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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1333858
審判番号 不服2016-17019  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-14 
確定日 2017-11-14 
事件の表示 特願2012-164114「熱電発電装置及び熱電発電方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 7日出願公開、特開2013- 48229、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年7月24日の出願(国内優先権主張 平成23年7月27日)であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 2月23日 審査請求
平成27年12月15日 拒絶理由通知
平成28年 2月24日 意見書・補正書
平成28年 8月26日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成28年11月14日 審判請求

第2 原査定の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由(特許法第29条第2項)について
・請求項 3
・引用文献等 1-8
先に通知した引用文献1には、「前面が断熱材3a(熱源)と対向する金属製の受熱部材20(1)と、該受熱部材の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール9(2)を有し、受熱部材は、1又は2以上の熱電素子モジュールの受熱面の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.6を満足する有効投影面積[A1]を有する熱電発電装置。」が記載されている(特に段落[0009]-[0017],[0033]-[0045],[0051]-[0056]、[図1]-[図4],[図14]-[図22]を参照されたい。)。また、引用文献1には、[A1]≧[A2]×2とすることで、発電量が向上することが記載されている。

(対比)
本願の請求項3に係る発明と、引用文献1に記載された発明とを対比する。

本願の請求項3に係る発明においては、受熱部材が、その前面側にフィン(5)を有する(以下、「構成1」という。)とともに、該フィンを含む受熱部材の前面が黒体塗料で黒体処理され(以下、「構成2」という。)、熱源に対する距離を調整可能とするとともに、発電出力をモニタリングする装置を有し、該装置でモニタリングされた発電出力に応じて熱源に対する距離を調整できるようにし(以下、「構成3」という。)ているのに対し、引用文献1に記載された発明においては、前記構成1-3が記載されていない点で相違する(以下、前記構成1-3に対応して、それぞれ「相違点1-3」という。)。
(相違点の判断)
上記相違点について検討する。
(相違点1-2について)
熱電発電装置において、受熱面の表面積を広くして集熱能力を高め、発電量を向上するために、受熱部材がその前面側にフィンを有することは、周知技術にすぎず(例えば、先に通知した引用文献2の段落[0032]-[0037]、[図12]-[図15]等の記載、引用文献3の段落[0020]-[0021]、[図3]等の記載、引用文献4の段落[0013]-[0020]、[図1]-[図2]等の記載を参照されたい。)、また、放射率を高くして集熱能力を高め、発電量を向上するために、受熱部材の前面が黒体塗料で黒体処理されることは、周知技術にすぎず(例えば、引用文献4の前記記載箇所等の記載、先に通知した引用文献5の段落[0042]-[0044]、[図5]-[図8]等の記載、引用文献6の段落[0020]-[0022]、[図1]-[図3]等の記載、引用文献7の段落[0005],[0009]-[0012]、[図1]等の記載を参照されたい。)、発電量を向上するために、引用文献1に記載された熱電発電装置に、前記周知技術を採用して、前記構成1-2の構成とすることに、別段、困難性は見いだせない。

(相違点3について)
熱電発電装置において、熱電素子の劣化を抑制しつつ、熱電素子の温度を適正な範囲に維持するために、熱源に対する距離を調整可能とするとともに、発電出力をモニタリングする装置を有し、該装置でモニタリングされた発電出力に応じて熱源に対する距離を調整できるようにすることは、周知技術にすぎず(例えば、先に通知した引用文献8の段落[0002]-[0003]等の記載を参照されたい。)、熱電素子の温度を適正な範囲に維持するために、引用文献1に記載された熱電発電装置に、前記周知技術を採用して、前記構成3の構成とすることに、別段、困難性は見いだせない。

出願人は、平成28年2月24日付け意見書において、「(ア) 本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という)の熱電発電方法は、・・・ことを特徴としています。このような本願発明によれば、熱電素子モジュール2の受熱面積[A2]よりも十分に大きい有効投影面積[A1]([A1]≧[A2]×2.3)を有する受熱部材1を、熱電素子モジュール2の受熱側に配することにより大きな集熱効果が得られ、面積比増分以上に大きな発電量が得られるものですが、上述した特徴を有することにより、特に下記(i)、(ii)のような特有の作用効果を得ることができ、その結果、鉄鋼製造プロセスの高温鋼材を熱源として効率的な熱電発電を行うことができるものです。(i)受熱部材1の前面にフィン5を設けるとともに、装置を熱源に対して進退可能とし、装置による発電出力をモニタリングし、モニタリングされた発電出力に応じて、熱源に対する装置の距離を調整することにより、熱源の温度変化などに応じて、最適な受熱形態を選択でき、熱電素子の性能を最大限且つ安定的に発揮させることができる。・・・(本願明細書の段落0009、0029、0030)(ii)フィン5を含む受熱部材1の前面が黒体塗料で黒体処理されることにより、輻射伝熱による吸熱量が増加し、受熱部材1の集熱効果を高めることができる。一般に放射率ε=1の完全な黒体塗料は存在しないが、特に受熱部材1がフィン5を有する場合には、見掛け放射率向上効果も得られるため、完全な黒体と見なせる程度に受熱量が向上する。(本願明細書の段落0034)(イ) 以上のような本願発明の特徴とこれにより得られる特有の作用効果は、・・・各引用文献からは何ら示唆されません。」、「(カ) また、本願の請求項3に係る発明の熱電発電装置は、・・・ことを特徴とし、これにより、上述した(i)、(ii)と同様の作用効果が得られるものです。したがって、上述したと同様の理由から、本願の請求項3に係る発明の特徴とこれにより得られる特有の作用効果についても、引用文献1?6から示唆されることはありません。」と主張している。

出願人の当該主張について検討する。
まず、上記(i)について、「受熱部材1の前面にフィン5を設ける」ことについては、次の(ii)で検討する。それ以外について、熱電素子の劣化を抑制しつつ、熱電素子の温度を適正な範囲に維持するために、装置を熱源に対して進退可能とし、装置による発電出力をモニタリングし、モニタリングされた発電出力に応じて、熱源に対する装置の距離を調整することは、周知技術にすぎない(例えば、先に通知した引用文献8(平成27年12月25日付け拒絶理由通知書における引用文献5に対応する。)の段落[0002]-[0003]等の記載を参照されたい。)。また、引用文献8の前記記載箇所には、「・・・熱エネルギーの一部を熱発電素子により電力に変換し、かかる電力を機械部分等の駆動に用いることが行われている。このような機器では、機械部分等の駆動のため、電力が安定に供給される必要がある。一方、一般に熱発電素子は過高温に弱く、過高温状態が続くと劣化して必要な熱起電力を発生できなくなることがある。したがって、熱発電素子は機器の運転中、必要な熱起電力を発生するのに充分高い温度であって、かつ、素子の劣化が起こるほどには高くない温度に維持されなければならない。」、「・・・熱発電素子に安定した加熱を与えるためには、なんらかの補正機構が必要になる。その手段として、次に列挙する3通りの手段が従来知られている。・・・手段3:熱発電素子の起電力に応じて電気的制御により熱発電素子の位置を制御する。」ことが記載されており、「熱電素子の性能を最大限且つ安定的に発揮させることができる。」との特有の効果は、有利な効果とは認められない。
次に、上記(ii)について、「フィン5を含む受熱部材1の前面が黒体塗料で黒体処理されること」については、上記相違点の判断で説示したとおりである。また、引用文献3の段落[0021]には、「・・・フィン形状は放射光に対して黒体のようになる形状にしておくと更に効果的である。」と記載されており、「特に受熱部材1がフィン5を有する場合には、見掛け放射率向上効果も得られるため、完全な黒体と見なせる程度に受熱量が向上する。」との特有の効果は、有利な効果とは認められない。
したがって、出願人の主張は採用できない。

