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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07C 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C07C 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07C 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C07C 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 C07C |
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管理番号 | 1333724 |
審判番号 | 不服2016-11380 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-28 |
確定日 | 2017-10-20 |
事件の表示 | 特願2011-249714「塩基反応性光酸発生剤およびこれを含むフォトレジスト」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 7月19日出願公開、特開2012-136507〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は、平成23年11月15日〔パリ条約による優先権主張 2010年11月15日(US)米国〕の出願であって、 平成27年7月17日付けの拒絶理由通知に対して、平成27年10月23日付けで意見書の提出とともに手続補正がなされ、 平成28年3月24日付けの拒絶査定に対して、平成28年7月28日付けで審判請求と同時に手続補正がなされ、平成28年9月15日に審判請求書を補正する手続補正書が提出されたものである。 第2 平成28年7月28日付け手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 平成28年7月28日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1.補正の内容 平成28年7月28日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1における 「式(I)の光酸発生剤化合物: (I)R^(5)M^(+)R^(6)R^(7)_(r) ^(-)O_(3)S-R^(1)_(p)-X_(y)-(R^(2)Z_(w)R^(3))_(x) 式中、各R^(1)は(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有(C_(1)-C_(10))アルキル、フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル、(C_(6)-C_(10))アリール、およびフルオロ(C_(6)-C_(10))アリールから選択され;各R^(2)は化学結合、もしくは(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基であり;各R^(3)はH、もしくは(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基であり;R^(5)、R^(6)およびR^(7)は独立して、場合によって置換された炭素環式アリール基、アリル基、および場合によって置換された(C_(1)-C_(20))アルキル基から選択され;Xは化学結合、もしくは二価の連結基であり;Zはアセトアセトキシエステル、-C(O)-O-C(O)-R^(1)-、-C(CF_(3))_(2)O-、-OCH_(3-z)(CH_(2)OC(=O)-R^(f)-)_(z)並びに、フルオロアルキルエステル、フルオロスルホナートエステルおよび-C(CF_(3))_(2)O-から選択される塩基反応性基含有(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基から選択され;各R^(f)は独立してフルオロ(C_(1)-C_(10))アルキルであり;p=0?6;w=1?3;x=1?4;y=0?5;z=1?2;r=0?1;MはSもしくはIであり;ここで、M=Iの場合にはr=0、M=Sの場合にはr=1である。」との記載を、補正後の請求項1における 「式(I)の光酸発生剤化合物: (I)R^(5)M^(+)R^(6)R^(7)_(r) ^(-)O_(3)S-R^(1)_(p)-X_(y)-(R^(2)-Z_(w)-R^(3))_(x) 式中、各R^(1)は(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有(C_(1)-C_(10))アルキレン、フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキレン、ヘテロ原子含有フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキレン、(C_(6)-C_(10))アリーレン、およびフルオロ(C_(6)-C_(10))アリーレンから選択され;各R^(2)は化学結合、もしくは(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビレン基であり;各R^(3)はH、もしくは(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基であり;R^(5)、R^(6)およびR^(7)は独立して、場合によって置換された炭素環式アリール基、アリル基、および場合によって置換された(C_(1)-C_(20))アルキル基から選択され;Xは化学結合、-C(O)O-、-C(O)S-、-S(O)-、-SO_(2)-、 