除去工程と、
前記除去工程の後に、前記付着建材の表面を洗浄し、当該付着建材の表面に付着した前記酸溶液の残留塩を除去する洗浄工程と、を含む、
セメント硬化体除去方法。
【請求項2】
前記洗浄工程は、前記残留塩が付着した付着建材の表面を水に浸漬する水浸漬工程を含む、
請求項1に記載のセメント硬化体除去方法。
【請求項3】
前記酸環境において、下記式(1)を満たすように、前記付着建材を前記酸溶液に浸漬する、
請求項1又は2に記載のセメント硬化体除去方法。
Σ[i=1 to n](M_(i )L_(i )/X)[mol/g]≧5.0×10^(-3)[mol/g]・・・(1)
(ここで、
i:酸溶液を交換又は添加する回数、
n:酸溶液を交換又は添加する総回数、
M_(i ):i回目の交換又は添加における酸溶液の水素モル濃度[mol/L]、
L_(i ):i回目の交換又は添加における酸溶液の容量[L]、
X:付着建材に付着したセメント硬化体の重量[g])
【請求項4】
前記i回目の交換又は添加における酸溶液の水素モル濃度Miが、下記式(2)を満たす、
請求項3に記載のセメント硬化体除去方法。
M_(i) [mol/L]≦100/M_(w) [mol/L]・・・(2)
(ここで、
M_(w) :酸物質の分子量)
【請求項5】
前記除去工程の後に、前記付着建材の表面に付着した前記酸溶液の残留塩を検出する検出工程を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載のセメント硬化体除去方法。」

III.特許異議申立理由
特許異議申立人は、以下で示す甲第1号証ないし甲第4号証を証拠方法として提出すると共に、以下で示す(A)ないし(F)を特許異議申立理由として主張する、ものと認める。
ア 証拠方法
甲第1号証:青淵文庫保存修理工事報告書、発行:渋沢青淵記念財団竜門
社、著作編集:清水建設株式会社、発行日:2003年3月
31日、巻頭言、P.114-115
甲第2号証:特開2005-282309号公報
甲第3号証:本件(特願2016-44460号)の平成28年9月12
日付け意見書
甲第4号証:本件(特願2016-44460号)の平成28年5月20
日付け拒絶理由通知書

イ 理由の概要
(A)本件請求項1?5の記載は、「除去工程」において、セメント硬化体が実際に除去されるかどうかを明らかにするものではなく、「洗浄工程」において、セメント硬化体が除去される場合があるか否かを明らかにするものではない点で、特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(A)」という。)

(B)本件請求項1?5の記載は、除去されるものが「セメント硬化体」全般であることを示すものであるところ、発明の詳細な説明には、Ca(OH)_(2)、CaCO_(3)を有するものしか記載されていないので、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(B)」という。)

(C)本件請求項3?5の記載は、式(1)を満たす酸溶液浸漬により除去されるものが「セメント硬化体」全般であることを示すものであるところ、発明の詳細な説明には、モルタルブロックの実施例しか記載されていないので、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(C)」という。)

(D)本件特許発明1及び2は、甲第1号証に記載されたものであるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものである。(以下、「申立理由(D)」という。)

(E)本件特許発明3?5は、甲第1号証記載の発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(E)」という。)

(F)本件特許発明1?5は、甲第2、1号証記載の発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定を満たすものではない。(以下、「申立理由(F)」という。)

IV.刊行物の記載
ア 甲第1号証
ア-1




ア-2




イ 甲第2号証
イ-1 「【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁等に適用されたタイル壁面において、剥がれ落ちたり、ひび等が入って損傷したりしたタイルを補修するためのタイル張り外壁の補修方法に関するものである。」

