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審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  A47K
審判 一部無効 2項進歩性  A47K
管理番号 1333932
審判番号 無効2016-800006  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-01-21 
確定日 2017-10-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第4641313号発明「臀部拭き取り装置並びにそれを用いた温水洗浄便座及び温水洗浄便座付き便器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第4641313号(以下「本件特許」という。平成19年9月6日出願、平成22年12月10日登録、請求項の数は30である。)の請求項15に係る発明についての特許を無効にすることを求める事案である。


第2 手続の経緯
本件審判の経緯は、以下のとおりである。

平成28年 1月20日 審判請求(平成28年1月21日差出)
平成28年 3月31日 審判事件答弁書
平成28年 5月26日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成28年 6月 9日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成28年 6月23日 口頭審理
平成28年 7月 5日 審決の予告
平成29年 6月 7日 上申書(被請求人)


第3 本件特許発明
本件特許は、本件特許を対象とした無効2015-800036号事件の平成29年2月1日付け審決で、平成28年10月31日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正すること(以下「別件訂正」という。)が認められ、当該審決が確定したので、本件特許の請求項15に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、上記訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項15に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、分説は請求人の主張に基づいて審決で付した。

「A.トイレットペーパーで臀部を拭く臀部拭き取り装置であって、
B.前記トイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアームと、
C.前記臀部を拭き取る位置まで前記拭き取りアームを移動させる拭き取りアーム駆動部とを備え、
D.前記拭き取りアーム駆動部は、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させることを特徴とする、臀部拭き取り装置。」


第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、上記別件訂正前の本件特許発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出している。

(1)無効理由1(新規性欠如)
本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。
(2)無効理由2(進歩性欠如)
本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第7号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。
(3)無効理由3(進歩性欠如)
本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第7号証のいずれかに記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:台湾特許出願公開第200533328号公報
甲第2号証:実用新案登録第2531303号公報
甲第3号証:特開平10-195957号公報
甲第4号証:特開2006-249671号公報
甲第5号証:特開2006-283396号公報
甲第6号証:特開平10-19886号公報
甲第7号証:特開2002-323492号公報
甲第8号証:欠番
甲第9号証:特開平5-171678号公報
甲第10号証:特開2000-24974号公報
甲第11号証:「ジーニアス英和辞典」、改訂版再版、1995年4月1日発行、株式会社大修館書店、表紙、奥付及び1661頁
甲第12号証:特開2000-351448号公報
甲第13号証:国際公開第2005/087067号

3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1について
ア 甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「トイレットペーパで臀部を拭くシステムであって、
トイレットペーパによって被覆され、臀部を拭き取る人工ハンド10と、
該人工ハンド10を駆動するための人工ハンド機構16と
を備え、
該人工ハンド機構16は、人工ハンド10を、便器の後方から前方へ便座下方を移動させる、システム。」
(審判請求書10頁3ないし末行)

イ 甲1発明において、抄訳文5頁19行や図7?12には、人工ハンド機構16によって人工ハンド10が便座下方を、便器の後方から前方へ駆動されることが記載されているが、これらの記載から、人工ハンド10は便器と便座との間隙を介して移動しているということができる。したがって、甲1発明における「該人工ハンド機構16は、人工ハンド10を、便器の後方から前方へ便座下方を移動させる」との事項は、本件特許発明15の構成D(前記拭き取りアーム駆動部は、便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させる)に相当する。
(審判請求書11頁12ないし18行)

(2)無効理由2について
ア 甲1発明における「該人工ハンド機構16は、人工ハンド10を、便器の後方から前方へ便座下方を移動させる」との事項が、本件特許発明15の構成D(前記拭き取りアーム駆動部は、便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させる)を記載したものではないと仮定する。
そうすると、本件特許発明15は、構成A?Cについて甲1発明と一致し、甲1発明においては人工ハンド10が便器の後方から前方へ便座下方を移動するものの、それが便器と便座の間隙を介したものかどうかが明示的に記載されていない点で甲1発明とは相違することになる。
(審判請求書12頁4ないし12行)

イ 便器と便座との間に間隙を設け、その間隙を介して洗浄ノズル(甲第2号証ないし甲第5号証)や検査用アーム(甲第6号証および甲第7号証)等の装置を移動させることは、本件特許出願日当時、周知技術であった。したがって、便座下方を便器の後方から前方へ移動する人工ハンド10を開示している甲第1号証に接した当業者であれば、この人工ハンド10を、便器と便座との間に設けた間隙を介して移動させることに容易に想到し得る。
(審判請求書18頁5ないし10行)

(3)無効理由3について
ア 甲1発明における「該人工ハンド機構16は、人工ハンド10を、便器の後方から前方へ便座下方を移動させる」との事項が、本件特許発明15の構成D(前記拭き取りアーム駆動部は、便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させる)を記載したものではないと仮定する。
かかる仮定の下では、本件特許発明15は、構成A?Cについて甲1発明と一致し、甲1発明においては人工ハンド10の移動が便器と便座の間隙を介したものかどうかが明示的に記載されていない点で甲1発明とは相違することになる。
ところで、甲1発明における人工ハンド10は、洗浄ノズルとしての機能も有するものである。このことは、例えば、「人工ハンド10の末端に位置するかまたは人工ハンド10上のどこかに位置するノズル13から吹き付けられた温水または冷水で臀部上の固体粒子をほぼきれいに取り除く。」(甲第1号証の抄訳文2頁20?22行目)との記載があることからも明らかである。
そして、上記のとおり、甲第2号証ないし甲第5号証には、便器と便座との間に間隙を設け、その間隙を介して洗浄ノズルを移動させることが記載されている。
そうすると、人工ハンド機構16が人工ハンド10を「便器の後方から前方へ便座下方を移動させる」ことを開示しているが、それ以上具体的にはどのように移動させるかを明示的に記載していない甲1発明に接した当業者には、洗浄ノズルでもある人工ハンド10を具体的にどのように移動させるかについて、洗浄ノズルの移動態様を開示している甲第2号証ないし甲第5号証の記載を参酌する動機付けが存在する。
したがって、甲1発明の「便器の後方から前方へ便座下方を移動する」、洗浄ノズルとしての機能を有する人工ハンド10の具体的な移動態様について、同じ洗浄ノズルを開示している甲第2号証ないし甲第5号証の記載を組み合わせて、便器と便座との間の間隙を介して移動するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(審判請求書19頁19行ないし20頁18行)

イ また、甲1発明と、甲第6号証および甲第7号証に記載の発明とは、いずれも便器の外側から機器を臀部の下に移動させる機構を開示している点で共通しているところ、甲第6号証および甲第7号証には、便器と便座との間に間隙を設け、その間隙を介して検査用アームを移動させることが記載されている。
そうすると、人工ハンド機構16が人工ハンド10を「便器の後方から前方へ便座下方を移動させる」ことを開示しているが、それ以上具体的にはどのように移動させるかを明示的に記載していない甲1発明に接した当業者には、人工ハンド10を具体的にどのように移動させるかについて、便器の外側から機器を臀部の下に移動させる具体的態様を開示している甲第2号証ないし甲第5号証の記載を参酌する動機付けが存在する。
したがって、甲1発明の「便座下方を便器の後方から前方へ移動する」人工ハンド10の具体的な移動態様について、甲第6号証または甲第7号証の記載を組み合わせて、便器と便座との間の間隙を介して移動するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。
(審判請求書20頁24行ないし21頁9行)