およびこれらの組み合わせから選択され;-Z-は-C(O)-O-C(O)-R^(1)-、-C(CF_(3))_(2)O-、-OCH_(3-z)(CH_(2)OC(=O)-R^(f)-)_(z)、-R^(f)-O-C(=O)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-C(=O)-O-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-O-S(=O)_(2)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-S(=O)_(2)-O-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基および-OC(CF_(3))_(2)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基から選択され;各R^(f)は独立してフルオロ(C_(1)-C_(10))アルキルであり;p=0?6;w=1?3;x=1?4;y=0?5;z=1?2;r=0?1;MはSもしくはIであり;ここで、M=Iの場合にはr=0、M=Sの場合にはr=1である。」との記載に改める補正を含むものである。 2.補正の適否 (1)補正の目的要件 ア 補正前の用語を補正後の複数種類の用語にする補正 上記請求項1についての補正は、補正前の「各R^(1)は(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有(C_(1)-C_(10))アルキル、フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル、(C_(6)-C_(10))アリール、およびフルオロ(C_(6)-C_(10))アリールから選択され;」との記載部分を、補正後の「各R^(1)は(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有(C_(1)-C_(10))アルキレン、フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキレン、ヘテロ原子含有フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキレン、(C_(6)-C_(10))アリーレン、およびフルオロ(C_(6)-C_(10))アリーレンから選択され;」との記載に改める補正を含むものである。 そして、この点に関して、平成28年9月15日付けの手続補正により補正された審判請求書の「3(1)(b)(i)」の項では『式(I)中の各R^(1)が、2価の基であることを、より明確にする補正です。』との説明をしている。 しかしながら、補正前の4箇所の「アルキル」との記載について、そのうちの3箇所のみを「アルキレン」との記載に改めて、残りの1箇所を「アルキル」との記載のままにすることは、上記「2価の基であることを、より明確にする」との説明と整合せず、補正後の複数種類の用語を用いた記載は特許請求の範囲の記載として不明確である。 このため、補正前の複数箇所の「アルキル」との記載を、その一部についてのみ「アルキレン」との記載に改め、残りの一部について「アルキル」との記載のままにする補正は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当しない。 また、当該補正が、同項第1号に掲げる「第三十6条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするもの、同項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするもの、若しくは同項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするものに該当するとも認められない。 イ 補正後のXの選択肢に三価の連結基を盛り込む補正 上記請求項1についての補正は、補正前の「Xは化学結合、もしくは二価の連結基であり;」との記載部分を、補正後の「Xは化学結合、-C(O)O-、-C(O)S-、-S(O)-、-SO_(2)-、 およびこれらの組み合わせから選択され;」との記載に改める補正を含むものである。 そして、この点に関して、平成28年9月15日付けの手続補正により補正された審判請求書の「3(1)(b)(ii)」の項では『補正前の請求項1において「X」の選択肢として規定されていた「二価の連結基」を、当初明細書の段落0018等の記載に基づいて、具体的な連結基に限定する補正です。』との説明をしている。 しかしながら、補正後の「X」の選択肢に含まれる「 」の選択肢は「三価の連結基」であって「二価の連結基」に含まれるものではなく、補正前の「X」の選択肢には「三価の連結基」が含まれていないから、当該補正は補正前の請求項に記載した「第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」に該当せず、また、特許請求の範囲を「減縮」するものにも該当しない。 このため、補正前の「Xは化学結合、もしくは二価の連結基であり;」との記載を、補正後の「三価の連結基」の選択肢を含む選択肢の組み合わせに改める補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当しない。 