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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12G
管理番号 1334213
審判番号 不服2016-15937  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-26 
確定日 2017-11-06 
事件の表示 特願2014-507691号「食物繊維含有ビールテイストアルコール飲料」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日国際公開、WO2013/146348〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2013年3月15日(優先権主張2012年3月28日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年2月1日付けで通知された拒絶の理由に対して何ら応答がなく平成28年7月21日付けで拒絶査定され、これに対して、平成28年10月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

2 平成28年10月26日の手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1) 本件補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
A成分として、麦、ホップ及び食物繊維を原料の一部に使用して発酵させて得たアルコール分が0.5?7%であるアルコール含有物;及び、
B成分として、少なくとも麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留して得たアルコール含有蒸留物;とを、
A成分由来のアルコール分:B成分由来のアルコール分の混合比率として95?80:5?20の範囲内で混合した、混合後のアルコール分が1?10%であるビールテイストアルコール飲料であって、
A成分における原料としての食物繊維が、混合後のアルコール飲料にあって、1.2?3.0g/100mLとなる量であることを特徴とする、前記ビールテイストアルコール飲料。」
と補正された(本件補正後の前記請求項1に係る発明を、以下、「本願補正発明」という。)。

(2) 本件補正の目的
本件補正は、本願補正発明に関し、本件補正前の請求項2に係る発明を、本件補正前の請求項3及び4に係る発明を特定するために必要な事項を付加することで、本件補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項である「ビールテイストアルコール飲料」について、「混合後のアルコール分が1?10%である」及び「A成分における原料としての食物繊維が、混合後のアルコール飲料にあって、1.2?3.0g/100mLとなる量である」と限定するものであって、本件補正前後の両発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものである補正を含むものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3) 引用例
ア 本願の出願(優先日)前に日本国内又は外国において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-130902号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質濃度が2.9g/100mL以下の発酵飲料であって、
少なくとも麦と水とを含む液を発酵させることを含む方法により得られたアルコール含有物(成分A)と
少なくとも麦と水とを含む液を発酵させることにより得られたアルコール含有物を蒸留して得られたアルコール含有蒸留液(成分B)とを、
成分A:成分B=999:1?992:8の混合比(容積比)で混合して得られる、発酵飲料。
・・・(省略)・・・
【請求項10】
発酵飲料のアルコール分が、1?15%である、請求項1?9のいずれかに記載の発酵飲料。
【請求項11】
発酵飲料がビールテイスト飲料である、請求項1?10のいずれかに記載の発酵飲料。」

(イ) 「【0009】
したがって本発明は、香味の改善された低糖質発酵飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討した結果、糖質濃度が2.9g/100mL以下である低糖質発酵飲料の製造において、少なくとも麦と水とを含む液を発酵させることにより得られたアルコール含有物(成分A)と、少なくとも麦と水とを含む液を発酵させることにより得られたアルコール含有物を蒸留して得られたアルコール含有蒸留液(成分B)とを、成分A:成分B=999:1?992:8の混合比率(容積比)で混合することにより、麦由来の濃醇な飲み応え、すなわち「コク」と、爽快な喉越し感、すなわち「キレ」を有し、且つ、バランスの取れた良好な香味の低糖質発酵飲料が得られることを見出した。
・・・(省略)・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明により、低糖質でありながら、良好なバランスの香味を有する発酵飲料を得ることができる。また、本発明の飲料は、麦由来の濃醇な飲み応え、すなわち「コク」と、爽快な喉越し感、すなわち「キレ」も有する。」

