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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1334274
審判番号 不服2016-18736  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-13 
確定日 2017-11-09 
事件の表示 特願2012- 86209「被検体情報取得装置およびその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-215259〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月5日の出願であって、平成28年3月11日付けで拒絶理由が通知され、同年5月12日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月5日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)されたところ、同年12月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年12月13日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の結論]
平成28年12月13日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。


[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、請求人が付与したものであり、補正箇所を示す。)。

「 【請求項1】
被検体の測定対象領域に超音波を送信して反射波を受信する複数の素子を第一の方向に配列した探触子と、
前記探触子に、前記第一の方向と交差する方向に移動する主走査と、前記第一の方向に移動する副走査を行わせる機械走査手段と、
前記複数の素子のうち、超音波を送信する送信開口素子列に含まれるそれぞれの素子に、当該素子を駆動させるための入力信号を入力する送信処理手段と、
前記複数の素子のうち、反射波を受信する受信開口素子列に含まれるそれぞれの素子による受信信号を合成する受信処理手段と、
前記合成された受信信号から被検体の特性情報を生成する生成手段と、
前記第一の方向における、前記探触子が主走査を行う位置に応じて、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を異ならせ、前記探触子が主走査を行う位置が被検体の測定対象領域の前記第一の方向における端部を含む場合に、当該端部において、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を、前記探触子が主走査を行う位置が前記端部を含まない場合よりも減少させる制御手段と、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成28年5月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 【請求項1】
被検体の測定対象領域に超音波を送信して反射波を受信する複数の素子を第一の方向に配列した探触子と、
前記探触子に、前記第一の方向と交差する方向に移動する主走査と、前記第一の方向に移動する副走査を行わせる機械走査手段と、
前記複数の素子のうち、超音波を送信する送信開口素子列に含まれるそれぞれの素子に、当該素子を駆動させるための入力信号を入力する送信処理手段と、
前記複数の素子のうち、反射波を受信する受信開口素子列に含まれるそれぞれの素子による受信信号を合成する受信処理手段と、
前記合成された受信信号から被検体の特性情報を生成する生成手段と、
前記探触子が主走査を行う位置が被検体の測定対象領域の端部を含む場合に、当該端部において、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を、前記探触子が主走査を行う位置が前記端部を含まない場合よりも減少させる制御手段と、
を有することを特徴とする被検体情報取得装置。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前に請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「制御手段」について、「前記第一の方向における、前記探触子が主走査を行う位置に応じて、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を異ならせ」と限定を付加し、また、「被検体の測定対象領域の端部」について、「被検体の測定対象領域の前記第一の方向における端部」と限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明との産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
本件補正発明は,以下のとおり、当審にて分節しA)?G)の見出しを付けた。

「 【請求項1】
A) 被検体の測定対象領域に超音波を送信して反射波を受信する複数の素子を第一の方向に配列した探触子と、
B) 前記探触子に、前記第一の方向と交差する方向に移動する主走査と、前記第一の方向に移動する副走査を行わせる機械走査手段と、
C) 前記複数の素子のうち、超音波を送信する送信開口素子列に含まれるそれぞれの素子に、当該素子を駆動させるための入力信号を入力する送信処理手段と、
D) 前記複数の素子のうち、反射波を受信する受信開口素子列に含まれるそれぞれの素子による受信信号を合成する受信処理手段と、
E) 前記合成された受信信号から被検体の特性情報を生成する生成手段と、
F) 前記第一の方向における、前記探触子が主走査を行う位置に応じて、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を異ならせ、前記探触子が主走査を行う位置が被検体の測定対象領域の前記第一の方向における端部を含む場合に、当該端部において、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を、前記探触子が主走査を行う位置が前記端部を含まない場合よりも減少させる制御手段と、
G) を有することを特徴とする被検体情報取得装置。」


(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2008-73304号公報)には、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。

(引1a)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波によって乳房領域における病変部の有無などを診断するための超音波乳房診断システムに関し、特に、乳癌の集団検診(スクリーニング)での利用に適した超音波乳房診断システムに関する。」

