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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 特39条先願  H01M
審判 全部申し立て 特29条の2  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
管理番号 1334311
異議申立番号 異議2017-700205  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-28 
確定日 2017-09-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5985674号発明「非水電解質電池および電池パック」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5985674号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。 特許第5985674号の請求項1、2、4?8に係る特許を維持する。 特許第5985674号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5985674号の請求項1?8に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成24年1月19日に出願された特願2012-9235号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年1月30日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月12日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 伊藤美津子により特許異議の申立てがされ、平成29年5月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月10日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から同年8月10日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1?9のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。
(1) 訂正事項1
請求項1に「炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物を含む」とあるのを、「炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物(炭酸リチウム単独の場合を除く)を含む」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4?8も同様に訂正する。)。

(2) 訂正事項2
請求項1に「前記リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.073質量%以下であり、」とあるのを、「前記リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.053質量%以下であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、4?8も同様に訂正する。)。

(3) 訂正事項3
請求項3を削除する。

(4) 訂正事項4
請求項4に「請求項1?3のいずれか1項に記載の非水電解質電池」とあるのを、「請求項1?2のいずれか1項に記載の非水電解質電池」に訂正する。

(5) 訂正事項5
請求項5に「請求項1?4のいずれか1項に記載の非水電解質電池」とあるのを、「請求項1?2,4のいずれか1項に記載の非水電解質電池」に訂正する。

(6) 訂正事項6
請求項6に「請求項1?5のいずれか1項に記載の非水電解質電池」とあるのを、「請求項1?2,4,5のいずれか1項に記載の非水電解質電池」に訂正する。

(7) 訂正事項7
請求項7に「請求項1?6のいずれか1項に記載の非水電解質電池」とあるのを、「請求項1?2,4?6のいずれか1項に記載の非水電解質電池」に訂正する。

(8) 訂正事項8
請求項8に「請求項1?7のいずれか1項に記載の非水電解質電池」とあるのを、「請求項1?2,4?7のいずれか1項に記載の非水電解質電池」に訂正する。

(9) 訂正事項9
発明の詳細な説明の【0010】に「負極は、炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物を含むリチウムチタン複合酸化物よりなる活物質を含む。リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.073質量%以下である。」とあるのを、「負極は、炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物(炭酸リチウム単独の場合を除く)を含むリチウムチタン複合酸化物よりなる活物質を含む。リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.053質量%以下である。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1による訂正は、請求項1の「炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物」から、炭酸リチウム単独の場合を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2) 訂正事項2による訂正は、請求項1の「前記リチウム化合物のリチウム量」について、「0.017質量%以上0.073質量%以下」との範囲を、訂正前の請求項3に特定されている「0.017質量%以上0.053質量%以下」との範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3) 訂正事項3による訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4) 訂正事項4?8は、訂正事項3による訂正に伴い、引用請求項から請求項3を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5) 訂正事項9は、訂正事項1及び2による訂正によって生じる特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載の不一致を解消して、記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)そして、訂正事項1?9は一群の請求項に対して請求されたものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項?第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立について
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、2、4?8に係る発明(以下、「本件発明1、2、4?8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2、4?8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
正極と、
炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物(炭酸リチウム単独の場合を除く)を含むリチウムチタン複合酸化物よりなる活物質を含む負極と、
非水電解質と、
前記正極、前記負極及び前記非水電解質が収容される外装部材とを備える非水電解質電池であり、
前記リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.053質量%以下であり、
前記非水電解質電池をSOC50%に調整し、55℃の恒温槽中に72時間放置した時の放置前の電池厚さをA、放置後の電池厚さをBとした時の膨れ量{(B-A)/A×100[%]}が3%以下であり、かつ放置前の電池抵抗C、放置後の電池抵抗をDとした時の抵抗増加率(D/C)が1.1以下である、非水電解質電池。
【請求項2】
前記外装部材がラミネートフィルム製である、請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】(削除)

【請求項4】
前記リチウムチタン複合酸化物は、スピネル型構造である、請求項1?2のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項5】
前記リチウムチタン複合酸化物は、Li_(4+x)Ti_(5)O_(12)(0≦x≦3)で表される、請求項1?2,4のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項6】
前記リチウムチタン複合酸化物は、平均粒径が10nm以上10μm以下の粒子である、請求項1?2,4,5のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項7】
前記リチウムチタン複合酸化物は、比表面積が3m^(2)/g以上50m^(2)/g以下である、請求項1?2,4?6のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項8】
請求項1?2,4?7のいずれか1項に記載の非水電解質電池を備える電池パック。」

2 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証?甲第8号証を提出し、以下の理由により、訂正前の請求項1?8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1) 申立理由1
訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲第1号証において訂正が認められた、請求項に係る発明と実質的に同一であるから、訂正前の請求項1?8に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものである。

(2) 申立理由2
訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲第2号証の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、訂正前の請求項1?8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。

(3) 申立理由3-1
訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

(4) 申立理由3-2
訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

(5) 申立理由4-1
訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、又は甲第3号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、若しくは甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(6) 申立理由4-2
訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、又は甲第4号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、若しくは甲第4号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正前の請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(7) 申立理由4-3
訂正前の請求項1?8に係る発明は、甲第7号証に記載された発明に鑑み甲第3号証?甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

[証拠方法]
甲第1号証:異議2015-700044号特許決定公報
甲第2号証:特開2012-43765号公報
甲第3号証:特開2010-177030号公報
甲第4号証:特開2007-18883号公報
甲第5号証:特許第4062856号
甲第6号証:特開2006-173049号公報
甲第7号証:特開2009-187834号公報
甲第8号証:クリスチャン分析化学I.基礎編、丸善株式会社、平成17年3月25日、p.309-311

3 取消理由の概要
訂正前の請求項1?8に係る特許に対して平成29年5月2日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
(1) 取消理由1
訂正前の請求項1?8に係る発明は、本件特許に係る出願の原出願の出願の日前の特許出願であって、上記本件特許に係る出願の原出願の出願後に出願公開された下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、上記本件特許に係る出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をしたものと同一でなく、また、上記本件特許に係る出願の原出願の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?8に係る特許は、取り消されるべきものである。


特願2011-3610号(特開2012-43765号公報)(特許異議申立人が提出した甲第2号証)

なお、当該取消理由1は、前記申立理由2を採用したものである。

(2)取消理由2
訂正前の請求項1、2、4?8に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。

なお、取消理由通知の「4 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)」には、「請求項1?8に係る特許は、・・・取り消されるべきものである。」(なお、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)と記載されているが、当該取消理由2の結論は、「よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、請求項1を引用する本件発明2、4?8も同様の理由により、発明の詳細な説明に記載したものではない。」と記載されているから、上記「請求項1?8に係る特許」は、「請求項1、2、4?8」の誤記である。

4 甲号証の記載事項
(1) 本件特許の原出願に係る特許第5694208号については、平成27年9月30日に特許異議申立がなされ、平成28年4月11日付けで、「特許第5694208号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕、〔8?9〕について訂正することを認める。
特許第5694208号の請求項1?7に係る特許を維持する。」との異議決定(甲第1号証)がなされ、当該異議決定は、平成28年4月25日に確定しているところ、その請求項1?7の記載は以下のとおりである。
(1a) 「【請求項1】
炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物(炭酸リチウム単独の場合を除く)を含み、前記リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.073質量%以下であるリチウムチタン複合酸化物を含むことを特徴とする非水電解質電池用負極活物質。
【請求項2】
前記リチウムチタン複合酸化物は、スピネル型構造であることを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池用負極活物質。
【請求項3】
前記リチウムチタン複合酸化物は、Li_(4+x)Ti_(5)O_(12)(0≦x≦3)で表されることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項記載の非水電解質電池用負極活物質。
【請求項4】
前記リチウムチタン複合酸化物は、平均粒径が10nm以上10μm以下の粒子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の非水電解質電池用負極活物質。
【請求項5】
前記リチウムチタン複合酸化物は、比表面積が3m^(2)/g以上50m^(2)/g以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の非水電解質電池用負極活物質。
【請求項6】
正極と、
請求項1?5のいずれか1項記載の活物質を含む負極と、
非水電解質と
を備えることを特徴とする非水電解質電池。
【請求項7】
請求項6記載の非水電解質電池を備えることを特徴とする電池パック。」

また、甲第1号証の訂正明細書には、以下の事項が記載されている。
(1b)
「【130】
【表2】



(2) 本件特許に係る出願の原出願の出願の日前の特許出願(甲第2号証)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、「リチウム2次電池用負極活物質、その製造方法およびそれを含むリチウム2次電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(2a) 「【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物の1次粒子が造粒された2次粒子を含み、
比表面積が2m^(2)/g以上5m^(2)/g以下である、リチウム2次電池用負極活物質。
Li_(4-x-y)M_(y)Ti_(5+x-z)M’_(z)O_(12) (化学式1)
(前記化学式1で、xは、0?1の範囲にあり、yは、0?1の範囲にあり、zは、0?1の範囲にあり、
Mは、La、Tb、Gd、Ce、Pr、Nd、Sm、Ba、Sr、Ca、Mg及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、及びM’は、V、Cr、Nb、Fe、Ni、Co、Mn、W、Al、Ga、Cu、Mo、P及びこれらの組み合わせからなる群より選択される元素である。)
【請求項2】
前記比表面積は、2.5m^(2)/g?4.5m^(2)/gである、請求項1に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記1次粒子は、100nm?500nmの平均サイズを有する、請求項1または2に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記2次粒子は、5μm?20μmの平均サイズを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
【請求項5】
負極活物質全体に対してカーボネートを0.01質量%?0.3質量%含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウム2次電池用負極活物質。
・・・
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1項に記載の負極活物質を含む負極と;
正極活物質を含む正極と;
非水電解質と;
を含む、リチウム2次電池。」

(2b) 「【0006】
特に、スピネル構造を有するLi_(4)Ti_(5)O_(12)は、リチウムの挿入および脱離反応を反復する時にも結晶構造の変化が小さく、充放電サイクルによる劣化が小さいと知られており、2次電池の負極活物質として有用な材料である。ただし、電気伝導度(約10^(-9)S/cm)が低いため、リチウムの挿入および脱離時に反応抵抗が高く、急速充放電時に特性が顕著に低下するという問題があるため、高出力が要求される電池への応用が困難である。」

(2c) 「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的としては、伝導性に優れたリチウム2次電池用負極活物質を提供する。
【0008】
本発明の他の目的としては、上記負極活物質の製造方法を提供する。
【0009】
本発明のさらに他の目的としては、上記負極活物質を含むリチウム2次電池を提供する。」

(2d) 「【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態による負極活物質は、優れた高率特性および改善された膨張特性を有するリチウム2次電池を提供することができる。」

(2e) 「【0029】
上記負極活物質の比表面積は、2.5m^(2)/g?4.5m^(2)/gであっても良い。負極活物質の比表面積がこの範囲に含まれる場合、電解液との反応性が小さいため、高温膨張特性改善効果に優れており、したがって、高温で長時間放置時に厚さ膨張率が小さい効果を得ることができる。また、電解液と反応性が小さいことによって初期充放電効率が増加することができる。
【0030】
本発明の一実施形態による負極活物質で、上記1次粒子は100nm?500nmの平均サイズを有するものであっても良い。このように、本発明の一実施形態による負極活物質は、ナノサイズの1次粒子を含んでいるため、電気伝導度が向上してリチウム充放電速度が増加し、高率特性が向上することができる。
【0031】
また、本発明の一実施形態による負極活物質で、上記1次粒子が造粒されて形成された2次粒子は5μm?20μmの平均サイズを有するものであっても良い。2次粒子のサイズがこの範囲に含まれる場合、充放電特性は変化させることなく、負極活物質の比表面積を調節することができ、膨張を抑制することができる。」

(2f) 「【0035】
リチウム原料物質とチタニウム原料物質とを溶媒中で混合してリチウム-チタニウム複合体微細粒子を含むリチウム-チタニウム液を製造する。
【0036】
上記リチウム原料物質としては、リチウムカーボネート、水酸化リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウムまたはこれらの混合物を使用することができる。」

(2g) 「【0053】
リチウム2次電池は、使用するセパレータおよび電解質の種類によりリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類され得、形態により円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類され得、サイズによりバルク型と薄膜型に分類され得る。これら電池の構造と製造方法は当該分野に広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0054】
本発明のさらに他の一実施形態によるリチウム2次電池は、負極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極と、非水電解質とを含む。」(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)