(4)甲第1号証の図7ないし図12の位置付けについて
図5及び図6と、図7乃至図12とは、異なる対象との関係における人工ハンド10の移動の一例をそれぞれ示したものである。そのような図5及び図6と、図7乃至図12とを、そのまま組み合わせたときにその位置関係に何らかの齟齬があるとしても、それによって図7乃至図12によって何が説明されているのかを理解することが殊更に困難になることはない。当業者は、少なくとも、図7乃至図12から、トイレットペーパで被覆された人工ハンド10が、便座下方を、便器の後方から、便座に対して水平方向に移動して清拭ステップを実行することを理解することができる。
(平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書3頁19行ないし8頁1行)

(5)甲第1号証の人工ハンド10の機構について
ア 甲第1号証の図3などには上保持クリップ8がトイレットペーパ30を挟んで圧縮している様子が示されており、それによってトイレットペーパ30が保持されることは当業者には明らかである。
そして、下保持クリップ9の圧縮及び上下移動のための機構についても、当業者であれば、例えば、下図の赤色で示すシリンダ部材が上保持クリップ8及び下保持クリップ9のトイレットペーパの圧縮のための機構であり、下図の青色で示すシリンダ部材が下保持クリップ9の上下移動のための機構であり得ることは、容易に理解することができる。
(平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書9頁13ないし末行)

イ 甲第1号証の図4には、紙挟み11として上方の円柱部材と、下方の四角柱の部材が示されており、それぞれが相対的に上下方向に移動することによって、人工ハンドに被覆されたトイレットペーパを挟み保持することが説明されている(甲第1号証抄訳文の4頁14行)。そのような紙挟み11の各部材の上下への移動は、上記の下保持クリップ8及び下保持クリップ9と同様に、例えばシリンダ機構などにより容易に達成することができることは、当然に当業者が理解できる事項である。
(平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書10頁10ないし16行)

ウ 当業者は、甲第1号証の記載から、人工ハンド10がトイレットペーパ30を取り付けるものであることを理解することができる。具体的には、下保持クリップ9によって引き下げられたトイレットペーパ30に対して、人工ハンド10が内側から外側へ移動し、その後紙挟み11が上下両方向からトイレットペーパ30を圧縮することによって、トイレットペーパ30が人工ハンド10の周囲を被覆し、人工ハンド10に固定されて留まり、カッタ12がトイレットペーパ30を切断する(甲第1号証抄訳文の3頁末行?4頁20行、図3乃至図6)ことが理解できる。そのため、甲第1号証における人工ハンド10は、本件発明15におけるトイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアームに相当する。
(平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書14頁下から4行ないし15頁6行)

(6)甲第1号証の人工ハンド10の移動について
ア 甲第1号証抄訳文の5頁18行?23行および図9乃至図11に基づけば、当業者は、トイレットペーパで被覆された人工ハンド10が、便座下方を、便器の後方から、便座に対して水平方向に移動して清拭ステップを実行することを容易に理解することができる。
また、甲第1号証の図5及び図6に記載の紙取り機構15自体が人工ハンド10を垂直位置から水平位置に約90度回動させる、図7乃至図12の人工ハンド10の移動を実現することができるものである。
さらに、図7乃至図12のように人工ハンド10を垂直状態と水平状態との間で約90度回動するように移動させる機構は、周知・慣用技術に過ぎない。
(平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書16頁6ないし16行)

イ 合議体指摘の「人工ハンド10が便器から突き出る」という記載をそのまま読めば、人工ハンド10が便器の内側から外側へと出てくることを意味するものと解釈できる。……しかしながら、トイレットペーパ被覆時に人工ハンド10が便器の内側から外側へ突き出るという動作は、トイレットペーパの被覆ステップの説明として技術的に全く理解することができない。
さらに、当該段落における甲第1号証抄訳文4頁7行?8行には、「人工ハンド10は、紙取り機構15の内側から外側へ移動することによってトイレットペーパを押し引きし」と記載されており、図5および図6の人工ハンドの動作もあわせて考慮すれば、当該箇所の「便器」は「紙取り機構15」の誤記であると考えられる。
また、たとえ「便器」が誤記でなかったとしても、甲第1号証のどこにも便器に孔が設けられていたと記載されていないので、甲第1号証に接した当業者が、人工ハンド10が便器の孔を通って突き出ると直ちに理解するとは考えられない。
むしろ、便器と便座との間に間隙が存在し、その間隙を通して機械的装置を移動させることが周知であったこと(甲第2号証乃至甲第7号証)と、人工ハンド10が便座の下を通って移動していることを示している図9及び図10に鑑みれば、当業者は、人工ハンド10が便器と便座との間隙を通って便器から突き出るものと理解するのが自然である。
(平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書17頁1ないし21行)

(6)甲1発明の成立性について
被請求人が、甲1発明についての実施可能要件を問題にしているとしても、特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」というためには、刊行物記載の技術事項が、特許出願当時の技術水準を前提にして、当業者に認識、理解され、特許発明と対比するに十分な程度に開示されていることを要するが、「刊行物に記載された発明」が、特許法所定の特許適格性を有すること(例えば、特許法36条4項1号実施可能要件を満たすこと)までを要するものではない(知財高判平成24年9月27日・平成23年(行ケ)第10201号)。
そして、そもそも人工ハンド機構16が人工ハンド10を便器に進入させる機構は、甲第1号証の図5及び6にも記載されているし、また周知技術から当業者に明らかな事項である……。
(平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書17頁下から2行ないし18頁8行)

(7)甲1発明への甲第2ないし7号証に記載された事項の適用について
ア 被請求人も認めるとおり洗浄ノズルとしても機能する甲第1号証の人工ハンド10の便座下方の移動について、同じ洗浄ノズルである甲第2号証乃至甲第5号証の教示を参酌し、周知技術である「便座と便器との間の間隙」を通すようにすることは当業者にとってごく自然のことである。周知技術である「便座と便器との間の間隙」のスペースの調整などは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
(平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書18頁18ないし23行)

イ 甲第1号証と甲第6号証及び甲第7号証とは、いずれも便器の外側から機器を臀部の下に移動させる機構を開示している点で共通しているところ、甲第6号証及び甲第7号証は、便器と便座との間に間隙を設け、その間隙を介して検査用アームを移動させることが記載されている。
そうすると、甲第1号証の人工ハンド10の便座下方の移動について、当業者には、便器と便座との間に間隙を設け、その間隙を介して便器の外側から機器を臀部の下に移動させることを開示している甲第6号証及び甲第7号証の記載を参酌する動機付けが存在するといえる。
そして、周知技術である「便座と便器との間の間隙」のスペースの調整などは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
(平成28年5月26日付け口頭審理陳述要領書19頁15ないし24行)


第5 被請求人の主張
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論している(平成28年3月31日付け審判事件答弁書、平成28年6月9日付け口頭審理陳述要領書を参照。)。

2 無効理由に対する具体的な反論
(1)甲第1号証の図7ないし図12の位置付けについて
ア 図5の装置を便器(5)の後方に設置した場合、図7乃至図12のような位置関係に配置することができないため、図7乃至図12によって、何が説明されているのかを理解するのが困難となる。
(審判事件答弁書5頁18ないし21行)

