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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1333904
審判番号 不服2016-9922  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-01 
確定日 2017-10-26 
事件の表示 特願2011- 88698「光学シート及び液晶表示モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年11月12日出願公開,特開2012-220854〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特願2011-88698号(以下,「本件出願」という。)は,平成23年4月12日の特許出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成27年 1月15日付け:拒絶理由通知書
平成27年 3月23日差出:意見書,手続補正書
平成27年 8月14日付け:拒絶理由通知書
平成27年10月26日差出:意見書,手続補正書
平成28年 3月28日付け:補正の却下の決定(平成27年10月26日差出の手続補正書による補正の却下)
平成28年 3月28日付け:拒絶査定
平成28年 7月 1日差出:審判請求書,手続補正書
平成29年 4月27日付け:拒絶理由通知書
平成29年 6月27日差出:意見書,手続補正書

第2 本願発明について
1 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1?請求項3に係る発明は,平成29年6月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項3に記載された事項により特定されるものと認められるところ,その請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下「本願発明」という。)。
「 光学フィルム及びこの光学フィルムの一方の面に積層される光拡散層の2層体からなる光学シートであって,
上記光学フィルムがシクロオレフィンコポリマーを主成分とし,
上記光学フィルムのリタデーション値(Re)の絶対値が5nm以下であり,
上記光学フィルムの平均厚さが10μm以上200μm以下であり,
上記光拡散層がバインダー及びこのバインダー中に分散される光拡散剤を有し,
上記バインダーがポリエステルポリオールを含有するポリマー組成物から形成されている光学シート。」

2 当審の拒絶の理由
平成29年4月27日付け拒絶理由通知書による拒絶の理由の1つは,概略,本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である特開2005-331728号公報(以下「引用例1」という。上記拒絶理由通知書では「引用例4」と表示。)に記載された発明,及び,周知技術に基づいて,本件出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

第3 引用例
1 引用例1の記載
引用例1には,以下の事項が記載されている。なお,下線は,当合議体が付したものであり,引用発明の認定に活用した箇所を示す。
(1)「【請求項1】
実質的に平坦な基材フィルムと,その表層に積層された少なくとも一つの光学機能層からなる光学機能フィルムであって,基材フィルムの張力1.5MPaにおける引張伸長率が100℃において1%以下であって,かつ基材フィルムの面内方向の屈折率が1.55未満であることを特徴とする光学機能フィルム。
・・・(略)・・・
【請求項3】
基材フィルムの光学弾性係数が,5×10^(-12)Pa^(-1)以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学機能フィルム。
【請求項4】
基材フィルムが単一の層構成であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の光学機能フィルム。
・・・(略)・・・
【請求項10】
光学機能層が,球状粒子とバインダー樹脂からなる光拡散層であることを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載の光学機能フィルム。」

(2)「【背景技術】
【0002】
近年,液晶表示装置は,ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニター,カーナビゲーションのモニターやテレビ等として種々の分野で広く使用されてきている。このような用途における液晶表示装置は,基本的に液晶表示素子部とバックライトと呼ばれる面光源ユニットから構成されている。バックライトに対しては長時間駆動のための省電力化,また同じ消費電力においては高輝度化が強く求められている。
【0003】
バックライトは輝度の角度依存性を制御するために支持体上に透明樹脂と粒子からなる光拡散層を設けた光拡散性シート(特許文献1),透明基材上に活性硬化型樹脂組成物からなるプリズム部が形成されたプリズムシート(特許文献2)等の光学機能フィルムが用いられている。また,透明樹脂板上に紫外線硬化性樹脂からなるフレネルレンズを形成した透過スクリーンなどに用いられるレンズシート(特許文献3),表面に微少レンズアレイを多数用いた微少レンズアレイシートを用いることにより視野角が拡大された液晶表示装置(特許文献4)等が用いられている。
【0004】
上記光拡散性シート,プリズムシートレンズシート,レンズアレイシートは,透明基材上に光り機能層を設けた形態をとり,表示装置上で光を透過させて用いるため,光学機能性フィルムを透過した後の表示装置の輝度が高くすることが目標となっている。特許文献1,2,3,4では,光機能層の形態,形状,及び基材フィルムの反対面の表面形態の制御などを行い輝度向上を狙っているが,透明基材としてPET,アクリル系樹脂,ポリカーボネートなどを用いているため,輝度向上効果は不十分であった。
【特許文献1】特開平6-59107号公報(請求項1,3)
【特許文献2】特開平6-67004号公報(請求項2)
【特許文献3】特開平5-158153号公報(請求項3)
【特許文献4】特開平5-249453号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は,上述した従来の光学機能フィルムの問題を解決し,輝度向上効果が大きく,かつ後加工性にも優れた光学機能フィルムを提供することにある。」

