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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 C08F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08F 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F |
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管理番号 | 1334314 |
異議申立番号 | 異議2016-700794 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-08-31 |
確定日 | 2017-09-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5871019号発明「着色組成物、カラーフィルタ及びカラー液晶表示素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5871019号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]について訂正することを認める。 特許第5871019号の請求項1、2及び4ないし6に係る特許を維持する。 特許第5871019号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯等 特許第5871019号(設定登録時の請求項の数は6。以下、「本件特許」という。)は、平成22年4月14日(優先権主張 平成21年6月25日)にされた特願2010-93386号の一部を平成26年2月5日に新たに出願した特願2014-19913号に係るものであって、平成28年1月22日に設定登録された。 特許異議申立人 伊藤範子(以下、単に「異議申立人」という。)は、平成28年8月31日(受理日:同年9月1日)、本件特許の請求項1ないし6に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てをした。 当審において、平成28年11月30日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、平成29年1月31日付け(受理日:同年2月1日)で、訂正請求書及び意見書を提出したので、同年2月3日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人は、同年3月9日付け(受理日:同月10日)で意見書を提出し、当審において、同年4月14日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、特許権者は、同年6月12日付け(受理日:同月13日)で、訂正請求書(以下、当該訂正請求書による訂正を「本件訂正請求」という。)及び意見書を提出したので、同年6月26日付けで異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、異議申立人からは何ら応答はなかったものである。 なお、特許権者が、平成29年1月31日付け(受理日:同年2月1日)で行った訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のアないしサのとおりである。なお、下線については訂正箇所に合議体が付したものである。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種」と記載されているのを、「(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒」と訂正する。 請求項1を引用する請求項4ないし6についても同様の訂正をする。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「(d2)アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンよりなる群から選ばれる少なくとも1種」と記載されているのを、「(d2)エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種」と訂正する。 請求項1を引用する請求項4ないし6についても同様の訂正をする。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「とを含有し、」と記載されているのを、「とを含有し、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合が全溶媒中80質量%以上であり、」と訂正する。 請求項1を引用する請求項4ないし6についても同様の訂正をする。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「且つ溶媒(d2)の含有割合が」と記載されているのを、「着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータが、以下の(x)以上(y)以下であり、且つ溶媒(d2)の含有割合が」と訂正する。また、特許請求の範囲の請求項1に「着色組成物。」と記載されているのを、 「着色組成物。 (x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ (y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30十0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」と訂正する。 請求項1を引用する請求項4ないし6についても同様の訂正をする。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2に「(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種」と記載されているのを、「(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒」と訂正する。 請求項2を引用する請求項4ないし6についても同様の訂正をする。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項2に「(d2)アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンよりなる群から選ばれる少なくとも1種」と記載されているのを、「(d2)エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種」と訂正する。 請求項2を引用する請求項4ないし6についても同様の訂正をする。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項2に「とを含有し、」と記載されているのを、「とを含有し、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合が全溶媒中80質量%以上であり、」と訂正する。 請求項2を引用する請求項4ないし6についても同様の訂正をする。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項2に「且つ溶媒(d2)の含有割合が」と記載されているのを、「着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータが、以下の(x)以上(y)以下であり、且つ溶媒(d2)の含有割合が」と訂正する。また特許請求範囲の請求項2に「着色組成物。」と記載されているのを、 「着色組成物。 (x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ (y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8))]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」と訂正する。 請求項2を引用する請求項4ないし6についても同様の訂正をする。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1?3のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1又は2」と訂正する。 サ 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれか1項」と記載されているのを、「請求項1、2及び4のいずれか1項」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項 (1) 訂正事項1について ア 訂正前の請求項1は、溶媒(d1)について、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種」と特定している。 これに対して、訂正事項1は、訂正後の請求項1について、「の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒」との記載により、訂正後の請求項1に係る発明における溶媒(d1)の組み合わせを限定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正後の請求項4?6についても、訂正後の請求項1に係る発明と同様に、溶媒(d1)の組み合わせを限定するものであるため、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項1は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づくものである。すなわち、段落【0038】には、「溶媒(d1)としては、沸点(成膜性)を考慮すると、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独で使用するか、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを混合して使用することが好ましい」と記載されており、溶媒(d1)としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒が好ましいと記載されているも同然である。