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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02H
管理番号 1333601
審判番号 不服2017-3257  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-06 
確定日 2017-10-31 
事件の表示 特願2013- 28061「直流給電システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月28日出願公開、特開2014-158364、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年2月15日の出願であって、平成28年7月26日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年8月2日)、これに対し、平成28年9月29日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年11月30日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成28年12月6日)、これに対し、平成29年3月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に手続補正書が提出されたものである。


2.平成29年3月6日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
(1)補正の内容
本件補正後の請求項1に係る発明は、平成29年3月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、本件補正後の請求項1に記載の発明を「本願補正発明」という。)。
「【請求項1】
負荷に対して正負の直流電圧を各母線により供給すると共に前記負荷側には前記各母線とグランドとの間に雑音を除去するための第1のコンデンサが設けられている直流給電システムにおいて、
前記正負の直流電圧の出力側の間に2つの第2のコンデンサが直列に接続され、前記2つの第2のコンデンサの接続点が抵抗を介在して前記グランドに接続されている第1の直列回路と、
前記正負の直流電圧の出力側の間に2つの抵抗が直列に接続され、前記2つの抵抗の接続点がグランドに接続されている第2の直列回路と、
を備え、
前記第2の直列回路が並列に接続されている第1の直列回路では、前記第2のコンデンサの接続点がゼロ電圧であり、
前記母線に漏電が発生したときに、前記各第1のコンデンサの充放電で発生するアンバランスであって、前記第1の直列回路の各第2のコンデンサと前記第2の直列回路の各抵抗とで形成されるブリッジ回路のアンバランスにより発生する、前記第2のコンデンサの接続点の電圧変化に基づき漏電を検出する、
ことを特徴とする直流給電システム。」

(2)補正の適否
本件補正は、本願補正発明を特定するために必要な事項である「直流給電システム」について「各母線により」、「と共に前記負荷側には前記各母線とグランドとの間に雑音を除去するための第1のコンデンサが設けられている」との限定を付加し、本願補正発明を特定するために必要な事項である正負の直流電圧の出力側の間の2つのコンデンサについて「第2の」、「前記第2の直列回路が並列に接続されている第1の直列回路では、前記第2のコンデンサの接続点がゼロ電圧であり」との限定を付加し、本願補正発明を特定するために必要な事項である「漏電を検出する」ことについて「前記母線に漏電が発生したときに、前記各第1のコンデンサの充放電で発生するアンバランスであって」、「前記第2のコンデンサの接続点の電圧変化」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項に記載された発明と本件補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
特許法第17条の2第3項、第4項の規定に違反するところもない。
本件補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当するから、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。


(ア)原査定の理由の概要
平成28年7月26日付の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」として、引用例1(特開2011-223801号公報)、周知技術を示す文献として引用例2(特開昭62-213514号公報)、引用例3(実願昭46-027281号(実開昭47-024523号)のマイクロフィルム)を挙げて、引用例1に記載された発明に基づいて請求項1に記載された発明が容易に発明をすることができたものとしている。


(イ)引用例
原査定の拒絶の理由で引用した引用例1には、図面と共に以下の事項が記載されている。
a「直流回路における地絡箇所を探索するために用いられる直流地絡箇所探索方法であって、
直流電源に接続された母線に、地絡発生時に、前記母線から分岐された回線へ地絡電流を供給する地絡電流供給装置が接続され、かつ、少なくとも1つの前記回線に、変流器を介して、地絡電流を検出するために用いられる少なくとも1つの地絡電流検出装置が接続され、
前記地絡電流供給装置は、前記母線を構成する正極側母線及び負極側母線に接続され、直列接続された第1の電流供給コンデンサ及び第2の電流供給コンデンサと、前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの接続点と接地とに接続された接点と、地絡発生時に、前記接点を開閉動作させ、前記回線に供給される地絡電流を断続させる接点開閉手段とを有し、
前記地絡電流検出装置は、前記変流器を介して電流測定情報を取得する測定情報取得手段を有し、
前記地絡電流検出装置において得られた前記電流測定情報に基づいて、地絡箇所が探索される
ことを特徴とする直流地絡箇所探索方法。」(【請求項1】)

b「前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの電圧バランスを取るための前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサにそれぞれ並列接続された第1の電圧バランス抵抗及び第2の電圧バランス抵抗を備えたことを特徴とする請求項3又は4に記載の地絡電流供給装置。」(【請求項5】)