(3)「【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため,本発明の光学機能フィルムは下記の構成を有する。
【0007】
すなわち,実質的に平坦な基材フィルムと,その表層に積層された少なくとも一つの光学機能層からなる光学機能フィルムであって,基材フィルムは,張力1.5MPaにおける引張伸長率が100℃において1%以下であって,かつ基材フィルムの面内方向の屈折率が1.55を越えないことを特徴とする光学機能フィルムである。」

(4)「【発明の効果】
【0008】
本発明により,透過光下で用いた場合に輝度の高い光学機能フィルムおよび輝度の高い面光源を提供することができる。」

(5)「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは,光透過性の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる必要があり実質的に平坦な形態を有する必要がある。ここで,実質的に平坦とは,無荷重で静置した際に曲率半径100mm以内のうねりを有しない状態を言う。本発明の基材フィルムの厚みは加工時や組み込み時の取扱い性の面から10?1000μmが好ましく,30?200μmがさらに好ましい。
【0010】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは,張力1.5MPaにおける引張伸長率が100℃において1%以下である必要がある。この値は,初期長さ15mm,幅4mmのサンプルについて,張力1.5MPa下で25℃より20℃/分で昇温した際の100℃における伸長率のことである。100℃における上記の引張伸長率が1%より大きい場合,基材フィルムの耐熱性が不十分となり,コーティング加工における乾燥工程や,蒸着加工,スパッター加工を行ったときにフィルムの平面性が悪化してしまうという問題が発生する。
【0011】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは面内方向の屈折率が1.55を越えない必要がある。ここで面内方向の屈折率が1.55を越えないとは,基材フィルムの長手方向を基準(0度)とし,15度刻みに偏光方向を変えて面内12の方向の屈折率を測定した時に,得られる屈折率の値が全て1.55以下であることをいう。面内方向屈折率の最大値が1.55より大きい場合は,基材フィルムと光学機能層の界面や,基材フィルムの光学機能層と接しない反対側の表面で反射による損失が生じ,光学機能フィルムとしたときに十分な輝度が得られない。また,面内方向の屈折率の下限は限定しないが,一般に樹脂フィルムでは面内屈折率を1.40より小さくすることは困難である。
【0012】
本発明の光学機能フィルムでは,上記基材フィルムの表層に少なくとも一つの光学機能層を設けてある必要がある。ここで光学機能層とは,線状プリズムや球状光拡散層,マイクロレンズアレイ等の透過光を散乱もしくは集光することによって,光学機能フィルムを透過する光の方向を制御する層をいい,コーティングまたはラミネートによって設けることができる。
【0013】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムの光学弾性係数は,5×10^(-12)Pa^(-1)以下であることが好ましく,さらに好ましくは2×10^(-12)Pa^(-1)以下であることが好ましい。光学弾性係数を5×10^(-12)Pa^(-1)以下とすることによって,加工時の張力や他素材と張り合わせて使用するときの張り合わせ素材の膨張/収縮張力によって位相差が発生しにくくなり,その結果方向による輝度ムラが少ない,安定した輝度を示す光学機能フィルムを得ることができる。
【0014】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは,アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン(2-ブタノン)から選ばれる少なくとも2つの有機溶媒に対して耐性を有することが好ましい。ここで有機溶媒に対して耐性を有するとは,基材フィルム上に有機溶媒を0.5ml滴下し,脱脂綿で100g/cm^(2)の圧力をかけて50往復したときに,溶解することによる厚みの減少が10%未満であり,かつ目視で判別可能な白化が起こらないことをいう。上記3種の有機溶媒のうち2つ以上に対して耐性を有しない場合,コーティングに使用できる溶媒種が限定されてしまうため,塗布できる材料にも制約が生じてしまい好ましくない。
【0015】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは,耐熱性や耐溶剤性を向上させる目的で耐熱性や耐溶剤性の高い樹脂を積層して用いることもできるが,単一の層構成であることが好ましく,単一層構成としたときに環境の温度や湿度が変化したときに,平面性の悪化を起こりにくくすることができる。
【0016】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは,複数の層からなる積層フィルムであっても良いが,積層界面での反射による損失をなくす目的から単一の層構成であることが好ましい。単一の層構成とすることにより,積層界面での屈折率差に起因する反射による損失が低減でき,特に高い輝度の光学機能フィルムとすることが出来る。
【0017】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは,伸度が15%以上であることが好ましい。伸度を15%以上とすることで,フィルムの製膜時,連続加工を行うときに工程で割れたり裂けたりする問題の発生を抑制することができる。
【0018】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは,吸水による弾性率低下率Dが20%以下であることが好ましい。ここで,吸水による弾性率低下率Dは,25℃60%Rhで12時間調湿を行った後に25℃60%Rhで測定した弾性率をE1,これを25℃の水中に12時間浸漬した後に測定した弾性率をE2とすると,下記式(2)で算出されるものである。
【0019】
【数1】