(2h) 「【0088】
図1に本発明の一実施形態によるリチウム2次電池の代表的な構造を概略的に示す。図1に示したように、上記リチウム2次電池1は、正極4、負極2および上記正極4と負極2との間に存在するセパレータ3に含浸された電解液を含む電池容器5と、上記電池容器5を封入する封入部材6を含む。」

(2i) 「【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて説明する。しかしながら、下記の実施例は本発明の一実施例に過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0091】
(実施例1)
Li_(2)CO_(3)とTiO_(2)を4:5モル比で、水中でビーズミルを使用して攪拌してリチウム-チタニウム複合体微細粒子を含むスラリーを製造した。このとき、リチウム-チタニウム複合体微細粒子の平均粒子サイズは1μmであった。
【0092】
上記スラリーを300℃で噴霧乾燥してリチウム-チタニウム複合体巨大粒子を製造した。得られたリチウム-チタニウム複合体巨大粒子の平均粒子サイズは50μmであった。
【0093】
上記巨大粒子を空気雰囲気の焼成炉で850℃の温度で5時間焼成し、焼成生成物を1次粒子の平均粒子サイズが250nm(100nm?500nmの範囲で存在する)であり、2次粒子の平均粒子サイズが約20μmになるように粉砕した。その結果、図2に示したSEM写真のように、Li_(4)Ti_(5)O_(12)で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含む負極活物質が製造された。この負極活物質の比表面積は約2.1m^(2)/gであった。また、上記負極活物質はカーボネートを負極活物質全体に対して0.05質量%の含量で含んだ。
【0094】
上記負極活物質90質量%、カーボンブラック導電剤5質量%およびポリフッ化ビニリデンバインダー5質量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して負極活物質スラリーを製造した。
【0095】
上記負極活物質スラリーをCu箔電流集電体に塗布し圧延して負極を製造した。
【0096】
上記負極と、リチウム金属を対極として使用し、電解液およびセパレータを使用してリチウム半電池を製造した。上記電解液は1.0mol/LのLiPF_(6)が溶解されたエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートの混合溶媒(3:7体積比)を使用した。上記セパレータとしては、厚さ20μmのポリエチレン多孔性フィルムを使用した。
【0097】
(実施例2)
上記実施例1により製造されたLi_(4)Ti_(5)O_(12)で表される1次粒子が造粒された2次粒子を粒子紛砕機で、2次粒子の平均粒子サイズが約10μmになるように再び粉砕して負極活物質を製造した。
【0098】
上記負極活物質の比表面積は約3.0m^(2)/gであった。また、1次粒子の平均粒子サイズは250nm(100nm?500nm範囲で存在する)であった。同時に、上記負極活物質はカーボネートを負極活物質全体に対して0.1質量%の含量で含んだ。
【0099】
製造された負極活物質を利用して上記実施例1と同様に半電池を製造した。
【0100】
(実施例3)
上記実施例1により製造されたLi_(4)Ti_(5)O_(12)で表現される1次粒子が造粒された2次粒子を粒子紛砕機で、2次粒子の平均粒子サイズが約5μmになるように再び粉砕して負極活物質を製造した。この負極活物質の比表面積は約5.0m^(2)/gであった。また、1次粒子の平均粒子サイズは250nm(100nm?500nm範囲で存在する)であった。同時に、上記負極活物質はカーボネートを負極活物質全体に対して0.3質量%の含量で含んだ。
【0101】
製造された負極活物質を利用して上記実施例1と同様に半電池を製造した。
【0102】
(比較例1)
上記実施例1により製造されたLi_(4)Ti_(5)O_(12)で表現される1次粒子が造粒された2次粒子を粒子紛砕機で、2次粒子の平均粒子サイズは約2μmになるように再び粉砕して負極活物質を製造した。この負極活物質の比表面積は約6.5m^(2)/gであった。また、1次粒子の平均粒子サイズは250nm(100nm?500nm範囲で存在する)であった。同時に、上記負極活物質はカーボネートを負極活物質全体に対して0.5質量%の含量で含んだ。
・・・
【0108】
<膨張特性評価>
上記実施例1ないし3および比較例1により製造された半電池を60℃で7日間保管しながら厚さ膨張率を測定し、その結果を図3に示した。図3に示したように、比表面積が約2.1m^(2)/g、約3.0m^(2)/g、および約5.0m^(2)/gである負極活物質を使用した実施例1ないし3の場合、高温(60℃)で7日間保管しても厚さ膨張率が約105.0%ないし約110.0%に過ぎないが、比表面積が約6.5m^(2)/gである負極活物質を使用した比較例1の場合、厚さ膨張率が約124%程度と非常に大きいことが分かった。」

(2j) 「【図3】



(3) 本件特許に係る出願の原出願の出願日前に頒布された甲第3号証には、「リチウム系複合酸化物の表面処理剤、リチウム系複合酸化物の表面処理液、リチウムイオン二次電池用電解液、表面処理リチウムイオン二次電池用正極活物質及びその製造方法、表面処理リチウムイオン二次電池用負極活物質及びその製造方法、並びにリチウムイオン二次電池及びその製造方法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(3a) 「【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池の正極活物質用、負極活物質用等のリチウム系複合酸化物の表面を処理するための表面処理剤、それを含有する表面処理液及び電解液、それにより表面処理されたリチウムイオン二次電池用正極活物質又は負極活物質、それらの製造方法、それを用いるリチウムイオン二次電池及びその製造方法に関する。」

(3b) 「【0005】
しかしながら、リチウム系複合酸化物は、リチウム源として、水酸化リチウムや炭酸リチウム等のアルカリを用いて製造されるために、得られるリチウム系複合酸化物中には、アルカリが残存してしまう。
【0006】
そして、リチウム系複合酸化物中の残存アルカリは、絶縁性の化合物であるため放電容量を低下させるとされている。また、リチウム系複合酸化物表面において強アルカリ成分として働くため電解液が分解され易いという問題点を有している。
【0007】
そのため、従来のリチウム系複合酸化物を正極活物質とするリチウム二次電池には、充放電を繰り返すと、放電容量が低下するという問題、急速充放電したときの充放電特性が悪いという問題、電解質の分解によりガスが発生するという問題、保存安定性、特に、高温での保存安定性が十分でないという問題があった。
【0008】
従って、本発明の課題は、リチウム系複合酸化物を正極活物質又は負極活物質として用いるリチウムイオン二次電池であって、サイクル特性、急速充放電特性及び保存安定性に優れるリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、リチウムイオン二次電池用の正極活物質又は負極活物質として用いられるリチウム系複合酸化物に、特定の多価のカチオンと、リチウムイオン二次電池の電解質用リチウム塩のアニオンと、からなる化合物を接触させると、該化合物が、リチウム系複合酸化物の残存アルカリと容易に反応して、該残存アルカリが、アルカリ性の低いアルカリ化合物に変換されるため、残存アルカリによる電解質の分解を防ぐことができ、また、生じた低アルカリ性のアルカリ化合物により、リチウム系複合酸化物の表面が被覆されるため、リチウム系複合酸化物による電解質の分解を防ぐことができ、さらに、該化合物由来のリチウムイオン二次電池の電解質用リチウム塩のアニオンと残存アルカリ由来のリチウムイオンにより生じる化合物は、リチウム塩電解質として活用され得る。そのため、リチウムイオン二次電池のサイクル特性、急速充放電特性及び保存安定性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。」

(3c) 「【0030】
また、本発明の表面処理剤(a)により表面処理されるリチウムイオン二次電池の負極活物質用リチウム系複合酸化物(以下、本発明に係る負極活物質用リチウム系複合酸化物(b2))は、リチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられるリチウム系複合酸化物であれば、特に制限されないが、サイクル特性、急速充放電特性及び保存安定性が高くなる点で、チタン酸リチウム(Li_(4)Ti_(5)O_(12))、リチウムサイトの一部が他の1種以上の金属元素で置換されたチタン酸リチウム、チタンサイトの一部が他の1種以上の金属元素で置換されたチタン酸リチウム、又はリチウムサイトの一部が他の1種以上の金属元素で置換され且つチタンサイトの一部が他の1種以上の金属元素で置換されたチタン酸リチウムが、特に好ましい。ここで、チタン酸リチウムのリチウム元素又はチタン元素と置換される上記他の金属元素は、Liを除くアルカリ金属、アルカリ土類金属、Al、Si、P及び遷移金属である。」

(3d) 「【0032】
リチウムイオン二次電池の正極活物質用のリチウム系複合酸化物及びリチウムイオン二次電池の負極活物質用のリチウム系複合酸化物は、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム系のアルカリを原料に用いて製造されるため、これらのリチウム系複合酸化物中には、原料の由来のリチウム系のアルカリが残存している。本発明では、このようなリチウム系複合酸化物の表面に残存しているリチウム系アルカリに、本発明の表面処理剤(a)を反応させることにより、リチウム系複合酸化物を表面処理することができる。」

(3e) 「【0034】
このような表面処理に用いられる表面処理液、すなわち、本発明のリチウム系複合酸化物の表面処理液(以下、本発明の表面処理液(c)とも記載する。)は、本発明の表面処理剤(a)を含有する。」

(3f) 「【0041】
本発明の電解液(d)を用いて、本発明の表面処理剤(a)により、本発明に係る活物質用リチウム系複合酸化物(b)の表面処理を行う方法の形態例としては、例えば、リチウムイオン二次電池を組み立てる際に、先ず、正極、負極、セパレータ等の材料を電池内の所定の位置に配置し、次いで、電池内に本発明の電解液(d)を注入することにより、電池内で、本発明の電解液(d)と本発明に係る活物質用リチウム系複合酸化物(b)を接触させる方法が挙げられる。そして、本発明の電解液(d)を注入後、電池を密閉して、リチウムイオン二次電池を製造することができる。」

(3g) 「【0044】
このように、本発明の表面処理剤(a)により、本発明に係る正極活物質用リチウム系複合酸化物(b1)を表面処理することにより、表面処理されたリチウムイオン二次電池用正極活物質が得られる。」

(3h) 「【0049】
本発明に係る負極活物質用リチウム系複合酸化物(b2)中の残存アルカリ量は、好ましくは0.02?3質量%、特に好ましくは0.05?2質量%である。本発明に係る負極活物質用リチウム系複合酸化物(b2)中の残存アルカリ量が0.02質量%より小さいと表面処理によるサイクル特性、急速充放電特性及び保存安定性改善効果が小さくなり易くなり、3質量%より大きいと表面処理による被覆量が大きくなり過ぎることにより急速充放電特性が低くなり易くなる。負極活物質用リチウム系複合酸化物(b2)中の残存アルカリ量が上記範囲にあることにより、サイクル特性、急速充放電特性及び保存安定性を高くすることができる。」

(4) 本件特許に係る出願の原出願の出願日前に頒布された甲第4号証には、「負極活物質、非水電解質電池及び電池パック」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(4a) 「【請求項5】
pH値が10?11.2であることを特徴とする請求項1?4いずれか1項記載の負極活物質。」

(4b) 「【0001】
本発明は、負極活物質と、この負極活物質を含む負極を備えた非水電解質電池と、この非水電解質電池から形成された組電池を具備する電池パックとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンが負極と正極とを移動することにより充放電が行われる非水電解質電池は、高エネルギー密度電池として盛んに研究開発が進められている。」

(4c) 「【0008】
発明者らは鋭意研究した結果、以下の課題を発見した。
【0009】
リチウムチタン複合酸化物は、充放電、すなわちリチウムの吸蔵・放出に伴う体積変化が小さく、この酸化物を活物質として含む電極は膨潤し難い。一方、既に商用化されている黒鉛などの炭素質物を負極活物質とした負極は、充放電に伴う電極の体積膨張・収縮が数%と大きい。その結果、黒鉛などを負極活物質に用いた場合には、電極の膨張・収縮により非水電解質が拡散し、非水電解質の含浸、あるいはリチウム塩のような電解質の濃度の均等化が進みやすい。ところが、リチウムチタン複合酸化物を含む体積変化が小さい電極は、非水電解質の含浸性が著しく悪いことが分かった。特に、車両用などの大きな電池を製造する際には、この含浸性の悪さが生産性を低下させるのみならず、電池性能、特に大電流性能及び充放電サイクル特性を著しく低下させた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたものであり、大電流特性及び充放電サイクル特性に優れた負極活物質、非水電解質電池及び電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の負極活物質は、平均細孔直径が50?500Åであるリチウムチタン複合酸化物粒子を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の非水電解質電池は、正極と、平均細孔直径が50?500Åであるリチウムチタン複合酸化物粒子を含む負極活物質を備えた負極と、非水電解質とを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の電池パックは、上記構成を備えた非水電解質電池の組電池を具備することを特徴とする。」

