• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C11D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
管理番号 1334353
異議申立番号 異議2015-700174  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-11-12 
確定日 2017-09-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5718636号発明「安定な酵素溶液及び製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5718636号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第5718636号の請求項1、6及び7に係る発明についての特許を取り消す。 特許第5718636号の請求項2ないし5及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第5718636号に係る出願(特願2010-500277号、以下「本願」という。)は、2008年3月27日(パリ条約に基づく優先権主張:2007年3月27日、デンマーク王国)の国際出願日になされたものとみなされる出願人ノボザイムス アクティーゼルスカブ(以下「特許権者」という。)によりなされた特許出願であり、平成27年3月27日に特許権の設定登録がなされたものである。

2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成27年11月12日付けで異議申立人ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア(以下「申立人」という。)により「特許第5718636号の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された発明についての特許を取消すべきである。」という趣旨の本件異議申立がなされた。

3.以降の手続の経緯
平成27年12月 1日付け 異議申立書副本送付(特許権者あて)
平成28年 3月 8日付け 取消理由通知(特許権者あて)
平成28年 3月18日 上申書(申立人)(甲号証訳文再提出)
平成28年 3月29日付け 上申書副本送付(特許権者あて)
平成28年 6月 9日 意見書・訂正請求書
平成28年 7月28日付け 通知書(申立人あて)
平成28年 9月15日 意見書(申立人)
平成28年11月28日付け 取消理由通知(決定の予告・特許権者あて)
平成29年 2月28日 意見書・訂正請求書
(なお、平成29年2月28日付けで訂正請求が行われたことにより、平成28年6月9日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされた。)

第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第22号証を提示し、具体的な取消理由として、以下の(1)ないし(17)が存するとしている。

(1)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第1号証に記載された発明であるか、当該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1」という。)
(2)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2」という。)
(3)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由3」という。)
(4)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第4号証に記載された発明であるか、当該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由4」という。)
(5)本件特許の請求項1ないし6及び8に係る発明は、いずれも甲第5号証に記載された発明であるか、当該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由5」という。)
(6)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第6号証に記載された発明であるか、当該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由6」という。)
(7)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明に甲第5号証、甲第6号証、甲第9号証又は甲第11号証に記載された知見を組み合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由7」という。)
(8)本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、いずれも甲第7号証に記載された発明に甲第5号証、甲第6号証、甲第9号証又は甲第11号証に記載された知見を組み合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由8」という。)
(9)本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、いずれも甲第8号証に記載された発明に甲第5号証、甲第6号証、甲第9号証又は甲第11号証に記載された知見を組み合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由9」という。)
(10)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第10号証に記載された発明に甲第2号証又は甲第3号証に記載された知見を組み合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由10」という。)
(11)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第11号証に記載された発明に甲第2号証又は甲第3号証に記載された知見を組み合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由11」という。)
(12)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第12号証に記載された発明に甲第2号証又は甲第3号証に記載された知見を組み合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由12」という。)
(13)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第13号証に記載された発明に甲第2号証又は甲第3号証に記載された知見及び甲第5号証、甲第6号証、甲第9号証又は甲第11号証に記載された知見を組み合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由13」という。)
(14)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、いずれも甲第2号証又は甲第3号証に記載された発明に甲第14号証又は甲第15号証に記載された知見を組み合わせることによって、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではないから、その特許は同法第113条第1項第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由14」という。)
(15)本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本願に係る願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものではなく、当該請求項1ないし8につきなされた補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであるから、その補正がなされた本願に係る本件特許は、同法第113条第1項第1号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由15」という。)
(16)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が不備であり、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないか、本件特許の請求項1ないし8に関して、同各請求項の記載が不備であり、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、いずれにしても、その特許は同法第113条第1項第4号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由16」という。)
(17)本件特許の請求項1ないし8に関して、同各請求項の記載が不備であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないから、その特許は同法第113条1項4号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由17」という。)

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:国際公開01/96518号(抄訳添付)
甲第2号証:特表平10-511855号公報
甲第3号証:特表平11-507680号公報
甲第4号証:特開平6-346089号公報
甲第5号証:特表2005-515180号公報
甲第6号証:国際公開94/29428号(抄訳添付)
甲第7号証:特表2006-527276号公報
甲第8号証:国際公開2004/009752号(抄訳添付)
甲第9号証:国際公開02/08398号(抄訳添付)
甲第10号証:米国特許出願公開2003/0109406号明細書(抄訳添付)
甲第11号証:米国特許第5510052号明細書(抄訳添付)
甲第12号証:国際公開02/24851号(抄訳添付)
甲第13号証:特表平6-507198号公報
甲第14号証:David S.Hage編集“Handbook of Affinity Chromatography(Second Edition)”CHROMATOGRAPHIC SCIENCE SERIES Vol.92(2005年)p.215-229(抄訳添付)
甲第15号証:Journal of Chromatography,155(1978)p.329-336(抄訳添付)
甲第16号証:Biochemical and Biophysical Research Communications,Vol.176,No.1,(1991)p.401-405(抄訳添付)
甲第17号証:Molecular and Cellular Biochemistry,Vol.51(1983)p.5-32(抄訳添付)
甲第18号証:Proceedings of National Academy of Sciences,Vol.68,No.2,(1971)p.478-480(抄訳添付)
甲第19号証:Current Opinion in Chemical Biology,Vol.10(2006)p.658-663(www.sciencedirect.comで配信されたもの。抄訳添付)
甲第20号証:国際公開03/083030号(抄訳添付)
甲第21号証:本件特許(特許第5718636号)の特許公報
甲第22号証:本願に係る平成25年7月3日付け意見書
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲22」と略していう。)