イ-2 「【実施例1】
【0013】
本発明のタイル張り外壁の補修方法は、建物外壁のタイルが一部剥がれ落ちたり、破損したとき、建物の外側から直接見えない部分のタイルを剥がして、建物の外部から直接見える、タイルが剥がれ落ちた部分に張り付けたり、破損したタイルと張り替えるようにした。その際、建物の外側から直接見えない部分のタイルを剥がすのは、次のようにして行う。
すなわち、図1に示すように、建物の屋上周壁の内側下部等、外側から直接見えない壁の一部タイルを、ダイアモンド刃がついた電動カッターを使って切除したり、たがね等を使って必要枚数のタイルを引き剥がす等して、タイル目地2を中心にして、タイル1の短辺幅より十分径大で、タイルの厚さより深い開口3を設ける。そして、ダイアモンド刃がついた電動カッターを使ってタイル目地2を埋めているモルタル等の接着材を除去して溝4を形成する。その際、溝4は、始端部を開口3から連続して設ける。なお、開口3の形成と溝4の形成は、どちらを先に形成してもよい。
【0014】
・・省略・・
【0015】
・・省略・・
【0016】
そして、上記のようにして剥がしたタイルは、建物の外部から直接見える部分のタイル張り外壁の、タイルが剥がれ落ちた部分や破損した部分の補修を行うために用いられる。なお、剥がしたタイルには、電動カッター8によって取りきれなかったモルタルが付着しており、タイルを再利用するには、そのモルタルを取り除く必要があるが、その際、モルタルが付着しているタイルの下面を、硫酸,塩酸等の酸に漬けてモルタルを劣化させてから除去すれば容易に取り除くことができる。その場合、タイルは磁器製であるため、酸の影響はあまり受けない。」

ウ 甲第3、4号証
甲第3号証(意見書)は、甲第4号証(平成28年5月20日付け拒絶理由通知書)に対して提出されたものであり、申立人は、「甲第3号証での特許権者の意見は、甲第1号証との関係においては、(本件特許発明の)進歩性を肯定する事情とはならない」および「除去後に除去対象物が存在しているか否かを検出することも周知慣用の技術であるとの甲第4号証における認定について、特許権者は、甲第3号証において争っていない」旨の主張をしている。

V.甲号証に記載の発明
V-1 甲第1号証に記載の発明
上記「IV.」の「ア-1」および「ア-2」より、甲第1号証には、「タイルの裏足モルタル面を左官舟に入れ希塩酸(5倍液)に4?5日浸す工程と、裏足モルタルを斫り取る工程と、タイル裏面の希塩酸分を中和させるために中和剤(50倍液)に4?5日浸す工程と、中和剤を除き、常温水に2日程度浸す工程と、を含む、再用タイルの取外しを行う方法。」(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されているということができる。

V-2 甲第2号証に記載の発明
上記「IV.」の「イ-1」および「イ-2」より、甲第2号証には、「モルタルが付着しているタイルの下面を、硫酸,塩酸等の酸に漬けてモルタルを劣化させてから除去する工程を、含む、タイルを再利用する方法。」(以下、「甲第2号証記載の発明」という。)が記載されているということができる。