イ 図7乃至図12は、甲1発明を便座近傍に実際に配置して、人工ハンド10を移動させたときの様子を示した図ではなく、単に、甲第1号証の出願人が人工ハンド10のみの動きをシミュレーションして図面化したものであると理解することができる。なぜなら、図7乃至図12には、図5及び図6に示されているような人工ハンド10の周辺機構は何ら記載されていないからである。
これにより、当業者は、図7乃至図12について、出願人が自身の都合のよいように人工ハンド10のみの動きをシミュレーションしたときの様子を図面化したものに過ぎないと理解し、図7乃至図12については、甲1発明の構造を開示しているものではないと理解することができる。
すなわち、甲第1号証において、図7乃至図12は、甲1発明の構造を理解するための助けにはならないわけである。
(審判事件答弁書7頁下から3行ないし8頁9行)

ウ 甲第1号証の図5及び図6では、シリンダ・ピストン機構によって、人工ハンド10が前方に突き出させた状態のみが記載されているのであり、参考図3及び4に示すように、水平方向から垂直方向に人工ハンド10が移動する様子は、甲第1号証には一切開示されていない。したがって、参考図3及び4は、被請求人の想像に過ぎず、甲第1号証に開示されている技術ではない。
(平成28年6月9日付け口頭審理陳述要領書2頁末行ないし3頁5行)

エ 請求人は、甲第9及び10号証の技術を参照して、垂直状態と水平状態とを約90度回動可能とする技術は、周知技術である旨主張する。仮に、そのような技術が周知技術であったとしても、本件特許発明15の新規性及び進歩性の判断にどのような影響があるのか請求人から主張はなされていない。
そもそも、答弁書において、図7ないし図12の位置付けについて議論を行っているのは、甲1発明を的確に認定し、甲1発明の構成要件を特定するためである。したがって、請求人が、甲第9及び10号証の周知技術を示したところで、甲1発明の認定に何ら影響を与えるものではない。
よって、答弁書でも述べた通り、甲1発明の内、人工ハンドについての構成要件は、「b 紙取り機構15によって引き下げられたトイレットペーパーを押すための人工ハンド10」であることに変わりはない。
(平成28年6月9日付け口頭審理陳述要領書3頁17ないし27行)

(2)甲第1号証の人工ハンド10の構造について
ア 紙取り機構15は、上保持クリップ8と、下保持クリップ9とを備える。上保持クリップ8は、トイレットペーパー30を保持できるようになっている(甲第1号証の抄訳文の4頁9行目)が、どのようにして保持するのかは、明確ではない。下保持クリップ9は、トイレットペーパー30を圧縮して挟み付けることができる(同4行目)と共に、上向きに移動することができ(同3行目)、下向きにも移動できる(同5行目)となっているが、どのようにして、圧縮、上下移動ができるようになっているのか、その機構は明確ではない。甲第1号証の抄訳文の5頁10?12行目に記載されているように、モータ、油圧システム、又は手動駆動機構によって、紙取り機構15の駆動を実現しているとの記載があるが、それだけの記載に過ぎず、具体的にどのように紙取り機構15を駆動させているのは、明確ではない。また、甲第1号証の図面を見ただけでも、どのような機構になっているのかは皆目見当がつかない。
すなわち、紙取り機構15の動作は、出願人の願望による動作であるとしか言いようがなく、技術的に、紙取り機構15の機構が開示されているわけではない。
(審判事件答弁書8頁17ないし末行)

イ 「人工ハンド10が完全に突き出たとき、人工ハンドの紙挟み11が上下両方向からトイレットペーパーを圧縮し」と記載されているが、図4を見ても、紙挟み11がどのようにしてトイレットペーパーを上下両方向から圧縮するのかその機構については、当業者といえども、皆目見当がつかない。紙挟み11は、どのようにして駆動しているのか、紙挟み11を駆動させる機構はどのようなものであるのか、図5及び図6に記載の構造を見ても、見当がつかない。
(審判事件答弁書10頁3ないし9行)

ウ 「このため、トイレットペーパー30が人工ハンド10の周囲を被覆し、人工ハンド10に固定されて留まる。紙掴み11のちょうど後方上端に位置するカッタ12が、固定されている間にトイレットペーパー30を切断し、トイレットペーパー30はロール7から分離される。」との記載があるが、当業者がいくら理解しようと努力して読んだとしても、どのようにして,カッタ12によって、トイレットペーパー30が切断されるのか、皆目見当がつかない。図4を見る限り、確かに、紙掴み11の後方上部には、カッタ12が取り付けられているが、カッタ12が移動することで、トイレットペーパー30が切断されるのか、人工ハンド10の動きに合わせて、カッタ12が切断されるのか、甲第1号証の記載だけでは、到底理解できるものではない。
よって、甲第1号証から技術的に読み取れることは、「紙取り機構15によって引き下げられたトイレットペーパーを押すための人工ハンド10」が開示されているという程度に過ぎない。
(審判事件答弁書12頁1ないし14行)

エ 参考図A及びBに示すように、トイレットペーパー30は、人工ハンド10に前方に押されることはあっても、紙掴み11によって挟まれるような状態とはならない。すなわち、トイレットペーパー30は、人工ハンド10や紙掴み11を覆っているに過ぎない。
請求人が参考図5ないし8に示すように、上下の紙掴み11の間にトイレットペーパー30が位置することは決してなく、甲1発明に対する請求人の理解は、完全に間違っていると言わざるを得ない。
ましてや、請求人が主張するようにカッター12でトイレットペーパー30を切断することなどは、到底不可能である。
請求人が主張する参考図5ないし8によるトイレットペーパー30の把持方法及びカッター12による切断方法は、請求人が自身の都合の良いように解釈した請求人の想像に過ぎないと言わざるを得ない。
繰り返し述べるが、特許法29条1項3号における「刊行物に記載された発明」とは、内容が記載されている発明、言い換えれば、記載された内容により当業者が容易に実施することができる程度に記載されている発明を意味する。そして、発明が記載されているということができるためには、少なくとも発明がどのような構成をもっているかが示されていなければならない。
刊行物の記載を読むことによって当業者ならば当然に理解される発明は、記載された発明といえるが、その記載を読み、多少とも思考を働かすことにより初めて類推することができる発明は記載された発明ではない。
よって、参考図5ないし8に示すような機構は、甲第1号証に「記載された発明」ということはできない。
……
よって、答弁書でも述べた通り、甲1発明の内、人工ハンド10についての構成要件は、「b 紙取り機構15によって引き下げられたトイレットペーパーを押すための人工ハンド10」であることに変わりはない。すなわち、……甲1発明の人工ハンド10では、トイレットペーパーを取り付けることができない。
(平成28年6月9日付け口頭審理陳述要領書5頁3行ないし6頁16行)

