• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  E03F
管理番号 1334016
審判番号 無効2017-800010  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-01-30 
確定日 2017-11-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第3718279号発明「被包型側溝」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第3718279号(以下「本件特許」という。平成8年3月10日出願、平成17年9月9日登録、請求項の数は1である。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の特許を無効とすることを求める事案である。


第2 手続の経緯
本件審判の経緯は、以下のとおりである。

平成29年 1月30日 審判請求(受付日)
平成29年 4月 7日 審判事件答弁書(差出日)
平成29年 5月12日 審理事項通知(起案日)
平成29年 6月19日 口頭審理陳述要領書(請求人・受付日)
平成29年 6月30日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成29年 7月25日 口頭審理


第3 本件発明
本件特許は、本件特許を対象とした無効2015-800202号の審決(乙第1号証)で、平成28年1月15日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することが認められ、当該審決は確定しているので、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、上記訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(なお、A?B-4の分説は、請求人の主張に基づいて審決において付与した。)
「A 断面凸状の曲面からなる当接部を有する側溝蓋と、
B-1 前記側溝蓋で閉蓋可能な開口部を水平支持部材の上面の略中央に有し、
B-2 前記開口部の端部に前記側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなり、
B-3 下端に沿って連続的に前記側溝蓋の前記当接部の下端部との間に所定の隙間を形成するためのせぎり部が形成された支持面を有するとともに、
B-4 前記水平支持部材の両端辺から下方に垂直支持部材が夫々延設された側溝と
を具備することを特徴とする被包型側溝。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、本件発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書及び口頭審理陳述要領書参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証及び甲第17号証を提出している。
なお、口頭審理陳述要領書に添付した甲第16号証及び甲第16号証-1に係る書証の提出、及び同陳述要領書に記載された甲第16号証及び甲第16号証-1に係る主張の追加による請求の理由の補正については、特許法第131条の2第2項の規定に基づき、平成29年7月25日に行われた口頭審理において、補正許否の決定により、許可しないと決定した。(第1回口頭審理調書参照)

〔無効理由1〕
本件発明は、その出願前に公然実施されたか、または、公然知られた、甲第2号証及び甲第2号証-1に記載された側溝に係る発明と、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
〔無効理由2〕
本件発明は、その出願前に頒布された甲第6号証に記載された発明と、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
〔無効理由3〕
本件発明は、その出願前に頒布された甲第7号証に記載された発明と、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:岐阜地方裁判所において平成15年6月26日に言渡された
(1)平成9年(ワ)第85号不当利得返還請求事件
(2)平成9年(ワ)第348号特許権侵害差止等請求事件
(3)平成10年(ワ)第62号不当利得返還請求事件
の判決
甲第2号証:甲第1号証の裁判で提出された証拠資料、
有限会社リタッグ 代表取締役 平田純一
甲第2号証-1:甲第2号証で表示された場所の平成28年2月17日
時点の写真、加藤久
甲第3号証:特開平6-264494号公報
甲第4号証:特開平6-108526号公報
甲第5号証:特開平7-11701号公報
甲第6号証:甲第1号証の裁判で提出された図面、有限会社青影製作所
甲第7号証:甲第1号証の裁判で提出された製品パンフレット、
株式会社ウチコン等
甲第8号証:プレキャストコンクリート製品-種類、製品の呼び方
及び表示の通則 JIS A5361:2016、
日本規格協会、5、6、8?10頁
甲第9号証:プレキャスト鉄筋コンクリート製品 JIS A5372
:2016、日本規格協会、96、97頁
甲第10号証:株式会社ウチコンのホームページ
甲第10号証-1:株式会社ウチコンのホームページ
甲第11号証:こおげコンクリートのホームページ
甲第12号証:株式会社テラコンのホームページ
甲第13号証:株式会社ウチコンの工場地図、写真
甲第14号証:陳述書、高木寛生、平成29年6月11日
甲第14号証-1:石橋産業(鳥栖工場)の写真
甲第15号証:埼玉県土木工事共通仕様書 第1編 共通編
甲第15号証-1:埼玉県土木工事共通仕様書 第2編 材料編
甲第17号証:甲第2号証第3頁の写真の図面

3 請求人の具体的な主張
(1)審判請求書における主張
ア 証拠の説明
(ア)甲第1号証
甲第1号証には以下の記載がある。
20頁以降「第3 争点に対する判断」
「1 平成9年(ワ)第85号事件及び平成10年(ワ)第62号事件の争点1(被告らの債務不履行の有無)」および争点2(原告による本件実施契約の解除が信義則に反するか)について
(1) 前記(争いの無い事実等)欄記載の事実に加え、以下に摘示する各証拠および弁論の全趣旨によれば、本件実施契約締結前から当庁平成9年(ワ)第85号事件の訴えの提起に至るまでの経緯として、以下の事実が認められる。

途中省略

オ 22頁下から2行目から23頁上から4行目
原告は、側溝蓋の傾斜面部分を、連続した角の折り曲げでふくらませた図面(甲13の1ないし5)を作成し、平成7年11月28日ないし同月30日に、原告が開発当初より型枠制作を依頼していた有限会社青影製作所にファックス送信した。
青影製作所は、同年12月16日付けで、側溝蓋をふくらませた部分およびそれに対峙する側溝躯体を曲面にした図面を作成し、原告に送付した(甲14)。

途中省略

ク 24頁8行から16行
そして、原告は、平成8年1月19日までに、大沢コンクリート工業、櫻コンクリート工業とともに、リボーン側溝のパンフレットを作成した。(乙104の3・1?2枚目)。
コ 25頁 5行から8行
他方、原告は、平成8年3月ころまでには、青影製作所作成にかかる平成7年12月16日付の上記図面を基にした側溝の製作に成功し、「消音側溝」と称してその製造・販売を開始した(内海供述、乙104の6写真・平成8年2月2日製造の側溝が敷設されている。)。
サ 25頁 9行から12行
平成8年3月6日、ブロックスから型枠製造を委託されていた宝工業に対し、図面がファックス送信されたが、その図面は、原告が青影製作所から受け取った上記図面(甲14)のうち、一部分の寸法が書き改められたものであった。」
(6頁末行?8頁9行)

(イ)甲第2号証及び甲第2号証の1
甲第2号証(当該訴訟で被告から証拠として提出された乙第104号証の6 判決書の「コ」に対応)の2頁に、平成8年3月1日および平成8年2月2日に製造された側溝蓋が示されており、写真に表示された通り、
A. 断面凸状の曲面からなる当接部を有する側溝蓋と、
B-2 前記開口部の端部に前記側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなり、
B-3 下端に沿って連続的に前記側溝蓋の前記当接部の下端部との間に所定の隙間を形成するためのせぎり部が形成された支持面を有する 側溝が表示されている。
甲第2号証の1は、平成28年2月17日撮影の現地の写真である。
なお、側溝本体(蓋以外)の製造日については、甲第2号証からは明確ではないものの、遅くも工期末日である平成8年3月31日までに納品する必要が有ること、金型の製作には2?3月程度かかること、コンクリートを打設して14日以上の養生期間が必要であること、プレキャスト製の側溝は、一般的に側溝本体と側溝蓋はセット販売(本体と蓋は本体の専用品)であり、施工工程上、側溝本体が必ず先に施工されるため、製造を含め全ての工程を蓋よりも側溝本体が先行することになること、等より、側溝本体は、本件特許の出願日前の、遅くとも側溝蓋と同時期の平成8年2月2日には製造されていたものと推察される。
(8頁11行?9頁7行)