【0020】
吸水による弾性率低下率Dが20%以下にすることによって,高湿度下で使用したときの寸法変化による平面性悪化や光学特性の悪化が起こりにくい光学機能性フィルムを得ることができる。
【0021】
本発明の光学機能フィルムでは,基材フィルムと光学機能層の耐湿接着強度指数が90以上であることが好ましい。ここで,耐湿接着強度指数とは,25℃の水中に12時間浸漬した後,水中から取り出し,表面の水分をふき取った上で,25℃60%Rhで12時間調整した上で,光学機能層に1mm間隔,100個(縦横それぞれ10個)のクロスカットを入れ,そのクロスカット面に粘着テープ(ニチバン(株)製CT-24)を貼り,ハンドローラーを用いて5kgの荷重をかけ,10往復した後に粘着テープを90℃の方向に引き剥がし,光学機能層の剥離具合を観察し,100個のクロスカット中で剥離せずに残存した個数を言う。
【0022】
上述のような特性を満足する本発明の光学機能フィルムの基材フィルムを構成する樹脂としては,環状オレフィンポリマーや環状オレフィンとエチレンのコポリマー,トリアセチルセルロース,耐熱アクリル樹脂などを用いることができるが,下記構造式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を10?40重量%含有するアクリル樹脂(A)を好ましく用いることができる。
・・・(略)・・・
【0050】
本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは,レターデーションが5nm以下,すなわち0?5nmであることが好ましく,より好ましい範囲は2nm以下である。レターデーションを5nm以下とすることで,輝度ムラの発生を抑えることができる。
【0051】
本発明の光学機能フィルムの光学機能層としては,線状プリズム,光拡散層,線状レンズ,マイクロレンズアレイ等があげられる。
・・・(略)・・・
【0056】
光学機能層が光拡散層である場合,光拡散層は球状粒子とバインダー樹脂からなることが好ましい。光拡散層に用いる球状粒子としては酸化ジルコニウム,炭酸カルシウム,硫酸バリウム,酸化チタン,タルク,シリカ等の無機粒子,シリコーン樹脂粒子,アクリル樹脂粒子,ナイロン樹脂粒子,スチレン樹脂粒子,ポリエチレン粒子,ウレタン樹脂粒子などがあげられるが,好ましい光拡散性を得るためには酸化ジルコニウム粒子およびシリコーン樹脂粒子が,中でもケイ素原子に有機基が直結し,残りの結合が酸素と直結しており,ケイ素原子と酸素が繰り返すシロキサン結合でポリマーとなったシリコーン樹脂粒子が,バインダー樹脂中の分散性に優れ,均一な光拡散性が得られるため好ましい。」