よって、本願の請求項3に係る発明は、引用文献1-8に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 4
・引用文献等 1-8
熱電発電装置において、熱電素子モジュールの受熱面は、受熱部材の背面に直接接合されていることは、周知技術にすぎず(例えば、引用文献2,6-7の前記記載箇所等の記載を参照されたい。)、引用文献1に記載された熱電発電装置に、前記周知技術を採用して、熱電素子モジュールの受熱面を、受熱部材の背面に直接接合されているようにすることは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易に想到し得たものである。

よって、本願の請求項4に係る発明は、引用文献1-8に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-2
・引用文献等 1-9
熱電発電装置を用い、鉄鋼製造プロセスにおける鋼材を熱源として発電を行う熱電発電方法は、周知技術にすぎない(引用文献4の前記記載箇所等の記載、引用文献5の段落[0001]等の記載、先に通知した引用文献9の段落[0002],[0012]-[0031],[0058]、[図1]-[図3]等の記載を参照されたい。)。また、例えば、引用文献9には、表面温度が300℃以上1250℃の鋼材を熱源とすること(特に前記記載箇所等の記載を参照されたい。)、引用文献5には、表面温度が500℃以上1100℃の鋼材を熱源とすることが記載されている(特に[0027]-[0034]、[図1]-[図4]を参照されたい。)。
引用文献1に記載された熱電発電装置に、引用文献2-9の周知技術を採用して、本願の請求項1-2に係る発明の熱電発電方法とすることに、別段、困難性は見いだせない。

よって、本願の請求項1-2に係る発明は、引用文献1-9に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、依然として、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 3-4
・引用文献等 1-2,4-8
引用文献2には、「前面がワーク(熱源)と対向する金属製の受熱部材82(1)と、該受熱部材の背面に受熱面側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール83(2)を有し、受熱部材は、1又は2以上の熱電素子モジュールの受熱面の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]>[A2]を満足する有効投影面積[A1]を有し、受熱部材が、その前面側にフィン82a(5)を有し、熱電素子モジュールの受熱面は、受熱部材の背面に直接接合されている熱電発電装置。」が記載されている(特に段落[0025],[0032]-[0037]、[図12]-[図15]を参照されたい。)。

引用文献1の記載内容については、前記請求項3についての説示を参照されたい。
熱電発電装置において、放射率を高くして集熱能力を高め、発電量を向上するために、受熱部材の前面が黒体塗料で黒体処理されることは、周知技術にすぎない(例えば、引用文献4-7の前記記載箇所等の記載を参照されたい。)。
また、熱電発電装置において、熱電素子の劣化を抑制しつつ、熱電素子の温度を適正な範囲に維持するために、熱源に対する距離を調整可能とするとともに、発電出力をモニタリングする装置を有し、該装置でモニタリングされた発電出力に応じて熱源に対する距離を調整できるようにすることは、周知技術にすぎない(例えば、引用文献8の前記記載箇所等の記載を参照されたい。)。

引用文献1と引用文献2は、熱電発電装置という共通の技術分野に属している。発電量を向上するため、及び、熱電素子の温度を適正な範囲に維持するために、引用文献2に記載された熱電発電装置に、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献4-8の周知技術を適用して、本願の請求項3-4に係る発明の熱電発電装置とすることは、当業者が容易になし得ることである。また、本願発明の[A1]≧[A2]×2.3との発明特定事項における、「2.3」との数値限定に、顕著性を有する有利な効果は認められない。
よって、本願の請求項3-4に係る発明は、引用文献1-2,4-8に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-2
・引用文献等 1-2,4-9
熱電発電装置を用い、鉄鋼製造プロセスにおける鋼材を熱源として発電を行う熱電発電方法は、周知技術にすぎない(引用文献4,9の前記記載箇所等の記載を参照されたい。)。また、例えば、引用文献9には、表面温度が300℃以上1250℃の鋼材を熱源とすること(特に前記記載箇所等の記載を参照されたい。)、引用文献5には、表面温度が500℃以上1100℃の鋼材を熱源とすることが記載されている(特に前記記載箇所等の記載を参照されたい。)。
引用文献2に記載された熱電発電装置に、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献4-9の周知技術を適用して、本願の請求項1-2に係る発明の熱電発電方法とすることに、別段、困難性は見いだせない。

よって、本願の請求項1-2に係る発明は、引用文献1-2,4-9に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-4
・引用文献等 1-9
引用文献9には、「前面が金属材料100(熱源)と対向する金属製の受熱部材111(1)と、該受熱部材の背面に受熱面側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)を有し、受熱部材が、1又は2以上の熱電素子モジュールの受熱面の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]>[A2]を満足する有効投影面積[A1]を有し、熱電発電装置を用い、鉄鋼製造プロセスにおける鋼材を熱源として発電を行い、表面温度が表面温度が300℃以上1250℃の鋼材を熱源として発電を行う熱電発電方法。」が記載されている(特に段落[0002],[0012]-[0031],[0058]、[図1]-[図3]を参照されたい。)。

引用文献1の記載内容については、前記請求項3についての説示を参照されたい。
熱電発電装置において、受熱面の表面積を広くして集熱能力を高め、発電量を向上するために、受熱部材がその前面側にフィンを有することは、周知技術にすぎず(例えば、引用文献2-4の前記記載箇所等の記載を参照されたい。)、また、放射率を高くして集熱能力を高め、発電量を向上するために、受熱部材の前面が黒体塗料で黒体処理されることは、周知技術にすぎない(例えば、引用文献4-7の前記記載箇所等の記載を参照されたい。)。
また、熱電発電装置において、熱電素子の劣化を抑制しつつ、熱電素子の温度を適正な範囲に維持するために、熱源に対する距離を調整可能とするとともに、発電出力をモニタリングする装置を有し、該装置でモニタリングされた発電出力に応じて熱源に対する距離を調整できるようにすることは、周知技術にすぎない(例えば、引用文献8の前記記載箇所等の記載を参照されたい。)。
また、熱電発電装置において、熱電素子モジュールの受熱面は、受熱部材の背面に直接接合されていることは、周知技術にすぎない(例えば、引用文献2,6-7の前記記載箇所等の記載を参照されたい。)。

引用文献1と引用文献9は、熱電発電装置という共通の技術分野に属している。発電量を向上するため、及び、熱電素子の温度を適正な範囲に維持するために、引用文献9に記載された熱電発電装置に、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2-8の周知技術を適用して、本願の請求項1-4に係る発明の熱電発電方法、及び、熱電発電装置とすることは、当業者が容易になし得ることである。また、本願発明の[A1]≧[A2]×2.3との発明特定事項における、「2.3」との数値限定に、顕著性を有する有利な効果は認められない。