また、当該補正が、同項第1号に掲げる「第三十6条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするもの、同項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするもの、若しくは同項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当するとも認められない。 ウ 補正前の「塩基反応性基含有」という事項を削除する補正 上記請求項1についての補正は、補正前の「Zはアセトアセトキシエステル、-C(O)-O-C(O)-R^(1)-、-C(CF_(3))_(2)O-、-OCH_(3-z)(CH_(2)OC(=O)-R^(f)-)_(z)並びに、フルオロアルキルエステル、フルオロスルホナートエステルおよび-C(CF_(3))_(2)O-から選択される塩基反応性基含有(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基から選択され;」との記載部分を、補正後の「-Z-は-C(O)-O-C(O)-R^(1)-、-C(CF_(3))_(2)O-、-OCH_(3-z)(CH_(2)OC(=O)-R^(f)-)_(z)、-R^(f)-O-C(=O)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-C(=O)-O-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-O-S(=O)_(2)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-S(=O)_(2)-O-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基および-OC(CF_(3))_(2)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基から選択され;」との記載に改める補正を含むものである。 そして、この点に関して、平成28年9月15日付けの手続補正により補正された審判請求書の「3(1)(b)(iii)」の項では『本願明細書の段落0020の記載、特に「Zは塩基反応性基を表す。・・・Zは・・・-COO-R^(f)-、-SO_(3)-R^(f)-・・・から選択されるのが好ましい。・・・好ましくは、R^(f)=フルオロ(C_(1)-C_(8))アルキルである。・・・基-COO-R^(f)-には、-C(O)-O-R^(f)-および-O-C(O)-Rf-の双方が挙げられる。同様に、基-SO_(3)-R^(f)-には、-SO_(2)-O-R^(f)-および-O-S(O_(2))-R^(f)-の双方が挙げられる。・・・」に基づけば、補正前の請求項1に記載されていた「フルオロアルキルエステル」および「フルオロスルホナートエステル」がそれぞれ「は、「-COO-R^(f)-」および「基-SO_(3)-R^(f)-」に対応し、よって「フルオロアルキルエステル、フルオロスルホナートエステルおよび-C(CF_(3))_(2)O-から選択される塩基反応性基含有(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基」が「-R^(f)-O-C(=O)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-C(=O)-O-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-O-S(=O)_(2)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-S(=O)_(2)-O-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基および-OC(CF_(3))_(2)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基」と表し得ることは明らかです。よってかかる補正は新規事項を追加する補正ではありません。』との説明をしている。 しかしながら、この補正前の請求項1に記載されていた「塩基反応性基含有」という発明特定事項を削除する「削除補正」は、補正前の請求項に記載した発明特定事項を限定せずに削除しているという点において「第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」に該当しないことが明らかである。 また、当該「削除補正」によって、補正後の「-Z-」の範囲に含まれる置換基は「塩基反応性基」という機能・特性等を奏する置換基に限定されないものに拡大されているといえるので、当該「削除補正」が「特許請求の範囲の減縮」に該当しないことが明らかである。 このため、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当しない。 また、補正後の「-Z-」は、二価の連結基であることが明らかであるところ、補正後の「-Z-は…シクロヒドロカルビル基」との記載は、補正後の「R^(2)は…ヒドロカルビレン基」との記載と整合性がないので、当該「シクロヒドロカルビル基」という事項を導入する補正は、特許を受けようとする発明を不明確にするものであって、 当該補正が、同項第1号に掲げる「第三十6条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするもの、同項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とするもの、若しくは同項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当するとも認められない。 