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審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  A61K
審判 一部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1333924
審判番号 無効2015-800026  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-02-13 
確定日 2017-11-08 
事件の表示 上記当事者間の特許第5046756号発明「分散組成物及びスキンケア用化粧料並びに分散組成物の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判に係る特許(以下、「本件特許」という。)は、平成19年6月27日に特許出願(特願2007-169635号。以下、「本件出願」という。)がされ、平成24年7月27日に設定登録(特許第5046756号、発明の名称「分散組成物及びスキンケア用化粧料並びに分散組成物の製造方法」(請求項数8)。以下、その特許請求の範囲及び明細書を、それぞれ「本件特許請求の範囲」及び「本件特許明細書」という。)がされたものである。
そして、平成27年2月13日に、株式会社ディーエイチシー(以下、「請求人」という。)から、本件特許請求の範囲の請求項1ないし4に係る発明を無効とすることについて本件審判の請求がされた。
本件審判のその後の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成27年 5月 1日 答弁書提出(被請求人)
同年 9月25日付け 審理事項通知書(当審)
同年10月26日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
同年 同月 同日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年11月 9日 第1回口頭審理(非公開)
同年11月24日 上申書提出(被請求人)
同年11月25日 上申書提出(請求人)

第2 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、本件無効審判請求にかかる請求項1?4に記載された発明(以下、「本件特許発明1?4」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
(a)アスタキサンチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質又はその誘導体を含むエマルジョン粒子;
(b)リン酸アスコルビルマグネシウム、及びリン酸アスコルビルナトリウムから選ばれる少なくとも1種のアスコルビン酸誘導体;並びに
(c)pH調整剤
を含有する、pHが5.0?7.5のスキンケア用化粧料。
【請求項2】
前記リン脂質又はその誘導体がレシチンである、請求項1に記載のスキンケア用化粧料。
【請求項3】
更にトコフェロールを含む、請求項1又は請求項2に記載のスキンケア用化粧料。
【請求項4】
更にグリセリンを含む、請求項1?請求項3のいずれか1項記載のスキンケア用化粧料。」

第3 請求人の主張の概要及び証拠方法
1 無効理由の概要
請求人は、平成27年2月13日に請求の趣旨を「『特許第5046756号の特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする。』との審決を求める。」とする本件無効審判を請求し、概略以下の無効理由1?4を主張した。
(1)無効理由1
本件特許の請求項1ないし4に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。
(2)無効理由2
本件特許の請求項1ないし4に係る各発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証並びに甲第3号証の1?6及び甲第4号証の1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。
(3)無効理由3
本件特許の請求項1ないし4に係る各発明は、甲第5号証並びに甲第6号証、甲第7号証の1?6及び甲第4号証の1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。
(4)無効理由4
本件特許の請求項1ないし4に係る各発明は、甲第9号証並びに甲第6号証、甲第7号証の1?6及び甲第4号証の1?2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当する。

2 証拠方法
請求人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番を含む)を提出した。なお、甲第9号証については、平成27年11月9日に開催された第1回口頭審理において、請求人の申立てにより、1頁目のみを甲第9号証の1、その他を甲第9号証の2と訂正された。
[平成27年2月13日付け審判請求書に添付]
甲第1号証:2007年1月15日に発売された「エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」に関する有限会社 久光工房のウェブページ(2007年6月14日)
甲第2号証:「エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」に関する富士フイルム株式会社のニュースリリースウェブページ(平成18年12月22日)
甲第3号証の1:「新化粧品学 2版1刷」光井武夫編(南山堂)、2001年1月18日発行、第357頁
甲第3号証の2:特開平9-52814号公報
甲第3号証の3:特開2004-67587号公報
甲第3号証の4:特開2004-189693号公報
甲第3号証の5:特開2006-111542号公報
甲第3号証の6:特開平10-194960号公報
甲第4号証の1:光井武夫編、「新化粧品学 2版3刷」、南山堂、2004年11月15日発行、第221頁
甲第4号証の2:日本化粧品技術者会編、「化粧品事典」、丸善、平成17年4月25日発行、第226?228頁「16 化粧品の品質、16.1 安定性」
甲第5号証:「アスタキサンチン ver.1.0 SM」カタログ(オリザ油化株式会社)、2006年5月25日制定 「製品名:アスタキサンチン-LSC1、化粧品」
甲第6号証:「富士フイルム研究報告No.52-2007」、平成19年5月16日に国会図書館受入、同年6月1日より利用提供開始、第26?29頁「アスタキサンチンナノ乳化物の開発-安定性向上と吸収効率向上」及び第30?33頁「アスタキサンチン含有化粧品の開発」
甲第7号証の1:特開2006-160687号公報
甲第7号証の2:特開平8-224458号公報
甲第7号証の3:特開2003-342117号公報
甲第7号証の4:特開2005-112770号公報
甲第7号証の5:特開2003-12458号公報
甲第7号証の6:特開2002-275029号公報
甲第8号証:「アスタキサンチン ver.2.2 SJ」カタログ(オリザ油化株式会社)(甲第5号証の規格書フォーマットを変更した改訂版)、2012年9月13日改訂
甲第9号証の1:バイオジェニック株式会社販売の「Astabio AW0.5」製品のラベル(2006年9月製造)
甲第9号証の2:「Astabio」のパンフレット(バイオジェニック株式会社)、2007年5月10日
甲第10号証:「第8版 食品添加物公定書」(厚生労働省)、平成19年3月、第321?322頁
[平成27年10月26日付け口頭審理陳述要領書に添付]
甲第11号証の1:R. Austria, A. Semenzato, A. Bettero、"Stability of vitamin C derivatives in solution and topical formulations"、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis、15、1997年、第795?801頁
甲第11号証の2:甲第11号証の1の抄訳
甲第12号証:特開2004-10612号公報
甲第13号証の1:株式会社シー・シー・メディコの「Chilled for skin(チルド フォー スキン)」に関するウェブページ(2005年7月12日)
甲第13号証の2:「VC-PMGローション」、「レチノイン酸クリーム」、「ハイドロキノン軟膏」に関するくろだ皮膚科クリニックのウェブページ(2004年2月10日)
甲第13号証の3:「植物性プラセンタ100%原液 EX100」に関するEBiSのウェブページ(2005年12月10日)
甲第13号証の4:「ラヴィタエ ダマスク ローズウォーター」に関するハースのウェブページ(2006年9月2日)
甲第13号証の5:「クトロVC5ローション」に関するコスメドのウェブページ(2003年6月1日)
甲第14号証の1:甲第5号証に関する「報告書」オリザ油化株式会社 平成27年10月22日
甲第14号証の2:甲第5号証に関する「報告書」バイオジェニック株式会社 平成27年10月6日

(なお、以下において、「甲第1号証」?「甲第14号証」を「甲1」?「甲14」と略記する。)

第4 被請求人の主張の概要及び証拠方法
1 主張の概要
被請求人は、平成27年5月1日付けで答弁の趣旨を「本件審判の請求は成り立たない 審判費用は請求人の負担とする との審決を求める。」とする答弁書を提出し、請求人が主張する無効理由はいずれも理由がない旨の反論をした。

