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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21B
管理番号 1333945
審判番号 不服2015-22686  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-24 
確定日 2017-11-09 
事件の表示 特願2015- 7「荷電粒子ビーム衝突型核融合炉」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月20日出願公開、特開2016-109658〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
この審判事件に関する出願(以下、「本願」という。)は、平成27年1月3日(優先権主張平成26年12月7日)の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。
平成27年 2月24日 拒絶理由通知書(同年3月24日発送)
平成27年 4月29日 手続補正書
平成27年 4月29日 上申書
平成27年 6月 9日 拒絶理由通知書(同年7月7日発送)
平成27年 7月24日 手続補正書
平成27年 7月24日 上申書
平成27年 9月 3日 拒絶査定(同年10月6日送達)
平成27年12月24日 手続補正書
平成27年12月24日 審判請求書
平成28年 1月28日 手続補正書
平成28年 3月15日 手続補正書
平成28年 3月15日 上申書
平成28年 3月23日 却下理由通知書(同年4月19日発送)
平成28年 8月 1日 平成28年3月15日付け手続補正書に係る手続の却下(同年同月4日送達)
平成28年11月22日 拒絶理由通知書(同年同月25日発送)
平成28年12月20日 意見書
平成28年12月20日 手続補正書

2 本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は、平成28年12月20日付け補正書によって補正(以下、「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。なお、下線部は、補正箇所を示し、本件補正によって請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)についての補正はなかった。

「【請求項1】
対向して打ち出す2本の核融合燃料である荷電粒子ビームが
双方共に重水素原子核2H(デューテリウムD)であるもの、
重水素原子核2H(デューテリウムD)と三重水素原子核3H(トリチウムT)であるもの、
重水素原子核2H(デューテリウムD)とヘリウム3原子核3Heであるもの、及び、
双方共にヘリウム3原子核3Heであるもの、であって、
これらの核融合燃料である荷電粒子をクーロン力により加速してパルス状の荷電粒子ビームのバンチにする粒子加速器62、荷電粒子ビームを収束する電子レンズ63、及び荷電粒子ビームの飛翔方向を変える偏向器64からなる「荷電粒子ビーム発生器」を2組、並びに、核融合反応を発生する真空容器55を備え、
真空容器55の中心部に荷電粒子ビームを収束し、2つの荷電粒子ビームの軸を合わせて荷電粒子ビームのバンチ全体が相互に衝突するように飛翔方向を調整し、核融合燃料の組み合わせによって決まる核融合反応断面積が大きくなる適切な速度で対向して衝突させて核融合反応を発生させ、
真空容器55の中心部からパルス状に放射する核融合反応により生成した荷電粒子を電磁誘導作用により減速するとともに、荷電粒子の運動エネルギーを直接電気エネルギーとして取り出す、核融合反応点を取り囲むように配置した回生減速器65を備え、
炉内から未反応燃料粒子及び核融合生成粒子を回収するイオン回収路68を備え、
地球上に豊富にある重水素(D,2H)を最初の燃料として核融合反応を行い、炉内から回収した核融合生成物である三重水素(T,3H)を核融合燃料として使用することで消滅させ、ヘリウム3(3He)の生産を行い、中性子(n)を発生しない核融合燃料ヘリウム3(3He)の生産を行い、核融合燃料サイクルを構成できること特徴とする荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。」
【請求項2】
セラミックなどの絶縁材料で作成した一方が細くなったテーパー形状の容器の外壁面に加速電極(直径が大きい部分には、加速グリッド62aを加える。)を軸方向に複数配置し、先に負、次に正の両極性パルスを加え、半導体スイッチを使用して立ち上がり波形を先鋭化するとともに、先行する立下り波形より立ち上がり波形を早く伝搬する特性を有する遅延回路62dの端子N0?Nnを通して、加速電極(グリッド62a)に順次両極性パルスを印加することによって、クーロン力により荷電粒子を進行方向に加速するとともに圧縮し、容器の形状に従い半径方向にも圧縮して、2本の荷電粒子ビームのバンチを同期して同時に打ち出すことができる電界ピストン型粒子加速器62tを備えることを特徴とする、請求項1の荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。
【請求項3】
複数の減速グリッド65bから成る回生減速器65において、核融合反応により生成したパルス状に飛翔する荷電粒子により個々の減速グリッド65bに発生する誘導電荷を、荷電粒子の飛行速度より遅延して、次のグリッド65bに伝達する遅延回路65d(核融合反応点に近い初段の減速グリッドにおいて、分布定数型のグリッド65fとしたものを含む。)を有する回生減速器65を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。
【請求項4】
核融合反応により生成したパルス状に飛翔する荷電粒子から直接正電荷を受け取り、飛翔する荷電粒子より早く減速グリッド65bに正パルスを順次伝達し、効果的に荷電粒子の減速を行う、核融合反応点に近い絶縁されていない先端部を有する回生減速器65を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。
【請求項5】
対向して打ち出す2本の核融合燃料である荷電粒子ビームが、
双方共に重水素原子核2H(デューテリウムD)であるもの、及び、
重水素原子核2H(デューテリウムD)と三重水素原子核3H(トリチウムT)であるものであって、
核融合生成粒子のうち、回生減速器65や真空容器55を透過した中性子を減速するとともに熱に変える中性子減速材10で満たした熱交換室57を備え、真空容器55を取り囲むように配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。
【請求項6】
セラミックなどの絶縁材料で作成した筒状の容器の外側に電極を設け、位相の異なるプラスまたはマイナスの高電圧を一定の周期で加えることで、
核融合生成粒子である荷電粒子、及び、
対向して打ち出した2本の荷電粒子ビームのうち衝突しなかった未反応粒子を回収して、荷電粒子の状態で移送するイオン回収チューブ68tを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。
【請求項7】
対向して打ち出す2本の核融合燃料である荷電粒子ビームが、
双方共に重水素原子核2H(デューテリウムD)であるものの核融合生成粒子に含まれるヘリウム3原子核3He、及び、三重水素原子核3H(トリチウムT)を、
重水素原子核2H(デューテリウムD)と三重水素原子核3H(トリチウムT)であるものの核融合未反応粒子に含まれる三重水素原子核3H(トリチウムT)を、並びに、
重水素原子核2H(デューテリウムD)とヘリウム3原子核3Heであるもの、及び、双方共にヘリウム3原子核3Heであるものの核融合未反応粒子に含まれるヘリウム3原子核3Heを、
電荷質量比の違いを利用してそれぞれ他の荷電粒子から分離する電荷質量分離器64x
を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。
【請求項8】
核融合反応点を取り囲むように配置した回生減速器65の一部または全部を取り去り、
星形の断面形状を有する真空容器55の壁面で荷電粒子を反射して、先端のイオン回収路68に導き、
荷電粒子の運動エネルギーの一部または全部を熱(電磁誘導電流による発熱を含む。)に変換し、
真空容器55及びイオン回収路68の壁を通して熱伝導により気体あるいは液体を加熱する熱交換室57を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。
【請求項9】
核融合反応点を取り囲むように配置した回生減速器65の一部または全部を取り去り、
星形に成形した真空容器55の壁面で荷電粒子を反射して、先端に配置したノズルから噴射し、
気体、液体、あるいはこれらと紛体との混合物とノズルから噴射した荷電粒子とを混合することで、
原子核反応及び分子の分解並びに加熱膨張を行う混合反応室58を備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。
【請求項10】
核融合反応点を取り囲むように配置した回生減速器65の一部、及び、真空容器55の壁の一部を取り去り、核融合反応による生成粒子の一部を宇宙空間に放出することにより推進力を得ることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60。」