よって、本願の請求項1-4に係る発明は、引用文献1-9に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2010-123792号公報
2.特開2004-350479号公報
3.特開2002-171776号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
4.特開2005-033894号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
5.再公表特許第2005/112141号(周知技術を示す文献)
6.特開2010-238822号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
7.特開2001-007412号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
8.特開平06-018093号公報(周知技術を示す文献)
9.特開2011-062727号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は,平成28年2月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。
「【請求項1】
前面が熱源と対向する金属製の受熱部材(1)と、該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)を有し、受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有する熱電発電装置であって、
受熱部材(1)が、その前面側にフィン(5)を有するとともに、該フィン(5)を含む受熱部材(1)の前面が黒体塗料で黒体処理され、熱源に対する距離を調整可能とした熱電発電装置を用い、
鉄鋼製造プロセスにおける鋼材を熱源として発電を行うとともに、熱電発電装置による発電出力をモニタリングし、モニタリングされた発電出力に応じて、熱源に対する熱電発電装置の距離を調整することを特徴とする熱電発電方法。
【請求項2】
表面温度が300℃以上の鋼材を熱源として発電を行うことを特徴とする請求項1に記載の熱電発電方法。
【請求項3】
前面が熱源と対向する金属製の受熱部材(1)と、該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)を有し、
受熱部材(1)は、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有し、
受熱部材(1)が、その前面側にフィン(5)を有するとともに、該フィン(5)を含む受熱部材(1)の前面が黒体塗料で黒体処理され、
熱源に対する距離を調整可能とするとともに、発電出力をモニタリングする装置を有し、該装置でモニタリングされた発電出力に応じて熱源に対する距離を調整できるようにしたことを特徴とする熱電発電装置。
【請求項4】
熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)は、受熱部材(1)の背面に直接又はシートを介して接合されていることを特徴とする請求項3に記載の熱電発電装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-123792号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は、当審で付加した。以下同じ。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換装置のシミュレーション方法、受熱板形状最適化方法及び熱電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電効率の向上とコストの低下を実現する熱電変換装置として、複数の熱電変換素子が配列された熱電変換モジュールと、該熱電変換モジュールに輻射熱を吸収する受熱板(輻射受熱部)が設けられたものがあった。この受熱板は高い熱伝導率を備え、熱電変換モジュールよりも広く張り出した状態に形状設定されるものがある。
【特許文献1】特開2006-210568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、工業炉等の断熱壁からの廃熱(輻射熱)を、低コストで効率良く熱電変換するためには、少なくとも、熱電変換素子の高温側端面に対する受熱板の面積比(以下、「受熱板面積比」という)を定量的に検討する必要がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発電効率を向上させると共に、装置コストの低下を実現する熱電変換装置、それを設計するために有益な高精度のシミュレーション方法及び受熱板形状最適化方法を提供することを目的とするものである。」

イ 「【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る熱電変換装置110が設けられた抵抗加熱炉8の断面図である。また、図2は、本熱電変換装置110の要部断面図である。図1に示すように、抵抗加熱炉8は、外側に水冷ジャケット7が設けられ、一方に雰囲気ガス供給管1が、また他方に廃ガス管2がそれぞれ接続され、かつ、内部でワーク4を加熱する電気ヒータ5が貫通状態に設けられ、さらに外側が断熱材3aで覆われてなる加熱室3を備え、かつ、断熱材3aの外側と水冷ジャケット7との間に空間部6が形成されたものであり、該空間部6を真空又はガス雰囲気として運転される。
【0010】
このような抵抗加熱炉8では、ユニット化された多数の熱電変換モジュール9が水冷ジャケット7の内側(加熱室3側)に取り付けられており、断熱材3aから放射される輻射熱を熱電変換モジュール9の上面で受熱するようになっている。また、各熱電変換モジュール9は、ダイオード等の逆流防止器10を備えた電力回収ライン11を介して蓄電装置12に接続されて、当該蓄電装置12からの電力供給ライン13は、抵抗加熱炉8の個別制御器14に接続されている。加熱室3が発熱したときに断熱材3aから水冷ジャケット7に向けて放射される放射熱15(熱エネルギー)は、各々の熱電変換モジュール9によって電気エネルギーに変換されて蓄電装置12に回収され、電力として制御器14に供給される。
【0011】
各熱電変換モジュール9は、周知のP型熱電変換素子とN型熱電変換素子とが基板上に交互に配列されると共に互いに直列に接続されたものである。この熱電変換モジュール9は、図2に示すように、高温側端面を加熱室3側に向けた状態、かつ低温側端面(基板側)を水冷ジャケット7に向けた状態で固定されている。なお、熱電変換モジュール9の配置間隔(配設密度)は、必要とされる冷却量に応じて定められる。水冷ジャケット7には、熱電変換モジュール9間に位置して断熱材22が貼付されている。
【0012】
図2に示すように、熱電変換モジュール9の高温側端面(上面)には、輻射熱を受け、高い熱伝導率を有する受熱板20(輻射受熱部)がロウ付け等によって絶縁状態で接合されている。ロウ材としては、炉内の温度(例えば約500℃)において使用可能なものが選択される。この受熱板20は、熱電変換モジュール9の高温側端面よりも外側に広く張り出す形状、すなわち熱電変換モジュール9の上面面積よりも広い面積を備えた形状に設定されている。また、隣り合った熱電変換モジュール9に設けられた受熱板20間には僅かに隙間25が形成されている。
【0013】
このような受熱板20は、高い輻射熱吸収性能を有し、かつ高い熱伝導率を備えた素材により構成されている。受熱板20の素材としては、例えば黒鉛、金属等が考えられる。このように構成された本熱電変換装置においては、熱電変換モジュール9よりも広く張り出した受熱板20によって輻射熱が吸収され、熱伝導によって熱電変換モジュール9に熱が集中する。熱電変換モジュール9に集中して伝播した熱は、熱電変換モジュール9において高温側端面からの熱流が低温側端面に伝播し、これによって熱電変換モジュール9から電力が取り出される。」

ウ「【0033】
具体的な解析事例は以下のとおりである。
事例A:受熱板20なし
事例B:受熱板面積比1倍(高温側端面の基板面積に対して等倍)
事例C:受熱板面積比4倍(図7に示す高温側端面の基板面積に対して4倍)
事例D:受熱板面積比9倍(高温側端面の基板面積に対して9倍)
事例E:素子9分割で分散配置(つまり、事例Dに対して、受熱板20の面積を変えず、素子断面積を1/9にすることにより、受熱板20の端部から熱電変換モジュール9までの距離を相対的に短くするように配置)。
【0034】
このような5つの事例A?Eのうち、事例B?Eの4事例については炉壁温度を495℃で一定として、受熱板20上面から流入する熱流量、モジュール上面電極面(高温側端面)への熱流量、抵抗体における総発電量、熱電変換効率を指標として、受熱板20による効果を検証する。なお、上記事例B?Eでは炉壁温度が495℃の場合を想定しているが、事例Aのように受熱板20が設けられていないものについては、断熱材3aの温度を830℃として解析した。
---中略---
【0039】
図12は、図7に示した解析モデルにおける受熱板20の基板31、31に対する面積比(受熱板面積比(倍))が9倍の受熱板20を備える解析モデルの温度コンター図である。図13は、上記図11の一部を拡大した電位コンター図である。これら図12、図13が示すように、受熱板面積比(倍)が9倍の受熱板20を備える熱電変換モジュール9は、理想に近い熱分布及び実用に支障ない電位分布と考えられる。
【0040】
次に、図14?図22は、連成解析の解析結果を示すグラフである。
図14は、炉温設定495℃における受熱板面積比(倍)と熱流量及び受熱板20の表面温度との関係を示すグラフである。また、図15は、炉温設定495℃における上記受熱板面積比(倍)と発電量及び熱電変換効率との関係を示すグラフである。これら図14、図15が示すように、炉温設定495℃における基本的な傾向として、受熱板面積比(倍)が4倍までは熱流量、受熱板20の表面温度、発電量及び熱電変換効率の各値が増加するが、受熱板面積比(倍)を4倍を超えて増加させても受熱板20の底面からの放熱するロスが大きくなるため効果が得られない。
---中略---
【0043】
図18は、炉温設定650℃における受熱板面積比(倍)と熱流量及び受熱板20の表面温度との関係を示すグラフである。また、図19は、炉温設定650℃における受熱板面積比(倍)と発電量及び熱電変換効率との関係を示すグラフである。これら図18、図19が示すように、炉温設定650℃においては、受熱板面積比(倍)が2倍付近で熱電変換効率がピークを示し、9倍までは熱流量、受熱板20表面温度、発電量を増加させる効果が得られる。
【0044】
図20は、炉温設定350℃における受熱板面積比(倍)と熱流量及び受熱板20の表面温度との関係を示すグラフである。また、図21は、炉温設定350℃における受熱板面積比(倍)と発電量及び熱電変換効率との関係を示すグラフである。これら図20、図21が示すように、炉温設定350℃において、受熱板面積比(倍)が約6倍まで熱流量、受熱板20表面温度、発電量及び熱電変換効率の各値を増加させる効果が得られる。
【0045】
図22は、炉内壁温度(輻射参照温度)に対して最大効率となる受熱板面積比(倍)及び最大効率を示すグラフである。この図22が示すように、炉温設定200℃においては、面積比を8倍にすることで最大効率2.6%が得られ、炉温設定650℃においては、面積比を約2.6倍にすることで最大効率9%が得られることが明らかになった。」