さらに実施例においても、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む着色組成物を得ている(表1:実施例3?7、10、17及び18)から、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項1は、「(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種」という発明特定事項の範囲を更に限定するものであり、請求項1の記載について、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外の訂正前の請求項4?6の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項4?6に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、訂正前の請求項4?6との関係でも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 エ よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正事項2は、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコ-ルモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンを削除するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正後の請求項4?6についても、訂正後の請求項1に係る発明と同様に、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンを削除するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 上記アに記載したとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンを削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項1に択一的に記載されていた、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンを削除したものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 エ よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (3) 訂正事項3について ア 訂正事項3は、訂正前の請求項1の溶媒(d1)及び溶媒(d2)について、訂正前では特定していなかった合計含有割合を「全溶媒中80質量%以上」に限定するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正事項3は、訂正後の請求項4?6についても、訂正後の請求項1に係る発明と同様に、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合を「全溶媒中80質量%以上」に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項3は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づくものである。すなわち、段落【0045】には、「本発明において、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合は、全溶媒中、好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である」と記載されているから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項1の溶媒(d1)及び溶媒(d2)について、訂正前では特定していなかった合計含有割合を「全溶媒中80質量%以上」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項3は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項4?6の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項4?6に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、訂正前の請求項4?6との関係でも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 エ よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (4) 訂正事項4について ア 訂正事項4は、訂正前の請求項1の溶媒について、訂正前では特定していなかった、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータを、「(x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」以上「(y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」以下に限定するものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に訂正後の請求項4?6についても、訂正後の請求項1に係る発明と同様に、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータを(x)以上(y)以下に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項4は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明における具体的な実施例で示されている着色組成物における全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータの範囲(最低の値である実施例6から最高の値である実施例18まで)とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項である溶媒について、訂正前では特定していなかった、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータを、「(x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136))]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」以上「(y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8))質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」以下に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項4は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項4?6の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項4?6に係る発明のカテコリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、訂正前の請求項4?6との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 エ よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (5) 訂正事項5について ア 訂正前の請求項2は、溶媒(d1)について、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種」と特定している。 これに対して、訂正事項5は、訂正後の請求項2について、「の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒」との記載により、訂正後の請求項2に係る発明における溶媒(d1)の組み合わせを限定するものである。すなわち、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正後の請求項4?6についても、訂正後の請求項2に係る発明と同様に、溶媒(d1)の組み合わせを限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項5は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づくものである。すなわち、段落【0038】には、「溶媒(d1)としては、沸点(成膜性)を考慮すると、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独で使用するか、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを混合して使用することが好ましい」と記載されており、溶媒(d1)としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒が好ましいと記載されているも同然である。