また、発明の詳細な説明の段落【0101】が以下のとおり補正された。
「電荷質量分離器64xで分離された水素原子核1H(p)、重水素原子核2H(D)、ヘリウム3原子核3He及びヘリウム原子核4He(α)は、それぞれ中和してタンクに蓄積する。ヘリウム原子核4He(アルファ粒子α)と重水素原子核2H(デューテリウムD)は、電荷質量比がほぼ同じであるから、分離することが困難である。(化学反応により分離できる。)
「D-3He」と「3He」の記号を付した「荷電粒子ビーム発生器」の対で「D-3He」反応を行うが、400keV(2H:160keV、3H:240keV)で衝突することで、「D-3He」反応は、1barns、「D?T」反応は、0.8barns、「D-D」反応は、0.13barnsであるので、分離できずに残った不純物の影響が若干減少する。
なお、分離せずに回収した粒子を燃料として使用する場合は、副反応が複雑になること、反応に寄与しない粒子を加速するために余分なエネルギーを要すること、様々なエネルギーの粒子が同時に飛翔し回生減速器65の設計が困難になる可能性がある。 」

3 当審拒絶理由
平成28年11月22日付け(発送:同年同月25日)の拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、以下のとおりである。

(実施可能要件)
本願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1に、「炉内から未反応燃料粒子及び核融合生成粒子を回収するイオン回収路68を備え、地球上に豊富にある重水素(D,2H)を最初の燃料として核融合反応を行い、炉内から回収した核融合生成物である三重水素(T,3H)を核融合燃料として使用することで消滅させ、中性子(n)を発生しない核融合燃料ヘリウム3(3He)の生産を行い、核融合燃料サイクルを構成できる」ことが記載されているが、「核融合燃料サイクル」についての具体的な記載は、発明の詳細な説明にはなく、不明である。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1係る発明及び請求項1を引用する請求項2ないし10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。