(4d) 「【0017】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0018】
(第一の実施の形態)
第一の実施の形態に係る電池単体の一例について、図1、図2を参照してその構造を説明する。図1に、第一の実施の形態に係わる扁平型非水電解質二次電池の断面模式図を示す。図2は、図1のAで示した円で囲われた部分を詳細に表す部分断面模式図を示す。
【0019】
図1に示すように、外装部材7には、扁平状の捲回電極群6が収納されている。捲回電極群6は、正極3と負極4をその間にセパレータ5を介在させて渦巻状に捲回された構造を有する。非水電解質は、捲回電極群6に保持されている。」

(4e) 「【0024】
負極活物質は、平均細孔直径が50Å以上であるリチウムチタン複合酸化物粒子を含む。・・・」

(4f) 「【0029】
リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物(例えばLi_(4+x)Ti_(5)O_(12)(xは0≦x≦3))、ラムステライド型リチウムチタン酸化物(例えばLi_(2+y)Ti_(3)O_(7)(yは0≦y≦3))などを挙げることができる。スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物によると、優れた充放電サイクル特性を得られるため、望ましい。」

(4g) 「【0034】
リチウムチタン複合酸化物粒子の平均粒子径は1μm以下にすることが望ましい。これは、平均粒子径が1μmを超えると、平均細孔直径を本実施形態で規定する範囲に設定しても十分な含浸性を期待できないからである。但し、平均粒子径が小さ過ぎると、非水電解質の分布が負極側に偏り、正極での電解質の枯渇を招く恐れがあるため、その下限値は0.001μmにすることが好ましい。リチウムチタン複合酸化物粒子は、その平均粒子径が1μm以下で、かつN_(2)吸着によるBET法での比表面積が5?50m^(2)/gの範囲であることがさらに望ましい。」

(4h) 「【0036】
まず、Li源として、水酸化リチウム、酸化リチウム、炭酸リチウムなどのリチウム塩を用意する。これらを純水に所定量溶解させる。この溶液にリチウムとチタンの原子比が所定比率になるように酸化チタンを投入する。例えば、組成式Li_(4)Ti_(5)O_(12)のスピネル型リチウムチタン酸化物を合成する場合、LiとTiの原子比は4:5となるように混合する。」

(4i) 「【0040】
上述の焼成により得られたリチウムチタン複合酸化物粒子を、以下に説明する条件で粉砕・再焼成することによって、一次粒子の細孔容積と平均細孔直径を制御することが可能となる。・・・
【0042】
また、平均細孔直径が50?500Åのリチウムチタン複合酸化物粒子のpH値は10?11.2の範囲内にすることが望ましい。チタン酸リチウムのようなリチウムチタン複合酸化物の焼成過程において、炭酸リチウムや水酸化リチウムなどが、チタン酸リチウムに取り込まれない未反応のLi成分に起因して副成される。この未反応Li成分を低減させ、pH値で示した時に11.2よりも小さくなることで、電池性能、特に、高温サイクル性能や出力性能を向上させることができる。
【0043】
これは、活物質表面に残存する炭酸リチウムや水酸化リチウムなどの未反応Li成分が非水電解質と反応し、二酸化炭素や炭化水素ガスを発生させ、また、これらの副反応により活物質表面に抵抗成分となる有機皮膜を形成するためである。
【0044】
しかしながら、チタン酸リチウム粉末を前述した条件で機械的に粉砕する場合、未反応Li成分が表面に露出することになり、pH値が11.2よりも大きくなって電池性能が低下する傾向がある。したがって、粉砕工程後に再焼成工程を行っている。再焼成を行うことで、表面に露呈された未反応リチウムが、活物質内部に取り込まれ、表面に残存する未反応Li成分を少なくすることができる。粉砕後の再焼成工程を施すことによって、pH値を11.2以下に制御することが可能となる。
【0045】
チタン酸リチウムの原料となる水酸化リチウムや炭酸リチウムなどのLi源とチタン酸化物(例えば、アナターゼ型TiO_(2)、ルチル型TiO_(2))を反応させる段階で、Li源の比率を下げることで、副生成する炭酸リチウムなどの余剰Liを低減させることは可能であるが、Li源の比率を低下させると得られる活物質中のリチウムの比率が低下し、その結果、チタン酸リチウムの電気容量が低下する。そのため、電気容量を高容量に保持するために、Li源を減量せずに、得られる活物質のpH値を10以上にすることが望ましい。
・・・
【0047】
なお、リチウムチタン複合酸化物粒子のpH値は以下の手順で測定できる。すなわち、リチウムチタン複合酸化物粒子2gを100mLの純水(25℃)に分散し、約10分間攪拌した後、活物質を濾過し、濾液を得る。この濾液のpH値をリチウムチタン複合酸化物粒子のpH値とする。」

(4j) 「【0099】
5)外装部材
外装部材としては、肉厚0.2mm以下のラミネートフィルムや、肉厚0.5mm以下の金属製容器が挙げられる。金属製容器の肉厚は、0.2mm以下であるとより好ましい。」

(5) 本件特許に係る出願の原出願の出願日前に頒布された甲第5号証には、「正極活物質及び非水電解質二次電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(5a) 「【請求項3】
正極集電体上に正極活物質を含有する正極活物質層が形成された正極と、負極集電体上に負極活物質層が形成された負極とを有する非水電解質二次電池において、以下のことを特徴とする非水電解質二次電池。
(イ)正極活物質は、Liと他の金属との複合酸化物である。
(ロ)正極活物質に含まれるLi_(2)CO_(3)が、0.15質量%以下0.01質量%以上である。
(ハ)正極は、非水ゲルポリマー二次電池または固体電解質二次電池に用いる。
(ニ)上記非水ゲルポリマー二次電池または上記固体電解質二次電池は、ラミネートフィルムで密封される。
(ホ)正極活物質に含まれる水分は、300ppm以下である。」

(5b) 「【0003】
非水電解液二次電池の一例である、非水系リチウムイオン二次電池は、充電時に正極中のリチウムが電解液を介して負極中にドープされ、放電時には負極中のリチウムが電解液を介して正極中にドープされるという電気化学的な可逆反応を利用した電池であり、電解液としてリチウム塩を溶解した非水系溶媒を用いている。このため、電解液の漏れの防止のために、剛性を備えた金属製のハードケース・セル(正極蓋及び負極缶)を使用する必要がある。」

(5c) 「【0020】
【発明の実施の形態】
以下、正極活物質および非水電解質二次電池に係る発明の実施の形態について説明する。
【0021】
まず、非水電解質二次電池の構成について説明する。図1は、非水電解質二次電池に係る発明の実施の形態を示す図である。具体的には、非水電解質二次電池の一例として、非水ゲルポリマー二次電池を示すものである。」

(5d) 「【0074】
【表1】



(5e) 「【0076】
このように、正極活物質中の炭酸リチウムおよび水分の含有量を制御することにより、電池の膨れ率を4%以下に抑制することができる。このように、膨れ率が小さくなる理由はつぎのように考えられる。すなわち、正極活物質中に炭酸リチウムが含まれていると、この炭酸リチウムが高温保存時に熱分解し炭酸ガス(CO_(2) )を発生させる。また、正極活物質中に水分が存在すると、この水分と電解質例えばLiPF_(6) が反応してHFが発生する。このHFの作用により炭酸リチウムの分解反応が促進され、炭酸ガスが発生する。これらの炭酸ガスの発生が、電池の膨れの原因となるものと考えられる。したがって、本実施例では、炭酸ガスの発生の原因となる、炭酸リチウムおよび水分の含有量を特定の範囲(例えば炭酸リチウムについては0.15質量%以下0.01質量%以上)で小さくしているので、炭酸ガスの発生が抑制され、その結果電池の膨れが抑制されるものと考えられる。
【0077】
以上のことから、本実施例によれば、正極活物質がLiと他の金属との複合酸化物であり、正極活物質に含まれる炭酸リチウムが0.15質量%以下0.01質量%以上であり、かつ水分の含有量が300ppm以下であるので、高温保存時における分解反応が抑えられ、ガスの発生が抑制される。したがって、ラミネートフィルムで密封される非水ゲルポリマー二次電池または固体電解質二次電池においても、高温保存時の膨れを抑制・改善することができる。」

(6) 本件特許に係る出願の原出願の出願日前に頒布された甲第6号証には、「非水電解質電池および正極活物質」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(6a) 「【請求項1】
外装材と、
前記外装材内に収納され、リチウムニッケル複合酸化物と含有量が0.1wt%以上0.5wt%以下である水酸化リチウムもしくは酸化リチウムとを備える正極活物質を有する正極と、
前記正極と空間的に離れた前記外装材内に収納され、Liを吸蔵放出できる負極と、
前記正極と前記負極とに挟まれ、γブチロラクトンを有する非水電解質を含浸したセパレータと、
を具備することを特徴とする非水電解質電池。」

(6b) 「【0001】
本発明は、Liイオン非水電解質電池およびそれに用いる正極活物質に係わる。」

(6c) 「【0008】
本発明は、上記事情を鑑みて、高温貯蔵特性に優れた非水電解質電池を提供するものである。」

(6d) 「【0020】
LiNi_(1-x)M_(x)O_(2)
(MはCo,Al,Mn,Cr,Fe,Nb,Mg,BおよびFから少なくとも一つ選ばれ、Xの範囲は0≦X<1である。)
式中、Mは、Co,AlおよびMnから選ばれると好ましい。これらの置換元素については、後述する実施例にて良質な被膜の形成が確認されているためである。
【0021】
式中、Xの範囲は、0≦X≦0.5であると好ましい。これにより、Ni成分の影響が支配的となり、本実施の形態の効果がより顕著となるからである。
【0022】
LiOHもしくはLi2Oは、後述する被膜の形成反応を促進させる触媒効果を有し、リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いた場合においても、緻密で安定であり低抵抗の良質被膜を正極表面に形成できる。このため、高温で顕著となる非水電解質の分解反応を抑制し、非水電解質電池の高温貯蔵特性を向上できる。ただし、LiOHもしくはLi2Oは、正極活物質に対する含有量が0.1wt%より小さいと、その触媒効果を充分に発揮することが困難であり、0.5wt%より大きいと、触媒効果が過剰となり良質な被膜が形成できず非水電解質の分解を抑制できない。LiOHもしくはLi2Oのより好ましい含有量は、0.1wt%以上0.3wt%以下である。
・・・
【0024】
なお、LiOHとLi2Oとは、次に示す平衡関係が成立ち、両者は、雰囲気の水分量により互いに変化する。このため、本実施の形態においては、両者の総量に着目した。
【0025】
Li2O+H2O = 2LiOH
また、正極活物質に対するLi2CO3の含有量は、0.1wt%以下であることが好ましく、0.05wt%以下であることがより好ましい。Li2CO3は、高温で顕著となる非水電解質の分解反応、さらにはそれに伴うガス発生を促進させるためである。」

(6e) 「【0030】
上記のように作製した正極活物質は、LiOHもしくはLi2Oの含有量を0.1wt%以上0.5wt%以下とし、Li2CO3の含有量を0.1wt%以下とすることができる。また、上記のように作製した正極活物質は、LiOHもしくはLi2Oが正極活物質に留まる。このため、LiOHもしくはLi2Oが溶出することによる非水電解質の分解反応、さらにはそれに伴うガス発生を抑制する。」

(6f) 「【0065】
5)外装材
外装材としては、肉厚0.2mm以下のラミネートフィルムや、肉厚0.5mm以下の金属製容器が挙げられる。肉厚0.2mm以下であるとより好ましい。」

(7) 本件特許に係る出願の原出願の出願日前に頒布された甲第7号証には、「非水電解液電池及び組電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
(7a) 「【0010】
本発明は、リチウムチタン複合酸化物などリチウム吸蔵放出電位の高い材料を負極に用いた非水電解液電池の自己放電を抑制することができ、かつ抵抗が増加せず長寿命である非水電解液電池を提供することを目的とする。」

(7b) 「【0012】
リチウムチタン複合酸化物のリチウム吸蔵放出電位は1?2V vs Li/Li^(+)である。したがって、一般に負極に皮膜を形成させるためには、それより貴な還元電位を持つ物質を電解液に含有させることが適当と考えられる。ところが、負極の作用電位よりも卑な電位で還元されるある種の物質を非水電解液中に添加した場合に、負極表面に緻密で安定な皮膜が形成されることが確認された。つまり、一般式(1)又は(2)のうち少なくとも1種を繰り返し単位として含む構造を有する化合物(以下、「ピリジン基を有する化合物」)と一般式(3)で示される官能基を有する化合物(以下、「シリル基を有する化合物」)の2種類の物質を混在させた場合には、両者を独立で添加した場合には得られない低抵抗で安定な皮膜が形成されることが分り、この結果、自己放電が少なく、かつ抵抗が増加せず長寿命である電池を得ることに成功した。」

(7c) 「【0153】
実施例1?17、比較例1?16の電池を2.55Vまで充電した後、60℃環境下に4週間放置し、電池抵抗と残存容量を測定した。
・・・
【0155】
残存容量(%)=貯蔵後容量/貯蔵前容量×100
抵抗増加率(%)=(貯蔵後電池抵抗/貯蔵前電池抵抗?1)×100
【表1】

【0156】
実施例の電池は、自己放電量が小さいことが分る。同時に、電池抵抗変化が小さく、長寿命な電池であることが分る。また、γ?ブチロラクトンを含む電解液を用いた電池は、自己放電量が少なく、抵抗増加率が小さいことが分かる。被覆処理を施された正極活物質を用いた電池は、自己放電量が少なく、抵抗増加率が小さいことが分かる。」

(8) 本件特許に係る出願の原出願の出願日前に頒布された甲第8号証には、「分析化学」(標題)に関して、以下の事項が記載されている。
(8a) 「炭酸ナトリウムはブレンステッド塩基であり,強酸の標定に用いる第一標準である.次のように2段階で加水分解する.