(ウ) 「【0014】
成分Aにおける「少なくとも麦と水とを含む液」とは、上記麦と水以外に、所望の原料を含む液をいう。ここでいう「原料」とは、所望の製品を製造するために用いられ又は添加されるすべての物質をいい、酒税法や食品衛生法などの各種法令、業界、又は企業の慣習などにより、原料、副原料、添加物、工程使用剤、半製品などの種々の言葉で呼ばれうるあらゆる物質を含む。麦と水以外の原料としては、例えば、ホップ、米、トウモロコシ、コウリャン、バレイショ、デンプン、そば、ソルガム、粟、ひえ、マメ類(大豆及びエンドウなど)、及びそれらの加工品(分画物、脱臭処理及び/又は酵素処理品)、ならびに糖類が挙げられる。また、苦味料又は着色料などの通常のビールや発泡酒の製造時に用いることができる添加物を加えてもよい。ホップは、ビール等の製造に通常使用されるペレットホップ、粉末ホップ、ホップエキスを香味に応じて適宜選択して使用することができる。また、イソ化ホップ、ヘキサホップ、テトラホップなどのホップ加工品を用いてもよい。苦味料としては、例えば、イソフムロン類や還元型イソフムロン類等を用いることができる。また、着色料としては、例えばカラメル色素を用いることができる。その他、必要であれば、泡形成剤や香料などを添加することができる。泡形成剤としては、大豆サポニン、キラヤサポニン等の植物抽出サポニン系物質、牛血清アルブミン等のタンパク質系物質などを適宜使用することができる。香料としては、例えば、ビール様の風味を有する香料を使用することができる。」

(エ) 「【0022】
本発明に用いる成分Aのアルコール分は、特に限定されないが、1?15%(v/v)程度、好ましくは1?8%(v/v)程度、より好ましくは3?6%(v/v)である。
【0023】
成分Aのエキス分は、0.1度以上が好ましく、特に発酵飲料のコクの観点からは、0.4度以上が好ましい。エキス分に特に上限はないが、一般には5度以下、好ましくは4度以下程度である。ここでエキス分とは、日本の酒税法におけるエキス分、すなわち、温度15度の時において原容量100立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数をいう。所望のエキス分とするために、水溶性食物繊維などのエキス調整剤を添加してもよい。ここでいう水溶性食物繊維とは、水に溶解し、且つ、酵母に資化されない又は資化されにくい性質をもつ食物繊維をいう。例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、ガラクトマンナン、水溶性トウモロコシ繊維、及びそれらの加水分解物などが挙げられる。これらを主成分として、好ましくは固形分換算重量で80%以上、より好ましくは90%以上含有する各種グレードの市販品を購入して用いることができる。主成分以外の成分としては、資化性糖や主成分の分解物などが含まれる。水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリンが最も好ましい。難消化性デキストリンとは、加熱処理したデンプンをアミラーゼで加水分解し、未分解物より難消化性成分を分取して脱塩、脱色して得られたものである。軟消化性デキストリンを固形分換算重量で80%以上、好ましくは90%以上含有する、パインファイバーC(松谷化学工業)などの市販の難消化性デキストリンを使用することができる。難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維の添加量は、最終製品に求める健康感やコクの設計に基づいて、適宜設定することができる。水溶性食物繊維の性状としては、特に限定されるものではなく、粉末状でも液糖の状態でもよい。水溶性食物繊維の添加時期は、発酵の前又は後のいずれでもいいが、水溶性食物繊維の添加により発酵不良が懸念される場合には、発酵後に純度の高い水溶性食物繊維を添加することが好ましい。」

(オ) 「【0030】
(発酵飲料)
本発明の発酵飲料は、上記の成分Aと成分Bとを、成分A:成分B=999:1?992:8の混合比(容積比)で混合することにより得られる。成分Aと成分Bとを混合する方法は特に限定されない。成分Bの容積比が発酵飲料全体の容積に対して0.1%に満たないと、後味の爽快感(「キレ」)が得られず、また、成分Bの容積比が発酵飲料全体の容積に対して0.8%を超えると、発酵飲料が水っぽく感じるようになり、良好な香味バランスを有する飲料とはいえなくなる。ここでいう飲料の「水っぽさ」とは、飲料を飲用した際の前味と後味のメリハリがなく、全体として味が少なくて薄く感じる状態のことをいう。通常、「水っぽい」発酵飲料は、消費者にあまり好まれない。成分A:成分Bの混合比(容積比)は、飲料のキレの観点からは、成分A:成分B=997:3?992:8の範囲がより好ましく、さらに、より水っぽさの少ない飲料を得るという観点からは、成分A:成分B=997:3?995:5の範囲が最も好ましい。
【0031】
成分Aと成分Bの混合割合を、成分A由来のアルコール分と成分B由来のアルコール分の比率で表すとすると、成分A由来のアルコール分:成分B由来のアルコール分が、99.2:0.8?93.9:6.1程度の範囲が好ましい。
【0032】
発酵飲料のアルコール分は、特に限定されないが、1?15%(v/v)であることが望ましい。特に、ビールや発泡酒といった消費者に好んで飲用される発酵飲料のアルコール濃度、すなわち、1?8%(v/v)、好ましくは3?6%(v/v)の範囲であることが特に望ましい。」

