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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
審判 全部申し立て 発明同一  B01J
管理番号 1334345
異議申立番号 異議2016-701169  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-22 
確定日 2017-10-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5938819号発明「排気ガス処理用酸化触媒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5938819号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第5938819号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯

本件特許第5938819号は、平成23年10月6日に出願された特願2011-221896号の特許請求の範囲に記載された請求項1に係る発明について、平成28年5月27日に設定登録がされたものであり、その後、その特許について特許異議の申立てがされ、平成29年3月24日付けで取消理由を通知したところ、特許権者より同年6月26日付けで訂正請求と共に意見書が提出され、これに対し、申立人より同年8月4日付けで意見書が提出されたものである。

第2.訂正請求について

1.訂正の内容

上記訂正請求は、次の訂正事項よりなる(下線部が訂正箇所)。

訂正事項
請求項1に「排気ガス中の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)を酸化処理する、酸化触媒。」とあるのを「排気ガス中の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)を酸化処理し、前記ウォッシュコート材はアルミナ又はアルミナの複合酸化物であり、前記炭化水素吸着材はゼオライトである、酸化触媒。」と訂正する。

2.訂正要件の判断

上記訂正事項は、請求項1に記載された「酸化触媒」の発明において、触媒層を構成している「ウォッシュコート材」及び「炭化水素吸着材」をそれぞれ具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件明細書の【0016】には「炭化水素吸着材としては、ゼオライト・・・などを挙げることができる。」、また【0017】には「・・・ウォッシュコート材としては、・・・好ましくは、・・・Al_(2)O_(3)・・・が挙げられ、・・・Al_(2)O_(3)・・・を主成分とした複合酸化物を用いることもできる。」と記載されていたから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび

以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の5第2項第1号に規定された事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、これを認める。

第3.本件発明について

本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認められる。

【請求項1】
担体基材と、該担体基材に担持された複数の触媒層とを備えてなる、排気ガス処理用酸化触媒であって、
前記複数の触媒層が、ウォッシュコート材と、活性金属と、炭化水素吸着材とを含んでなるものであり、
触媒表層側に一の触媒層が存在し、前記一の触媒層よりも下層側に他の触媒層が存在してなり、この一の触媒層および他の触媒層のそれぞれの触媒層が、ウォッシュコート材と、活性金属と、炭化水素吸着材とを含んでなるものであり、
前記一の触媒層における前記炭化水素吸着材の存在量(担体1リットルあたりの重量)が、他の触媒層における前記炭化水素吸着材の存在量(担体1リットルあたりの重量)よりも多いものであり、
前記一の触媒層における前記活性金属の存在濃度が0.05?0.3質量%であって、前記他の触媒層における前記活性金属の存在濃度(質量%)よりも少ないものであり、前記他の触媒層における前記活性金属の存在濃度が0.5?3質量%であり、排気ガス中の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)を酸化処理し、前記ウォッシュコート材はアルミナ又はアルミナの複合酸化物であり、前記炭化水素吸着材はゼオライトである、酸化触媒。

第4.通知した取消理由について

(1)当審にて通知した取消理由は、要するに、
「訂正前の請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」というものであり、具体的には、
「本件明細書の【0016】及び【0017】に、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等が、「炭化水素吸着材」と「ウォッシュコート材」の両方に例示されていることから、訂正前の請求項1に係る発明は、発明特定事項である「炭化水素吸着材」と「ウォッシュコート材」を区別することができない点で明確でない。」こと、及び、
「本件明細書には、訂正前の請求項1に係る発明の具体例として、炭化水素吸着材としてゼオライト、ウォッシュコート材としてアルミナを用いた「実施例3」しか記載されていないから、そのほかの炭化水素吸着材とウオッシュコート材を用いた場合に、実施例3と同様に課題を解決できるものとはいえない。」ことを指摘したものである。

(2)これに対し、本件発明は、訂正により、炭化水素吸着材をゼオライトに、ウォッシュコート材をアルミナ又はアルミナの複合酸化物に限定したものになった。
したがって、上記取消理由には理由がない。

(3)なお、申立人は意見書で、ゼオライトはアルミナの複合酸化物といえるから、依然として上記取消理由には理由があると主張しているが、ゼオライトは、シリコン(Si)とアルミニウム(Al)の複合酸化物ではあるが、アルミナ(Al_(2)O_(3))とは結晶構造も特性も異なるから、アルミナの複合酸化物とはいえない。
したがって、上記主張は採用できない。

第5.採用しなかった申立理由について

申立人は、
甲第1号証:特開2011-220123号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証:特開平9-10601号公報 (以下「甲2」という。)
甲第3号証:特開平11-276907号公報 (以下「甲3」という。)
甲第4号証:特表2010-521301号公報(以下「甲4」という。)
を提出し、
訂正前の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであること、
訂正前の請求項1に係る発明は、甲4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものであること、及び
訂正前の請求項1に係る発明は、甲4に記載された発明又は甲2と甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであることをそれぞれ主張している。
しかしながら、以下のとおり、いずれの主張も採用できない。