エ 図1,2には、以下の事項が記載されている。
前面が断熱材3a(熱源)と対向する金属製の受熱板20と、該受熱板の背面に受熱面側を介して接合される2以上の熱電素子モジュール9を有する熱電発電装置。

(2)引用方法発明1
前記(1)アないしエの記載から、引用文献1には次の発明(以下,「引用方法発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「前面が断熱材(熱源)と対向する金属製の受熱板と、該受熱板の背面に受熱面側を介して接合される熱電変換モジュールを有し、受熱板の受熱面積が高温型端面の基板面積に対して、4倍,9倍となる熱電変換装置を用いて、工業炉等の断熱壁からの廃熱(輻射熱)を利用した熱電発電方法。」

(3)引用装置発明1
前記(1)アないしエの記載から、引用文献1には次の発明(以下,「引用装置発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「前面が断熱材(熱源)と対向する金属製の受熱板と、該受熱板の背面に受熱面側を介して接合される熱電変換モジュールを有し、受熱板の受熱面積が高温型端面の基板面積に対して、4倍,9倍となる熱電変換装置。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2004-350479号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換してゼーベック効果を利用するための熱電変換ユニットおよびこのユニットを備えるトンネル型炉に係り、とくに、熱効率に優れるとともにメンテナンスが容易であり、しかも長期間安定して使用できるトンネル型炉に関する。」

イ 「【0025】
このような構成の下、図示しない無端ベルト上で熱せられたワークの熱により内管51の温度が上昇する。この温度上昇により得られた熱を熱電変換モジュール52の一端により受けるとともに、ウォータージャケット53により熱電変換モジュール52の他端が冷却され、これらの温度差に応じてゼーベック効果に基づく発電がなされる。炉の使用時には、熱電変換モジュール52は相当の温度に上昇しており、この温度は空気中では熱電変換モジュール52が酸化する程度の温度である。しかしながら、熱電変換モジュール52同士の間およびモジュールを構成する素子同士の間には隙間が存在し、これらの隙間に非酸化性ガスが流通するので、熱電変換モジュール52が酸化されて劣化することはない。なお、外部に放出された非酸化性ガスは燃焼処理される。
---中略---
【0032】
図12は、本発明のトンネル型炉の発電ゾーンの他の例を示す断面図であり、本例は図7,8に示したトンネル型炉の変形例である。この発電ゾーンは、内管81と、内管81の内周面の少なくとも一部(同図では、外周面の上部および図示しない外周面の両側部)と内管81内に設けられた受熱部材82との間に挟まれ配置された複数の熱電変換モジュール83と、複数の熱電変換モジュール83の配設位置に対応して内管81を覆うウォータージャケット84とを備えている。また、この発電ゾーンは、内管81内部に非酸化性ガスを流通させる構造となっている。
【0033】
この構成の下では、図7,8に示す発電ゾーンと同様に、炉内雰囲気ガスにより熱電変換モジュール83の酸化防止を図ることができる。本例では、内管81の内側に熱電変換モジュール83を設置し、受熱部材82で熱電変換モジュール83の落下等を防止するとともに受熱する構造を採用している。受熱性向上のためには、受熱部材82を銅製とすることが好ましく、また、受熱部材82を、図12に示すように、複数のフィン82aを有する構造とすることが好ましい。
【0034】
実際に、各部材を組み立てる場合には、内管81の熱電変換モジュール83を設置する予定面を下にして、銅ペースト等の接合剤を塗布して熱電変換モジュール83を積載する。次いで、熱電変換モジュール83を受熱部材82で覆い、受熱部材82と、それに対向する内管81の内面とに棒等で楔を打ち、受熱部材82が移動しないようにする。最後に、図12に示すように、固定アングル84を用いて適当な強度に固定し、棒等を取り去る。以上の操作を熱電変換モジュール83を設置する予定面全てに対して順次行う。なお、固定アングル84間は、耐熱シート85で塞がれている。以上のように組み立てられた発電ゾーンは、図12に示すように隣り合うゾーンと内管を連結して使用される。
【0035】
図13は、本発明のトンネル型炉の発電ゾーンの他の例を示す断面図であり、本例は図12に示したトンネル型炉の変形例である。本例の基本的構造は、図12に示す発電ゾーンの構造と同じであるが、本例では、受熱部材82が、内管81に溶接されたボルト86により締結されている。本例においても、図12に示す例と同様の効果が得られる。
【0036】
図14は、図12,13に示す発電ゾーンの接合形態を示す軸断面図であり、複数の熱電変換モジュール83が、内管81の上部湾曲面と、両側面とに設置されており、下側面に無端ベルト87が通っている。
【0037】
図15(a)?(c)は、図14に示す発電ゾーンの主要構成部材の接合形態を部分的に示す断面図である。図15(a)に示す例では、内管81、熱電変換モジュール83および受熱部材82の接合に、接合剤は一切使用していない。図15(b)に示す例では、内管81と熱電変換モジュール83との接合にのみ、接合剤88を使用している。図15(c)に示す例では、内管81と熱電変換モジュール83との間の接合、および熱電変換モジュール83と受熱部材82との間の接合に、接合剤88を使用している。このように、接合剤の使用は、適宜決定することができるが、接地面が大きくかつ平滑でない場合や、面状態が良好でない内管81との接合を実施する場合には、接合剤を用いて隙間充填を行い、熱伝導性を高めることが望ましい。」

ウ 図12?15には以下の事項が記載されている。
前面がワーク(熱源)と対向する金属製の受熱部材82と、該受熱部材の背面に受熱面側を介して接合される2以上の熱電素子モジュール83を有する熱電発電装置。

(2)引用方法発明2
前記(1)アないしウから、引用文献2には次の発明(以下,「引用方法発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「前面が熱せられたワーク(熱源)と対向する銅製の複数のフィンを有する受熱部材82と、該受熱部材の背面に受熱面側を介して接合される2以上の熱電変換モジュール83を用いて、トンネル型炉における無端ベルト上で熱せられたワークの熱を利用して発電する熱電発電方法。」

(3)引用装置発明2
前記(1)アないしウから、引用文献2には次の発明(以下,「引用装置発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「前面が熱せられたワーク(熱源)と対向する銅製の複数のフィンを有する受熱部材82と、該受熱部材の背面に受熱面側を介して接合される2以上の熱電変換モジュール83を用いた熱電発電装置。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-171776号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は抵抗加熱炉や燃焼炉の如き工業炉で用いる熱電発電装置に関するものである。」

イ 「【0020】又、図3(イ)(ロ)は本発明の実施の更に他の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)に示したと同様な構成において、図3(イ)は、熱電モジュール9の高温側に、黒体製の集熱板20を各熱電素子9a,9bの受熱面を覆うように配置したものであり、図3(ロ)は、同じく熱電モジュール9の高温側に、多数の集熱フィン21を設けてなる黒体(黒鉛等)製の集熱板20を配置したものである。
【0021】図3(イ)に示すように、熱電モジュール9の高温側受熱面に集熱板20を配置すると、該集熱板20により断熱材3aからの熱流15を受け易くすることができるので、発電効率を向上させることができ、又、図3(ロ)に示すようにした場合は、集熱フィン21により、受熱面積を更に広くすることができるので、発電効率をより向上させることができる。この時、フィン形状は放射光に対して黒体のようになる形状にしておくと更に効果的である。」

ウ 図3には、以下の事項が記載されている。
集熱板20の熱流15の面に集熱フィン21を設けた熱電モジュール9。

(2)引用文献3に記載された技術的事項
前記(1)アないしウから,引用文献3には次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(技術的事項3)
「受熱面積を広くして、発電効率を向上させるために黒体製の集熱フィンを設けた熱電モジュール。」

