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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1333756
審判番号 不服2016-17128  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-16 
確定日 2017-10-19 
事件の表示 特願2012-238258「インセルタッチパネル液晶素子の前面用の光学積層体及びインセルタッチパネル液晶表示装置、並びにそれらの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月15日出願公開、特開2014- 89269〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月29日の出願であって、平成28年5月10日付けで拒絶理由が通知され、同年7月14日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年8月9日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し同年11月16日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年11月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてするものであって、平成28年7月14日付けの手続補正書(以下、「補正前」という。)により補正された特許請求の範囲の
「 【請求項8】
位相差板及び偏光膜を含む光学積層体形成部材が積層されてなり、前記光学積層体形成部材の少なくとも一つの部材に導電層が形成されてなり、かつ前記導電層の表面からアース処理がされてなる、インセルタッチパネル液晶素子の前面用の光学積層体。」
を、以下のとおりに補正することを含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。
「 【請求項6】
位相差板及び偏光膜を含む光学積層体形成部材が積層されてなり、前記光学積層体形成部材の少なくとも一つの部材に導電層が形成されてなり、かつ前記導電層の表面からアース処理がされてなり、
前記導電層が、導電剤及びバインダー樹脂組成物を含む導電層形成組成物からなり、前記バインダー樹脂組成物が熱可塑性樹脂である、インセルタッチパネル液晶素子の前面用の光学積層体。」(以下、「本件補正発明」という。)

2 補正の目的
(1)上記補正事項は、補正前の請求項8に係る発明を特定するために必要な事項である「導電層」について、願書に最初に添付された明細書の段落【0019】及び【0024】の記載に基づいて、「導電剤及びバインダー樹脂組成物を含む導電層形成組成物からなり、前記バインダー樹脂組成物が熱可塑性樹脂である」ものに限定するものである。

(2)上記(1)からみて、本件補正後の請求項6は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。また、本件補正は、補正前の請求項8に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が本件補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3 引用刊行物記載の発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前の平成24年3月29日に頒布された刊行物である特開2012-63839号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている(なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定に活用した箇所を示す。)。

ア 「【0024】
<2.実施の形態>
[構成例]
(全体構成例)
図4は、本発明の実施の形態に係るタッチ検出機能付き表示装置の一構成例を表すものである。このタッチ検出機能付き表示装置は、表示素子として液晶表示素子を用いており、その液晶表示素子により構成される液晶表示デバイスと静電容量式のタッチ検出デバイスとを一体化した、いわゆるインセルタイプの装置である。
【0025】
このタッチ検出機能付き表示装置1は、制御部11と、ゲートドライバ12と、ソースドライバ13と、駆動電極ドライバ14と、タッチ検出機能付き表示デバイス10と、タッチ検出部40とを備えている。」

イ 「【0032】
(タッチ検出機能付き表示デバイス10)
次に、タッチ検出機能付き表示デバイス10の構成例を詳細に説明する。
【0033】
図5は、タッチ検出機能付き表示デバイス10の要部断面構造の例を表すものである。このタッチ検出機能付き表示デバイス10は、画素基板2と、この画素基板2に対向して配置された対向基板3と、画素基板2と対向基板3との間に挿設された液晶層6とを備えている。
【0034】
画素基板2は、回路基板としてのTFT基板21と、このTFT基板21上にマトリックス状に配設された複数の画素電極22とを有する。TFT基板21には、図示していないものの、各画素の薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)や、各画素電極22に画像信号Vpixを供給する画素信号線SGL、各TFTを駆動する走査信号線GCL等の配線が形成されている。
【0035】
対向基板3は、ガラス基板31と、このガラス基板31の一方の面に形成されたカラーフィルタ32と、このカラーフィルタ32の上に形成された複数の駆動電極COMLとを有する。カラーフィルタ32は、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタ層を周期的に配列して構成したもので、各表示画素にR、G、Bの3色が1組として対応付けられている。駆動電極COMLは、液晶表示デバイス20の共通駆動電極として機能するとともに、タッチ検出デバイス30の駆動電極としても機能するものである。なお、この例では駆動電極COMLを表示とタッチ検出とで共用するようにしたが、別体としてそれぞれ設けるようにしてもよい。また、例えば、駆動電極COMLの代わりに、走査信号線GCLや画素信号線SGLをタッチ検出デバイス30の駆動電極として共用するようにしてもよい。これらの場合において、走査信号線GCLや画素信号線SGLをMoやAlなどの低抵抗物質で構成した場合には、低抵抗な駆動電極を実現できる。駆動電極COMLは、図示しないコンタクト導電柱によってTFT基板21と連結され、このコンタクト導電柱を介して、TFT基板21から駆動電極COMLに交流矩形波形の駆動信号Vcomが印加されるようになっている。ガラス基板31の他方の面には、タッチ検出デバイス30の検出電極であるタッチ検出電極TDLが形成されている。タッチ検出電極TDLは、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO、SnO、有機導電膜などにより構成されるものであり、透光性のある電極である。なお、タッチ検出電極TDLは、例えば、この電極における透過率が低い色光の画素(ITOの場合には青色(B)の画素)に対応する部分に開口部を有していても良い。さらに、このタッチ検出電極TDLの上には、偏光板35が配設されている。なお、偏光板35の上には、ガラス、フィルム、プラスチックなどにより構成されるカバーウィンドウが配置されていてもよい。」
(当合議体注:図5は以下の図である。)