エ 目的要件のまとめ 以上総括するに、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしておらず、目的要件を満たしていない。 (2)独立特許要件 ア 補正の目的について 上記『2.(1)』の項において検討したように、本件補正が目的要件を満たすものではないことは明らかである。しかしながら、平成28年9月15日付けの手続補正により補正された審判請求書の「3(1)(b)(vii)」の項の『本補正は単に表現形式を変更したもので実質的に発明の内容を変更しない補正であるかもしくは同条第5項第2号の限定的減縮を目的とする補正ですので、同項の規定も満たす適法な補正であると思料します。』との主張、及び「3(1)(b)(vi)」の項の『請求項4は、補正前に「X」の選択肢として記載されていた「-SO_(3)-」を削除したものです。』との主張を参酌するに、補正前の請求項1の「X」の選択肢に含まれていた「-SO_(3)-」の選択肢が、補正後の請求項1の「X」の選択肢から削除されているという点において、特許請求の範囲が減縮される部分があるといえるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものが含まれているといえる。 そこで、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について念のため検討する。 イ サポート要件 (ア)一般に『特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,特許出願人…が証明責任を負うと解するのが相当である。』とされている〔平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。 (イ)また、一般に『いわゆる化学物質の発明は,新規で,有用,すなわち産業上利用できる化学物質を提供することにその本質が存するから,その成立性が肯定されるためには,化学物質そのものが確認され,製造できるだけでは足りず,その有用性が明細書に開示されていることを必要とする。そして,化学物質の発明の成立のために必要な有用性があるというためには,用途発明で必要とされるような用途についての厳密な有用性が証明されることまでは必要としないが,一般に化学物質の発明の有用性をその化学構造だけから予測することは困難であり,試験してみなければ判明しないことは当業者の広く認識しているところである。したがって,化学物質の発明の有用性を知るには,実際に試験を行い,その試験結果から,当業者にその有用性が認識できることを必要とする。』とされている〔平成20(行ケ)10483号判決参照〕。 (ウ)ここで、本願明細書の段落0006の「比較的速い塩基促進溶解速度を有する光酸発生剤についての必要性が依然として存在する。このような光酸発生剤はフォトレジストのリソグラフィ性能を助ける、例えば、フォトレジスト組成物から形成されたレジストレリーフ像に関連する欠陥の低減を示し、および/または向上した露光許容度(…EL)および/または低減されたマスクエラーファクター(…MEF)を提供する場合がある。」との記載を含む明細書全体の記載からみて、補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)の解決しようとする課題は『比較的速い塩基促進溶解速度を有し、レジストレリーフ像に関連する欠陥の低減を示し、向上した露光許容度(EL)および低減されたマスクエラーファクター(MEF)を示し光酸発生剤化合物の提供』にあるものと認められる。 (エ)そして、本願明細書の段落0059には「実施例1」として「光酸発生剤TPS NBHFA-TFPS」の合成プロセスのスキーム1「 」が記載され、同段落0060?0062に上記化合物を合成したことが記載され、同段落0063?0070には「実施例2」として「光酸発生剤化合物である実施例1からのTPS NBHFA-TFPSがリソグラフィ的に評価」された試験結果が示されている。 (オ)補正後の請求項1の記載と本願明細書の発明の詳細な説明の記載とを対比すると、本願明細書の「実施例1」の「光酸発生剤TPS NBHFA-TFPS」は、補正後の請求項1の「式(I)の光酸発生剤化合物」において『R^(1)がフルオロ(C_(4))アルキレンから選択され;R^(2)が(C_(8))ヒドロカルビレン基( )であり;R^(3)がHであり;R^(5)、R^(6)およびR^(7)が炭素環式アリール基(無置換のフェニル基)から選択され;Xは-C(O)O-から選択され;-Z-は-C(CF_(3))_(2)O-から選択され;p=1;w=1;x=1;y=1;r=1;MはSであり;ここで、M=Sの場合にはr=1である。』という場合に相当する。 (カ)すなわち、本願明細書の発明の詳細な説明には、補正発明の「式(I)の光酸発生剤化合物」のうち、各R^(1)が(C_(1)-C_(10))アルキル、フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキレン、ヘテロ原子含有フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキレン、(C_(6)-C_(10))アリーレン、およびフルオロ(C_(6)-C_(10))アリーレンから選択され;各R^(2)が化学結合であり;各R^(3)が(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基であり;R^(5)、R^(6)およびR^(7)が、アリル基、および場合によって置換された(C_(1)-C_(20))アルキル基から選択され;Xが-C(O)S-、-S(O)-、-SO_(2)-、 およびこれらの組み合わせから選択され;-Z-が-C(O)-O-C(O)-R^(1)-、-OCH_(3-z)(CH_(2)OC(=O)-R^(f)-)_(z)、-R^(f)-O-C(=O)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-C(=O)-O-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-O-S(=O)_(2)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基、-R^(f)-S(=O)_(2)-O-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基および-OC(CF_(3))_(2)-(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基から選択され;各R^(f)は独立してフルオロ(C_(1)-C_(10))アルキルであり;p=0又は2?6;w=2?3;x=2?4;y=0又は2?5;z=1?2;r=0;MはIであり;ここで、M=Iの場合にはr=1である場合については、試験結果などの具体的な裏付けが発明の詳細な説明になされていない。そして、上記のとおり「一般に化学物質の発明の有用性をその化学構造だけから予測することは困難であり,試験してみなければ判明しないことは当業者の広く認識しているところ」であって、上記「実施例1」の具体例と異なる化学構造を有する化合物が、上記『比較的速い塩基促進溶解速度を有し、レジストレリーフ像に関連する欠陥の低減を示し、向上した露光許容度(EL)および低減されたマスクエラーファクター(MEF)を示し光酸発生剤化合物の提供』という課題を解決できると当業者が認識できるといえる本願出願時の技術常識の存在は見当たらない。 (キ)なお、平成28年9月15日付けの手続補正により補正された審判請求書の「3(3)」の項では『本願明細書の発明の詳細な説明の記載および本願出願時の技術常識に基づけば、当業者は本願発明の光酸発生剤化合物を示す式(I)「R^(5)M^(+)R^(6)R^(7)_(r) ^(-)O_(3)S-R^(1)_(p)-X_(y)-(R^(2)-Z_(w)-R^(3))_(x)」と実施例において用いられたTPS NBHFA-TFPSを見て、いずれの化合物も「-O_(3)S」部分は酸基であり、「R^(1)_(P)」部分は前記酸基の超酸性(super-acidity)を促進することができる基であり、「X_(y)」部分は、塩基反応性基「Z」を「R^(1)_(P)」基と結合させる二価の結合基であり、「R^(2)」部分は連結基(化学結合またはヒドロカルビレン基)であり、および「Z」部分は塩基性反応基(審決註:塩基反応性基の誤記と思われる。)であり(段落0020参照)、両化合物が同様構造を有していることを認識することができ、さらに当業者はTPS NBHFA-TFPSに用いた具体的な基以外の様々な基を塩基反応性基「Z」と酸基「-O_(3)S」とを結合させるために使用することができることを理解し得るので、式(I)を有する光酸発生剤化合物もTPS NBHFA-TFPSと同様に有利な効果が奏することを理解することができます。』との主張がなされている。 (ク)しかしながら、当該「R^(1)_(P)」部分が、本願実施例1の具体例と異なる「(C_(1)-C_(10))アルキル」等である場合や「p=0」等である場合のものが「酸基の超酸性を促進することができる基」として同等に機能するといえる具体的な根拠は見当たらず、 当該「X_(y)」部分が、本願実施例1の具体例と異なる「 」等である場合や「y=5」等である場合のものが『塩基反応性基「Z」を「R^(1)_(P)」基と結合させる二価の結合基』として同等に機能するといえる具体的な根拠も見当たらず、 当該「R^(2)」部分が本願実施例1の「ノルボルナン」骨格を有する構造と異なる場合や、当該「Z」部分が本願実施例1の「-C(CF_(3))_(2)O-」と異なる場合や、当該「R^(3)」部分が本願実施例1の「H」と異なる「(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基」である場合であっても、本願実施例1の具体例と同等に、上記課題における「比較的速い塩基促進溶解速度」や「レジストレリーフ像に関連する欠陥の低減」や「向上した露光許容度(EL)」や「低減されたマスクエラーファクター(MEF)」を示し得るといえる具体的な根拠も見当たらない。 (ケ)すなわち、拒絶理由通知での指摘を受けて出願人が意見書でした反論に対する原査定の備考欄での『R^(1)、p、X、y、R^(2)、Z、w、R^(3)、xの組合せに応じて多くの基が包含され、それらのすべてが同等であるとは到底認められない。また、前記出願人の主張は、「同様構造である」と推認するに足る根拠を示すものでもない。』との説示にあるとおり、補正発明のR^(1)、p、X、y、R^(2)、Z、w、R^(3)及びxに関する選択肢のすべてが同等であるといえる具体的な根拠が見当たらないので、補正発明の全てが、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。 (コ)したがって、補正後の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないので、補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものはない。 