VI.当審の判断
VI-1 申立理由(A)について
本件特許明細書には、「【0036】
(セメント硬化体除去方法-除去工程)
次に、付着建材4からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去環境の下に、付着建材4を配置する除去工程を実施する。図2は、本実施の形態1に係るセメント硬化体除去方法の除去工程中の付着建材4を示す図である。なお、「セメント硬化体除去環境」とは、付着建材4からセメント硬化体を除去可能な環境であって、本実施の形態1においては、付着建材4に付着したモルタル3の少なくとも一部を浸漬可能な酸溶液6を備える酸環境である。
【0037】
このように付着建材4を酸溶液6に浸漬する具体的な方法は任意であるが、本実施の形態1においては、図2に示すように、容器5の内部に酸溶液6を充填し、この酸溶液6に複数の付着建材4を浸漬する。なお、付着建材4の数は任意であるが、図2においては、1つの容器5に対して3つの付着建材4を入れたものを図示している。
【0038】
以下では、酸溶液6に浸漬することで付着建材4からモルタル3を除去できる原理について説明する。すなわち、モルタル3にはCa(OH)_(2)もしくはCaCO_(3)が含まれており、付着建材4は通常耐酸性の高い物質であるため、モルタル3と付着建材4を同時に酸溶液6に浸漬すると、Ca(OH)_(2)は中和反応により、CaCO_(3)は弱酸の遊離反応によりCa成分が酸溶液6中に溶解しモルタル3のみが溶解する。このようにモルタル3が溶解することで、付着建材4のみを取り出すことが出来る。なお、必ずしもモルタル3の全部を溶解させる必要はなく、モルタル3の一部のみを溶解させることでも足りる。すなわち、一部のみを溶解させることで、モルタル3の体積を減少させることができると共に、モルタル3と付着建材4との接触面を脆弱化させることができ、残ったモルタル3を手作業(ハンマー等による打撃)で剥離し易くすることができる。」等の記載があり、これからして、本件請求項1ないし5に記載の「除去工程」において、セメント硬化体が実際に除去されていることは明らかである。
また、本件特許明細書には、「【0041】
(セメント硬化体除去方法-洗浄工程)
洗浄工程は、除去工程の後に、付着建材4の表面を洗浄し、当該付着建材4の表面(特に、裏側面)に付着した酸溶液6の残留塩を除去する工程である。すなわち、付着建材4の表面には、酸溶液6とモルタル3との反応による残留塩(例えば、酸溶液6に塩酸を用いた場合には、塩化カルシウム)が付着しており、この残留塩が付着したまま付着建材4を壁面に再利用すると、接着不良等により壁面から浮いてしまう可能性があり好ましくない。そのため、当該残留塩を付着建材4の表面から除去するために、当該洗浄工程を行う。ここで、洗浄の具体的な方法は任意で、例えば付着建材4を流水にさらしながらブラシ等で擦ることにより洗浄を行っても良いが、より好ましくは付着建材4を水に浸漬しても良い。この点の詳細については後述の実施例の実験D-4において説明する。」等の記載があり、これらからして、「除去工程」の後に、除去されずに残留塩となったセメント硬化体があれば、これを「洗浄工程」において洗浄除去することが示されているので、本件請求項1ないし5に記載の「洗浄工程」において、セメント硬化体が除去される場合があることは明らかである。
したがって、申立て理由(A)に理由はない。、

VI-2 申立理由(B)について
本件特許明細書には、「【0038】 ・・上記「VI-1」で摘示したので省略・・ 」、「まず、モルタル3中のセメント分には、Ca(OH)_(2)やCaCO_(3)が含まれており」(【0097】)等の記載があり、これらからして、酸溶液浸漬により除去される「セメント硬化体」(モルタル)として、Ca(OH)_(2)、CaCO_(3)を有するセメント硬化体が示されている。
ここで、一般に、単にセメント硬化体というとき、「通常市販されている普通、早強、中庸熱、及び超早強等の各種ポルトランドセメントや、これら各種ポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグなどを混合した各種混合セメントなど」(セメント原料)が硬化したもの(以下、「通常のセメント硬化体」という。)をいうことは、本件特許に係る出願前の技術常識(例えば、特開2003-81668号公報の【0016】参照)であり、また、通常のセメント硬化体がCaCO_(3)、Ca(OH)_(2)を有するものであることも、先行技術文献を示すまでもなく、本件特許に係る出願前の技術常識であることからして、本件特許明細書における上記『酸溶液浸漬により除去される「Ca(OH)_(2)、CaCO_(3)を有するセメント硬化体」(モルタル)』は、特殊なセメント硬化体を含むとの明示がなされていない以上、通常のセメント硬化体であると見るのが妥当である。
そうすると、発明の詳細な説明には、上記技術常識を有する当業者であれば、酸溶液浸漬により除去される「セメント硬化体」は、「セメント硬化体」(全般)ではなく、通常のセメント硬化体であること、つまり、通常のセメント硬化体が酸溶液浸漬により除去されることを十分に把握(理解)できるレベルの記載があるというべきである。
したがって、申立理由(B)に理由はない。