2 証拠方法
被請求人は、証拠方法として乙第1ないし27号証を提出した。
[平成27年5月1日付け答弁書に添付]
乙第1号証:●(省略)●
乙第2号証:富士フイルム株式会社 R&D統括本部 技術戦略部 統括マネージャー 中村義貞の平成27年4月27日付け「陳述書」
乙第3号証:特開2002-348275号公報
乙第4号証:特開平7-300421号公報
乙第5号証:特開2005-2175号公報
乙第6号証:田川正人他、「リン酸L-アスコルビルマグネシウムの化粧品への応用」、日本化粧品技術者会誌、第23巻第3号、1989年、第200?206頁
乙第7号証:高橋和彦他、「リン酸L-アスコルビルマグネシウムを含有するレシチンゾル」、日本化粧品技術者会誌、第24巻第1号、1990年、第27?30頁
乙第8号証:特開平3-63208号公報
乙第9号証:特許第5527810号公報
乙第10号証:特許第4926354号公報
乙第11号証:特許第4141709号公報
乙第12号証:本件特許出願の審査過程での平成24年6月7日付け意見書
乙第13号証:平成27年4月28日付け実験成績証明書
乙第14号証:●(省略)●
乙第15号証:●(省略)●
乙第16号証:●(省略)●
乙第17号証:●(省略)●
乙第18号証:平成27年4月28日付け実験成績証明書
[平成27年10月26日付け口頭審理陳述要領書に添付]
乙第19号証:鈴木正人監修、「有用性化粧品の処方とその活用」、シーエムシー出版、2010年8月20日発行、第106?109頁
乙第20号証:村橋俊一他監訳、「ボルハルト ショアー 現代有機化学(第4版)〔上〕」第4版第2刷、化学同人、2004年9月30日発行、第58?65頁
乙第21号証:「化粧品・医薬部外品 製造販売ガイドブック 2006」第2刷、薬事日報社、2006年6月1日発行、第138?141頁
乙第22号証:●(省略)●
乙第23号証:「en effet[アンネフェ] 9月号」 No.1、富士フイルム株式会社、2007年9月1日発行
乙第24号証:●(省略)●
乙第25号証:富士フイルム株式会社 R&D統括本部 医薬品・ヘルスケア研究所 研究マネージャー 久保利昭の平成27年10月22日付け「陳述書」
乙第26号証:平成27年10月22日付け実験成績証明書
乙第27号証:乙第26号証に記載の測定値に対応する分光光度計での測定結果(CD-ROM)

(なお、以下において、「乙第1号証」?「乙第27号証」を「乙1」?「乙27」と略記する。)

第5 当審の判断
当審は、上記無効理由1?4は、以下のとおり、いずれも理由がないものと判断する。

1 甲1?甲14の2の記載事項
無効理由1?4は、甲1?甲14の2のいずれかに記載された技術的事項等に基づく無効理由であることに鑑み、まず、甲1?甲14の2の記載事項を摘示する。
ア 甲1
「商品名 エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス
販売元 フジフイルム
発売日 2007/01/15
分類 ジェル・美容液
全成分リスト
1.水
2.グリセリン
3.BG
4.ペンチレングリコール
5.クエン酸
6.リン酸アスコルビルMg
7.PEG-60水添ヒマシ油
8.ベタイン
9.グリコシルトレハロース
10.水酸化Na
11.キサンタンガム
12.加水分解水添デンプン
13.メチルパラベン
14.アルギニン
15.プルラン
16.トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル
17.オレイン酸ポリグリセリル-10
18.ヘマトコッカスプルビアリス油
19.ステアリン酸スクロース
20.トコフェロール
21.レシチン
22.エチドロン酸4Na
23.アセチルヒドロキシプロリン
24.ダマスクバラ花油
25.加水分解バレイショタンパク
26.PCA-Na
27.グルコシルルチン
28.ニンジン根エキス
29.フェノキシエタノール
30.コメヌカスフィンゴ糖脂質
31.水添レシチン
32.オクラエキス
33.エチルパラベン
34.リゾレシチン
35.プロピルパラベン」
イ 甲2
「「エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」新発売
平成18年12月6日
富士フイルム株式会社
富士フイルム株式会社…はこのたび、今注目されている赤い天然色素『アスタキサンチン』を配合した真浸透美容液「エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」を平成19年1月15日より発売いたします。

私たちは、ナノ粒子化した『アスタキサンチン』の表面を、壊れにくいシャボン玉のような薄くやわらかな膜で包むことで、粒子どうしが結合して大きくなるのを防ぐ=浸透しやすい形状を保つことに成功しました。「エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」の透明な美しさは、従来のテクノロジーでは濁りがあった『アスタキサンチン』液を見事にナノ化した成果なのです。これにより極小の粒子が素肌の奥まで素早く、しかもしっかり浸透し、内側からふっくら生まれ変るかのような明るいハリ肌を導き出します。」
ウ 甲3の1
「pHは弱アルカリ?弱酸性が主流であるが,最近は皮膚表面のpHに近い5.5?6.5程度に調整された化粧水が多い.」(第357頁)
エ 甲3の2
「【0009】本発明の実施の態様は、化粧水、美溶液などの水系の可溶化型皮膚化粧料、乳液などの乳化型皮膚化粧料であり、特に酸性の可溶化型皮膚化粧料が好適で、これら化粧料の場合、pHは3?7であり、特にpH4?6で好ましい。このpHとするためにクエン酸、コハク酸、リン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸などの有機酸あるいは無機酸の少なくとも1種以上を用いてpHを調整する。」
オ 甲3の3
「【0016】

本発明の化粧料のpHは3.0?9.0が好ましく、4.5?6.5がより好ましい。pHが上記の範囲内であれば、使用時に皮膚の赤変が生じたり、刺激を感じる恐れがない。このようなpHの調整は上記電解質の組成を適宜選択することで実施することができる。」
カ 甲3の4
「【0036】
本発明の化粧料のpHは、特に制限されないが、皮膚に直接塗布する化粧料として用いる場合には、皮膚刺激性が低いという点から4?7が好ましい。pHを調整するために化粧料に一般的に使用する有機酸、無機酸、及びそれらの塩を含有させることができる。例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのヒドロキシカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、アコニット酸などの多価カルボン酸;リン酸、炭酸、塩酸等を用いることができる。」
キ 甲3の5
「【0014】
また、本発明に用いられる中和剤の含有量は、最終生成物のpHが4?9になるように調整するのが好ましく、更に好ましくはpH6?8である。」
ク 甲3の6
「【0023】なお、得られた分解物を含む溶液は、皮膚への安全性の点からpH4?8に調整されることが好ましい。」
ケ 甲4の1
「8-2-1.配合薬剤の品質保証
…基剤中での薬剤の安定化には,同時に配合する成分の影響を,pH,温度,光,配合禁忌面からいち早く把握しておくことが重要である.
不安定な薬剤の安定化には,酸素を断つ方法や酸化防止剤の配合,pH調整剤,金属イオン封鎖剤の配合や最適配合量の水準,不純物質の除去,生産プロセスにおける温度安定性の工夫,たとえば低温乳化や後添加混合など,さらには原料レベルでの安定な保管(冷暗所保管)などが重要なことである.」(第221頁)
コ 甲4の2
「16 化粧品の品質

16.1.2 薬剤の安定性
…ここでは薬剤の安定化のための一般的な方法を述べるが,それらの方法はかならずしもすべての薬剤にあてはまるわけではなく,場合によってはまったく効果がない場合もあるため,実際には各化粧品はそれぞれ独自の方法で安定化をはかっていることが多い.