(6)「【実施例】
【0104】
以下,実施例により本発明の構成,効果を説明する。
(物性の測定法)
1.引張伸長率
光学機能フィルムから剥離した基材フィルム長手方向にサンプリングした,長さ15mm,幅4mm(把持部分を除く)のサンプルを用いた。また,熱機械分析装置(TMA)として真空理工(株)社製熱分析ステーション(MTS-9000),試料測定モジュールとして同社製TM-9400を用いた。測定サンプルに1.5MPaの引張荷重をかけながら25℃から20℃/分の昇温速度で昇温し,100℃まで昇温した際の変形量を求めた。測定は異なるサンプルについて10回以上行い,平均値を用いた。
【0105】
2.面内屈折率,面内平均屈折率差
光学機能フィルムから剥離した基材フィルムおよび光学機能層について,それぞれの剥離面の屈折率を,偏光板付き接眼鏡を有する(株)アタゴ製アッベ屈折計NAR-1Tを用いて測定した。測定は光学機能フィルムの長手方向を基準とし,15゜間隔で12方向の屈折率を測定し,最大値と平均値,および基材フィルムと光学機能層の面内平均屈折率の差を求めた。測定は異なるサンプルについて5回以上行い,平均値については全ての測定値の平均値を,最高値については全ての測定値の最高値を用いた。
・・・(略)・・・
【0126】
【表1】



2 引用発明
引用例1には,請求項10に係る発明(請求項1,請求項3及び請求項4に記載された発明特定事項を具備するもの)として,以下の発明が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「実質的に平坦な基材フィルムと,その表層に積層された少なくとも一つの光学機能層からなる光学機能フィルムであって,基材フィルムの張力1.5MPaにおける引張伸長率が100℃において1%以下であって,かつ基材フィルムの面内方向の屈折率が1.55未満であり,
基材フィルムの光学弾性係数が,5×10^(-12)Pa^(-1)以下であり,
基材フィルムが単一の層構成であり,
光学機能層が,球状粒子とバインダー樹脂からなる光拡散層である,
光学機能フィルム。」

第4 対比
1 本願発明と引用発明とを比較すると,以下のとおりとなる。
(1)光拡散層
引用発明の「光学機能層」は,「球状粒子とバインダー樹脂からなる光拡散層である」。また,光学的にみて,引用発明の「球状粒子」は,光を拡散させる機能を具備する部材ということができ,引用発明の「バインダー樹脂」は,球状粒子を結着させ層となす機能を具備する部材といえる(引用例1の段落【0056】の記載からも確認できる事項である。)。
そうしてみると,引用発明の「バインダー樹脂」,「球状粒子」及び「光拡散層」は,それぞれ本願発明の「バインダー」,「光拡散剤」及び「光拡散層」に相当する。また,引用発明の「光拡散層」は,本願発明の「光拡散層」の「バインダー及びこのバインダー中に分散される光拡散剤を有し」の要件を満たす。

(2)基材フィルム及び基材シート
本願発明の「光学シート」は,「光学フィルム及びこの光学フィルムの一方の面に積層される光拡散層の2層体からなる」ものである。これに対して,引用発明の「光学機能フィルム」も「実質的に平坦な基材フィルムと,その表層に積層された少なくとも一つの光学機能層からなる」ものである。
本願発明と引用発明の各層の対応関係,及び引用発明の「光学機能層」すなわち「光拡散層」が本願発明の「光拡散層」に相当することを勘案すると,引用発明の「基材フィルム」及び「光学機能フィルム」は,それぞれ本願発明の「光学フィルム」及び「光学シート」に相当する。また,引用発明の「光学機能フィルム」と本願発明の「光学シート」は,「光学フィルム及びこの光学フィルムの一方の面に積層される光拡散層」を有する点で共通する。

