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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1334303
審判番号 不服2016-17551  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-28 
確定日 2017-11-29 
事件の表示 特願2011-208074「情報配信システム及び情報配信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日出願公開、特開2013- 54714、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成23年9月5日の出願であって,平成28年1月26日付けで拒絶理由通知がされ,平成28年2月26日に手続補正書が提出され,平成28年7月26日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年10月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され,平成29年2月2日に前置報告がされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成28年7月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1:この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1,5?8には,「インターネット等の」と記載されており,「等」という記載により「インターネット」の他にどのような構成を含むのかが不明確であり,発明の範囲も明確でない。
(2)請求項1,5?8には,「指示」と記載されているが,具体的に何を意味するのかが明確でない。
よって,請求項1,5?8に係る発明は明確でない。

理由2:この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1,5?8における「指示」は,【発明を実施するための形態】における対応する記載が明確でない。
よって,請求項1,5?8に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものでない。

理由3:この出願は,発明の詳細な説明の記載が下記の点で,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

請求項1,5?8の記載は,【発明の詳細な説明】中の記載を参酌しても明確でなく,【発明の詳細な説明】中の記載は,各請求項に係る発明を実施することができる程度に明確でない。
よって,この出願の発明の詳細な説明は,当業者が請求項1,5?8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。


第3 本願発明

本願請求項1-8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は,平成28年10月28日に提出された手続補正書による手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】所定のWebサイトのURLを含むリンク先情報を近距離無線通信を利用して送信するリンク先情報送信サーバと,このリンク先情報送信サーバから送信されたリンク先情報を近距離無線通信を利用して受信し,前記リンク先情報が指示されたことを感知した場合,前記リンク先情報をインターネットの通信手段を利用してWeb画面送信サーバに送信するクライアント機器と,このクライアント機器からのリンク先情報に基づき当該リンク先情報に示された前記所定のWebサイトを表示するWebサイト画面表示エリアと広告情報を表示する広告情報表示エリアを組み合わせた画面情報を生成してクライアント機器に送信するWeb画面送信サーバとを備え,前記クライアント機器が前記Web画面送信サーバから送信された画面情報を受信し,この画面情報に基づきWebサイト画面表示エリアと広告情報表示エリアを表示することを特徴とする情報配信システム。」


本願発明2?4は,概略,本願発明1を減縮したものである。
本願発明5?8は,それぞれ本願発明1?4に対応する方法の発明であり,本願発明1?4とカテゴリ表示が異なるだけの発明である。


第4 引用文献,引用発明等

前置報告書で引用された引用文献1(特開2002-366068号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は重要箇所に対して当審が付した。以下,同様。)。

「【0041】以下,図面を参照しながら実施の形態の広告提供システムについて詳細に説明する。図3は,第1の実施の形態の広告提供システムの構成を示す図である。広告代理ASPサーバ21と,広告媒体者携帯端末装置26と,消費者携帯端末装置27と,販売者/メーカサーバ29とは,インターネット等のネットワーク28を介して接続されている。」

「【0043】広告媒体者携帯端末装置26は,例えば,Bluetooth等の無線通信機能を有する携帯電話,PDA等の携帯型コンピュータなどであり,ネットワーク28を介して広告代理ASPサーバ21をアクセスする機能と,広告媒体者が身につけまたは所持している品物の広告情報,あるいはその広告情報が提供されているインターネットのウェブサイトのURL等(広告指定情報)を消費者の携帯端末装置27に無線で送信する機能を有している。
【0044】消費者携帯端末装置27も同様に携帯電話,携帯型コンピュータであり,ネットワーク28を介して広告代理ASPサーバ21をアクセスする機能と,広告媒体者端末装置26に対して広告情報の送信を無線により要求する機能とを有する。なお,一定の無線エリア内にいる消費者携帯端末装置27と広告媒体者携帯端末装置26とは直接無線により通信することができる。」

「【0072】図12は,販売者がそれぞれのサーバから広告代理ASPサーバ21に広告データを配信し,その広告データが広告代理ASPサーバ21の広告管理サーバ23に格納される場合の説明図である。この場合,販売者のサーバ29から広告代理ASPサーバ21に広告データを送信し,その広告データが広告代理ASPサーバ21の広告管理サーバ23に格納される。」

「【0082】図16において,販売者から商品を購入した消費者は(図16,(1)),広告代理ASPサーバ21に対して,購入した商品Aの商品コードを入力して商品Aの配信用広告データの送信を要求する(図16,(2))。
【0083】広告代理ASPサーバ21の広告管理サーバ23は,該当する商品の広告データが表示されるウェブサイトのURLを含む広告データを消費者Aの携帯端末装置に配信する(図16,(3))。URL以外の広告データとしては,例えば,商品の種別,色等を配信する。」