(ウ)甲第3号証
甲第3号証には、
「B-1 側溝蓋で閉蓋可能な開口部を水平支持部材の上面の略中央に有し、
B-4 水平支持部材の両端辺から下方に垂直支持部材が夫々延設された側溝と を具備することを特徴とする被包型側溝。」の発明、すなわち、本件特許発明の構成要件、B-1、B-4が記載されている。
(9頁11行?10頁2行)

(エ)甲第4号証
甲第4号証には、「側溝蓋で閉蓋可能な開口部を水平支持部材の上面の略中央に有し、水平支持部材の両端辺から下方に垂直支持部材が夫々延設された」、いわゆる被包型側溝、本件特許発明の構成要件B-1、B-4が記載されている。
(10頁6?9行)

(オ)甲第5号証
甲第5号証には、「側溝蓋で閉蓋可能な開口部を水平支持部材の上面の略中央に有し、水平支持部材の両端辺から下方に垂直支持部材が夫々延設された 被包型側溝」すなわち本件特許発明の構成要件B-1、B-4が記載されている。
(10頁11行?11頁3行)

(カ)甲第6号証
甲第6号証(上記判決書「オ」に対応するものである。)は、平成7年12月16日に作成されたもので、判決書によると、図面製作所である有限会社青影製作所から、本件特許出願前である平成7年12月16日に株式会社ウチコンに送信されている。
甲第6号証には、「クサビ型側溝 蓋受部詳細図」が記載されており、
本件特許の構成要件中、
A. 断面凸状の曲面からなる当接部を有する側溝蓋と、
B-2 開口部の端部に前記側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなり、
B-3 下端に沿って連続的に前記側溝蓋の前記当接部の下端部との間に所定の隙間を形成するためのせぎり部が形成された支持面を有する 側溝が表示されている。
(11頁5行?12頁7行)

(キ)甲第7号証
甲第7号証(判決書の「オ」に対応する。)は、「平成8年1月19日までに、大沢コンクリート工業、櫻コンクリート工業とともに、リボーン側溝のパンフレットを作成した。(乙104の3・1?2枚目)」ものであり、パンフレットは頒布を目的に制作されるものであるから、遅くとも平成8年1月19日の時点で頒布される可能性を有するに至ったものと認められる。
甲第7号証(特に1頁及び3頁)には、
A. 断面凸状の曲面からなる当接部を有する側溝蓋と、
B-2 開口部の端部に前記側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなり、
B-3 下端に沿って連続的に前記側溝蓋の前記当接部の下端部との間に所定の隙間を形成するためのせぎり部が形成された支持面を有する 側溝が明瞭に表示されている。
(12頁9?21行)

イ 無効理由1?3について
(ア)対比
本件特許発明と、甲第2号証、甲第6号証及び甲第7号証記載の発明を対比すると、
A. 断面凸状の曲面からなる当接部を有する側溝蓋と、
B-2 前記開口部の端部に前記側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなり、
B-3 下端に沿って連続的に前記側溝蓋の前記当接部の下端部との間に所定の隙間を形成するためのせぎり部が形成された支持面を有する 点で一致し、
本件特許発明が、
相違点1
B-1 前記側溝蓋で閉蓋可能な開口部を水平支持部材の上面の略中央に有し、
相違点2
B-4 前記水平支持部材の両端辺から下方に垂直支持部材が夫々延設された側溝、
であるのに対し、
甲第2号証、甲第6号証及び甲第7号証記載の発明は、いわゆるU字側溝であって、かかる要件を備えない点について相違する。
(12頁24行?13頁15行、14頁15行?15頁4行、16頁2?19行)

(イ)相違点1及び相違点2
相違点1及び相違点2は、本件特許発明を、出願人がいうところの「被包型側溝」に限定したものであるが、「被包型側溝」自体は、甲第3乃至5号証に示すように、側溝の分野において、本件特許出願前から周知の構造であり、さらに甲5号証の、特に図4、図5、で明白なように、「被包型側溝」は、甲第2号証、甲第6号証及び甲第7号証に示すいわゆるU字側溝とともに道路に使用されるものであり、技術分野が共通である。
しかも、甲第2号証、甲第6号証及び甲第7号証に示す側溝も本件特許発明の被包型側溝も、蓋部分の構造および蓋を受ける側溝本体の構造自体は全く共通であり、したがって、蓋受け部に土砂などが堆積し騒音の原因となることも両者全く共通である。したがって、いわゆるU宇溝の甲第2号証、甲第6号証又は甲第7号証記載の発明と、「被包型側溝」である甲第3乃至5号証記載の発明を組み合わせることは、当業者にとって自然かつ容易であり、何の阻害要因もない。
しかも、甲第2号証、甲第6号証又は甲第7号証記載の基本構造を甲第3乃至5号証記載の所謂被包型側溝に用いることによる「蓋のがたつきを防止する」という作用効果は、甲第2号証、甲第6号証又は甲第7号証に記載の発明と全く同じものであって、甲第2号証、甲第6号証又は甲第7号証に記載の発明を、甲第3乃至5号証に記載の発明に適用することは当業者にとって容易である。
以上の通り、本件特許の請求項1に記載された発明は、その出願前に、日本国内で製造され、埼玉県南埼玉郡菖蒲町菖蒲193において設置された側溝(甲2、甲2-1)に係る発明、又は出願前に頒布された甲第6号証又は甲第7号証記載の発明と、甲第3乃至5号証に記載された発明とから、当業者であれば容易に発明をすることができたものあるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(13頁17行?14頁13行、15頁6行?15頁末行、16頁21行?17頁17行)

(2)陳述要領書における主張
無効理由1について、甲第2号証、甲第2号証-1に記載された側溝が、本件特許出願日よりも前に公然と製造(実施)されていたこと、また、同号に記載された側溝の発明は、本件特許出願よりも前に公然と知られていた事実を立証する。
なお、無効理由2及び無効理由3について、本件特許出願日は平成8年3月10日で、既に20年以上が経過しており、資料の保存期間が経過していること、当時の工事関係者がすでに居ないこと、その他の関係者の記憶が曖昧である等々の諸事情があり、また、限られた時間の中でこれ以上の証拠の収集が困難であることから、さらなる主張、立証はしない。
(2頁7?15行)