1.拡大先願(特許法第29条の2)について

(1)甲1の【0041】には、「触媒2」として、
「基材として壁厚3mil、600cpsiの1.1Lコージェライト基材を使用した。上層にβ-ゼオライト60g/LとPt/Pd/Al_(2)O_(3)が0.67/0.134g/25g/Lとバインダ、下層にβ-ゼオライト30g/LとPt/Pd/Al_(2)O_(3)が1.33/0.266g/35g/LとPd/Al_(2)O_(3)が0.6/15g/Lとバインダを塗布し、排気浄化触媒を調製した。」ことが記載されている。

(2)本件発明とこの触媒2とを対比すると、触媒2では、「活性金属」である「Pt及びPd」の存在濃度が、本件発明の「他の触媒層」に相当する「下層」で約2.7質量%と0.5?3質量%の範囲内にある一方、本件発明の「一の触媒層」に相当する「上層」で約0.93質量%と0.05?0.3質量%の範囲外である点で相違する。
ここで、申立人は、甲1の【0016】に「Ptを・・・0.1?2g/L-触媒の量を担持したものが好適である」と記載されていることから、上記触媒2において、Pt総量を2gから0.1gに減らすことで、上層の活性金属を0.3質量%以下とすることも、実質的に開示されていると主張している。

(3)しかしながら、触媒2の各層の配合はPt総量が2gの場合の一例にすぎず、Pt総量を減らした場合に、他の配合量をそのまま採用するとは考えられない。例えば、活性金属量を減らせば担体であるAl_(2)O_(3)量も当然に減らされるものと解される。さらに【0021】に「・・・上層の貴金属の担持量(M_(U))と下層の貴金属の担持量(M_(D))との割合(M_(U)/M_(D)、質量比)が0.1以上1.5以下であることが特に好適である」と記載されていることから、そもそも甲1記載の触媒は、上層の活性金属量を下層の活性金属量より少なくすることを前提にしているわけではない。
してみると、【0016】及び【0041】の記載により、活性金属であるPt及びPdの存在濃度を、下層で0.5?3質量%にすると共に、上層で0.05?0.3質量%にすることが開示されているとは認められない。

(4)したがって、本件発明が甲1に記載された発明と実質的に同一であるとはいえない。

2.新規性進歩性(特許法第29条)について

(1)甲4には、第1,第2の層に、それぞれアルミナ、セリア、ジルコニアとパラジウム(及びロジウム)を異なる量で担持させた二重層三元触媒が記載されているが、セリア、ジルコニアが炭化水素吸着材として機能することが記載されているわけではないし、これらをゼオライトに代えることが記載ないし示唆されているわけでもない。
したがって、本件発明は、甲4に記載された発明ではないし、同発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)甲2には、ベースコート層に、アルミナ、セリア及びパラジウム、オーバーコート層に、HCを吸着するZSM-5(ゼオライト)と共にセリア及びパラジウムを担持させた排気ガス浄化用触媒が記載されているが、ベースコート層に、HCを吸着するゼオライトを担持させることについて記載も示唆もない。また、甲3には、多層構造の排気ガス浄化用触媒において、白金及びパラジウムの濃度を表層ほど低くなるようにすることが記載されているにすぎない。
したがって、本件発明は、甲2と甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6.むすび

以上のとおりであるから、取消理由及び申立理由によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体基材と、該担体基材に担持された複数の触媒層とを備えてなる、排気ガス処理用酸化触媒であって、
前記複数の触媒層が、ウォッシュコート材と、活性金属と、炭化水素吸着材とを含んでなるものであり、
触媒表層側に一の触媒層が存在し、前記一の触媒層よりも下層側に他の触媒層が存在してなり、この一の触媒層および他の触媒層のそれぞれの触媒層が、ウォッシュコート材と、活性金属と、炭化水素吸着材とを含んでなるものであり、
前記一の触媒層における前記炭化水素吸着材の存在量(担体1リットルあたりの重量)が、他の触媒層における前記炭化水素吸着材の存在量(担体1リットルあたりの重量)よりも多いものであり、
前記一の触媒層における前記活性金属の存在濃度が0.05?0.3質量%であって、前記他の触媒層における前記活性金属の存在濃度(質量%)よりも少ないものであり、前記他の触媒層における前記活性金属の存在濃度が0.5?3質量%であり、排気ガス中の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)を酸化処理し、
前記ウォッシュコート材はアルミナ又はアルミナの複合酸化物であり、前記炭化水素吸着材はゼオライトである、酸化触媒。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-22 
出願番号 特願2011-221896(P2011-221896)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B01J)
P 1 651・ 113- YAA (B01J)
P 1 651・ 161- YAA (B01J)
P 1 651・ 537- YAA (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山口 俊樹  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 山本 雄一
大橋 賢一
登録日 2016-05-27 
登録番号 特許第5938819号(P5938819)
権利者 ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
発明の名称 排気ガス処理用酸化触媒  
代理人 園田・小林特許業務法人  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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