(引1b)
「【0014】
すなわち、上記課題を解決する本発明の超音波乳房診断システムは、それぞれ独立したまたは適宜に一体化された次の装置からなる。
(a) 乳房を垂下浸漬可能な水槽と、その水槽の底部に機械的走査可能に配置された超音波プローブとを備え、超音波の送受信により左右の各乳房の全領域を三次元的に撮像する超音波乳房撮像装置。
(b) その超音波乳房撮像装置によって得られた画像データに基づいて、左右の各乳房の全体のボクセルデータを作成する乳房ボクセルデータ作成装置。
(c) その乳房ボクセルデータ作成装置により作成された左右の各乳房のボクセルデータに基づいて読影診断のための画像を表示する読影画像表示装置であって、左右の乳房の左右に対称な断面箇所の断面画像を、対称に隣接させて、且つ、乳房の一端側から他端側にかけて所定のピッチで、順次表示する読影画像表示装置。(請求項1)
【0015】
ここで、上記(a)の超音波乳房撮像装置は、上記特許文献1及び2等において公知の「水槽式(水浴式)」の撮像装置である。この種の装置では、乳房はその保形のためにゴム膜のような薄膜を介して水中に浸漬されるのが一般的であるが、この保形は必ずしも必要ではない。そして、この装置によれば、プローブ走査が乳房と非接触でなされるため、丸みのある自然に近い形態のままで乳房全体の三次元画像データを得ることができる。なお、プローブによる超音波の送受信の探索深さは、胸筋及び肋骨に達する十分な深さが適切であり、一般には介在する水相を含めて10cm程度に設定することができる。
【0016】
なお、集団検診における個人差を考慮して、この装置におけるプローブの機械的走査範囲は例えば16cm程度の区画とすることがでる。そのため、この装置に備えられるプローブは1行程(パス)で機械的走査が可能となるようにその16cm程度の長さとすることができる。しかし、より実用的には汎用の超音波診断装置のハンドプローブと同程度の走査幅5、6cmのプローブの使用が好ましく、それによって特別な制御回路の変更を伴わず、またプローブ走査の自由度が得られる点でも好ましい。この場合、プローブの機械的走査は、適当なオーバーラップをとって複数の行程で行われる。
【0017】
上記(b)の乳房ボクセルデータ作成装置は、上記装置(a)によって得られた画像データを一時記憶するメモリなどを備えたコンピュータ装置からなり、その画像データに基づいて左右の各乳房全体の単一な三次元画像データを作成するものであり、前記超音波乳房撮像装置(a)によるプローブの機械的走査が複数の行程でなされる場合には特に重要である。より具体的には、装置(a)によりプローブの位置データと共に所定ピッチで得られた各列のスライス画像データは、この乳房ボクセルデータ作成装置(b)によってオーバーラップ部分を重ね合わせて互いに合成され、最終的には好ましくは等方のボクセルデータとして作成される。このオーバーラップ部の合成は、座標データに基づき一方のデータの単純な選択と削除によって行うこともできるが、好ましくは境界ラインが描出しないように一方側から他方側にかけて傾斜する重み付けを行って加算し二分する方式が適当である。
【0018】
なお、形成された乳房全体の好ましくは等方のボクセルデータは、上記の超音波乳房撮像装置(a)による乳房の撮像が広めになされるため、乳房の周辺領域をも含むものである。そのため、この乳房ボクセルデータ作成装置(b)においては、その乳房の周辺領域を削除して純粋な乳房領域のみのボクセルデータを作成する処理を行なうこともできる。しかし、乳房の周辺領域の画像は読影診断に妨げとなるものではなくむしろその参考になるものであり、一般にはそのような処理は不必要である。そして、この左右の各乳房のボクセルデータは読影診断のための任意の方向の断面での画像を表示するために利用されるが、後で述べるコンピュータ支援診断(CAD)における病変部の自動検出を三次元的に行うためにも利用される。
【0019】
上記(c)の読影画像表示装置はコンピュータ制御された表示装置からなり、前記の乳房ボクセルデータ作成装置(b)によって作成された左右の各乳房全体のボクセルデータに基づいて、左右の乳房の左右対称個所の断面画像を、左右対称に隣接して、また、乳房の一端側から他端側にかけて所定のピッチで、順次表示するものである。」