ア 甲第2号証、甲第2号証-1で示された側溝に表示された印字について
甲第8号証「JISA5361、第5-6頁」によれば、「プレキャストコンクリート製品には、JISA5361によって、次の事項を表示する。
b)製造業者名又はその略号
c)製造年月日又はその略号」とされている。
また、甲第9号証「JISA5372、第97頁」によれば、「路面排水溝類には、JISA5372によって、次の事項を表示する。
a)種類又は略号
b)製造業者名又はその略号
c)製造年月日又はその略号
d)リサイクル材を用いている場合には、その旨を表示」とされている。
甲第2号証、甲第2号証-1で示されたコンクリート側溝は、JIS製品ではないが、甲第2号証、甲第2号証-1を見てみると、
甲第2号証の第2頁上段の写真には、「TとUとからなる図形と、丸の中に検を表示した文字と、8.3-1」が印字されており、また、写真の上部には、「あやめ会館前 平成8年3月1日に製造したものが敷設されている。」と表示されている。
また、甲第2号証の第2頁下段の写真、第3頁上段の写真には「8.2-2」と表示されている。
さらに、甲第2号証と同じ場所を、平成28年2月17日に撮影した甲第2号証-1の第3頁中段及び下段の写真には、甲第2号証の写真に表示されたと同様の、TとUとからなる図形と、丸の中に検を表示した文字と共に、「8.2-7」と表示されている。
なお、甲第2号証と甲第2号証-1に表示された側溝は、上記したように蓋に印字された内容(日付)、家屋の状況(特に、甲第2号証4頁下段の写真、甲第2号証-1、1頁上段の写真)から、同一性を有するものと判断され、またコンクリート側溝の設置場所は大型車両等が通る場所ではなく、約20年の間にコンクリート側溝に経時変化があるとは到底考えられない。
また、印字は側溝蓋のみであり、側溝本体については確認できてはいないが、甲第2号証と甲第2号証-1に表示された側溝は、遅くとも側溝蓋よりも前に製造されていたものと推察される。
この点、甲第14号証の陳述書第2頁の記載からも明らかである。
また、印字された「TとUとからなる図形」については、甲第10号証に示すように、株式会社ウチコンを表示する図形と同一であり、また、甲第2号証の第2頁下から4行目の「株式会社ウチコンが製造した同上の側溝と蓋を・・・」の記載とも合致し、甲第2号証と甲第2号証-1に表示された側溝は、株式会社ウチコンが製造したものである。
以上の通り、甲第2号証と甲第2号証-1に表示された側溝は、本件特許の出願日(平成8年3月10日)よりも前の、平成8年2月2日、平成8年2月7日、平成8年3月1日に、株式会社ウチコンにより製造されたものである。
(2頁19行?5頁1行)

イ 甲第2号証、甲第2号証?1で示された側溝の製造が公然と行われたとする理由
(a)コンクリート二次製品の製造プロセス
コンクリート二次製品は、甲第11号証、甲第12号証に記載されたように、通常以下のプロセスで製造される。
A 材料の混練
B 型枠・清掃組立?コンクリート打設
C 上面仕上げ
D 蒸気養生
E 製品脱型
F 製品ごとに製品名・規格・製造日などを印字
G ストックヤードでの養生・保管
以上のように、脱型後に上記アの印字が施された製品は、出荷まで野外のストックヤードで養生、保管される。
(b)株式会社ウチコンの工場
甲第13号証は、甲第2号証、甲第2号証-1で示された側溝を製造した、株式会社ウチコンの工場の地図及び写真である。
上記したように、脱型された側溝は野外のストックヤードで出荷までの期間、所定日数養生、保管されることとなるが、ストックヤードで保管された製品は、甲第13号証の4、5頁でも明白なように、外部からも容易に見える状況に置かれており、特段、秘密状態に置かれているものでもなく、公然と実施(製造)をされたものである。
(c)他工場の場合
甲第14号証は、請求人代表者の陳述書および工場の写真である。
同陳述書(下から9行目から最終行)の記載、また3頁、4頁の写真から明らかなように、ストックヤードでの養生、保管は、第三者が容易に見得る状態に置かれていると言える。

以上で明白なように、脱型後ストックヤードに移されたコンクリート製品は、甲第2号証、甲第2号証-1に示された側溝を製造した株式会社ウチコンの工場に限定されることなく、一般に、秘密状態に置かれるものではなく、平成8年2月2日、平成8年2月7日、平成8年3月1日に株式会社ウチコンにより製造された側溝は、公然知られうる状態に置かれていたものであり、本件特許の出願日(平成8年3月10日)よりも前に公然と製造(実施)されたものである。
(5頁4行?6頁19行)

ウ 甲第2号証、甲第2号証-1で示された側溝が公然と知られたものであるとする理由
甲第2号証、甲第2号証-1で示された公道上に設置された側溝は、甲第2号証の第2頁の下部に記載されたように、埼玉県内の地方公共団体(埼玉県菖蒲町役場)(乙第5号証参照)により発注されたものであり、公共団体の発注の工事は、以下のプロセスを経て行われる。
入札(落札)→契約(発注者⇔業者)→見積提出(業者←メーカー)→契約(業者⇔メーカー)→使用材料承認願い提出(発注者←業者(各資材メーカー)→承認(発注者)→材料製作(メーカ)→所定の材齢(7日?14日※最短)→現場納入→施工→竣工
甲第15号証は、埼玉県内の市町村発注の土木工事で使用されている、埼玉県土木工事共通仕様書であり、同号証の「第1編 共通編 第1章 総則 第1節 総則 1-1-1-6 施工計画書」では、「受注者は、工事着手前に工事目的物を完成するために必要な手順や工法等についての施工計画書を監督員に提出しなければならない」とされ、その中で「1.(6)主要資材」の提出義務が課せられており、コンクリート二次製品がこれに該当する。
さらに、埼玉県土木工事共通仕様書の「第2編 材料編」が記された甲第15号証-1の第220頁上から9行から11行には「6 受注者は、表2-1-1の工事材料を使用する場合には、その外観及び品質規格証明書等を照合して確認した資料を事前に監督員に提出し、監督員の確認を受けなければならない。」と記載され、表2-1-1には、「JIS製品以外のコンクリート製品セメントコンクリート製品一般」が記載されている。
以上で明らかなように、甲第2号証、甲第2号証-1で示された公道上に設置された側溝は、契約成立後、発注者に「その外観及び品質規格証明書等を照合して確認した資料を事前に監督員に提出し」監督員の確認を受けたものであることは明らかである。

また、甲第15号証の「1-1-1-10 工事の着手」には、「1 受注者は、特記仕様書に定めのある場合を除き、特別の事情がない限り、契約書に定める工事始期日以降30日以内に工事着手しなければならない。」とされており、甲第2号証、甲第2号証-1で示された側溝の設置工事の工期である、平成8年1月12日から3月31日を考慮すると、遅くとも、工事始期日の平成8年1月12日から30日後の平成8年2月21日までには、甲第2号証、甲第2号証-1で示された側溝の承認図が守秘義務を負わない監督員に提出され、公知になったものと思われる。
上記したように、標準化されたJIS製品ではない甲第2号証、甲第2号証-1で示された公道上に設置された側溝は、当該製品について、発注者の承認を得なければならず、発注者は承認図についてなんら守秘義務を負うものではないので、遅くとも、工事始期日の平成8年1月12日から30日後の平成8年2月21日時点で、公然知られたものになったと言える。
以上より、甲第2号証、甲第2号証-1に示され、平成8年1月12日から3月31日を工期とする、埼玉県南埼玉郡菖蒲町菖蒲193あやめ会館前に設置された側溝の発明は、本件特許の出願日(平成8年3月10日)よりも前に、公然知られた発明である。
(6頁22行?8頁13行)