「【0098】広告媒体者携帯端末装置26には,予め広告代理ASPサーバ21から広告媒体者の所有している商品の広告URLが配布されている(図23,(1))。消費者が消費者携帯端末装置27から広告を知りたい商品のキーワード等を入力して広告データの配信要求を無線信号により送信すると,無線信号の受信エリア内にいる広告媒体者が,広告媒体者携帯端末装置26に登録してある広告データのうち,送信されてきたキーワードに合致する広告を無線信号により配信する(図23,(2))。消費者は,広告媒体者から送信されてくる広告データの商品の内容を示す情報等を参考して目的とする商品の広告URLを選択し,そのURLにより広告を閲覧する(図23,(3))。」

「【0102】消費者携帯端末装置27は,広告媒体者携帯端末装置26から無線により送信されてくる広告データを受信する(図24,S54)。複数の広告媒体者携帯端末装置26からのデータが送信されてくる場合には,所定の時間,データが送信されてこないかどうか確認し,送信されてこなければ,全てのデータを受信したと判断する(図24,S54)。広告媒体者携帯端末装置26からのデータの受信が完了した場合には(S54,YES),受信データに広告データが含まれているか否かを判別する(図24,S55)。受信データに広告データが含まれている場合には(S55,YES),広告データのURLで指定されるウェブサイトをアクセスして所望の広告を見つける(図24,S56)。消費者は,自分が興味を持った商品の広告があるか否かを判断する(S57)。所望の広告があったなら(S57,YES),その広告データ(この場合,商品の情報)を消費者携帯端末装置27の記憶装置35にダウンロードする(図24,S58)。」

また,図23より,消費者27の広告閲覧の対象が,広告代理ASPサーバ21の広告データであることが見て取れ,広告閲覧は広告URLの選択によってなされ,且つ,広告URLは広告情報が提供されているインターネットのウェブサイトを指定するものであるから,広告代理ASPサーバ21の広告データが広告情報が提供されているインターネットのウェブサイトであることは明らかである。

引用文献1の上記記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「Bluetooth等の無線通信機能を有する携帯電話,PDA等の携帯型コンピュータなどであって,広告媒体者が身に着けまたは所持している物品の広告情報が提供されているインターネットのウェブサイトのURLである広告URLを含む配信用広告データを消費者の携帯端末装置27に無線で送信する機能を有している広告媒体者携帯端末装置26と,
広告媒体者携帯端末装置26と同様の携帯電話,携帯型コンピュータであって,一定の無線エリア内にいる広告媒体者携帯端末装置26とは直接無線により通信することができ,無線信号の受信エリア内にいる広告媒体者携帯端末装置26から送信されてくる広告URLが消費者により選択されると,そのURLで指定されるウェブサイトにアクセスして所望の広告を閲覧できる消費者携帯端末装置27と,
広告情報が提供されているインターネットのウェブサイトである広告データが格納され,広告URLを含む配信用広告データを広告媒体者(商品を購入した消費者A)の携帯端末装置26に配信する広告管理サーバ23を有する広告代理ASPサーバ21と,
からなり,これら広告代理ASPサーバ21,広告媒体者携帯端末装置26,消費者携帯端末装置27がインターネット等のネットワーク28を介して接続された広告提供システム。」


第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

a 引用発明における「広告情報が提供されているインターネットのウェブサイト」,「Bluetooth等の無線通信」,「選択」,「広告提供システム」は,本願発明1における「所定のWebサイト」,「近距離無線通信」,「指示」,「情報配信システム」に相当する。

b 引用発明における「広告URL」は,本願発明1の「所定のWebサイトのURLを含むリンク先情報」に含まれる。

c 引用発明における「広告媒体者携帯端末装置26」は,「Bluetooth等の無線通信」機能を有し,「広告情報が提供されているインターネットのウェブサイトのURL」である「広告URL」を含む広告データを一定の無線エリア内の「消費者携帯端末装置27」に直接送信するものであり,本願発明1における「リンク先情報送信サーバ」に相当する。

d 引用発明における「消費者携帯端末装置27」は,「広告媒体者携帯端末装置26」と同様の携帯電話,携帯型コンピュータであるから,「Bluetooth等の無線通信」機能を有し,「広告媒体者携帯端末装置26」から送信されてくる「広告データ」に含まれる「広告URL」が消費者により「選択」されると,この「広告URL」で指定されるウェブサイトにアクセスして閲覧可能となるものであるから,本願発明1における「クライアント機器」に相当する。

e 引用発明における「広告代理ASPサーバ21」は,「消費者携帯端末装置27」からの「広告URL」で示された「広告情報が提供されているインターネットのウェブサイト」を「消費者携帯端末装置27」に配信するものと認められるから,本願発明1における「Web画面送信サーバ」に対応する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「所定のWebサイトのURLを含むリンク先情報を近距離無線通信を利用して送信するリンク先情報送信サーバと,このリンク先情報送信サーバから送信されたリンク先情報を近距離無線通信を利用して受信し,前記リンク先情報が指示されたことを感知した場合,前記所定のWebサイトを取得するための情報をインターネットの通信手段を利用してWeb画面送信サーバに送信するクライアント機器と,このクライアント機器からの情報に基づき当該情報に示された前記所定のWebサイトを表示するWebサイト画面の情報をクライアント機器に送信するWeb画面送信サーバとを備え,前記クライアント機器が前記Web画面送信サーバから送信された画面情報を受信し,この画面情報に基づきWebサイト画面を表示することを特徴とする情報配信システム。」