○2(注:原文は○囲い文字であるが、このように表す。以下同様。)配合基剤,処方の検討:たとえば加水分解を避けるためにpHを精密にコントロールできるような処方…を用いたり,…することが行われている.

○2においては,不安定な薬剤の安定化のために種々の添加剤を用いることが多い.主として用いられるのが…pH調整剤…である」(第226?228頁)
サ 甲5
「アスタキサンチン-LSC1
(水溶性液体,化粧品用途)」(表紙)
「アスタキサンチンについてはさまざまな研究がされており,…シミやシワの改善作用があることが報告されており,美容素材としても注目されています。
オリザ油化(株)では,アスタキサンチンをヘマトコッカス藻から高濃度に抽出することに成功し,油状タイプ,粉末タイプ,水溶性乳化タイプなど様々なラインアップを準備致しました。健康,美容素材としてサプリメントや化粧品などにぜひお使い頂ければと思います。」(第2頁)
「9.美容作用

別の試験で…アスタキサンチンの塗布に対する皮膚の光老化抑制効果を調べた報告があります。…アスタキサンチンは食べても,塗っても,しわの形成及び皮膚の弾力性の低下に対して改善効果があることがわかっています。」(第13?14頁)
「15.荷姿

アスタキサンチン-LSC1(乳化液,化粧品用途)
1kg,5kg 内装:ブリキ缶(内面;エポキシ樹脂コート)
外装:ダンボール包装
その他:窒素充填」(第19?20頁)
「製品規格書
製品名
アスタキサンチン-LSC1
化粧品
本品は,Haematococcus Pluvialis微細藻類から抽出,精製して得られたものを乳化させた水溶性の液体である。本品は定量するとき,アスタキサンチンを1.0%以上含む。

アスタキサンチン含量 1.0%以上…

組 成 成 分 含有量
ヘマトコッカス藻抽出物 5.3%
抽出トコフェロール 1.0%
植物油脂
グリセリン脂肪酸エステル
レシチン 93.7%
グリセリン

合 計 100%」
(注:原文では、含有量「93.7%」は、植物油脂、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、グリセリン、水の合計の含有量を示す。)(第28頁)
「制定日 2006年5月25日」(奥付)
シ 甲6
「5.アスタキサンチンナノ分散物の安定性
アスタキサンチンナノ分散物に,化粧品原料として求められる経時安定性を付与するために,アスタキサンチンの安定化剤の探索を行なった。化粧品原料として使用可能な原材料より,安定剤を探索した結果,アスコルビン酸類がアスタキサンチンの安定性を改善させることが明らかになった。さらに,化粧品原料として使用されている,アスコルビン酸誘導体類をアスタキサンチンナノ分散物に添加,40℃,50℃における,ナノ分散物中のアスタキサンチンの安定性を調べた。その結果,リン酸アスコルビルマグネシウム(以下,APM)の添加が有効であることがわかり,APMを含有した分散物を作製した…。
6.アスタキサンチン分散物含有化粧品の作製
安定化されたアスタキサンチン分散物を配合した,アスタキサンチン化粧水を試作した。油性のアスタキサンチンを含有しているが,ナノ分散化されているため,透明性を維持することに成功している…。」(第32?33頁)
ス 甲7の1
「【0023】
本発明の好ましい態様において配合される成分(C)の界面活性剤は補助乳化剤として使用することができる。…
【0025】
本発明の好ましい態様において配合される成分(C)のノニオン界面活性剤としては、アルキルポリグルコシド、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル…等が挙げられる。…」
セ 甲7の2
「【0002】
【従来の技術】…従来、非イオン性乳化剤としては、高級アルコールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル等のグリセリンエステル類、ソルビタン脂肪酸エステル等の糖アルコールエステル類、ショ糖脂肪酸エステルやマルトース脂肪酸エステル等のオリゴ糖エステル類など、多くのものが知られている。しかしながら、これらの乳化剤は、その油分を水性液体に乳化させる乳化力において未だ十分ではなく、各種添加剤或いは他の界面活性剤と併用してその乳化力を改善しているのが現状である。一方、人体に対する安全性の高い非イオン性乳化剤として、各種のグリコシドが知られている…。しかしながら、これらのグリコシドも、前記した非イオン性乳化剤と同様に、油分の乳化性に劣るという欠点を有している。」
ソ 甲7の3
「【0046】乳化剤として、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンにより変性されたオルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキル基およびアルキル基を有する変性されたオルガノポリシロキサン、脂肪アルコール、特に有利にアルキルエーテルカルボン酸およびその塩、アルキルスルフェート、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンにより変性されたオルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキル基基およびアルキル基を有する変性されたオルガノポリシロキサン、脂肪アルコールが有利である。」
タ 甲7の4
「【0022】

これらのうち、本発明においては、乳化組成物を構成する他の物質との関係から非イオン界面活性剤が好ましい。具体的には、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。これらの非イオン性界面活性剤のうち、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、まつ毛の束付きを抑え、使用時に生じるダマを低減するなどの効果の観点から、特にショ糖脂肪酸エステルが好ましい。」
チ 甲7の5
「【0027】…非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル類、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン類等が挙げられる。」
ツ 甲7の6
「【0033】HLB7以下の乳化剤としては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタントリステアレートなどのソルビタン脂肪酸エステル類;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレートなどのグリセリン脂肪酸エステル類;POE(5)硬化ヒマシ油、POE(7.5)硬化ヒマシ油、POE(10)硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ジメチコンコポリオール、セチルジメチコンコポリオール、ジメチコンコポリオールクロスポリマーなどのポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤;ポリオキシアルキレン化グリコール脂肪酸エステル系界面活性剤;ポリグリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤;多価アルコールのポリヒドロキシステアリン酸エステル、ポリヒドロキシステアリルポリグリセリンや、ポリオキシエチレン化鎖および/またはポリオキシプロピレン化鎖を含む架橋型オルガノポリシロキサンエラストマーなどが挙げられる。」
テ 甲8
「製品規格書
製品名
アスタキサンチン-LSC1
化粧品
本品は,Haematococcus Pluvialis微細藻類から抽出,精製して得られたものを乳化させた水溶性の液体である。本品は定量するとき,アスタキサンチンを1.0%以上含む。