」(309頁4?8行)

5 判断
(1) 取消理由通知に記載した取消理由について
ア 取消理由1(特許法第29条の2)について
(ア)先願明細書等に記載された発明
a 先願明細書等の前記(2g)の【0054】及び(2i)の【0097】?【0098】の記載から、先願明細書等には、「カーボネートを負極活物質全体に対して0.1質量%の含量で含むLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる非水電解質リチウム2次電池用負極活物質。」の発明(以下、「先願発明2-1」という。)が記載されていると認める。

b 先願明細書等の前記(2g)の【0054】及び(2i)の【0100】の記載から、先願明細書等には、「カーボネートを負極活物質全体に対して0.3質量%の含量で含むLi_(4)Ti_(5)O_(12)からなる非水電解質リチウム2次電池用負極活物質。」の発明(以下、「先願発明2-2」という。)が記載されていると認める。

(イ) 本件発明1と先願発明2-1及び先願発明2-2との対比・判断
先願明細書等の前記(2i)の【0091】?【0093】、【0097】?【0098】及び【0100】の記載によれば、実施例2及び実施例3のLi_(4)Ti_(5)O_(12)は、いずれも、実施例1のLi_(4)Ti_(5)O_(12)の製造方法により製造されたものであって、当該実施例1のLi_(4)Ti_(5)O_(12)は、Li_(2)CO_(3)とTiO_(2)を原料としているから、先願発明2-1及び先願発明2-2の「Li_(4)Ti_(5)O_(12)」には、いずれも、カーボネートとして、原料由来のLi_(2)CO_(3)のみが残るものと認められる。
そうすると、先願発明2-1及び先願発明2-2の「カーボネート」は、いずれも、Li_(2)CO_(3)、すなわち、炭酸リチウムであると認められるから、本件発明1の「炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物(炭酸リチウム単独の場合を除く)」(以下、「本件発明特定事項」という。)に相当しない。
また、上記本件発明特定事項が、課題解決のための具体化手段における微差であるといい得る根拠もない。
したがって、本件発明1は、先願発明2-1及び先願発明2-2のいずれの発明とも同一であるとはいえない。

(ウ) 本件発明2、4?8について
本件発明2、4?8は、本件発明1の全ての発明特定事項を有しているから、前記(イ)で検討したのと同様の理由により、先願発明2-1及び先願発明2-2のいずれの発明とも同一であるとはいえない。

(エ) まとめ
したがって、本件発明1、2、4?8に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものではない。

イ 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について
(ア) 前記第2の2(2)によれば、本件発明1は、「前記リチウム化合物のリチウム量」について、訂正前の請求項3に特定されている「0.017質量%以上0.053質量%以下」との範囲に限定されたものであるところ、訂正前の請求項3に係る特許については、取消理由2の対象ではないから、当該取消理由2が解消していることは明らかである。
したがって、本件発明1、2、4?8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものではない。

(イ) 特許異議申立人の主張について
平成29年8月10日付け意見書の2頁16行?5頁1行において、特許異議申立人は、訂正により、請求項1において記載されるリチウム量が「0.017質量%?0.053質量」であるリチウム化合物は、「炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方(炭酸リチウム単独の場合を除く)」を含むものに限定されているが、炭酸リチウム単独の場合を除くリチウム化合物で、リチウム量が0.017質量%以上0.033質量%未満のものは、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨の取消理由を主張している。
しかし、「炭酸リチウム単独の場合を除くリチウム化合物で、リチウム量が0.017質量%以上0.033質量%未満のもの」は、訂正前の請求項1に係る発明においても含まれているものであるから、特許異議申立人が主張する上記取消理由は、本件訂正請求の内容に付随して生じる理由ではない。
したがって、特許異議申立人の上記取消理由は採用しない。

(2) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
前記3(1)に示したように、申立理由2は、取消理由1として採用されているから、ここでは当該申立理由2以外の申立理由1、3-1、3-2、4-1?4-3について判断する。

ア 申立理由1(特許法第39条第2項)について
(ア) 本件特許の原出願に係る発明
甲第1号証の前記(1a)の記載によれば、本件特許の原出願に係る特許の、訂正が認められた請求項1を引用する請求項6に係る発明は、独立形式で記載すると、以下のとおりのものである。
「正極と、
炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物(炭酸リチウム単独の場合を除く)を含み、前記リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.073質量%以下であるリチウムチタン複合酸化物を含む非水電解質電池用負極活物質を含む負極と、
非水電解質と
を備えることを特徴とする非水電解質電池。」(以下、「原出願発明」という。)

(イ) 本件発明1について
a 本件発明1の出願日(原出願の出願日に遡及している。)と、原出願発明の出願日とは、同日(平成24年1月19日)であるところ、
(i)本件発明1を先願とし、原出願発明を後願としたとき。
(ii)原出願発明を先願とし、本件発明1を後願としたとき。
のいずれのときにも、本件発明1と原出願発明とが同一であるときに、本件発明1と原出願発明とを同一と判断すべきものである(特許・実用審査基準 第III部特許要件 第4章先願 3.2.2 他の出願が同日出願である場合を参照。)。
そこで、まず、上記(i)の場合、すなわち、本件発明1を先願とし、原出願発明を後願として検討する。

b 対比・判断
本件発明1と原出願発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の2点で相違する。

相違点1:炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物(炭酸リチウム単独の場合を除く)のリチウム量(以下、単に「リチウム量」という。)について、本件発明1は、「0.017質量%以上0.053質量%以下」であるのに対し、原出願発明は、「0.017質量%以上0.073質量%以下」である点。
相違点2:本件発明1は、「前記非水電解質電池をSOC50%に調整し、55℃の恒温槽中に72時間放置した時の放置前の電池厚さをA、放置後の電池厚さをBとした時の膨れ量{(B-A)/A×100[%]}(以下、単に「膨れ量」という。)が3%以下であり、かつ放置前の電池抵抗C、放置後の電池抵抗をDとした時の抵抗増加率(D/C)(以下、単に「抵抗増加率」という。)が1.1以下である」のに対し、原出願発明は、そのような特定がなされていない点。

ここで、本件訂正に係る訂正明細書には、以下の記載がある。
「【0130】
【表2】



以上の記載によれば、リチウム量(X+Y)が0.017質量%?0.053質量%である場合に、膨れ量が3%以下になっており、かつ抵抗増加率が1.1以下になっていることから、相違点1と相違点2とは密接に関連しているといえるので、相違点1及び2をまとめて検討する。

甲第1号証に係る訂正明細書の前記(1b)の記載によれば、リチウム量(X+Y)が0.017質量%?0.073質量%において、膨れ量は5%以下になっており、かつ抵抗増加率が1.1以下になっているから、原出願発明は、その請求項1及び6に明記はされていないものの、膨れ量が5%以下であり、かつ抵抗増加率が1.1以下であると認められる。
そうすると、本件発明1と原出願発明とでは、リチウム量及び膨れ量について、いずれも、原出願発明の方が本件発明1よりも広い範囲となっており、原出願発明の膨れ量は3%以下になっているとはいえない。
したがって、上記相違点1及び2は、実質的な相違点であるから、本件発明1を先願とし、原出願発明を後願としたときには、本件発明1と原出願発明とが同一であるとはいえない。
よって、前記(ii)について検討するまでもなく、本件発明1と原出願発明とは同一であるとはいえない。

c 本件発明2、4?8について
本件発明2、4?8は、本件発明1の全ての発明特定事項を有しているから、前記bで検討したのと同様の理由により、本件発明2、4?8と、甲第1号証おいて訂正が認められた、請求項に係る発明とは同一であるとはいえない。

d まとめ
以上から、本件発明1、2、4?8に係る特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してされたものではない。

イ 申立理由3-1及び3-2(特許法第29条第1項第3号)について
(ア) 本件発明1と甲第3号証に記載された発明又は甲第4号証に記載された発明との対比・判断
a 甲3号証及び甲第4号証には、本件発明1の発明特定事項である、「リチウム量が0.017質量%以上0.053質量%以下であ」ることは記載されていない。
ここで、本件発明1の「リチウム量」の下限を「0.017質量%」とすることについて、本件発明1に係る訂正明細書の【0018】には、「発明者らは、炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物を含むリチウムチタン複合酸化物において、リチウム化合物のリチウム量を0.073質量%以下にすることにより、ガス発生量を少なくすることができ、電池膨れを小さくすることができることを見出した。電池膨れを小さくするにはリチウム量が少ない方が有利であるものの、リチウム量を0.017質量%未満とすると、電池抵抗が大きくなるため、電池のレート性能及び出力性能が低下する。これは以下の理由によるものである。リチウム量を少なくするには、リチウム化合物量を減少させる必要がある。リチウム化合物をリチウム量が0.017質量%未満となるように減少させるには、リチウムチタン複合酸化物に酸処理を施す必要があり、この酸処理によってリチウムチタン複合酸化物の結晶性が低下する。その結果、電池抵抗が大きくなり、電池の放電容量、レート性能及び出力性能が低下する。よって、リチウム化合物のリチウム量を0.017質量%以上0.073質量%以下にすることが好ましい。リチウム化合物のリチウム量を0.017質量%以上0.053質量%以下にすることにより、電池膨れをさらに小さくすることができる。」と記載されている。
上記記載から、電池膨れを小さくするにはリチウム量が少ない方が有利であるものの、リチウム量を0.017質量%未満となるように減少させるには、リチウムチタン複合酸化物に酸処理を施す必要があり、この酸処理によってリチウムチタン複合酸化物の結晶性が低下するため、その結果、電池抵抗が大きくなり、電池の放電容量、レート性能及び出力性能が低下すること(以下、「本件問題点」という。)から、本件発明1では、リチウム量の下限を0.017質量%にしているといえる。

b 一方、甲第3号証の前記(3b)の【0005】?【0006】、(3d)、(3h)には、リチウムイオン二次電池の負極活物質用のリチウム系複合酸化物は、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム系のアルカリを原料に用いて製造されるため、これらのリチウム系複合酸化物中には、原料の由来のリチウム系のアルカリが残存しており、この残存アルカリは、リチウム系複合酸化物表面において強アルカリ成分として働くため電解液が分解され易いという問題点を有しているため、このようなリチウム系複合酸化物の表面に残存しているリチウム系アルカリに、表面処理剤を反応させることにより、リチウム系複合酸化物を表面処理すること、及び、負極活物質用リチウム系複合酸化物中の残存アルカリ量を、0.02?3質量%とすることが記載されている。
また、甲第4号証の前記(4b)の【0001】、(4e)、(4i)の【0040】、【0042】?【0044】には、非水電解質二次電池のリチウムチタン複合酸化物からなる活物質表面に残存する炭酸リチウムや水酸化リチウムなどの未反応Li成分が非水電解質と反応し、二酸化炭素や炭化水素ガスを発生させるため、リチウムチタン複合酸化物粉末の粉砕工程後に、再焼成を行うことで、表面に露呈された未反応リチウムが活物質内部に取り込まれ、表面に残存する未反応Li成分を少なくできることが記載されている。
しかし、甲第3号証において、負極活物質用リチウム系複合酸化物中の残存アルカリである炭酸リチウム及び水酸化リチウムの含有量は不明であるし、甲第4号証において、リチウムチタン複合酸化物からなる活物質表面に残存する炭酸リチウム及び水酸化リチウムの含有量は不明であるから、甲第3号証及び甲第4号証のいずれにおいても、リチウム量を特定することはできない。
また、甲第3号証及び甲第4号証には、リチウム量を0.017質量%未満となるように減少させると上記本件問題点が発生し得ること、及び、上記本件問題点を発生させないために、リチウム量の下限を0.017質量%にすることは、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲第3号証及び甲第4号証においては、いずれも、リチウム量の下限が0.017質量%以上になっているとはいえない、すなわち、リチウム量が、本件発明1の「0.017質量%以上0.053質量%以下」の範囲に含まれているとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明又は甲第4号証に記載された発明であるといえない。