(引1c)
「【0032】
本実施形態の超音波乳房診断システム100は、超音波による乳癌検診に適合されたものであって、図1に示すように、乳房を垂下浸漬可能な水槽11と、この水槽11の底部に水平面内で機械的走査可能に配置された超音波プローブ12とを備え、超音波の送受信により左右の各乳房の全領域を三次元的に撮像する超音波乳房撮像装置10と、この超音波乳房撮像装置10によって得られた画像データAに基づいて、左右の各乳房全体のボクセルデータを作成する乳房ボクセルデータ作成装置20と、この乳房ボクセルデータ作成装置20により作成された左右の各乳房のボクセルデータに基づいて読影診断のための画像を表示する読影画像表示装置30であって、左右の乳房の左右に対称な断面箇所の断面画像を、対称に隣接させて、且つ、乳房の一端側から他端側にかけて所定ピッチで、順次表示する読影画像表示装置30とを備えている。
【0033】
さらに、本実施形態の超音波乳房診断システム100は、前記左右の各乳房のボクセルデータをコンピュータ解析して病変部を陽性候補として自動的に検出すると共に、その陽性候補を指示するマークを読影画像表示装置30による読影診断のための該当画像上にオーバレイ表示する病変部自動検出・マーキング装置40を更に備えている。
【0034】
図2は、超音波乳房撮像装置10の概略的な構成を示す説明図である。また、図3は、超音波プローブの機械的走査経路を示す説明図である。超音波乳房撮像装置10は、所謂「水槽式(水浴式)」の撮像装置であり、図2に示すように、被検者が水槽11の上部開口部に覆い被さり、水槽11の底部に配置された超音波プローブ12が機械的走査されて被検者の乳房全領域の超音波画像が三次元的に撮像されるものである。図2及び図3において、X方向は超音波プローブ12の電子走査方向と同一の方向であり、かつ、この図の被検者の左右方向である。Y方向はその被検者の頭尾方向であり、Z方向は超音波プローブ12による超音波の送受信の探索深さ方向である。なお、乳房への超音波の正確な入射のために、超音波プローブ12の機械的走査は、乳房の形状に対応した湾曲したレール上で行われてもよい。
【0035】
この超音波乳房撮像装置10は、被検者の左右何れか一方の乳房を受け入れ可能な上部開口部を有し内部に設けられた超音波プローブ12と前記乳房との間の超音波伝達を行う水を溜める水槽11と、超音波プローブ12を固定する走行台13と、この走行台13を超音波プローブ12の電子走査方向と同一のX方向に移動可能に案内する第1のレール14と、その第1のレール14をX方向と直交するY方向に案内する第2のレール15と、これら第1のレール14及び第2のレール15に沿って走行台13を移動させる駆動手段16とを備える。なお、この駆動手段16は、ステッピングモータからなる。また、本実施形態においては、水槽11の上部開口部にはこれを覆うように伸縮性を有する乳房の保形のための薄膜1が張られている。
【0036】
また、装置10は機能的には、装置全体を制御するプローブ駆動制御回路111と、被検体に対して超音波の送受信を行う超音波探触子112と、超音波探触子112から、超音波の送受信を行って被検体の断層像の音線データを得る超音波送受信装置としての受信部113及び送信部114と、得られた超音波画像を処理する画像処理部115と、画像処理部115で得られた断層像の音線データを順次格納するフレームメモリ116と、プローブ駆動制御回路111からの指示を受けてフレームメモリ116にアドレスデータを供給するアドレスデータ生成部117と、フレームメモリ116に順次格納される断層画像を確認用にモニタ17に表示させるモニタ表示回路118と、全体の制御を行うCPU119と、フレームメモリ116から画像フレームを読み出し前記アドレスデータと共に記録する記録装置18とを含むものである。
【0037】
ここで、超音波プローブ12は水槽11の下方においてX方向及びY方向に機械的に移動可能である。つまり、乳房から所定距離だけ離れた体軸にほぼ平行な平面内において機械的に自動走査される。この走査において駆動手段16がステッピングモータからなるので、CPU119は走査における超音波プローブ12の駆動制御の際にアドレスデータの取得が可能である。また、被検者の乳房の大きさは個人差があるため、超音波プローブ12の走査領域は縦横16cmの範囲でなされる。そして深さ方向には介在する水相を含めて10cmまでの断層データが得られるようになっている。この断層データのスライスピッチは適宜設定可能であるが、後工程で作成するボクセルデータは等方ボクセルが好ましいことを考慮するとそれに応じたスライスピッチが好ましい。
【0038】
また、超音波プローブ12の走査幅(振動子の配列長さ)は6cmである。そのため、図3に示すように、超音波プローブ12の走査は1cm程度のオーバーラップ部を含んで3行程でなされる。記録装置18によって適当な記録媒体に収録された断層像の断層画像は、医用画像として所定の期間保存される。これは本実施形態においては、後の乳房ボクセルデータ作成装置20で読影用断面画像を別個に作成するためにも利用される。
【0039】
このように超音波乳房撮像装置10によれば、被検者が水槽11の上部開口部に覆い被さった状態において、CPU119の制御により、水槽11の底部に配置された超音波プローブ12が機械的走査されて被検者の乳房全領域を含むのに十分な所定領域(縦横16cm×深さ10cm)での複数枚の断層画像を撮像するので、乳房を略自然な形状のままに三次元的に撮像することができる。