組 成 成 分 含有量
グリセリン 45.0%
水 19.7%
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 11.0%
オレイン酸ポリグリセリル-10 11.0%
ヘマトコッカスプルビアリスエキスおよび
アスタキサンチン 5.3%
ステアリン酸ポリグリセリル-10 4.0%
リゾレシチン 3.0%
トコフェロール 1.0%
合 計 100.0%」
(第28頁)
「今回の変更箇所: 規格書フォーマット変更(p21-28)
制定日 2006年5月25日
改訂日 2012年9月13日」(奥付)
ト 甲9の1
「Astabio
アスタビオ
AW0.5
品名 食品添加物「ヘマトコッカス藻色素製剤」

成分及び重量%
ヘマトコッカス藻色素-5.5%、グリセリン-63%、
ショ糖脂肪酸エステル-6%、グリセリン脂肪酸エステル-4%、
抽出トコフェロール-2%、酵素分解レシチン(大豆由来)-0.5%、
ローズマリー抽出物-0.01%、食品素材及び水-2.99%、
水-16%
製造年月 2006年9月

品質保証期限 製造後6ヶ月…
使用上の注意

本品は乳化製剤ですので食品に対する添加方法、混合する製剤との相性に留意してください。」
ナ 甲9の2
「…アスタキサンチン水溶液
…Astabio AW0.5」(第3頁)
「アスタキサンチンの生産
…「アスタキサンチン」を含有する微細藻類「ヘマトコッカス藻」の…
こうして、自社工場で培養したヘマトコッカス乾燥バイオマスを、日本国内で細胞壁破壊、エタノール抽出の工程を経て、高品質アスタキサンチンオイル製品…に加工し、…化粧品等の分野へと、たしかな素材を提供致します。」(第5頁)
「Printed in Japan/2007.05.10NiC」(第6頁)
ニ 甲10
「グリセリン脂肪酸エステル
Glycerol Esters of Fatty Acids
定義 本品は,脂肪酸とグリセリン又はポリグリセリンのエステル及びその誘導体である。本品には,グリセリン脂肪酸エステル,…ポリグリセリン脂肪酸エステル…がある。」
ヌ 甲11の1(甲11の2の訳文による)
「標準溶液及び局所的処方物の両方におけるアスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル及びリン酸アスコルビルマグネシウム(VC-PMG(R))の安定性を、適切な水性-有機的溶媒混合物による試料希釈後の直接RP-HPLC分析により調査した。」(第795頁概要第1?3行)
「種々のpHでのVC-PMG(1%w/v)溶液が調製され、そして、時間に対する濃度損失が、室温で2ヶ月の保存後に測定された。
図4に示されるとおり,我々のデータは、強酸性条件(pH3?4)におけるこの分子の高い不安定性を確認するが、pH5?8.5の範囲においてリン酸基の加水分解はより低いことを示している(損失<10%)。」(第798頁右欄第4?12行)
「最後に、pHによるVC-PMGの安定性研究は、VC-PMGが化粧料試料中において中性又は弱酸性のpHにおいても使用できることを示した。」(第798頁右欄第28?30行)
ネ 甲12
「【0002】
【従来の技術】
従来、リン酸L-アスコルビルマグネシウムやテトライソパルミチン酸L-アスコルビル等は、優れた美白効果を有するため、特に美白用の化粧料に汎用されている。
しかし、リン酸L-アスコルビルマグネシウム等の水溶性ビタミンC誘導体は、水溶性であり、油中水型乳化物として使用すると塗布時の感触が重くなってしまうため、従来より、主に化粧水や水中油型乳化物に配合されていた。また、該リン酸L-アスコルビルマグネシウムは、安定なpH領域が通常6以上であるため、pHが6未満では定量値が経日的に低下してしまうという性質を有している。…」
ノ 甲13の1
「株式会社シー・シー・メディコ…は、8月1日よりチルド配送・冷蔵庫保管を前提にした生ものの基礎化粧品『Chilled for skin (チルド フォー スキン)』(以下、チルド化粧品)のサンプル出荷を開始致します。
◆チルド化粧品とは
原料生産から商品パッケージまで一貫し、質に大きな影響を及ぼす[酸素][温度][時間][光]を、新開発のCCMパッケージ(特許申請済)で制御し、生鮮食料品並みの鮮度で化粧品を流通させるという画期的な基礎化粧品です。」
ハ 甲13の2
「○5 VC-PMGローションについて
当クリニックで処方致しておりますVC-PMGローションはリン酸L-アスコルビルマグネシウムというビタミンCを高濃度に配合したローションです。
通常、ビタミンCは塗っても皮膚から吸収されませんが、VC-PMGは経皮吸収型のビタミンCとして一部の美白化粧品でも用いられております。一般に経皮吸収型のビタミンCは化粧品や医薬部外品ではわずかな濃度しか配合されていませんので、効能効果として美白レベルにとどまっていたのが現状です。最近の研究では、VC-PMGを高濃度に配合することにより様々な効果が認められるに至りました。

(3)注意事項
[1]VC-PMGローションは防腐剤、殺菌剤等の成分は使用しておりません。また光に対しても弱いため保存は必ず冷蔵庫にてお願い致します。

○7 レチノイン酸クリームについて

レチノイン酸はビタミンAの誘導体で、難治性のニキビの治療薬として米国で認可された後、シワなどの紫外線による皮膚の老化にも効果が認められ多くの患者さんに皮膚の若返り治療薬として使用されています。日本では正式に認可されていないのが現状ですが、当院では患者さんの症状に応じて独自のものを処方いたします。

(4)保管方法
レチノイン酸は一般の薬剤に比べて分解が非常に多いため、必ず冷凍庫にて保管して下さい。外出時や旅行にはお持ちにならないで下さい。
○8 ハイドロキノン軟膏について

当クリニックで処方致しておりますハイドロキノン軟膏はメラニン色素の生成を押さえ、皮膚を白くする漂白作用があります。ハイドロキノンは非常に変質しやすい為、抗酸化剤としてアスコルビン酸を添加してあります。冷蔵庫で保管の上2ヶ月程度を目安に使い切ってください。

(3)注意事項
[1]ハイドロキノンは非常に変質しやすいので、保存は必ず冷蔵庫でお願い致します。」
ヒ 甲13の3
「植物性プラセンタ100%原液 EX100 10ml

Q なぜ遮光バイアル瓶を使用しているのですか?
A 光・温度で変質しないよう気を配っております。
遮光バイアル瓶は医薬品でも使用されている容器です。
本品は、完全無添加でデリケートな原液のため、光・温度で変質しないよう気を配っております。
※無添加でデリケートな商品ですので、開封後はかならず冷蔵保存してください。」
フ 甲13の4
「…ダマスクローズウォーターは、化学香料・添加物は一切使用しない100%純粋な商品です。「腐食ビン」を使用していますが、保管の際は冷蔵庫等の冷暗所で直射日光を避けて保存してください。」
ヘ 甲13の5
「クトロVC5ローション…
肌の中に浸透してビタミンCに変わる水溶性高濃度ビタミンC誘導体5%に抗酸化力を高め乾燥感を抑える14種類の植物抽出エキスをプラスしました。