さらに実施例においても、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む着色組成物を得ている(表1:実施例3?7、10、17及び18)から、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項5は、「(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種」という発明特定事項の範囲を更に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項5は、訂正前の請求項2の記載以外に訂正前の請求項4?6の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項4?6に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項5は、訂正前の請求項4?6との関係でも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 エ よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (6) 訂正事項6について ア 訂正事項6は、訂正前の請求項2において択一的に記載されていた、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンを削除するものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正後の請求項4?6についても、訂正後の請求項2に係る発明と同様に、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセデート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンを削除するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 上記アに記載したとおり、訂正事項6は、訂正前の請求項2において択一的に記載されていた、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンを削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項6は、訂正前の請求項2において択一的に記載されていた、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドンを削除したものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項6は、訂正前の請求項2の記載以外に、訂正前の請求項4?6の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項4?6に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項6は、訂正前の請求項4?6との関係でも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 エ よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (7) 訂正事項7について ア 訂正事項7は、訂正前の請求項2の溶媒(d1)及び溶媒(d2)について、訂正前では特定していなかった合計含有割合を「全溶媒中80質量%以上」に限定するものである。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に、訂正事項7は、訂正後の請求項4?6についても、訂正後の請求項2に係る発明と同様に、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合を「全溶媒中80質量%以上」に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項7は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づくものである。すなわち、段落【0045】には、「本発明において、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合は、全溶媒中、好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である」と記載されているから、当該訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項7は、訂正前の請求項2の溶媒(d1)及び溶媒(d2)について、訂正前では特定していなかった合計含有割合を「全溶媒中80質量%以上」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項7は、訂正前の請求項2の記載以外に訂正前の請求項4?6の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項4?6に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項7は、訂正前の請求項4?6との関係でも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 エ よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (8) 訂正事項8について ア 訂正事項8は、訂正前の請求項2の溶媒について、訂正前では特定していなかった、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータを、「(x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」以上「(y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」以下に限定するものである。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同様に訂正後の請求項4?6についても、訂正後の請求項2に係る発明と同様に、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータを(x)以上(y)以下に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項8は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明における具体的な実施例で示されている着色組成物における全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータの範囲(最低の値である実施例6から最高の値である実施例18まで)とするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項8は、訂正前の請求項2の溶媒について、訂正前では特定していなかった、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータを、「(x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136))]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」以上「(y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8))質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」以下に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 また、訂正事項8は、訂正前の請求項2の記載以外に、訂正前の請求項4?6の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項4?6に係る発明のカテコリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項8は、訂正前の請求項4?6との関係でも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。 エ よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (9) 訂正事項9について ア 訂正事項9は、請求項3を削除するというものであるから、当該訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 上記アから明らかなように訂正事項9は、請求項3を削除するというものであるから、当該訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項9は、請求項3を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 エ よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (10) 訂正事項10について ア 訂正前の請求項4に係る発明は、「請求項1?3のいずれか1項」を引用している。 これに対して、訂正後の請求項4は、「請求項1又は2」との記載より、請求項3の引用を削除するものである。すなわち、訂正事項10は、引用する請求項を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項10は、引用する請求項を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項10は、引用する請求項を減少させるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法126条第6項に適合するものである。 エ よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (11) 訂正事項11について ア 訂正前の請求項5に係る発明は、「請求項1?4のいずれか1項」を引用している。 これに対して、訂正後の請求項5は、「請求項1、2及び4のいずれか1項」との記載より、請求項3の引用を削除するものである。すなわち、訂正事項11は、引用する請求項を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項11は、引用する請求項を減少させるものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 ウ 上記アに記載したとおり、訂正事項11は、引用する請求項を減少させるものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法126条第6項に適合するものである。 エ よって、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号を目的とし、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。 (12) 一群の請求項について 訂正前の請求項3?6は、それぞれ訂正前の請求項1又は2を引用するものであるから、訂正前の請求項1?6は一群の請求項である。したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされている。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-6]について、訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、平成29年6月12日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下に記載のとおりのものである。 「【請求項1】 (A)着色剤、(B)バインダー樹脂、(C)多官能性単量体、並びに(D)溶媒を含有する着色組成物であって、(A)着色剤として臭素化塩素化亜鉛フタロシアニンを含有し、(D)溶媒として(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒と、(d2)エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有し、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合が全溶媒中80質量%以上であり、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータが、以下の(x)以上(y)以下であり、且つ溶媒(d2)の含有割合が全溶媒中5?60質量%であることを特徴とする着色組成物。 (x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ (y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ 【請求項2】 (A)着色剤、(B)バインダー樹脂、(C)多官能性単量体、並びに(D)溶媒を含有する着色組成物であって、(A)着色剤としてC.I.ピグメントグリーン58を含有し、(D)溶媒として(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒と、(d2)エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有し、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合が全溶媒中80質量%以上であり、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータを(x)以上(y)以下であり、且つ溶媒(d2)の含有割合が全溶媒中5?60質量%であることを特徴とする着色組成物。 (x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ (y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ 【請求項3】(削除) 【請求項4】 (E)光重合開始剤を更に含有する、請求項1又は2に記載の着色組成物。 【請求項5】 請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された緑色画素を備えてなるカラーフィルタ。 【請求項6】 請求項5に記載のカラーフィルタを具備するカラー液晶表示素子。」 第4 取消理由<決定の予告>の概要 平成29年4月14日付けで通知した取消理由<決定の予告>は、本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、発明の詳細な説明の記載を超えて特許を請求するものであって、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、それらの発明に係る特許は取り消すべきものであるというものである。 第5 取消理由<決定の予告>についての合議体の判断 当合議体は、以下述べるように、上記取消理由<決定の予告>には理由がないと判断する。 1 本件特許明細書の記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。下線については、当審において付与した。 (1) 「【0001】 ・・・ 【背景技術】 【0002】 テレビ、モニター等のカラー液晶表示素子には、高輝度化と色再現領域の拡大が求められており、そのためカラー液晶表示素子を構成するカラーフィルタについても、近年ますます高い光透過率と高い色純度を有するものが要求されている。 【0003】 緑色画素については、輝度が高く、しかも色再現領域が広いカラーフィルタを提供することができる材料として、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する顔料組成物が知られており注目されている(特許文献1および特許文献2)。しかしながら、該顔料を含有する顔料組成物を用いて形成された緑色画素には異物が発生しやすく、カラーフィルタの製品歩留まりが低下する大きな要因となっている。 以上のような背景から、カラーフィルタの量産に適する、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する緑色組成物の開発が強く求められている。」 (2) 「【0004】 ・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の課題は、カラーフィルタの量産に適する、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する着色組成物を提供することにある。 さらに、本発明の課題は、上記着色組成物用いて形成された緑色画素を備えてなるカラーフィルタ、及び当該カラーフィルタを具備するカラー液晶表示素子を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 斯かる実情に鑑み、本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、意外にも、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンを、特定の溶媒と組み合わせて含有せしめることで上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した。」 (3) 「【0036】 本発明の着色組成物において、(D)溶媒は、(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、「溶媒(d1)」ということがある。)と、(d2)3-エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータが高い溶媒(以下、「溶媒(d2)」ということがある。)とを含有し、且つ溶媒(d2)の含有割合が全溶媒中5?60質量%であることを特徴とする。 【0037】 溶媒(d2)の含有割合は、全溶媒中、好ましくは6?55質量%であり、特に好ましくは7?50質量%である。溶媒(d2)の含有量が5質量%未満であると、所望の効果が得られないおそれがあり、一方60質量%を超えると、成膜性が悪化したり着色組成物の保存安定性が悪化したりするおそれがある。 【0038】 一方、溶媒(d1)の含有割合は、全溶媒中、好ましくは45?94質量%であり、特に好ましくは50?93質量%である。また、溶媒(d1)としては、沸点(成膜性)を考慮すると、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独で使用するか、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを混合して使用することが好ましい。 【0039】 溶媒(d1)は、上記分散剤やバインダー樹脂と適度な親和性を有するため、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンを分散した着色組成物中に、該溶媒を含有せしめることにより、保存安定性の良好な着色組成物を得ることができる。」 (4) 「【0040】 実際、特開2007-284589号公報、特開2009-52010号公報等の実施例にも開示されているように、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンを含有する従来の着色組成物においては、溶媒(d1)が使用されてきた。しかしながら、かかる従来の組成物では、異物の発生を抑制することが困難であった。本発明者らは、異物が発生する要因をハロゲン化亜鉛フタロシアニンの凝集と考え、該顔料に対する溶媒の親和性に着目し、本発明を完成するに至った。即ち、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンに対する親和性が溶媒(d1)より高い溶媒、換言すれば、溶媒(d1)の中で最も溶解度パラメータ(SP値)が高い3-エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータが高い溶媒を含有せしめることが、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンの凝集による異物の発生を抑制する上で重要であることを見出した。 【0041】 ここで、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンの溶解度パラメータは、置換するハロゲンの種類や個数により変動するため、一義的に定めることはできないが、竹原佑爾、浅田勉、谷常保、山本晃夫、田原幸夫、末沢正明、色材、47,412(1974)、C.M.Hansen,J.Paint.Technol.,39,505(1967)に開示されているフタロシアニンや塩素化フタロシアニンの溶解度パラメータ値から、11前後であると推定される。これに対し、溶媒(d1)の溶解度パラメータは、Fedorsの計算方法によれば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(8.70)、3-エトキシプロピオン酸エチル(8.88)、3-メトキシブチルアセテート(8.71)である。」 (5) 「【0042】 溶媒(d2)としては、3-エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータが高い限り特に限定されるものではないが、例えば、アセトン(9.07)、シクロヘキサノン(9.80)、メタノール(13.77)、エタノール(12.58)、イソプロパノール(10.24)、エチレングリコールモノメチルエーテル(11.98)、エチレングリコールモノエチルエーテル(11.47)、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(11.10)、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(10.81)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(10.19)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(9.98)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(9.82)、3-メトキシプロピオン酸メチル(8.96)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(9.69)、エチレングリコール(17.83)、ジアセトンアルコール(10.85)、乳酸エチル(11.03)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(9.01)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(8.94)、N,N-ジメチルホルムアミド(10.63)、N,N-ジメチルアセトアミド(10.60)、N-メチルピロリドン(11.52)等を挙げることができる。カッコ内の数値は、Fedorsの計算方法により求めた各溶媒の溶解度パラメータである。 【0043】 これらの溶媒(d2)のうち、着色組成物の保存安定性及び所望の効果を得る点から、溶解度パラメータが13以下の溶媒が好ましい。さらに溶媒の沸点(成膜性)を考慮すると、溶媒(d2)は、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。」 (6) 「【0044】 本発明においては、溶媒(d1)及び溶媒(d2)と共に、他の溶媒を使用することができる。他の溶媒としては、例えば、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の公知の溶媒を挙げることができる。 本発明において、これらの他の溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。 【0045】 本発明において、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合は、全溶媒中、好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合が少なすぎると、所望の効果が得られないおそれがある。」 (7) 「【0063】 ・・・ 【実施例】 【0064】 以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。なお、実施例1、2、8及び11?16は参考例である。 【0065】 顔料分散液の調製 調製例1 (A)着色剤として臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン(DIC社製)とC.I.ピグメントイエロー150との60/40(質量比)混合物40質量部、分散剤としてDisperbyk-2001(ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.0質量%)24質量部、及び(D)溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート136質量部、からなる混合液を、ビーズミルにより12時間混合・分散して、顔料分散液(A-1)を調製した。 【0066】 調製例2 (A)着色剤として臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン(DIC社製)とC.I.ピグメントイエロー150との60/40(質量比)混合物40質量部、分散剤としてBYK-LPN21116(ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度40.0質量%)27質量部、及び(D)溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート133質量部からなる混合液を、ビーズミルにより12時間混合・分散して、顔料分散液(A-2)を調製した。 【0067】 調製例3 (A)着色剤として臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン(DIC社製)とC.I.ピグメントイエロー150との60/40(質量比)混合物40質量部、分散剤としてBYK-LPN21324(ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度40.0質量%)27質量部、及び(D)溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート133質量部からなる混合液を、ビーズミルにより12時間混合・分散して、顔料分散液(A-3)を調製した。 【0068】 調製例4 (A)着色剤として臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン(DIC社製)とC.I.ピグメントイエロー138との40/60(質量比)混合物40質量部、分散剤としてDisperbyk-2001(ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.0質量%)24質量部、及び(D)溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート136質量部からなる混合液を、ビーズミルにより12時間混合・分散して、顔料分散液(A-4)を調製した。 【0069】 調製例5 (A)着色剤として臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン(DIC社製)、C.I.ピグメントグリーン36及びC.I.ピグメントイエロー150の19/41/40(質量比)混合物40質量部、分散剤としてDisperbyk-2001(ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.0質量%)24質量部、並びに(D)溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート136質量部からなる混合液を、ビーズミルにより12時間混合・分散して、顔料分散液(A-5)を調製した。 【0070】 (B)バインダー樹脂の合成 合成例1 冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を仕込み、引き続きメタクリル酸15質量部、N-フェニルマレイミド20質量部、ベンジルメタクリレート55質量部、スチレン10質量部及び分子量調節剤としてペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(堺化学工業(株)製 商品名:PEMPII-20P)2質量部を仕込んで、窒素置換した。その後ゆるやかに撹拌して、反応溶液の温度を80℃に上昇させ、この温度を5時間保持して重合することにより、バインダー 樹脂溶液(固形分濃度=33.3質量%)を得た。得られたバインダー樹脂は、Mw=25,000、Mn=12,000であった。このバインダー樹脂溶液を『樹脂溶液(B-1)』とする。 【0071】 実施例1 感放射線性組成物の調製 顔料分散液(A-1)200質量部、(B)バインダー樹脂として樹脂溶液(B-1)200質量部、(C)多官能性単量体としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート60質量部、(E)光重合開始剤として2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名IRGACURE 369)10質量部、並びに(D)溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート561質量部及びシクロヘキサノン94質量部を混合し、液状組成物(F-1)を調製した。この時、溶媒(d2)に該当するシクロヘキサノンの含有割合は、全溶剤中10質量%に相当する量になるよう調整した。 液状組成物(F-1)について、下記の手順にしたがって、評価を行った。評価結果を表1に示す。 【0072】 異物の評価 液状組成物(F-1)を、表面にナトリウムイオンの溶出を防止するSiO_(2)膜が形成されたソーダガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布したのち、90℃のホットプレートで100秒間プレベークを行って、膜厚2.5μmの塗膜を形成した。 次いで、この基板を室温に冷却したのち、高圧水銀ランプを用い、フォトマスクを介して塗膜に365nm、405nmおよび436nmの各波長を含む放射線を400J/m^(2)の露光量で露光した。その後、これらの基板に対して23℃の0.04質量%水酸化カリウム水溶液からなる現像液を現像圧1kgf/cm^(2)(ノズル径1mm)で吐出することにより、1分間シャワー現像を行った。その後、この基板を超純水で洗浄し、風乾した後、更に220℃のクリーンオーブン内で30分間ポストベークを行って、基板上に緑色のストライプ状画素パターンが配列された画素アレイを形成した。 【0073】 得られた画素パターンを光学顕微鏡にて観察し、10μm以上の大きさの異物が観測されなかった場合を『○』、10μm以上の大きさの異物が観測された場合を『×』として評価した。評価結果を表1に示す。 【0074】 次いで、得られた画素パターン上部の表面粗度(パターン表面の平滑性)を、デジタル・インスツルメンツ社製原子間力顕微鏡を用いて測定した。評価結果を表1に示す。表面粗度が50Å以下であれば、液晶の配向不良等を生じるおそれは低い。評価結果を表1に示す。 【0075】 保存安定性の評価 着色組成物(F-1)の調製直後の粘度を、E型粘度計(東京計器製)を用いて測定した。また、着色組成物(F-1)を遮光ガラス容器に充填し、密閉状態で23℃にて14日間静置した後、E型粘度計(東京計器製)を用いて再度粘度を測定した。そして、調製直後の粘度に対する14日間保存後の粘度の増加率を算出し、増加率が5%未満の場合を『A』、5%以上10%未満の場合を『B』、10%以上の場合を『C』として評価した。評価結果を表1に示す。 【0076】 実施例2?18および比較例1?5 実施例1において、構成成分の種類と量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、液状組成物(F-2)?(F-23)を調製した。 次いで、液状組成物(F-1)に代えてそれぞれ液状組成物(F-2)?