(3)甲第1号証の人工ハンド10の移動について
甲第1号証の図7乃至図12は、あくまでも、出願人が人工ハンド10のみの動きをシミュレーションしただけのものであるから、甲1発明が、人工ハンド10をどのようにして便器5内に進入させるかについては、図7乃至図12を見ただけでは、理解ができないと、当業者は理解する。
仮に、当業者が、図7乃至図12を参考にしたとしても、何らかの方法で、人工ハンド10が便器5の後方から便器5内に進入させているのであろうという程度までにしか理解することができない。すなわち、甲第1号証の出願人は、人工ハンド10を便器5内に進入させる構造について、発明を完成させていなかったと言わざるを得ない。
図2にて、便器5と人間工学便座1との間には何らの間隙も設けられていないこと及び甲1発明が配置されていないことを考慮にいれ、さらに、「便器(5)内に進入」との記載があることから、当業者は、善解して理解したとしても、「便器5の後方から、便器5内に人工ハンド10を進入させるということは、便器5に穴を開けて、人工ハンド10を便器5内に進入させるのではないか」という点くらいまでしか、理解することができない。ただし、この理解は、あくまでも、当業者の推測に過ぎないわけであるから、甲第1号証には、「便器と便座との間隙を介して、人工ハンド10が移動している」との発明が記載されているということはできない。
(審判事件答弁書13頁9行ないし14頁8行)

(4)甲1発明の認定について
ア 甲第1号証からは、人工ハンド10が、どのようにしてトイレットペーパーを取り付けているのか、当業者にとって、皆目見当がつかないものであるから、トイレットペーパーを取り付けるための部材として機能している人工ハンド10が、甲第1号証に記載されているということはできない。
よって、構成要件Bが、甲第1号証に記載されているとは言えない。甲第1号証に記載されているのは、「紙取り機構15によって引き下げられたトイレットペーパーを押すための人工ハンド10」に留まる構成に過ぎず、人工ハンド10にトイレットペーパーが取り付けられているわけではない。
(審判事件答弁書14頁13ないし21行)

イ 甲第1号証には、構成要件D「前記拭き取りアーム駆動部は、便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させる」は、開示されていない。
甲第1号証において、人工ハンド10を移動させているのは、人工ハンド機構16であるが、人工ハンド機構16については、甲第1号証の抄訳文の7頁の21行?25行に記載されているように、「人工ハンド機構16は、人工ハンド10を後方から移動して便器5内に進入させるとともに、便器5の後方の位置まで戻す」といった機能を有することとなる。
よって、構成要件Dに関連して、甲第1号証には、「人工ハンド機構16は、人工ハンド10を後方から移動して便器5内に進入させるとともに、便器5の後方の位置まで戻す」が開示されているといえる。
(審判事件答弁書15頁7ないし末行)

(5)本件特許発明と甲1発明との相違点について
ア 甲第1号証に記載の甲1発明の構成は、以下の構成となる。
「a トイレットペーパーで臀部を拭く臀部拭き取り装置であって、
b 紙取り機構15によって引き下げられたトイレットペーパーを押すための人工ハンド10と、
c 臀部を拭き取る位置までトイレットペーパーを押しながら人工ハンド10を移動させる人工ハンド機構16と、
d 人工ハンド機構16は、人工ハンド10を後方から移動して便器5内に進入させるとともに、便器5の後方の位置まで戻すことを特徴とする、臀部拭き取り装置。」
(審判事件答弁書16頁15ないし24行)

イ 本件発明15は、「B トイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアーム」であるのに対して、甲1発明は、「b 紙取り機構15によって引き下げられたトイレットペーパーを押すための人工ハンド10」であり、構成要件Bと構成要件bとを比較した場合、構成要件bは、トイレットペーパーを取り付けることができないという点で、相違する。
(審判事件答弁書17頁6ないし10行)

ウ 本件発明15では、「D 前記拭き取りアーム駆動部は、便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させる」のに対して、甲1発明は、「d 人工ハンド機構16は、人工ハンド10を後方から移動して便器5内に進入させるとともに、便器5の後方の位置まで戻す」のであるから、拭き取りアーム(人工ハンド10)を移動させるという点については一致する。しかし、甲1発明では、人工ハンド機構16は、人工ハンド10を後方から移動して便器5内に進入させるとともに、便器5の後方の位置まで戻すのであり、「便器と便座との間隙を介して、人工ハンド10を移動させているのではない」ため、その点について、相違する。
(審判事件答弁書17頁21ないし末行)

(6)無効理由1について
甲1発明は、本件発明15の構成要件B「前記トイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアーム」を備えていないため、本件発明15は、甲第1号証に記載された発明ではないので、特許法第29条1項3号の無効理由は存在しない。
また、……構成要件Dと構成要件dとは相違し、これらは,実質的に同一であるとも言えない。すなわち、甲1発明は、本件発明15の構成要件D「前記拭き取りアーム駆動部は、便器と便座との間隙を介して、前記拭き取りアームを移動させる」という構成を備えていないため、本件発明15は、甲第1号証に記載された発明ではないので、特許法第29条1項3号の無効理由は存在しない。
(審判事件答弁書18頁3ないし12行)

(7)無効理由2及び3について
ア 請求人は、甲第1号証には、構成要件Bに相当する構成が記載されていると主張しているが(審判請求書11頁5?7行(4.1.3))、……甲第1号証には、構成要件Bは開示されていない。
また、人工ハンド10にトイレットペーパーが取り付けられていないという相違点を埋めるための先行技術について、請求人からの主張は一切ない。
さらに、人工ハンド10にトイレットペーパーを取り付けるための機構が、周知慣用技術であったという事実もないため、構成要件Bについての相違点を先行技術で埋めるための論理づけをすることができない。
よって、本件発明15の進歩性は肯定され、本件発明15には、特許法第29条2項の無効理由は存在しないこととなる。
(審判事件答弁書18頁20ないし30行)

イ 洗浄ノズルの技術分野は、臀部の洗浄装置に関するものであり、検査用アームの技術分野は、排泄物の検査装置に関するものである。一方、臀部拭き取り装置の技術分野は、臀部の水分や汚れを拭き取る臀部拭き取り装置に関するものである。いずれもトイレで使用されるという点でのみ共通するだけであり、これら3つは、全く異なる技術分野に属する発明であると言わざるを得ない。
また、洗浄ノズルが課題とするところは、臀部の適切な洗浄であり、検査用アームが課題とするところは、排泄物や尿の適切な採取である。一方、臀部拭き取り装置の課題とするところは、臀部の水分等の適切な拭き取りである。このように、洗浄ノズル及び検査用アームにおける課題と、臀部拭き取り装置における課題とは、全く異なるものであると言わざるを得ない。
さらに、洗浄ノズルによる作用効果は、洗浄ノズルを臀部の下に配置して臀部の水洗浄を行うことであり、検査用アームによる作用効果は、検査用アームを排泄物や尿が落下する地点に配置して排泄物や尿を採取することである。一方、臀部拭き取り装置の作用効果は、トイレットペーパーが取り付けられた拭き取りアームを臀部の肛門付近に接触させて、臀部に付着している水分や汚れを拭き取ることである。このように、洗浄ノズル及び検査用アームによる作用効果と、臀部拭き取り装置による作用効果とは、全く異なるものであると言わざるを得ない。
このように、技術分野・課題及び作用効果のいずれにおいても、一切共通性を見出すことができず、洗浄ノズルや検査用アームによる周知技術を、臀部拭き取り装置に適用することは、当業者にとって、一切動機づけとなるものではない。よって、構成要件Dについて、当業者が洗浄ノズルや検査用アームによる周知技術を適用することを論理づけることはできない。
仮に、甲1発明がトイレに使用される装置であるとの理由から、甲第2乃至7号証との共通性が認められ、甲第2乃至7号証を適用する動機づけになったとしても、人工ハンド10を便器5の後方に配置するには、人工ハンド10並びに人工ハンド10よりもはるかに大スペースを有する複数のシリンダ・ピストン機構及び紙引き出し機構15も配置しなければならないわけであるが、甲第2号証乃至甲第7号証に示すような周知技術における便器と便座との間隙はあまりに小さすぎて、このような周知技術を甲1発明に適用することはできないと、当業者であれば、考えるはずである。
よって、甲1発明及び甲第2乃至7号証に示す周知技術に基づいて、本件発明15を容易に発明することはできない。よって、本件発明15は進歩性を有すると言える。
(審判事件答弁書19頁17行ないし20頁14行)