エ 請求項に対応した図示について
甲第17号証は、甲第2号証の第3頁の写真を図化したもので、同図に、本件特許発明の構成要件、
(a)断面凹状の曲面からなる当接部、
(b)側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなる支持面、
(c)支持面の下端に形成された前記側溝蓋の前記当接部の下端部との間に所定の隙間4を形成するためのせぎり部、
をそれぞれ図示する。
甲第2号証の第3頁下段写真、および、これを図化した甲第17号証の特に下段図で明白なように、甲第2号証等にあらわされた側溝は「断面凸状の曲面からなる当接部を有する側溝蓋と、側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなり、下端に沿って連続的に前記側溝蓋の前記当接部の下端部との間に所定の隙間を形成するためのせぎり部が形成された支持面」を有する 側溝である。
(11頁19行?12頁8行)


第5 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張する無効理由に対して以下のとおり反論し(審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書参照。)、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出している。

2 証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。

乙第1号証:無効2015-800202審決
乙第2号証:週刊ブロック通信 第1993号、株式会社公共事業通信社、平成11年11月8日、4、5頁
乙第3号証:積算資料 No873、財団法人経済調査会、
平成8年8月1日、「話題の商品」の欄の2頁
乙第4号証:平成9年(ワ)第85号事件 準備書面(二)抜粋、
原告代理人弁護士鈴村昌人、平成9年10月16日
乙第5号証:曲面蓋受型側溝の調査実施承認書、菖蒲町菖蒲町長
中山登司男、平成16年4月30日
乙第6号証:積算資料 九州版 No23、平成19年4月1日、
123、126、127頁
乙第7号証:平成15年(ネ)第774号不当利得返還、特許権侵害
差止等請求控訴事件(原審 岐阜地方裁判所平成9年(ワ) 第85号、平成9年(ワ)第348号、平成10年(ワ)
第62号)和解調書、名古屋高等裁判所民事第2部
乙第8号証:岐阜地裁の裁判及び甲2、甲6、甲7について、
弁護士舟橋直昭、平成29年4月6日
乙第9号証:履歴事項全部証明書 株式会社ウチコン、岐阜地方法務局
美濃加茂支局、平成22年12月24日
乙第10号証:閉鎖事項全部証明書 株式会社ショウセイ、さいたま地方 法務局、平成24年6月5日
乙第11号証:履歴事項全部証明書 株式会社ウチコン、岐阜地方法務局 美濃加茂支局、平成29年6月21日
乙第12号証:閉鎖事項全部証明書 株式会社ウチコン、岐阜地方法務局 美濃加茂支局、平成29年6月21日

3 被請求人の具体的な主張
(1)答弁書における主張
ア 甲第3号証乃至甲第5号証について
請求人が本件特許に対して提起した特許無効審判請求事件(無効2015-800202号)の審決(乙第1号証)で、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証(本件事件の甲第3号証乃至甲第5号証)が退けられた。
請求人は審決取消訴訟を求めて控訴しなかったので、平成28年7月28日に当該審決は確定した。
よって、本件事件の「無効理由2、3」及び「無効理由1」の証拠とされた甲第3号証乃至甲第5号証は、証拠能力が欠如していることから採用されるべきでない。
(4頁17?19行、6頁11?17行)

イ 甲1判決書(甲1)及び対応する各証拠(請求人主張)に対する答弁及び被請求人主張
請求人は、甲1判決書「第3 争点に対する判断」(20頁)に対応する各甲号証を提出し主張した。(審判請求書6?8頁、11?12頁)
判決書(「甲1判決書」)の請求人の指摘部分(判決書のオ、ク、コ、サ)は次のとおり(審判請求書6頁?8頁)。
<請求人第1主張> 判決書 オ 22頁下2行目から23頁上4行目
<請求人第2主張> 判決書 ク 24頁8行から16行
<請求人第3主張> 判決書 コ 25頁5行から8行
<請求人第4主張> 判決書 サ 25頁9行から12行
(8頁18?末行)

(ア)岐阜地裁裁判について
a 争点ついて
岐阜地裁裁判においては、平田純一の有していた特許権(第25194918号)に関し、ウチコンと被告リタッグとの間で締結されたリボーン側溝技術提供契約(以下、「本件実施契約」という)について、(a)被告リタッグに債務不履行があったか否か(甲1.7頁)、(b)ウチコンによる本件実施契約の解除が信義則に反するか否か(同11頁)、(c)本件実施契約に要素の錯誤があったか否か(同16頁)、(d)ウチコン特許及び同実用新案が本件実施契約13条に反するか否か(同19頁)が、それぞれ争われた。
(9頁3?10行)

b 和解によって終了していること
第一審判決のなされた岐阜地裁裁判は、判決後、双方控訴により、高等裁判所に移行し、(名古屋高等裁判所 平成15年(ネ)第774号不当利得返還、特許権侵害差止等請求控訴事件)和解で終了している(乙7)。
従って、まず、甲1の判決書の認定は確定した事実関係ではない。
(9頁19?23行)

(イ)請求人第1主張について
甲6の平成7年12月16日との記載のある作成日付については、甲6に不動文字にて記載がある他は、何ら客観的に立証されていない。
甲6にはFAX送信日時の刻印等なく、平成7年12月16日の作成日付は極めて疑わしい。
よって、甲6が平成7年12月16日に作成されたことは立証されておらず、「当事者にとって容易」との請求人主張の前提を欠くものである。
(9頁25?末行、10頁19?21行)

(ウ)請求人第2主張について
平成8年1月19日との作成日付は、甲7には記載がない。せいぜいNHKで紹介された平成7年10月20日以降という程度しか特定できない。
よって、平成8年1月19日との作成日付は客観的に立証されたものではなく、「当事者にとって容易」との請求人主張の前提を欠くものである。
(10頁27行?11頁4行)

(エ)請求人第3主張について
a 甲2の写真以外の文字部分にはA、B-2、B-3等の要件が明確に記載されていない。特に「せぎり部」については、その記載もこれを窺わせる記載部分もない。
甲2の写真からも、A、B-2、B-3等の要件を明確に窺うことのできる構造を看て取ることはできない。
b 甲2には「平成8年3月1日に製造」とは主張されているものの、平成16年4月30日付菖蒲町菖蒲町長中山登司男作成の「曲面蓋受型側溝の調査実施承認書」(乙3)(審決注:「乙3」は「乙5」の誤記と認める。)には「平成8年3月1日頃?平成8年4月1日頃」と記載されており、本件特許出願前に「公然実施」に至ったことを示す製造日付の立証はなされていない。
(11頁17?末行)

(オ)請求人第4主張について
平成8年3月6日にプロックスから宝工業にFAXされたという図面は、岐阜地裁の裁判でも本件手続でも証拠提出されておらず、いったい如何なる図面か不明である。
(12頁4?6行)

ウ 甲2について
(ア)甲2について
上記イ(エ)a記載のとおりである。
(12頁10行)

