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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
管理番号 1334323
異議申立番号 異議2016-700625  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-19 
確定日 2017-09-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5846322号発明「無機粒子分散液、無機粒子含有組成物、塗膜、塗膜付きプラスチック基材、表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5846322号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。 特許第5846322号の請求項1、3ないし7に係る特許を維持する。 特許第5846322号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5846322号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成27年12月4日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人岩瀬みよ子より請求項1?7に対して特許異議の申立てがされ、平成28年10月12日付けで取消理由が通知され、同年12月12日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年1月30日に上記特許異議申立人から意見書が提出され、同年2月14日付けで訂正拒絶理由が通知されたものの、指定期間内に意見書の提出がなく、同年4月11日付け取消理由(決定の予告)が通知され、同年6月16日に意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたものである。なお、本件訂正請求に対して、上記特許異議申立人からは指定期間内に意見書の提出がなかった。
なお、平成28年12月12日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正請求の要旨は、特許第5846322号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、下記の訂正事項1?3からなる。
ア 訂正事項1
(ア)特許請求の範囲の請求項1(以下、項番に応じて、単に「請求項1」などということがある。以下、同じ。)に「無機粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、無機粒子の吸着水以外の水を添加することなく表面修飾され、」と記載されているのを「無機粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、無機粒子の吸着水以外の水を添加することなく表面修飾されており、」に訂正し、
(イ)請求項1に「水の含有量が1質量%以下であり、」と記載されているのを「カールフィッシャー水分計で滴定された水の含有量が0.7質量%以下であり、」に訂正し、
(ウ)請求項1に「前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の含有量が10質量%以上かつ50質量%以下である」と記載されているのを「前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の含有量が10質量%以上かつ50質量%以下であり、前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)は、1nm以上かつ45nm以下であり、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下である」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項3?7も同様に訂正する。)

イ 訂正事項2
請求項2を削除する。

ウ 訂正事項3
請求項3に「請求項1または2に記載の無機粒子分散液と、バインダー成分とを含有してなることを特徴とする無機粒子含有組成物。」と記載されているのを「請求項1に記載の無機粒子分散液と、バインダー成分とを含有してなることを特徴とする無機粒子含有組成物。」に訂正する。
(請求項3の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項について
ア 訂正事項1について
(ア)上記「(1)ア(ア)」に係る訂正について
該訂正は、「無機粒子」の表面修飾について、「表面修飾されており」と訂正することで、無機粒子が表面修飾されたものであることを明確にするものであって、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(イ)上記「(1)ア(イ)」に係る訂正について
該訂正は、「無機粒子分散液」の「水の含有量」について、本件特許明細書の【0019】の「本実施形態の無機粒子分散液の水の含有量は、1質量%以下であるが、0.7質量%以下であることが好ましく、・・・(略)・・・0.4質量%以下であることが以下であることがさらに好ましい。・・・(略)・・・なお、本実施形態における水の含有量は、カールフィッシャー水分計(型番:AQL-22320、平沼産業社製)で滴定された値を意味する。」という記載に基づき、「水の含有量」の測定について、「カールフィッシャー水分計で滴定された」ものであって、「水の含有量」について、「1質量%以下」を「0.7質量%以下」と限定するものであるから、該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)上記「(1)ア(ウ)」に係る訂正について
該訂正は、「無機粒子分散液中の無機粒子」について、訂正前の請求項2(「粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下であることを特徴とする請求項1に記載の無機粒子分散液。」)に基づき、「無機粒子分散液中の無機粒子の粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)は、1nm以上かつ45nm以下であり、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下である」ことを限定するものであるから、該訂正は、同ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

イ 訂正事項2について
該訂正は、請求項2の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 訂正事項3について
該訂正は、上記訂正事項2の請求項2の削除に伴い、引用する請求項数を減少するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 一群の請求項について
訂正前の請求項1?7は一群の請求項であるところ、訂正事項1?3に係る各訂正は、前記一群の請求項ごとに請求されたものであり、本件訂正請求は特許法120条の5第4項の規定に適合する。

オ まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?7について訂正することを認める。

3.本件特許発明
上記2で述べたように、本件訂正は認められるから、本件の請求項1、3?7に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3?7に記載された、次の事項によって特定されるとおりのものである(以下、項番号に対応して、「本件特許発明1」などといい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
無機粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、無機粒子の吸着水以外の水を添加することなく表面修飾されており、分散媒に分散されてなる無機粒子分散液であって、
塩基性物質を含み、
カールフィッシャー水分計で滴定された水の含有量が0.7質量%以下であり、前記無機粒子が酸化ジルコニウムであり、
前記加水分解性基を有する分散剤が、1分子内に1?3のアルコキシ基を有するシランカップリング剤であり、前記塩基性物質が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記無機粒子分散液中の前記塩基性物質の含有量が0.01質量%以上かつ1質量%以下であり、
前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の含有量が10質量%以上かつ50質量%以下であり、
前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)は、1nm以上かつ45nm以下であり、
粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下であることを特徴とする無機粒子分散液。
【請求項3】
請求項1に記載の無機粒子分散液と、バインダー成分とを含有してなることを特徴とする無機粒子含有組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の無機粒子含有組成物を用いて形成されたことを特徴とする塗膜。
【請求項5】
プラスチック基材の少なくとも一方の面に、請求項4に記載の塗膜が設けられたことを特徴とする塗膜付きプラスチック基材。
【請求項6】
500nm以上かつ750nm以下の範囲内における反射率の最大値と最小値の差が1%以下であることを特徴とする請求項5に記載の塗膜付きプラスチック基材。
【請求項7】
請求項4に記載の塗膜および請求項5または6に記載の塗膜付きプラスチック基材の少なくともいずれか一方を備えたことを特徴とする表示装置。」