開封後は要冷蔵です。
凍らさないように冷蔵庫のドアポケットや野菜室に入れておいてください。」
ホ 甲14の1
甲5について、オリザ油化株式会社が、2006年5月30日から同年6月1日にかけて、東京ビッグサイトで開催されたifia JAPAN 2006(第11回国際食品素材/添加物展・会議)にて、第三者への頒布を開始した旨記載されている。
マ 甲14の2
2006年10月4日から同年10月6日にかけて、東京ビッグサイトで開催された食品開発展2006において、バイオジェニック株式会社が甲5を入手した旨記載されている。

2 無効理由1について
(1)本件特許発明1について
ア 甲1に記載された発明
甲1には、摘示1アの事項からみて次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明1」という。)。
「グリセリン、クエン酸、リン酸アスコルビルMg、水酸化Na、アルギニン、オレイン酸ポリグリセリル-10、ヘマトコッカスプルビアリス油、トコフェロール、レシチンを含有する美容液。」
イ 対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「ヘマトコッカスプルビアリス油」、「レシチン」、「オレイン酸ポリグリセリル-10」、「リン酸アスコルビルMg」、「クエン酸、水酸化Na、アルギニン」、「美容液」は、ヘマトコッカスプルビアリス油がアスタキサンチンを豊富に含むヘマトコッカス藻から抽出されたものであるから、本件特許発明1の「アスタキサンチン」、「リン脂質又はその誘導体」、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」、「リン酸アスコルビルマグネシウム…リン酸アスコルビル誘導体」、「pH調整剤」、「スキンケア用化粧料」に相当する。したがって、両者は、
「(a)アスタキサンチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質又はその誘導体を含む;
(b)リン酸アスコルビルマグネシウム、及びリン酸アスコルビルナトリウムから選ばれる少なくとも1種のアスコルビン酸誘導体;並びに
(c)pH調整剤
を含有する、スキンケア用化粧料。」
の点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件特許発明1はアスタキサンチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質又はその誘導体が、それらを含む「エマルジョン粒子」の形態で含有するものであるのに対して、引用発明1はかかる事項を発明特定事項としない点。
相違点2:本件特許発明1は「pHが5.0?7.5」であるのに対して、引用発明1はかかる事項を発明特定事項としない点。
ウ 相違点の検討
相違点2について検討する。
本件特許発明1は、「本発明の分散組成物は、カロテノイド含有油性成分及び、リン脂質又はその誘導体を含むエマルジョン粒子を有する水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物と、pH調整剤とを混合することによって得られたpHが5?7.5の分散組成物である。
本発明では、カロテノイド含有油性成分を含み、エマルジョン粒子を有するO/W型エマルジョンである水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合し、更にpHをpH5?7.5とすることにより、カロテノイド含有油性成分の分散安定性とカロテノイドの色味安定性とを共に良好に保つことができ、その結果、保存安定性、特に室温での保存安定性に優れた分散組成物とすることができる。」(【0009】)との記載からみて、アスタキサンチン(カロテノイド含有油性成分)を含み、エマルジョン粒子を有するO/W型エマルジョンである水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合し、pHを5.0?7.5とすることにより、アスタキサンチンの分散安定性の向上等を図るものであるところ、甲1には、そのpHは開示されていない。
甲1に記載された「エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」のかかるpHに関し、被請求人の提出した乙号証を参照すると、乙1には、●(省略)●と記載され、乙15には、●(省略)●と記載されていることに鑑みると、甲1に記載された「エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」は●(省略)●と推認される。そうすると、引用発明1は、そのpHとして「5.0?7.5」を採用したものとはいえない。
引用発明1のpHが明らかでなく、また甲3の1?甲3の6からみて、化粧品のpHを弱酸性?弱アルカリ性の範囲とすることが技術常識であったとしても、甲4の2における「薬剤の安定化のための一般的な方法…はかならずしもすべての薬剤にあてはまるわけではなく,場合によってはまったく効果がない場合もあるため,実際には各化粧品はそれぞれ独自の方法で安定化をはかっていることが多い」(摘示1コ)ことを考慮すると、引用発明1のpHが5.0?7.5である蓋然性が高いものとは必ずしもいえず、pHを5.0?7.5とすることが周知技術の付加であって、適宜になし得たことともいえない。
よって、本件特許発明1は、相違点2に係る本件特許発明1の構成の点において、引用発明1と実質的に相違するといえる。
エ 小括
以上のとおりであって、本件特許発明1は、少なくとも相違点2に係る構成の点で引用発明1とはいえないから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明とはいえない。
(2)本件特許発明2?4について
本件特許請求の範囲の請求項2?4は、請求項1を引用して記載したものであるから、本件特許発明2?4は、本件特許発明1に係る発明特定事項を有するものといえる。
そうすると、本件特許発明2?4と引用発明1とを対比すると、上記2(1)イにおいて、本件特許発明1と引用発明1とを対比した場合について認定した相違点1及び2と同様の相違点が必然的に存在するといえる。
そして、それらの相違点のうち、少なくとも相違点2については、上記2(1)ウにおいて本件特許発明1について記載した理由と同様の理由により、本件特許発明2?4と引用発明1との実質的な相違点といえるから、本件特許発明2?4は、甲1に記載された発明とはいえない。
(3)請求人の主張について
請求人は、甲3の1?甲3の6の記載から、「化粧品のpHは弱酸性?弱アルカリ性の範囲、数値的にはpH4?8の範囲内とされていることは技術常識であるといえ」、「かかる技術常識に照らして」甲1に記載された「美容液は、化粧品が有する通常の上記pH範囲内の美容液であることが記載されているに等しいということがいえる」と主張する。しかし、甲4の2における摘示1コの記載からみて、化粧品薬剤の安定性はpHのみをもって図るものということはできず、この主張を採用することができない。
また、請求人は、無効理由1は公然実施(特許法第29条第1項第2号)に基づく新規性欠如ではなく、甲1に基づく新規性欠如(特許法第29条第1項第3号)であり、甲1には、「商品名 エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」という製品そのものではないから、当該名称の製品が現実に存在するか否かは無効理由1とは無関係である旨、乙1は公知文献でなく、甲1から把握される技術事項でもないことから、無効理由1についての新規性にかかわる証拠として無価値である旨、主張する。しかし、甲1にはpHに関する記載はなく、「商品名 エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」という製品の成分を表示したものであるから、該商品の実体から離れて甲1の記載内容を理解することはできない。そうすると、上記2(1)ウで示したとおり、引用発明1は本件特許発明1と同じく「pHが5.0?7.5」であるということはできず、この主張を採用することができない。
(4)無効理由1のまとめ
以上のとおりであって、本件特許発明1?4は、甲1に記載された発明とはいえず、特許法第29条第1項第3号に掲げた発明であることを理由に特許を受けることができないものとすることはできない。
よって、請求人の主張する無効理由1によって、本件特許請求の範囲の請求項1?4に係る特許を無効とすることはできない。