ウ 人工ハンド10には、甲第1号証の図5に記載のように、人工ハンド10を駆動させるために,人工ハンド10の後方に複数のシリンダ・ピストン機構が設けられており、さらに、紙引き出し機構15が、人工ハンド10の前方に設けられている。したがって、人工ハンド10を便器5の後方に配置するに際して、図5に示すような複数のシリンダ・ピストン機構と紙引き出し機構15を一緒に配置しなければならないわけである。したがって、当業者としては、洗浄ノズルを便器5の後方に配置するだけではなく、大スペースを有する紙引き出し機構15と人工ハンド10をどのように配置すればよいかと考えるのが当然である。
したがって、単に、洗浄ノズルの技術である甲第2乃至5号証を適用すればよいとの発想に当業者が至ることはないと言わざるを得ない。
甲第2乃至5号証では、便座のほとんどが便器に接触しており、便器と便座との間隙に設けられたスペースはあまりに小さいため、仮に、人工ハンド10が洗浄ノズルも兼ねているという理由で、当業者が甲第2乃至5号証を参照したとしても、紙引き出し機構15を人工ハンド10の前に配置した上で、人工ハンド10をシリンダ・ピストン機構によって推し進めるためのスペースは、甲第2乃至5号証の技術には全く存在しないのは明らかであるから、甲第2乃至5号証を参照したところで、甲第2乃至5号証の技術を構成要件Dの相違点の解消のために適用すると考えることなどありえない。
甲第6及び7号証には、便器の外側から機器を臀部の下に移動させる機構を開示しているのは確かであるが、……技術分野、課題、及び作用効果を全く異にするものであり、甲第6及び7号証が、便器の外側から機器を臀部の下に移動させる機構を開示しているということだけを以てしては、甲第6及び7号証に記載の技術を、適用するという動機づけとはならない。
仮に、便器の外側から機器を臀部の下に移動させる機構の共通性という点が認められたとして、当業者が甲第6及び7号証を閲覧したとしても、人工ハンド10を便器5の後方に配置するには、人工ハンド10よりもはるかに大スペースを有する複数のシリンダ・ピストン機構と紙引き出し機構15をどのようにして、配置すればよいか皆目見当がつかないため、甲第6及び7号証に記載の技術を構成要件Dの相違点に適用することを論理づけることは不可能である。
よって、構成要件Dに対して、当業者が甲第2乃至7号証に記載の技術を適用して、本件発明15を発明することは,容易に想到できるものではない。
(審判事件答弁書21頁27行ないし22頁23行)

3 別件訂正後の本件特許発明について
(1)対比
本件特許発明と甲1発明とを対比すると、…以下の点で相違する。
<相違点>
本件特許発明では、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、拭き取りアームが移動するのに対して、甲1発明では、人工ハンド10は、便器から突き出されるとされているに過ぎない点。
(上申書2頁10ないし20行)

(2)無効理由1について
上記(1)で述べた通り、実質的な相違点が存在するため、…無効理由1には、理由がない。
(上申書2頁22ないし24行)

(3)無効理由2及び3について
上記(1)で述べた通り、…本件特許発明と甲1発明とは相違点を有する。
甲第2号証ないし甲第7号証のいずれにも、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、拭き取りアームが移動する構成を開示しておらず、その示唆に関する記載も一切存在しない。よって、…無効理由2及び3には、理由がない。
(上申書2頁26行ないし3頁1行)


第6 当審の判断
1 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
ア 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、次の事項が記載されている(訳文は請求人が提出したものである。下線は審決で付した。)。なお、甲第1号証には、公開日が記載されていないが、当審の職権調査において、請求人の主張のとおり平成17年10月16日に公開されたことを確認した。

(ア)






(7頁13行ないし8頁15行)
(訳文)
「本発明のシステムは、人間工学的および解剖学的な対策以外に、排便後の洗浄と衛生を提供するために追加的な注意も行っている。排便の前に臀部に吹き付けるオイルは、排泄物粒子の付着を防止することができ、洗浄ステップに役立つ。排便の前と、紙ロール7からトイレットペーパ30を取る前にオイル吹き付けステップを実施するか;もしくは、オイルを吹き付けることなく、トイレットペーパを取るステップを行う。本発明の図3のシステムの紙引き出し機構15によって、トイレットペーパ30を取るステップを実施する。
図4では、本発明のシステムの人工ハンド機構16を見ることができる。人工ハンド10の末端のノズル13、または人工ハンド上のどこかの(末端、または上面、または近傍の)ノズルにおいて、オイル吹き付けを行うことができる。ノズル13の構造は、さまざまな応用を許容可能な形状になり得る。これらの実施例中の一実施例においては、ノズル構造は、オイル、水、空気の通路の3つの流体噴射を有することができる。他の実施例においては、オイル-空気、または水-空気の通路の2つの流体噴射を有することができる。1回に1つの流体しか噴射しない(つまり、オイルを吹き付ける際に、他の流体について同時に作業することはない)ため、上記各吹き付けステップが同じ開口で実施されるとしても、流体を外へ搬送する供給通路とノズル出口とが完全に独立しているので、互いに混ざり合う可能性はない。ただし、この吹き付けステップは、独立したノズルで実施することができ、この場合も、互いに混ざり合う可能性はない。
人工ハンド10の末端に位置するかまたは人工ハンド10上のどこかに位置するノズル13でオイル吹き付けステップを実施し、さらに、人工ハンド10の末端に位置するかまたは人工ハンド10上のどこかに位置するノズル13から吹き付けられた温水または冷水で、臀部上の固体粒子をほぼきれいに取り除く。もしくは、必要な場合には、水吹き付けステップを省略することができる。これらのステップの後で、臀部上の残留粒子を完全に除去するために臀部を拭かなければならない。このため、人工ハンド10が紙ロール7からトイレットペーパ30を繰り返し取るとともに、使用済みのトイレットペーパ30が完全に白くなるまで清拭ステップを継続する。」

(イ)