VI-3 申立理由(C)について
上記「VI-2」で示したように、発明の詳細な説明には、上記技術常識を有する当業者であれば、酸溶液浸漬により除去される「セメント硬化体」は、「セメント硬化体」(全般)ではなく、通常のセメント硬化体であること、つまり、通常のセメント硬化体が酸溶液浸漬により除去されることを十分に把握(理解)できるレベルの記載があるというべきである。
また、通常のセメント硬化体におけるCaCO_(3)、Ca(OH)_(2)の組成配分は、大きく異ならないとみるのが妥当であることからして、式(1)を満たす酸溶液を用いた浸漬処理は、通常のセメント硬化体に対して有効であるというべきである。
そうすると、発明の詳細な説明には、上記技術常識を有する当業者であれば、式(1)を満たす酸溶液浸漬により除去される「セメント硬化体」は、「セメント硬化体」(全般)ではなく、通常のセメント硬化体であること、つまり、通常のセメント硬化体が、式(1)を満たす酸溶液浸漬により除去されることを十分に把握(理解)できるレベルの記載があるというべきである。
したがって、申立理由(C)に理由はない。

VI-4 申立理由(D)について
VI-4-1 本件特許発明1について
上記「V-1」で示したように、甲第1号証記載の発明は、「タイルの裏足モルタル面を左官舟に入れ希塩酸(5倍液)に4?5日浸す工程と、裏足モルタルを斫り取る工程と、タイル裏面の希塩酸分を中和させるために中和剤(50倍液)に4?5日浸す工程と、中和剤を除き、常温水に2日程度浸す工程と、を含む、再用タイルの取外しを行う方法。」(再掲)である。

甲第1号証記載の発明と、本件特許発明1とを対比する。
○甲第1号証記載の発明の「タイル」、「裏足モルタル」、「希塩酸(5倍液)」は、本件特許発明1の「付着建材」、「セメント硬化体」、「酸溶液」それぞれに相当する。

○甲第1号証記載の発明の「タイルの裏足モルタル面を左官舟に入れ希塩酸(5倍液)に4?5日浸す工程と、裏足モルタルを斫り取る工程」は、本件特許発明1の「付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去環境の下に、付着建材を配置する除去工程であって、セメント硬化体除去環境は、付着建材に付着したセメント硬化体の少なくとも一部を浸漬可能な酸溶液を備える酸環境を含む除去工程」に相当する。

○甲第1号証記載の発明の「再用タイルの取外しを行う方法」は、本件特許発明1の「セメント硬化体が付着した付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去方法」を包含するものであるので、両者は、「セメント硬化体が付着した付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去方法」という点で一致する。

上記からして、本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とは、「セメント硬化体が付着した付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去方法であって、付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去環境の下に、付着建材を配置する除去工程であって、セメント硬化体除去環境は、付着建材に付着したセメント硬化体の少なくとも一部を浸漬可能な酸溶液を備える酸環境を含む除去工程と、を含む、セメント硬化体除去方法」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
本件特許発明1は、「除去工程の後に、付着建材の表面を洗浄し、当該付着建材の表面に付着した酸溶液の残留塩を除去する洗浄工程」を含むのに対して、甲第1号証記載の発明は、裏足モルタルを斫り取る工程の後に、「タイル裏面の希塩酸分を中和させるために中和剤(50倍液)に4?5日浸す工程と、中和剤を除き、常温水に2日程度浸す工程」を含む点。