ウ 「【0045】
図9は、偏光板35の一構成例を表すものである。偏光板35は、偏光層54と、導電層42とを有している。偏光層54は偏光機能を有する層である。偏光層54の一方の面には、カバー層55が形成され、その上にハードコート層56が形成されている。偏光層54の、カバー層55が形成された面とは反対の面には、カバー層53が形成され、その上に導電層52が形成されている。導電層52は、透光性および導電性を有する層であり、例えばITO、IZO、SnO、有機導電膜などにより構成される。この導電層52は、後述するように、ESD対策を目的として設けられたものであり、外部から印加された静電気が液晶層に伝わり表示が乱れるのを抑えるとともに、タッチ検出感度の劣化を最小限に抑えるようになっている。導電層52上には、タッチ検出電極TDLおよびダミー電極37,38が形成されたガラス基板31と接着するための接着層51が設けられている。図9に示したように、導電層52とタッチ検出電極TDLとの間の距離d1は、タッチ検出電極TDLと駆動電極COMLとの間の距離d2に比べて小さくなるように配置されている。」
(当合議体注:図9は以下の図である。)


エ 「【0050】
次に、導電層52について説明する。導電層52は、タッチ検出機能付き表示装置1の製造時および使用時におけるESD対策を目的として設けられたものである。製造時では、一般に、例えば、偏光板を張り付ける前に偏光板からカバーフィルムを剥がす際や、パネルにカバーガラス(カバーフィルム、カバープラスチック)を透明な接着剤などで接着する際、また検査の際に人の指がタッチ検出面(ハードコート層56の表面)に接触した際などにおいて偏光板が帯電するおそれがある。また、使用時には、帯電したユーザの指がタッチ検出面に接触した場合に偏光板が帯電するおそれがある。導電層52は、この静電気を逃がすように機能する。以下に、静電層52の作用、およびそのような作用を実現するための電気特性について説明する。
【0051】
図11は、静電気が印加された場合の、その静電気の流れを模式的に表すものである。 タッチ検出機能付き表示装置1では、例えば偏光板35の表面(ハードコート層56)に印加された静電気SEは、まず、カバー層55、偏光層54、カバー層53を介して導電層52に伝わる。そしてその静電気SEは、導電層52やダミー電極37を介して、近くに配置されたタッチ検出電極TDLに伝わる。そして、タッチ検出電極TDLに伝わった静電気SEは、タッチ検出部40の入力に設けられた抵抗R(図4)や、その入力部に設けられたESD保護回路(図示せず)を介してタッチ検出機能付き表示装置の電源やGNDに逃げることができる。すなわち、導電層52が無い場合には、静電気は例えば偏光板自体に帯電し、その静電気に起因する電界により、液晶層6の液晶分子の配向を乱し、表示を乱すおそれがあるが、この導電層52を設けることにより、静電気を逃がしやすくすることができ、表示を乱すおそれを低減することができる。導電層52は、図8に示したように、有効表示領域Sを覆うように配置されているので、有効表示領域S全面において、静電気を逃がしやすくすることができ、表示の乱れを低減することができる。」