(カ) これらの事項を総合すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

「糖質濃度が2.9g/100mL以下の発酵飲料であって、少なくとも麦と水とを含む液を発酵させることを含む方法により得られたアルコール含有物(成分A)と少なくとも麦と水とを含む液を発酵させることにより得られたアルコール含有物を蒸留して得られたアルコール含有蒸留液(成分B)とを、成分A:成分B=999:1?992:8の混合比(容積比)で混合して得られる、発酵飲料であって、
成分Aのアルコール分は3?6%であり、
成分Aと成分Bの混合割合を、成分A由来のアルコール分と成分B由来のアルコール分の比率で表すとすると、成分A由来のアルコール分:成分B由来のアルコール分が、99.2:0.8?93.9:6.1程度の範囲であり、
発酵飲料のアルコール分は3?6%の範囲である、
ビールテイスト飲料。」

イ 本願の出願(優先日)前に日本国内又は外国において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2009-142233号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(キ) 「【0009】
本発明の課題は、従来のビール風味アルコール飲料と比較して、低カロリー、低糖質でありながら、風味やキレ(味質)等の香味及びボディ感のバランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、低カロリー、低糖質でありながら、風味やキレ(味質)等の香味及びボディ感のバランスに優れた低カロリービール風味アルコール飲料の製造方法について鋭意検討する中で、ビールや発泡酒などのビール風味アルコール飲料の製造工程において、副原料として、水溶性食物繊維と非発酵性糖質を添加することにより、ボディ感の付与と同時に、風味やキレ(味質)等の香味の賦与を行うことができることを見い出し、低カロリー、低糖質でありながら、風味やボディ感のバランスが格別に優れた低カロリービール風味アルコール飲料を製造する方法を開発し、本発明を完成するに至った。」

(ク) 「【0046】
以下の実施例で使用した水溶性食物繊維、糖類、糖質、糖アルコール、イソマルトオリゴ糖は、実験例で製造したものを除き、全て商業的に入手が可能である。
【実施例2】
【0047】
(水溶性食物繊維及び糖アルコールが添加されている発泡酒の製造):
表1の処方により、水溶性食物繊維及び糖アルコールが添加されている発泡酒を製造した。表中、「還元難消化性デキストリン^(*)」として、水溶性食物繊維含量が90%の製品(松谷化学)を使用した。また、「イソマルチトール含有液糖^(**)」として、東和化成(株)のPO-500(固形含量70%:全糖アルコール中の20%がイソマルチトール)を使用した。
【0048】
【表1】
・・・(省略)・・・
【0049】
コントロール1は水溶性食物繊維、糖アルコールのいずれも添加しないものとし、コントロール2は水溶性食物繊維のみを添加したもの、コントロール3は糖アルコールのみを添加したもの、複合添加1?3は、水溶性食物繊維及び3種の糖アルコールをそれぞれ添加したものとした。添加する水溶性食物繊維は、酵素-HPLC法で定量した際に、100g当り1.5g、添加する糖アルコール (コントロール3、複合添加1?3)は、100g当り1?1.3gになるように調整した。
【0050】
上記配合により、7日間、酵母による発酵を行った。発酵液は熟成操作(2次発酵)を行い、珪藻土を利用して発酵液から酵母を取り除き、発泡酒を得た。得られた発泡酒の分析結果及び官能評価結果を表2に示す(表中、*印の数値は、100g当たり含量を示す。)。水溶性食物繊維を添加した発泡酒の食物繊維含量を酵素-HPLC法によって分析した結果、100g当り1.5gの水溶性食物繊維が含まれており、予想通りの結果であった。また、糖組成分析カラム(CK08EC)を用いて、糖アルコール成分の分析を行ったところ、コントロール3、複合添加1?3では、投入した糖アルコールのほぼ全量が資化されずに残留していた。」