(引1d)
図2は、以下のようなものである。


図2から、超音波プローブ12は、超音波探触子112に結合されていることが読み取れる。


(引1e)
図3は、以下のようなものである。


図3から、超音波プローブ12の機械的走査は、X方向における位置ごとに、Y方向に移動することで実行されるものであることが読み取れる。
また、図3から、超音波プローブ12は、その長手方向がX方向に向けられていることも読み取れる。


(イ)引用文献1の記載から把握できる事項
a 【0037】段落の「超音波プローブ12の走査領域は縦横16cmの範囲でなされる」との記載及び【0038】段落の「図3に示すように、超音波プローブ12の走査は1cm程度のオーバーラップ部を含んで3行程でなされる」との記載における「走査」は、【0016】、【0039】段落の記載及び図3から、ともに、機械的走査を指していることは明らかであるから、当該2箇所の「走査」は「機械的走査」と読み替える。

b 【0038】段落の「超音波プローブ12の走査幅(振動子の配列長さ)は6cmである。」との記載と、図3を併せて参酌すると、引用文献1における超音波プローブ12は、X方向に振動子が配列されたものであることは明らかである。

c 【0035】段落の「この走行台13を超音波プローブ12の電子走査方向と同一のX方向に移動可能に案内する第1のレール14」との記載から、引用文献1は、X方向の電子走査を行うものであることは明らかであるものの、引用文献1には、「電子走査」の詳細について記載はされていないことから、引用文献1における「電子走査」は、通常のリニア電子走査、すなわち、送信開口素子列及び受信開口素子列に含まれる素子の数を一定として行なわれるリニア電子走査であるといえる。

(ウ)引用文献1に記載された発明
上記(引1a)-(引1e)の下線部の事項に、上記(イ)での検討を加えて整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
なお、引用発明の認定の根拠となった対応する段落番号等を付記した。