c「図1に示すように、この実施の形態の直流地絡監視システム1は、変電所等の電気所に配置され、直流回路における地絡箇所を探索するために用いられ、蓄電池Aを含む直流電源装置2の母線Bp,Bnに接続された地絡電流供給装置3と、母線Bp,Bnから分岐され、それぞれ所定の負荷(負荷群)に接続される分岐回線Dp1,Dn1、Dp2,Dn2、…に、それぞれ、地絡電流を検出するための変流器4a,4b,…を介して接続された地絡検出装置5a,5b,…とを備えて構成されている。図1において、Bpは正極側の母線、Bnは負極側の母線、Dp1(Dp2,Dp3,…)は正極側の分岐回線、Dn1(Dn2,Dn3,…)は負極側の分岐回線、Cpは直流回路正極側静電容量、Cnは直流回路負極側静電容量、Rpは直流回路正極側絶縁抵抗、Rnは直流回路負極側絶縁抵抗を示す。また、直流電源装置2は、地絡検出継電器(64D)を含んでいる。また、地絡電流供給装置3は、直流回路の電源端としての直流電源装置2内や、直流盤内等に配置されても良い。
地絡電流供給装置3は、制御装置8と、中性点接地継電器(G-Ry)9と、地絡電流給用の容量が略等しい正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnと、正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnの電圧バランスを取るための正極側電圧バランス抵抗Rsp及び負極側電圧バランス抵抗Rsn(審決注:「Ran」は誤記)とを含んでいる。なお、正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnの容量は、負荷機器へ影響が与えられないように、直流回路全体の静電容量を含めて、略400μF以下となるように設定される。
また、正極側電流供給コンデンサCspと、負極側電流供給コンデンサCsnとは直列に接続され、正極側電流供給コンデンサCspは母線Bpに、負極側電流供給コンデンサCsnは母線Bnにそれぞれ接続されている。また、正極側電圧バランス抵抗Rspは、正極側電流供給コンデンサCspに並列接続され、負極側電圧バランス抵抗Rsnは、負極側電流供給コンデンサCsnに並列接続されている。また、正極側電流供給コンデンサCspと、負極側電流供給コンデンサCsnとの接続点(コンデンサ中性点)は、中性点接地継電器9の接点11を介して接地されている(大地に接続されている。)。
制御装置8は、図2に示すように、構成各部を制御するMPU(マイクロプロセッサ)13と、RAMやROM等を含む記憶部14と、リアルタイムクロック(RTC)を含む計時部15と、表示部16と、入出力部17とを有している。制御装置8においては、中性点接地継電器制御処理や、地絡発生時刻記憶処理、地絡発生時刻表示処理等が実行される。
制御装置8は、中性点接地継電器制御処理で、地絡事故継続時に、中性点接地継電器9を制御して、接点11を所定の周期で断続動作させ、直流回路に流れる地絡電流を断続させて、地絡が発生した分岐回線Dp1,Dn1(Dp2,Dn2、Dp3,Dn3、…)に供給し、分岐回線Dp1,Dn1(Dp2,Dn2、Dp3,Dn3、…)に接続された対応する地絡検出装置5a(5b,5c,…)における地絡検出を容易化する(図7参照。)。
制御装置8においては、使用状態とされると、中性点接地継電器9が動作し、コンデンサ中性点が接地される。この状態で、直流回路に地絡が発生すると、地絡相のコンデンサが放電開始するとともに、非地絡相のコンデンサは電圧が上昇して充電開始する。この充電電流及び放電電流は、地絡点に流れ、時間経過とともに充放電電流は低下していく。中性点接地継電器9は、地絡が継続している場合に、断続動作(正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnの電圧バランスを取る時間の断続動作)を行うことで、連続して地絡電流を供給し、地絡検出装置5a(5b,5c,…)における地絡検出を容易化し、地絡箇所の特定を可能とする。なお、地絡が復帰した場合は、中性点接地継電器9は動作状態を保持する。」(【0026】-【0031】)

d「次に、直流地絡監視システム1を用いた直流地絡箇所探索方法について説明する。例として、図4に示すように、分岐回線Dp1,Dn1、Dp2,Dn2、…のうち、所定の負荷に接続される負極側の分岐回線Dn1に地絡が発生した場合について述べる。
この場合、直流回路負極側静電容量Cnと、地絡電流供給装置3の負極側電流供給コンデンサCsnとが地絡点を介して閉回路が構成され、図4に示すように、放電電流In0,In1,In2が流れる。また、正極側については、地絡点を介して直流回路正極側静電容量Cpに蓄電池Aの負極が接続され、正極側電流供給コンデンサCspに印加される電圧が上昇して充電電流Ip0,Ip1,Ip2が流れる。なお、図4において、In1,In2は、In0から分岐して、それぞれ、接点11、直流回路負極側静電容量Cnを介して流れる電流を示し、Ip1,Ip2は、Ip0から分岐して、それぞれ、接点11、直流回路正極側静電容量Cpを介して流れる電流を示す。」(【0039】-【0040】)