3 無効理由2について
(1)本件特許発明1について
引用発明1は、上記2(1)に記載したとおりのものであり、本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、上記2(1)イに記載したとおりの一致点及び相違点が存在する。
ア 相違点の検討
相違点2について検討する。
甲3の1?甲3の6からは、化粧品のpHを弱酸性?弱アルカリ性とすることは技術常識であるように見受けられる。また、甲4の1?甲4の2からは、化粧品のpHのコントロールは化粧品の安定化の一つの手段であることが認識できる。しかし、甲1に記載された「エフ スクエア アイ インフィルトレート セラム リンクル エッセンス」は乙1を参照すれば●(省略)●の化粧品であるといえる。そして、例え上記技術常識があるとしても、引用発明1にかかる技術常識を導入する契機、すなわち、かかる化粧品を弱酸性?弱アルカリ性と設定することの動機づけとなるような記載を甲1から見出すことはできない。このため、上記技術常識や甲4の1?甲4の2の記載事項をもってしても、本件特許発明1が、引用発明1、あるいは引用発明1と甲3の1?甲3の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1、あるいは引用発明1と甲3の1?甲3の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
イ 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、「本発明の分散組成物は、カロテノイド含有油性成分及び、リン脂質又はその誘導体を含むエマルジョン粒子を有する水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物と、pH調整剤とを混合することによって得られたpHが5?7.5の分散組成物である。
本発明では、カロテノイド含有油性成分を含み、エマルジョン粒子を有するO/W型エマルジョンである水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合し、更にpHをpH5?7.5とすることにより、カロテノイド含有油性成分の分散安定性とカロテノイドの色味安定性とを共に良好に保つことができ、その結果、保存安定性、特に室温での保存安定性に優れた分散組成物とすることができる。」(【0009】)との記載等からみて、アスタキサンチン(カロテノイド含有油性成分)を含み、エマルジョン粒子を有するO/W型エマルジョンである水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合し、pHを5.0?7.5とすることにより、アスタキサンチンの分散安定性とカロテノイドの色味安定性とを共に良好に保つことを図る効果を奏するものであるが、引用発明1のpHを弱酸性?弱アルカリ性とし、化粧品としての安定化を図ったところで、これによりアスタキサンチンの分散安定性とカロテノイドの色味安定性との両方を良好にすることが明らかであるとはいえず、また、そのことを当業者が予測し得たものとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであって、本件特許発明1は、引用発明1、あるいは引用発明1と甲3の1?甲3の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものではなく、当業者が予測し得ない効果を奏するものであるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、又は、甲1並びに甲3の1?甲3の6及び甲4の1?甲4の2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(2)本件特許発明2?4について
本件特許請求の範囲の請求項2?4は、請求項1を引用して記載したものであるから、本件特許発明2?4は本件特許発明1に係る発明特定事項を有するものといえる。
そうすると、本件特許発明2?4と引用発明1とを対比すると、上記(1)において、本件特許発明1と引用発明1とを対比した場合と同様の相違点が存在するといえる。
そして、それらの相違点のうち、相違点2については、上記(1)アに本件特許発明1について記載した理由と同様の理由により、引用発明1、あるいは引用発明1と甲3の1?甲3の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。
よって、本件特許発明2?4は、引用発明1、あるいは引用発明1と甲3の1?甲3の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(3)請求人の主張について
請求人は、甲1に記載された美容液を安定化するために、化粧品が有する通常のpHの範囲内、特に弱酸性から弱アルカリ性のpH範囲内で適切なpH範囲とすることは、周知の課題解決手段、すなわち周知の技術的手段であり、該美容液の安定化を図るために、pHを5.0?7.5に調整することは、当業者であれば当然に実施する程度の数値範囲の最適化に過ぎず、かかる数値範囲は、化粧品が通常有するpHとして何ら特異な数値でもない旨(審判請求書第36頁下から2行?第37頁第6行)、また、本件特許発明1?4の室温等での28日間の経時安定性については、リン酸アスコルビルマグネシウム又はリン酸アスコルビルナトリウムを配合した化粧料は、pHが5.0?7.5の範囲であれば良好であるという効果が記載されているに過ぎないものであり、これはすなわち、化粧品のpHを化粧品分野における技術常識のpH範囲内で最適に調整することにより経時安定性が向上したことを単に裏付けるに過ぎないものである旨(同第38頁第1?6行)主張する。さらに、請求人は、甲4の1?甲4の2にはpH調整剤を用いてpHを調整することが記載されていることは被請求人も認めているのであり、甲4の1?甲4の2のかかる記載から当業者が当然に試みる選択肢の範囲に含まれ、化粧料の安定化のためにとり得る手段がpH調整以外に記載されているとしても、pH調整による化粧料の安定化を試みることは当業者にとって容易になし得る事項である旨(請求人提出の口頭審理陳述要領書第19頁第1?6行)主張する。しかし、甲4の2における摘示1コの記載からみて、化粧品薬剤の安定性はpHのみをもって図るものということはできず、甲1に記載された美容液における適切なpHが5.0?7.5の範囲であることや、該美容液のpHを5.0?7.5に調整することで室温等での28日間の経時安定性が良好なものとなることは、甲1、甲3の1?甲3の6、甲4の1?甲4の2のいずれの記載からも予測することはできず、この主張を採用することができない。
(4)無効理由2のまとめ
以上のとおりであって、本件特許発明1?4は、引用発明1、あるいは引用発明1と甲3の1?甲3の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
よって、請求人の主張する無効理由2によって、本件特許発明1?4に係る特許を無効とすることはできない。