「超音波による乳癌検診に適合された超音波乳房診断システム100であって(【0032】)、
乳房を垂下浸漬可能な水槽11と、この水槽11の底部に水平面内で機械的走査可能に配置された超音波プローブ12とを備え、超音波の送受信により左右の各乳房の全領域を三次元的に撮像する超音波乳房撮像装置10と(【0032】)、
この超音波乳房撮像装置10によって得られた画像データAに基づいて、左右の各乳房全体のボクセルデータを作成する乳房ボクセルデータ作成装置20と(【0032】)、
を備えており(【0032】)、
超音波乳房撮像装置10は、
超音波プローブ12を固定する走行台13を超音波プローブ12の電子走査方向と同一のX方向に移動可能に案内する第1のレール14と、その第1のレール14をX方向と直交するY方向に案内する第2のレール15と、これら第1のレール14及び第2のレール15に沿って走行台13を移動させる駆動手段16と(【0035】)、
装置全体を制御するプローブ駆動制御回路111と、超音波探触子112から、超音波の送受信を行って被検体の断層像の音線データを得る超音波送受信装置としての受信部113及び送信部114と、全体の制御を行うCPU119を有し(【0036】)、
超音波プローブ12は、X方向に振動子が配列されたものであり(上記(イ)b)、
超音波プローブ12は、超音波探触子112に結合されており(図2)、
超音波プローブ12の機械的走査は、X方向における位置ごとに、Y方向に移動して実行されるものであり(図3)、
超音波プローブ12の機械的走査領域は、縦横16cmの範囲でなされ、そして深さ方向には介在する水相を含めて10cmまでの断層データが得られるようになっており(【0037】、上記(イ)a)、
超音波プローブ12の走査幅(振動子の配列長さ)は6cmであるため、超音波プローブ12の機械的走査は1cm程度のオーバーラップ部を含んで3行程でなされ(【0038】、上記(イ)a)
超音波プローブ12が機械的走査されて被検者の乳房全領域を含むのに十分な所定領域(縦横16cm×深さ10cm)での複数枚の断層画像を撮像するものであり(【0039】)、
ここで、超音波プローブ12の電子走査は、送信開口素子列及び受信開口素子列に含まれる振動子の数を一定として行われるリニア電子走査である(上記(イ)c)、
超音波乳房診断システム100。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特開昭57-171255号公報)には、以下の記載がある。

(引2a)
「3 発明の詳細な説明
本発明は、超音波探触子のリニア電子走査方法の改良に関するものである。
従来より、平面状に配列した複数個の振動子を、画像の分解能を上げる目的で、隣接するN個の振動子を単位としてこれを順次にずらせながら電子走査して超音波を送受するリニア電子走査方法がある。すなわち、例えば、第1図に示すようにM個の振動子でなる振動子アレイに対し、N個単位で1個ずつずらせながら電子走査する。この場合走査線本数は(M-N+1)本となる。今振動子アレイのピッチをdとすれば、アレイ長は(M-1)dであるが、Bモード表示の画像としては第1図に示された走査線の幅の領域の画像しか得られず、振動子アレイの端から各々(N-1)・d/2ずつ画像の出ない領域がある。Nを大きくすれば分解能は上るが、Nを大きくすればするほど走査線本数はより減少し視野がより狭くなる。
本発明は、このような点に鑑み、振動子アレイの全長に相当する視野を得ると共に実質的に高分解能の画質を保証し得る超音波探触子のリニア電子走査方法を提供することを目的とする。
以下図面を用いて本発明を詳しく説明する。第2図は本発明のリニア電子走査方法を説明するための図である。すなわち、M個の振動子の中、中央部ではN=8個の振動子を同時送受信に用いるが、端部においては順次2個ずつ増加又は減少して同時送受信を行なう走査方法を示す。更に詳述すれば、左端部では2,4,6,8個と駆動振動子数を増加しながらそれぞれの個数で送受信し、次には1個ずらせて8個の振動子を駆動する。以後1個ずつずらせながら8個ずつ同時駆動してゆき、8個単位が右端まで来たとき、次には6,4,2個と同時駆動振動子群を減少してゆく。
このような走査によれば、走査線本数は(N-1)本となり視野は(M-2)dとなる。従って、実質的に振動子アレイの全幅にわたる領域の画像を得ることができる。この場合、振動子アレイの端部では同時送受信の素子数が少ないため画像分解能は落るが、画像端部では部位の判定ができる程度であれば十分なので、実質上問題はない。
なお、実施例では、端部において、2個ずつ駆動振動子数を増減したが、これに限らず1個ずつ又は3個ずつ等で増加及び減少するようにしてもよい。またNは8個に限るものではない。
更にまた、音波の送信時と受信時とで駆動振動子数の異なるいわゆるインタレース方式に対しても本発明の走査方法を適用することができる。
以上説明したように、本発明によれば、実質上画質の分解能を損ねることなく振動子アレイの全長に相当する視野の得られる超音波探触子のリニア電子走査方法を実現することができる。」(第1頁左下欄11行目-第2頁右上欄2行目)

