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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1334263
審判番号 不服2016-10883  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-19 
確定日 2017-11-09 
事件の表示 特願2012-524518「原盤の製造方法、配向膜の製造方法、位相差板の製造方法および表示装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月19日国際公開,WO2012/008326〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本願」という。)は,2011年7月5日(優先権主張平成22年7月12日)を国際出願日とする出願であって,平成27年4月28日付けで拒絶理由が通知され,同年7月6日に意見書及び手続補正書が提出され,同年12月7日付けで拒絶理由が通知されたが,請求人からの応答はなく,平成28年4月11日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年7月19日に請求されたものであって,本件審判の請求と同時に手続補正書が提出され,当審において,平成29年6月2日付けで拒絶理由が通知され,同年8月7日に意見書及び手続補正書が提出された。


2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は,平成29年8月7日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ,請求項1の記載は次のとおりである。

「フェムト秒レーザを用いて,0.12J/cm^(2)以下のフルエンスを有する直線偏光のレーザ光を基材表面に照射すると共に走査することにより,前記レーザ光の波長の半分以下のピッチの凹凸を有するパターンを描画する原盤の製造方法であって,
前記凹凸を,前記レーザ光の偏光方向と平行な方向に延在させ,
前記フルエンスの下限は,0.04J/cm^(2)であり,
前記原盤は,SUSまたはNiPからなり,
前記レーザ光の繰り返し周波数が,1000Hz以上である,製造方法。」(以下,当該請求項1に係る発明を「本願発明」という。)


3 当審において通知された拒絶理由の概要
当審において平成29年6月2日付けで通知された拒絶理由(以下,「当審拒絶理由」という。)は,概略,本願の各請求項(平成29年8月7日提出の手続補正書による補正前の各請求項)に係る発明は,引用文献1(国際公開第2010/032540号)に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。


4 引用例
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
引用文献1(国際公開第2010/032540号)は,本願の優先権主張の日(以下,「本願優先日」という。)より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであって,当該引用文献1には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「技術分野
[0001] 本発明は,液晶材料を用いた位相差板およびその製造方法,並びにこのような位相差板を用いた表示装置に関する。
背景技術
[0002] 近年,3次元表示が可能なディスプレイの開発が進んでいる。3次元表示方式としては,例えば,右眼用の画像と左眼用の画像とをそれぞれディスプレイの画面に表示し,これを偏光めがねをかけた状態で観察する方式がある(例えば,特許文献1参照)。この方式は,2次元表示が可能なディスプレイ,例えばブラウン管,液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイの前面に,パターニングされた位相差板を配置することで実現される。このような位相差板では,左右の眼にそれぞれ入射する光の偏光状態を制御するために,リタデーションや光学軸をディスプレイの画素レベルでパターニングすることが必要となる。
[0003] 例えば,特許文献1,2では,液晶材料や位相差材料を,フォトレジストなどを用いて部分的にパターニングすることにより,上記のような位相差板を作製する手法が開示されている。ところが,このような手法では,プロセスステップ数が多く,低コストで製造しにくいという問題があった。そこで,特許文献3には,光配向膜を用いてパターニングを行うことにより位相差板を作製する手法が開示されている。具体的には,基板上に光配向膜を形成したのち,この光配向膜を,偏光紫外線を用いてパターニングする。こののち,パターニングした光配向膜上に,重合性を有する液晶材料(以下,液晶性モノマーという)を塗布し,液晶分子を所望の方向に配向させる。こののち,紫外線を照射して液晶性モノマーを重合させることにより,位相差板を作製する。また,液晶ディスプレイにおいては,ポリイミド配向膜にラビング処理を施すことによりパターニングを行う手法がよく用いられている。
・・・(中略)・・・
[0004] しかしながら,上記特許文献3の光配向膜を用いる手法や,ポリイミド配向膜にラビング処理を施す手法では,配向膜において光吸収や色づきが生じて透過率が低下し,利用効率が低下してしまうという問題があった。また,光配向膜による手法では,パターニングの際に偏光紫外線を用いて部分照射を行う必要があるため,プロセスステップ数が多くなるという問題があった。
[0005] 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので,その目的は,簡易な工程で製造することができると共に,光利用効率の低下を抑制することが可能な位相差板およびその製造方法並びに表示装置を提供することにある。
・・・(中略)・・・
[0010] 本発明の位相差板の製造方法は,基板の表面に,特定の方向に延在する複数の溝を形成する工程と,複数の溝を形成した基板の表面に接して,重合性を有する液晶材料を塗布する工程と,液晶材料を重合させる工程とを含むものである。
[0011] 本発明の位相差板の製造方法では,複数の溝を形成した基板の表面に,重合性を有する液晶材料を塗布することにより,液晶分子は,溝の形状により溝の延在方向に基づいて配向する。その後,上記液晶材料を重合させることにより,液晶分子の配向状態が固定される。
・・・(中略)・・・
[0013] 本発明の位相差板および位相差板の製造方法によれば,複数の溝を有する基板表面に接して位相差層を設け,すなわち光配向膜やラビング用の配向膜を用いることなく,基板上の溝によって重合性液晶材料を配向させている。これにより,上記のような配向膜を用いる場合に比べ,基板と位相差層との界面付近における光損失を低減させることができる。よって,簡易な工程で製造できると共に,光利用効率の低下を抑制することが可能となる。また,本発明の表示装置によれば,上記位相差板を,表示セルの光源側もしくは表示側に設けるようにしたので,位相差板を例えば偏光めがねを用いた立体視用の位相差板や視野角補償フィルムとして用いる場合に,明るい表示を行うことが可能となる。」