4 無効理由3について
甲5は、オリザ油化株式会社作成の「アスタキサンチン ver.1.0 SM」カタログであって、制定日が2006年5月25日と記載されるものであり、甲14の1には、作成者であるオリザ油化株式会社が同年5月30日から同年6月1日にかけて、東京ビッグサイトで開催されたifia JAPAN 2006(第11回国際食品素材/添加物展・会議)にて、第三者への配布を開始した旨、甲14の2には、バイオジェニック株式会社が同年10月4日から同年10月6日にかけて、東京ビッグサイトで開催された食品開発展2006において、甲5を入手した旨、それぞれ記載されている。以上の点から、甲5は、遅くとも同年10月6日には頒布されたもの、すなわち、本願出願日前に頒布されたものとして検討する。
(1)本件特許発明1について
ア 甲5に記載された発明
甲5には、上記1サからみて、次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明5」という。)
「ヘマトコッカス藻抽出物、抽出トコフェロール、植物油脂、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン、グリセリン及び水を含有し、アスタキサンチン含量1.0%以上の化粧品用途の乳化液。」
イ 対比
本件特許発明1と引用発明5とを対比する。
引用発明5の「レシチン」は、本件特許発明1の「リン脂質又はその誘導体」に相当する。また、引用発明5の「化粧品用途の乳化液」に関し、甲5第28頁には「アスタキサンチン-LSC1 化粧品」と記載されているが、甲5のその余の記載においては、この製品が化粧品用途であるに留まり、「美容素材」として化粧品に使うことを企図していることや、バルク製品である荷姿からみて、この製品単独で化粧品として供給されているものとはいえず、化粧品用途を目的とした乳化液組成物と解される。してみると、両者は、
「(a)アスタキサンチン、及びリン脂質又はその誘導体を含む乳化液組成物」
の点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件特許発明1はアスタキサンチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質又はその誘導体が、それらを含む「エマルジョン粒子」の形態で含有されるものであるのに対して、引用発明5はかかる事項を発明特定事項としない点、
相違点2:本件特許発明1は「pH調整剤」を含み「pHが5.0?7.5」であるのに対して、引用発明5はかかる事項を発明特定事項としない点、
相違点3:本件特許発明1は「リン酸アスコルビルマグネシウム、及びリン酸アスコルビルナトリウムから選ばれる少なくとも1種のアスコルビン酸誘導体」を含むものであるのに対して、引用発明5はかかる事項を発明特定事項としない点、
相違点4:本件特許発明1は「ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含むのに対して、引用発明5は「グリセリン脂肪酸エステル」を含むものである点、
相違点5:本件特許発明1は「スキンケア用化粧料」であるのに対して、引用発明5は「化粧品用途の乳化液組成物」である点。
ウ 相違点1?5についての検討
甲6から、アスタキサンチンの安定化のためにリン酸アスコルビルマグネシウムを添加することが公知であることから、相違点3については当業者が容易に想到し得るものであるといえる。
しかし、相違点1に係る「エマルジョン粒子」の形態の点がアスタキサンチン、リン脂質又はその誘導体の親水性、親油性等の技術常識から明らかであり、そして、pH調整剤等でpH調整を行うこと(甲4の1?甲4の2)、化粧品のpHは弱酸性から弱アルカリ性とすること(甲3の1?甲3の6)、及び、グリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとがいずれも薬品類としてグリセリン脂肪酸エステルという同じ分類のものであること(甲7の1?甲7の6、甲10)が当業者における技術常識であったとしても、引用発明5において、アスタキサンチンの安定化のためにリン酸アスコルビルマグネシウムを添加した上で、pH調整剤を用いてリン酸アスコルビルマグネシウムが分解しないように、また、アスタキサンチンの分散安定性と色味安定性とを良好に保つためにpH5.0?7.5程度に調整し(相違点2)、さらに乳化剤をポリグリセリン脂肪酸エステルに限定する(相違点4)ことで、スキンケア用化粧料とすること(相違点5)は、それらの構成を採用することに動機づけがなく、したがって、当業者が容易になし得たこととはいえない。
エ 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、「本発明では、カロテノイド含有油性成分を含み、エマルジョン粒子を有するO/W型エマルジョンである水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合し、更にpHをpH5?7.5とすることにより、カロテノイド含有油性成分の分散安定性とカロテノイドの色味安定性とを共に良好に保つことができ、その結果、保存安定性、特に室温での保存安定性に優れた分散組成物とすることができる。」(【0009】)との記載等からみて、アスタキサンチン(カロテノイド含有油性成分)を含み、エマルジョン粒子を有するO/W型エマルジョンである水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合し、pHを5.0?7.5とすることにより、アスタキサンチンの分散安定性とカロテノイドの色味安定性とを共に良好に保つことを図るという格別の効果を奏するものであり、この点について甲5には記載も示唆もなく、また技術常識であるとも認められないことから、この効果を容易に予測することはできない。
引用発明5は「ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含まないものであるが、乙18には、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有したものとグリセリン脂肪酸エステルを含有したものとでは、その分散性において、少なくとも外観上異なるものとなることが示されていることを参酌すると、この点においても、本願特許発明1は引用発明5に対して格別の効果を奏するものといえる。
オ 小括
以上のとおりであって、本件特許発明1は、引用発明5、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たものではなく、当業者が予測し得ない効果を奏するものであるから、本件特許発明1は、甲5、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(2)本件特許発明2?4について
本件特許請求の範囲の請求項2?4は、請求項1を引用して記載したものであるから、本件特許発明2?4は本件特許発明1に係る発明特定事項を有するものといえる。
そうすると、本件特許発明2?4と引用発明5とを対比すると、上記(1)において、本件特許発明1と引用発明5とを対比した場合と同様の相違点が存在するといえる。
そして、それらの相違点のうち、相違点2?4については、上記(1)アに本件特許発明1について記載した理由と同様の理由により、引用発明5、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。
よって、本件特許発明2?4は、甲5、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(3)請求人の主張について
請求人は、化粧品の安定化を向上させるために、化粧品にpH調整剤を添加して、化粧品が有する通常のpHの範囲内、特に弱酸性から弱アルカリ性のpH範囲内で適切なpH範囲とすることは、周知の課題解決手段、すなわち周知の技術的手段であり、引用発明5の化粧品の安定化を図るために、pHを5.0?7.5に調整することは、当業者であれば当然に実施する程度の数値範囲の最適化に過ぎず、係る数値範囲は、化粧品が通常有するpHとして何ら特異な数値でもない旨(審判請求書第45頁下から11行?末行)、また、甲6には、アスタキサンチンを含有する化粧品に、リン酸アスコルビルマグネシウムを添加することが、化粧品の経時安定性を向上させると記載されていることから、本件特許発明1の効果は、予測し得ない格別顕著な効果を奏し得るものではない旨(同第46頁第2?5行)主張する。しかし、甲4の2における摘示1コの記載からみて、化粧品薬剤の安定性はpHのみをもって図るものということはできず、甲5に記載された化粧品用途の乳化液組成物を用いて化粧品とし、さらにこれを化粧品における適切なpHが5.0?7.5の範囲とすることや、該化粧品のpHを5.0?7.5に調整することで室温等での28日間の経時安定性が良好なものとなることは、甲5、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2のいずれの記載からも予測することはできず、この主張を採用することができない。
(4)無効理由3のまとめ
以上のとおりであって、本件特許発明1?4は、甲5、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
よって、請求人の主張する無効理由3によって、本件特許発明1?4に係る特許を無効とすることはできない。