(イ)甲2の1について
a 甲2の1の写真は、不鮮明であるだけでなく、製品そのものが設置から20年前後の年数が経過しており、構造が変化している可能性がある。
b 甲2の1の写真からも、A、B-2、B-3等の要件を明確に窺うことのできる構造を看て取ることはできない。
c 請求人は、纏々理由を述べ「側溝本体は、本件特許の出願日前の、遅くとも側溝蓋と同時期の平成8年2月2日には製造されていたものと推察される。」と述べるが、製造されたのみで公然実施されたことになるわけではなく、前述のとおり、時期は平成8年4月1日頃までであるので、公然実施された日は立証されていない(乙5)。「14日以上の養生期間」の後には更に保管期間があることは当然であり、推測の根拠にもなり得ない。確定していない甲1も、「平成8年3月ころ」としか判示していない。
(12頁12?26行)

エ 甲6について
a 平成7年12月16日との作成日付の点については、上記イ(イ)記載のとおりである。
(12頁28?末行)

b 甲6の段差部分は、本体と蓋両方に下方に通ずる略垂直の隙間であり、施工後に砂利、土等がこの隙間部分に集まって面接触が維持される構造ではないと考えられる。つまり、甲6の側溝本体の段差は、ほぼ垂直向きについている点が特徴的であり、ここから砂利等は下方に滑り落ちる構造となっていると考えられる。これに対し、本件特許のせぎり部は、斜め上方を向きつつなだらかな曲面形状を有しており、砂利等が集まり得る構造となっており、蓋と側溝本体間のほぼ垂直向きの隙間を生じさせている甲6とは異なる。
(13頁末行?14頁7行)

オ 甲7について
a 請求人は平成8年1月19日までに頒布される可能性を持ったパンフレットが作成されたと述べるが、この点は、イ(ウ)にて述べたとおりである。
(14頁18?20行)

b 甲7には、A、B-2、B-3との構造は文字部分においても写真部分においても示されていない。特に、下端部の「せぎり部」については何らの記載もない。
(14頁21?23行)

(2)陳述要領書における主張
ア 甲2、甲2-1で示された側溝に表示された印字について
(a)甲2、甲2-1の側溝にはJISマーク等がなく、請求人も認めているようにJIS製品ではなく、甲8、甲9に従って印字の意味を推認するのは前提が異なっていると言わざるを得ない。
(b)請求人は「TとUとからなる図形」が甲2、甲2-1と甲10の株式会社ウチコン(以下、「ウチコン」という)の表示と同一と述べるが、甲2記載の図形は不鮮明、不明確であり、そもそも比較の対象とすることができない。
(c)請求人は、甲2には「8.2-2」の表示があると主張するが、「8」も「2」も「-2」と主張するいずれの表示も下部約半分が消えている、あるいは不鮮明である。製造番号等の可能性もあり、主張の根拠が薄い。
請求人は、甲2の1に「8.2-7」との表示があると主張するが、甲2-1の3頁目の写真は、元々不鮮明なのか汚れ等なのか原因は分からないが、請求人の主張するような表示と認められない。
請求人は、甲2、2頁目上部に「平成8年3月1日に製造したものが敷設されている」と主張するが、不鮮明ないし汚れ等により印字が確認できない。
表示部分の形状等はともかく、写真のような印字をもって、平成8年2月2日や同年2月7日に製造されたという主張は、客観的な裏付けがない。
(d)請求人は、印字の表示のない側溝本体について「特殊構造の側溝」であることから「遅くとも側溝蓋よりも以前に製造されていたもの」と推測しているが、客観的な裏付けがとれないことは勿論、上述のようにウチコン関係者の裏付けすらとれていないのであって、全くの推測の域を出ない。側溝本体の製造日を知る手がかりはないと言わざるを得ない。
(12頁1行?13頁2行)

イ 製造が公然と行われたとの主張について
(a)請求人は、甲11、甲12を引用して、製品は「野外のストックヤードで養生、保管される。」等と述べる。
しかし、養生、保管態様等は様々であり、「野外のストックヤードで」等と一律に定まっているわけではない。そもそも甲11、12はウチコンでない他社のストックヤードであり証拠引用の根拠がない。
(b)請求人は、甲13を引用して「野外のストックヤードで養生、保管される」等と主張する。
しかし、甲13グーグルマップは、撮影者、撮影日、撮影対象の町名・番地も分からないだけでなく、平成22年の解散によりウチコン本店所在地が移転しているものであり(小右衛門131→同117へ)、甲13の撮影対象と平成8年当時の工場用敷地等の関係は更に不明である。
甲13は、平成8年当時のウチコンにおける甲2製品の保管状況の手がかりにすらならない。
請求人は、甲13の4、5頁を引用して「外部からも容易に見える状況」等と述べるが、甲13の4、5頁に撮影された場所に平成8年当時に甲2の製品が置かれていたことを前提とする点で誤っているだけでなく、甲13の4、5においてもそもそも遠目で構造等が分からない写真となっている。
(13頁9行?14頁2行)

ウ 甲2、甲2-1の状態が公然と知られたものとの主張について
甲15、甲15の1は、土木工事一般に関する仕様等に関する資料であり、本件工事特有のものではない。又、監督員に提出されたとする「その外観及び品質規格証明書等を照合して確認した資料」が明らかになっていない。監督具が如何なる権限、如何なる資格、知識等を持つものかも明らかになっていない。監督員に提出されたとする資料は、情報開示等の対象ともなっていないと思われる。
そもそも、甲15が平成8年当時からあったものか不明であり、平成8年当時に如何なる資料が提出されたかを推測する手がかりにはならない。
(15頁11?20行)


第6 当審の判断
1 甲各号証の記載
(1)甲第2号証
ア 甲第2号証及び甲第2号証-1の各写真、特に甲第2号証の3頁上下段の写真を参照すると、以下の側溝の構成が看取できる。

(a)側溝は、少なくとも略鉛直方向に延びる一対の側板からなる側溝本体と、側溝蓋とからなり、側溝蓋は、一対の側板間に閉蓋可能であること。
(b)側溝蓋は、断面凸状の曲面からなる当接部を有し、該当接部の下端には、該当接部の下端に続いて、略鉛直に近い斜め下方に折れ曲がって延びる部分と、該斜め下方に折れ曲がって延びる部分の下端に続いて、略水平方向に折れ曲がって延びる部分となっていること。
(c)側板の上端付近には、前記側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなる支持面を有し、該支持面の下端には、該支持面の下端に続いて、略鉛直下方に折れ曲がって延びる部分と、該鉛直下方に折れ曲がって延びる部分の下端に続いて、略水平より若干斜め下方に折れ曲がって延びる部分となっていること。
(d)側溝蓋の略水平方向に折れ曲がって延びる部分と、側板の略水平より若干斜め下方に折れ曲がって延びる部分との間には、若干の隙間があること。

イ よって、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「略鉛直方向に延びる一対の側板からなる側溝本体と、一対の側板間に閉蓋可能な側溝蓋とからなる側溝であって、
側溝蓋は、断面凸状の曲面からなる当接部を有し、該当接部の下端には、該当接部の下端に続いて、略鉛直に近い斜め下方に折れ曲がって延びる部分と、該斜め下方に折れ曲がって延びる部分の下端に続いて、略水平方向に折れ曲がって延びる部分となっており、
側溝本体は、一対の側板の上端付近に、前記側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなる支持面を有し、該支持面の下端には、該支持面の下端に続いて、略鉛直下方に折れ曲がって延びる部分と、該鉛直下方に折れ曲がって延びる部分の下端に続いて、略水平より若干斜め下方に折れ曲がって延びる部分となっており、
側溝蓋の略水平方向に折れ曲がって延びる部分と、側板の略水平より若干斜め下方に折れ曲がって延びる部分との間には、若干の隙間がある、側溝。」