3.まとめ 以上総括するに、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしておらず、仮に目的要件を満たすとしても、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、その余のことを検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、〔補正の却下の決定〕の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成27年10月23日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 そして、本願請求項1に係る発明(以下「本1発明」という。)は、上記『第2 1.』に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2.原査定の理由 原査定の理由は『この出願については、平成27年7月17日付け拒絶理由通知書に記載した理由1-4によって、拒絶をすべきものです。』というものである。 そして、平成27年7月17日付けの拒絶理由通知書には、理由1として「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」との理由が示され、その「下記の刊行物」として「特開2006-162735号公報」が「引用文献18」として示され、その「備考」には『引用文献1-22には、光酸発生剤やフォトレジスト組成物に用いられる化合物が具体的に記載されており、これらの化合物は本願の請求項1に記載の式(I)又は(II)の化合物の範囲に包含されるものである(…引用文献18:第15頁(A-11)、(A-13)、(A-6)…)。』との指摘がなされている。 また、平成27年7月17日付けの拒絶理由通知書には、理由4として「4.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」との理由が示され、その「下記の点」として『本願の式(I)又は(II)における置換基や可変部には、…その大きさや性質の異なるものが多数含まれており、ここで、化合物の化学構造が大きく異なれば、その製造方法や化合物の性質が大きく異なることは出願時の技術常識であるところ、…本願出願時の技術常識を考慮しても、具体的に製造された上記化合物に係る記載を、請求項1、4及び6に記載の化合物全てにまで拡張ないし一般化することはできないから、請求項1、4及び6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した発明でない。そして、請求項1、4及び6に記載の化合物を利用する請求項2、3、5及び7-10に係る発明についても同様である。』との指摘がなされている。 第4 当審の判断 1.理由1について (1)引用文献18及びその記載事項 本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献18(特開2006-162735号公報)には、次の記載がある。 摘記18a:請求項1及び2 「【請求項1】(A)活性光線又は放射線の照射により下記一般式(I)で表される有機酸を発生する化合物を含有することを特徴とする感光性組成物。 【化1】 一般式(I)中、 Aは、2価の連結基を表す。 Xは、-CO_(2)-又は-SO_(3)-を表す。 Rfは、フッ素原子を有する1価の有機基を表す。 【請求項2】(A)活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される有機酸を発生する化合物が、一般式(I)で表される有機酸のスルホニウム塩化合物又は一般式(I)で表される有機酸のヨードニウム塩化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。」 摘記18b:段落0071?0072、0074及び0076 「【0071】以下、活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される有機酸を発生する化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。 【0072】【化9】 … … …【0074】【化11】… …【0076】…一般式(I)で表される化合物は、一般的なスルホン酸エステル化反応を用いることで合成できる。例えば、ビススルホニルハライド化合物の一方のスルホニルハライド部をアルコールと反応させてスルホン酸エステル結合を形成した後、もう一方のスルホニルハライド部分を加水分解する方法、あるいは環状スルホン酸無水物を一般式(I)で表される部分構造を含むアルコールにより開環させる方法により得ることができる。」 摘記18c:段落0306、0311、0318及び0329 「【0306】合成例1(化合物(A-1)の合成) 窒素気流下、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ジスルホニルジフロリド7.0g(22.1mmol)とTHF50mLの混合物を氷冷し、これに4-フルオロフェノール2.48g(22.1mmol)とトリエチルアミン2.24g(22.1mmol)、THF50mLの混合溶液を60分間かけて滴下した。滴下終了後、室温で5時間攪拌した。酢酸エチルを加え有機層を水、飽和塩化アンモニウム水溶液、水で順次洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムによって乾燥、溶媒を除去して褐色、オイル状、下記構造の一般式(I)で表される有機酸のハロゲン化物を得た。