4.特許異議の申立てについて
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1?7に係る特許に対して平成29年4月11日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
ア 請求項1に係る発明は、引用例1(国際公開第2013/031799号。甲第1号証。甲各号証は、以下、項番号に対応して、単に「甲1」などという。)に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)又は引用例2(特開2008-31309号公報。甲2)に記載された発明(以下、「引用発明2」という。)であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
請求項1に係る発明を直接的又は間接的に引用する請求項3?5、7に係る発明は、引用発明1であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
請求項2、6に係る発明及び請求項2に係る発明を直接的又は間接的に引用する本件請求項3?5、7に係る発明は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
イ 請求項1の記載は、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえ、請求項1に係る発明は明確でなく、請求項1及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?7の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)引用例の記載(当審注:下線は当審が付与した。改行の位置及び空白の数は、原文と必ずしも一致しない。)
ア 引用例1(国際公開第2013/031799号)
取消理由で通知した引用例1には、「無機酸化物透明分散液と透明複合体形成用樹脂組成物及び透明複合体並びに光学部材」(発明の名称)について、次の記載がある。
「請求の範囲
[請求項1] 表面修飾剤により修飾され平均分散粒径が1nm以上かつ50nm以下の無機酸化物粒子と、樹脂を溶解するとともに前記樹脂を硬化した硬化樹脂には浸食し難い高極性溶媒と、塩基性物質とを含有し、
前記高極性溶媒は、アルコール類及びエーテル類のうちいずれか1種または2種であることを特徴とする無機酸化物透明分散液。
[請求項2] 前記無機酸化物粒子は、金属酸化物粒子、非金属酸化物粒子のうちいずれか1種を主成分とすることを特徴とする請求項1記載の無機酸化物透明分散液。
[請求項3] 前記無機酸化物粒子は、金属酸化物粒子であることを特徴とする請求項1記載の無機酸化物透明分散液。
[請求項4] 前記高極性溶媒が、イソプロピルアルコール及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのうちいずれか一方または双方であることを特徴とする請求項1記載の無機酸化物透明分散液。
[請求項5] 請求項1から4のいずれか1項記載の無機酸化物透明分散液と樹脂とを含有することを特徴とする透明複合体形成用樹脂組成物。
[請求項6] 請求項5記載の透明複合体形成用樹脂組成物を用いて形成されていることを特徴とする透明複合体。
[請求項7] 請求項6記載の透明複合体を備えていることを特徴とする光学部材。」
「背景技術
[0002] 一般に、光学製品を所望の設計とするためには、光学製品の内部光学系を構成するレンズ、プリズム、光導波路、光学膜等の光学部材の透明性、高い屈折率、屈折率の波長分散性等の光学的特性が重要である。また、環境温度の変化に対する熱膨張性等の熱的特性、外力に対する機械的強度等の機械的特性が重要である。そして、光学膜等の場合には、光学膜を設ける対象となる基材との密着性も重要である。」
「[0004] この透明複合体を得る方法としては、透明複合体中に無機酸化物粒子を均一に分散させるために、まず、無機酸化物粒子を溶媒中に分散させて無機酸化物分散液とし、この無機酸化物分散液と樹脂とを混合して透明複合体形成用樹脂組成物とする。
そして、この透明複合体形成用樹脂組成物を成形型に流し込み、この樹脂組成物を成形型毎、加温または減圧乾燥することにより溶媒を除去し、その後、加熱または紫外線等を照射することにより樹脂を硬化させ、所定形状の透明複合体を得ることができる。
また、この透明複合体形成用樹脂組成物を、スピンコート法やスクリーン印刷法により透明プラスチック基材の上に塗布し、この樹脂組成物を透明プラスチック基材毎、加温または減圧乾燥することにより溶媒を除去し、その後、加熱または紫外線等を照射することにより樹脂を硬化させ、所定の膜状の透明複合体を得ることができる。」
「課題を解決するための手段
[0011] 本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、表面修飾剤により修飾された無機酸化物粒子と高極性溶媒とを含む分散液に塩基性物質を添加させることにより、無機酸化物粒子の高極性溶媒に対する分散性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。」
「[0021]「無機酸化物粒子」
本実施形態にて用いられる無機酸化物粒子としては、金属酸化物粒子、非金属酸化物粒子のうちいずれか1種を主成分とすることが好ましい。
金属酸化物粒子としては、一般的に樹脂にフィラーとして使用される金属酸化物粒子が好適に用いられ、このような金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO_(2):ジルコニア)、酸化チタン(TiO_(2):チタニア)、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3):アルミナ)、酸化鉄(Fe_(2)O_(3)、Fe_(3)O_(4))、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y_(2)O_(3):イットリア)、酸化ニオブ(Nb_(2)O_(5))、酸化モリブデン(MoO_(3)、MoO_(2))、酸化インジウム(In_(2)O3)、酸化スズ(SnO_(2))、酸化タンタル(Ta_(2)O_(5)、TaO_(2))、酸化タングステン(WO_(3)、WO_(2))、酸化鉛(PbO)、酸化ビスマス(Bi_(2)O_(3))、酸化セリウム(CeO_(2):セリア)、酸化アンチモン(Sb_(2)O_(3)、Sb_(2)O_(5))等を用いることができる。
[0022] 非金属酸化物粒子としては、例えば、一般的に樹脂にフィラーとして使用される酸化ケイ素(SiO_(2):シリカ)、あるいは酸化ホウ素(B_(2)O_(3))等を用いることができる。
これらの金属酸化物粒子及び非金属酸化物粒子は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの無機酸化物粒子の中でも、本実施形態の無機酸化物透明分散液を用いて透明複合体を作製した場合に、得られた透明複合体を高屈折率化させることができる点で、酸化ジルコニウム(ZrO_(2):ジルコニア)または酸化チタン(TiO_(2):チタニア)が好ましい。」
「[0024] この無機酸化物粒子の無機酸化物透明分散液中における平均分散粒径は、1nm以上かつ50nm以下が好ましく、より好ましくは3nm以上かつ30nm以下、さらに好ましくは5nm以上かつ20nm以下である。
平均分散粒径が1nm未満では、無機酸化物粒子自体の製造が困難となるので好ましくなく、一方、平均分散粒径が50nmを超えると、この無機酸化物透明分散液を用いて作製した透明複合体における透明性が悪化する虞があるので好ましくない。
なお、本実施形態における平均分散粒径とは、この無機酸化物透明分散液中の無機酸化物粒子の粒子径を動的光散乱法により測定した結果得られた累積体積百分率が50体積%における体積分散粒径(D50)のことである。」
「[0025] この無機酸化物粒子の無機酸化物透明分散液中における含有率(質量%)は、特に限定されず、透明複合体を得るための製造プロセスに合わせて適宜選択すればよい。中でも、ハンドリング性がよく、かつ生産効率を向上させるためには、1質量%以上かつ50質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以上かつ30質量%以下である。」
「[0026] この無機酸化物粒子は、その表面と上記の樹脂との界面親和性を確保する必要から、この無機酸化物粒子の表面を表面修飾剤を用いて修飾することが好ましい。
このような表面修飾剤としては、上記の樹脂との相溶性がよい表面修飾剤であれば特に限定されず、例えば、下記の式(1)で表される化合物が挙げられる。
R_(x)-Si-R’_(4-x) ……(1)