(イ) 本件発明2、4?8に係る発明について
本件発明2、4?8は、本件発明1の全ての発明特定事項を有しているから、前記(ア)で検討したのと同様の理由により、本件発明2、4?8は、甲第3号証に記載された発明又は甲第4号証に記載された発明であるといえない。

(ウ) まとめ
よって、本件発明1、2、4?8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。

ウ 申立理由4-1?4-3(特許法第29条第2項)について
(ア) 本件発明1について
前記イ(ア)bで検討したように、甲第3号証及び甲第4号証には、リチウム量を減らしすぎると前記本件問題点が発生し得ること、及び、前記本件問題点を発生させないために、リチウム量の下限を0.017質量%にすることは、記載も示唆もされていない。
また、甲第5号証?甲第8号証のいずれにも、リチウム量を減らしすぎると前記本件問題点が発生し得ること、及び、前記本件問題点を発生させないために、リチウム量の下限を0.017質量%にすることは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲第3号証?甲第8号証に記載された発明のいずれにも、リチウム量の下限を特定する動機付けがあるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲第3号証?甲第8号証に記載された発明をどのように組み合わせても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ) 本件発明2、4?8について
本件発明2、4?8は、本件発明1の全ての発明特定事項を有しているから、前記(ア)で検討したのと同様の理由により、本件発明2、4?8は、甲第3号証?甲第8号証に記載された発明をどのように組み合わせても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ) まとめ
よって、本件発明1、2、4?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、4?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、4?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非水電解質電池および電池パック
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、活物質及びその製造方法、非水電解質電池および電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンが負極と正極とを移動することにより充放電が行われる非水電解質電池は、高エネルギー密度電池として盛んに研究開発が進められている。この非水電解質電池には、その用途により様々な特性が望まれる。例えば、デジタルカメラの電源用では約3C放電、ハイブリッド電気自動車等の車載用では約10C放電以上の使用が見込まれる。このため、これら用途の非水電解質電池には、大電流で充放電を繰り返した際の優れた充放電サイクル寿命が望まれる。
【0003】
現在、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を用い、負極活物質として炭素質物を用いる非水電解質電池が商用化されている。リチウム遷移金属複合酸化物は、遷移金属としてCo、Mn、Ni等を用いるのが一般的である。
【0004】
近年、炭素質物に比してLi吸蔵放出電位が高いリチウムチタン酸化物を負極活物質として用いた非水電解質電池が実用化された。リチウムチタン酸化物は、充放電に伴う体積変化が少ないために炭素質物と比較してサイクル性能に優れる。中でも、スピネル型チタン酸リチウムは、特に有望である。
【0005】
スピネル型チタン酸リチウムは、充放電時の体積変化が少ないため、負極活物質として用いることにより、体積変化が小さく、電極膨潤に伴う短絡や容量低下が起こり難い非水電解質電池を実現することが可能である。しかしながら、チタン酸リチウムを負極活物質として用いた非水電解質電池は、電池抵抗の改善が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005-519831号公報
【特許文献2】特開2008-105943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、抵抗増加を抑えることが可能な非水電解質電池用負極活物質及びその製造方法、非水電解質電池、および電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、リチウムチタン複合酸化物を含む非水電解質電池用負極活物質が提供される。リチウムチタン複合酸化物は、炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物を含む。リチウム化合物のリチウム量は、0.017質量%以上0.073質量%以下である。
【0009】
実施形態によれば、正極と、実施形態に係る活物質を含む負極と、非水電解質とを備える非水電解質電池が提供される。
【0010】
実施形態によれば、実施形態に係る活物質を含む非水電解質電池を含む電池パックが提供される。
また、実施形態によれば、正極と、負極と、非水電解質と、外装部材とを備える非水電解質電池が提供される。外装部材には、正極、負極及び非水電解質が収容される。負極は、炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物(炭酸リチウム単独の場合を除く)を含むリチウムチタン複合酸化物よりなる活物質を含む。リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.053質量%以下である。非水電解質電池をSOC50%に調整し、55℃の恒温槽中に72時間放置した時の放置前の電池厚さをA、放置後の電池厚さをBとした時の膨れ量{(B-A)/A×100[%]}が3%以下であり、かつ放置前の電池抵抗C、放置後の電池抵抗をDとした時の抵抗増加率(D/C)が1.1以下である。
実施形態によれば、実施形態に係る非水電解質電池を含む電池パックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】チタン酸化物の表面の模式図。
【図2】水酸基が結合されたチタン酸化物の表面の模式図。
【図3】第二の実施形態の非水電解質電池の断面模式図。
【図4】図3のAで示した円で囲われた部分の拡大断面模式図。
【図5】第二の実施形態の非水電解質電池を模式的に示した部分切欠斜視図。
【図6】図5のB部の拡大断面図。
【図7】第三の実施形態の電池パックの分解斜視図。
【図8】図7の電池パックの電気回路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0013】
(第一の実施形態)
第一の実施形態によれば、リチウムチタン複合酸化物を含む活物質が提供される。リチウムチタン複合酸化物は、炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物を含む。リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.073質量%以下である。
【0014】
発明者らは鋭意研究した結果、非水電解質電池の抵抗が増加する原因を究明した。
【0015】
図1は、リチウムチタン複合酸化物の粒子表面の結晶構造を拡大した模式図である。リチウムチタン複合酸化物の粒子表面(結晶表面)41では、原子の規則的結合が切断されている。原子の結合が切断された状態を、図1において点線で示す。粒子表面41の原子は、粒子内部の原子に比べて不安定であり、粒子表面41のTi^(4+)イオンは不飽和な状態になる。この不飽和手は、空気中の水分と化学結合して水酸基となり、その結果、図2に示す結晶構造が形成される。
【0016】
一方、リチウムチタン複合酸化物中のリチウムについては、焼成後に僅かに残存する未反応リチウム成分が、炭酸リチウムや水酸化リチウムとして存在する。水酸化リチウムは、大気中の二酸化炭素と反応して炭酸リチウムに変化する。よって、リチウムチタン複合酸化物は、炭酸リチウムか、水酸化リチウムか、あるいは炭酸リチウム及び水酸化リチウムの双方を含む。
【0017】
活物質としてリチウムチタン複合酸化物を用いた場合、リチウムチタン複合酸化物に吸着する水分や表面水酸基が電解液中のリチウム塩(LiPF_(6)など)と反応して、遊離酸(フッ酸)を生成させる。この量は活物質に炭素質物を用いた場合よりも多く、その結果、遊離酸がリチウムチタン複合酸化物に残存する炭酸リチウムと反応(加水分解)して、二酸化炭素を発生させる。この二酸化炭素が電池の膨れを誘発して、電池性能を低下させることを究明した。特に、車両用などの大きな電池を製造する際には、この発生ガスが電極間に残留し易く、電池性能、特にレート性能や出力性能を著しく低下させることが分かった。
【0018】
発明者らは、炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物を含むリチウムチタン複合酸化物において、リチウム化合物のリチウム量を0.073質量%以下にすることにより、ガス発生量を少なくすることができ、電池膨れを小さくすることができることを見出した。電池膨れを小さくするにはリチウム量が少ない方が有利であるものの、リチウム量を0.017質量%未満とすると、電池抵抗が大きくなるため、電池のレート性能及び出力性能が低下する。これは以下の理由によるものである。リチウム量を少なくするには、リチウム化合物量を減少させる必要がある。リチウム化合物をリチウム量が0.017質量%未満となるように減少させるには、リチウムチタン複合酸化物に酸処理を施す必要があり、この酸処理によってリチウムチタン複合酸化物の結晶性が低下する。その結果、電池抵抗が大きくなり、電池の放電容量、レート性能及び出力性能が低下する。よって、リチウム化合物のリチウム量を0.017質量%以上0.073質量%以下にすることが好ましい。リチウム化合物のリチウム量を0.017質量%以上0.053質量%以下にすることにより、電池膨れをさらに小さくすることができる。
【0019】
リチウム化合物のリチウム量(X,Y)は、以下の(I)式に従って算出される。
【0020】
リチウム量(X,Y)=N×(M1/M2) (I)
ここで、Nはリチウムチタン複合酸化物のリチウム化合物含有量(質量%)、M1はリチウム化合物1モル当りのLi質量で、M2はリチウム化合物1モルの質量である。
【0021】
例えば、リチウムチタン複合酸化物に含まれる炭酸リチウム(Li_(2)CO_(3))量Nが1.00質量%である場合を挙げる。LiとCとOの原子量は夫々6.939、12.01115、15.9994であるから、炭酸リチウムの分子量M2は73.88735である。炭酸リチウムの1モル当りのLi質量M1は、6.939×2で算出され、13.878である。炭酸リチウムに含まれるリチウム量X(質量%)は、(I)式に従い、1.00×(6.939×2)/73.88735で算出され、X=0.188質量%となる。水酸化リチウム(LiOH)の分子量M2は、LiとHとOの原子量が夫々6.939、1.00797、15.9994であるから、23.94637である。リチウムチタン複合酸化物に含まれる水酸化リチウム量Nが1.00質量%の場合、水酸化リチウムに含まれるリチウム量Y(質量%)は、(I)式に従い、1.00×6.939/23.94637で算出され、Y=0.290質量%となる。
【0022】
リチウムチタン複合酸化物中に炭酸リチウム及び水酸化リチウムの双方が含まれる場合、XとYの合計が求めるリチウム量となる。また、リチウムチタン複合酸化物中に炭酸リチウムのみが含まれる場合、Xが求めるリチウム量となり、リチウムチタン複合酸化物中に水酸化リチウムのみが含まれる場合、Yが求めるリチウム量となる。
【0023】
リチウムチタン複合酸化物は、リチウムチタン酸化物相か、リチウムチタン酸化物の構成要素の一部を異種元素で置換したリチウムチタン含有酸化物相のいずれかを含むことが望ましい。優れた大電流性能とサイクル性能を得るためには、リチウムチタン複合酸化物は、リチウムチタン酸化物相を主たる構成相とすることが望ましい。主たる構成相とは、リチウムチタン複合酸化物の中で最も存在比率の高い構成相である。
【0024】
構成相の存在比率は以下に説明する方法で確認することができる。
【0025】
リチウムチタン複合酸化物粒子に対してX線回折測定を実施し、得られたX線回折パターンから複合酸化物の構成相を同定する。同定した構成相のメインピークの強度比を比較することによって、リチウムチタン複合酸化物の主たる構成相を特定することが可能である。
【0026】
例えば、スピネル型のリチウムチタン複合酸化物(Li_(4+x)Ti_(5)O_(12)(xは0≦x≦3))の場合、不純物相として、アナターゼ型TiO_(2)、ルチル型TiO_(2)、Li_(2)TiO_(3)等を含むことがある。このような物質に対して、Cu-Kαを用いたX線回折測定を実施すると、X線回折パターンから、Li_(4+x)Ti_(5)O_(12)(xは0≦x≦3)のメインピークは4.83Å(2θ:18°)、アナターゼ型TiO_(2)、ルチル型TiO_(2)、およびLi_(2)TiO_(3)の夫々のメインピークは3.51Å(2θ:25°)、3.25Å(2θ:27°)、および2.07Å(2θ:43°)の位置に現れる。これらの強度を比較することによって、主たる構成相を特定できる。
【0027】
なお、スピネル型リチウムチタン複合酸化物を主たる構成相とする場合、X線回折法によるスピネル型チタン酸リチウムのメインピーク強度を100としたとき、ルチル型TiO_(2)、アナターゼ型TiO_(2)及びLi_(2)TiO_(3)のメインピーク強度をいずれも7以下とすることが好ましく、更に好ましくは3以下である。これら不純物相が少ないほど、リチウムイオンの拡散速度が向上し、さらにイオン伝導性および大電流性能が向上するためである。
【0028】
リチウムチタン酸化物としては、例えば、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物(例えばLi_(4+x)Ti_(5)O_(12)(xは0≦x≦3))、ラムステライド型リチウムチタン酸化物(例えばLi_(2+y)Ti_(3)O_(7)(yは0≦y≦3))などを挙げることができる。スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物によると、優れた充放電サイクル性能を得られるため、望ましい。
【0029】
リチウムチタン複合酸化物は、リチウムチタン酸化物相及びリチウムチタン含有酸化物相以外の他の構成相を含むことを許容する。例えば、TiO_(2)相、Li_(2)TiO_(3)相などを挙げることができる。
【0030】
リチウムチタン複合酸化物は、一次粒子が単独で存在する形態、一次粒子が凝集した二次粒子の形態、あるいはこれらの形態が混在したもの、いずれであっても良い。リチウムチタン複合酸化物の平均粒径は10nm以上10μm以下にすることができる。平均粒径はレーザ回折法によって測定される。また、リチウムチタン複合酸化物のN_(2)吸着によるBET法での比表面積を3m^(2)/g以上50m^(2)/g以下にすることができる。
【0031】
リチウムチタン複合酸化物の製造方法を以下に説明する。リチウムチタン複合酸化物の合成方法は、リチウム塩及び酸化チタンを含む原料を焼成することにより、リチウムチタン複合酸化物を合成する工程と、二酸化炭素を含む水でリチウムチタン複合酸化物を洗浄する工程とを含む。
【0032】
まず、リチウムチタン複合酸化物の合成工程を説明する。Li源として、水酸化リチウム、酸化リチウム、炭酸リチウムなどのリチウム塩を用意する。これらを純水に所定量溶解させる。この溶液にリチウムとチタンの原子比が所定比率になるように酸化チタンを投入する。例えば、組成式Li_(4)Ti_(5)O_(12)のスピネル型リチウムチタン酸化物を合成する場合、LiとTiの原子比は4:5となるように混合する。また、組成式Li_(2)Ti_(3)O_(7)のラムスデライト型リチウムチタン酸化物を合成する場合、LiとTiの原子比は2:3となるように混合する。
【0033】
次に、得られた溶液を攪拌しながら乾燥させ、焼成前駆体を得る。乾燥方法としては、噴霧乾燥、造粒乾燥、凍結乾燥あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。得られた焼成前駆体を焼成し、リチウムチタン複合酸化物を得る。焼成は、大気中で行えば良く、酸素雰囲気、アルゴンなどを用いた不活性雰囲気中で行っても良い。
【0034】
スピネル型を合成する場合、焼成は、680℃以上1000℃以下で1時間以上24時間以下程度行えば良い。好ましくは、720℃以上800℃以下で5時間以上10時間以下である。
【0035】
680℃未満であると、酸化チタンとリチウム化合物の反応が不十分となり、アナターゼ型TiO_(2)、ルチル型TiO_(2)、Li_(2)TiO_(3)などの不純物相が増大し、電気容量が減少してしまう。1000℃を超えると、スピネル型チタン酸リチウムでは、焼結の進行により結晶子径が過剰に成長し、大電流性能を低下させてしまう。
【0036】
一方、ラムスデライト型を合成する場合、焼成は、900℃以上1300℃以下で1時間以上24時間以下程度行えば良い。好ましくは、940℃以上1100℃以下で1時間以上10時間以下である。
【0037】
上述の合成工程により得られたリチウムチタン複合酸化物粒子は、以下に説明する条件で所望の粒径に粉砕することができる。粉砕方法として例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、エタノール、エチレングリコール、ベンゼンあるいはヘキサン等、公知の液体粉砕助剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。粉砕助剤は、粉砕効率の改善、微粉生成量の増大に効果的である。より好ましい方法は、ジルコニア製ボールをメディアに用いたボールミルであり、液体粉砕助剤を加えた湿式での粉砕が好ましい。更に、粉砕効率を向上させるポリオールなどの有機物を粉砕助剤として添加しても良い。ポリオールの種類は特に限定されないが、ペンタエリトリトール、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン等を単独又は組み合わせて使用できる。
【0038】
次いで、洗浄処理工程が行われる。得られたリチウムチタン複合酸化物粒子を水に浸漬させ、スラリーを得る。得られたスラリーに二酸化炭素を導入して攪拌すると、スラリー中で化1に示す化学式(1)の反応が生じる。その後、スラリーをろ過等により粉末と水に分離する。
【化1】