4 引用文献4について
(1)引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-33894号公報(以下,「引用文献4」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温製品、高温素材または高温部位から放出される輻射熱やガス伝導等による廃熱を回収し、回収した熱を利用する発電システムに係り、特に、工場・発電プラント等の各種プラントで廃熱として処理される熱エネルギを電気エネルギとして回収する廃熱発電システムに関する。」

イ 「【0019】
さらに、高温側系統13は、集熱部あるいは吸熱部20を備え、この集熱部20は、図2に示すように、工場の輻射熱等による廃熱を効率よく回収する機能を有する。高温側系統13の集熱部20は、受熱面の表面積を大きくしたフィン形状、波板形状、錐体形状、針体形状あるいは平面形状の受熱面21を有する。集熱部20の受熱面21は、表面に黒色またはつや消しの塗料、特に黒色塗料が塗布され、集熱(吸熱)能力の向上が図られている。」

ウ 図2には、以下の事項が記載されている。
受熱面の表面積を大きくしたフィン形状を有した集熱部を備えた発電装置。

(2)引用文献4に記載された技術的事項
前記(1)のアないしウから、引用文献4には次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(技術的事項4)
「受熱面の表面積を大きくし、黒色塗料が塗布され集熱能力が向上したフィン形状を有した集熱部を備えた発電装置。」

5 引用文献5について
(1)引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用された再公表特許第2005/112141号(以下,「引用文献5」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源から放射で熱を受ける熱電変換システムおよび熱電変換システムの高効
率化方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、焼結炉や製鉄・非鉄金属プラントなどで発生する廃熱を熱源とする熱電変換システムに用いて好適な熱電変換システムおよび当該熱電変換システムの高効率化方法に関する。」

イ「【0042】
熱電変換モジュール5の受熱部6または受熱部6の一部または全部を覆う被覆材の候補を表1に示す。また、材料の参考放射率を表2に示す。但し、表1および表2に示す材料は好適例であって、本発明に係る受熱面18を構成する素地材や当該素地材を覆う被覆材がこれらに限定されるものではなく、これらの他にも多種多様な材料の中から最適な放射率の材料を選定することができる。尚、放射率は、雰囲気の酸化の程度にも依存する。従って、熱電変換モジュール5を使用する雰囲気の状態が、酸化雰囲気であるか還元雰囲気であるか不活性雰囲気であるかも考慮して材料選定を行うことが好ましい。
【0043】
【表1】


(2)引用文献5に記載された技術的事項
前記(1)のア、イから、引用文献5には次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(技術的事項5)
「受熱部6または受熱部6の一部または全部を覆う被覆材として黒鉛系耐熱塗料を用いた熱電変換モジュール5。」

6 引用文献6について
(1)引用文献6
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-238822号公報(以下,「引用文献6」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールを用いて、熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する熱電発電装置に関し、特に輻射熱を発する各種熱源に適用して、放散されてきた熱を有効に利用し、省エネルギー、環境対策に資する熱電発電装置に関する。」

イ 「【0020】
図1には、本発明の熱電発電装置1の1ユニットの斜視図が示されている。図2は、図1に示す熱電発電装置1の1ユニットの断面図(図3のA-A‘線断面)であり、図3は、図1に示す熱電発電装置1の1ユニットの上面図である。
【0021】
図1乃至3に示すように、本実施形態の熱電発電装置1は、熱源(輻射体)から供給される熱エネルギーを輻射により受熱する受熱板3と、この受熱板3に一方の面を当接して受熱する熱電変換モジュール2と、冷却設備から供給される水等の低温媒体を内部に流通させて熱電変換モジュール2の他方の面を冷却する冷却板4とを備えている。
【0022】
受熱板3は、例えば平板状であり、輻射体に対する面には、輻射熱を効率よく吸収できるよう、輻射率の高い炭素系や炭化珪素系の黒色塗料が塗布されている。受熱板3の熱電変換モジュール2が接触していない部分については、熱エネルギーの損失を抑制するために、断熱材(図示せず)が設置されている。」

(2)引用文献6に記載された技術的事項
前記(1)のア、イから、引用文献6には次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(技術的事項6)
「輻射率の高い炭素系や炭化珪素系の黒色塗料が塗布された受熱板を備えた熱発電装置。」

7 引用文献7について
(1)引用文献7
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-7412号公報(以下,「引用文献7」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は太陽光の熱を利用して温度差を作り、この温度差を熱電素子により電力に変換する太陽熱発電装置に関し、特に太陽熱の利用効率の改善に関するものである。」

イ 「【0012】また、集熱板3は軽い方が良いので、アルミニュームなどの熱伝導率が高い材料を用いて薄くした方が良い。熱伝導率が低いと集熱板3周辺部で受けた熱エネルギを熱電素子1に伝える際の損失が問題となる。また、太陽光の熱を効率良く吸収するため表面の熱放射率が高い事が要求される。このため、表面を荒らしたり、表面に酸化膜を形成したり、適切な厚みの黒色樹脂塗装を行ったりする必要がある。なお、樹脂塗装は熱伝導率が低いので、あまり厚すぎると塗装表面だけ加熱され、集熱板3に熱が伝わらない。逆に薄すぎると太陽光の吸収が十分でなく、集熱効率が悪くなる。」

(2)引用文献7に記載された技術的事項
前記(1)のア、イから、引用文献7には次の発明が記載されているものと認められる。

(技術的事項7)
「表面に適切な厚みの黒色樹脂塗装を行ったアルミニュームなどの熱伝導率が高い材料からなる集熱板。」

8 引用文献8について
(1)引用文献8
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-18093号公報(以下,「引用文献8」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、加熱された熱発電素子が発生する熱起電力を利用する機器に関し、さらに詳しくは、熱源であるバーナ火炎の火力に応じて熱発電素子の位置をバーナ火炎口より離間または接近制御することで火炎の長さに応じて熱発電素子を適正に加熱し、安定した電力を発生させる熱起電力利用機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ファンヒーター等の暖房機器では、熱源であるバーナ火炎の熱エネルギーの一部を熱発電素子により電力に変換し、かかる電力を機械部分等の駆動に用いることが行われている。このような機器では、機械部分等の駆動のため、電力が安定に供給される必要がある。一方、一般に熱発電素子は過高温に弱く、過高温状態が続くと劣化して必要な熱起電力を発生できなくなることがある。したがって、熱発電素子は機器の運転中、必要な熱起電力を発生するのに充分高い温度であって、かつ、素子の劣化が起こるほどには高くない温度に維持されなければならない。
【0003】しかしながら暖房機器の場合、気温等の条件により、熱出力を調整する必要があるため、熱源であるバーナ火炎の火力は運転状態によって変動する。この火力変動幅はかなり大きいので、上記のように熱発電素子をある温度範囲に維持するための熱源としては理想的でない。そこで、このような火炎により熱発電素子に安定した加熱を与えるためには、なんらかの補正機構が必要になる。その手段として、次に列挙する3通りの手段が従来知られている。
手段1:火力調整機構に連動する熱発電素子位置変化機構を設ける。
手段2:火力調整機構とは独立の熱発電素子専用火炎を設ける。
手段3:熱発電素子の起電力に応じて電気的制御により熱発電素子の位置を制御する。
---中略---
【0006】そして手段3の問題点としては、制御回路および機構が複雑であること、さらに、熱発電素子で発生した電力の一部が制御のために使用されてしまい、本来の目的である熱起電力の有効利用が充分に図れないこと、が挙げられる。」