ただし、上記記載中の「振動子アレイの端から各々(N-1)・d/2ずつ画像の出ない領域がある。」は、「振動子アレイの端から各々(N/2-1)・dずつ画像の出ない領域がある。」の誤記であり、また、「このような走査によれば、走査線本数は(N-1)本となり視野は(M-2)dとなる。」は、「このような走査によれば、走査線本数は(M-1)本となり視野は(M-2)dとなる。」の誤記であることは文脈から明らかである。

(引2b)
図2は、以下のようなものである。


ただし、図2中、「走査番号」の「N-5」、「N-4」、「N-3」、「N-2」、「N-1」は、それぞれ、「M-5」、「M-4」、「M-3」、「M-2」、「M-1」の誤記であることは明らかである。

(3)引用発明との対比
ア A)について
(ア-1)引用発明の「被検者の乳房全領域を含むのに十分な所定領域」は、「超音波プローブ12が機械的走査」されて「断層画像を撮像」する領域であるから、本件補正発明の「被検体の測定対象領域」に相当し、引用発明における「超音波プローブ12」の「振動子」は、本件補正発明の「被検体の測定対象領域に超音波を送信して反射波を受信する」「素子」に相当する。

(ア-2)また、引用発明の「X方向」は、「超音波プローブ12」の「振動子が配列された」方向であるから、本件補正発明の「第一の方向」に相当する。

(ア-3)したがって、引用発明における「X方向に振動子が配列された」「超音波プローブ12」は、本件補正発明の「被検体の測定対象領域に超音波を送信して反射波を受信する複数の素子を第一の方向に配列した探触子」に相当する。

イ B)について
(イ-1)引用発明の「超音波プローブ12の機械的走査は、X方向における位置ごとに、Y方向に移動されるものであ」るから、引用発明の「超音波プローブ12を固定する走行台13」を「X方向に移動可能に案内する第1のレール14」「に沿って走行台13を移動させる」ことは、本件補正発明の「前記探触子に、」「前記第一の方向に移動する副走査を行わせる」ことに相当し、また、引用発明の「X方向と直交するY方向に案内する第2のレール15」「に沿って走行台13を移動させる」ことは、本件補正発明の「前記探触子に、前記第一の方向と交差する方向に移動する主走査」「を行わせる」ことに相当する。

(イ-2)したがって、引用発明の「超音波プローブ12を固定する走行台13」を「これら第1のレール14及び第2のレール15に沿って」「移動させる駆動手段16」は、本件補正発明の「前記探触子に、前記第一の方向と交差する方向に移動する主走査と、前記第一の方向に移動する副走査を行わせる機械走査手段」に相当する。

ウ C)及びD)について
(ウ-1)引用発明の「超音波プローブ12に結合」された「超音波探触子112から、超音波の送受信を行って被検体の断層像の音線データを得る超音波送受信装置としての受信部113及び送信部114」は、本件補正発明の「前記複数の素子のうち、超音波を送信する送信開口素子列に含まれるそれぞれの素子に、当該素子を駆動させるための入力信号を入力する送信処理手段と、前記複数の素子のうち、反射波を受信する受信開口素子列に含まれるそれぞれの素子による受信信号を合成する受信処理手段」に相当する。

エ E)について
(エ-1)引用発明における「左右の各乳房全体のボクセルデータ」は、本件補正発明の「被検体の特性情報」に相当する。

(エ-2)したがって、引用発明における「この超音波乳房撮像装置10によって得られた画像データAに基づいて、左右の各乳房全体のボクセルデータを作成する乳房ボクセルデータ作成装置20」は、本件補正発明の「前記合成された受信信号から被検体の特性情報を生成する生成手段」に相当する。