【0039】
以上説明したように、二酸化炭素を含む水でリチウムチタン複合酸化物を洗浄処理する工程によって、リチウムチタン複合酸化物に存在する炭酸リチウムは化学式(1)の反応に示すように炭酸水素リチウムに変化し、水中に溶け込む。炭酸リチウムの水への溶解度は低く、25℃で水100mLに対して1.33gしか溶けない。一方、炭酸水素リチウムの溶解度は炭酸リチウムの約10倍である。このため、炭酸リチウムを炭酸水素リチウムに変化させることによって、少量の水で炭酸リチウムを短時間のうちに効率的に除去することが可能となる。この工程を取り入れることで、炭酸リチウムと水酸化リチウムが少ないリチウムチタン複合酸化物を得られる。
【0040】
スラリー中への二酸化炭素の導入は、例えば、スラリー中への二酸化炭素の吹き込み、あるいはスラリー保管雰囲気の二酸化炭素の分圧を大気より高めることによって行うことができる。積極的に二酸化炭素を導入する場合、その導入量は、リチウムチタン複合酸化物に残存する炭酸リチウムに対して、モル比で1以上にすると良い。より好ましい範囲は1以上5以下である。リチウムチタン複合酸化物に残存する炭酸リチウムは、洗浄処理を施す前のリチウムチタン複合酸化物中の炭酸リチウム量を測定することによって求められる。なお、スラリー中への二酸化炭素の導入過程の終点は、予め設定されたリチウム濃度に対して計算量の二酸化炭素を流量でコントロールして決定することが効率的である。これは、二酸化炭素の導入による炭酸リチウムの可溶化反応、即ち、炭酸水素リチウムの生成反応が、上記式(1)のとおりの平衡反応であり、また二酸化炭素の導入量の変化に対する炭酸リチウムの消費量の変化が小さいためである。
【0041】
洗浄処理を行う雰囲気の温度は、-40℃以上50℃以下にすることができる。雰囲気温度を0℃以上30℃以下にすることによって、スラリー中に二酸化炭素を高濃度で保持することができ、また、生成した炭酸水素リチウムの分解を回避することができる。また、洗浄処理は炭酸リチウムと二酸化炭素の接触により速やかに行われるため、反応時間は特に制限されるものではない。
【0042】
上記洗浄処理は、高速攪拌等の効率的な気液接触設備を用いて二酸化炭素と炭酸リチウムとを分散接触させると、これらの接触効率が高く、炭酸水素リチウムの生成効率が高いため好ましい。上記洗浄処理は、常圧又は加圧下で行うことができる。
【0043】
上記洗浄処理工程後、不溶分であるリチウムチタン複合酸化物を含む粉末を濾過により抽出する。
【0044】
濾過した粉末に乾燥又は再焼成を施すことにより、炭酸リチウム及び水酸化リチウムの少ないリチウムチタン複合酸化物が得られる。
【0045】
再焼成は、大気中で行えば良く、酸素雰囲気、アルゴンなどを用いた不活性雰囲気中で行っても良い。再焼成は、250℃以上900℃以下で1分以上10時間以下程度行えば良い。洗浄処理後、濾過した粉末には、洗浄処理によって除去できなかったり、あるいは洗浄後に再付着した炭酸リチウムまたは水酸化リチウムが残留している。再焼成によって、炭酸リチウム及び水酸化リチウムからリチウムチタン酸化物相を新たに生成させることによって、リチウムチタン複合酸化物中の炭酸リチウム量及び水酸化リチウム量をさらに少なくすることができる。好ましくは、400℃以上700℃以下で10分以上3時間以下である。
【0046】
上記のリチウムチタン複合酸化物の製造方法は、比表面積が大きいリチウムチタン複合酸化物からの炭酸リチウムの除去に特に有効である。リチウムチタン複合酸化物を活物質として用いた非水電解質電池のガス発生を抑制し、優れたレート性能及び出力性能を得ることが可能となる。
【0047】
第一の実施形態のリチウムチタン複合酸化物は、炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物を含み、リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.073質量%以下であるため、ガス発生量を低減して電池膨れを小さくすることができる。また、電池抵抗を小さくすることができる。
【0048】
(第二の実施形態)
第二の実施形態によれば、正極と、負極と、非水電解質とを備える非水電解質電池が提供される。負極は、第一の実施形態の活物質を含む。以下、正極、負極、非水電解質について説明する。
【0049】
1)正極
正極は、正極集電体と、正極集電体の片面若しくは両面に担持され、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を含む正極活物質含有層とを有する。
【0050】
正極活物質としては、酸化物、硫化物、ポリマー等が挙げられる。正極活物質の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
【0051】
例えば、酸化物としては、Liを吸蔵可能な二酸化マンガン(MnO_(2))、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLi_(x)Mn_(2)O_(4)またはLi_(x)MnO_(2))、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLi_(x)NiO_(2))、リチウムコバルト複合酸化物(Li_(x)CoO_(2))、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi_(1-y)Co_(y)O_(2))、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLi_(x)Mn_(y)Co_(1-y)O_(2))、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(Li_(x)Mn_(2-y)Ni_(y)O_(4))、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLi_(x)FePO_(4)、Li_(x)Fe_(1-y)Mn_(y)PO_(4)、Li_(x)CoPO_(4))、硫酸鉄(例えばFe_(2)(SO_(4))_(3))、またはバナジウム酸化物(例えばV_(2)O_(5))を用いることができる。ここで、x、yは0<x≦1、0≦y≦1であることが好ましい。
【0052】
ポリマーは、例えばポリアニリンやポリピロールのような導電性ポリマー材料、またはジスルフィド系ポリマー材料を用いることができる。イオウ(S)、フッ化カーボンもまた活物質として使用できる。
【0053】
好ましい活物質は、正極電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(例えばLi_(x)Mn_(2)O_(4))、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLi_(x)NiO_(2))、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLi_(x)CoO_(2))、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLi_(x)Ni_(1-y)CoyO_(2))、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(例えばLi_(x)Mn_(2-y)Ni_(y)O_(4))、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLi_(x)Mn_(y)Co_(1-y)O_(2))、またはリチウムリン酸鉄(例えばLi_(x)FePO_(4))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が挙げられる。ここで、x、yは0<x≦1、0≦y≦1であることが好ましい。
【0054】
前記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の組成はLi_(a)Ni_(b)Co_(c)Mn_(d)O_(2)(但し、モル比a,b,c及びdは0≦a≦1.1、0.1≦b≦0.5、0≦c≦0.9、0.1≦d≦0.5)であることが好ましい。
【0055】
中でも、常温溶融塩を含む非水電解質を用いる際には、リチウムリン酸鉄、Li_(x)VPO_(4)F、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物を用いることが、サイクル寿命の観点から好ましい。これは、上記正極活物質と常温溶融塩との反応性が少なくなるためである。
【0056】
また、一次電池用の正極活物質には、例えば、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、硫化鉄、フッ化カーボンなどが挙げられる。
【0057】
正極活物質の一次粒子径は、100nm以上1μm以下であると好ましい。100nm以上であると、工業生産上扱いやすい。1μm以下であると、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることができる。
【0058】
正極活物質の比表面積は、0.1m^(2)/g以上10m^(2)/g以下であることが好ましい。0.1m^(2)/g以上であると、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m^(2)/g以下であると、工業生産上扱いやすく、良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0059】
集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための正極導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素質物を挙げることができる。
【0060】
正極活物質と正極導電剤を結着させるための結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム等が挙げられる。
【0061】
正極活物質、正極導電剤及び結着剤の配合比については、正極活物質は80質量%以上95質量%以下、正極導電剤は3質量%以上18質量%以下、結着剤は2質量%以上17質量%以下の範囲にすることが好ましい。正極導電剤については、3質量%以上であることにより上述した効果を発揮することができ、18質量%以下であることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤については、2質量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、17質量%以下であることにより、電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0062】
正極は、例えば、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁し作製したスラリーを、正極集電体に塗布し、乾燥し、正極活物質含有層を作製した後、プレスを施すことにより作製される。その他、正極活物質、正極導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、正極活物質含有層として用いても良い。
【0063】
前記正極集電体は、アルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましく、負極集電体と同様にその平均結晶粒径は50μm以下であることが好ましい。より好ましくは、30μm以下である。更に好ましくは5μm以下である。前記平均結晶粒径が50μm以下であることにより、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔の強度を飛躍的に増大させることができ、正極を高いプレス圧で高密度化することが可能になり、電池容量を増大させることができる。
【0064】
前記平均結晶粒径の範囲が50μm以下の範囲にあるアルミニウム箔またはアルミニウム合金箔は、材料組織、不純物、加工条件、熱処理履歴、ならびに焼鈍条件など複数の因子に複雑に影響され、前記結晶粒径は製造工程の中で、前記諸因子を組合せて調整される。
【0065】
アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99質量%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素、などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1質量%以下にすることが好ましい。
【0066】
2)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体の片面若しくは両面に担持され、負極活物質、負極導電剤および結着剤を含む負極活物質含有層とを有する。
【0067】
負極活物質には、第一の実施形態の活物質が使用される。
【0068】
負極集電体は、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔であることが好ましい。過放電サイクルでの負極集電体の溶解・腐食劣化を防ぐことができる。
【0069】
アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99質量%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1質量%以下にすることが好ましい。
【0070】
負極活物質含有層には導電剤を含有させることができる。導電剤としては、例えば、炭素材料、アルミニウム粉末などの金属粉末、TiOなどの導電性セラミックスを用いることができる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛が挙げられる。より好ましくは、熱処理温度が800?2000℃の平均粒子径10μm以下のコークス、黒鉛、TiOの粉末、平均粒子径1μm以下の炭素繊維が好ましい。炭素材料のN_(2)吸着によるBET比表面積は10m^(2)/g以上が好ましい。
【0071】
負極活物質含有層には結着剤を含有させることができる。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム、コアシェルバインダーなどが挙げられる。
【0072】
負極活物質、負極導電剤及び結着剤の配合比については、負極活物質は70質量%以上96質量%以下、負極導電剤は2質量%以上28質量%以下、結着剤は2質量%以上28質量%以下の範囲にすることが好ましい。負極導電剤量が2質量%未満であると、負極活物質含有層の集電性能が低下し、非水電解質電池の大電流性能が低下する恐れがある。また、結着剤量が2質量%未満であると、負極活物質含有層と負極集電体の結着性が低下し、サイクル性能が低下する可能性がある。一方、高容量化の観点から、負極導電剤及び結着剤は各々28質量%以下であることが好ましい。
【0073】
負極は、例えば、負極活物質、負極導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁し作製したスラリーを、負極集電体に塗布し、乾燥し、負極活物質含有層を作製した後、プレスを施すことにより作製される。
【0074】
3)非水電解質
非水電解質は、電解質を有機溶媒に溶解することにより調整される液状非水電解質、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質等が挙げられる。
【0075】
非水電解質には、揮発性がなく、不燃性のイオン性液体からなる常温溶融塩を含有させたものを使用することが可能である。
【0076】
液状非水電解質は、電解質を0.5mol/L以上2.5mol/L以下の濃度で有機溶媒に溶解することにより、調製される。
【0077】
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO_(4))、六フッ化リン酸リチウム(LiPF_(6))、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF_(4))、六フッ化砒素リチウム(LiAsF_(6))、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF_(3)SO_(3))、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CF_(3)SO_(2))_(2)]などのリチウム塩が挙げられる。使用する電解質の種類は、1種類または2種類以上にすることができる。LiBF_(4)を含む電解質は、負極活物質の非水電解質含浸性をさらに高めることができるため、好ましい。
【0078】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等の鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)等の環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)等の鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等の単独若しくは混合溶媒を挙げることができる。
【0079】
高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0080】
次いで、常温溶融塩を含む非水電解質について説明する。
【0081】
常温溶融塩とは、常温において、少なくとも一部が液状を呈する塩を言い、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲を言う。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は-40℃程度、場合によっては-20℃程度である。中でも、-20℃以上60℃以下の範囲が適している。
【0082】
リチウムイオンを含有した常温溶融塩には、リチウムイオンと有機物カチオンとアニオンから構成されるイオン性融体を使用することが望ましい。また、このイオン性融体は、室温以下でも液状であることが好ましい。
【0083】
有機物カチオンとしては、以下の化2に示す骨格を有するアルキルイミダゾリウムイオン、四級アンモニウムイオンが挙げられる。
【化2】