<相違点>について検討する。
甲第1号証記載の発明において、酸(希塩酸)と裏足モルタル(セメント硬化体)との反応により生じた塩(残留塩)は、常温水へのタイル(付着建材)の浸漬の前に、タイルから斫り取られるものであり、常温水へのタイルの浸漬は、残留した酸を、中和剤との反応により生じた塩(中和塩)として洗浄除去するものである、といえることからして、そもそも、常温水へのタイル(付着建材)の浸漬により、酸(希塩酸)と裏足モルタル(セメント硬化体)との反応により生じた塩(残留塩)を洗浄除去するものではない。つまり、甲第1号証記載の発明は、相違点に係る「付着建材の表面を洗浄し、当該付着建材の表面に付着した酸溶液の残留塩を除去する洗浄工程」を含むものではない。
よって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載されたものである、とはいえない。

VI-4-2 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲第1号証記載の発明とを対比すると、上記「VI-4-1」で示した相違点を相違点にするものである。
そうすると、上記「VI-4-1」で示した理由と同じ理由により、本件特許発明2も、本件特許発明1と同じく、甲第1号証に記載されたものである、とはいえない。

VI-4-3 小活
上記「VI-4-1」および「VI-4-2」より、異議申立理由(D)に理由はない。

VI-5 申立理由(E)について
VI-5-1 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲第1号証記載の発明とを対比すると、上記「VI-4-1」で示した相違点を相違点にするものである。
<相違点>について検討する。
上記「VI-4-1」で示したように、甲第1号証記載の発明は、酸(希塩酸)と裏足モルタル(セメント硬化体)との反応により生じた塩を、常温水へのタイル(付着建材)の浸漬の前に、タイルから斫り取るものであることからして、「タイル裏面の希塩酸分を中和させるために中和剤(50倍液)に4?5日浸す工程と、中和剤を除き、常温水に2日程度浸す工程」を廃して、酸(希塩酸)と裏足モルタル(セメント硬化体)との反応により生じた塩(残留塩)を洗浄除去しようとする動機付けを有するものではない。
したがって、甲第1号証記載の発明の「タイル裏面の酸(希塩酸分)を中和させるために中和剤(50倍液)に4?5日浸す工程と、中和剤を除き、常温水に2日程度浸す工程」(洗浄工程)から、相違点に係る「付着建材の表面を洗浄し、当該付着建材の表面に付着した酸溶液の残留塩を除去する洗浄工程」を導き出すことは、実際上、でき得ることではない。
よって、本件特許発明3は、甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、とはいえない。

VI-5-2 本件特許発明4、5について
本件特許発明4、5と甲第1号証記載の発明とを対比すると、上記「VI-4-1」で示した相違点を相違点にするものである。
そうすると、上記「VI-5-1」で示した理由と同じ理由により、本件特許発明4、5も、本件特許発明3と同じく、甲第1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、とはいえない。

VI-5-3 小活
上記「VI-5-1」および「VI-5-2」より、異議申立理由(E)に理由はない。

VI-6 申立理由(F)について
VI-6-1 本件特許発明1について
上記「V-2」で示したように、甲第2号証記載の発明は、「モルタルが付着しているタイルの下面を、硫酸,塩酸等の酸に漬けてモルタルを劣化させてから除去する工程を、含む、タイルを再利用する方法。」(再掲)である。

甲第2号証記載の発明と、本件特許発明1とを対比する。
○甲第2号証記載の発明の「タイル」、「モルタル」、「硫酸,塩酸等の酸」は、本件特許発明1の「付着建材」、「セメント硬化体」、「酸溶液」それぞれに相当する。

○甲第2号証記載の発明の「モルタルが付着しているタイルの下面を、硫酸,塩酸等の酸に漬けてモルタルを劣化させてから除去する工程」は、本件特許発明1の「付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去環境の下に、付着建材を配置する除去工程であって、セメント硬化体除去環境は、付着建材に付着したセメント硬化体の少なくとも一部を浸漬可能な酸溶液を備える酸環境を含む除去工程」に相当する。