… 【0311】他の酸発生剤も同様にして合成した。… 【0318】【表1】 ArFポジ ┌───┬─────────┬─┬───────────┬─┐ │実施例│ 酸発生剤(g) │…│露光ラチチュード(%)│…│ ├───┼─────────┼─┼───────────┼─┤ │ 1 │A-1 (0.3)│…│ 15.1 │…│ │ … │ … │…│ … │…│ │ 5 │A-6 (0.4)│…│ 15.1 │…│ │ … │ … │…│ … │…│ │ 7 │A-13(0.4)│…│ 16.9 │…│ │ … │ … │…│ … │…│ │ 17 │A-46(0.4)│…│ 17.7 │…│ │ … │ … │…│ … │…│ └───┴─────────┴─┴───────────┴─┘ …【0329】表1から、本発明の感光性組成物は、露光ラチチュード、PEB温度依存性、パターンプロファイルが良好であることが明らかである。」 (2)引用文献18に記載された発明 摘記18bの「以下、活性光線又は放射線の照射により一般式(I)で表される有機酸を発生する化合物の具体例を挙げる」及び「(A-6)」の記載、並びに摘記18cの「合成例1」及び「他の酸発生剤も同様にして合成した。」との記載、「実施例5」及び「露光ラチチュード…パターンプロファイルが良好である」との記載からみて、引用文献18には、 『下記の式(A-6)の活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物。 』についての発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (3)対比・判断 本願請求項1に係る発明(以下「本1発明」という。)と引用発明とを対比する。 引用発明の「活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物」は、本1発明の「光酸発生剤化合物」に該当する。 引用発明の「式(A-6)」の化合物は、その中央にある「^(-)O_(3)S-(CF_(2))_(3)-SO_(3)-」の構造部分が、本1発明の式(I)の「^(-)O_(3)S-R^(1)_(p)-X_(y)-」において、その「R^(1)」が「-(CF_(2))_(3)-」である場合の「フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル」に該当し、その「X」が「-SO_(3)-」である場合の「二価の連結基」に該当し、p=1、y=1の場合に該当し(又は「R^(1)」が「ヘテロ原子(SO_(3))含有フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル」であって「X」が「化学結合」であり、p=1、y=1の場合に該当し)、 その右側にある「ノルボルナン」の骨格の2及び6位で連結する連結構造と「-C(CF_(3))_(2)-O-」と「H」からなる構造部分が、本1発明の式(I)の「(R^(2)Z_(w)R^(3))_(x)」において、その「R^(2)」が「ノルボルナン」の残基である「(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基」に該当し、その「Z」が「-C(CF_(3))_(2)O-」である場合に該当し、その「R^(3)」が「H」である場合に該当し、w=1、x=1の場合に該当し、 その左側にある「トリフェニルスルホニウムカチオン」の構造部分が、本1発明の式(I)の「R^(5)M^(+)R^(6)R^(7)_(r)」において、その「R^(5)、R^(6)およびR^(7)」が「フェニル基」である場合の「炭素環式アリール基」に該当し、その「M」が「S」である場合に該当し、r=1の場合に該当する。 してみると、本1発明と引用発明は、両者とも「式(I)の光酸発生剤化合物: (I)R^(5)M^(+)R^(6)R^(7)_(r) ^(-)O_(3)S-R^(1)_(p)-X_(y)-(R^(2)Z_(w)R^(3))_(x) 式中、各R^(1)は(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有(C_(1)-C_(10))アルキル、フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル、(C_(6)-C_(10))アリール、およびフルオロ(C_(6)-C_(10))アリールから選択され;各R^(2)は化学結合、もしくは(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基であり;各R^(3)はH、もしくは(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基であり;R^(5)、R^(6)およびR^(7)は独立して、場合によって置換された炭素環式アリール基、アリル基、および場合によって置換された(C_(1)-C_(20))アルキル基から選択され;Xは化学結合、もしくは二価の連結基であり;Zはアセトアセトキシエステル、-C(O)-O-C(O)-R^(1)-、-C(CF_(3))_(2)O-、-OCH_(3-z)(CH_(2)OC(=O)-R^(f)-)_(z)並びに、フルオロアルキルエステル、フルオロスルホナートエステルおよび-C(CF_(3))_(2)O-から選択される塩基反応性基含有(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基から選択され;各R^(f)は独立してフルオロ(C_(1)-C_(10))アルキルであり;p=0?6;w=1?3;x=1?4;y=0?5;z=1?2;r=0?1;MはSもしくはIであり;ここで、M=Iの場合にはr=0、M=Sの場合にはr=1である。」