(F-23) を用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示す。 【0077】 【表1】 【0078】 表1において、各成分は下記のとおりである。 C-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名M-402、東亞合成株式会社製) C-2:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとこはく酸とのモノエステル化物、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート並びにジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(商品名TO-1382、東亞合成株式会社製) D-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶媒(d1)) D-2:3-エトキシプロピオン酸エチル(溶媒(d1)) D-3:3-メトキシブチルアセテート(溶媒(d1)) D-4:シクロヘキサノン(溶媒(d2)) D-5:プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶媒(d2)) D-6:プロピレングリコールモノエチルエーテル(溶媒(d2)) D-7:プロピレングリコールモノプロピルエーテル(溶媒(d2)) D-8:3-メトキシプロピオン酸メチル(溶媒(d2)) D-9:エチレングリコールモノブチルエーテル(溶媒(d2)) D-10:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(溶媒(d2)) D-11:エチレングリコール(溶媒(d2)) E-1:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製) E-2:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(商品名IRGACURE OX02、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製) なお、表1において『溶媒(d2)の含有割合』とは、溶媒(d2)の全溶媒中の含有割合である。 【0079】 表1から明らかなように、溶媒(d2)を5?60質量%含有する本発明の着色組成物を用いて形成された画素においては、異物が観測されず、表面祖度も50Å以下と良好であった。これに対し、溶媒(d2)の含有割合が5質量%未満では、異物が観測され表面粗度も悪化することがわかる(比較例1?4)。一方、溶媒(d2)の含有割合が60質量%を超えると、着色組成物の保存安定性が著しく悪化することがわかる(比較例5)。」 2 本件請求項1の記載についてのサポート要件の判断 (1) 上記記載から、本件発明1は、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する顔料組成物を用いて形成された緑色画素において異物が発生しやすく、カラーフィルタの製品歩留まりが低下するという問題点を解消したカラーフィルタの量産に適する、ポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を含有する緑色組成物を得ることを発明が解決しようとする課題としており(上記1(1)及び(2))、「本件特許の発明者らが、異物が発生する要因をハロゲン化亜鉛フタロシアニンの凝集と考え、該顔料に対する溶媒の親和性に着目し、本発明を完成するに至った。即ち、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンに対する親和性が溶媒(d1)より高い溶媒、換言すれば、溶媒(d1)の中で最も溶解度パラメータ(SP値)が高い3-エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータが高い溶媒を含有せしめることが、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンの凝集による異物の発生を抑制する上で重要であることを見出した」(上記1(4))ことによりなされたものであって、「ハロゲン化亜鉛フタロシアニンを、特定の溶媒と組み合わせて含有せしめることで上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成した」(上記1(2))とされていて、「本発明の着色組成物において、(D)溶媒は、(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、「溶媒(d1)」ということがある。)と、(d2)3-エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータが高い溶媒(以下、「溶媒(d2)」ということがある。)とを含有し、且つ溶媒(d2)の含有割合が全溶媒中5?60質量%であることを特徴とする」(上記1(3))との記載がある。 そして、組み合わされる溶媒(d2)として、 「【0042】 溶媒(d2)としては、3-エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータが高い限り特に限定されるものではないが、例えば、アセトン(9.07)、シクロヘキサノン(9.80)、メタノール(13.77)、エタノール(12.58)、イソプロパノール(10.24)、エチレングリコールモノメチルエーテル(11.98)、エチレングリコールモノエチルエーテル(11.47)、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(11.10)、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(10.81)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(10.19)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(9.98)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(9.82)、3-メトキシプロピオン酸メチル(8.96)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(9.69)、エチレングリコール(17.83)、ジアセトンアルコール(10.85)、乳酸エチル(11.03)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(9.01)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(8.94)、N,N-ジメチルホルムアミド(10.63)、N,N-ジメチルアセトアミド(10.60)、N-メチルピロリドン(11.52)等を挙げることができる。カッコ内の数値は、Fedorsの計算方法により求めた各溶媒の溶解度パラメータである。 【0043】 これらの溶媒(d2)のうち、着色組成物の保存安定性及び所望の効果を得る点から、溶解度パラメータが13以下の溶媒が好ましい。さらに溶媒の沸点(成膜性)を考慮すると、溶媒(d2)は、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。」(上記1(5))と記載されている。 さらに、具体的な実施例、参考例、比較例として、実施例1?18、比較例1?5が記載されていている。 上記本件特許明細書においては、溶媒(d1)の中で最も溶解度パラメータ(SP値)が高い3-エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータが高い溶媒を含有せしめることが、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンの凝集による異物の発生を抑制する上で重要であることを見出したことによってなされたとされていて、溶媒d2として、3-エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータが高い溶媒であって、段落【0042】において具体的に例示されている溶媒を利用することで、課題が解決できるとされているが、溶媒d1、d2の含有量に関して、「溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合は、全溶媒中、好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である」(上記1(6))とされていて、溶媒d1,d2以外の溶媒が含まれ得ることに加え、着色組成物には、着色剤に配合される溶媒、バインダーに配合される溶媒が存在している。 そして、着色組成物中に複数の溶媒が含まれる場合、ある特定の溶媒の濃度を局所的に偏った状態とする駆動力の存在は想定できず、複数種の溶媒が均一に混和した状態で存在するものといえるから、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンの凝集を当該ハロゲン化亜鉛フタロシアニンの溶解度パラメータ(11前後)と溶媒との間の溶解度パラメータを調整することで課題を解決する本件において、着色剤組成物における溶媒全体の溶解度パラメータを考慮することなく、溶媒d1及びd2の特定のみで課題が解決できるものではないと当業者は理解するものといえる。 そうすると、当業者は、本件特許明細書の上記一般記載からは、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンを利用した着色剤組成物における溶媒として、段落【0036】に記載の溶媒d1と、溶媒d2として3-エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータが高い溶媒であって、段落【0042】において具体的に例示されている溶媒を、段落d1及びd2の含有量を段落【0045】、全溶媒中の溶媒d2の含有量を段落【0036】の範囲で利用することで、発明が解決しようとする課題が解決できるとはただちには認識できない。 (2) 一方、具体的な実施例においては、作られたカラーフィルターにおいて10μm以上の異物が観測されず、表面粗度が50μm以下であって、保存安定性が良好な組成物が得られているので、これを、上記本件特許明細書の記載に即して検討する。 