イ 「【0012】
【実施例】以下、本発明の熱発電利用装置を暖房器具の一部として具体化した一実施例について図面を参照して説明する。図1は、熱発電素子、およびそれと一体に設けられた熱アクチュエータ、加熱バーナよりなる熱発電利用装置の斜視図である。そして図2はその上面図であり、図3はその側面図である。
【0013】熱発電素子1がホルダー2に支持されており、ホルダー2は、熱発電素子1が熱アクチュエータ感熱部3に近接して並立するように、熱アクチュエータ本体4に固定されて設置されている。熱アクチュエータ本体4は伸縮部5を介して支持部6に設置されている。
【0014】熱アクチュエータ本体4の内部にはバイメタル(図示は省略)が設置されている。該バイメタル上端は熱アクチュエータ感熱部3と接続されており、熱アクチュエータ感熱部3の感じる温度が伝えられ、その温度により曲率変化を起こす。そして、該バイメタル下端は伸縮部5の軸芯と接続されているので、該バイメタルの曲率変化は伸縮部5の伸縮機能として働き、図2および図3の矢印Dの距離を変化させる。
【0015】そしてここでは、熱アクチュエータ感熱部3がより高い温度を感じると伸縮部5が縮み、熱アクチュエータ感熱部3がより低い温度を感じると伸縮部5が伸びるような向きに、バイメタル下端と伸縮部5の軸芯とは接続されている。
【0016】したがって伸縮部5は、熱アクチュエータ感熱部3の温度に応じて伸縮するので、熱アクチュエータ本体4は、熱アクチュエータ感熱部3、ホルダー2および熱発電素子1を一体に伴いながら、図1に矢印で示す伸縮方向に移動する。
【0017】そして支持部6の上方にバーナ7が設けられており、バーナ7の火炎9(図2においては図示省略)は、暖房用の熱源であると同時に、熱発電素子1を加熱する。加熱された熱発電素子1が発生する電力は、コード10を経由して取り出される。取り出された電力は、送風ファン等機械部分(図示は省略)を駆動するのに用いられる。
【0018】そして、熱発電素子1に近接して熱アクチュエータ感熱部3が設けられており、熱発電素子1と熱アクチュエータ感熱部3との位置関係は、図2に示すように、バーナ火炎口8からの距離が等しくなるようになっているので、火炎9は、熱アクチュエータ感熱部3にも熱発電素子1と同等の加熱を与える。
【0019】したがって、運転中熱アクチュエータ感熱部3の温度は、熱発電素子1の温度とほとんど等しくなるので、熱アクチュエータ感熱部3は熱発電素子1の温度モニターとして働き、結局伸縮部5は熱発電素子1の温度に応じて伸縮するとみなすことができる。」

ウ 図1には、以下の事項が記載されている。

「バイメタルが内部に設置されネ感熱部3として機能する熱アクチュエータを利用したホルダー2および熱発電素子1を一体に伴いながら伸縮させる熱発電利用機器。」

(2)引用文献8に記載された技術的事項
前記(1)のアないしウから、引用文献8には次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(技術的事項8-1)
熱発電素子の起電力に応じて電気的制御により熱発電素子の位置を制御する手段は、制御回路および機構が複雑であること、さらに、熱発電素子で発生した電力の一部が制御のために使用されてしまい、本来の目的である熱起電力の有効利用が充分に図れないこと。

(技術的事項8-2)
バイメタルが内部に設置され感熱部として機能する熱アクチュエータを利用したホルダーおよび熱発電素子を一体に伴いながら伸縮させる熱発電利用機器。

9 引用文献9について
(1)引用文献9
原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-62727号公報(以下,「引用文献9」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料を加工する熱間圧延ラインの熱回収装置に関する。」

イ 「【0016】
熱間薄板圧延ラインにおける代表的な金属材料100の温度は,加熱炉21出側で1200℃?1250℃、粗圧延機22出側で1100℃?1150℃、仕上圧延機24入側で1050℃?1100℃、仕上圧延機24出側で850℃?900℃、巻き取り温度は500℃?700℃である。高品質の材質造り込みのために、巻き取り温度を300℃前後まで下げることもある。
【0017】
上記のように熱間圧延ライン20内で高温になる金属材料100で発生する熱を効率的に集熱するために、本発明の実施形態に係る熱回収装置10の熱電変換手段11は、熱間圧延ライン20中を運搬される金属材料100の至近距離に配置されることが好ましい。
【0018】
熱回収装置10は、1つ又は複数の熱電変換手段11を有し、高効率を維持するために集熱手段111の直近に変換手段112が取り付けられる。集熱手段111を配置するのに好適な場所は、デスケーラ等の水が飛散してこない場所、金属材料100の上反りが小さい場所、金属材料100が比較的滞留する場所、金属材料100が高温である場所等である。例えば、加熱炉21を出た金属材料100が粗圧延機22の入側に到達する前の搬送路上(図1中、「R1」で示す。)、粗圧延機22と仕上圧延機24の間に配置される搬送テーブル(図1中、「R2」で示す。)等に集熱手段111を配置する。その他の位置の搬送テーブルでも上記条件を満たせば、短い搬送テーブルであっても熱間圧延ライン20内の任意の場所に集熱手段111を設置できる。
---中略---
【0020】
図2に、集熱手段111と変換手段112の配置例を示す。テーブルロール27によって熱間圧延ライン20内を金属材料100が搬送される。保熱カバー23は、搬送テーブルの上の金属材料100を搬送テーブルとともに覆うように、開閉できる機構を備えている。図2は、保熱カバー23を開いた状態を示す。保熱カバー23を閉じたときに、上反りした金属材料100が保熱カバー23に衝突しないように、上反り矯正装置28が保熱カバー23の入り側に設置される。
【0021】
図2に示した例では、保熱カバー23の内部に変換手段112の一部である熱電素子110を多数取り付ける。このため、保熱カバー23を閉じたときに、金属材料100と熱電素子110とが対向する。このとき、金属材料100と金属材料100に対向する保熱カバー23の内面との間隔は、例えば300mm?500mm程度である。
【0022】
ただし、粗圧延機22で圧延された金属材料100の温度は1100℃前後であるため、熱電素子110が破壊される場合もありえる。また、熱電素子110を隙間なく配置することがコスト的に難しい場合もある。このため、熱電素子110の保護及び熱の偏在を少なくし熱分布の均一化のために、図3に示すように、例えば集熱板を集熱手段111として熱電素子110を覆うように設置する。図3は、金属材料100の搬送方向と垂直な方向に沿った断面図である。
【0023】
保熱カバー23の金属材料100に対向する内面には、例えば石綿やガラス繊維等の断熱材が使用される。これは、金属材料100からの熱を保熱カバー23の外部に伝えないようにするためである。集熱板には、(1)保熱カバー23の配置された位置で表面温度が1000℃?1100℃くらいである金属材料100からの熱に耐えられること、(2)熱伝導率が小さくないこと、(3)熱を吸収しやすく、熱を熱電素子110に伝えやすいこと、等の条件を満たす材料を採用可能である。(3)の条件を満たすために、集熱板は比熱が小さい材料であることが好ましい。
【0024】
例えば、平均的に(1)?(3)の条件を満たしている一般の鉄鋼材料が、集熱板に使用できる。一方、銅は熱伝導率が大きいが、融点が1100℃以下なので、(1)の条件を満たさない。(2)、(3)の条件から、セラミック材は集熱板に不向きである。」

(2)引用方法発明9
前記(1)のア、イから、引用文献9には次の発明(以下,「引用方法発明9」という。)が記載されているものと認められる。

「1つ又は複数の鉄鋼材料からなる集熱板と集熱板を備えた熱電変換手段を用い、熱間圧延他ラインにおいて高温になる金属材料を熱源として発電を行う熱電発熱方法。」

(3)引用装置発明9
前記(1)のア、イから、引用文献9には次の発明(以下,「引用装置発明9」という。)が記載されているものと認められる。

「前面が高温になる金属材料と対向する面に1つ又は複数の鉄鋼材料からなる集熱板からなる集熱手段と集熱手段の背面に設置された変換手段の一部である多数の熱電素子からなる熱電変換手段を用い、当該熱電変手段は開閉可能な保熱カバーに設置された熱電発電装置。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用文献1を主引例とした場合
ア 本願発明1と引用方法発明1との対比
(ア)引用方法発明1の「断熱材」は熱源となるから、本願発明1の「熱源」に相当する。
(イ)引用方法発明1の「金属製の受熱板」は、受熱板の受熱面積が高温型端面の基板面積に対して、4倍,9倍である場合は、本願発明1の「受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]」の範囲に含まれることから、本願発明1と引用方法発明1とは、「受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有する、金属性の受熱部材」という点で共通している。
(ウ)引用方法発明1の「熱電変換モジュール」は、本願発明1の「熱電素子モジュール」に相当する。
(エ)引用方法発明1の「熱電変換装置」は、下記相違点(カ)(3)の点を除いて、本願発明1の「熱電発電装置」の点で一致する。