オ 「【0070】
[変形例2]
上記実施の形態では、印加された静電気を、タッチ検出電極TDLを介して逃がすようにしたが、これに限定されるものではなく、静電気を逃がす他の経路を設けるようにしてもよい。図15は、本変形例に係るタッチ検出機能付き表示装置1Bの一構成例を表すものであり、(A)は平面図を示し、(B)は図15(A)のXV-XV矢視方向の概略断面図を示す。タッチ検出機能付き表示装置1Bは、GND線58を有している。GND線58は、偏光板35の周囲に配置され、偏光板35の導電層52と電気的に接続されるとともに、タッチ検出機能付き表示装置1BのGNDとも接続されている。これにより、タッチ検出機能付き表示装置1Bでは、印加された静電気を、導電層52を介してGNDに逃がしやすくすることができる。
【0071】
上記実施の形態に係るタッチ検出機能付き表示装置1において、例えば、タッチ検出電極TDLが接続されるタッチ検出部40の入力部にスイッチが設けられ、そのスイッチが検出タイミングでのみオン状態になる場合には、そのスイッチがオン状態のときには静電気を逃がす経路が確保されるものの、オフ状態のときにはその経路も遮断されてしまうため、十分に静電気を逃がすことができないおそれがある。この場合でも、本変形例に係るタッチ検出機能付き表示装置1Bでは、GND線58が常時導電層52と接続されているため、静電気を逃がす経路が常時確保され、静電気を逃がしやすくすることができる。」
(当合議体注:図15は以下の図である。)


カ 以上の記載事項によれば、引用例1には以下の発明が記載されていると認められる。
「インセルタイプの装置である液晶表示素子を用いたタッチ検出機能付き表示装置が備える対向基板3が有するガラス基板31の面に形成されるタッチ検出電極TDLの上に配設され、偏光層54と導電層52とを有している偏光板35であって、偏光層54の、カバー層55が形成された面とは反対の面には、カバー層53が形成され、その上にESD対策を目的として設けられた導電層52が形成されて外部から印加された静電気が液晶層に伝わり表示が乱れるのを抑えるとともに、タッチ検出感度の劣化を最小限に抑えるようになっており、GND線58が偏光板35の周囲に配置され、導電層52と電気的に接続されるとともに、タッチ検出機能付き表示装置1BのGNDとも接続されている、偏光板35。」(以下、「引用発明」という。)

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前の2004年7月8日に頒布された刊行物である国際公開第2004/057381号(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がなされている。

ア 「技術分野
本発明は、透明導電性積層体に関する。特にタッチパネル及びタッチパネル付液晶表示装置に好適に用いることができる透明導電性積層体に関する。」(明細書第1頁第3?5行)

イ 「発明の開示
本発明の主たる目的は、λ/4の位相差を与える新規な透明導電性積層体を提供することにある。」(明細書第2頁第22?24行)

ウ 「 本発明における好ましい実施態様の一例を図1に示す。図1は、後述する実施例1におけるタッチパネルの概略図である。図1において、高分子フィルムA(3:λ/4位相差フィルム)の片側に硬化樹脂層(4)を介して透明導電層(5)が配置され、該高分子フィルムAのもう一方の片側には光散乱層(2)が設けられ透明導電性積層体P(14-1)が構成されている。この高分子フィルムAが透明導電性積層体P(14-1)全体にλ/4の位相差を与えるように作用している。さらに偏光板(13)と上記透明導電性積層体P(14-1)との積層物と、空隙を挟んで透明導電性積層体R(15)とが配置されて、タッチパネルが構成されている。」(明細書第5頁第8?15行)

(3)引用文献3
本件出願前の平成23年12月15日に頒布された刊行物である特表2011-530089号公報(以下「引用例3」という。)には、以下の記載がなされている。