上記記載及び図面を参照すれば、負荷側には各母線とグランドとの間にコンデンサCp、Cnが設けられている。
上記記載及び図面を参照すれば、正極側電流供給コンデンサCspと負極側電流供給コンデンサCsnは第1の直列回路を構成している。
上記記載及び図面を参照すれば、正極の母線に接続された正極側電圧バランス抵抗Rspと負極側の母線に接続された負極側電圧バランス抵抗Rsnとは直列に接続され、正極側電圧バランス抵抗Rspと負極側電圧バランス抵抗Rsnとの接続点は中性点接地継電器の接点を介して接地される第2の直列回路を構成している。
上記記載及び図面を参照すれば、第2の直列回路が並列に第1の直列回路に接続されている。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「直流電源に接続された母線から分岐され、それぞれ所定の負荷に接続される分岐回路と、前記負荷側には前記各母線とグランドとの間にコンデンサCp、Cnが設けられている直流地絡監視システムにおいて、
正極の母線に接続された正極側電流供給コンデンサCspと負極側の母線に接続された負極側電流供給コンデンサCsnとは直列に接続され、前記正極側電流供給コンデンサCspと前記負極側電流供給コンデンサCsnとの接続点は中性点接地継電器の接点を介して接地される第1の直列回路と、
前記正極の母線に接続された正極側電圧バランス抵抗Rspと前記負極側の母線に接続された負極側電圧バランス抵抗Rsnとは直列に接続され、前記正極側電圧バランス抵抗Rspと前記負極側電圧バランス抵抗Rsnとの接続点は中性点接地継電器の接点を介して接地される第2の直列回路と、
を備え、
前記第2の直列回路が並列に接続されている第1の直列回路では、前記正極側電流供給コンデンサCspと前記負極側電流供給コンデンサCsnとの接続点が中性点接地継電器の接点を介して接地されており、
地絡事故継続時に、前記正極側電流供給コンデンサCspと前記負極側電流供給コンデンサCsnとの接続点の前記中性点接地継電器が断続動作する、
直流地絡監視システム。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


(ウ)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「コンデンサCp、Cn」、「直流地絡監視システム」、「正極側電流供給コンデンサCspと負極側電流供給コンデンサCsn」、「接地される」、「正極側電圧バランス抵抗Rspと負極側電圧バランス抵抗Rsn」は、それぞれ本願補正発明の「第1のコンデンサ」、「直流給電システム」、「2つの第2のコンデンサ」、「グランドに接続されている」、「2つの抵抗」に相当する。

引用発明の「直流電源に接続された母線から分岐され、それぞれ所定の負荷に接続される分岐回路と、前記負荷側には前記各母線とグランドとの間にコンデンサCp、Cnが設けられている」は、本願補正発明の「負荷に対して正負の直流電圧を各母線により供給すると共に前記負荷側には前記各母線とグランドとの間に雑音を除去するための第1のコンデンサが設けられている」に相当する。
引用発明の「正極の母線に接続された正極側電流供給コンデンサCspと負極側の母線に接続された負極側電流供給コンデンサCsnとは直列に接続され」は、本願補正発明の「前記正負の直流電圧の出力側の間に2つの第2のコンデンサが直列に接続され」に相当する。

引用発明の「前記正極側電流供給コンデンサCspと前記負極側電流供給コンデンサCsnとの接続点は中性点接地継電器の接点を介して接地される第1の直列回路」と、本願補正発明の「前記2つの第2のコンデンサの接続点が抵抗を介在して前記グランドに接続されている第1の直列回路」は、「前記2つの第2のコンデンサの接続点が素子を介在して前記グランドに接続されている第1の直列回路」との概念で一致する。
引用発明の「前記正極の母線に接続された正極側電圧バランス抵抗Rspと前記負極側の母線に接続された負極側電圧バランス抵抗Rsnとは直列に接続され、前記正極側電圧バランス抵抗Rspと前記負極側電圧バランス抵抗Rsnとの接続点は中性点接地継電器の接点を介して接地される第2の直列回路」と、本願補正発明の「前記正負の直流電圧の出力側の間に2つの抵抗が直列に接続され、前記2つの抵抗の接続点がグランドに接続されている第2の直列回路」は、「前記正負の直流電圧の出力側の間に2つの抵抗が直列に接続されている第2の直列回路」との概念で一致する。
引用発明の「前記第2の直列回路が並列に接続されている第1の直列回路では、前記正極側電流供給コンデンサCspと前記負極側電流供給コンデンサCsnとの接続点が中性点接地継電器の接点を介して接地されており」と、本願補正発明の「前記第2の直列回路が並列に接続されている第1の直列回路では、前記第2のコンデンサの接続点がゼロ電圧であり」は、「前記第2の直列回路が並列に接続されている第1の直列回路では、前記第2のコンデンサの接続点が所定電圧であり」との概念で一致する。