(2)甲第3号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付与した。以下同様。)
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、路上の雨水や排水を流すため、道路に敷設されるコンクリートの側溝に関するものである。」

イ 「【0013】
【実施例】本発明に係る側溝の一実施例(底部にコンクリート15が打設されたもの)を、図1、2、11、12により説明すると、逆U字型に形成された側溝は、側溝本体1と蓋体2とから構成され、前記側溝本体1は、その底部を開放すると共に、平行に対向位置する一対の側壁3と、その両側壁3上端を連設する頂壁4とで構成されている。この頂壁4には、1個又は複数個の開口部6を形成し、各開口部6には台座5が形成されている。
【0014】蓋体2は、平板状で開口部6の台座5に上載され、開口部6を閉鎖可能に形成されている。そして、台座5には、側溝本体1内と外部とを連通する通路を形成するため、複数の切欠き7が設けられている。本発明に係る側溝の他の実施例ををあらわした図3において、蓋体2の四つの側面は上側が広がったテーパー面8とし、更に、その下端部をいわゆる面取り部9を形成し、これによって側溝本体1と蓋体2との間に形成される隙間の上端部は狭く維持しつつ、切欠き7で形成される通路の幅を可能な範囲で広く設定されている。」

(3)甲第4号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、次の事項が記載されている。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、降雨水あるいは雑排水などを排水させる側溝であって、底版を水平に或は任意の勾配に調整して側溝本体に取り付けることができる、可変勾配型の側溝に関するものである。」

イ 「【0017】
【実施例】図1から図4は本発明に係る一実施例である。この実施例の元の側溝本体1aは、上部一部開口で下部全面開口のU字形の側溝である。この側溝本体1aに工場段階で後述の支持方法により、設計勾配に従って側溝本体1の内部空間4aの下部に底版12を取り付ける。更に、側溝本体1の上部開口部2aには、工場段階で蓋版14を装着して置く。蓋版14の取り付けの際には、側溝の運搬中や敷設中に外れないように、ブチルゴム系等の接着剤16等で接着して置いてもよい。更に側溝の両端面5aには、目地材として定型ゴムシール材17をプレセットして置く。また、側溝本体1の左右の側板外面7aには、施工時に吊り上げるために使用するデイハーアンカー10を取り付けて置く。このようにして、底版12、蓋版14、目地材17等があらかじめセットされた底版付き可変勾配型側溝が完成する。
【0018】現場では、道路側部の掘削溝の底部に栗石19等を締め固め、その上に砂20等を敷いて基礎部を形成し、この基礎部上面にプレキャストのベースコンクリート版21を敷設して、側板外面7aのデイハーアンカー10にクレーンの吊り下げ端を引っ掛けて側溝本体1を吊り上げ、ベースコンクリート版の上面22に所定本数の側溝本体1aを一連に敷設する。側溝本体1、1間の連結は、側板外面7aに設けたジョイント11により行なう。その後、前記敷設用溝と底版付き可変勾配側溝本体間の空所が埋め戻され、一切の作業が終了する。
【0019】このように従来は現場で行われていた底版12の取り付け、目地の処置、蓋版14の取り付け等が、あらかじめ工場において行われているので、作業効率が良く、設計通りの勾配が得られる。
【0020】図5から図8は本発明に係る別の実施例を示したものである。この実施例で使用する元の側溝本体1bは、上部全面開口、下部一部開口のU字形の側溝である。工場段階で、この側溝本体1bの上部開口部2bから先の実施例と同様に底版12をプレセットして、上部開口部2bの左右の側板6bに設けられた段面間9bにつなぎ梁18を渡し、残りの開口部には蓋版14をプレセットする。そして、側溝本体の両端面5bに定型ゴムシール材17を取りつけて目地を施し、デイハーアンカー10を取り付けて、底版付き可変勾配側溝が完成する。
【0021】現場において、先の実施例と同様な方法で敷設作業を行う。この際、基礎部が硬質土の場合には、プレキャストのベースコンクリート版21の下面に砂20を敷く必要があるが、粘性土の場合には直接ベースコンクリート21版を敷設しても差し支えない。図1においてはベースコンクリート版21の下面には砂20が敷かれておらず、図5の実施例では砂20が敷かれている。」

(4)甲第5号証
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証には、次の事項が記載されている。
ア 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は頂版上面を地表に露出させる暗渠ブロックに係り、道路勾配にかかわらず排水勾配を自在に形成できるようにした二分割の簡易で且つ低コストの暗渠ブロックを提供しょうとするものである。」

イ 「【0002】
【従来の技術】近年、道路や公園,広場等の降雨時における雨水等の排水を図るために図4に示すような側溝を設けることは広く実施されていることであり、該側溝には蓋版16を路面に整合させ、蓋版16端部の集水穴17に雨水を集めて排水し、側溝部分を含め車道面その他として利用することが行われていた。
【0003】しかし、蓋版16上の車両の通行時に車輪が側溝部体と蓋版との境界部を通ることによってガタツキ,騒音が発生し付近住民の生活を妨害し、且つ車両の通行の激しいところでは蓋版16が破損し取り替えが頻繁に行われていた。これを解決する手段として図6の暗渠ブロックを配設し、集水のため一定間隔で桝を設けその上にグレ-チング蓋を設置することが行われているが、高価で且つ水路深さが一定であり排水勾配が道路勾配によって制約を受けることから、特に平坦地においては迅速な雨水処理が困難であった。このことは、図4の側溝ブロックにおいても同様である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述のように側溝ブロック15、暗渠ブロック20においては、水路深さが一定であることから排水勾配は、道路勾配に合わせざるを得なかった。また、排水勾配を自在に出来る側溝ブロックとしては、図7のU形断面の底部に開放穴2を形成したU字型の側溝ブロック15aや底面が全面開放された製品端部が門型に形成された図5および8の側溝ブロック18があり、共に現場で底部にコンクリ-ト14を打設することで水路勾配が自在に形成できる。」

ウ 「【0016】
【実施例】上記したような本発明によるものの具体的な製品の実施例を添付図面に示すものについて説明すると、図1はU型断面水路1の底部に複数個の開放穴2を形成し側壁上部内側に頂版1を嵌合するための凹部状の段部4を設け、上面が平で下面が門型形状で両端に水路側壁部と嵌合するための凸部5を有する頂版6とを組み合わせ、底部にコンクリ-ト14を打設することで自由な排水勾配を形成できるようにしたことを特徴とする請求項1に示す自由勾配型二分割暗渠ブロックの斜視図で、側壁上部の凹部4が頂版6の下面の凸部5と嵌合することで頂版6がU型断面水路1の一種の突っ張り材として作用するので側壁部の側圧に対する耐荷力がアップする。
【0017】図2は、U型断面水路1の側壁上部両端に金属質または合成樹脂質形材7を埋設し底部に複数個の凹部3を形成したもので、この連結材7が前記水路1に対する側圧などに対して固定された突っ張り材7として作用するので開放された水路の側壁部の強度を高め、深さを大とした水路であっても比較的薄層のコンクリ-トU形断面水路1として形成させることが出来る請求項2の水路に、請求項3の上面がV型形状8で下面がア-チ形状の頂版6aを載置したことを特徴とする自由勾配型二分割暗渠ブロックである。またこの突っ張り材7は、接着剤またはボルト等を用いて後で連結してもほぼ同様の効果を得ることが出来る。
【0018】図3は、U型断面水路1の底部に複数個の開放穴2を形成した請求項1の水路に、請求項2の頂版上面を皿型形状9と成し、請求項4の中央部延長方向にスリット状の集水孔11を形成した頂版6bを載置したことを特徴とする自由勾配型二分割暗渠ブロックである。」