(9頁16行ないし10頁18行)
(訳文)
「図3に示すように、紙ロール7の位置は上方にあるが、側方または下方にあってもよく、これらの取り付け方式は、容易に紙を交換することできかつ紙ロールを環境の影響からできる限り遠ざけるように設計することができる。
紙取り機構は便器の後方に取り付けられ、図3に示すように、紙取り機構15でトイレットペーパ30を紙ロール7から自動的に引き下ろし、手動で介入しない。紙ロール7からトイレットペーパ30を取り出すために下保持クリップ9が上向きに移動し、下保持クリップ9が最高点に達したとき、下保持クリップ9のホルダが圧縮によってトイレットペーパ30を挟み付け、下保持クリップ9が、下向きに移動することによってトイレットベーパを引き下げる。このため、トイレットペーパ30は、使用のために準備が整っている。
人工ハンド10は、紙取り機構15の内側から外側へ移動することによってトイレットペーパを押し引きし、紙ロール7上のトイレットペーパ30はまず、上保持クリップ8により保持された後、下保持クリップ9が上保持クリップ8の底部まで上向きに移動し、下保持クリップ9により圧縮される。上保持クリップがロール7からの紙をゆるめ、紙が下保持クリップ9により圧縮されるため、回転する際に開き、人工ハンド10の上面と下面を被覆する。被覆ステップは、人工ハンド10が便器から完全に突き出るまで継続する。人工ハンド10が完全に突き出たとき、人工ハンドの紙挟み11が上下両方向からトイレットペーパを圧縮し、上保持クリップと下保持クリップが同時に紙を解放してゆるめる。このステップの理由は、紙が下保持クリップ9上に残るのを回避することにある。
このため、トイレットペーパ30が人工ハンド10の周囲を被覆し、人工ハンド10に固定されて留まる。紙挟み11のちょうど後方上端に位置するカッタ12が、固定されている間にトイレットペーパ30を切断し、トイレットペーパ30はロール7から分離される。このため、紙ロール7は清潔に保たれ、人工ハンド10上のトイレットペーパ30を紙ロール7から分離することによって衛生を提供する。紙ロール7から離れて人工ハンド10を被覆するトイレットペーパ30が、人工ハンド10を容易に移動させる。トイレットペーパ30を破り取った後、自由な人工ハンド10が洗浄を行う準備をする。垂直位置で中心からずれるように後から前へ臀部を拭くことで洗浄ステップを実行し、このため、洗浄ステップを実行する際に、敏感な領域まで粒子を広げるおそれがない。」

(ウ)


(11頁3ないし7行)
(訳文)
「図5と図6において、人工ハンド10と紙取り機構15の動作を模擬する機構の構造を示す。
移動可能な台6、人工ハンド10、および紙取り機構15の駆動は、単一のモータにより実行するか、または複数の独立したモータにより運転するか、または、油圧システムにより行うことができ、手動駆動機構のみを使用してもよい。」

(エ)図3ないし図6は、次のものである。



(オ)


(11頁8ないし20行)
(訳文)
「図7?12において、人工ハンド機構16の操作を示している。図7において、人工ハンド10の初期位置を見ることができる。図8では、人工ハンド10の第2の位置を見ることができ、図中の人工ハンドが移動して紙を取り;この位置で、上ホルダ8と下ホルダ9によってトイレットペーパ30を伸ばし、トイレットペーパ30が人工ハンドを被覆し、しかるのちに、ロール7からトイレットベーパを破り取る。第3の位置では、図3(審決注:「図9」の誤記と認める。)のように、人工ハンド10が動き出て洗浄位置を取り;この位置で、人工ハンド10が便器の後方から前方へ中心からずれた動きで清拭ステップを実行する。図10の第4位置では、人工ハンド10が、あらゆる機能を遂行してから引っ込み、汚れたトイレットペーパがこの位置でゆるむ。図5(審決注:「図11」の誤記と認める。)の第5の位置では、人工ハンド10がすべての機能を遂行して戻るのを見ることができ、この位置は、第1の位置と呼ばれる初期位置と同じである。図12は人工ハンド10の第6の位置であり、人工ハンドが消毒液容器14内にあるのを見ることができる。しかるのちに、人工ハンド10が再び第5の位置に戻り、次回の使用を待つ。」

(カ)図9は、次のものである。


イ 上記ア(ア)ないし(エ)によれば、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「トイレットペーパ30が周囲を被覆し、固定されて留まる人工ハンド10と、
人工ハンド10を駆動し便器から突き出すモータまたは油圧システムとを備えた、
臀部を拭く洗浄ステップを実行する人工ハンド機構16。」

ウ なお、被請求人は、甲1発明の「トイレットペーパ30が周囲を被覆し、固定されて留まる人工ハンド10」の構成に関し、甲第1号証には、紙取り機構15、紙挟み11及びカッタ12の具体的機構が開示されていないから、トイレットペーパ30を取り付けるための部材としての人工ハンド10が甲第1号証に記載されているとすることはできない旨主張し、特に、トイレットペーパー30は、人工ハンド10や紙掴み11を覆うが、紙掴み11によって挟まれるような状態とはならない旨主張する(上記第5、2(2)及び(4)を参照。)。
しかし、本件特許の出願当時の技術水準を踏まえれば、甲第1号証に記載された上保持クリップ8、下保持クリップ9、人工ハンド10、紙挟み11及びカッタ12の各動作をモータ又は油圧システムにより実現する機構は直ちに理解することができる。紙挟み11により上下両方向からトイレットペーパを圧縮することについても、上保持クリップ8及び下保持クリップ9と紙挟み11の位置関係並びに紙挟み11の人工ハンド10上の設置位置を調整することや、人工ハンド10の上面と下面をトイレットペーパ30にて被覆した後、上保持クリップ8及び下保持クリップ9を人工ハンド10側へ移動すること等により実現できることは当業者にとって明らかである。
よって、上記被請求人の主張は採用できない。

(2)甲第2号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0009】
【実施例】以下、本考案に係る衛生洗浄装置におけるノズル収容部の構造の一実施例を図1乃至図3に従って説明する。図面において、1は本体を内蔵した衛生洗浄装置のケーシングであり、便器3の後端部に位置して便座4の後方に固設したものである。このケーシング1は、上カバー5と下カバー6によって衛生洗浄装置の機構(図示せず)を収容する内腔7を構成してあり、該内腔7の略中央位置に局部洗浄ノズル8の格納部と該ノズル駆動機構9を構成してある。局部洗浄ノズル8は、該部に固設したノズルケース10に対して出退自在に内挿すると共に、ノズルヘッド11にビデ洗浄用吐水孔12と肛門洗浄用吐水孔13を穿設し、両吐水孔12,13が使用時に所定の位置に進出するように、上記ノズル駆動機構9によって一定のストロークで進退する構成になるもので、該局部洗浄ノズル8の進出位置と対応する前記ケーシング1の壁面にはノズル挿通孔14を穿設してある。……」

イ 上記アを踏まえて、図1をみると、ノズル駆動機構9は、便器3の後端部と便座4の後端部の隙間を介して、局部洗浄ノズル8を進退することがみてとれる。

(3)甲第3号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0014】洋風便器5の後部上面にロータンク(図示略)が設置され、このロータンクを覆うようにタンクカバー6が設置されている。このタンクカバー6の前部は洋風便器5の便鉢7の後縁から前方へせり出しており、その下面部分に開口8が設けられている。
【0015】タンクカバー6内に洗浄ノズル9が設置されている。この洗浄ノズル9は、便鉢7内へ突出可能なノズル本体9aを備えている。」

イ 「【0020】第1図(b)の如くシャッター10を引き上げることにより、ノズル本体9aが便鉢7内へ突出可能となる。該ノズル本体9aを突出させ、その先端から温水を噴出させることにより、便座16に着座した使用者の臀部を温水で洗浄することができる。」