【0084】
アルキルイミダゾリウムイオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオン、テトラアルキルイミダゾリウムイオンなどが好ましい。ジアルキルイミダゾリウムとしては1-メチル-3-エチルイミダゾリウムイオン(MEI^(+))、トリアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,2-ジエチル-3-プロピルイミダゾリウムイオン(DMPI^(+))、テトラアルキルイミダゾリウムイオンとして、1,2-ジエチル-3,4(5)-ジメチルイミダゾリウムイオンが好ましい。
【0085】
四級アンモニムイオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオンや環状アンモニウムイオンなどが好ましい。テトラアルキルアンモニウムイオンとしてはジメチルエチルメトキシアンモニウムイオン、ジメチルエチルメトキシメチルアンモニウムイオン、ジメチルエチルエトキシエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオンが好ましい。
【0086】
上記アルキルイミダゾリウムイオンまたは四級アンモニウムイオン(特にテトラアルキルアンモニウムイオン)を用いることにより、融点を100℃以下、より好ましくは20℃以下にすることができる。さらに負極との反応性を低くすることができる。
【0087】
リチウムイオンの濃度は、20mol%以下であることが好ましい。より好ましい範囲は、1?10mol%の範囲である。前記範囲にすることにより、20℃以下の低温においても液状の常温溶融塩を容易に形成できる。また常温以下でも粘度を低くすることができ、イオン伝導度を高くすることができる。
【0088】
アニオンとしては、BF_(4)^(-)、PF_(6)^(-)、AsF_(6)^(-)、ClO_(4)^(-)、CF_(3)SO_(3)^(-)、CF_(3)COO^(-)、CH_(3)COO^(-)、CO_(3)^(2-)、N(CF_(3)SO_(2))_(2)^(-)、N(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(3)C^(-)などから選ばれる一種以上のアニオンと共存することが好ましい。複数のアニオンを共存することにより、融点が20℃以下の常温溶融塩を容易に形成できる。より好ましくは融点が0℃以下の常温溶融塩にすることができる。より好ましいアニオンとしては、BF_(4)^(-)、CF_(3)SO_(3)^(-)、CF_(3)COO^(-)、CH_(3)COO^(-)、CO_(3)^(2-)、N(CF_(3)SO_(2))_(2)^(-)、N(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)^(-)、(CF_(3)SO_(2))_(3)C^(-)が挙げられる。これらのアニオンによって0℃以下の常温溶融塩の形成がより容易になる。
【0089】
非水電解質電池の一例について、図3、図4を参照してその構造を説明する。図3に、第二の実施形態に係わる扁平型非水電解質二次電池の断面模式図を示す。図4は、図3のAで示した円で囲われた部分の拡大断面模式図を示す。
【0090】
図3に示すように、外装部材7には、扁平状の捲回電極群6が収納されている。捲回電極群6は、正極3と負極4をその間にセパレータ5を介在させて渦巻状に捲回された構造を有する。非水電解質は、捲回電極群6に保持されている。
【0091】
図4に示すように、捲回電極群6の最外周には負極4が位置しており、この負極4の内周側にセパレータ5、正極3、セパレータ5、負極4、セパレータ5、正極3、セパレータ5というように正極3と負極4がセパレータ5を介して交互に積層されている。負極4は、負極集電体4aと、負極集電体4aに担持された負極活物質含有層4bとを備えるものである。負極4の最外周に位置する部分では、負極集電体4aの片面のみに負極活物質含有層4bが形成されている。正極3は、正極集電体3aと、正極集電体3aに担持された正極活物質含有層3bとを備えるものである。
【0092】
図3に示すように、帯状の正極端子1は、捲回電極群6の外周端近傍の正極集電体3aに電気的に接続されている。一方、帯状の負極端子2は、捲回電極群6の外周端近傍の負極集電体4aに電気的に接続されている。正極端子1及び負極端子2の先端は、外装部材7の同じ辺から外部に引き出されている。
【0093】
以下、セパレータ、外装部材、正極端子、負極端子について説明する。
【0094】
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンからなる多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であり、安全性向上の観点から好ましい。
【0095】
外装部材としては、肉厚0.2mm以下のラミネートフィルムや、肉厚0.5mm以下の金属製容器が挙げられる。金属製容器の肉厚は、0.2mm以下であるとより好ましい。
【0096】
形状としては、扁平型、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型等が挙げられる。なお、無論、携帯用電子機器等に積載される小型電池の他、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池でも良い。
【0097】
ラミネートフィルムは、金属層と金属層を被覆する樹脂層とからなる多層フィルムである。軽量化のために、金属層はアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、金属層を補強するためのものであり、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより成形する。
【0098】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等が挙げられる。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属の含有量は1質量%以下にすることが好ましい。これにより、高温環境下での長期信頼性、放熱性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0099】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属缶は、平均結晶粒径が50μm以下であることが好ましい。より好ましくは30μm以下である。更に好ましくは5μm以下である。平均結晶粒径を50μm以下とすることによって、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属缶の強度を飛躍的に増大させることができ、より缶の薄肉化が可能になる。その結果、軽量かつ高出力で長期信頼性に優れた車載に適切な電池を実現することができる。
【0100】
負極端子は、リチウムイオン金属に対する電位が0.4V以上3V以下の範囲における電気的安定性と導電性とを備える材料から形成することができる。具体的には、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金、アルミニウムが挙げられる。接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料が好ましい。
【0101】
正極端子は、リチウムイオン金属に対する電位が3V以上5V以下の範囲における電気的安定性と導電性とを備える材料から形成することができる。具体的には、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金、アルミニウムが挙げられる。接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料が好ましい。
【0102】
第二の実施形態に係る非水電解質電池は、前述した図3及び図4に示す構成のものに限らず、例えば、図5及び図6に示す構成にすることができる。図5は第二の実施形態に係る別の扁平型非水電解質二次電池を模式的に示す部分切欠斜視図で、図6は図5のB部の拡大断面図である。
【0103】
図5に示すように、ラミネートフィルム製の外装部材8内には、積層型電極群9が収納されている。積層型電極群9は、図6に示すように、正極3と負極4とをその間にセパレータ5を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極3は複数枚存在し、それぞれが正極集電体3aと、正極集電体3aの両面に担持された正極活物質含有層3bとを備える。負極4は複数枚存在し、それぞれが負極集電体4aと、負極集電体4aの両面に担持された負極活物質含有層4bとを備える。それぞれの負極4の負極集電体4aは、一辺が正極3から突出している。正極3から突出した負極集電体4aは、帯状の負極端子2に電気的に接続されている。帯状の負極端子2の先端は、外装部材8から外部に引き出されている。また、ここでは図示しないが、正極3の正極集電体3aは、負極集電体4aの突出辺と反対側に位置する辺が負極4から突出している。負極4から突出した正極集電体3aは、帯状の正極端子1に電気的に接続されている。帯状の正極端子1の先端は、負極端子2とは反対側に位置し、外装部材8の辺から外部に引き出されている。
【0104】
第二の実施形態の非水電解質電池は、負極に第一の実施形態の活物質を用いるため、電池膨れ及び電池抵抗を小さくすることができる。その結果、レート性能及び出力性能に優れた非水電解質電池を実現することができる。
【0105】
(第三の実施形態)
第三の実施形態によれば、第二の実施形態の非水電解質電池を含む電池パックが提供される。非水電解質電池の数は1個でも、複数でも良い。複数個の場合、電池が直列もしくは並列に接続され、組電池を構成していることが望ましい。
【0106】
図7の電池パックにおける電池単体21は、図3に示す扁平型非水電解質電池から構成されている。複数の電池単体21は、正極端子1と負極端子2が突出している向きを一つに揃えて厚さ方向に積層されている。図8に示すように、電池単体21は、直列に接続されて組電池22をなしている。組電池22は、図7に示すように、粘着テープ23によって一体化されている。
【0107】
正極端子1および負極端子2が突出する側面に対しては、プリント配線基板24が配置されている。プリント配線基板24には、図8に示すように、サーミスタ25、保護回路26および外部機器への通電用の端子27が搭載されている。
【0108】
図7及び図8に示すように、組電池22の正極側配線28は、プリント配線基板24の保護回路26の正極側コネクタ29に電気的に接続されている。組電池22の負極側配線30は、プリント配線基板24の保護回路26の負極側コネクタ31に電気的に接続されている。
【0109】
サーミスタ25は、電池単体21の温度を検知するためのもので、検知信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路と外部機器への通電用端子との間のプラス側配線31a及びマイナス側配線31bを遮断できる。所定の条件とは、例えば、サーミスタの検出温度が所定温度以上になったとき、電池単体21の過充電、過放電、過電流等を検知したとき等である。この検知方法は、個々の電池単体21もしくは電池単体21全体について行われる。個々の電池単体21を検知する場合、電池電圧を検知してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検知してもよい。後者の場合、個々の電池単体21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図8の場合、電池単体21それぞれに電圧検知のための配線32を接続し、これら配線32を通して検知信号が保護回路26に送信される。
【0110】
組電池22について、正極端子1および負極端子2が突出する側面以外の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート33が配置される。正極端子1および負極端子2が突出する側面とプリント配線基板24との間には、ゴムもしくは樹脂からなるブロック状の保護ブロック34が配置される。
【0111】
この組電池22は、各保護シート33、保護ブロック34およびプリント配線基板24と共に収納容器35に収納される。すなわち、収納容器35の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート33が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池22は、保護シート33及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。収納容器35の上面には、蓋36が取り付けられる。
【0112】
なお、組電池22の固定には、粘着テープ23に代えて、熱収縮テープを用いても良い。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮チューブを周回させた後、該熱収縮チューブを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0113】
なお、図7,8に示した電池単体21は直列に接続されているが、電池容量を増大させるためには並列に接続しても良い。無論、組み上がった電池パックを直列、並列に接続することもできる。
【0114】
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途としては、大電流性能、さらにはサイクル性能が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用が挙げられる。特に、車載用が好適である。
【0115】