2 一致点及び相違点
(1)一致点
上記1を踏まえると,本願発明と引用発明は,次の構成で一致する。
「 光学フィルム及びこの光学フィルムの一方の面に積層される光拡散層を有する光学シートであって,
上記光拡散層がバインダー及びこのバインダー中に分散される光拡散剤を有する光学シート。」

(2)相違点
本願発明と引用発明とは,以下の点で相違する,あるいは,一応相違する。
(相違点1)
本願発明は,「2層体からなる光学シート」であるのに対して,引用発明は,「基材フィルム」は「単一の層構成であ」るが,「光学機能層」の層数は特定されてなく,全体として「2層体」であるとは特定されていない点。

(相違点2)
本願発明は,「上記光学フィルムがシクロオレフィンコポリマーを主成分とし,上記光学フィルムのリタデーション値(Re)の絶対値が5nm以下であり,上記光学フィルムの平均厚さが10μm以上200μm以下であ」るのに対して,引用発明は,「基材フィルム」の成分,リタデーション値(Re)及び平均厚さが特定されていない点。

(相違点3)
本願発明は,「上記バインダーがポリエステルポリオールを含有するポリマー組成物から形成されている」のに対して,引用発明は,「バインダー樹脂」の組成が特定されていない点。

第5 判断
1 相違点1について判断する。
引用発明の「光学機能フィルム」は,「少なくとも一つの光学機能層」を有するものである。そうしてみると,引用発明には,「光学機能層」を一層のみ有する「光学機能フィルム」,すなわち,全体として,単一の「基材フィルム」及び単一の「光学機能層」の2層体である「光学機能フィルム」も,含まれているものと解される。
したがって,相違点1は実質的な相違点ではない。

2 相違点2について判断する。
(1)リタデーション値(Re)について
引用例1の段落【0050】には,輝度ムラの発生を抑えるために,「本発明の光学機能フィルムの基材フィルムは,レターデーションが5nm以下,すなわち0?5nmであることが好ましく,より好ましい範囲は2nm以下である。」と記載されている。

(2)平均厚さについて
引用例1の段落【0009】には,「本発明の基材フィルムの厚みは加工時や組み込み時の取扱い性の面から10?1000μmが好ましく,30?200μmがさらに好ましい。」と記載されている。

(3)組成について
引用発明の「基材フィルム」は,「光学弾性係数が,5×10^(-12)Pa^(-1)以下であ」るところ,引用例1の段落【0022】には,引用発明の特性を満足する基材フィルムを構成する樹脂として,「環状オレフィンとエチレンのコポリマー」が挙げられている。
また,本件出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である,特開2008-233533号公報(以下「引用例2」という(平成29年4月27日付け拒絶理由通知書では「引用例1」と表示。)。段落【0008】?【0010】,【0049】,【0052】,【0094】等を参照。)及び特開2007-148099号公報(以下「引用例3」という。段落【0144】?【0147】,【0169】,【0173】等を参照。)に記載されるように,光学弾性係数及び位相差が小さい樹脂として,シクロオレフィンコポリマーを主成分とする組成物を光学フィルムに用いることは,周知の技術である(以下「周知技術1」という。)。

(4)以上(1)?(3)の事項を踏まえると,引用発明の「基材フィルム」として,相違点2に係る本願発明の構成を具備したものを採用することは,引用例1の示唆及び周知技術に従う当業者における通常の相違工夫の範囲内の事項である。
なお,上記周知技術1の組成物からなるフィルムがリタデーション等の各光学特性を満たすことについて,必要ならば,引用例2の段落【0094】の【表1】の実施例1,2及び4,引用例3の段落【0173】の【表2】の参考例4を参照されたい。