(5)甲第17号証
甲第17号証は、以下のとおり。



2 無効理由1について
(1)甲第2号証及び甲第2号証-1で示された側溝について
まず、甲第2号証で示された側溝(以下「甲2側溝」という。)が、公然実施されたか、または公然知られたものかについて検討する。
ア まず、甲第2号証及び甲第2号証-1の写真を参照する。
(ア)甲第2号証
a 1頁上段には、あやめ会館及び電話BOXの外観写真(以下「写真A」という。)、下段に、電話BOX中の住所の表示の写真(以下「写真B」という。)があり、「菖蒲町菖蒲」(番地は、不鮮明で読み取れない。)とある。
b 2頁上段から4頁上段には、側溝と側溝蓋の写真(以下「写真C」という。)がある。
4頁下段には、住宅地の写真(以下「写真D」という。)がある。

(イ)甲第2号証-1
a 1頁上段には、住宅地の写真(以下「写真E」という。)がある。 b 1頁下段から3頁下段には、側溝と側溝蓋の写真(以下「写真F」という。)がある。

(ウ)検討
甲第2号証及び甲第2号証-1は、上記(ア)及び(イ)のとおりの写真であるところ、これらの写真自体からは、写真Dが写真Aの近所であるのかどうか、写真Cの側溝及び側溝蓋が、写真Dの場所のものかどうか不明であり、また、写真Fの側溝及び側溝蓋が、写真Eの場所のものかどうか不明であり、さらに、甲第2号証の写真A?Dと、甲第2号証-1の写真E及びFの関係も不明である。
よって、写真Cの側溝及び側溝蓋と写真Fの側溝及び側溝蓋とが、あやめ会館前に設置された同じものとは断定できない。

イ 次に、甲2側溝が、施工された日について検討すると、甲第2号証及び甲第2号証-1からは、全く伺い知ることはできない。
請求人も、甲2側溝が、本件特許の出願前に施工されたとの主張はしていない。

ウ 続いて、甲2側溝が本件特許の出願前に製造されたかどうかについて検討する。
写真Cの側溝蓋には、TとUを組み合わせた印、丸の中に「検」と書かれた印、及び数字らしきものがみられるが、少なくとも数字については、不鮮明であるから、その数字を特定することはできない。
請求人は、側溝蓋に印字された数字に関し、JIS製品であれば「製造年月日又はその略号」を表示されるものであって、該数字は「8.3-1」、「8.2-2」又は「8.2-7」と印字されていることから、甲2側溝は、平成8年2月2日、平成8年2月7日又は平成8年3月1日に製造されたと主張している(第3 3(2)ア)。
しかしながら、甲2側溝は、JIS製品であることが表示されていないから、JISの規格に則って「製造年月日又はその略号」を表示する必要はなく、そして、実際に写真Cから読み取れる数字も不鮮明であるから、該数字を請求人が主張する「8.3-1」、「8.2-2」又は「8.2-7」と読み取ることはできず、かつ、甲2側溝の製造日を平成8年2月2日、平成8年2月7日又は平成8年3月1日と認定することも、当然できない。

エ 最後に、上記ウの日付けで製造されたとされる甲2側溝が、本件特許の出願前に見得る状態にあったかどうかについて検討する。
請求人は、株式会社ウチコンの工場の位置及び写真を甲第13号証として提出して、甲2側溝が、外部からも容易に見える状態であって、特段、秘密状態に置かれているものではないと主張している(第3 3(2)イ(b))。
しかしながら、甲第13号証の写真を参照すると、載置された側溝を遠くから見ることができるものの、その側溝の詳細な構造を理解することができるとはいえない。しかも、甲第13号証によると、その写真の撮影日は2012年8月であるが、上記ウの請求人が主張する製造日(平成8年)で製造された側溝が、その製造後に、製造日から16年も経過した2012年8月と同じ保管状態であったかどうか伺い知ることはできない。また、請求人から、2012年8月時点と上記ウの請求人が主張する製造日(平成8年)頃の状態の関連性を証明する証拠は提出されていない。
さらに、請求人は、請求人代表者の陳述及び工場の写真である甲第14号証に基づいて、事務所の来訪者であれば、ストックヤードに出入りすることができ、製品を見ることができると主張している(第3 3(2)イ(c))。
この主張についても、請求人代表者の工場での現在の保管状態を述べるものであって、甲2側溝の実際の保管状態と何等関係するものではない。
よって、甲2側溝が工場の外部から見得る状態で保管されたとすることが証明できておらず、甲2側溝が、製造し保管することによって公然実施がされ、又は甲2側溝の発明が公然知られたとする主張は、採用することができない。

オ また、請求人は、甲第15号証によれば、「受注者は、工事着手前に・・・施工計画書を監督員に提出しなければならない」とされ、甲第15号証-1によれば、「受注者は、・・・その外観及び品質規格証明書等を照合して確認した資料を事前に監督員に提出し、監督員の確認を受けなければならない。」ものであり、さらに甲第15号証によれば、「受注者は、・・・契約書に定める工事始期日以降30日以内工事着手しなければならない。」とあるから、平成8年2月21日までには、甲2側溝の承認図が守秘義務を負わない監督員に提出され、公知となったものである旨、主張している(第3 3(2)ウ)。
しかしながら、上記甲第15号証及び甲第15号証-1は、頒布された日が示されていないから、何時の時点での取り決めであるのか不明であり、該甲第15号証及び甲第15号証-1でいうところの工事とは、どの程度の規模及び内容の工事をいうのかの説明がないことから、甲2側溝についても、同様の手続を必要とするかどうかは不明といわざるを得ない。
また、監督員がどの様な資格のものであるのか明らかにされておらず、監督員が何らかの資料や図面等を見たところで、その内容が公知となるものでもない。
仮に、監督員が承認図を見る機会があったとしても、その承認図自体が、本件無効事件において提出されておらず、どの様な技術内容を見ることができたのかは分からない。
よって、甲2側溝の発明が、本件特許の出願前に公知となったとの主張は、採用することができない。

カ 以上のとおり、甲2側溝が、本件特許の出願前に、製造され、保管されて、自由に見得る状態(すなわち、不特定多数の者によって知り得る状態)にあったとは認められないから、甲2側溝が、本件特許の出願前に、公然に実施されたり、公然知られたものではない。
よって、無効理由1の前提となる甲2側溝が本件特許の出願前に公然実施されたものではなく、かつ、公然知られたものでもないから、無効理由1には理由がない。