オ F)について
(オ-1)引用発明においては、「断層画像を撮像」する「被検者の乳房全領域を含むのに十分な所定領域」である「縦横16cm」の区画は、「振動子の配列長さ」が「6cm」である「超音波プローブ12」を「1cm程度のオーバーラップ部を含んで3行程」の機械的走査によって走査される領域と一致する。
ここで、当該「3行程」が、副走査方向に位置を変えながら主走査を3回行なうことを意味していることは、引用文献1の図3から明らかである。

(オ-2)よって、引用発明において実施される3回の主走査のうち、中央の副走査位置で行なわれる主走査は、「被検者の乳房全領域を含むのに十分な所定領域」の副走査方向端部を含まないものであり、その両端側の副走査位置で行なわれる主走査は、ともに、「被検者の乳房全領域を含むのに十分な所定領域」の副走査方向端部と「超音波プローブ12」における「振動子の配列」の端部とを一致させて行なうものである。

(オ-3)したがって、引用発明における「超音波プローブ12」が主走査を行う位置が副走査方向の両端部である場合は、本件補正発明の「前記探触子が主走査を行う位置が被検体の測定対象領域の前記第一の方向における端部を含む場合」に相当し、「超音波プローブ12」が主走査を行う位置が副走査方向の中央部である場合は、本件補正発明の「前記探触子が主走査を行う位置が前記端部を含まない場合」に相当する。

(オ-4)そして、引用発明において、プローブの機械的走査及び電子走査に関する制御は「装置全体を制御するプローブ駆動制御回路111」及び「全体の制御を行うCPU119」によって行なわれている。

(オ-5)したがって、引用発明の「装置全体を制御するプローブ駆動制御回路111」及び「全体の制御を行うCPU119」と、本件補正発明の「前記第一の方向における、前記探触子が主走査を行う位置に応じて、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を異ならせ、前記探触子が主走査を行う位置が被検体の測定対象領域の前記第一の方向における端部を含む場合に、当該端部において、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を、前記探触子が主走査を行う位置が前記端部を含まない場合よりも減少させる制御手段と」とは、「探触子の機械的走査において、前記探触子が主走査を行う位置が被検体の測定対象領域の前記第一の方向における端部を含む場合と前記探触子が主走査を行う位置が前記端部を含まない場合とが存在するように機械的走査を行わせる制御手段」である点で共通する。

カ G)について
引用発明の「超音波乳房診断システム100」は、診断のための情報を取得する装置も含むものであるから、本件補正発明の「被検体情報取得装置」に相当する。

キ 上記ア-カから、引用発明は、本件補正発明に対して、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。

<一致点>
「被検体の測定対象領域に超音波を送信して反射波を受信する複数の素子を第一の方向に配列した探触子と、
前記探触子に、前記第一の方向と交差する方向に移動する主走査と、前記第一の方向に移動する副走査を行わせる機械走査手段と、
前記複数の素子のうち、超音波を送信する送信開口素子列に含まれるそれぞれの素子に、当該素子を駆動させるための入力信号を入力する送信処理手段と、
前記複数の素子のうち、反射波を受信する受信開口素子列に含まれるそれぞれの素子による受信信号を合成する受信処理手段と、
前記合成された受信信号から被検体の特性情報を生成する生成手段と、
探触子の機械的走査において、前記探触子が主走査を行う位置が被検体の測定対象領域の前記第一の方向における端部を含む場合と前記探触子が主走査を行う位置が前記端部を含まない場合とが存在するように機械的走査を行わせる制御手段と、
を有する被検体情報取得装置。」

<相違点>
制御手段が、本件補正発明では、「前記第一の方向における、前記探触子が主走査を行う位置に応じて、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を異ならせ、前記探触子が主走査を行う位置が被検体の測定対象領域の前記第一の方向における端部を含む場合に、当該端部において、前記送信開口素子列または前記受信開口素子列に含まれる素子の数を、前記探触子が主走査を行う位置が前記端部を含まない場合よりも減少させる」のに対して、引用発明では、前記探触子が主走査を行う位置が被検体の測定対象領域の前記第一の方向における端部を含む場合に、当該端部において、探触子の開口素子列に含まれる素子の数を減少させることに関して特定がされていない点。