上記(1)での検討のとおり、実施例、参考例、比較例においても、着色組成物中の溶媒d1とd2以外のバインダー樹脂、着色剤にも溶媒が相当量包含されていることを認識する当業者は、溶媒として、3?エトキシプロピオン酸エチルより溶解度パラメータ(SP値)が高い溶媒(d2)を含有せしめることで、着色組成物中に含まれる全ての溶剤を併せた溶媒全体の溶解度パラメータ(SP値)を溶媒d1よりも高い一定範囲に調整し、もって、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンと溶媒全体との親和性を高めた結果、上述の効果が奏されているものと理解する。 そして、本件特許明細書の実施例、参考例、比較例について溶媒全体の溶解度パラメータを算出すると、以下の表のように計算できる。 ここで、実施例18及び実施例6についての溶媒全体の溶解度パラメータの具体的な計算方法について確認しておく。 実施例18について 本件特許明細書の表1には、実施例18に配合されている具体的な成分が、以下のとおり記載されている。 顔料分散液A-4が350、バインダー樹脂B-1が200、多官能性単量体C-1が40、C-2が40、光重合開始剤E-1が30、溶媒D-1(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)が225、溶媒D-3(3-メトキシブチルアセテート)が1062、溶媒D-10(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)が89である。 顔料分散液A-4についての段落【0068】の記載及び「Disperbyk-2001(ビックケミ-(BK)社製」に含有される溶剤はメトキシプロピルアセテート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)/ブチルグリコール(エチレングリコールモノブチルエーテル)/メトキシプロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)が2/2/1で配合されていることは周知であるから、顔料分散液A-4の200部(136+24+40)中に溶剤成分として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート136部と、Disperbyk-2001(ビックケミ-(BYK)社製、固形分濃度45.0%)中のメトキシプロピルアセテート(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)が24×(100-45.0)/100×2/(2+2+1)部、ブチルグリコール(エチレングリコールモノブチルエーテル)が24×(100-45.0)/100×2/(2+2+1)部、メトキシプロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)が24×(100-45.0)/100×1/(2+2+1)部となる。そうすると、実施例18における顔料分散液A-4は、350部であるから、実施例18のA-4中の溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは、350/200×136+350/200×24×(100-45.0)/100×2/(2+2+1)部、ブチルグリコール(エチレングリコールモノブチルエーテル)は、350/200×24×(100-45.0)/100×2/(2+2+1)部、メトキシプロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)は、350/200×24×(100-45.0)/100×1/(2+2+1)部である。 バインダー樹脂は、段落【0070】の記載から固形分濃度33.3%であるから、バインダー樹脂200部に含有されるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは、200×(100-33.3)/100部である。 これらを合わせて記載すると、実施例18に含まれる溶媒成分は、 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは、225+350×133/200+350/200×24×(100-45.0)/100×2/(2+2+1)+200×(100-33.3)/100、 ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートは89、 3-メトキシブチルアセテートは1062、 ブチルグリコール(エチレングリコールモノブチルエーテル)は、350/200×24×(100-45.0)/100×2/(2+2+1)、 メトキシプロパノール(プロピレングリコールモノメチルエーテル)は、350/200×24×(100-45.0)/100×1/(2+2+1) となり、本件請求項1及び本件請求項2で特定されている(x)である溶媒の配合量となっている。 実施例6について 同じく、本件特許明細書の表1には、実施例6に配合されている具体的な成分が、以下のとおり記載されている。 顔料分散液A-2が200、バインダー樹脂B-1が200、多官能性単量体C-1が30、C-2が30、光重合開始剤E-1が10、溶媒D-1(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)が186、溶媒D-2(3-エトキシプロピオン酸エチル)が94、溶媒D-9(エチレングリコールモノブチルエーテル)が375である。 顔料分散液A-2についての段落【0066】の記載及び「BYK-LPN21116(ビックケミ-(BK)社製」に含有される溶剤はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/エチレングリコールモノブチルエーテル/エタノールが、それぞれ29.2%、30.0%、0.8%で配合されていることは周知であるから、顔料分散液200部(133+27+40)中の溶剤成分として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート133部と、BYK-LPN21116(ビックケミ-(BYK)社製、固形分濃度40.0%)中のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが27×(100-40.0)/100×29.2/(29.2+30.0+0.8)部、エチレングリコールモノブチルエーテルが27×(100-40.0)/100×30/(29.2+30.0+0.8)部、エタノールが27×(100-40.0)/100×0.8/(29.2+30.0+0.8)部となる。そうすると、実施例6における顔料分散液A-2は、200部であるから、実施例6のA-2中の溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは、133+27×(100-40.0)/100×29.2/(29.2+30.0+0.8)部、エチレングリコールモノブチルエーテルは、27×(100-40.0)/100×30/(29.2+30.0+0.8)部、エタノールが27×(100-40.0)/100×0.8/(29.2+30.0+0.8)部である。 バインダー樹脂は、段落【0070】の記載から固形分濃度33.3%であるから、バインダー樹脂200部に含有されるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは、200×(100-33.3)/100部である。 これらを合わせて記載すると、実施例6に含まれる溶媒成分は、 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは、186+133+27×(100-40.0)/100×29.2/(29.2+30.0+0.8)+200×(100-33.3)/100、 3-エトキシプロピオン酸エチルは94、 エチレングリコールモノブチルエーテルは375+27×(100-40.0)/100×30/(29.2+30.0+0.8)、 エタノールは、27×(100-40.0)/100×0.8/(29.2+30.0+0.8) となり、本件請求項1及び本件請求項2で特定されている(y)である溶媒の配合量となっている。 そして、それぞれの溶媒成分の溶解度パラメータは、本件特許明細書の段落【0042】に記載されているから、加重平均をとることによって溶媒全体の溶解度パラメータを算出できる。 これらの結果から、実施例での溶媒d1及びd2を共に使用し、着色組成物中具体的に含まれている他の溶媒を全て合わせた溶媒全体の溶解度パラメータ(SP値)が、最小である実施例18(おそよ8.7)から最大である実施例6(およそ9.6)の範囲、すなわち、「着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータが、(x)以上(y)以下」であれば、当業者が発明の課題を解決できると認識できる。 そうすると、本件訂正により訂正された本件請求項1の記載は、サポート要件を満足している。 3 本件請求項2の記載についてのサポート要件の判断 本件請求項2は、独立請求項であるが、本件請求項1の記載内容と対比すると、本件請求項1が着色剤成分を「臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン」と特定しているのに対して、本件請求項2においては、「C.I.ピグメントグリーン58」と特定している点でのみ相違するものであるが、臭素化塩素化亜鉛フタロシアニンは、カラーインデックス(C.I.)において、ピグメントグリーン58に分類されるものである。 そうすると、上記2においての検討のとおり、本件訂正により訂正された本件請求項2の記載は、サポート要件を満足している。 4 本件請求項4ないし6の記載についてのサポート要件の判断 本件請求項4は、本件請求項1又は本件請求項2に記載の着色剤組成物について、「(E)光重合開始剤を更に含有する」ことをさらに限定するものであるから、上記2での検討のとおり、本件訂正により訂正された本件請求項4の記載は、サポート要件を満足している。 本件請求項5は、「請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された緑色画素を備えてなるカラーフィルタ」であって、上記1(2)にカラーフィルタとすることは明記されていることも踏まえると、上記2での検討のとおり、本件訂正により訂正された本件請求項5の記載は、サポート要件を満足している。 本件請求項6は、「請求項5に記載のカラーフィルタを具備するカラー液晶表示素子。」