(2)29条2項違反について
上記(1)で検討したとおり、甲2側溝は、本件特許の出願前に公然実施されたものではなく、公然知られたものでもないが、一応、本件特許発明が、甲第2号証で示された側溝の発明及び甲第3号証ないし甲第5号証に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたかどうかについても、予備的に検討する。

ア 対比
本件発明と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「側板」は、本件発明の「垂直支持部材」に相当し、以下同様に、「側溝本体」は「側溝」に、「側溝蓋」が「閉蓋可能であ」る「一対の側板間」は、「側溝蓋で閉蓋可能な開口部」に、「側溝本体」の「一対の側板の上端付近」は「開口部の端部」にそれぞれ相当する。
また、甲2発明の「側溝」と、本件発明の「被包型側溝」とは、「側溝」で共通する。

(イ)よって、本件発明と甲2発明とは、
「A 断面凸状の曲面からなる当接部を有する側溝蓋と、
B-1’ 前記側溝蓋で閉蓋可能な開口部を有し、
B-2 前記開口部の端部に前記側溝蓋の当接部の曲面と略相似の断面凹状の曲面からなる、
B-3’ 支持面を有するとともに、
B-4’ 垂直支持部材が夫々延設された側溝本体と
を具備することを特徴とする側溝。」において一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明は、水平支持部材の両端辺から下方に垂直支持部材が夫々延設され、水平支持部材の上面の略中央に開口部を有するのに対し、甲2発明は、水平支持部材を有しておらず、開口部は一対の側板間である点。
相違点2:所定の隙間に関し、本件発明は、支持面の下端に沿って連続的に側溝蓋の当接部の下端部との間に所定の隙間を形成するためのせぎり部が形成されているのに対し、甲2発明は、側溝蓋の略水平方向に折れ曲がって延びる部分と、側板の上端付近にある略水平より若干斜め下方に折れ曲がって延びる部分との間にある点。

(ウ)判断
上記相違点について検討する。
a 相違点1
相違点1は、つまりは、本件発明が、被包型側溝であるのに対し、甲2発明は、U字型側溝である点で相違している。
しかしながら、被包型側溝は、甲第3号証ないし甲第5号証に記載されているように、本件特許の出願前に公知または周知の構成であるから、甲2発明の側溝を、当該公知または周知の被包型側溝とすることにより、相違点1に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

b 相違点2
上記相違点2に係る本件発明の構成、つまりせぎり部の構成は、請求人が提出する証拠には記載されておらず、自明な事項とも認められない。
請求人は、甲第2号証にせぎり部が記載されていると主張し(第4 3(1)ア(イ))、甲第17号証を用いて甲第2号証の側溝の写真におけるせぎり部の位置を説明している(第4 3(2)エ)。
しかしながら、甲2発明の隙間は、側溝蓋の略水平方向に折れ曲がって延びる部分と、側板の上端付近にある略水平より若干斜め下方に折れ曲がって延びる部分との間に存在している。
甲2発明の凸状の当接部の下端に続く、斜め下方に折れ曲がって延びる部分の下端に続く「側溝蓋の略水平方向に折れ曲がって延びる部分」は、本件発明でいうところの側溝蓋の(断面凸状の曲面からなる)当接部の下端部とはいえず、同じく、側板の上端付近にある凹状の支持面の下端に続いて略鉛直下方に折れ曲がって延びる部分の下端に続いて「垂直支持部材の略水平より若干斜め下方に折れ曲がって延びる部分」は、(断面凸状の曲面からなる当接部)(の曲面と略相似の断面凹状の曲面からな)る支持面に形成されたものともいえない。
したがって、甲2発明の隙間は、本件発明のせぎり部とは異なる位置に設けられたものである。
よって、請求人の主張を採用できない。

c 以上のとおりであるから、本件発明は、甲2発明及び甲第3号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 無効理由2(進歩性欠如)について
まず、無効理由2の主引用例となる甲第6号証の頒布性について検討する。
甲第6号証には、「平成7年12月16日」との日付が記載されている。
しかしながら、甲第6号証の作成日が、その日付であること、または、本件特許の出願日前であることを心証付ける証拠が提示されていない。
請求人は、甲第1号証の判決書の「オ」の記載を用いて、甲第6号証は、平成7年12月16日に作成され、株式会社ウチコンにファックス送信されている(第4 3(1)ア(ア)及び(カ))、と主張している。
しかしながら、作成され、かつファクシミリで送信されたことが、頒布されたことを意味するものではない。
しかも、甲第1号証に係る岐阜地方裁判所の事件は、後に名古屋高等裁判所で和解が成立しており(乙第7号証)、当該事件の判決の内容、つまり甲第6号証の作成日及びファクシミリで送信した日に係る認定は確定したものではない。
そして、本無効審判事件においても、甲第6号証の当該日付、並びに甲第6号証が頒布されたことを証明する証拠は提出されていないのであるから、甲第6号証は、本件特許の出願前に頒布されたものと認めることはできない。
なお、平成29年5月12日付け審理事項通知書において、甲第6号証の頒布性を立証する証拠の提出を求めたところ、請求人は、陳述要領書において、さらなる主張、立証はしないと回答している(第4 3(2)前段)。
したがって、無効理由2の前提となる甲第6号証が、本件特許の出願前に頒布されたものとは認められないから、無効理由2は理由がない。

4 無効理由3(進歩性欠如)について
まず、無効理由3の主引用例となる甲第7号証の頒布性について検討する。
甲第7号証には、「消音側溝&蓋」の製品パンフレットとみられるが、該製品パンフレットが印刷された日や頒布された日、またその頒布された事実を心証付ける証拠は、請求人から提示されていない。
請求人は、甲第1号証の判決書の「オ」の記載を用いて、甲第7号証は、平成8年1月19日までに作成され、遅くとも平成8年1月19日時点で頒布される可能性を有するに至った(第4 3(1)ア(ア)及び(キ))、と主張している。
しかしながら、甲第7号証の頒布日等に係る認定については、上記3で述べたとおり、甲第6号証と同様に確定したものではない。
そして、本無効審判事件においても、当該日付及び頒布の事実を心証付ける証拠は提出されていないのであるから、甲第7号証は、本件特許の出願前に作成され、頒布されたものと認めることはできない。
なお、平成29年5月12日付け審理事項通知書において、甲第7号証の頒布性を立証する証拠の提出を求めたところ、請求人は、陳述要領書において、さらなる主張、立証はしないと回答している(第4 3(2)前段)。
したがって、無効理由3の前提となる甲第7号証が、本件特許の出願前に頒布されたものとは認められないから、無効理由3は理由がない。


第7 むすび
以上のとおり、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、審判請求人の主張する無効理由によっては、本件発明に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-31 
結審通知日 2017-09-04 
審決日 2017-09-21 
出願番号 特願平8-83259
審決分類 P 1 113・ 121- Y (E03F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 住田 秀弘
小野 忠悦
登録日 2005-09-09 
登録番号 特許第3718279号(P3718279)
発明の名称 被包型側溝  
代理人 遠坂 啓太  
代理人 角田 悠  
代理人 南瀬 透  
代理人 加藤 久  
代理人 森 博  
代理人 舟橋 直昭  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