(イ) 「図面の簡単な説明
[0014]・・・(中略)・・・
[図30]変形例10に係る型の製造に際して用いる超短パルスレーザのビームスポットの強度分布を表す図である。
[図31]図30のビームスポットのスキャン手順の一例を表す図である。
・・・(中略)・・・
[図33]変形例10に係る型の製造に際して用いる装置の一例を表す図である。」

(ウ) 「発明を実施するための形態
[0015] 以下,本発明の実施の形態について,図面を参照して詳細に説明する。・・・(中略)・・・
[0016] 位相差板10の構成
・・・(中略)・・・位相差板10では,基板11の表面に溝領域11A,11Bがパターニングされており,この基板11の表面に接して位相差層12が形成されている。
・・・(中略)・・・
[0019] 溝領域11A,11Bは,基板11の表面において,例えばストライプ状に,交互に配列している。これらのストライプ幅は,例えば表示装置(後述)における画素ピッチと同等の幅となっている。このうち,溝領域11Aは,複数の溝111aが配列したものであり,これら複数の溝111aは,互いに同一の方向d1に沿って延在している。溝領域11Bは,複数の溝111bが配列したものであり,これら複数の溝111bが互いに同一の方向d2に沿って延在している。また,方向d1,d2は,互いに直交している。但し,本実施の形態では,方向d1,d2は,溝領域11A,11Bのストライプ方向Sに対してそれぞれ,-45°,+45°の角度をなしている。 ・・・(中略)・・・
[0026]位相差板10の製造方法
次いで,上記位相差板10の製造方法について説明する。最初に,熱転写法により基板11を製造する場合について説明し,続いて,いわゆる2P成型法(PhotoPolymerization:光硬化を利用した成型法)により基板11を製造する場合について説明する。その後,これらの方法により製造された基板11を利用して位相差板10を製造する方法について説明する。
・・・(中略)・・・
[0029] 図7は,2P成型法により基板11を製造する装置の一例を表したものである。2P成型法では,例えば,基材上に紫外線や電子線で硬化する樹脂材料を塗布して樹脂層を形成し,形成した樹脂層の上から溝領域の反転パターンを有する型を押し当てる。この後,紫外線や電子線などのエネルギー線を照射して樹脂層を硬化させることにより,型のパターンを樹脂層の表面に転写するようにしている。・・・(中略)・・・
[0088](変形例10)
変形例10に係る位相差板の製造方法では,図21に示した型210のパターン領域210A,210Bを,例えば,SUS,Ni,Cu,Al,Feなどの金属等に,パルス幅が1ピコ秒(10^(-12)秒)以下の超短パルスレーザ,いわゆるフェムト秒レーザを用いてパターンを描画することにより形成する。
[0089] このとき,レーザ波長,繰り返し周波数,パルス幅,ビームスポット形状,偏光,サンプルへ照射するレーザ強度,レーザの走査速度等を適宜設定することにより,所望の凹凸を有するパターン領域210A,210Bを形成することができる。また,レーザ光の偏光を直線偏光とし,その偏光方向角度を凸(凹)部の延在方向d1,d2とそれぞれ直交する方向に設定する。
[0090] レーザ加工に用いるレーザの波長は,例えば800nmである。ただし,レーザ加工に用いるレーザの波長は,400nmや266nmなどでもかまわない。繰り返し周波数は,加工時間を考慮すると大きいほうが好ましいが,繰り返し周波数が1000Hzや2000Hzであっても加工は可能である。パルス幅は短い方が好ましく,200フェムト秒(10^(-15)秒)?1ピコ秒(10^(-12)秒)程度であることが好ましい。型へ照射されるレーザのビームスポットは,四角形形状であることが好ましい。ビームスポットの整形は,例えば,アパーチャーやシリンドリカルレンズ等によって行うことが可能である(図33,図34参照)。
[0091] また,ビームスポットの強度分布は,例えば,図30に示すように,なるべく均一であることが好ましい。これは,型に形成する凹凸の深さなどの面内分布をなるべく均一化するためである。ビームスポットのサイズを,図30に示したように,Lx,Lyとし,レーザの走査方向をy方向とすると,Lxは加工したいパターン領域の幅によって決まる。例えば,図31に示すように,Lxのサイズをパターン領域210Aと同程度にしてもよいし,図32に示すように,Lxのサイズをパターン領域210Aの半分程度とし,2回の走査により,パターン領域210Aを形成するようにしてもよい。この他にも,Lxのサイズをパターン領域210Aの1/N(Nは自然数)とし,N回の走査によりパターン領域210Aを形成してもよい。Lyはステージ速度やレーザ強度,繰り返し周波数などにより,適宜決めることができるが,例えば,30?500μm程度である。
[0092] 型210の作製手法の詳細について説明する。図33および図34は,レーザ加工の際に用いる光学配置の一例を表したものである。図33は平板の型を作製する場合の光学配置の一例を表したものであり,図34はロール状の型を作製する場合の光学配置の一例を表したものである。