(相違点1)
本願発明1では,「クライアント機器」から「Web画面送信サーバ」に送信する情報が「所定のWebサイトのURLを含むリンク先情報」であるのに対して,引用文献1には,「消費者携帯端末装置27」が「広告代理ASPサーバ21」へアクセスする際に送信する情報についての具体的言及がなく,したがって,引用発明では,「消費者携帯端末装置27」から「広告代理ASPサーバ21」へ「広告URL」自体を送信しているとはいえない点。

(相違点2)
本願発明1では,「Web画面送信サーバ」が「リンク先情報に示された前記所定のWebサイトを表示するWebサイト画面表示エリアと広告情報を表示する広告情報表示エリアを組み合わせた画面情報」を生成して「クライアント機器」に送信し,「クライアント機器」が当該「画面情報に基づきWebサイト画面表示エリアと広告情報表示エリアを表示する」のに対して,引用発明は,「広告代理ASPサーバ21」が「広告情報が提供されているインターネットのウェブサイト」を配信するものの,これと別途の広告情報を異なるエリアに配置した画面情報を生成して「消費者携帯端末装置27」へ配信するものではない点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み,まず相違点1から検討する。引用発明では,「広告代理ASPサーバ21」に含まれる「広告管理サーバ23」に「広告情報が提供されているインターネットのウェブサイト」である「広告データ」が格納されているから,「消費者携帯端末装置27」に「広告データ」を配信するに際して,「広告代理ASPサーバ21」は他のサーバにアクセスする必要はなく,そのURLを知る必要はない。そうすると,たとえ,HTTPによりWebサイトにアクセスする際,URLのドメイン名で特定されるコンピュータに対して,該URLのうち当該ドメイン名を除いた部分をリクエストとして送信することが技術常識であるとしても,「消費者携帯端末装置27」が受信した「広告URL」自体を「広告代理ASPサーバ21」へ送信する構成とすることは,引用文献1に接した当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。したがって,上記相違点2について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2?4について

本願発明2?4も,本願発明1の,「リンク先情報送信サーバ」が「クライアント機器」へ送信する情報,「クライアント機器」が「Web画面送信サーバ」へ送信する情報,及び,「クライアント機器」での「指示」の対象となる情報が,いずれも「所定のWebサイトのURLを含むリンク先情報」であるという同一の事項を有するものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明5?8について

本願発明5?8は,本願発明1?4に対応する方法の発明であり,,「リンク先情報送信サーバ」が「クライアント機器」へ送信する情報,「クライアント機器」が「Web画面送信サーバ」へ送信する情報,及び,「クライアント機器」での「指示」の対象となる情報が,いずれも「所定のWebサイトのURLを含むリンク先情報」であるという事項に対応する事項を有するものであるから,本願発明1?4と同様の理由により,当業者であっても,引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について

1.理由1(特許法第36条第6項第2号)について

審判請求時の補正により,請求項1,5?8から「等」という記載が削除され,原査定の理由1の(1)は解消された。
また,審判請求時の補正により,【発明の詳細な説明】の段落【0011】の「リンク先情報が指示された場合」との記載が「リンク先情報が指示されたことを感知した場合(以下,「指示」を「クリック」で説明する。)」とされた。そして,審判請求書における,「【発明の詳細な説明】において,『指示』を『クリック』で説明することが明確となり,この『クリック』については実施例の構成や動作で説明しており,ご指摘の不備は解消したものと確信する」との主張を踏まえれば,請求項1,5?8の「指示」が「クリック」を意味することが明確であるから,原査定の理由1の(2)は解消された。
よって,原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第36条第6項第1号),理由3(特許法第36条第4項第1号)について

上記のとおり,審判請求時の補正により,【発明の詳細な説明】の段落【0011】の「リンク先情報が指示された場合」との記載が「リンク先情報が指示されたことを感知した場合(以下,「指示」を「クリック」で説明する。)」とされた。そして,審判請求書における,「【発明の詳細な説明】において,『指示』を『クリック』で説明することが明確となり,この『クリック』については実施例の構成や動作で説明しており,ご指摘の不備は解消したものと確信する」との主張を踏まえれば,請求項1,5?8の「指示」が【発明の詳細な説明】の「クリック」に対応することは明らかであるから,原査定の理由2?3は,いずれも解消された。
よって,原査定の理由2?3を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-08 
出願番号 特願2011-208074(P2011-208074)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (G06F)
P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲はま▼中 信行坂東 博司  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 松田 岳士
千葉 輝久
発明の名称 情報配信システム及び情報配信方法  

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