4 当審拒絶理由の判断
発明の詳細な説明の記載が、当業者が本願発明の「核融合燃料サイクルを構成できる」「荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60」を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるか、以下、検討する。
(1)発明の詳細な説明の記載について
発明の詳細な説明には、「核融合燃料サイクル」を構成する、イオン回収路及び分別に関して以下の記載がある。
「【0099】
イオン回収路68及び未反応粒子68n回収路から、荷電粒子1H(p)、2H(D)、3H(T)、3He及び4He(D-D反応以外の反応で生成する。)を回収する。回収した荷電粒子を粒子加速器62、62tにより10keV程度まで加速して、電荷質量比の違いを利用して、電荷質量分離器64x(磁気スペクトロメータ)により1H(p)、3H(T)、2H(D)、4He(α)、3Heの順に分離する。三重水素原子核3H(トリチウムT)を60keVまで加速し、40keVに加速した重水素原子核2H(デューテリウムD)と核融合反応を行い、三重水素原子核3H(トリチウムT)を直ちに消費する。
【0100】
「D?T」反応の反応断面積が、5barnsであるのに対して、「D-D」及び「D-3He」反応の反応断面積は、0.03barnsと小さく、ほぼ「D?T」反応のみを発生する。三重水素原子核3H(トリチウムT)は、常時ヘリウム3原子核3Heに崩壊し続けているので、炉内の偏向器64による電荷質量比による分離も効果がある。
分離する距離は、ビームの直径が1μm前後であるから、ビームの広がり方にもよるが、10μm程度で十分な反応抑制の効果が期待でき、反応断面積の相違と合わせれば、目的外の核反応を大きく抑制することができる。
【0101】
電荷質量分離器64xで分離された水素原子核1H(p)、重水素原子核2H(D)、ヘリウム3原子核3He及びヘリウム原子核4He(α)は、それぞれ中和してタンクに蓄積する。ヘリウム原子核4He(アルファ粒子α)と重水素原子核2H(デューテリウムD)は、電荷質量比がほぼ同じであるから、分離することが困難である。(化学反応により分離できる。)
「D-3He」と「3He」の記号を付した「荷電粒子ビーム発生器」の対で「D-3He」反応を行うが、400keV(2H:160keV、3H:240keV)で衝突することで、「D-3He」反応は、1barns、「D?T」反応は、0.8barns、「D-D」反応は、0.13barnsであるので、分離できずに残った不純物の影響が若干減少する。
なお、分離せずに回収した粒子を燃料として使用する場合は、副反応が複雑になること、反応に寄与しない粒子を加速するために余分なエネルギーを要すること、様々なエネルギーの粒子が同時に飛翔し回生減速器65の設計が困難になる可能性がある。
【0102】
図12(a)は、「D-D」反応と「D-T」反応のみを経常的に利用する構成の核融合炉の実施例である。
キャピラリー63cは、経路を緩やかに曲げることができることから、右側のDとTのキャピラリー63cを近接して配置している。対向するDの「荷電粒子ビーム発生器」は、1組のみとしている。
キャピラリー63c先端の偏向器64または支持部の駆動機構により、荷電粒子ビームの方向を瞬時に切り替え、それぞれに対応する速度(「D-D」反応では、700keV、「D-T」反応では、40?60keV。)で荷電粒子2H(D)を打ち出す。
32個(切頂二十面体の形状に組み立てる場合)の回生減速器65に付属するイオン回収路68及び2カ所の未反応燃料回収路から、核反応で生成した荷電粒子及び未反応燃料68n(1H(p)、2H(D)、3H(T)、3He及び4He(α))を中和せずに、イオン回収チューブ68tを経由して回収し、再度加速して電荷質量比の違いから粒子を分別し、三重水素原子核3H(トリチウムT)を1秒以内に消費するシステムを構成している。
図12(c)に、イオン回収チューブ68tの構成を示す。図6の電界ピストン型粒子加速器62tを太さが一定の筒状にしたもので、外側に荷電粒子を誘導する電極を設け、3つの相(φ0、φ1及びφ2)からなるプラスまたはマイナスの高電圧を一定の周期で順次加えることで、荷電粒子を移送する。
イオン回収チューブ68tは、32カ所のイオン回収路68に一筆書き状に接続して生成粒子を回収し、パルス状の生成粒子を平均化して電荷質量分離器64xに送っている。
【0103】
「D-D」反応と「D-T」反応では、中性子nが多くのエネルギーを持って飛翔するので、直接電気として取り出せるエネルギーは最大で32.4%までであり、熱出力が67.6%以上を占める。同一の出力の場合、真空容器55の直径を30%程度小さくすることができる。荷電粒子ビーム型核融合炉60を取り囲む熱交換室57内に減速材(水)10を満たし、中性子nの減速及び熱変換を行う。
図12(b)に、水10による中性子nの遮蔽と熱変換、並びに、熱駆動ポンプ66(特許文献7)及び発電機88による熱-電気変換器)を、多面体(正五角形12面、正六角形20面)を構成する32個のユニットで構成した例を示す。各ユニットは、保守のため任意のユニットを取り外すことができる形状に作られているとともに、異なる角度のかみ合わせとなっており、直線的に進んだ中性子が間隙から漏れない構造としている。
図12(d)に「D-D」反応、(e)に「D-T」反応による粒子飛翔図を示す。(未反応粒子68nの軌跡は、省略した。)
荷電粒子1H、2H、3H、3He及び4Heは、回生減速器65で、中性子nは、回生減速器65を透過し、中性子減速材(水)10で減速している。安全のため、及び、中性子減速材(水)10、中性子反射材(鉛など)19を透過した中性子nを遮蔽するため、さらに外側にコンクリート壁が必要である。」