第三の実施形態の電池パックは、第二の実施形態の非水電解質電池を用いるため、電池膨れ及び電池抵抗を小さくすることができる。その結果、レート性能及び出力性能に優れた電池パックを実現することができる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を説明する。なお、実施形態の主旨を超えない限り、以下に記載される実施例に限定されるものでない。
【0117】
(実施例1)
<正極の作製>
まず、正極活物質としてリチウムマンガン酸化物(LiMn_(2)O_(4))粉末92質量%、導電剤として炭素材料5質量%、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量%をN-メチルピロリドン(NMP)に加えて混合してスラリーを調製した。このスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した後、乾燥し、プレスすることにより電極密度が2.8g/cm^(3)の正極を作製した。
【0118】
<負極の作製>
炭酸リチウムとアナターゼ型酸化チタンを混合して、800℃で10時間の焼成によりスピネル型チタン酸リチウム(Li_(4)Ti_(5)O_(12))を合成した。得られたスピネル型チタン酸リチウム(Li_(4)Ti_(5)O_(12))を直径3mmのジルコニア製ボールをメディアとし、エタノール中で3時間ボールミル粉砕した。粉砕した粉末を純水に浸し、得られたスラリー中に0.1L/分で二酸化炭素を流入させながら1時間攪拌した。雰囲気温度は0℃に保持した。二酸化炭素の導入量は、洗浄処理を施す前のチタン酸リチウム中の炭酸リチウムlモルに対して1モルに相当した。その後、ろ過によってチタン酸リチウムを抽出し、500℃で1時間の熱処理を施して、平均粒径が0.9μmのスピネル型チタン酸リチウム粒子を合成した。スピネル型チタン酸リチウム粒子のN_(2)吸着によるBET法での比表面積は、10.8m^(2)/gであった。
【0119】
得られた負極活物質の平均粒径の測定には、レーザー回折式分布測定装置(島津SALD-300)を用いた。ビーカーに試料を約0.1gと界面活性剤と1?2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌した後、攪拌水槽に注入し、2秒間隔で64回光度分布を測定し、粒度分布データを解析するという方法にて測定した。
【0120】
炭酸リチウムと水酸化リチウムの量は中和滴定法により測定した。具体的には、活物質5gを50mlの純水に入れてl時間撹拌した後、ろ過して固形分を取り除き、得られた抽出液に既知濃度の塩酸液を、溶液pHがpH8.4となるまで滴下し、このときの塩酸量Zを測定した。引き続いて同上塩酸液を、溶液pHがpH4.0となるまでの滴下し、pH8.4からpH4.0までの塩酸量Wを測定した。この測定における2Wの塩酸量が、炭酸リチウム(Li_(2)CO_(3))量に対応し(等価であり)、〔Z-W〕が水酸化リチウム(LiOH)全量に対応する量とみなせる。炭酸リチウム中のリチウム量X(質量%)及び水酸化リチウム中のリチウム量Y(質量%)を下記表2に示す。
【0121】
合成したスピネル型チタン酸リチウム(Li_(4)Ti_(5)O_(12))粉末を92質量%と、導電剤として炭素材料を5質量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3質量%とに、N-メチルピロリドン(NMP)を添加し、混合し、スラリーを調製した。得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔(純度99.99質量%、平均結晶粒径10μm)からなる集電体の両面に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより電極密度が2.2g/cm^(3)の負極を得た。
【0122】
<電極群の作製>
正極、厚さ20μmのポリエチレン製の多孔質フィルムからなるセパレータ、負極、セパレータの順番に積層した後、渦巻き状に捲回した。これを90℃で加熱プレスすることにより、幅が33mmで、厚さが3.0mmの偏平状電極群を作製した。得られた電極群を、厚さが0.1mmのラミネートフィルムからなるパックに収納し、80℃で24時間真空乾燥を施した。
【0123】
<液状非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)が体積比率1:2で混合された混合溶媒に、電解質としてのLiPF_(6)を1mol/L溶解することにより液状非水電解質を調製した。
【0124】
電極群を収納したラミネートフィルムパック内に液状非水電解質を注入した後、パックをヒートシールにより完全密閉し、図3に示す構造を有し、幅が35mmで、厚さが3.2mm、かつ高さが65mmの非水電解質二次電池を作製した。
【0125】
(実施例2?6、比較例1?3)
洗浄処理の条件を下記表1に示すように変更する以外は、同様の手法で合成したチタン酸リチウムを用いる以外は、実施例1と同様な手法で非水電解質二次電池を作製した。
【0126】
(比較例4,5)
洗浄処理に変えて1.5質量%の酢酸水溶液による酸処理を施した後、120℃16時間の乾燥処理を施したチタン酸リチウムを用いる以外は、実施例1と同様の手法で非水電解質二次電池を作製した。
【0127】
(実施例7)
炭酸リチウムとアナターゼ型酸化チタンを混合して、1050℃で10時間の焼成によりラムスデライト型チタン酸リチウム(Li_(2)Ti_(3)O_(7))を合成した。得られたラムスデライト型チタン酸リチウムに、実施例4と同様な条件で洗浄処理、ろ過及び再焼成を施すことにより、平均粒径が0.9μmで、N_(2)吸着によるBET法での比表面積が10.0m^(2)/gのラムスデライト型チタン酸リチウム粒子を合成した。得られたラムスデライト型チタン酸リチウム粒子を負極活物質に用いること以外は、実施例1と同様の手法で非水電解質二次電池を作製した。
【0128】
(比較例6)
炭酸リチウムとアナターゼ型酸化チタンを混合して、1050℃で10時間の焼成によりラムスデライト型チタン酸リチウム(Li_(2)Ti_(3)O_(7))を合成した。得られたラムスデライト型チタン酸リチウムに、比較例1と同様な条件で洗浄処理、ろ過及び再焼成を施すことにより、平均粒径が0.9μmで、N_(2)吸着によるBET法での比表面積が10.2m^(2)/gのラムスデライト型チタン酸リチウム粒子を合成した。得られたラムスデライト型チタン酸リチウム粒子を負極活物質に用いること以外は、実施例1と同様の手法で非水電解質二次電池を作製した。
【0129】
実施例及び比較例の電池をSOC50%に調整し、55℃の恒温槽中に72時間放置した。放置前の電池厚さをA、放置後の電池厚さをBとし、(B-A)/A×100[%]を膨れ量とした。また、貯蔵前の電池抵抗C、貯蔵後の電池抵抗をDとして、D/Cを抵抗増加率とした。結果を表2に纏める。
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
表1及び表2において、スピネル型チタン酸リチウムを負極活物質として用いる場合、実施例1?6及び比較例1?5を比較することにより、リチウム量(X+Y)が0.017質量%以上0.073質量%以下の実施例1?6は、膨れ量が少なく、かつ抵抗増加率が比較例1?5に比して小さいことがわかる。特に、リチウム量(X+Y)が0.017質量%以上0.053質量%以下の実施例1?5は、リチウム量(X+Y)が0.061質量%の実施例6に比して膨れ量が小さい。
【0132】
また、比較例1のように二酸化炭素を導入しない洗浄処理を行うと、洗浄処理を行わない比較例2,3に比して膨れ量が若干小さくなるものの、膨れ量及び抵抗増加率の双方が実施例1?6よりも劣っている。一方、比較例4,5のように洗浄処理の代りに酸処理を行うと、膨れ量が小さくなるものの、抵抗増加率はほとんど改善されないことがわかる。
【0133】
さらに、実施例7及び比較例6を比較することにより、ラムスデライト型チタン酸リチウムにおいても、リチウム量(X+Y)を0.017質量%以上0.073質量%以下にすることにより、膨れ量及び抵抗増加率が改善されることがわかる。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物を含み、前記リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.073質量%以下であるリチウムチタン複合酸化物を含むことを特徴とする活物質。
[2] 前記リチウムチタン複合酸化物は、スピネル型構造であることを特徴とする[1]記載の活物質。
[3] 前記リチウムチタン複合酸化物は、Li_(4+x)Ti_(5)O_(12)(0≦x≦3)で表されることを特徴とする[1]乃至[2]のいずれかに記載の活物質。
[4] 前記リチウムチタン複合酸化物は、平均粒径が10nm以上10μm以下の粒子であることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の活物質。
[5] 前記リチウムチタン複合酸化物は、比表面積が3m^(2)/g以上50m^(2)/g以下であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の活物質。
[6] 正極と、[1]乃至[5]のいずれかに記載の活物質を含む負極と、非水電解質とを備えることを特徴とする非水電解質電池。
[7] [6]記載の非水電解質電池を備えることを特徴とする電池パック。
[8] リチウム塩及び酸化チタンを含む原料を焼成することによりリチウムチタン複合酸化物を合成する工程と、二酸化炭素を含む水で前記リチウムチタン複合酸化物を洗浄する工程とを含むことを特徴とする活物質の製造方法。
[9] 前記洗浄工程が施された前記リチウムチタン複合酸化物に熱処理を施す工程を含むことを特徴とする[8]記載の活物質の製造方法。
【符号の説明】
【0135】
1…正極端子、2…負極端子、3…正極、3a…正極集電体、3b…正極活物質含有層、4…負極、4a…負極集電体、4b…負極活物質含有層、5…セパレータ、6…捲回電極群、7,8…外装部材、9…積層電極群、21…電池単体、22…組電池、23…粘着テープ、24…プリント配線基板、28…正極側配線、29…正極側コネクタ、30…負極側配線、31…負極側コネクタ、33…保護ブロック、35…収納容器、36…蓋。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
炭酸リチウム及び水酸化リチウムのうち少なくとも一方からなるリチウム化合物(炭酸リチウム単独の場合を除く)を含むリチウムチタン複合酸化物よりなる活物質を含む負極と、
非水電解質と、
前記正極、前記負極及び前記非水電解質が収容される外装部材とを備える非水電解質電池であり、
前記リチウム化合物のリチウム量が0.017質量%以上0.053質量%以下であり、
前記非水電解質電池をSOC50%に調整し、55℃の恒温槽中に72時間放置した時の放置前の電池厚さをA、放置後の電池厚さをBとした時の膨れ量{(B-A)/A×100[%]}が3%以下であり、かつ放置前の電池抵抗C、放置後の電池抵抗をDとした時の抵抗増加率(D/C)が1.1以下である、非水電解質電池。
【請求項2】
前記外装部材がラミネートフィルム製である、請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
前記リチウムチタン複合酸化物は、スピネル型構造である、請求項1?2のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項5】
前記リチウムチタン複合酸化物は、Li_(4+x)Ti_(5)O_(12)(0≦x≦3)で表される、請求項1?2,4のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項6】
前記リチウムチタン複合酸化物は、平均粒径が10nm以上10μm以下の粒子である、請求項1?2,4,5のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項7】
前記リチウムチタン複合酸化物は、比表面積が3m^(2)/g以上50m^(2)/g以下である、請求項1?2,4?6のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項8】
請求項1?2,4?7のいずれか1項に記載の非水電解質電池を備える電池パック。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-05 
出願番号 特願2015-16708(P2015-16708)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H01M)
P 1 651・ 16- YAA (H01M)
P 1 651・ 113- YAA (H01M)
P 1 651・ 537- YAA (H01M)
P 1 651・ 4- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 知絵  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 宮本 純
河本 充雄
登録日 2016-08-12 
登録番号 特許第5985674号(P5985674)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 非水電解質電池および電池パック  
代理人 鵜飼 健  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 鵜飼 健  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 金子 早苗  
代理人 金子 早苗  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  
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