ア 「【0002】
(発明の分野)
本開示は、静電気防止性層と光透過性接着剤とを含む光学フィルムに関する。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0006】
電荷、特に接着剤ライナが除去されたあとに接着剤に残存する残留静電荷、を迅速に消散することができる補償フィルムを含む静電気防止性光学構造物が必要とされている。更に、液晶の配向に悪影響を与えない、又は液晶セルに適用されたときに電子性能に支障をきたさない、光学構造物が必要とされている。
【0007】
一態様において、補償フィルムと、フィルムと接触する導電層と、導電層と接触する光透過性接着剤とを含む静電気防止性光学構造物が提供される。」

ウ 「【0016】
本開示の光学構造物は、構造物に静電気消散特性を付与する補償フィルムと接触する導電層を含む。導電層は、構造物に、特に構造物の最外表面において、望ましい静電気消散特性を付与するのに有効な量のコーティング、又は層、の形態で提供されることができる。コーティングによって形成される場合、静電気消散層は、少なくとも2ナノメートルの乾燥厚さを有することができる。導電層は1つを超える導電性コーティングを含むことができる。
【0017】
構造物の表面上の静電気消散特性は、水性又は有機溶媒中に分散された導電性ポリマーを有する組成物を含む層から達成され得る。好適な導電性ポリマーには、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。有用なポリマーには、例えば、BaytroN P(H.C.Starck(Newton,MA)より入手可能)などの市販の導電性ポリマーを挙げることができる。典型的には、導電性ポリマーは分散体として提供され得る。補償フィルムなどの非静電気消散性光学層に適用される場合、導電性ポリマーは一般に、光学層の中に移動又は浸透するものとは期待されない。あるいは、導電層又はコーティングは、導電剤又は静電消散剤を含むことができる。代表的な導電剤には、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、又は当業者に既知のその他の透明な導電性金属酸化物などの透明導電材料の分散体を挙げることができる。
【0018】
所望により結合剤を導電層組成物に含めることができる。好適な結合剤は、導電剤又は静電消散剤(例えば導電性ポリマー)と親和性のある物質である。様々な基準を用いて結合剤の適切性を特徴付けることができる。これら基準には次のものが挙げられる:塊及び大きな粒子を最小限に抑える又は排除するように、安定した滑らかな溶液を形成する結合剤の能力;結合剤は沈殿を形成させるべきでない;結合剤は導電性ポリマー又は導電剤の有効性を低減すべきでない;及び、結合剤は、乾燥の際の導電層のストリーク又は網状化を最小限にして滑らかなコーティング性を付与することができる。アクリレート、ウレタン、エポキシド、及びこれらの組み合わせは、有用な任意の結合剤の例である。アクリル結合剤は、米国特許第6,299,799号(Craig et al.)に記載されたものと同様とすることができる。」

エ 「【0058】
静電気防止性スルホポリエステルPEDOTプライマー配合物の調製
0.8gのDMSOを、16gのPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))/ポリスチレンスルホン酸(H.C.Stark(Richmond,VA)から入手可能)へ溶液として添加した(1.3wt%)。この溶液を使用前に一晩攪拌した。7.65gのWB50溶液(20重量%)、34gの脱イオン化水、0.5gのXR5577(40重量%水溶液)、及び0.38gのTOMADOL 25-9(10重量%)を混合し、続いて7.0gのDMSO変性PEDOT溶液を添加し、この混合物を更に30分間撹拌した。
【0059】
静電気防止性PEDOTプライマーを有するポリオレフィンフィルムの調製
静電気防止性PEDOTプライマー溶液を、#4ロッドを使用してZEONORフィルム上に塗布し、次にこのフィルムを70℃で3分間乾燥した。得られたフィルムを光学的に透明な接着剤でコーティングした又は積層した。」