(2)イオン回収路をどのように構成するのかについて
「核融合燃料サイクル」を構成するために必要なイオン回収路に関連する記載が、上記(1)段落【0099】及び【0102】にある。
また、請求人は、平成28年12月20日付け意見書において、「段落0099の最初に「イオン回収路68及び未反応粒子68n回収路から、荷電粒子1H(p)、2H(D)、3H(T)、3He及び4He(D-D反応以外の反応で生成する。)を回収する」こと、及び、段落0102の末尾に、「イオン回収チューブ68tは、32カ所のイオン回収路68に一筆書き状に接続して生成粒子を回収し、パルス状の生成粒子を平均化して電荷質量分離器64xに送っている。」ことを説明している。」と主張している。
段落【0099】及び【0102】の記載から、イオン回収路68及び未反応粒子68n回収路からイオン回収チューブ68tを介して電荷質量分離器64xに接続されていることは分かるものの、実際に発明を実施するにあたり、32カ所のイオン回収路68は、多面体(正五角形12面、正六角形20面)を構成する32個のユニット(段落【0103】に記載の「水10による中性子nの遮蔽と熱変換、並びに、熱駆動ポンプ66及び発電機88による熱-電気変換器」で構成する「ユニット」参照。)の存在する領域を、放射線を遮蔽しつつ貫通する必要がある。しかしながら、発明の詳細な説明及び該ユニットを図示した【図12】(b)を見ても、放射線を遮蔽しつつ32個のユニットを貫通するイオン回収路の具体的な構成は記載されていない。

(3)粒子を分別する装置をどのように構成するかについて
「核融合燃料サイクル」を構成するために必要な粒子を分別する装置に関連する記載が、上記(1)段落【0099】及び【0101】にある。
また、請求人は、平成28年12月20日付け意見書において、「段落0099の2つ目の段落に、図11(図12にも対応する。)を参照し、「回収した荷電粒子を粒子加速器62、62tにより10keV程度まで加速して、電荷質量比の違いを利用して、電荷質量分離器64x(磁気スペクトロメータ)により1H(p)、3H(T)、2H(D)、4He(α)、3Heの順に分離する。」ことを説明しています。」また、「段落0101で、「偏向器64で分離された水素原子核1H(p)、重水素原子核2H(D)、ヘリウム3原子核3He及びヘリウム原子核4He(α)は、それぞれ中和してタンクに蓄積する。ヘリウム原子核4He(アルファ粒子α)と重水素原子核2H(デューテリウムD)は、電荷質量比がほぼ同じであるから、分離することが困難である。(化学反応により分離できる。)」と説明しています。」と主張している。
しかしながら、実際に発明を実施する際には、電荷質量分離器64xや化学反応による分離するための装置を、本発明の「荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60」に適合するように構成する必要があるところ、発明の詳細な説明及び図面には、電荷質量分離器64xや化学反応による分離するための装置の具体的な構成は記載されていない。

(4)
以上のように、発明の詳細な説明には、「核融合燃料サイクル」を構成するために必要な、イオン回収路及び粒子を分別する装置について、具体的な構成の記載はなく、不明となっている。
そして、本願の発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が本願発明を実施するにあたり、前記不明な点に係る構成を得るために過度な試行錯誤を必要とするものである。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明の「核融合燃料サイクルを構成できる」「荷電粒子ビーム衝突型核融合炉60」を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-19 
結審通知日 2017-01-24 
審決日 2017-02-06 
出願番号 特願2015-7(P2015-7)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 靖  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 伊藤 昌哉
森 竜介
発明の名称 荷電粒子ビーム衝突型核融合炉  

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