[0093] レーザ本体400は,サイバーレーザー株式会社製のIFRIT(商品名)である。レーザ波長は800nm,繰り返し周波数は1000Hz,パルス幅は220fsである。レーザ本体400は,垂直方向に直線偏光したレーザ光を射出するようになっている。そのため,本装置では,波長板410(λ/2波長板)を用いて,偏光方向を回転させることで,所望の方向の直線偏光を得るようにしている。また,本装置では,四角形の開口を有するアパーチャー420を用いて,レーザ光の一部を取り出すようにしている。レーザ光の強度分布がガウス分布となっているので,その中央付近のみを用いることで,面内強度分布の均一なレーザ光を得るためである。また,本装置では,直交させた2枚のシリンドリカルレンズ430を用いて,レーザ光を絞ることにより,所望のビームサイズになるようにしている。
[0094] 平板350を加工する時には,リニアステージ440を等速で移動させる。例えば,図35に示すように,まず,パターン領域210Aのみを順番に走査し,その後,パターン領域210Bを順番に走査することが可能である。図35に括弧付きで示した数字は,走査する順番を示している。このような走査方法を用いた場合には,パターン領域210Aを走査している間およびパターン領域210Bを走査している間は,波長板410の角度を変える必要がない。そのため,パターン領域210Aの加工が終了し,次に,パターン領域210Bの加工を開始する際に,波長板410の角度を変えるだけで済む。
[0095] また,例えば,図36に示すように,パターン領域210Aとパターン領域210Bとを交互に走査してもよい。このような走査方法を用いた場合には,パターン領域210Aからパターン領域210Bに加工が移る際と,パターン領域210Bからパターン領域210Aに加工が移る際に,偏光の方向を変えるために波長板410の角度を変える必要がある。
[0096] ロール330を加工する際には,リニアステージ440を移動させる代わりに,ロール330を回転させればよい。ロール330を加工する際のレーザ光の走査手順は,平板350を加工する際のレーザ光の走査手順と同様である。
[0097] 続いて,実際に加工した型のレーザ光の条件について述べる。
[0098](1)パターン領域210A,210Bの幅がそれぞれ,530μmである場合
型の材料としてSUS304を用い,ビームサイズLxを530μmとし,ビームサイズLyを30μmとし,パワーを156mWとし,ステージ速度を3mm/sとした。パターン領域210Aを走査する際には,レーザの偏光方向をd1の方向にし,パターン領域210Bを走査する際には,レーザの偏光方向をd2の方向とした。d1方向は,パターン領域210A,210Bの延在方向に対して-45°とし,d2方向は,パターン領域210A,210Bの延在方向に対して+45°とした。
[0099] これにより,+45°方向に凹(凸)の延在方向を有する530μm幅のパターン領域210Aと,-45°方向に凹(凸)の延在方向を有する530μm幅のパターン領域210Bとが交互に配列された型を作製することができた。同様の条件で,SUS420J2,NiPも加工したが,同様に型を作製することができた。なお,NiPとして,SUS上にめっきしたものを用いた。
[0100](2)パターン領域210A,210Bの幅がそれぞれ,270μmである場合
型の材料としてSUS304を用い,ビームサイズLxを270μmとし,ビームサイズLyを220μmとし,パワーを200mWとし,ステージ速度を6mm/sとした。パターン領域210Aを走査する際には,レーザの偏光方向をd1の方向にし,パターン領域210Bを走査する際には,レーザの偏光方向をd2の方向とした。d1方向は,パターン領域210A,210Bの延在方向に対して-45°とし,d2方向は,パターン領域210A,210Bの延在方向に対して+45°とした。
[0101] これにより,+45°方向に凹(凸)の延在方向を有する270μm幅のパターン領域210Aと,-45°方向に凹(凸)の延在方向を有する270μm幅のパターン領域210Bとが交互に配列された型を作製することができた。
[0102] 以上の手法にて作製した型の凹凸は,その周期構造のピッチが約700nm,深さが50?250nm程度であった。
[0103] なお,このフェムト秒レーザを用いて作製した型210を用いて転写を行う工程以外の工程は,上記実施の形態と同様である。以下,本変形例の作用・効果について,一般的なリソグラフィを用いた場合と比較しつつ説明する。
・・・(中略)・・・
[0106] これに対し,本変形例では,型210のパターン領域210A,210Bをフェムト秒レーザを用いて,そのビームスポット形状を制御して描画することにより,一度の照射でパターン領域210A,210Bをそれぞれ一括して形成することができる。また,フェムト秒レーザを用いた場合には,偏光方向に直交する方向に沿って延在するように凸(凹)部が形成されるため,偏光の制御によって容易に位相差板の溝方向を設定することができる。よって,製造プロセスの簡易化に有利となる。また,型の大面積化にも対応し易くなる。」