(4)引用文献4
本件出願前の平成6年5月6日に頒布された刊行物である特開平6-123806号公報(以下「引用例4」という。)には、以下の記載がなされている。

ア 「【0013】
【発明の目的】上記のような問題に対し、本発明の目的は、以下のような特徴を有する偏光板用保護フィルムを提供することにある。
【0014】 (○1)(合議体注:丸囲みの「1」をこのように表記した。以下同様。) 粘着層にゴミ等が付着して汚染し、外観不良のないこと
(○2) 液晶の異常表示問題や液晶表示装置の誤動作の問題の少ないこと
(○3) 新たな導電性層を設けたフィルムの接着剤による貼りつけの必要がなく、さらに鹸化処理の必要もなく作業工程を省略できること
(○4) 透明性等の光学特性に優れ、支持体フィルムへの密着性が優れること
【0015】
【発明の構成】本発明の上記目的は、偏光板用保護フィルムの少なくとも片面に導電性を有する層を少なくとも1層有し、その表面比抵抗が10^(11)Ω/cm(25℃、20%RH)以下であることを特徴とする偏光板用保護フィルムにより達成される。」

イ 「【0042】本発明の導電性は、導電性微粒子をバインダーに分散させて支持体層に設けてもよいし、支持体に下引処理を施し、その上に導電性微粒子を被着させてもよい。」

ウ 「【0045】本発明で使用するバインダーは、フィルム形成能を有する物であれば特に限定されるものではないが、例えばゼラチン、カゼイン等のタンパク質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ソーダ、デンプン誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、、ポリ-N-ビニルピロリドン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸等の合成ポリマー等を挙げる事ができる。」

エ 「【0078】実施例1
膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルムの片面に下記に示す本発明に係る塗布組成物を塗布厚20ml/m^(2)となるように塗布し、80℃で5分間乾燥した。
(帯電防止層第1層用塗布組成物)
導電性微粒子分散組成物
導電性SnO_(2)アンチモン複合微粒子 200重量部
(三菱マテリアル製 一次粒子径0.015nm)
ニトロセルロース 5重量部
アセトン 150重量部
上記組成物をサンドミルを用いて2時間分散した。」

4 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「偏光層54」は、本件補正発明の「偏光膜」に相当する。
そして、引用発明の「偏光層54の、カバー層55が形成された面とは反対の面には、カバー層53が形成され」たものは、「偏光層54」を含む光学積層体形成部材といえるものであり、該光学積層体形成部材が他の部材に積層されているのであるから、本件補正発明の「位相差板及び偏光膜を含む光学積層体形成部材が積層されて」なることと、「偏光膜を含む光学積層体形成部材が積層されて」なる点で共通する。

(2)引用発明の「導電層52」は、本件補正発明の「導電層」に相当する。
そして、引用発明の「偏光層54の、カバー層55が形成された面とは反対の面には、カバー層53が形成され、その上にESD対策を目的として設けられた導電層52が形成され」ることは、上記(1)のとおり、光学積層体形成部材に「導電層52」を積層したものといえるから、引用発明は、本件補正発明の「前記光学積層体形成部材の少なくとも一つの部材に導電層が形成されて」なるとの要件を備える。

(3)「表面」とは、広辞苑第六版(株式会社岩波書店)によれば、「物の外面。おもて。」を意味し、一般的にも、外に露出された面を意味することから、例え導電層52の端側面であっても、外に露出された面であれば「表面」に含まれるものといえる。そうすると、引用発明の「GND線58が偏光板35の周囲に配置され、導電層52と電気的に接続されるとともに、タッチ検出機能付き表示装置1BのGNDとも接続されている」ことは、「導電層52」の表面からアース処理されてなるといえるから、引用発明は、本件補正発明の「前記導電層の表面からアース処理がされてな」るとの要件を備える。

(4)引用発明の「インセルタイプの装置である液晶表示素子を用いたタッチ検出機能付き表示装置が備える対向基板3が有するガラス基板31の面に形成されるタッチ検出電極TDLの上に配設され、偏光層54と導電層52とを有している偏光板35」は、本件補正発明の「インセルタッチパネル液晶素子の前面用の光学積層体」に相当する。