(4)判断
ア 相違点について
引用文献2には、「隣接するN個の振動子を単位としてこれを順次にずらせながら電子走査して超音波を送受するリニア電子走査方法」において生じる「振動子アレイの端から各々(N/2-1)・dずつ画像の出ない領域がある」ことを解決すべき課題として、「振動子アレイの全長に相当する視野を得ると共に実質的に高分解能の画質を保証し得る超音波探触子のリニア電子走査方法」として、「左端部では2,4,6,8個と駆動振動子数を増加しながらそれぞれの個数で送受信し、次には1個ずらせて8個の振動子を駆動する。以後1個ずつずらせながら8個ずつ同時駆動してゆき、8個単位が右端まで来たとき、次には6,4,2個と同時駆動振動子群を減少してゆく」ように端部での同時駆動振動子群を中央より減少させるように電子走査を行うことによって、「実質的に振動子アレイの全幅にわたる領域の画像を得ることができる」こと、当該方法では「振動子アレイの端部では同時送受信の素子数が少ないため画像分解能は落るが、画像端部では部位の判定ができる程度であれば十分なので、実質上問題はない」ことが開示されている。

そして、引用文献1には、段落【0018】に「形成された乳房全体の好ましくは等方のボクセルデータは、上記の超音波乳房撮像装置(a)による乳房の撮像が広めになされるため、乳房の周辺領域をも含むものである。そのため、この乳房ボクセルデータ作成装置(b)においては、その乳房の周辺領域を削除して純粋な乳房領域のみのボクセルデータを作成する処理を行なうこともできる。しかし、乳房の周辺領域の画像は読影診断に妨げとなるものではなくむしろその参考になるものであり、一般にはそのような処理は不必要である」と記載されており、乳房の周辺領域を含む測定対象領域の端部まで画像化すること好ましいことが示唆されている。してみれば、引用発明において、被検体の測定対象領域の端部まで超音波画像を取得しようとすることに、動機がある。

したがって、引用発明では、「超音波プローブ12」が主走査を行う位置が副走査方向の測定対象領域における端部である場合、測定対象領域における端部は「超音波プローブ12」の振動子アレイの端と一致するから、振動子アレイの端までの超音波画像を取得するために、引用文献2記載のリニア電子走査方法に鑑み、測定対象領域の端部において、送信開口素子列及び受信開口素子列に含まれる素子の数を、当該素子の数を一定として電子走査が行われている前記「超音波プローブ12」が主走査を行う位置が前記端部を含まない場合よりも減少させる、結果的に、「超音波プローブ12」が主走査を行う位置が測定対象領域の副走査方向端部を含む場合、当該端部を電子走査する際の送信開口素子列及び受信開口素子列に含まれる素子の数は、主走査を行なう位置が測定対象領域の副走査方向端部を含まない場合よりも少なくなり、送信開口素子列及び受信開口素子列に含まれる素子の数は、副走査方向における超音波プローブ12が主走査を行う位置に応じて異なるものとなるから、上記相違点に係る本件補正発明の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者であれば容易に想到しうることである。

イ 本件補正発明の効果について
本件補正発明の効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎず、格別顕著なものではない。

ウ 小括
上記ア-イから、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたというべきである。

(5)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年12月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-13に係る発明は、平成28年5月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1-2及びその記載事項は、上記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「制御手段」及び「被検体の測定対象領域の端部」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記理由2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-07 
結審通知日 2017-09-12 
審決日 2017-09-26 
出願番号 特願2012-86209(P2012-86209)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之永田 浩司門田 宏  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 松岡 智也
▲高▼見 重雄
発明の名称 被検体情報取得装置およびその制御方法  
代理人 丹羽 武司  
代理人 森廣 亮太  
代理人 川口 嘉之  
代理人 中村 剛  
代理人 坂井 浩一郎  
代理人 世良 和信  
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