(エ) 「[0133](実施例2)
また,実施例2として,変形例10で説明したフェムト秒レーザを利用して形成した型210を用いて位相差板60を作製した。このとき,型210としては,鏡面加工された厚み1mmのSUSを使用し,基材としてはゼオノアフィルム(ZF14:日本ゼオン(株)製)を用いた。また,基材に溝パターンを転写する際には,まず,型210に離型処理を施した後,UV硬化アクリル樹脂液(TB3042:スリーボンド(株)製)を展開し,ゼオノアフィルムよりなる基材で封止して,基材側からUV照射してアクリル樹脂を硬化させた。こののち,微細な溝が転写された基材を型210から剥離し,形成された溝の表面をAFM(AtomicForce Microscope:原子間力顕微鏡)を用いて観察したところ,サブミクロンオーダーの溝が形成されていることを確認した。図50に,実際に形成したパターン領域の一部を拡大したものを示す。次いで,この溝が形成された基材上にスピンコート法により液晶モノマー溶液(RMS03-001C:メルク(株)製)を塗布した後,55℃下において2分間加熱し,更に窒素雰囲気下でUV照射することにより位相差板60を得た。
・・・(中略)・・・
[0138] 得られた位相差板62,63を偏光顕微鏡観察した結果,両者とも液晶分子は溝方向d1,d2に沿って配向しており,その位相差は共に132nmであった。また,偏光顕微鏡にλ/4板を挿入して,作成した位相差パターンを観察した結果,共にサンプルを回転させるとシャッター機能を有していた。」

(オ) 「[図30]

[図31]

・・・(中略)・・・
[図33]



イ 引用文献1に記載された発明
前記ア(ア)ないし(オ)を含む引用文献1の全記載から,「変形例10」における型210の製造方法に関する発明を把握できるところ,当該発明の構成は次のとおりである。

「3次元表示が可能なディスプレイの位相差板における位相差層の重合性液晶材料を配向させるための基板11であり,その表面に,複数の溝111aが互いに同一の方向に沿って延在する溝領域11Aと,複数の溝111bが互いに同一の方向でかつ前記溝111aの延在方向とは直交する方向に沿って延在する溝領域11Bとが,ストライプ状に交互に配列されている基板11を,熱転写法や2P成型法により製造する際に用いられる型210の製造方法であって,
前記型210の材料であるSUS304を搭載したリニアステージ440をy方向に3mm/sで移動させながら,レーザ波長が800nmで,繰り返し周波数が1000Hzで,パルス幅が220fsの垂直方向に直線偏光したレーザ光を射出するレーザ本体400を用いて,パワーが156mWで,ビームサイズ(Lx×Ly)が530μm×30μmで,y方向に対して-45°方向に直線偏光したレーザ光を前記SUS304に照射することで,当該SUS304の表面に,+45°方向に延在方向を有する凹凸が形成された530μm幅のパターン領域210Aを形成する第1工程と,
前記SUS304に照射するレーザ光の偏光方向をy方向に対して+45°方向にする以外は,前記第1工程と同様にして,前記SUS304の表面であって前記パターン領域210Aとx方向に隣接する位置に,-45°方向に延在方向を有する凹凸が形成された530μm幅のパターン領域210Bを形成する第2工程と,
を有し,
前記第1工程及び第2工程により形成される前記パターン領域210A,210Bの凹凸は,周期構造のピッチが約700nmであり,深さが50?250nm程度である,
型210の製造方法。」(以下,「引用発明」という。)