3 相違点3について
本件出願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である,特開2006-26973号公報(以下「引用例4」という。段落【0006】,【0025】?【0026】,【0060】?【0061】,【0066】?【0068】,【0074】?【0075】等を参照。),特開2004-4598号公報(以下「引用例5」という。段落【0005】,【0010】?【0011】,【0021】,【0032】?【0033】,【0063】等を参照。),及び国際公開第2006/134893号(以下「引用例6」という。段落[0235]?[0238],[0240],[0245]?[0247],[0253]?[0254]等を参照。)に記載されるように,液晶表示装置のバックライトに使用される光拡散シートにおける,バインダー及び光拡散剤からなる光拡散層に関して,当該バインダーを構成する樹脂として,ポリエステルポリオールを含有するポリマー組成物を用いることにより,優れた透明性,耐候性,加工性や,黄変の防止といった特性が得られることは,周知の技術である(以下「周知技術2」という。)。
引用発明は,液晶表示装置のバックライトユニットに用いられる光拡散シートに関して,輝度を向上させることを課題としている(引用例1の段落【0003】?【0005】を参照。)。一方,上記周知技術2も,バックライトユニットに用いられる光拡散シートに関する技術であり,その透明性や黄変防止という効果は,当該シートを通過する光の輝度低下を防止するのに資するものである。そうしてみると,引用発明において,輝度をより向上させるために,上記周知技術2を参考にして,光拡散層のバインダー樹脂を選択することは,当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって,引用発明において,周知技術2を適用して,相違点3に係る本願発明の構成を具備させることは,当業者が容易にできたことである。

4 発明の効果について
本願発明の効果について,本件出願の明細書の段落【0016】には,「本発明の光学フィルム及び光学シートは,外力によって生じる位相差の変化を抑制し,光学的均一性を向上させることができる。」と記載されている。また,段落【0088】?【0092】には,実施例の光学シートを用いた液晶表示装置について,点灯試験後の歪みや表示画面の変化が認められなかったことが記載されている。当該効果は,段落【0009】?【0010】の記載を踏まえれば,光学フィルムの主成分を,光弾性係数が小さい樹脂で形成したことに起因するものと解される。そうすると,当該効果は「基材フィルムの光学弾性係数が,5×10^(-12)Pa^(-1)以下である」引用発明も備える効果である。
また,本件出願の明細書の段落【0012】には,「透過光線の偏光方向の変換作用を抑制することができ,また画像の歪み等の弊害を抑制することができる。」と記載されている。同段落によれば,当該効果は,リタデーション値(Re)の絶対値を小さくすることに起因するものと解される。そうすると,当該効果は,上記2(1)に記したように,引用例1の記載の示唆に基づいて当業者が容易に推考し得た,リタデーション値(Re)が5nm以下の基材フィルムを有する引用発明も備える効果である。
また,本願発明が有するとされる以上の効果が,上述以外の作用機序によるものであったとしても,同様である。すなわち,当該効果は,本願発明の光学シートのうち光学フィルムが有する効果であると解されるから(段落【0012】,【0016】),光学フィルムの材料として選択されたシクロオレフィンコポリマーの特性に起因するものといえる。そうしてみると,上記2(3)に記したように,引用発明と周知技術1に基づいて当業者が容易に推考し得た光学機能フィルムであれば,当該効果を有するものと解される。
したがって,本願発明が有する効果は,引用発明,周知技術1又は周知技術2が有する効果であるから,当業者であれば予測し得た範囲のものである。

5 請求人の主張について
平成29年6月27日付け意見書において請求人は,本願発明の「バインダーがポリエステルポリオールを含有するポリマー組成物から形成されている」という構成要件は,引用文献に開示されてなく,また,当該構成要件による「優れた透明性及び耐光性」という効果を主張する。
しかし,上記3に記したように,引用発明において,上記構成要件を具備することは,周知技術2に基づいて,当業者が容易にできたことである。そして,当該構成要件による上記効果も,上記3に記したように周知である(引用例4の段落【0074】,引用例5の段落【0032】,引用例6の段落[0253]を参照。)。

第6 まとめ
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法29条2項の規定により特
許を受けることができない。したがって,他の請求項に係る発明について審理するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-25 
結審通知日 2017-08-29 
審決日 2017-09-11 
出願番号 特願2011-88698(P2011-88698)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 薄井 義明池田 博一  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
佐藤 秀樹
発明の名称 光学シート及び液晶表示モジュール  
代理人 天野 一規  
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