ウ 本願の出願(優先日)前に日本国内又は外国において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-252064号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ケ) 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、食事と共に摂取した際に、食後の血糖、インスリン、中性脂肪値の急激な上昇をゆるやかにするビール又は発泡酒を開発することである。これは単回摂取において食後の血糖、インスリン、中性脂肪値の急激な上昇をゆるやかにすることにより、長期摂取時には通常のビール又は発泡酒を摂取する場合と比較して、糖代謝及び脂質代謝を改善し、生活習慣病の発症及び肝臓機能の低下を軽減することが期待できるものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、難消化性デキストリン等の食物繊維を、ビール又は発泡酒に配合することにより、上記課題を効果的に達成できることを見出し、本発明に到達したものである。即ち、本発明は、食物繊維を含有することを特徴とするビール又は発泡酒に関するものである。」

(コ) 「【0023】
・・・
食物繊維は、例えば、ビール又は発泡酒の質量に基づいて、通常、1?5質量%、好ましくは、1.5?3質量%の量で配合することが適当である。例えば、難消化性デキストリンの場合には、例えば、固形分に基づいて、2?10質量%、好ましくは、3?6質量%配合することによって、食物繊維の上記含有量の範囲内とすることができる。難消化性デキストリンは、液状でビール又は発泡酒に添加してもよい。」

エ 本願の出願(優先日)前に日本国内又は外国において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特表2004-536604号公報(以下、「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。
(サ) 「【請求項1】
麦芽、ホップ、水、糖重合体、および任意選択で1種または複数の添加物を含む混合物を醸造する工程によって調製される麦芽飲料であって、
同一処方であるが糖重合体が存在しない麦芽飲料に比して、以下に定義される官能特性:
(a)コクまたは口当たり、
(b)フレーバ、または
(c)泡特性
の1種または複数を高めるために十分な量で、前記糖重合体が存在する麦芽飲料。
【請求項2】
前記糖重合体が、ポリデキストロースである請求項1に記載の麦芽飲料。」

(シ) 「【0046】
一実施形態では、本発明は、コクを高めるのに有効量の糖重合体、たとえばポリデキストロースを麦芽飲料形成成分に麦芽飲料形成過程の任意の工程または最終麦芽飲料生成物に添加することによって、麦芽飲料、たとえばビールのコク、すなわち口当たりを高める方法を目的とする。添加する糖重合体、たとえばポリデキストロースの量は、実験的に不適切な量ではなく、当業者によって容易に決定することができ、様々な要因、たとえば製造する麦芽飲料の種類、酵素分解または加水分解に対する不安定性、糖重合体の粘度などに応じて変化させることが可能である。しかし、0.1重量%から約10重量%の糖重合体を最終麦芽飲料製品内容物に存在させることが好ましく、約0.5重量%から約5重量%の糖重合体を最終麦芽飲料製品に存在させることがより好ましく、約1重量%から約3重量%の糖重合体を最終麦芽飲料製品に存在させることが最も好ましい。」

(ス) 「【0050】
前述したフレーバを高める量は、本明細書で前述したコクを高めるために効果的な量と同じ範囲である。好ましくは、フレーバを高める量の範囲は、最終製品の0.1重量%から約10重量%で、より好ましくは約0.5重量%から約5重量%、最も好ましくは最終ビール含量の約1重量%から約3重量%である。」