(2) 周知の技術的事項
ア 特開2003-211400号公報の記載
当審拒絶理由において周知例である引用文献2として引用された特開2003-211400号公報(以下,当審拒絶理由と同様,「引用文献2」という。)は,本願優先日より前に頒布された刊行物であって,当該引用文献2には次の記載がある。(下線は,後述する周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【0002】
【従来の技術】・・・(中略)・・・
【0004】一方,精密加工を行うための手段としてレーザー加工が用いられているが,レーザー加工の中で,近年,パルス幅が1ピコ秒(10^(-12)秒)以下の超短パルスレーザー(フェムト秒レーザー)を用いたレーザー加工の開発が進められている。こうした超短パルスレーザーによる加工は,照射面での熱拡散が進む前に高速で加工が行われるため熱影響のきわめて少ない非熱微細加工が可能となる点,ガラスや石英等の透明材料の内部加工が可能となる点といった特徴を有しており・・・(中略)・・・
【0006】
【発明が解決しようとする課題】・・・(中略)・・・また,レーザー加工においてもレーザー波長と同程度のレベルの微細構造までの研究がなされているだけである。本発明者らは,超短パルスレーザーを低フルーエンスで固体材料表面に照射したときにレーザー波長より小さいサイズの微細構造が形成される現象を知得した。そこで,本発明では,こうした知見に基づき超短パルスレーザーを用いてレーザー波長よりも小さいサイズの微細構造を形成する微細加工方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る微細加工方法は,所定波長の超短パルスレーザーを低フルーエンスで偏光制御して固体材料表面に照射することで,前記所定波長より小さいサイズの微細構造を形成することを特徴とする。さらに,前記微細構造のサイズは,前記所定波長の1/10?3/5のサイズに形成されることを特徴とする。本発明に係る別の微細加工方法は,所定波長の超短パルスレーザーを低フルーエンスで直線偏光させて固体材料表面に照射することで,その偏光方向と直交する方向に沿って配列された細長い突起部を含む微細構造を形成することを特徴とする。さらに,前記突起部の幅は,前記所定波長より小さく形成されることを特徴とする。さらに,前記突起部の幅は,前記所定波長の1/10?3/5のサイズに形成されることを特徴とする。本発明に係る別の微細加工方法は,所定波長の超短パルスレーザーを低フルーエンスで直線偏光させて固体材料表面に照射することで,その偏光方向と直交する方向に沿って配列された細長い溝部を含む微細構造を形成することを特徴とする。・・・(中略)・・・
【0009】ここで,「フルーエンス」(fluence)とは,レーザーの1パルス当りの出力エネルギーを照射断面積で割って求めたエネルギー密度(J/cm^(2))である。一般に,「低フルーエンス」とは相対的にこの値が小さいことを言うが,ここでは,レーザーを材料表面に照射することで材料表面が蒸散する現象が生じるエネルギー密度の最小値(アブレーション閾値)近傍のフルーエンスを指している。この範囲ではレーザーの照射による熱影響がほとんどない。アブレーション閾値及び低フルーエンスの範囲は材料によって異なる。低フルーエンスの範囲は主にその材料の融点の違いにより異なり,通常アブレーション閾値の5倍程度を上限とする範囲で,材料によっては10倍程度の範囲まで熱影響がほとんど生じない場合もある。低フルーエンスの一例として,銅のレーザー加工では,アブレーション閾値が0.14J/cm^(2)で,0.46J/cm^(2)までレーザー照射による熱の影響がほとんど生じないという実験結果が発表されており,この場合低フルーエンスの上限はアブレーション閾値の3倍程度となっている。」

(イ) 「【0019】
【実施例】図1に記載の微細加工装置を用いて,窒化物系セラミックス(TiN)膜,アモルファスカーボン(DLC)膜及びステンレス鋼(SUS304)の材料を試料として,その表面に微細加工を行った。
<実施例1>ステンレス鋼基板上に形成した窒化物系セラミックス(TiN)からなる硬質膜(膜厚約2μm,硬度約Hv2100)に対して,図1の微細加工装置を用いて波長800nmでパルス幅40fsのレーザーを直線偏光(横(p)偏光及び縦(s)偏光)させフルーエンス0.2J/cm^(2)で材料表面に照射した。スポット径は約200μm,繰り返し周波数10Hzで,照射回数は計300パルスである。
・・・(中略)・・・
<実施例9?12>材料としてステンレス鋼(SUS304)基板を用い,それぞれ実施例1?4と同一の条件で照射した。
・・・(中略)・・・
【0024】・・・(中略)・・・表1は,各実施例で形成された突起部のサイズと波長との比を示しており,・・・(中略)・・・
【0025】
【表1】