この式(1)中、Rは、ビニル基、アリル基、3-グリシドキシプロピル基、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-アクリロキシプロピル基、3-メタクリロプロピル基、スチリル基、3-アミノプロピル基、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピル基、N-フェニル-3-アミノプロピル基、3-メルカプトプロピル基、3-イソシアネートプロピル基、炭素数が1以上かつ20以下のアルキル基、フェニル基の群から選択される1種または2種以上であり、R’は、塩素、ヒドロキシ基、炭素数が1以上かつ20以下のアルコキシ基、アセトキシ基の群から選択される1種または2種以上であり、Xは0、または1以上かつ4以下の整数である。
[0027] このような表面修飾剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、変性シリコーン等が挙げられ、シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリフェノキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリクロロシラン、3-グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリクロロシラン、p-スチリルトリフェノキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3-アクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、3-メタクリロキシプロピルトリフェノキシシラン等が挙げられる。」
「[0036]「塩基性物質」
本実施形態における塩基性物質とは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アミン類等を含み、かつ水に溶解した場合に水素イオン指数(pH)が7より大となる物質であればよく、特に限定されない。 このような塩基性物質としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化マンガン、水酸化鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化ランタン、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基性物質が挙げられる。
[0037] また、メチルアミン、エーテルアミン、エチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ヘキサメチレンジアミン、アニリン、カテコールアミン、フェネチルアミン等のアミン類、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(プロトンスポンジ)、アミノ酸、アマンタジン、スペルミジン、スペルミン等も挙げられる。
これらの無機塩基性物質、アミン類、その他の塩基性物質は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、取扱いが容易で、不純物として残留し難い点で、アンモニアが好ましい。
[0038] この塩基性物質は、無機酸化物粒子の高極性溶媒への分散性を向上させるために必要な量を適宜調整して添加すればよい。
この塩基性物質の本実施形態の無機酸化物透明分散液における含有量は、無機酸化物粒子の全体量に対して0.01質量%以上かつ10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.03質量%以上かつ2質量%以下である。
この塩基性物質の含有量が無機酸化物粒子の全体量に対して0.01質量%未満であると、無機酸化物粒子の高極性溶媒への分散性が改良せず、一方、含有量が無機酸化物粒子の全体量に対して10質量%を超えても、無機酸化物粒子の分散効果に顕著な差はなく、しかも不純物となるので、好ましくない。」
「[0053] [光学部材]
本実施形態の光学部材は、上記の透明複合体を備えている。
この光学部材としては、透明なプラスチック基材が用いられる光学部材であればよく、特に限定されないが、例えば、カメラ、レンズ付フィルム等のフィルム一体型カメラ、ビデオカメラ、車載用カメラ等の各種カメラレンズ、CD、CD-ROM、MO、CD-R、CD-Video、DVD等の光ピックアップレンズやマイクロレンズアレイ、複写機、プリンター等のOA機器等の各種機器に用いられる光学部材やプリズムシート、光ファイバー通信装置、LED用封止剤等が挙げられる。
[0054] 本実施形態の透明複合体を光学部材に実装する方法としては、特に限定されず、公知の方法で光学部材に実装させればよい。
[0055] 以上説明したように、本実施形態の無機酸化物透明分散液によれば、表面修飾剤により修飾され平均分散粒径が1nm以上かつ50nm以下の無機酸化物粒子と、樹脂を溶解するとともに前記樹脂を硬化してなる硬化樹脂には浸食し難い高極性溶媒と、塩基性物質とを含有したので、表面修飾剤により修飾された無機酸化物粒子であっても、高極性溶媒中に良好に分散させることができる。」
「[0060][実施例1]
「ジルコニア粒子の作製」
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40Lに溶解させたジルコニウム塩水溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えた。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩水溶液中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30質量%であった。
[0061] 次いで、この混合物を、乾燥機を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、固形物を得た。次いで、この固形物を自動乳鉢により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、500℃にて1時間焼成し、焼成物を得た。
次いで、この焼成物を純水中に投入し攪拌してスラリー状とした後、このスラリーの洗浄を遠心分離機を用いて行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去し、固形物を得た。
その後、この固形物を乾燥機を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、ジルコニア粒子を作製した。
このジルコニア粒子の平均一次粒子径を電界放射形電子顕微鏡 JEM-2100F(日本電子社製)を用いて測定したところ、4nmであった。
[0062]「ジルコニア粒子の表面修飾」
上記のジルコニア粒子10gに水10gを加え、撹拌・混合して、ジルコニア透明水分散液を作製した。次いで、このジルコニア透明水分散液に、表面修飾剤として3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン KBM-5103(信越化学(株)社製)を5g加えて混合し、ジルコニア粒子を表面修飾した。次いで、この表面修飾ジルコニア粒子を固液分離により水から分離し、乾燥機を用いて乾燥した。
[0063]「ジルコニア透明分散液の作製」
上記の表面修飾ジルコニア粒子3gに、イソプロピルアルコール7g、塩基性物質として濃度が28%のアンモニア水0.03gを加えて攪拌し、ジルコニア透明分散液を得た。
次いで、このジルコニア透明分散液中のジルコニアの粒度分布を測定するために、このジルコニア透明分散液中のジルコニア粒子の含有量を1質量%に調整した分散液を作製し、この分散液中のジルコニアの粒度分布を、動的光散乱式粒子径分布測定装置(Malvern社製)を用いて測定した。ここでは、ジルコニアの屈折率を2.15、イソプロピルアルコールの屈折率を1.37とした。その結果、ジルコニア粒子の体積粒度分布の累積体積百分率が50体積%における体積分散粒径(D50)は6nmであった。
[0064][実施例2]
塩基性物質として、濃度が28%のアンモニア水0.03gの替わりに、0.1mol/Lの水酸化カリウム(KOH)イソプロピルアルコール溶液(約19.4質量%の水を含む:関東化学株式会社製)0.04gを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のジルコニア透明分散液を得た。
このジルコニア透明分散液中のジルコニアの粒度分布を、実施例1と同様にして測定したところ、体積分散粒径(D50)は7nmであった。」
「[0080][実施例9]
「透明複合体の作製」
実施例5に準じて得られた透明複合体形成用樹脂組成物を、バーコート法によりポリカーボネート基板上に塗布し、塗膜を形成した。次いで、この塗膜付きポリカーボネート基板を、電気炉にて60℃にて5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプにより紫外線を照射して塗膜中の樹脂を硬化させ、厚み30μmの透明複合体を得た。」