○甲第2号証記載の発明の「タイルを再利用する方法」は、本件特許発明1の「セメント硬化体が付着した付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去方法」を包含するものであるので、両者は、「セメント硬化体が付着した付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去方法」という点で一致する。

上記からして、本件特許発明1と甲第2号証記載の発明とは、「セメント硬化体が付着した付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去方法であって、付着建材からセメント硬化体を除去するセメント硬化体除去環境の下に、付着建材を配置する除去工程であって、セメント硬化体除去環境は、付着建材に付着したセメント硬化体の少なくとも一部を浸漬可能な酸溶液を備える酸環境を含む除去工程と、を含む、セメント硬化体除去方法」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点’>
本件特許発明1は、「除去工程の後に、付着建材の表面を洗浄し、当該付着建材の表面に付着した酸溶液の残留塩を除去する洗浄工程」を発明特定事項にするものであるのに対して、甲第2号証記載の発明は、洗浄工程について特定するものではない点。

<相違点’>について検討する。
甲第1号証記載の発明は、上記「V-1」で示したように、「タイルの裏足モルタル面を左官舟に入れ希塩酸(5倍液)に4?5日浸す工程と、裏足モルタルを斫り取る工程と、タイル裏面の希塩酸分を中和させるために中和剤(50倍液)に4?5日浸す工程と、中和剤を除き、常温水に2日程度浸す工程と、を含む、再用タイルの取外しを行う方法。」であり、これの「タイルの裏足モルタル面を左官舟に入れ希塩酸(5倍液)に4?5日浸す工程と、裏足モルタルを斫り取る工程」は、甲第2号証記載の発明の「モルタルが付着しているタイルの下面を、硫酸,塩酸等の酸に漬けてモルタルを劣化させてから除去する工程」に相当し、甲第1、2号証記載の発明は、この点において軌を一にしているので、甲第2、1号証記載の発明を組み合わせることにより、甲第2号証記載の発明の「除去工程」の後に、甲第1号証記載の発明の「タイル裏面の酸(希塩酸分)を中和させるために中和剤(50倍液)に4?5日浸す工程と、中和剤を除き、常温水に2日程度浸す工程」(洗浄工程)を付加することは、当業者であれば、一応、想起でき得ることである。
しかしながら、上記「VI-5-1」で示したように、甲第1号証記載の発明の「タイル裏面の酸(希塩酸分)を中和させるために中和剤(50倍液)に4?5日浸す工程と、中和剤を除き、常温水に2日程度浸す工程」(洗浄工程)から、「付着建材の表面を洗浄し、当該付着建材の表面に付着した酸溶液の残留塩を除去する洗浄工程」を導き出すことはできない。
したがって、本件特許発明1は、甲第2、1号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、とはいえない。

VI-6-2 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5と甲第2号証記載の発明とを対比すると、上記「VI-6-1」で示した相違点’を相違点にするものである。
そうすると、上記「VI-6-1」で示した理由と同じ理由により、本件特許発明2ないし5も、本件特許発明1と同じく、甲第2、1号証記載の発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものである、とはいえない。

VI-6-3 小活
上記「VI-6-1」および「VI-6-2」より、異議申立理由(F)に理由はない。

VI-7 まとめ
上記「VI-1」ないし「VI-6」からして、異議申立理由(A)ないし(F)に理由はない。
また、甲第3号証(意見書)および甲第4号証(拒絶理由通知書)に基づく申立人の主張を勘案したとしても、上記「理由はない」との判断を変更することはならない。

VII.むすび
したがって、特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-10-10 
出願番号 特願2016-44460(P2016-44460)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C04B)
P 1 651・ 121- Y (C04B)
P 1 651・ 113- Y (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮崎 大輔浅野 昭有田 恭子  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 山崎 直也
豊永 茂弘
登録日 2016-11-25 
登録番号 特許第6047677号(P6047677)
権利者 株式会社竹中工務店
発明の名称 セメント硬化体除去方法  
代理人 斉藤 達也  
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