イ 引用文献3の記載
当審拒絶理由において周知例である引用文献3として引用した「Shuji Sakabe外4名,”Mechanism for self-formation of periodic grating structures on a metal surface by a femtosecond laser pulse”,PHYSICAL REVIEW B 79.033409(2009),米国,The American Physical Society,2009年,033409-1ないし033409-4ページ(URL:https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/145968/1/PhysRevB.79.033409.pdf にて入手可能)」(以下,当審拒絶理由と同様,「引用文献3」という。)は,本願優先日より前に頒布された刊行物であって,当該引用文献3には次の記載がある。(下線は,後述する周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。また,注釈番号の表示は省略した。)
(ア) 「One of the authors has reported experimental results of the ablation rates and the observation of self-formed periodic grating structures for metals irradiated with a femtosecond-pulse laser. A brief description of the experiment is provided. The metal sample is a mechanically polished copper plate, and optical pulses of a laser with an 800 nm wavelength and with pulse durations of 70 and 100 fs are irradiated on the copper plate in normal direction through a f=100 mm lens. The respective depths and sizes of the ablation-produced cavities are measured with optical and atomic force microscopes. Furthermore, the surfaces of the cavities are observed with scanning electron microscopy(SEM), and the ablation rates are estimated from the depth profiles of the ablation-produced cavities in accordance with the laser intensity profiles. Figure 1(a) shows the dependence of the ablation rate on the energy fluence of the irradiated laser beam. The SEM pictures of the grating structures are shown in the insets of the images in Fig.1(b), and the grating spaces are given as the dependence on the laser energy fluence, as shown in Fig.1(b). The grating structures self-formed under the influence of the femtosecond-pulse laser irradiation are characterized by the following features: (1) the interspaces are shorter than the laser wavelength (<0.85λ), (2) the interspaces depend on the laser energy fluence, (3) the interspaces become shorter in a discontinuous manner near the ablation threshold as the laser energy fluence decreases, and (4) the gratings are produced perpendicular to the laser polarization plane. None of these features can be observed for nanosecond-pulse laser ablations.」(033409-1ページ左下欄下から4行ないし右下欄25行)
(日本語訳)
「著者の一人は,フェムト秒パルスレーザーで照射した金属のアブレーション率の実験結果と自己形成周期格子構造の観察を報告している。実験の簡単な説明が提供されている。金属試料は機械研磨された銅板であり,波長800nm,パルス持続時間70及び100fsのレーザーパルスが,f=100mmレンズを通して銅板に法線方向に照射される。アブレーション生成空洞のそれぞれの深さ及びサイズは,光学顕微鏡および原子間力顕微鏡で測定される。さらに,キャビティの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し,アブレーション生成キャビティの深さプロファイルからレーザ強度プロファイルに従ってアブレーション率を推定する。図1(a)は,照射レーザビームのエネルギーフルエンスに対するアブレーション率の依存性を示す。図1(b)の格子状構造のSEM写真を図1(b)中にイメージとして挿入して示し,格子間隔は図1(b)に示すようにレーザーエネルギーフルエンスに依存して与えられる。フェムト秒パルスレーザ照射の影響下で自己形成された格子構造は,(1)間隙がレーザ波長(<0.85λ)より短く,(2)間隙がレーザエネルギーフルエンスに依存し,(3)レーザエネルギーフルエンスが減少するにつれて,間隙がアブレーション閾値付近で不連続に短くなり,(4)格子がレーザ偏光面に垂直に生成される。ナノ秒パルスレーザーアブレーションでは,これらの特徴のいずれも観察することができない。」

(イ) 「

FIG. 1.(a) The dependence of the ablation rate on the energy fluence of the laser pulse (・・・(中略)・・・) (pulse duration 70 fs). (b) The dependence of the interspaces the grating structures produced by femtosecond laser pulses on the laser flux and (inset) the SEM pictures of the laser-ablated surface (・・・(中略)・・・) (pulse duration 100 fs).」(033409-2ページ左欄冒頭)
(日本語訳(イメージは省略する。))
「図1(a)レーザーパルスのエネルギーフルエンス(・・・(中略)・・・)(パルス持続時間70fs)に対するアブレーション率の依存性。 (b)フェムト秒レーザパルスによって生成された格子構造のレーザ光束への依存性とレーザ切除表面の(挿入)SEM写真(・・・(中略)・・・)(パルス持続時間100fs)。」

ウ 引用文献2及び3から把握される周知の技術的事項
前記ア及びイで摘記した引用文献2及び3の記載から,次の技術的事項が,本願優先日より前に周知であったと認められる。