そうすると、本願発明1と引用方法発明1とは以下の(オ)の点で一致し、(カ)の点で相違する。

(オ)一致点
前面が熱源と対向する金属製の受熱部材(1)と、該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)を有し、受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有する熱電発電装置を用いた熱電発電方法。

(カ)相違点
相違点(1)
本願発明1では、受熱部材(1)が、その前面側にフィン(5)を有するとともに、該フィン(5)を含む受熱部材(1)の前面が黒体塗料で黒体処理され、熱源に対する距離を調整可能としているのに対して、引用方法発明1では、受熱板は、平板であり、固定されている点。

相違点(2)
本願発明1では、鉄鋼製造プロセスにおける鋼材を熱源として発電を行うのに対して、引用方法発明1では、工業炉等の断熱壁からの廃熱(輻射熱)を熱源として発電を行う点。

相違点(3)
本願発明1では、熱電発電装置による発電出力をモニタリングし、モニタリングされた発電出力に応じて、熱源に対する熱電発電装置の距離を調整することを特徴とするのに対して、引用方法発明1では、当該特徴を有しない点。

イ 相違点に対する検討
以下、前記相違点(3)について検討する。
熱電発電装置による発電出力をモニタリングし、モニタリングされた発電出力に応じて、熱源に対する熱電発電装置の距離を調整することを特徴とする点については、引用文献1を含め、引用文献2ないし9には、記載されておらず、示唆もされていない。
この点について、例えば、引用文献8に記載された技術的事項8-1には、熱発電素子の起電力に応じて電気的制御により熱発電素子の位置を制御する手段は、制御回路および機構が複雑であり、熱発電素子で発生した電力の一部が制御のために使用されてしまい、本来の目的である熱起電力の有効利用が充分に図れないという問題点が指摘されており、当該手段の採用を否定することを示唆している。また、技術的事項8-2に開示されたバイメタルが内部に設置され感熱部として機能する熱アクチュエータを利用したホルダーおよび熱発電素子を一体に伴いながら伸縮させる熱発電利用機器については、熱源との距離を調整するという手段としては類似するが、技術的事項8-2は、温度をモニタリングする手法であり、本願発明1のように熱電発電装置による発電出力をモニタリングする手法とはモニタする対象が異なる。
また、当該特徴を有する事で、本願発明1は、熱源と熱電発熱装置との間隔を調整することで熱源の温度変化に対して常に高い出力電圧を安定して得る事ができ、熱電発電装置の利点を最大限に発揮することができる、という格別な効果を奏する(本願明細書段落【0029】、【0030】参照)。
したがって、他の相違点を検討するまでも無く、本願発明1は、引用文献1及び引用文献2ないし9に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ まとめ
本願発明1は,引用文献1及び引用文献2ないし9に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)引用文献2を主引例とした場合
ア 本願発明1と引用方法発明2との対比
(ア)引用方法発明2の「熱せられたワーク」は熱源となるから、本願発明1の「熱源」に相当する。
(イ)引用方法発明2の「銅製の複数のフィンを有する受熱部材」は、銅は金属の一種であることから、引用方法発明2と本願発明1とは、「金属製の受熱部材(1)」で、「その前面側にフィン(5)を有する」点で共通している。
(ウ)引用方法発明2の「該受熱部材の背面に受熱面側を介して接合される2以上の熱電変換モジュール」は、本願発明1の「該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)」に相当する。

そうすると、本願発明1と引用方法発明2とは以下の(エ)の点で一致し、(オ)の点で相違する。

(エ)一致点
前面が熱源と対向する金属製の受熱部材(1)と、当該受熱部材(1)が、その前面側にフィン(5)を有し、該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)を用いた熱電発電方法。

(オ)相違点
相違点(1)
本願発明1では、受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有するのに対して、引用方法発明2は、受熱部材の面積について言及していない点。

相違点(2)
本願発明1では、受熱部材が該フィン(5)を含む受熱部材(1)の前面が黒体塗料で黒体処理され、熱源に対する距離を調整可能としているのに対して、引用方法発明2では、受熱板に黒体塗料により黒体処理はされておらず、固定されている点。

相違点(3)
本願発明1では、鉄鋼製造プロセスにおける鋼材を熱源として発電を行うのに対して、引用方法発明2では、トンネル型炉における無端ベルト上で熱せられたワークの熱を利用して発電を行う点。

相違点(4)
本願発明1では、熱電発電装置による発電出力をモニタリングし、モニタリングされた発電出力に応じて、熱源に対する熱電発電装置の距離を調整することを特徴とするのに対して、引用方法発明2では、当該特徴を有しない点。

イ 相違点に対する検討
以下、前記相違点(4)について検討する。
当該相違点(4)に対する検討は、前記(1)イで検討した内容と同様である。
したがって、他の相違点を検討するまでも無く、本願発明1は、引用方法発明2及び引用文献1、3ないし9に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ まとめ
本願発明1は,引用文献2及び引用文献1、3ないし9に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)引用文献9を主引例とした場合
ア 本願発明1と引用方法発明9との対比
(ア)引用方法発明9の「高温になる金属材料」は熱源となるから、本願発明1の「熱源」に相当する。
(イ)引用方法発明9の「1つ又は複数の鉄鋼材料からなる集熱板」は、鉄鋼材料が金属製であることから、引用方法発明9と本願発明1とは、「前面が熱源と対向する金属製の受熱部材」の点で共通している。
(ウ)引用方法発明9の「集熱手段の背面に設置された変換手段の一部である多数の熱電素子」は、複数の熱電素子が集積するから、本願発明1の「該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール」に相当する。
(エ)引用方法発明9の「熱電変換手段」は、開閉可能な保熱カバーに設置されることにより、保熱カバーに開閉に応じて、熱源と熱電変換手段の距離は変化するので、引用方法発明9と本願発明1とは「熱源に対する距離を調整可能とした熱電発電装置」の点で一致する。
(オ)引用方法発明9の「熱間圧延他ラインにおいて高温になる金属材料を熱源として発電を行う熱電発熱方法」は、「熱間圧延他ライン」におけるプロセスは鉄鋼製造プロセスの一種であり、「高温になる金属材料」は、「鋼材」と同義であるから、引用方法発明9と本願発明1とは「鉄鋼製造プロセスにおける鋼材を熱源として発電を行う熱電発電方法」の点で一致する。

そうすると、本願発明1と引用方法発明9とは以下の(カ)の点で一致し、(キ)の点で相違する。

(カ)一致点
前面が熱源と対向する金属製の受熱部材(1)と、該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)を有する熱電発電装置であって、
受熱部材(1)が、熱源に対する距離を調整可能とした熱電発電装置を用い、
鉄鋼製造プロセスにおける鋼材を熱源として発電を行う熱電発電方法。

(キ)相違点
相違点(1)
本願発明1では、受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有するのに対して、引用方法発明9は、受熱部材の面積について言及していない点。

相違点(2)
本願発明1では、受熱部材が該フィン(5)を含む受熱部材(1)の前面が黒体塗料で黒体処理されているのに対して、引用方法発明9では、受熱部材の表面処理について言及されず、固定されている点。

相違点(3)
本願発明1では、熱電発電装置による発電出力をモニタリングし、モニタリングされた発電出力に応じて、熱源に対する熱電発電装置の距離を調整することを特徴とするのに対して、引用方法発明9では、当該特徴を有しない点。