イ 引用例2(特開2008-31309号公報)について
取消理由で通知した引用例2には、「表面処理された無機フィラーの製造方法」(発明の名称)について、次の記載がある。
「【請求項1】
有機溶媒に無機粉体が分散されてなり、シランカップリング剤およびアミンを含有してなる無機粉体分散液から有機溶媒の粗方を減圧留去し、次いで、送風乾燥を行った後、加熱下で減圧乾燥を行うことを特徴とする、表面処理された無機フィラーの製造方法。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理された無機フィラーの製造方法、詳しくは、硬化物の強度が高く色調変化がほとんど無い歯科修復剤用複合材料を製造するのに好適な、シランカップリング剤により表面処理された無機フィラーの製造方法に関する。」
「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、特定の乾燥工程を経ることによって、アミンを使用しても変色をほとんど起こさない無機フィラーを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、有機溶媒に無機粉体が分散されてなり、シランカップリング剤およびアミンを含有してなる無機粉体分散液から有機溶媒の粗方を減圧留去し、次いで、送風乾燥を行った後、加熱下で減圧乾燥を行うことを特徴とする、表面処理された無機フィラーの製造方法である。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の製造方法に使用する無機粉体は特に限定されず、従来の歯科用修復材組成物等に使用されている非晶質シリカ、シリカジルコニア、シリカチタニア、アルミノシリケートガラス、バリウムガラス、石英、アルミナ等の無機酸化物、その他無機化合物の粉末を使用することができる。無機粉体の材質としては、X線造影性を有し、より耐摩耗性に優れた硬化体が得られることから、シリカとジルコニアを主な構成成分とする複合酸化物が特に好適に用いられる。無機粉体は、耐水性向上の観点から表面酸点を有する無機粉体であることが好ましい。表面酸点は、酸強度(pKa)が-3.0?3.3の範囲にある無機粉体であることが好ましく、シリカ複合酸化物が好適である。上記無機粉体の形状及び粒径もまた、特に制限されない。」
「【0017】
本発明で用いるシランカップリング剤としては公知のものが制限なく使用される。好適なシランカップリング剤を例示すれば、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル-トリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピル-トリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピル-トリエトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられ、特に重合性官能基を有するγ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が適している。」
「【0023】
本発明の製造方法においては、まず、シランカップリング剤およびアミンを含む、有機溶媒に無機粉体が分散された無機粉体分散液を調製する。これら各原料の配合順序は特に制限されるものではなく、無機粉体を有機溶媒中に分散させた後に、その分散液にシランカップリング材とアミンを添加する方法、シランカップリング剤とアミンを溶解させた有機溶媒中に無機粉体を添加して分散させる方法など、いずれの方法を採用してもよいが、アミンとシランカップリング剤の目的外の反応を防止するために、アミンの添加された無機粉体の有機溶媒分散液に対して、シランカップリング剤を添加するのが好ましい。また、アミンの添加は無機粉体の有機溶媒中への分散性を改善する効果もあるため、無機粉体を有機溶媒中に分散させる前にアミンを添加することが好ましい。」
「【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた表面処理剤、重合性単量体、及び重合開始剤は以下の通りである。
表面処理剤:
MPS:γ-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン
MUDS:11-メタクリロイロキシウンデシルトリメトキシシラン
重合性単量体:
GMA: 2,2-ビス(4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポ キシフェニル)プロパン
TEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート
重合開始剤
CQ:カンファーキノン
DMBE:ジメチル安息香酸エチルエステル
試験方法は以下のとおりである。
(1)硬化性組成物の調整:
60重量部のGMAと40重量部のTEGDMAに、0.5重量%のCQと0.5重量%のDMBEを加えて混合し、均一な重合性単量体組成物を調製して、これをマトリックスとした。
実施例に従って作製した無機フィラー400重量部を、メノウ乳鉢に入れ、そこに上記重合性単量体組成物100重量部を徐々に加え、暗所にて十分に混練し均一な硬化性ペーストとした。さらにこのペーストを減圧下脱泡した。
(2)硬化体の変色度:
上記硬化性組成物のペーストを7mmφ×1mmの孔を有する型にいれ、両面はポリエステルフィルムで圧接した。可視光線照射器(トクヤマ製、パワーライト)で両面を30秒ずつ光照射し硬化させた後、型から取り出して、色差計(東京電色製、TC-1800MKII)を用いて、背景色白でL*1、a*1、b*1値の測定を行った。その後、50℃のインキュベーターに7日間保存し、回収後再び背景色白でL*2、a*2、b*2値の測定を行い、下記式(II)に基づいて硬化体の変色度を求めた。
ΔE*=√{(L*_(2)-L*_(1))^(2)+(a*_(2)-a*_(1))^(2)+(b*_(2)-b*_(1))^(2)} (II)
実施例1
φ5mmのジルコニアボールが投入されている回転ボールミルに、平均粒径1.2ミクロンの粉砕シリカジルコニア0.5kg、塩化メチレン1kg、およびイソプロピルアミン12.7gを仕込み、30分間運転して粉砕シリカジルコニアを分散させた後、さらにMPS15.9(当審注:実施例2?4の「MUDS」についての単位が「g」であるから、MPSについても、その量の単位は、「g」であると解するべきである。)を添加し30分間運転した。得られた分散液をナスフラスコに移送し、エバポレーターを用いて塩化メチレンを減圧留去した。目視で液分が確認できなくなるまで減圧留去を実施した後、得られた無機粉体の湿体をバットに回収し、1時間後に送風乾燥機に仕込み、風速1.0m/sec、熱風温度が50℃で15時間乾燥を行った。その後、減圧乾燥機にて0.3mmHg、加熱温度80℃で15時間減圧乾燥を行うことによって、無機フィラーF-1を得た。
【0037】
この無機フィラーF-1を用いて硬化性組成物を調整し、硬化させて変色度を測定した結果、ΔE*=0.3であった。
【0038】
実施例2
φ5mmのジルコニアボールが投入されている回転ボールミルに、平均粒径1.2ミクロンの粉砕シリカジルコニア0.5kg、塩化メチレン1kg、およびn-プロピルアミン12.7gを仕込み、30分間運転して粉砕シリカジルコニアを分散させた後、さらにMUDS22.0gを添加し30分間運転した。得られた分散液をナスフラスコに移送し、エバポレーターを用いて塩化メチレンを減圧留去した。目視で液分が確認できなくなるまで減圧留去を実施した後、得られた無機粉体の湿体をバットに回収し、1時間後に送風乾燥機に仕込み、風速1.0m/sec、熱風温度が50℃で15時間乾燥を行った。その後、減圧乾燥機にて0.3mmHg、加熱温度80℃で15時間減圧乾燥を行うことによって、無機フィラーF-2を得た。この無機フィラーF-2を用いて硬化性組成物を調整し、硬化させて変色度を測定した結果、ΔE*=0.9であった。
【0039】
実施例3
φ5mmのジルコニアボールが投入されている回転ボールミルに、平均粒径1.2ミクロンの粉砕シリカジルコニア0.5kg、メタノール1kg、およびn-ブチルアミン15.0gを仕込み、30分間運転して粉砕シリカジルコニアを分散させた後、さらにMUDS22.0gを添加し30分間運転した。得られた分散液をナスフラスコに移送し、エバポレーターを用いて常温でメタノールを減圧留去した。目視で液分が確認できなくなるまで減圧留去を実施した後、得られた無機粉体の湿体をバットに回収し、3時間後に送風乾燥機に仕込み、風速0.8m/sec、熱風温度が80℃で15時間乾燥を行った。その後、減圧乾燥機にて0.05mmHg、加熱温度100℃で15時間減圧乾燥を行うことによって、無機フィラーF-3を得た。
【0040】
この無機フィラーF-3を用いて硬化性組成物を調整し、硬化させて変色度を測定した結果、ΔE*=0.8であった。
【0041】
実施例4
φ5mmのジルコニアボールが投入されている回転ボールミルに、平均粒径1.2ミクロンの粉砕シリカジルコニア0.5kg、塩化メチレン1kg、およびn-プロピルアミン12.7gを仕込み、30分間運転して粉砕シリカジルコニアを分散させた後、さらにMUDS22.0gを添加し30分間運転した。得られた分散液をナスフラスコに移送し、エバポレーターを用いて塩化メチレンを減圧留去した。目視で液分が確認できなくなるまで減圧留去を実施した後、得られた無機粉体の湿体をバットに回収し、7時間後に送風乾燥機に仕込み、風速1.0m/sec、熱風温度が50℃で15時間乾燥を行った。その後、減圧乾燥機にて0.3mmHg、加熱温度80℃で15時間減圧乾燥を行うことによって、無機フィラーF-4を得た。
【0042】
この無機フィラーF-4を用いて硬化性組成物を調整し、硬化させて変色度を測定した結果、ΔE*=2.6であった。」

(3)引用発明の認定
ア 引用例1に記載された発明(引用発明1)
[請求項1]より、引用例1には、「表面修飾剤により修飾され平均分散粒径が1nm以上かつ50nm以下の無機酸化物粒子と、樹脂を溶解するとともに前記樹脂を硬化した硬化樹脂には浸食し難い高極性溶媒と、塩基性物質とを含有し、前記高極性溶媒は、アルコール類及びエーテル類のうちいずれか1種または2種である無機酸化物透明分散液。」が記載されている。
[0021]より、該無機酸化物粒子は、金属酸化物粒子である酸化ジルコニウムを含むことがわかる。
[0025]より、該無機酸化物粒子の無機酸化物透明分散液中における含有率(質量%)は、1質量%以上かつ50質量%以下が好ましいことがわかる。
[0026]、[0027]より、無機酸化物粒子の表面を修飾する表面修飾剤は、シランカップリング剤であり、[0062]の実施例1等から、具体的には、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランであることがわかる。
[0036]より、該塩基性物質とは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アミン類等を含むことがわかる。
[0038]より、該塩基性物質の無機酸化物透明分散液における含有量は、無機酸化物粒子の全体量に対して0.01質量%以上かつ10質量%以下が好ましいことがわかる。
[請求項5]?[請求項7]には、該無機酸化物透明分散液と樹脂とを含有する透明複合体形成用樹脂組成物及び該透明複合体形成用樹脂組成物を用いて形成された透明複合体を備えている光学部材が記載されている。
[0002]より、該透明複合体形成用樹脂組成物によって光学膜が形成されることがわかる。
[0004]より、該透明複合体形成用樹脂組成物は、該無機酸化物分散液と樹脂とを混合することで得られることがわかる。また、透明複合体形成用樹脂組成物によって形成される光学膜は、該透明複合体形成用樹脂組成物を、透明プラスチック基材の上に塗布して、該透明複合体形成用樹脂組成物を硬化させることで得られることがわかる。
[0053]より、該光学部材には、透明なプラスチック基材が用いられることがわかる。
[0062]より、表面修飾ジルコニア粒子は乾燥していて水分を含まないといえることから、[0063]より、実施例1のジルコニア透明分散液には、水は、アンモニア水の水、すなわち、0.22質量%(=0.03g×(100%-28%)/(3g+7g+0.03g)含まれることがわかる。
また、[0064]の実施例2のジルコニア透明分散液には、水は、イソプロピルアルコール溶液の水、すなわち、0.077質量%(=0.04g×19.4%/(3g+7g+0.04g))含まれることがわかる。

そうすると、引用例1には、「3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤である表面修飾剤により修飾され平均分散粒径が1nm以上かつ50nm以下の、酸化ジルコニウムの無機酸化物粒子と、樹脂を溶解するとともに前記樹脂を硬化した硬化樹脂には浸食し難い高極性溶媒と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アミン類等の塩基性物質とを含有し、前記高極性溶媒は、アルコール類及びエーテル類のうちいずれか1種または2種である無機酸化物透明分散液であって、
該無機酸化物透明分散液中における、無機酸化物粒子の含有率(質量%)は、1質量%以上かつ50質量%以下であり、
該塩基性物質の無機酸化物透明分散液における含有量は、無機酸化物粒子の全体量に対して0.01質量%以上かつ10質量%以下である無機酸化物透明分散液。」、「該無機酸化物透明分散液と樹脂とを含有する透明複合体形成用樹脂組成物。」、「該透明複合体形成用樹脂組成物を用いて形成された光学膜を含む透明なプラスチック基材が用いられた透明複合体」及び「該透明複合体を備えている光学部材。」(以下、まとめて「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

イ 引用例2に記載された発明(引用発明2)
【0023】から、引用例2には、「シランカップリング剤およびアミンを含む、有機溶媒に無機粉体が分散された無機粉体分散液」が記載されている。
【0001】及び【0009】から、有機溶媒に分散された無機粉体は、該シランカップリング剤によって表面処理されて、無機フィラーが製造されることがわかる。
【0013】や【0036】?【0042】の実施例1?4によれば、該無機粉体の材質は、シリカとジルコニアを主な構成成分とする複合酸化物を含む。
【0036】の実施例1の分散液は、シランカップリング剤として、MPS(γ-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン)を用い、アミンとして、イソプロピルアミンを用い、有機溶媒として、塩化メチレンを用いたものであることは明らかであって、該分散液は、粉砕シリカジルコニア0.5kg、塩化メチレン1kg、イソプロピルアミン12.7g及びMPS15.9gのみからなるから、シリカジルコニアは、32.7質量%(=0.5kg/(0.5kg+1kg+12.7g+15.9g))含まれ、アミンは、0.83質量%(=12.7g/(0.5kg+1kg+12.7g+15.9g))含まれることがわかる。

そうすると、引用例2には、「無機粉体としてのシリカジルコニアが、シランカップリング剤としてのMPS(γ-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン)によって表面処理され、アミンとしてのイソプロピルアミンを含む、有機溶媒としての塩化メチレンに分散されたシリカジルコニア分散液であって、
アミンは0.83質量%、シリカジルコニアは32.7質量%、それぞれ含まれるシリカジルコニア分散液。」(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(4)判断
ア 取消理由通知に記載した、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項の取消理由について
(ア)引用発明1を主な引用発明とした場合
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン」は、

で表されることから、1分子内に3のアルコキシ基(-OCH_(3))を有するものであることは明らかであって、引用発明1の「3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤である表面修飾剤」は、本件特許発明1の「無機粒子」を「表面修飾」する「加水分解性基を有する分散剤」であって、「加水分解性基を有する分散剤が、1分子内に1?3のアルコキシ基を有するシランカップリング剤」に相当する。
引用発明1の「樹脂を溶解するとともに前記樹脂を硬化した硬化樹脂には浸食し難い高極性溶媒」、「アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、アミン類等の塩基性物質」及び「酸化ジルコニウムの無機酸化物粒子」は、本件特許発明1の「分散媒」、「アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種」である「塩基性物質」及び「酸化ジルコニウム」である「無機粒子」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明1の「無機酸化物透明透明分散液」は、本件特許発明1の「無機粒子分散液」に相当する。
また、「塩基性物質」の含有量について、引用発明1は、分散液全体に対して1質量%×0.01%(=0.0001質量%)?50質量%×10%(=5質量%)含まれるから、本件特許発明1と引用発明1とは「前記無機粒子分散液中の前記塩基性物質の含有量が0.01質量%以上かつ1質量%以下であ」る点で共通する。
そして、「無機粒子分散液」中の「無機粒子」の含有量について、引用発明1には、酸化ジルコニウムの無機酸化物粒子が1質量%以上かつ50質量%以下含まれるから、本件特許発明1と引用発明1とは「前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の含有量が10質量%以上かつ50質量%以下である」点で共通する。
そして、引用発明1において、「3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤である表面修飾剤」による表面修飾は、無機粒子の吸着水以外の水を添加して行われるか、当該水を添加しないで行われるかによって、シランカップリング剤による表面修飾自体に差異が生じるものではない。

そうすると、本件特許発明1と引用発明1とは、
「無機粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、無機粒子の吸着水以外の水を添加することなく表面修飾されており、分散媒に分散されてなる無機粒子分散液であって、
塩基性物質を含み、
前記無機粒子が酸化ジルコニウムであり、
前記加水分解性基を有する分散剤が、1分子内に1?3のアルコキシ基を有するシランカップリング剤であり、前記塩基性物質が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記無機粒子分散液中の前記塩基性物質の含有量が0.01質量%以上かつ1質量%以下であり、
前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の含有量が10質量%以上かつ50質量%以下である、
無機粒子分散液。」である点で一致し、次の相違点1、2で相違する。

(相違点1)
無機粒子分散液のカールフィッシャー水分計で滴定された水の含有量について、本件特許発明1は、「0.7質量%以下」であるのに対し、引用発明1の無機酸化物透明分散液の水の含有量は不明な点。

(相違点2)
無機粒子分散液中の無機粒子の粒度分布について、本件特許発明1は、「粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)は、1nm以上かつ45nm以下であり、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率か50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下である」のに対し、引用発明1の無機酸化物透明分散液における無機酸化物粒子の粒度分布は、不明な点。

ここで、相違点1、2について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
上記相違点2に係る発明特定事項に関連して、本件特許明細書には、【0020】の記載がある。
「本実施形態の無機粒子分散液において、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下であることが好ましく、1以上かつ3以下であることがより好ましく、1以上かつ2以下であることがさらに好ましい。ここで、粒度分布とは、無機粒子分散液に含まれる無機粒子の粒度分布のことである。
粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値を、上記の範囲内とすることにより、樹脂中に均一に無機粒子を分散させることが可能となり、膜内の屈折率分布を均一にすることができる。これにより、干渉縞といった色ムラを低減することが可能となる。また、粗大粒子が低減されるため、塗工時の異物発生を抑制できるといった効果もある。」

そして、本件特許発明1の具体例である実施例1及び本件特許発明1に含まれない比較例について、【0107】の【表1】には、次のように記載されている。




また、【0108】には、次のように記載されている。
「表1の結果から、実施例1?実施例2と、比較例1?比較例3(当審注:表1には比較例2、4が示されており、【0097】には、比較例1は分散液が得られなかったことが記載され、【0102】には、比較例3も分散液が得られなかったことが記載されていることから、「比較例1?比較例3」は、「比較例2、比較例4」の誤記と認める。)とを比較すると、実施例1?実施例2の無機粒子分散液は、無機粒子の分散安定性に優れ、分散液の長期保管の安定性に優れていることが確認できた。
表1の結果から、実施例1および実施例2と、比較例2とを比較すると、実施例1および2では、全光線透過率、ヘーズ値、塗膜の屈折率、および、塗膜付きプラスチック基材の色ムラが、比較例2よりも向上していることが確認できた。
また、実施例4の反射スペクトルと、比較例4の反射スペクトルとを比較すると、膜厚を1.5μmのような厚膜としたときであっても、実施例4の塗膜付きプラスチック基材は、光の干渉に起因するリップルの振幅が小さく、目視でも色ムラが抑制されていることが確認できた。
また、比較例4を実施例4と同じ屈折率に調整するためには、比較例4の酸化ジルコニウムの含有量を多くする必要があり、実施例4は、従来の膜よりも少ない酸化ジルコニウムの量で屈折率を向上できることが確認できた。」

そうすると、無機粒子分散液中の無機粒子の粒度分布について、本件特許発明1は、「粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値」を1以上かつ4以下とすることで(実施例1、2、4)、そうでないもの(比較例2、4)と比較して、無機粒子の分散安定性に優れ、分散液の長期保管の安定性に優れたものとなり(【表1】の「液安定性」が、比較例2、4では、「2か月」なのに対し、実施例1、2、4では、「6か月」になっている。)、樹脂中に均一に無機粒子を分散させることが可能となって、膜内の屈折率分布を均一にすることができ、干渉縞といった色ムラを低減することが可能となった(【表1】の「色ムラ(目視)」が、比較例2、4では、「×」なのに対し、実施例1、2、4では、「○」になっている。)という、作用効果を奏するものと認められる。

そして、無機粒子分散液中の無機粒子の粒度分布について、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値を1以上かつ4以下とすることを示す文献は、異議申立人が提示した証拠には、見出せない。

一方、引用発明1は、「無機酸化物粒子の高極性溶媒に対する分散性が向上」([0011])するものだとしても、引用例1には、膜内の屈折率分布や色ムラについての言及はないことから、本件特許発明1は、上記相違点2に係る発明特定事項を有することで、引用発明1からは当業者が予測しえない、格別顕著な作用効果効果を奏するものであるということができる。

したがって、上記相違点2は実質的なものであって、上記相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1と同一であるということはできないし、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、ということもできない。

また、本件特許発明3?7は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件特許発明3?7は、引用発明1と同一であるということはできないし、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、ということもできない。

(イ)引用発明2を主な引用発明とした場合
引用発明2の「無機粉体としてのシリカジルコニア」、「アミンとしてのイソプロピルアミン」及び「有機溶媒としての塩化メチレン」は、本件特許発明1の「無機粒子」である「酸化ジルコニウム」、「アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種であ」る「塩基性物質」及び「分散媒」にそれぞれ相当する。
そして、引用発明2の「シランカップリング剤としてのMPS(γ-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン)」は、「無機粉体としてのシリカジルコニア」を表面処理するものであり、「MPS(γ-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン)」は、

で表せるから、1分子内に3のアルコキシ基(-OCH_(3))を有するものであることは明らかであって、該「シランカップリング剤としてのMPS(γ-メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン)」は、本件特許発明1の「加水分解性基を有する分散剤」であって、「加水分解性基を有する分散剤が、1分子内に1?3のアルコキシ基を有するシランカップリング剤」に相当する。
また、引用例2の実施例からみて、引用発明2の該「表面処理」の際に、水を添加することはないから、該「表面処理」は、本件特許発明1の「無機粒子の吸着水以外の水を添加することなく表面修飾」することに相当する。
そして、引用発明2の「シリカジルコニア分散液」は、本件特許発明1の「無機粒子分散液」に相当する。

また、アミンは0.83質量%、シリカジルコニアは32.7質量%含まれるから、本件特許発明1の「前記無機粒子分散液中の前記塩基性物質の含有量が0.01質量%以上かつ1質量%以下であり、前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の含有量が10質量%以上かつ50質量%以下である」構成に包含される。

そうすると、本件特許発明1と引用発明2とは、
「無機粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、無機粒子の吸着水以外の水を添加することなく表面修飾されており、分散媒に分散されてなる無機粒子分散液であって、
塩基性物質を含み、
前記無機粒子が酸化ジルコニウムであり、
前記加水分解性基を有する分散剤が、1分子内に1?3のアルコキシ基を有するシランカップリング剤であり、前記塩基性物質が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記無機粒子分散液中の前記塩基性物質の含有量が0.01質量%以上かつ1質量%以下であり、
前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の含有量が10質量%以上かつ50質量%以下である、
無機粒子分散液。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1’)
無機粒子分散液のカールフィッシャー水分計で滴定された水の含有量について、本件特許発明1は、「0.7質量%以下」であるのに対し、引用発明2のシリカジルコニア分散液の水の含有量は不明な点。

(相違点2’)
無機粒子分散液中の無機粒子の粒度分布について、本件特許発明1は、「粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)は、1nm以上かつ45nm以下であり、粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率か50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下である」のに対し、引用発明2のシリカジルコニア分散液における、無機粉体としてのシリカジルコニアの粒度分布は、不明な点。

ここで、相違点1’、2’について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点2’について検討する。
相違点2’は、上記「(ア)」の相違点2と同じであって、それについての検討で述べたものと同じ理由から、上記相違点2’は実質的なものであって、上記相違点1’について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明2と同一であるということはできないし、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、ということもできない。

また、本件特許発明3?7は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件特許発明3?7は、引用発明1と同一であるということはできないし、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、ということもできない。

イ 取消理由通知に記載した、特許法第36条第6項第2号の取消理由について
訂正後の請求項1では、「無機粒子」の表面修飾について、「表面修飾されており」と訂正することで、無機粒子が表面修飾されたものであることが明確になり、製造に関して技術的な特徴や条件が付された記載があるとはいえず、訂正後の請求項1の記載が明確ではない、とすることはできない。
訂正後の請求項1を引用する、請求項3?7の記載も、明確ではない、とすることはできない。

ウ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(ア)特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、無機粒子分散中における塩基性物質の含有量に、比較例2、4で記載された範囲が含まれていて、矛盾が生じていることから、本件特許明細書の記載は、当業者が容易に実施できる程度に、十分かつ明確に記載されていない旨主張している(特許異議申立書28頁3?19行、「(8)-1 明確性要件違反1(塩基性物質の含有量)」)。

しかしながら、比較例2、4の水の含有量は本件特許発明よりも多く、本件特許発明に、比較例2、4は含まれない。
したがって、本件特許発明と本件特許明細書の記載とに矛盾が生じているとも、本件特許明細書の記載は、当業者が容易に実施できる程度に、十分かつ明確に記載されていないともいうことはできず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(イ)特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、塩基性物質の種類が特定できず、本件特許明細書の記載は、当業者が容易に実施できる程度に、十分かつ明確に記載されていない旨主張している(特許異議申立書28頁20?29頁11行、「(8)-2 明確性要件違反2(塩基性物質の種類)」)。

しかしながら、本件特許明細書の【0009】には、次のように記載されている。
「本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、無機粒子の分散処理において、塩基性物質を用いて、その無機粒子を表面処理、分散させることにより、無機粒子の吸着水といった最小限の水分量で表面処理を行うことができるため、シャープな粒度分布を有し、かつ水含有量が少ない無機粒子分散液を得ることができ、さらに分散処理における工程数も少なくすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」
また、同【0036】には、次のように記載されている。
「「塩基性物質」
本実施形態における塩基性物質としては、水と混合した場合に水素イオン指数(pH)が7より大となる物質であり、かつ、無機粒子分散液の水の含有量が1質量%以下であっても、均一に混合できる物質であれば、特に限定されない。
このような塩基性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アミン類等が挙げられ、取り扱いが容易な点で、アミン類が好ましい。」

これらの記載によれば、本件特許発明における「塩基性物質」は、無機粒子の分散処理に用いられるものであって、水と混合した場合に水素イオン指数(pH)が7より大となる物質であり、かつ、無機粒子分散液のカールフィッシャー水分計で滴定された水の含有量が0.7質量%以下であっても、均一に混合できる物質であれば、特に限定されないものである、ということができ、その種類が特定される必要がある物質であるとはいえない。
また、異議申立人は、塩基性物質の種類が特定される必要性について、具体的な根拠については、示していない。

そして、該「塩基性物質」として、発明の詳細な説明の実施例1で用いられた「アルキルジメチルアミン」には、ラウリルジメチルアミン、アミドプロピルジメチルアミン等、様々のアルキルジメチルアミンが知られているところ、いずれも、入手は容易であり、しかも、分散処理自体は高度な実験とはいえないことから、無機粒子分散液のカールフィッシャー水分計で滴定された水の含有量が0.7質量%以下であっても、均一に混合できる「アルキルアミン」を得るため、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるとは認められない。

したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、本件特許発明1には、無機粒子分散中における塩基性物質の含有量に関し、比較例で記載された範囲が含まれていて、本件特許発明の効果が得られない範囲が含まれていて、本件特許明細書の記載から、当業者が、本件特許発明1まで、拡張ないし一般化できないことから、請求項1等の記載は、いわゆるサポート要件違反であって、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものではない旨主張している(特許異議申立書30頁7行?31頁2行、「(8)-4 サポート要件違反1(塩基性物質の含有量1)」)。

しかしながら、上記「(ア)」で述べたように、比較例2、4の水の含有量は本件特許発明よりも多く、本件特許発明1に比較例2、4は含まれないことから、本件特許発明1は、本件特許発明の効果が得られない範囲まで含むものであるとはいえない。

したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用できない。

(エ)特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、無機粒子分散中における塩基性物質の含有量に関し、本件特許発明1は、「0.01質量%以上かつ1質量%であ」るところ、本件特許明細書の実施例1?2、4では、0.4重量%以下のかなり少量域に位置していて、上限値の1質量%において、実施例1、2及び4と同様の効果が得られるかどうかは明らかではなく、本件特許明細書の記載から、当業者が、本件特許発明1まで、拡張ないし一般化できないことから、請求項1等の記載は、いわゆるサポート要件違反であって、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものではない旨主張している(特許異議申立書31頁3?20行、「(8)-5 サポート要件違反2(塩基性物質の含有量2)」)。

しかしながら、上記「(イ)」で述べたように、本件特許発明における「塩基性物質」は、無機粒子の分散処理に用いられるものであって、水と混合した場合に水素イオン指数(pH)が7より大となる物質であり、かつ、無機粒子分散液のカールフィッシャー水分計で滴定された水の含有量が0.7質量%以下であっても、均一に混合できる物質であれば、特に限定されないものである、ということができ、その種類が特定される必要がある物質であるとはいえない。

また、「塩基性物質」には、様々な種類のものが存在し、無機粒子の分散処理について、同じ程度の効果を奏するために必要な塩基性物質の含有量は、その種類によって、異なるものということができる。

そして、異議申立人の主張からは、本件特許発明1のような「無機粒子分散液中の塩基性物質の含有量が0.01質量%以上かつ1質量%以下」のものについて、本件特許発明の作用効果を奏さないものがあるとは認められないし、また、無機粒子の分散処理に用いられる塩基性物質の含有量として、「0.01質量%以上かつ1質量%」が、格別なものであるとも認めることができない。

したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び3?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び3?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子が、加水分解性基を有する分散剤で、無機粒子の吸着水以外の水を添加することなく表面修飾されており、分散媒に分散されてなる無機粒子分散液であって、
塩基性物質を含み、
カールフィッシャー水分計で滴定された水の含有量が0.7質量%以下であり、
前記無機粒子が酸化ジルコニウムであり、
前記加水分解性基を有する分散剤が、1分子内に1?3のアルコキシ基を有するシランカップリング剤であり、
前記塩基性物質が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アミン類からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、
前記無機粒子分散液中の前記塩基性物質の含有量が0.01質量%以上かつ1質量%以下であり、
前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の含有量が10質量%以上かつ50質量%以下であり、
前記無機粒子分散液中の前記無機粒子の粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)は、1nm以上かつ45nm以下であり、
粒度分布の累積体積百分率が90%のときの粒径(D90)を、粒度分布の累積体積百分率が50%のときの粒径(D50)で除した値が、1以上かつ4以下であることを特徴とする無機粒子分散液。
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
請求項1に記載の無機粒子分散液と、バインダー成分とを含有してなることを特徴とする無機粒子含有組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の無機粒子含有組成物を用いて形成されたことを特徴とする塗膜。
【請求項5】
プラスチック基材の少なくとも一方の面に、請求項4に記載の塗膜が設けられたことを特徴とする塗膜付きプラスチック基材。
【請求項6】
500nm以上かつ750nm以下の範囲内における反射率の最大値と最小値の差が1%以下であることを特徴とする請求項5に記載の塗膜付きプラスチック基材。
【請求項7】
請求項4に記載の塗膜および請求項5または6に記載の塗膜付きプラスチック基材の少なくともいずれか一方を備えたことを特徴とする表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-11 
出願番号 特願2014-559976(P2014-559976)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B01J)
P 1 651・ 113- YAA (B01J)
P 1 651・ 121- YAA (B01J)
P 1 651・ 536- YAA (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 橋本 憲一郎森井 隆信  
特許庁審判長 國島 明弘
特許庁審判官 日比野 隆治
川端 修
登録日 2015-12-04 
登録番号 特許第5846322号(P5846322)
権利者 住友大阪セメント株式会社
発明の名称 無機粒子分散液、無機粒子含有組成物、塗膜、塗膜付きプラスチック基材、表示装置  
代理人 鈴木 三義  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  
代理人 高橋 詔男  
代理人 志賀 正武  
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