「フェムト秒レーザを照射して対象物に周期的な凹凸構造を形成する場合,用いるフェムト秒レーザのフルーエンスの値が,アブレーション閾値を下限とし,当該アブレーション閾値の通常5倍程度を上限とする範囲では,熱影響がほとんど生じない加工が可能であり,かつ,前記範囲のフルーエンスのフェムト秒レーザを用いることで,形成される凹凸構造のピッチを,レーザ光の波長の1/10ないし3/5とすることができること,及び,前記範囲の下限及び上限は対象物の材料に応じて決まること。」(以下,「周知事項」という。)


5 対比
(1) 引用発明の「『レーザ本体400』が射出する『パルス幅が220fs』の『レーザ光』」,「型210の材料であるSUS304」,「『+45°方向に延在方向を有する凹凸が形成された』『パターン領域210A』,『-45°方向に延在方向を有する凹凸が形成された』『パターン領域210B』」及び「型210」は,本願発明の「フェムト秒レーザ」,「基材」,「凹凸を有するパターン」及び「原盤」に,それぞれ相当する。

(2) 引用発明が用いているレーザ光は,パルス幅が220fsであるから,「フェムト秒レーザ」である。
また,引用発明において,SUS304に照射される直線偏光したレーザ光のフルエンスは約0.98J/cm^(2)(≒(156×10^(-3)W)/{1000Hz×(530×10^(-4)cm)×(30×10^(-4)cm)})である。
さらに,引用発明は,「型210の材料であるSUS304」(本願発明の「基材」に相当する。以下,「5 対比」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()中の文言は,当該引用発明の構成に相当する本願発明の発明特定事項を指す。)を搭載したリニアステージ440をy方向に3mm/sで移動させながら,レーザ波長が800nmで,繰り返し周波数が1000Hzで,パルス幅が220fsの垂直方向に直線偏光した「レーザ光」(フェムト秒レーザ)を射出するレーザ本体400を用いて,パワーが156mWで,ビームサイズ(Lx×Ly)が530μm×30μmで,y方向に対して-45°又は+45°方向に直線偏光したレーザ光を前記「SUS304」(基材)に照射することで,当該SUS304の表面に,「+45°又は-45°方向に延在方向を有する凹凸が形成された530μm幅のパターン領域210A又はパターン領域210B」(パターン)を形成する「型210」(原盤)の製造方法であるところ,「SUS304」(基材)を搭載したリニアステージ440をy方向に3mm/sで移動させることは,「走査する」ことに相当し,引用発明において形成される約700nmという凹凸の周期構造のピッチは,レーザ波長800nmに対して,約0.88倍であって,本願発明において描画される凹凸のピッチと,「レーザ光の波長より小さい」点で共通する。
したがって,引用発明は,「フェムト秒レーザを用いて,直線偏光のレーザ光を基材表面に照射すると共に走査することにより,前記レーザ光の波長より小さいピッチの凹凸を有するパターンを描画する原盤の製造方法」である点で,本願発明と共通する。

(3) 引用発明においては,y方向に対して-45°方向に直線偏光したレーザ光により+45°方向に延在方向を有するパターン領域210Aの凹凸が形成され,y方向に対して+45°方向に直線偏光したレーザ光により-45°方向に延在方向を有するパターン領域210Bの凹凸が形成されるから,形成される凹凸の延在方向はレーザ光の偏光方向と直交する方向である。

(4) 引用発明において,「型210」(原盤)の材料として用いているのは「SUS304」であるから,引用発明は,「原盤は,SUSまたはNiPからな」るという本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(5) 引用発明において,レーザ光の繰り返し周波数は1000Hzであるから,引用発明は,「レーザ光の繰り返し周波数が,1000Hz以上である」という本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

(6) 前記(1)ないし(5)に照らせば,本願発明と引用発明は,
「フェムト秒レーザを用いて,直線偏光のレーザ光を基材表面に照射すると共に走査することにより,前記レーザ光の波長より小さいピッチの凹凸を有するパターンを描画する原盤の製造方法であって,
前記原盤は,SUSまたはNiPからなり,
前記レーザ光の繰り返し周波数が,1000Hz以上である,製造方法。」
である点で一致し,次の点で一応相違する。

相違点1:
本願発明では,基材表面に照射されるレーザー光のフルエンスが,0.12J/cm^(2)以下で,0.04J/cm^(2)を下限としており,描画されるパターンの凹凸のピッチが,レーザ光の波長の半分以下であるのに対して,
引用発明では,型210の材料であるSUS304に照射されるレーザ光のフルエンスは,約0.98J/cm^(2)であり,形成される周期構造のピッチは,レーザ光の波長の約0.88倍であって,いずれも本願発明の範囲にはない点。

相違点2:
本願発明では,形成される凹凸がレーザ光の偏光方向と平行な方向に延在しているのに対して,
引用発明では,形成される凹凸の延在方向はレーザ光の偏光方向と直交する方向である点。