という点において一致し、両者に相違する点はない。 したがって、本1発明は、引用文献18に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.理由4について 本1発明の解決しようとする課題は、上記『第2 2.(2)イ.(ウ)』において示したように『比較的速い塩基促進溶解速度を有し、レジストレリーフ像に関連する欠陥の低減を示し、向上した露光許容度(EL)および低減されたマスクエラーファクター(MEF)を示し光酸発生剤化合物の提供』にあるものと認められる。 また、本1発明は、上記『第2 2.(2)』において検討した「補正発明」において、その「X」の範囲に「 」という「三価の連結基」が含まれず、かつ、その「Z」の範囲に「塩基反応性基」を含有しない場合のものが含まれないという点のみを除いて、上記「補正発明」を包含するものである。 そして、本1発明の「式(I)の光酸発生剤化合物」の「式中、各R^(1)は(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有(C_(1)-C_(10))アルキル、フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル、ヘテロ原子含有フルオロ(C_(1)-C_(10))アルキル、(C_(6)-C_(10))アリール、およびフルオロ(C_(6)-C_(10))アリールから選択され;各R^(2)は化学結合、もしくは(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基であり;各R^(3)はH、もしくは(C_(1)-C_(30))ヒドロカルビル基であり;R^(5)、R^(6)およびR^(7)は独立して、場合によって置換された炭素環式アリール基、アリル基、および場合によって置換された(C_(1)-C_(20))アルキル基から選択され;Xは化学結合、もしくは二価の連結基であり;Zはアセトアセトキシエステル、-C(O)-O-C(O)-R^(1)-、-C(CF_(3))_(2)O-、-OCH_(3-z)(CH_(2)OC(=O)-R^(f)-)_(z)並びに、フルオロアルキルエステル、フルオロスルホナートエステルおよび-C(CF_(3))_(2)O-から選択される塩基反応性基含有(C_(5)-C_(30))シクロヒドロカルビル基から選択され;各R^(f)は独立してフルオロ(C_(1)-C_(10))アルキルであり;p=0?6;w=1?3;x=1?4;y=0?5;z=1?2;r=0?1;MはSもしくはIであり;ここで、M=Iの場合にはr=0、M=Sの場合にはr=1である。」という範囲は、平成28年3月24日付けの拒絶査定の備考欄において『R^(1)、p、X、y、R^(2)、Z、w、R^(3)、xの組合せに応じて多くの基が包含され、それらのすべてが同等であるとは到底認められない。また、前記出願人の主張は、「同様構造である」と推認するに足る根拠を示すものでもない。』と説示されるとおり、多くの基が包含されている。 また、一般に「化学物質の発明の有用性をその化学構造だけから予測することは困難」であり「試験してみなければ判明しない」ことが「当業者の広く認識している」ところであるが、本願明細書の「実施例1」の具体例と異なる化学構造を有する化合物が、上記『比較的速い塩基促進溶解速度を有し、レジストレリーフ像に関連する欠陥の低減を示し、向上した露光許容度(EL)および低減されたマスクエラーファクター(MEF)を示し光酸発生剤化合物の提供』という課題を解決できると当業者が認識できるといえる具体的な根拠は見当たらない。 してみると、R^(1)、p、X、y、R^(2)、Z、w、R^(3)、xの組合せに応じて多くの基が包含される本1発明の全てが、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとは認められず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。 したがって、本願請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではなく、本願は特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。 6.むすび 以上のとおり、本1発明は特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであり、また、本願は特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-26 |
結審通知日 | 2017-05-29 |
審決日 | 2017-06-09 |
出願番号 | 特願2011-249714(P2011-249714) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C07C)
P 1 8・ 537- Z (C07C) P 1 8・ 113- Z (C07C) P 1 8・ 574- Z (C07C) P 1 8・ 572- Z (C07C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡山 太一郎、水島 英一郎 |
特許庁審判長 |
中田 とし子 |
特許庁審判官 |
木村 敏康 齊藤 真由美 |
発明の名称 | 塩基反応性光酸発生剤およびこれを含むフォトレジスト |
代理人 | 特許業務法人センダ国際特許事務所 |