(4) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
用語の意味・内容からして、引用発明の「少なくとも麦と水とを含む液を発酵させることにより得られたアルコール含有物を蒸留して得られたアルコール含有蒸留液(成分B)」は本願補正発明の「B成分として、少なくとも麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留して得たアルコール含有蒸留物」に相当し、引用発明の「発酵飲料であって」「ビールテイスト飲料」は、「発酵飲料のアルコール分は3?6%の範囲であ」るから、本願補正発明の「ビールテイストアルコール飲料」に相当する。
また、本願補正発明の「A成分として」の「麦、ホップ及び食物繊維を原料の一部に使用して発酵させて得たアルコール分が0.5?7%であるアルコール含有物」と引用発明の「少なくとも麦と水とを含む液を発酵させることを含む方法により得られたアルコール含有物(成分A)」で「成分Aのアルコール分は3?6%であ」るものとは「A成分として」の「麦を原料の一部に使用して発酵させて得たアルコール分が3?6%であるアルコール含有物」の限りにおいて一致している。
そして、本願補正発明の「A成分由来のアルコール分:B成分由来のアルコール分の混合比率として95?80:5?20の範囲内で混合した、混合後のアルコール分が1?10%であるビールテイストアルコール飲料」と引用発明の「成分Aと成分Bの混合割合を、成分A由来のアルコール分と成分B由来のアルコール分の比率で表すとすると、成分A由来のアルコール分:成分B由来のアルコール分が、99.2:0.8?93.9:6.1程度の範囲であり」「発酵飲料のアルコール分は3?6%の範囲であ」るものとは「A成分由来のアルコール分:B成分由来のアルコール分の混合比率として95?93.9:5?6.1の範囲内で混合した、混合後のアルコール分が3?6%であるビールテイストアルコール飲料」の限りにおいて一致している。

したがって、両者は、
「A成分として、麦を原料の一部に使用して発酵させて得たアルコール分が3?6%であるアルコール含有物;及び、
B成分として、少なくとも麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留して得たアルコール含有蒸留物;とを、
A成分由来のアルコール分:B成分由来のアルコール分の混合比率として95?93.9:5?6.1の範囲内で混合した、混合後のアルコール分が3?6%であるビールテイストアルコール飲料。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
「A成分」に関し、本願補正発明では「A成分として麦、ホップ及び食物繊維を原料の一部に使用して発酵させて得た」もので「A成分における原料としての食物繊維が、混合後のアルコール飲料にあって、1.2?3.0g/100mLとなる量である」のに対して、引用発明では「少なくとも麦と水とを含む液を発酵させることを含む方法により得られた」ものであるものの、ホップ及び食物繊維について特段特定されていない点。

(5)判断
上記<相違点>について検討する。
引用例1には、引用発明の成分Aの「少なくとも麦と水とを含む液」の麦と水以外の原料としてホップが挙げられる旨記載され(摘記事項(ウ)参照)、また、ビールテイストアルコール飲料の原料としてホップを使用することは例示するまでもなく慣用手段にすぎないから、引用発明の成分Aの「少なくとも麦と水とを含む液」の原料としてホップを使用することは当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用発明は、香味の改善されたものであって、麦由来の濃醇な飲み応え、すなわち「コク」と、爽快な喉越し感、すなわち「キレ」も有するものである旨引用例1に記載され(摘記事項(イ)参照)、さらに、その成分Aは所望のエキス分とするために水溶性食物繊維などのエキス調整剤を添加してもよく、難消化性デキストリンなどの水溶性食物繊維の添加量は、最終製品に求める健康感やコクの設計に基づいて、適宜設定することができる旨引用例1に記載されている(摘記事項(エ)参照)から、引用発明の成分Aの「少なくとも麦と水とを含む液」の原料として水溶性食物繊維を用い、その量をビールテイストアルコール飲料に求める健康感やコクの設計に基づいて設定することが示唆されている。
そして、引用例2には、ビール風味アルコール飲料の製造工程において、副原料として、水溶性食物繊維と非発酵性糖質を添加することにより、ボディ感の付与と同時に、風味やキレ(味質)等の香味の賦与を行うことができ、水溶性食物繊維を添加した低カロリービール風味アルコール飲料の食物繊維含量は100g当り1.5gである旨記載され(摘記事項(キ)及び(ク)参照)、引用例3には、食後の血糖、インスリン、中性脂肪値の急激な上昇をゆるやかにし、糖代謝及び脂質代謝を改善し、生活習慣病の発症及び肝臓機能の低下を軽減することが期待できるよう、難消化性デキストリン等の食物繊維を、ビール又は発泡酒の質量に基づいて1?5質量%、好ましくは、1.5?3質量%の量でビール又は発泡酒に配合する旨記載され(摘記事項(ケ)及び(コ)参照)、引用例4には、コクやフレーバを高めるために添加する糖重合体、たとえばポリデキストロースの量は、実験的に不適切な量ではなく、当業者によって容易に決定することができ、約1重量%から約3重量%の糖重合体を最終麦芽飲料製品たとえばビールに存在させる旨記載されている(摘記事項(サ)ないし(ス)参照)ことから、ビールテイストアルコール飲料に水溶性食物繊維を添加し、最終製品に対するその含有量を香味、健康感やコクに関連する引用例2ないし4に記載された程度の普通の量とすることはよく行われていたことといえるから、引用発明のビールテイストアルコール飲料に求める健康感やコクに基づいて、その成分Aの「少なくとも麦と水とを含む液」の原料として水溶性食物繊維を使用し、最終製品に対するその含有量を引用例2ないし4に記載された程度の量とすることは、当業者が普通に検討することといえる。
そうすると、引用発明をして上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明、引用例1ないし4記載事項及び慣用手段から当業者が予測し得る範囲内のものである。