6 判断
(1)相違点1について
引用発明は,3次元表示が可能なディスプレイの位相差板における位相差層の重合性液晶材料を配向させるための基板11を,熱転写法や2P成型法により製造する際に用いられる型210の製造方法であるところ,例えば,当審拒絶理由において引用文献4として引用した特開昭60-60624号公報(2ページ右下欄17行ないし3ページ左上欄2行や,3ページ右下欄17ないし末行等)等にみられるように,液晶の配向度合いを上げるためには,配向膜における凹凸のピッチは小さいほうが好ましいことが,本願優先日より前に技術常識であったと認められるから,引用発明において,レーザ光を照射することにより形成されるパターン領域210A,Bの凹凸の周期構造のピッチを小さくして,位相差板における位相差層の重合性液晶材料の配向度を上げることは,前記技術常識を熟知する当業者にとって自明の技術的課題である。
一方で,前記4(2)ウで「周知事項」として認定したように,フェムト秒レーザを照射して対象物に周期的な凹凸構造を形成する場合,用いるフェムト秒レーザのフルーエンスの値が,アブレーション閾値を下限とし,当該アブレーション閾値の通常5倍程度を上限とする範囲では,熱影響がほとんど生じない加工(以下,便宜上「非熱加工」といい,当該非熱加工が可能なフルエンスの範囲を「非熱加工範囲」という。)が可能であり,かつ,前記範囲のフルーエンスのフェムト秒レーザを用いることで,形成される凹凸構造のピッチを,レーザ光の波長の1/10ないし3/5程度とすることができること,及び,前記範囲の下限及び上限は対象物の材料に応じて決まることが,本願優先日より前に周知であったと認められるから,引用発明において,位相差板における位相差層の重合性液晶材料の配向度を上げるべく,SUS304に照射するレーザ光のフルエンスを,SUS304における「非熱加工範囲」内の適宜の値に設定して,形成されるパターン領域210A,Bの凹凸の周期構造のピッチを,レーザ光の波長の約0.88倍という値から,1/10ないし3/5という範囲内の適宜の値にまで小さくすることは,当業者が容易になし得たことというほかない。
しかるに,形成される凹凸構造のピッチをどの程度まで小さいものとするのか,ひいては「非熱加工範囲」のうちのどのような値にフルエンスを設定するのかは,当業者にとって単なる数値の最適化にすぎない。(なお,引用文献3のFIG.1(b)には,材質が銅ではあるものの,フルエンスが概ね0.04J/cm^(2)から0.10J/cm^(2)を少し超える値までの範囲で,形成される周期構造の間隔がレーザ光の波長800nmの半分以下(約250ないし350nm程度)になることが示されているから,SUS304を対象とする「0.04ないし0.12J/cm^(2)」というフルエンスの数値範囲が技術常識からは予想できないような特別な数値範囲であるとはいえない。)
したがって,引用発明におけるSUS304に照射されるレーザ光のフルエンスを「0.04ないし0.12J/cm^(2)」の範囲内に設定し,形成される凹凸の構造のピッチをレーザ光の波長の1/2以下とすること,すなわち,引用発明を,相違点1に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,技術常識や周知事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
本願明細書の【0057】の記載(平成27年7月6日提出の手続補正書により補正されている。)によれば,「0.04ないし0.12J/cm^(2)」という数値範囲内のフルエンスのレーザ光をSUSに照射した場合には,それにより形成された凹凸は,レーザ光の偏光方向と平行な方向に延在しているのであるから,前記(1)で述べた構成の変更を行った引用発明において,形成される凹凸の延在方向はレーザ光の偏光方向と平行な方向となるものと認められる。
したがって,相違点2に係る本願発明の発明特定事項は,相違点1に係る本願発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものに変更した引用発明が,当然に具備することとなる構成である。

(3)効果について
本願発明が有する効果は,当業者が予測できた程度のものである。
なお,形成される凹凸の延在方向がレーザ光の偏光方向と平行な方向となる点については,例えば,当審拒絶理由において引用文献5として引用した特開2008-800号公報(【0016】,【0028】等)にみられるように,フェムト秒レーザにより形成される微細構造の溝の方向はレーザの偏光方向と直交する方向か平行な方向のいずれかとなり,そのいずれとなるのかは,微細構造の材料とレーザ照射強度によって決まることが,本願優先日より前に知られていたと認められるから,当業者にとって予測できないものではない。


7 むすび
本願の請求項1に係る発明は,引用発明,技術常識及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-06 
結審通知日 2017-09-12 
審決日 2017-09-25 
出願番号 特願2012-524518(P2012-524518)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 昌伸  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 清水 康司
鉄 豊郎
発明の名称 原盤の製造方法、配向膜の製造方法、位相差板の製造方法および表示装置の製造方法  
代理人 特許業務法人田治米国際特許事務所  
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