ウ 上記ア、イを踏まえて、図1(b)をみると、洋風便器5の便鉢7の後縁と便座16の後縁の隙間を介して、ノズル本体9aが便鉢7内へ突出することがみてとれる。

(4)甲第4号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0023】
図1乃至図4において、便器1は公知または専用のもので人体局部洗浄装置2は便器1の上に配置されている。人体局部洗浄に要する機器を収容する機器収容部10は、上部カバー12及びベース部材11からなり、ベース部材11は直接便器1の上面に載置され、上部カバー12はそのベース部材11の上面を覆うように配置されている。また、便蓋3と便座4は、機器収容部10付近に回動自在に取付けられている。」

イ 「【0031】
洗浄ノズルユニット70は、最大径のシリンダ72に収容したピストン74が洗浄ノズル76に連結されており、ピストン74が洗浄ノズル76と共に給水口71から供給される水圧によって前進し、シリンダ72の先端に位置するシリンダ円錐部72aがピストン円錐部74aに当接することにより移動が停止される。このとき、シリンダピストン74の先端に位置するシリンダ円錐部72aがピストン円錐部74aに当接した洗浄ノズル76の突出した噴射口77の位置が、お尻洗浄時の位置となる。」

ウ 「【0041】
図1乃至図6において、使用者が便座4に着座し、回転ダイヤル21を前方に移動させない状態で、左回転させると、図7にあるように二一ドル36が開き、給水口31からの供給水が内部水路を経て流量安定装置35を経由して弁座37との間隙を通過して給水出口39に至る。
【0042】
次に、接続ホース69を通過して給水口71を経由して、シリンダ72内に流れ込み、シリンダ72の内圧でピストン74を前方に移動し、ピストン円錐部74aがシリンダ円錐部72aに当接して、洗浄ノズル76の先端部の噴射口77から噴出方向77aに添って洗浄水が噴出し、お尻洗浄位置Aに到達する。」

エ 上記アないしウを踏まえて、図1、3及び5をみると、機器収容部10のベース部材11と便器1、便座4との位置関係からみて、便器1の後縁と便座4の後縁の隙間を介して、洗浄ノズル76が突出するものと認められる。

(5)甲第5号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の第1の具体例の衛生洗浄便座装置を上方から眺めた模式図である。
すなわち、この衛生洗浄便座装置は、腰掛便器300の上部後方の平坦面300Fに設置された衛生洗浄便座装置本体500を有する。衛生洗浄便座装置本体500には、便座410と、便蓋400と、が設けられている。」

イ 「【0020】
そして、本具体例においては、衛生洗浄便座装置本体500は水洗腰掛便器300の上部後方の平坦面300Fに設置され、その前面510が腰掛便器300のボウル310の開口の形状に沿って湾曲している。なおここで、「後方」とは、図1に表したように、通常ロータンク200やフラッシュバルブなどが設置される側であり、通常の使用態様において使用者からみて遠い側を意味する。そして、この湾曲した前面510の左右には、前方に向けて延出した延出部500Pが設けられている。また、湾曲した前面510には、「おしり」を洗浄するための洗浄ノズルを出し入れするための開口部520が設けられている。開口部520には、塞ぎ板525が設けられ、洗浄ノズルは、この塞ぎ板525の裏側に収容されている。」

ウ 「【0026】
図6は、本具体例の衛生洗浄便座装置における洗浄ノズルの進退を説明するための模式断面図である。
すなわち、同図(a)は洗浄ノズルが衛生洗浄便座装置本体500内に収容された状態を表し、同図(b)は洗浄ノズルがボウル310内に進出した状態を表す。
洗浄ノズル530は、取り付け台532の上に設けられた第1シリンダ534と、第1シリンダ内に摺動自在に設けられた第2シリンダ536と、第2シリンダ内に摺動自在に設けられた第3シリンダ538と、を有する。第3シリンダ538の先端付近には、吐水口(図示せず)が設けられ、使用者の「おしり」などに向けて水を噴射可能とされている。」

エ 上記アないしウを踏まえて、図6をみると、水洗腰掛便器300の上部後方と便座410の後縁の隙間を介して、洗浄ノズルが出し入れされることがみてとれる。

(6)甲第6号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は便座装置で、特に尿便等の排泄時に、必要に応じて尿便等の排泄物中に含まれる成分を検出する装置に関するものである。」

イ 「【0038】図5において、3は排泄物受け手段であり受け皿様のアタッチメントの形態をしている。4は収容手段であり、ポリエチレン等の軟質の素材でスポイト状に形成してあり、支持アーム28の先端部に取り付けてある。20は収容手段4のスポイト機構を駆動するための接続ベルトでピン接続部20を介して収容手段4につながっている。接続ベルト20には便座装置本体1内においてラックギヤを設けてあり、これと嵌合したピニオンギヤ30と合わせてラック&ピニオン機構を構成している。このラック&ピニオン機構によって収容手段4のスポイト機構が伸び縮みを行う。支持アーム28はパイプ状に形成し、便座装置本体1内においてラックギヤを設けてあり、これと嵌合したピニオンギヤ29と合わせてラック&ピニオン機構を構成している。このラック&ピニオン機構によって便座装置本体1からの突き出し、引き込みを行う。13は排泄物受け手段3を支持アーム28に着脱自在に取り付けるための取り付けピンである。排泄物受け手段3は支持アーム28に設けられた取り付けピン13に嵌合することによって、着脱自在に取り付けることができる。……」

ウ 「【0043】
次に図8(c)?(d)に示すように便座装置本体1内の駆動モータによる支持アーム28の巻き取りによる、便座装置本体1への引き込みが開始する。支持アーム28とは独立的に便座装置本体1から突き出された自動着脱用棒22に、支持アーム28に取り付けられた排泄物受け手段3に設けた脱着用のリブが当たるまで、支持アーム28が引き込まれると、排泄物受け手段3に設けた脱着用のリブが、自動着脱用棒22により押されて、これにより支持アーム28から排泄物受け手段3に自動的に外れる。さらに便座装置本体1内の駆動モータによる支持アーム28の巻き取りによる、便座装置本体1への引き込みが続き、収容手段4が支持アーム28とともに、便座装置本体1内に移動する。」

エ 上記アないしウを踏まえて、図11をみると、便器の後縁と便座2の後縁の隙間を介して、排泄物受け手段3を取り付ける支持アーム28の突き出し、引き込みがされることがみてとれる。

(7)甲第7号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は人から便器に放出される尿成分を検査する尿検査装置に関し、特に糖濃度等を検査する装置に関するものである。」