(5)したがって、両者は、
「偏光膜を含む光学積層体形成部材が積層されてなり、前記光学積層体形成部材の少なくとも一つの部材に導電層が形成されてなり、かつ前記導電層の表面からアース処理がされてなる、インセルタッチパネル液晶素子の前面用の光学積層体。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本件補正発明の光学積層体形成部材が、位相差板を含むのに対し、引用発明の偏光板を構成する部材が位相差板を含んでいない点。
[相違点2]本件補正発明の導電層が導電剤及びバインダー樹脂組成物を含む導電層形成組成物からなり、前記バインダー樹脂組成物が熱可塑性樹脂であると限定しているのに対し、引用発明の導電層がその構成成分を限定していない点。

5 判断
上記相違点1および相違点2について検討する。

(1)[相違点1]について
例えば、引用例2の記載事項ア?ウに記載されているように、タッチパネル付液晶表示装置において、偏光板とともにλ/4の位相差を与える位相差板を設けることは周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。
引用発明の偏光板(光学積層体)は、液晶素子の前面に配設されて用いられるものであり、液晶表示装置に要求される光学的性質を付与するものである。液晶表示装置において必要な位相差を与えるために、引用発明の偏光板(光学積層体)を構成する部材において、位相差板を追加することは、当業者が周知技術1に基づいて容易に想到しうることである。

(2)[相違点2]について
引用発明における導電層は、段落【0045】の「導電層52は、透光性および導電性を有する層であり、例えばITO、IZO、SnO、有機導電膜などにより構成される。」との記載によれば、透光性および導電性を有すればよいものであり、様々な導電性物質により構成することができるものといえる。
一方、例えば引用例3の記載事項ア?エや引用例4の記載事項ア?エに記載されているように、光学フィルムに導電性を有する層を設けるにあたり、導電剤及び熱可塑性樹脂を含む導電層形成組成物から導電層を形成することは周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。
そして、バインダーとしてどのようなものを選択するかは、導電剤や導電層を設ける部材との親和性や部材上でのフィルム形成能に基づいて当業者が適宜選択すべきものであり、形成過程において変形などの不都合の生じないものを選択することは、当業者ならば当然考慮することである。
したがって、引用発明において導電層を設けるにあたり、導電剤及び熱可塑性樹脂を含む導電層形成組成物から導電層を形成することは、原査定で言及されているように、当業者が周知技術2に基づいて適宜なし得る設計変更の範囲であるといえる。

(3)また、効果について検討すると、本件補正発明の効果は、本願明細書の段落【0009】の記載によれば、「液晶画面の白濁を防止できる光学積層体を容易に製造することができる。」というものである。一方、引用例1の段落【0051】には「導電層52が無い場合には、静電気は例えば偏光板自体に帯電し、その静電気に起因する電界により、液晶層6の液晶分子の配向を乱し、表示を乱すおそれがあるが、この導電層52を設けることにより、静電気を逃がしやすくすることができ、表示を乱すおそれを低減することができる。」と記載されており、引用発明は液晶素子の操作者側に設けられた偏光板の導電層によって、静電気による液晶分子の配向が乱れることを低減できるという効果を奏するものである。
本願の段落【0007】の「液晶素子よりも操作者側に導電性部材が存在しなくなることが白濁の原因である」との記載を考慮すると、引用発明も本件補正発明も、液晶素子よりも操作者側に導電層が存在するものである点で共通するものであるから、引用発明における表示の乱れが本件補正発明でいうところの液晶画面の白濁にあたるものであり、両者は同等の効果を奏するものといえる。

(4)よって、本件補正発明は、上記引用発明、周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

6 補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年7月14日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される、上記「第2 本件補正の補正却下の決定」の「1 補正の内容」に記載したとおりのものと認められる。

2 引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例と、その記載事項は、前記「第2 本件補正の補正却下の決定」の「3 引用刊行物記載の発明」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本件補正発明における導電層についての限定を省いたものであり、本願発明と引用発明とは、上記相違点1でのみ相違する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2 本件補正の補正却下の決定」の「5 判断」に記載したとおり、引用発明、周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様に引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-17 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-06 
出願番号 特願2012-238258(P2012-238258)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 中田 誠
宮澤 浩
発明の名称 インセルタッチパネル液晶素子の前面用の光学積層体及びインセルタッチパネル液晶表示装置、並びにそれらの製造方法  
代理人 大谷 保  
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