イ 相違点に対する検討
以下、前記相違点(3)について検討する。
当該相違点(3)に対する検討は、前記(1)イで検討した内容と同様である。
したがって、他の相違点を検討するまでも無く、本願発明1は、引用方法発明9及び引用文献1ないし8に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ まとめ
本願発明1は,引用文献9及び引用文献1ないし8に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を引用するものであり、本願発明1の発明特定事項を全て含み、かつ「表面温度が300℃以上の鋼材を熱源として発電を行うこと」を追加した構成であるから、本願発明1が引用文献1ないし9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本願発明2も引用文献1ないし9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 本願発明3について
(1)引用文献1を主引例とした場合
ア 本願発明3と引用装置発明1との対比
(ア)引用装置発明1の「断熱材」が熱源となるから、本願発明3の「熱源」に相当する。
(イ)引用装置発明1の「金属製の受熱板」は、受熱板の受熱面積が高温型端面の基板面積に対して、4倍,9倍である場合が開示されていることから、4倍,9倍という比は、本願発明1の「受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]」の範囲に含まれることから、下記相違点(カ)(1)の点を除いて、本願発明3の「受熱部材(1)は、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有」する、「金属性の受熱部材」の点で一致する。
(ウ)引用装置発明1の「熱電変換モジュール」は、本願発明3の「熱電素子モジュール」に相当する。
(エ)引用装置発明1の「熱電変換装置」は、下記相違点(カ)(2)の点を除いて、本願発明3の「熱電発電装置」の点で一致する。

そうすると、本願発明3と引用装置発明1とは以下の(オ)の点で一致し、(カ)の点で相違する。

(オ)一致点
前面が熱源と対向する金属製の受熱部材(1)と、該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)を有し、受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有する熱電発電装置。

(カ)相違点
相違点(1)
本願発明3では、受熱部材(1)が、その前面側にフィン(5)を有するとともに、該フィン(5)を含む受熱部材(1)の前面が黒体塗料で黒体処理されているのに対して、引用装置発明1では、受熱板は、平板であり、固定されている点。

相違点(2)
本願発明3では、熱電発電装置による発電出力をモニタリングし、モニタリングされた発電出力に応じて、熱源に対する熱電発電装置の距離を調整することを特徴とするのに対して、引用装置発明1では、当該特徴を有しない点。

イ 相違点に対する検討
以下、前記相違点(2)について検討する。
当該相違点(2)に対する検討は、前記1(1)イで検討した内容と同様である。
したがって、他の相違点を検討するまでも無く、本願発明3は、引用装置発明1及び引用文献2ないし9に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ まとめ
本願発明3は,引用文献1及び引用文献2ないし9に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)引用文献2を主引例とした場合
ア 本願発明3と引用装置発明2との対比
(ア)引用装置発明2の「熱せられたワーク」が熱源となるから、本願発明3の「熱源」に相当する。
(イ)引用装置発明2の「銅製の複数のフィンを有する受熱部材」は、銅は金属の一種であることから、下記相違点(エ)(1)の点を除いて、本願発明3の「金属製の受熱部材(1)」で、「その前面側にフィン(5)を有する」点で一致する。
(ウ)引用装置発明2の「該受熱部材の背面に受熱面側を介して接合される2以上の熱電変換モジュール」は、本願発明3の「該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)」に相当する。

そうすると、本願発明3と引用装置発明2とは以下の(エ)の点で一致し、(オ)の点で相違する。

(エ)一致点
前面が熱源と対向する金属製の受熱部材(1)と、該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)を有する熱電発電装置。

(オ)相違点
相違点(1)
本願発明3では、受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有するのに対して、引用装置発明2は、受熱部材の面積について言及していない点。

相違点(2)
本願発明3では、受熱部材が該フィン(5)を含む受熱部材(1)の前面が黒体塗料で黒体処理されているのに対して、引用装置発明2では、受熱板に黒体塗料により黒体処理はされていない点。

相違点(3)
本願発明3では、熱源に対する距離を調整可能とするとともに、発電出力をモニタリングする装置を有し、該装置でモニタリングされた発電出力に応じて熱源に対する距離を調整できるようにしたことを特徴とするのに対して、引用装置発明2では、当該特徴を有しない点。

イ 相違点に対する検討
以下、前記相違点(3)についてまとめて検討する。
当該相違点(3)に対する検討は、前記1(1)イで検討した内容と同様である。
したがって、他の相違点を検討するまでも無く、本願発明3は、引用装置発明2及び引用文献1,3ないし9に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ まとめ
本願発明3は,引用文献2及び引用文献1、3ないし9に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)引用文献9を主引例とした場合
ア 本願発明3と引用装置発明9との対比
(ア)引用装置発明9の「高温になる金属材料」は熱源となるから、本願発明3の「熱源」に相当する。
(イ)引用装置発明9の「1つ又は複数の鉄鋼材料からなる集熱板」は、鉄鋼材料が金属製であることから、下記相違点(カ)(1),(2)の点を除いて、本願発明3の「前面が熱源と対向する金属製の受熱部材」の点で一致する。
(ウ)引用装置発明9の「集熱手段の背面に設置された変換手段の一部である多数の熱電素子」は、複数の熱電素子が集積するから、本願発明3の「該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール」に相当する。
(エ)引用装置発明9の「熱電変換手段」は、開閉可能な保熱カバーに設置されることにより、保熱カバーに開閉に応じて、熱源と熱電変換手段の距離は変化するので、下記相違点(カ)(3)の点を除いて、本願発明3の「熱源に対する距離を調整可能とした熱電発電装置」の点で一致する。

そうすると、本願発明3と引用装置発明9とは以下の(オ)の点で一致し、(カ)の点で相違する。

(オ)一致点
前面が熱源と対向する金属製の受熱部材(1)と、該受熱部材(1)の背面に受熱面(20)側を介して接合される1又は2以上の熱電素子モジュール(2)を有する熱電発電装置であって、受熱部材(1)が、熱源に対する距離を調整可能とした熱電発電装置。

(カ)相違点
相違点(1)
本願発明3では、受熱部材(1)が、1又は2以上の熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)の合計の受熱面積[A2]に対して、[A1]≧[A2]×2.3を満足する有効投影面積[A1]を有するのに対して、引用装置発明9は、受熱部材の面積について言及していない点。

相違点(2)
本願発明3では、受熱部材が該フィン(5)を含む受熱部材(1)の前面が黒体塗料で黒体処理されているのに対して、引用装置発明9では、受熱部材の表面処理について言及されず、固定されている点。

相違点(3)
本願発明3では、熱源に対する距離を調整可能とするとともに、発電出力をモニタリングする装置を有し、該装置でモニタリングされた発電出力に応じて熱源に対する距離を調整できるようにしたことを特徴とする熱電発電装置に対して、引用装置発明9では、当該特徴を有しない点。

イ 相違点に対する検討
以下、前記相違点(3)について検討する。
当該相違点(3)に対する検討は、前記1(1)イで検討した内容と同様である。
したがって、他の相違点を検討するまでも無く、本願発明3は、引用装置発明9及び引用文献1ないし8に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ まとめ
本願発明3は,引用文献9及び引用文献1ないし8に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4 本願発明4について
本願発明4は、本願発明3を引用するものであり、本願発明3の発明特定事項を全て含み、かつ「熱電素子モジュール(2)の受熱面(20)は、受熱部材(1)の背面に直接又はシートを介して接合されていること」を追加した構成であるから、本願発明3が引用文献1ないし9に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本願発明4も引用文献1ないし9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
前記第5の1ないし4のとおり,本願発明1ないし4は,引用文献1ないし9に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-30 
出願番号 特願2012-164114(P2012-164114)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今井 聖和田邊 顕人  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 大嶋 洋一
小田 浩
発明の名称 熱電発電装置及び熱電発電方法  
代理人 苫米地 正敏  
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