したがって、両者は、
「負荷に対して正負の直流電圧を各母線により供給すると共に前記負荷側には前記各母線とグランドとの間に雑音を除去するための第1のコンデンサが設けられている直流給電システムにおいて、
前記正負の直流電圧の出力側の間に2つの第2のコンデンサが直列に接続され、前記2つの第2のコンデンサの接続点が素子を介在して前記グランドに接続されている第1の直列回路と、
前記正負の直流電圧の出力側の間に2つの抵抗が直列に接続されている第2の直列回路と、
を備え、
前記第2の直列回路が並列に接続されている第1の直列回路では、前記第2のコンデンサの接続点が所定電圧である直流給電システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
2つの第2のコンデンサの接続点が素子を介在してグランドに接続されている第1の直列回路に関し、本願補正発明は、素子が抵抗であるのに対し、引用発明は、素子が中性点接地継電器の接点である点。
〔相違点2〕
正負の直流電圧の出力側の間に2つの抵抗が直列に接続されている第2の直列回路に関し、本願補正発明は、2つの抵抗の接続点がグランドに接続されているのに対し、引用発明は、2つの抵抗の接続点が中性点接地継電器の接点を介して接地される点。
〔相違点3〕
第2のコンデンサの接続点の所定電圧に関し、本願補正発明は、ゼロ電圧であるのに対し、引用発明は、中性点接地継電器の接点を介して接地されている点。
〔相違点4〕
本願補正発明は、母線に漏電が発生したときに、各第1のコンデンサの充放電で発生するアンバランスであって、第1の直列回路の各第2のコンデンサと第2の直列回路の各抵抗とで形成されるブリッジ回路のアンバランスにより発生する、前記第2のコンデンサの接続点の電圧変化に基づき漏電を検出するのに対し、引用発明は、地絡事故継続時に、前記正極側電流供給コンデンサCspと前記負極側電流供給コンデンサCsnとの接続点の前記中性点接地継電器が断続動作する点。


(エ)判断
相違点1について
引用発明は、中性点接地継電器の接点を設けて、当該接点を所定の周期で断続動作させ、直流回路に流れる地絡電流を断続させて、地絡が発生した分岐回線に供給し、分岐回線に接続された対応する地絡検出装置における地絡検出を容易化するものであり、中性点接地継電器の接点が本願補正発明の抵抗のように地絡検出を直接行うための素子ではなく、且つ2つの第2のコンデンサの接続点の電圧を検出するためのものでもないから、引用発明において中性点接地継電器の接点に代えて抵抗とすることは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。

相違点2について
引用発明は、中性点接地継電器の接点を設けて、当該接点を所定の周期で断続動作させ、直流回路に流れる地絡電流を断続させて、地絡が発生した分岐回線に供給し、分岐回線に接続された対応する地絡検出装置における地絡検出を容易化するものであり、中性点接地継電器の接点が、2つの抵抗の接続点がグランドに接続されている本願補正発明のように、第1及び第2の直列回路から形成されるブリッジ回路のアンバランスによって漏電を検出するためのものではないから、引用発明において2つの抵抗の接続点を中性点接地継電器の接点を介して接地することに代えて直接接地することは、当業者が容易に考えられたものとすることはできない。

相違点4について
相違点1、2は、上述のように当業者が容易に考えられたものとすることはできないから、当該構成を有する相違点4も同様に当業者が容易に考えられたものとすることはできない。

相違点3について
本願補正発明が第2のコンデンサの接続点がゼロ電圧であるのは地絡が発生していないときであり、引用発明も地絡が発生していなければ中性点接地継電器の接点を介して接地されている第2のコンデンサの接続点はゼロ電圧となるから、両者に差異はない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできないから、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。また、引用発明以外に新たな理由を発見することはできない。
したがって、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。


(3)むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。


3.本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1に係る発明は、「2.(1)」に記載された事項により特定されるとおりのものである。
本願については、「2.(2)」に記載のとおり、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-16 
出願番号 特願2013-28061(P2013-28061)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高野 誠治安井 雅史辻丸 詔  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 遠藤 尊志
堀川 一郎
発明の名称 直流給電システム  
代理人 原嶋 成時郎  

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