5 無効理由4について
甲9の1は、バイオジェニック株式会社販売の「Astabio AW0.5」製品のラベルであって、「製造年月 2006年9月」、「品質保証期限 製造後6ヶ月」と記載されるものの、実際に当該製品が出荷されたものであるか否かが不明であり、したがって甲9の1自体の頒布日は明らかでない。そうすると、甲9の1に基づく進歩性違反は一義的には成り立つものではない。しかし、仮に、遅くとも品質保証期限と理解される、製造年月である2006年9月から6ヶ月後の2007年3月までに頒布されたもの、すなわち、本願出願日前に頒布されたものとして、以下検討する。
(1)本件特許発明1について
ア 甲9の1に記載された発明
甲9の1には、摘示1トからみて、次の発明が記載されているといえる(以下、「引用発明9の1」という。)
「ヘマトコッカス藻色素、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、抽出トコフェロール、酵素分解レシチン(大豆由来)を含有する食品添加物であるヘマトコッカス藻色素製剤」
イ 対比
本件特許発明1と引用発明9の1とを対比する。
引用発明9の1の「ヘマトコッカス藻色素」、「酵素分解レシチン(大豆由来)」は、本件特許発明1の「アスタキサンチン」、「リン脂質又はその誘導体」に相当し、引用発明9の1の「製剤」は、本件特許発明1の「化粧料」と「組成物」である点で共通するから、両者は、
「(a)アスタキサンチン、及びリン脂質又はその誘導体を含有する、組成物。」
の点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:本件特許発明1はアスタキサンチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びリン脂質又はその誘導体が、それらを含む「エマルジョン粒子」の形態で含有されるものであるのに対して、引用発明9の1はかかる事項を発明特定事項としない点、
相違点2:本件特許発明1は「pH調整剤」を含み「pHが5.0?7.5」であるのに対して、引用発明9の1はかかる事項を発明特定事項としない点、
相違点3:本件特許発明1は「リン酸アスコルビルマグネシウム、及びリン酸アスコルビルナトリウムから選ばれる少なくとも1種のアスコルビン酸誘導体」を含むものであるのに対して、引用発明9の1はかかる事項を発明特定事項としない点、
相違点4:本件特許発明1は「ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含むのに対して、引用発明9の1は「グリセリン脂肪酸エステル」を含むものである点、
相違点5:本件特許発明1は「スキンケア用化粧料」であるのに対して、引用発明9の1は「食品添加物であるヘマトコッカス藻色素製剤」である点。
ウ 相違点1?5についての検討
甲6から、アスタキサンチンの安定化のためにリン酸アスコルビルマグネシウムを添加することが公知であることから、相違点3については当業者が容易に想到し得るものであるといえる。
しかし、相違点1に係る「エマルジョン粒子」の形態の点がアスタキサンチン、リン脂質又はその誘導体の親水性、親油性等の技術常識から明らかであり、そして、pH調整剤等でpH調整を行うこと(甲4の1?甲4の2)、化粧品のpHは弱酸性から弱アルカリ性とすること(甲3の1?甲3の6)、及び、グリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとがいずれも薬品類としてグリセリン脂肪酸エステルという同じ分類のものであること(甲7の1?甲7の6、甲10)が当業者における技術常識であったとしても、引用発明9の1において、甲9の2の記載を基に化粧品用途へ展開し、その際、アスタキサンチンの安定化のためにリン酸アスコルビルマグネシウムを添加した上で、pH調整剤を用いてリン酸アスコルビルマグネシウムが分解しないように、また、アスタキサンチンの分散安定性と色味安定性とを良好に保つためにpH5.0?7.5程度に調整し(相違点2)、さらに乳化剤をポリグリセリン脂肪酸エステルに限定する(相違点4)ことで、スキンケア用化粧料とすること(相違点5)は、それらの構成を採用することに動機づけがなく、したがって、当業者が容易になし得たこととはいえない。
エ 本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、「本発明では、カロテノイド含有油性成分を含み、エマルジョン粒子を有するO/W型エマルジョンである水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合し、更にpHをpH5?7.5とすることにより、カロテノイド含有油性成分の分散安定性とカロテノイドの色味安定性とを共に良好に保つことができ、その結果、保存安定性、特に室温での保存安定性に優れた分散組成物とすることができる。」(【0009】)との記載等からみて、アスタキサンチン(カロテノイド含有油性成分)を含み、エマルジョン粒子を有するO/W型エマルジョンである水分散物と、アスコルビン酸又はその誘導体を含む水性組成物とを混合し、pHを5.0?7.5とすることにより、アスタキサンチンの分散安定性とカロテノイドの色味安定性とを共に良好に保つことを図るという格別の効果を奏するものであり、この点について甲9の1には記載も示唆もなく、また技術常識であるとも認められないことから、この効果を容易に予測することはできない。
引用発明9の1は「ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含まないものであるが、乙18には、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有したものとグリセリン脂肪酸エステルを含有したものとでは、その分散性において、少なくとも外観上異なるものとなることが示されていることを参酌すると、この点においても、本願特許発明1は引用発明9の1に対して格別の効果を奏するものといえる。
オ 小括
以上のとおりであって、本件特許発明1は、引用発明9の1、甲9の2、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易になし得たものではなく、当業者が予測し得ない効果を奏するものであるから、本件特許発明1は、甲9の1?甲9の2、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(2)本件特許発明2?4について
本件特許請求の範囲の請求項2?4は、請求項1を引用して記載したものであるから、本件特許発明2?4は本件特許発明1に係る発明特定事項を有するものといえる。
そうすると、本件特許発明2?4と引用発明9の1とを対比すると、上記(1)において、本件特許発明1と引用発明9の1とを対比した場合と同様の相違点が存在するといえる。
そして、それらの相違点のうち、相違点2?4については、上記(1)アに本件特許発明1について記載した理由と同様の理由により、引用発明9の1、甲9の2、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。
よって、本件特許発明2?4は、甲9の1?甲9の2、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。
(3)請求人の主張について
請求人は、無効理由3と同様、無効理由4についても、引用発明9の1、甲9の2、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2の記載に基づいて当業者が容易に想到できるものであり、本件特許発明1の作用効果も、同様に予測し得ない格別顕著な効果を奏し得るものではない旨主張する。しかし、上記4(3)で示したとおり、甲4の2における摘示1コの記載からみて、化粧品薬剤の安定性はpHのみをもって図るものということはできず、甲9の1に記載された組成物を用いて化粧品とし、さらにこれを化粧品における適切なpHが5.0?7.5の範囲とすることや、該化粧品のpHを5.0?7.5に調整することで室温等での28日間の経時安定性が良好なものとなることは、甲9の1?甲9の2、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2のいずれの記載からも予測することはできず、この主張を採用することができない。
(4)無効理由4のまとめ
以上のとおりであって、本件特許発明1?4は、甲9の1?甲9の2、甲6、甲7の1?甲7の6、甲4の1?甲4の2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
よって、請求人の主張する無効理由4によって、本件特許発明1?4に係る特許を無効とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件特許発明1?4に係る特許を無効にすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-01-29 
結審通知日 2016-02-02 
審決日 2016-03-08 
出願番号 特願2007-169635(P2007-169635)
審決分類 P 1 123・ 113- Y (A61K)
P 1 123・ 121- Y (A61K)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 大熊 幸治
小川 慶子
登録日 2012-07-27 
登録番号 特許第5046756号(P5046756)
発明の名称 分散組成物及びスキンケア用化粧料並びに分散組成物の製造方法  
代理人 今村 憲  
復代理人 杉村 純子  
代理人 根本 浩  
代理人 白石 真琴  
代理人 山田 昭  
代理人 酒迎 明洋  
代理人 山▲崎▼ 順一  
代理人 松山 智恵  
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