なお、引用例1においては、食物繊維は、添加してもよいエキス調整剤としての「任意成分」であり、食物繊維を添加した具体的な発酵飲料が一切記載されていない状況下であれば、甘味改善のために、「添加する食物繊維の量を調節する」こと、その上で、B成分のアルコール含有蒸留物の添加量の調整の着想は、当業者といえどもでてこないものである旨、請求人は主張している(審判請求書3.(3-4)参照)。
しかしながら、上述のとおり、ビールテイストアルコール飲料に求める健康感やコクの設計に応じて食物繊維を添加し、最終製品に対するその含有量を普通の量とすることはよく行われることであり、B成分のアルコール含有蒸留物の添加量も格別な量でもないし、香味を改善する引用発明からすれば請求人が主張する甘味改善に係る効果についても顕著なものとはいえない。

よって、本願補正発明は、引用発明、引用例1ないし4記載事項及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6) むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下、同項に係る発明を「本願発明」という。)は、請求項2及び4の記載からすると、以下のとおりのものと認められる。

「A成分として、麦、ホップ及び食物繊維を原料の一部に使用して発酵させて得たアルコール分が0.5?7%であるアルコール含有物;及び、
B成分として、少なくとも麦を原料の一部としたアルコール含有物を蒸留して得たアルコール含有蒸留物;とを、
A成分由来のアルコール分:B成分由来のアルコール分の混合比率として95?80:5?20の範囲内で混合したことを特徴とするビールテイストアルコール飲料であって、
A成分における原料としての食物繊維を、混合後のアルコール飲料にあって、1.2?3.0g/100mLとなる量で使用するビールテイストアルコール飲料。」

(1) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1ないし引用例4の記載事項及び引用発明は、上記「2 (3)」のとおりである。

(2) 対比・判断
本願発明は、前記「2」で検討した本願補正発明における「混合後のアルコール分が1?10%である」と特定していた点を削除したものに実質的に相当し、本願補正発明は本願発明の構成をすべて備えるから、前記「2 (4)、(5)」にて検討した本願補正発明と同様に、本願発明は、引用発明、引用例1ないし4記載事項及び慣用手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例1ないし4記載事項及び慣用手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は同法第49条第2号の規定に該当し、本願の他の請求項1ないし3及び5ないし18に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-04 
結審通知日 2017-09-06 
審決日 2017-09-25 
出願番号 特願2014-507691(P2014-507691)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C12G)
P 1 8・ 121- Z (C12G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 亜希子  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 窪田 治彦
田村 嘉章
発明の名称 食物繊維含有ビールテイストアルコール飲料  
代理人 草間 攻  

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