イ 「【0020】(実施例1)図1は、本発明の実施例における尿検査装置を標準便器に装着した構成を示す平断面図、図2は同側断面図である。
【0021】図1および図2において、11は一般的に洋式便器と呼ばれる標準便器で、便器ボウル12、便器洗浄用の水を貯留しておくロータンク13および回動開閉自在の便座14が構成される。
【0022】15は駆動プレートで、この駆動プレート15の上方には尿に含有される特定の成分の濃度に相関を持った出力信号を発生する光学式のセンサ16が、センサ保持部17により保持される。また18は、センサ16を移動させ、便器ボウル12内へと突出させたり所定の収納位置へ収納させたりするセンサ駆動ユニットで、センサ駆動手段19である周知のステッピングモータや、複数の歯車20により構成してある。
【0023】21はセンサ16およびセンサ保持部17とセンサ駆動ユニット18を連結する可撓性の連結部材で、周知のラックが構成されたロープ状の樹脂である。この連結部材21は待機状態においてはセンサ駆動ユニット18内部に巻き取り保持される構成となっており、巻き取られていない一端はセンサ保持部17に接続されている。なお、連結部材21は歯車20と噛み合うことでセンサ駆動手段19の駆動力が伝達され、必要に応じて進退動作する構成となっている。
【0024】22は収納ユニットで、センサ16、センサ保持部17、センサ駆動ユニット18等を備える駆動プレート15は、この収納ユニット22に挟み込まれるように収納される。また、収納ユニット22の外には洗浄液誘導手段としての洗浄カバー23が突出しており、この洗浄カバー23は便器11と便座14の隙間から便器ボウル12に臨むよう構成してある。この洗浄カバー23の上面には洗浄手段の一部をなす洗浄ノズル24が下向きに洗浄水を噴出するよう構成してあり、センサ16およびセンサ保持部17はこの洗浄ノズル24から噴出される洗浄水によって洗浄される。また、洗浄カバー23の内部にはセンサ16の突出方向を規制するセンサガイド25が駆動プレート15から突出しており、方向可変ユニット26によってセンサガイド25およびセンサ16は使用者の前後方向に位置可変できるよう構成してある。」

ウ 「【0031】こうして収納ユニット22は便器11の左側部外側に位置し、洗浄カバー23を便器11と便座14の隙間に臨ませる構成で既設の便器11に装着されるものである。
【0032】39は取付部材36に設けた当接部で、この先端を上記した収納ユニット22を装着した状態で、便器11の側壁40と当接するように構成される。この当接部39には、例えば回転等の螺合による調節手段41が設けてあり、既設の便器11のサイズに合わせて当接部39を移動調節し側壁40と当接させるものである。
【0033】上記構成における動作について説明する。使用者はまず便座14に着座する。ここで測定ボタン28を押すと、制御手段35がセンサ駆動手段19を駆動せしめることで、この駆動手段19の駆動力は歯車20を介して連結部材21へと伝達される。そして、センサ16は待機位置から前進し、洗浄カバー23内部に備えたセンサガイド25によってその突出方向を決定され、便器ボウル12内へと突出される。つまり、便器11と便座14の隙間から尿を受ける位置へと突出する。
……
【0035】次に連結部材21をセンサ駆動ユニット18内に巻き取る方向にセンサ駆動手段19を駆動させるとともに、電磁弁33を開放し、また洗浄水ポンプ34を駆動し、ここに連結された洗浄ノズル24から洗浄水を噴出させる。便器ボウル12内に位置していたセンサ保持部17およびセンサ16が、この洗浄水を噴出する洗浄ノズル30の下方を通過する際に洗浄されるものであるが、好ましくは一旦センサ駆動手段19を停止させて洗浄を確実なものとし、センサ16の出力により洗浄度合いを検知した後、電磁弁33を閉塞する制御が望ましい。また、センサ16の内部まで入り込んだ尿が洗浄されるまで時間がかかる場合には、洗浄水を断続的に供給することで節水を図ることもできる。
【0036】こうしてセンサ駆動手段19により連結部材21を巻き取り、センサ16を収納ユニット31内の待機位置に移動し次の測定時まで待機させるものである。」

2 無効理由1について
(1)対比・判断
本件特許発明と甲1発明とを対比する。

ア 甲1発明の「トイレットペーパ30が周囲を被覆し、固定されて留まる人工ハンド10」により、「臀部を拭く洗浄ステップを実行する」「人工ハンド機構16」は、本件特許発明の「トイレットペーパーで臀部を拭く」「臀部拭き取り装置」に相当する。

イ 甲1発明の「トイレットペーパ30が周囲を被覆し、固定されて留まる」「人工ハンド10」は、本件特許発明の「トイレットペーパーを取り付けるための」「拭き取りアーム」に相当する。

ウ 甲1発明の「人工ハンド10を駆動し便器から突き出す」「モータまたは油圧システム」は、特許発明の「臀部を拭き取る位置まで前記拭き取りアームを移動させる」「拭き取りアーム駆動部」に相当する。

エ 以上によれば、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
「トイレットペーパーで臀部を拭く臀部拭き取り装置であって、
前記トイレットペーパーを取り付けるための拭き取りアームと、
前記臀部を拭き取る位置まで前記拭き取りアームを移動させる拭き取りアーム駆動部とを備えた、臀部拭き取り装置。」

オ 他方、両者は以下の点で相違する。
<相違点>
本件特許発明では、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙を介して、拭き取りアームが移動するのに対し、甲1発明では、人工ハンド10は、便器から突き出される点。

カ よって、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明とすることはできない。

(2)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明の特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対してなされたものとすることはできない。

3 無効理由2及び3について
(1)対比
本件特許発明と甲1発明とを対比すると、上記2(1)で示した一致点で一致し、相違点で相違する。

(2)判断
ア 相違点について
(ア)甲第2号証ないし甲第5号証の各々には、衛生洗浄便座装置において、便器の後縁と便座の後縁の隙間を介して、洗浄ノズルを洗浄位置まで移動させることが記載されている(上記1(2)ないし(5)を参照。以下「甲2ないし5技術」という。)。甲第6号証には、排泄物中に含まれる成分を検出する装置において、便器の後縁と便座2の後縁の隙間を介して、排泄物受け手段3を取り付ける支持アーム28を突き出すこと(上記1(6)を参照。以下「甲6技術」という。)が記載されている。また、甲第7号証には、尿成分を検査する尿検査装置において、センサ16及びセンサ保持部17を便器11と便座14の隙間から尿を受ける位置へと突出させることが記載されている(上記1(7)を参照。以下「甲7技術」という。)。
甲2ないし5技術、甲6技術及び甲7技術によると、洗浄ノズルや検査用アームを便器と便座の隙間を介して移動させることは、本件特許の出願当時、周知の技術であったと認められる。
(イ)しかしながら、上記周知技術における便器と便座の隙間について、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じるものではなく、さらに、請求人が提示するその他の証拠をみても、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じる便器と便座との間隙は、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に上記周知技術を適用したとしても、便器と便座との間隙が、便座昇降装置により便座が上昇された際に生じるものとはならないから、上記相違点に係る本件特許発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

なお、被請求人から提出された上申書を請求人に送付し、期間を指定して別件訂正後の本件特許発明に対する弁駁書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。

(3)小括
以上のとおりであって、本件特許発明は、甲1発明、及び甲2ないし5技術、甲6技術、甲7技術又は周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第7 むすび
以上のとおり、審判請求人の主張する無効理由によっては、本件特許発明の特許を無効とすることはできない。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-25 
結審通知日 2017-08-29 
審決日 2017-09-15 
出願番号 特願2007-232005(P2007-232005)
審決分類 P 1 123・ 113- Y (A47K)
P 1 123・ 121- Y (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 俊久  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 住田 秀弘
藤田 都志行
登録日 2010-12-10 
登録番号 特許第4641313号(P4641313)
発明の名称 臀部拭き取り装置並びにそれを用いた温水洗浄便座及び温水洗浄便座付き便器  
代理人 ▲高▼山 嘉成  
復代理人 橋本 卓行  
復代理人 富樫 征也  
代理人 山本 秀策  
代理人 石川 大輔  
代理人 草深 充彦  
代理人 冨宅 恵  
代理人 山本 健策  
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