であって、上記1(2)にカラーフォルタを具備するカラー液晶表示素子についての記載があることを踏まえると、上記2での検討のとおり、本件訂正により訂正された本件請求項5の記載は、サポート要件を満足している。 4 その他の取消理由について (1) 異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明2、4ないし6について、先願(特願2008-35658号)に記載された発明であって、特許法第29条の2に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものである旨主張しているが、先願には、「(D)溶媒として(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒と、(d2)エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有し、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合が全溶媒中80質量%以上であり、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータを(x)以上(y)以下であり、且つ溶媒(d2)の含有割合が全溶媒中5?60質量%であることを特徴とする着色組成物。 (x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ (y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」である溶媒系は記載されていないから、異議申立人が提示した証拠からは、本件特許発明2、4ないし6について、特許法第29条の2の取消理由があるということはできない。 (2) 異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明1ないし6は、甲第2号証(特開2009-53652号公報)及び甲第3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、取り消されるべきものである旨主張する。 しかし、甲第2号証及び甲第3号証、並びに、その他の異議申立人が提出した甲各号証をみても、着色剤として「臭素化塩素化亜鉛フタロシアニン」又は「C.I.ピグメントグリーン58」を含有する着色組成物において、「(D)溶媒として(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒と、(d2)エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有し、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合が全溶媒中80質量%以上であり、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータを(x)以上(y)以下であり、且つ溶媒(d2)の含有割合が全溶媒中5?60質量%であることを特徴とする着色組成物。 (x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ (y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ」である溶媒系は記載されていないし、当該溶媒を選択することにより、保存安定性が向上するとともに、得られた画素パターンの表面粗度が50Å以下となり、10μm以上の異物も観測されないとの効果を奏するという効果は、当業者においても予測し得ない格別の効果といえるから、異議申立人が提示した証拠からは、本件発明1、2及び4ないし6について、特許法第29条第2項の取消理由があるということはできない。 第6 請求項3に係る特許に対しての特許異議の申立てについて 本件異議申立は、上記第1で示したとおり、本件の請求項1ないし6に係る特許に対するものであるところ、上記第2で示した適法にされた訂正により、本件の請求項3に係る記載事項が削除されたことにより、申立ての対象を欠く不適法なものとなった。 そして、当該不適法とされる点は、その補正ができないものであるから、本件の請求項3に係る特許に対する特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、2及び4ないし6に係る特許は、上記第4に記載の取消理由<決定の予告>によっては、取り消すことはできない。 また、特許異議申立書に記載のその他の取消理由によっては、本件特許の請求項1、2及び4ないし6に係る特許を取り消すことはできない。 加えて、他に本件特許の請求項1、2及び4ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件訂正請求により、本件特許の請求項3は削除されたから、請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)着色剤、(B)バインダー樹脂、(C)多官能性単量体、並びに(D)溶媒を含有する着色組成物であって、(A)着色剤として臭素化塩素化亜鉛フタロシアニンを含有し、(D)溶媒として(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒と、(d2)エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有し、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合が全溶媒中80質量%以上であり、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータが、以下の(x)以上(y)以下であり、且つ溶媒(d2)の含有割合が全溶媒中5?60質量%であることを特徴とする着色組成物。 (x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ (y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+「27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ 【請求項2】 (A)着色剤、(B)バインダー樹脂、(C)多官能性単量体、並びに(D)溶媒を含有する着色組成物であって、(A)着色剤としてC.I.ピグメントグリーン58を含有し、(D)溶媒として(d1)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル及び3-メトキシブチルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒であり、且つプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを少なくとも含む溶媒と、(d2)エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3-メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートよりなる群から選ばれる少なくとも1種とを含有し、溶媒(d1)及び溶媒(d2)の合計含有割合が全溶媒中80質量%以上であり、着色組成物に含まれる全溶媒の溶媒全体の溶解度パラメータが、以下の(x)以上(y)以下であり、且つ溶媒(d2)の含有割合が全溶媒中5?60質量%であることを特徴とする着色組成物。 (x)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:225+[350×{136/(40+24+136)}]+[350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-メトキシブチルアセテート:1062質量部と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート:89質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{2/(2+2+1)}質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル:350×{24/(40+24+136)}×{(100-45.0)/100}×{1/(2+2+1)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ (y)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:186+133+[27×{(100-40.0)/100}×{29.2/(29.2+30+0.8)}]+[200×{(100-33.3)/100}]質量部と、3-エトキシプロピオン酸エチル:94質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル:375+[27×{(100-40.0)/100}×{30/(29.2+30+0.8)}]質量部と、エタノール:27×{(100-40.0)/100}×{0.8/(29.2+30+0.8)}質量部とからなる溶媒の溶解度パラメータ 【請求項3】(削除) 【請求項4】 (E)光重合開始剤を更に含有する、請求項1又は2に記載の着色組成物。 【請求項5】 請求項1、2及び4のいずれか1項に記載の着色組成物を用いて形成された緑色画素を備えてなるカラーフィルタ。 【請求項6】 請求項5に記載のカラーフィルタを具備するカラー液晶表示素子。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-09-07 |
出願番号 | 特願2014-19913(P2014-19913) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C08F)
P 1 651・ 537- YAA (C08F) P 1 651・ 161- YAA (C08F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 久保田 英樹 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
大島 祥吾 橋本 栄和 |
登録日 | 2016-01-22 |
登録番号 | 特許第5871019号(P5871019) |
権利者 | JSR株式会社 |
発明の名称 | 着色組成物、カラーフィルタ及びカラー液晶表示素子 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |