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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C01B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
管理番号 1334339
異議申立番号 異議2016-701103  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-25 
確定日 2017-09-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5928458号発明「二酸化塩素剤及び二酸化塩素の発生方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5928458号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、2、4-11〕及び3について訂正することを認める。 特許第5928458号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5928458号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成24年5月30日(優先権主張 平成23年5月31日)を国際出願日として出願され、平成28年5月13日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対して特許異議申立人 山本省吾により特許異議の申立てがされ、以後の手続は次のようになされた。

・取消理由通知(1回目) 平成29年1月30日
・訂正請求及び意見書(特許権者)の提出 同年3月27日
・意見書の提出(特許異議申立人)提出 同年4月28日
・取消理由通知(2回目) 同年5月19日
・訂正請求及び意見書(特許権者)の提出 同年7月21日
・意見書の提出(特許異議申立人)提出 同年8月25日

第2 訂正請求について
平成29年3月27日の訂正請求は、同年7月21日の訂正請求がなされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
よって、以下に、同年7月21日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)が認められるかについて検討する。

1.訂正の内容
下線部は訂正箇所であり、特許権者が付記した。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを担持させてなる二酸化塩素剤であり、水酸化ナトリウムの担持量が、亜塩素酸塩の担持量に対して、0.7モル当量より多く、2モル当量以下であり、水分含有量が10重量%以下であることを特徴とする二酸化塩素剤。」と記載されているのを、
「無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを担持させてなる二酸化塩素剤であり、水酸化ナトリウムの担持量が、亜塩素酸塩の担持量に対して、0.7モル当量より多く、2モル当量以下であり、亜塩素酸塩の担持量が、二酸化塩素剤の全量に対して、1?25重量%であり、無機多孔質担体が、セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライトであり、水分含有量が10重量%以下であることを特徴とする二酸化塩素剤。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる請求項2に記載の二酸化塩素剤。」と記載されているのを、
「無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを担持させてなる二酸化塩素剤であり、水酸化ナトリウムの担持量が、亜塩素酸塩の担持量に対して、0.7モル当量より多く、2モル当量以下であり、亜塩素酸塩の担持量が、二酸化塩素剤の全量に対して、1?25重量%であり、無機多孔質担体が、セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライトであり、水分含有量が10重量%以下であり、無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを含ませ、乾燥させて得られることを特徴とする二酸化塩素剤の製造方法であって、スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる二酸化塩素剤の製造方法。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「二酸化塩素剤の全量に対して、亜塩素酸塩を1?25重量%担持している請求項1?3の何れかに記載の二酸化塩素剤。」と記載されているのを、
「二酸化塩素剤の全量に対して、亜塩素酸塩を1?20重量%担持している請求項1又は2に記載の二酸化塩素剤。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「無機多孔質担体100重量部に対して、亜塩素酸塩を1?40重量部担持している請求項1?3の何れかに記載の二酸化塩素剤。」と記載されているのを、
「無機多孔質担体100重量部に対して、亜塩素酸塩を1?40重量部担持している請求項1又は2に記載の二酸化塩素剤。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、
「無機多孔質担体100重量部に対して、濃度1?46重量%の亜塩素酸塩及び濃度1?60重量%の水酸化ナトリウムを含む溶液を10?100重量部含ませる請求項2?5の何れかに記載の二酸化塩素剤。」と記載されているのを、
「無機多孔質担体100重量部に対して、濃度1?46重量%の亜塩素酸塩及び濃度1?60重量%の水酸化ナトリウムを含む溶液を10?100重量部含ませる請求項2、4及び5の何れかに記載の二酸化塩素剤。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、
「無機多孔質担体が、濃度10重量%で水に懸濁させた懸濁液がアルカリ性を示すものである請求項1?6の何れかに記載の二酸化塩素剤。」と記載されているのを、
「無機多孔質担体が、濃度10重量%で水に懸濁させた懸濁液がアルカリ性を示すものである請求項1、2、4?6の何れかに記載の二酸化塩素剤。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、
「無機多孔質担体がパリゴルスカイト、又はセピオライトである請求項1?7の何れかに記載の二酸化塩素剤。」と記載されているのを、
「無機多孔質担体がパリゴルスカイト、又はセピオライトである請求項1、2、4?7の何れかに記載の二酸化塩素剤。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に、
「水分含有量が5重量%以下である請求項1?8の何れかに記載の二酸化塩素剤。」と記載されているのを、
「水分含有量が5重量%以下である請求項1、2、4?8の何れかに記載の二酸化塩素剤。」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に、
「請求項1?9の何れかに記載の二酸化塩素剤を、使用時までは、二酸化炭素及び/又は水蒸気との接触を抑制し、使用時に、酸化性物質と接触させずに、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスと接触させることにより二酸化塩素を発生させることを特徴とする二酸化塩素の発生方法。」と記載されているのを、
「請求項1、2、4?9の何れかに記載の二酸化塩素剤を、使用時までは、二酸化炭素及び/又は水蒸気との接触を抑制し、使用時に、酸化性物質と接触させずに、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスと接触させることにより二酸化塩素を発生させることを特徴とする二酸化塩素の発生方法。」に訂正する。

2.訂正の理由
(1)訂正事項1について
a)訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では、二酸化塩素剤の全量に対する亜塩素酸塩の担持量及び無機多孔質担体が規定されていない。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明では、当該担持量を「1?25重量%」に、当該無機多孔質担体を「セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライト」に、それぞれ限定して特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものである。
b)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、訂正前の請求項4又は本件特許明細書の【0012】に基づいて導き出される構成であり、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
c)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記aの理由から明らかなように、訂正事項1は、発明特定事項を限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
a)訂正の目的について
a-1)訂正事項2は、訂正前請求項3が訂正前請求項2を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項2及び請求項2が引用する請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号の規定に適合する。
a-2)また、この訂正は、上記訂正事項1と同様に、二酸化塩素剤の全量に対する亜塩素酸塩の担持量を「1?25重量%」に、無機多孔質担体を「セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライト」に、それぞれ限定して特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものでもある。
a-3)さらに、この訂正は、以下のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものでもある。
すなわち、訂正前請求項3は、「二酸化塩素剤」という物の発明を対象としている一方で、「スプレー法により・・・含ませる」という製造方法による特定を含むので、「物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう『発明が明確であること』という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である」(最高裁第二小法廷判決平成27年6月5日(平成24年(受)第1204号))との判示から、「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがあるものであった。
そこで、訂正事項2は、物の発明として「発明が明確であること」という要件を欠くおそれがある記載を、製造方法の発明とすることで、発明を明確にしようとするものである。
したがって、訂正事項2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の規定に適合するものでもある。
b)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2のうち、訂正事項1と共通する部分については既に述べたとおりであり、また、訂正事項2のうち、「・・・スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる二酸化塩素剤の製造方法」とすることは、本件特許明細書の段落【0019】に記載されている。
従って、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
c)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2の「二酸化塩素剤」を「・・・スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる二酸化塩素剤の製造方法」とする訂正も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。以下にその理由を詳述する。
c-1)発明が解決しようとする課題とその解決手段について
訂正前の請求項3に記載された発明と訂正後の請求項3に記載された発明において、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が、実質的に変更されたものか否かにより、訂正後の請求項3に係る発明の技術的意義が、訂正前の請求項3に係る発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更されたものであるか否かについて検討する。
本件特許明細書の段落【0019】の記載から、訂正前の請求項3に係る発明及び訂正後の請求項3に係る発明の課題は、共に「二酸化塩素を安定して発生させる」ことであり、その解決手段は、スプレー法により、亜塩素酸塩及びアルカリ剤(水酸化ナトリウム)を担持させることである。
したがって、訂正前後において課題に変更はないし、課題解決手段にも実質的な変更はない。
従って、訂正後の請求項3に係る発明の技術的意義は、訂正前の請求項3に係る発明の技術的意義を実質上拡張し、又は変更するものではない。
c-2)訂正による第三者の不測の不利益について
訂正前の請求項3に係る発明と訂正後の請求項3に係る発明において、それぞれの発明の「実施」に該当する行為の異同により、訂正後の請求項3に係る発明の「実施」に該当する行為が、訂正前の請求項3に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものであるか否かについて検討する。
ここで、特許法第2条第3項第1号に規定された「物の発明」(訂正前の請求項3に係る発明)及び同項第3号に規定された「物を生産する方法の発明」(訂正後の請求項3に係る発明)の実施について比較すると、「物の発明」の実施においては、物の生産方法を限定するものではないのに対して、「物を生産する方法の発明」の実施においては、物の生産方法を「その方法」に限定している点で相違するが、その実施行為の各態様については、全て対応するものである。
そうすると、訂正前の請求項3に係る発明は、「スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる」という製造方法(以下「特定の製造方法」という。)により「二酸化塩素剤」という物が限定された「物の発明」であるが、前記「特定の製造方法」により製造された「二酸化塩素剤」だけでなく、前記「特定の製造方法」により製造された「二酸化塩素剤」と同一の構造・特性を有する物も、特許発明の実施に含むものである。
一方、訂正後の請求項3に係る発明は、上記「特定の製造方法」により「二酸化塩素剤の製造方法」という方法が特定された「物を生産する方法の発明」であるから、前記「特定の製造方法」により製造された「二酸化塩素剤」のみを、特許発明の実施に含むものである。
したがって、訂正後の請求項3に係る発明の「実施」に該当する行為は、訂正前の請求項3に係る発明の「実施」に該当する行為に全て含まれるので、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはないから、訂正前の請求項3に係る発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し、又は変更するものとはいえない。
c-3)まとめ
以上のように、訂正事項2の「・・・スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる二酸化塩素剤の製造方法」とする訂正についても、訂正前後において、技術的意義及び実施行為のいずれにおいても実質上拡張又は変更されない。
そのため、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
なお、訂正事項2の判断については、訂正2016-390005号の審決を参酌した。

(3)訂正事項3について
a)訂正の目的について
訂正前の請求項4に係る発明では、二酸化塩素剤の全量に対する亜塩素酸塩の担持量が「1?25重量%」と規定され、訂正前の「請求項1?3の何れか」を引用することが規定されている。
これに対して、訂正後の請求項4に係る発明は、当該担持量を「1?20重量%」に限定し、訂正後の請求項3の引用を削除することを特定しようとするものである。
したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものである。
b)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、本件特許明細書の【0015】に基づいて導き出される構成であり、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
c)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記a)の理由から明らかなように、訂正事項3は、亜塩素酸塩の担持量をさらに特定する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4-9について
a)訂正の目的について
訂正事項4-9は、訂正前の請求項5-10で訂正前の請求項3を直接又は間接的に引用していたものを、訂正後の請求項5-10で訂正後の請求項3の引用を削除するものであり、これは特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合するものである。
b)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4-9は、引用する請求項を減じる訂正であるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であることは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
c)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4-9は、引用する請求項を減じる訂正であり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
したがって、訂正事項4-9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5)一群の請求項及び引用関係の解消についての説明
訂正事項1及び3?9に係る訂正前の請求項1?11について、請求項2は請求項1を、請求項3は請求項2を、請求項4?9は請求項1及びその前に記載されたいずれかの請求項を、請求項10は請求項1?9のいずれかを、請求項11は請求項1?9のいずれかを引用する請求項10を、それぞれ引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?11及びこれに対応する訂正後の請求項1?11は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
ただし、訂正後の請求項3については、特許法120条の5第2項ただし書第4号に規定する引用関係の解消を目的とする訂正であるから、請求項3は、請求項1、2、4?11とは別途訂正することを求めるものである。

3.訂正請求についての結論
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、
訂正事項1、3ないし9について、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とし、特許法第120条の5第4項及び第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合し、
訂正事項2について、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3、4号に規定する事項を目的とし、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項[1、2、4-11]及び請求項3について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件訂正発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1-11に係る発明(以下、項番毎に「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明11」と記し、総称して「本件訂正発明」と記す。)は、その訂正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
なお、下線部は、訂正請求により訂正された箇所を示す。
【請求項1】
無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを担持させてなる二酸化塩素剤であり、水酸化ナトリウムの担持量が、亜塩素酸塩の担持量に対して、0.7モル当量より多く、2モル当量以下であり、亜塩素酸塩の担持量が、二酸化塩素剤の全量に対して、1?25重量%であり、無機多孔質担体が、セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライトであり、水分含有量が10重量%以下であることを特徴とする二酸化塩素剤。
【請求項2】
無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを含ませ、乾燥させて得られるものである請求項1に記載の二酸化塩素剤。
【請求項3】
無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを担持させてなる二酸化塩素剤であり、水酸化ナトリウムの担持量が、亜塩素酸塩の担持量に対して、0.7モル当量より多く、2モル当量以下であり、亜塩素酸塩の担持量が、二酸化塩素剤の全量に対して、1?25重量%であり、無機多孔質担体が、セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライトであり、水分含有量が10重量%以下であり、無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを含ませ、乾燥させて得られることを特徴とする二酸化塩素剤の製造方法であって、スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる二酸化塩素剤の製造方法。
【請求項4】
二酸化塩素剤の全量に対して、亜塩素酸塩を1?20重量%担持している請求項1又は2に記載の二酸化塩素剤。
【請求項5】
無機多孔質担体100重量部に対して、亜塩素酸塩を1?40重量部担持している請求項1又は2に記載の二酸化塩素剤。
【請求項6】
無機多孔質担体100重量部に対して、濃度1?46重量%の亜塩素酸塩及び濃度1?60重量%の水酸化ナトリウムを含む溶液を10?100重量部含ませる請求項2、4及び5の何れかに記載の二酸化塩素剤。
【請求項7】
無機多孔質担体が、濃度10重量%で水に懸濁させた懸濁液がアルカリ性を示すものである請求項1、2、4?6の何れかに記載の二酸化塩素剤。
【請求項8】
無機多孔質担体がパリゴルスカイト、又はセピオライトである請求項1、2、4?7の何れかに記載の二酸化塩素剤。
【請求項9】
水分含有量が5重量%以下である請求項1、2、4?8の何れかに記載の二酸化塩素剤。
【請求項10】
請求項1、2、4?9の何れかに記載の二酸化塩素剤を、使用時までは、二酸化炭素及び/又は水蒸気との接触を抑制し、使用時に、酸化性物質と接触させずに、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスと接触させることにより二酸化塩素を発生させることを特徴とする二酸化塩素の発生方法。
【請求項11】
二酸化塩素剤を、使用時までは、二酸化炭素及び水蒸気との接触を遮断し、使用時に空気と接触させる請求項10に記載の方法。

2.取消理由について
特許異議申立人は、以下の甲各号証を提出し、異議申立ての理由として、訂正前の請求項1ないし11に係る発明について甲第1号証に基づく新規性要件違反と甲第1及び第2号証に基づく進歩性要件違反、記載要件違反を申立てた。
当審は、それらを検討し、訂正前の請求項1ないし11に係る発明について甲第1号証に基づく新規性及び進歩性要件違反、及び、訂正前の請求項3について記載要件違反の取消理由をそれぞれ通知したものである。

<甲各号証>
・甲第1号証:特開平1-99559号公報
・甲第2号証:特開平2-55201号公報

以下で、上記のように訂正された本件訂正発明1-11について取消理由がなお妥当であるかを検討する。

3.新規性及び進歩性要件違反についての取消理由の判断
3-1.進歩性要件違反について
3-1-1.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には以下の記載がある。
(ア)「(産業上の利用分野)本発明は使用時には容易に二酸化塩素を発生させることができ、貯蔵時には安定な二酸化塩素剤に関するものである。」(1頁左欄8-11行)
(イ)「またセピオライトは吸保水能が極めて大きく、自重と同じ水分を吸収しても表面上乾燥状態を示すことができる。」(2頁右上欄3-5行)
(ウ)「アルカリ剤の使用量は通常セピオライト100重量部に対して固形換算で1重量部以上好ましくは2?10重量部が適当である。1重量部未満では担持された二酸化塩素が常温でも若干分解する虞れがある。他方10重量部を超えると、安定性は向上するが、二酸化塩素が発生し難くなり、発生濃度が低下するので好ましくない。」(2頁左下欄4-10行)
(エ)「本発明の安定化二酸化塩素剤は二酸化塩素含有水溶液とアルカリ剤との混合溶液を充分乾燥したセピオライトに添加混合するか、又はセピオライトにアルカリ剤を添加混合した後二酸化塩素含有水溶液を添加混合して得られる。この場合二酸化塩素担持量はセピオライトの吸水能に左右されるので、担持量を増加するには、担持物を乾燥、例えば40?60℃で真空乾燥後更に担持を繰返す、或いは上記のアルカリ剤を添加混合し乾燥後に二酸化塩素含有水溶液を担持させ乾燥する操作を繰返す等が行われる。このようにしてセピオライト100重量部に対し二酸化塩素は1重量部以上で有効であるが30重量部以上安定に担持させることも可能である。」(2頁左下欄11行-同頁右下欄4行)
(オ)「実施例2 セピオライト100重量部(実施例1と同じ)に50%水酸化ナトリウム水溶液15重量部を添加混合して120℃×3時間乾燥したものに25%亜塩素酸ナトリウム水溶液49重量部を添加混合し次いで60℃×5時間真空乾燥の操作を4回繰返して行い、安定化二酸化塩素剤180重量部を得た。この二酸化塩素含有量は20%であった。この安定化二酸化塩素剤40gを100mlポリエチレン製容器に入れて密閉し60℃×2ヶ月間養生して分解試験を行った結果分解率は0%であった。」(3頁左下欄下から6行-同頁右下欄5行)
(カ)「比較例2 花弁状珪酸カルシウム(徳山曹達社製)100重量部に対し表7記載量の50%水酸化ナトリウム水溶液と25%亜塩素酸ナトリウム水溶液(pH11.5)の混合液を添加して表7に示す二酸化塩素配合物a?eを得た。このものの二酸化塩素含有量はいずれも5%であった。更にこれらのものを夫々50℃×7時間真空乾燥して表7に示す二酸化塩素含有量の乾燥品a′?e′を得た。」(4頁右上欄下から9行?最下行)
(キ)表7(4頁右下欄)から、
「二酸化塩素化合物c」について、
・花弁状珪酸カルシウム 100重量部
・50%水酸化ナトリウム水溶液 8重量部
・25%亜塩素酸ナトリウム水溶液 39.6重量部
を含み、
・これら三者の重量部計 147.6重量部であり、
・「乾燥品c’」の重量部 118.8重量部であること。
(ク)表7(4頁右下欄)から、
「二酸化塩素化合物d」について、
・花弁状珪酸カルシウム 100重量部
・50%水酸化ナトリウム水溶液 10重量部
・25%亜塩素酸ナトリウム水溶液 40.3重量部
を含み、
・これら三者の重量部計 150.3重量部であり、
・「乾燥品d’」の重量部 122.0重量部であること。

3-1-2.甲第1号証に記載された発明
i)甲第1号証の記載事項(エ)には「安定化二酸化塩素剤は・・・セピオライトにアルカリ剤を添加混合した後二酸化塩素含有水溶液を添加混合して得られる。この場合二酸化塩素担持量はセピオライトの吸水能に左右されるので、担持量を増加するには・・・アルカリ剤を添加混合し乾燥後に二酸化塩素含有水溶液を担持させ乾燥する操作を繰返す等が行われる。」と記載されており、この記載は、二酸化塩素の担持量を増やす際には、二酸化塩素含有水溶液の添加と乾燥を繰り返すことを意味すると認められる。
してみると、同(オ)における「安定化二酸化塩素剤」の製造方法は、はじめに「セピオライト100重量部に50%水酸化ナトリウム水溶液15重量部を添加混合して120℃×3時間乾燥した」ものに、「25%亜塩素酸ナトリウム水溶液49重量部を添加混合し次いで60℃×5時間真空乾燥」を4回行い、そのようにして、セピオライト上に水酸化ナトリウムと亜塩素酸ナトリウムが添加された「安定化二酸化塩素剤」180重量部ができるものと解される。
ii)上記解釈に則して、製造された「安定化二酸化塩素」(乾燥状態)の諸量を計算すると、
「セピオライト」100重量部に、最初に添加された「水酸化ナトリウム」15重量部×50%と「亜塩素酸ナトリウム」の4回添加分49重量部×25%×4回を加えて、
100+7.5+49.0=156.5重量部の「安定化二酸化塩素」(乾燥状態)が製造されるものといえる。
なお、製造された「安定化二酸化塩素」において、アルカリ剤である「水酸化ナトリウム」は、「セピオライト」100重量部に対して7.5重量部添加されており、これは同(ウ)の「アルカリ剤の使用量は通常セピオライト100重量部に対して固形換算で1重量部以上好ましくは2?10重量部が適当」であるという記載に合致し、甲第1号証における「安定化二酸化塩素剤」の製造方法についての上記i)の当審の解釈が正しいことを示すものといえる。
iii)そして、同(イ)によれば「またセピオライトは吸保水能が極めて大きく、自重と同じ水分を吸収しても表面上乾燥状態を示すことができる」から、同(オ)で「安定化二酸化塩素剤180重量部を得た」のであるから、180重量部-156.5重量部=23.5重量部の水分を「セピオライト」が「吸保水」しているものといえる。
すると、4回目の操作終了後の「安定化二酸化塩素剤」の水分含有量の割合は、{(180重量部-156.5重量部)/180重量部}×100=
13.1重量%であるといえる。
iv)「セピオライト」上の「水酸化ナトリウム」の4回目の操作終了後の担持量は7.5重量部であり、同「亜塩素酸ナトリウム」の担持量は49.0重量部であるから、これらを「モル」に換算すれば、
水酸化ナトリウム NaOH=40.0g/モル
亜塩素酸ナトリウム NaClO_(2)=90.5g/モルであるから、
iv-1)1回目の操作後に、「水酸化ナトリウム」は7.5重量部/40.0g/モル=0.188モル、「亜塩素酸ナトリウム」は12.3重量部/90.5g/モル=0.135モルであるので、水酸化ナトリウムの担持量は、亜塩素酸ナトリウムの担持量に対して、0.188モル/0.135モル=1.38モル当量であるといえる。
iv-2)2回目の操作後に、「水酸化ナトリウム」は7.5重量部/40.0g/モル=0.188モル、「亜塩素酸ナトリウム」は24.5重量部/90.5g/モル=0.271モルであるので、水酸化ナトリウムの担持量は、亜塩素酸ナトリウムの担持量に対して、0.188モル/0.271モル=0.692モル当量であるといえる。
iv-3)3回目の操作後に、「水酸化ナトリウム」は7.5重量部/40.0g/モル=0.188モル、「亜塩素酸ナトリウム」は36.8重量部/90.5g/モル=0.406モルであるので、水酸化ナトリウムの担持量は、亜塩素酸ナトリウムの担持量に対して、0.188モル/0.406モル=0.462モル当量であるといえる。
iv-4)4回目の操作後に、「水酸化ナトリウム」は7.5重量部/40.0g/モル=0.188モル、「亜塩素酸ナトリウム」は49.0重量部/90.5g/モル=0.542モルであるので、水酸化ナトリウムの担持量は、亜塩素酸ナトリウムの担持量に対して、0.188モル/0.542モル=0.346モル当量であるといえる。
v)4回目の操作終了後の「安定化二酸化塩素剤」は「亜塩素酸ナトリウム」を49.0重量部担持しているから、「亜塩素酸ナトリウム」の担持量は「安定化二酸化塩素剤」の全量に対して、
100×49重量部/180重量部=27.2重量%であるといえる。
vi)以上から、本件訂正後の請求項1の記載に則して整理すれば、甲第1号証には、
「セピオライトに亜塩素酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを担持させてなる安定化二酸化塩素剤であり、水酸化ナトリウムの担持量が、亜塩素酸ナトリウムの担持量に対して、0.346モル当量であり、亜塩素酸ナトリウムの担持量が、二酸化塩素剤の全量に対して、27.2重量%であり、水分含有量が13.1重量%である安定化二酸化塩素剤。」の発明(以下、「引用発明1」という。)
が記載されていると認められる。

3-1-3.本件訂正発明1と引用発明1の対比
i)引用発明1の「セピオライト」は、本件訂正発明1の「無機多孔質担体」「無機多孔質担体が、セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライトであり」に相当し、以下同様に、「亜塩素酸ナトリウム」は「亜塩素酸塩」に、「安定化二酸化塩素剤」は「二酸化塩素剤」に相当する。
ii)以上から、本件訂正発明1と引用発明1とは、
「無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを担持させてなる二酸化塩素剤であり、無機多孔質担体が、セピオライトである二酸化塩素剤。」である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>「亜塩素酸塩の担持量」に対する「水酸化ナトリウムの担持量」について、本件訂正発明1では「0.7モル当量より多く、2モル当量以下」であるのに対して、引用発明1では「0.346モル当量」である点。
<相違点2>「二酸化塩素剤の全量」に対する「亜塩素酸塩の担持量」について、本件訂正発明1では「1?25重量%」であるのに対して、引用発明1では「27.2重量%」である点。
<相違点3>「水分含有量」について、本件訂正発明1では「10重量%以下」であるのに対して、引用発明1では「13.1重量%」である点。

3-1-4.相違点の検討
i)引用発明1は、甲第1号証の記載事項(エ)における操作の繰り返しを4回行ったものであるから、その操作回数によって、「亜塩素酸塩の担持量」に対する「水酸化ナトリウムの担持量」、「二酸化塩素剤の全量」に対する「亜塩素酸塩の担持量」、「水分含有量」が変化するので、以下に考察する。
ii)上記相違点1について、「亜塩素酸塩の担持量」に対する「水酸化ナトリウムの担持量」は、上記「3-1-2.iv-1)?iv-4)」より、1回目の操作終了後に1.38モル当量、2回目の操作終了後に0.692モル当量、3回目の操作終了後に0.462モル当量、4回目の操作終了後に0.346モル当量となるから、本件訂正発明1を満たす「0.7モル当量より多く、2モル当量以下」となるのは1回目の操作終了後だけとなる。
iii)そこで、次に相違点3について、1回目の操作終了後の「水分含有量」についてみてみる。
甲第1号証の記載事項(イ)から「セピオライトは吸保水能が極めて大きく、自重と同じ水分を吸収しても表面上乾燥状態を示す」ものであることを勘案すれば、「セピオライト」を担体とする「乾燥安定化二酸塩素剤」単位重量当たりの吸保水量の割合は略一定と考えられる。
すると、この吸保水の量すなわち1回目で製造された「安定化二酸塩素剤」に対する水分含有量の割合も、4回目と同様に13.1重量%となり、本件訂正発明1の「水分含有量が10重量%以下であること」と合致しない。
iv)以上から、引用発明1において、甲第1号証の記載事項(エ)における操作回数を調整しても、「亜塩素酸塩の担持量」に対する「水酸化ナトリウムの担持量」と「水分含有量」を同時に満たすものは存在しない。
v)また、甲第2号証には、「a)少なくとも一種の亜塩素酸金属塩。b)加水分解すると上記亜塩素酸金属塩と当量の次亜塩素酸を発生するトリクロロイソシアヌール酸、ジクロロイソシアヌール酸及びそれらのアルカリ金属塩からなる群の中から選ばれる少なくとも一つの反応剤。」と、水酸化ナトリウムを含まない多孔質吸着剤でなる「二酸化塩素ガス発生器」(特許請求の範囲1)を参照)が示され、二酸化塩素の発生機序は、「空気中の水分により加水分解して次亜塩素酸を遊離する。この遊離した次亜塩素酸と亜塩素酸塩類が反応することにより二酸化塩素ガスを発生する」(3頁右上欄5-8行)というもので、甲第1号証の水酸化ナトリムの存在下で亜塩素酸塩が空気と接触することで二酸化塩素を生成するという発生機序とは異なるから、引用発明に甲第2号証に記載の技術手段を適用するための動機付けに欠けるため、甲第2号証は参酌できない。
vi)したがって、相違点2について検討するまでもなく、引用発明に基いて本件訂正発明1をなすことは当業者が容易に成し得ることとはいえない。
vii)以上から、本件訂正発明1に係る特許は、同発明が甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに対してされたものでないから、取り消されるべきものでなく、進歩性要件違反についての取消理由は解消した。
また、本件訂正発明2、4ないし11は直接又は間接的に本件訂正発明1を引用し、本件訂正発明3は実質的に本件訂正発明1において「スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる」ことをさらに特定したものであるから、本件訂正発明2ないし11についても同様である。

3-2.新規性要件違反について
新規性要件違反の取消理由の概要は、刊行物1の記載事項(カ)?(ク)から、甲第1号証の比較例2には「無機多孔質担体」として「花弁状珪酸カルシウム」を用いる「安定化二酸化塩素剤」が記載されているとするものであるが、本件訂正発明1は「無機多孔質担体が、セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライト」に限定されているから、甲第1号証には本件訂正発明1は記載されていない。
したがって、本件訂正発明1に係る特許は、同発明が甲第1号証に記載された発明でないので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることのできないものに対してされたものでないから、新規性要件についての取消理由は解消した。
また、本件訂正発明2、4ないし11は直接又は間接的に本件訂正発明1を引用し、本件訂正発明3は実質的に本件訂正発明1において「スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる」ことをさらに特定したものであるから、本件訂正発明2ないし11についても同様である。

4.記載要件違反の取消理由及び特許異議申立人の申立理由について
4-1.記載要件違反の取消理由について
記載要件違反の取消理由は、訂正前の請求項3に係る発明について、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームであるから明確性を欠く旨を通知したもので、訂正後の本件訂正発明3は「製造方法」の発明に訂正されているので、同取消理由は解消している。

4-2.特許異議申立人の申立理由について
取消理由で通知していない特許異議申立人の申立理由について、以下に当審の判断を述べる。
(1)新規性要件違反について
異議申立人は、甲第1号証の表2の「実施例1」からは「亜塩素酸塩の担持量」に対する「水酸化ナトリウムの担持量」を、同表7の「比較例2」からは水分量を計算して両者を組み合わせたものが訂正前の請求項1に係る発明に相当するという論理で、訂正前の請求項1に係る発明は新規性を有さない旨の主張をしており、両者を組わせることができる動機付けを甲第1号証の記載に見いだせないから、当該論理による申立理由は採用できない。
(2)進歩性要件違反について
甲第1号証を(1)と同様に判断し、上記「第3 3-1-4.v)」に記載した内容の甲第2号証を、空気に触れさせるのに蓋を開けることは甲第2号証に記載されているように周知技術である旨の内容で適用しようとするものであり、(1)と同様に採用できない。
(3)記載要件違反について
訂正前の請求項2の「無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを含ませ、乾燥させて得られるものである」との記載は、「二酸化塩素剤」が「無機多孔質担体」に「亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウム」が保持されて乾燥した状態にあることを表すもので経時的な変化を示すものではないから、プロダクトバイプロセスクレームではなく、明確性を満たすものといえる。

5.むすび
以上のとおりであるから、取消理由に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、訂正された本件請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、訂正された本件請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを担持させてなる二酸化塩素剤であり、水酸化ナトリウムの担持量が、亜塩素酸塩の担持量に対して、0.7モル当量より多く、2モル当量以下であり、亜塩素酸塩の担持量が、二酸化塩素剤の全量に対して、1?25重量%であり、無機多孔質担体が、セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライトであり、水分含有量が10重量%以下であることを特徴とする二酸化塩素剤。
【請求項2】
無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを含ませ、乾燥させて得られるものである請求項1に記載の二酸化塩素剤。
【請求項3】
無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを担持させてなる二酸化塩素剤であり、水酸化ナトリウムの担持量が、亜塩素酸塩の担持量に対して、0.7モル当量より多く、2モル当量以下であり、亜塩素酸塩の担持量が、二酸化塩素剤の全量に対して、1?25重量%であり、無機多孔質担体が、セピオライト、パリゴルスカイト、モンモリロナイト、シリカゲル、珪藻土、ゼオライト、又はパーライトであり、水分含有量が10重量%以下であり、無機多孔質担体に亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを含ませ、乾燥させて得られることを特徴とする二酸化塩素剤の製造方法であって、スプレー法により、亜塩素酸塩及び水酸化ナトリウムを無機多孔質担体に含ませる二酸化塩素剤の製造方法。
【請求項4】
二酸化塩素剤の全量に対して、亜塩素酸塩を1?20重量%担持している請求項1又は2に記載の二酸化塩素剤。
【請求項5】
無機多孔質担体100重量部に対して、亜塩素酸塩を1?40重量部担持している請求項1又は2に記載の二酸化塩素剤。
【請求項6】
無機多孔質担体100重量部に対して、濃度1?46重量%の亜塩素酸塩及び濃度1?60重量%の水酸化ナトリウムを含む溶液を10?100重量部含ませる請求項2、4及び5の何れかに記載の二酸化塩素剤。
【請求項7】
無機多孔質担体が、濃度10重量%で水に懸濁させた懸濁液がアルカリ性を示すものである請求項1、2、4?6の何れかに記載の二酸化塩素剤。
【請求項8】
無機多孔質担体がパリゴルスカイト、又はセピオライトである請求項1、2、4?7の何れかに記載の二酸化塩素剤。
【請求項9】
水分含有量が5重量%以下である請求項1、2、4?8の何れかに記載の二酸化塩素剤。
【請求項10】
請求項1、2、4?9の何れかに記載の二酸化塩素剤を、使用時までは、二酸化炭素及び/又は水蒸気との接触を抑制し、使用時に、酸化性物質と接触させずに、二酸化炭素及び水蒸気を含むガスと接触させることにより二酸化塩素を発生させることを特徴とする二酸化塩素の発生方法。
【請求項11】
二酸化塩素剤を、使用時までは、二酸化炭素及び水蒸気との接触を遮断し、使用時に空気と接触させる請求項10に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-14 
出願番号 特願2013-518119(P2013-518119)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C01B)
P 1 651・ 113- YAA (C01B)
P 1 651・ 537- YAA (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 廣野 知子  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 中澤 登
山本 雄一
登録日 2016-05-13 
登録番号 特許第5928458号(P5928458)
権利者 株式会社大阪ソーダ
発明の名称 二酸化塩素剤及び二酸化塩素の発生方法  
代理人 岩谷 龍  
代理人 岩谷 龍  
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