第3 平成29年2月28日付け訂正請求の適否

1.訂正請求の内容
上記平成29年2月28日付け訂正請求では、本件特許の特許請求の範囲を、請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?8について一群の請求項ごとに訂正することを求めるものであり、以下の訂正事項を含むものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「当該塩成分が、塩化物、硫酸塩、硝酸塩又は酢酸塩であるアニオン、並びにCa、Mg、Zn、K又はNH_(4)、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上のカチオンを含み、」を、「当該塩成分が、塩化物、硫酸塩、又は硝酸塩であるアニオン、並びにMg、Zn、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上のカチオンを含み、」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「C_(1)?C_(6)アルキル、置換されたC_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)アルケニル及び置換されたC_(1)?C_(6)アルケニル」を、「C_(1)?C_(6)アルキル、及びC_(1)?C_(6)アルケニル」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、「で表される、前記組成物」を、「で表され、当該酵素成分がセリンプロテアーゼである、前記組成物」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2?5及び8を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6における「請求項1?5のいずれか1項」を、「請求項1」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7における「請求項1?6のいずれか1項」を、「請求項1」に訂正する。

2.検討
なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし8を「旧請求項1」ないし「旧請求項8」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし8を「新請求項1」ないし「新請求項8」という。

(1)訂正の目的要件について
上記の訂正事項1ないし6による訂正の目的につき検討すると、訂正事項1ないし3は、旧請求項1について、塩成分のカチオン及びアニオン並びにフェニルボロン酸の誘導体の官能基に係る各並列的選択肢の一部を削除し、また、酵素成分につき旧請求項3の記載に基づきセリンプロテアーゼに限定して、新請求項1とするものであると共に、訂正事項4は、旧請求項1を引用する旧請求項2ないし5及び8を削除するものであるから、訂正事項1ないし4による訂正により、特許請求の範囲が減縮されていることが明らかであって、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項5及び6は、旧請求項1ないし5を引用する旧請求項6及び7につき、上記訂正事項1ないし3により減縮された新請求項1を引用するとともに、訂正事項4に係る請求項2ないし5の削除に伴い、引用関係を正したものであるから、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
してみると、上記訂正事項1ないし6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、訂正事項1ないし6による訂正により、特許請求の範囲が減縮されていることが明らかであるから、上記訂正事項1ないし6による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
してみると、上記訂正事項1ないし6による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定を満たすものである。

(3)一群の請求項について
本件訂正前の旧請求項2ないし8は、いずれも訂正請求の対象である旧請求項1を直接引用して記載されているものであるから、訂正前の旧請求項1ないし8は、一群の請求項に該当するものと認められる。

(4)小括
以上のとおり、上記訂正事項1ないし6を含む本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定の目的要件に適合するものであり、同法同条第4項及び同法同条第9項で準用する同法第126条第5項並びに第6項に規定する要件を満たしているものと認められるから、本件訂正を認める。

第4 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項
本件訂正後の本件特許に係る請求項1ないし8には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
酵素成分、フェニルボロン酸成分又はその誘導体、及び溶解した塩成分を含む液体組成物であり、当該塩成分が、塩化物、硫酸塩、又は硝酸塩であるアニオン、並びにMg、Zn、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上のカチオンを含み、当該塩成分の含有量が、組成物全体の0.5?10重量%であり、及び当該フェニルボロン酸の誘導体が、
【化1】


[式中、
Rは水素、ヒドロキシ、C_(1)?C_(6)アルキル、及びC_(1)?C_(6)アルケニルからなる群から選択される]
で表され、当該酵素成分がセリンプロテアーゼである、前記組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
請求項1に記載の液体組成物を製造するプロセスであり:
a) 液体を提供し;
b) a)の液体に前記水溶性の塩を添加し;
c) a)に前記酵素及び前記フェニルボロン酸又はその誘導体を、b)と同時に、又はb)の後に添加し;そして
d) その組成物を混合させる工程を含む前記プロセス。
【請求項7】
対象を洗浄するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項8】(削除)」
(以下、上記請求項1ないし8に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)

第5 当審の判断
当審は、
上記取消理由1につき依然として理由があるから、他の取消理由につき再度検討するまでもなく、本件発明1、6及び7についての特許はいずれも取り消すべきもの、
と判断する。
また、当審は、
本件特許の請求項2ないし5及び8に係る異議申立は、適法な訂正請求による訂正により各請求項の内容が削除され、申立の対象を欠くものとなり不適法なものとなったところ、その補正ができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきもの、
と判断する。
以下、詳述する。

I.各甲号証の記載事項及び記載された発明
上記取消理由1は、本件特許が特許法第29条に違反してされたものであることに基づくものであるから、当該理由につき検討するにあたり、申立人が提示した甲1ないし22に記載された事項の摘示及び当該事項に基づく甲1に係る引用発明の認定をそれぞれ行う。

1.甲1の記載事項及び記載された発明

(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。(なお、訳文は当審の仮訳であり、仮訳の下線は当審が付した。)

(1a)
「CLAIMS
1.A physically stable,concentrated isotropic liquid detergent composition comprising
(a)from 10 to 70% of an anionic,nonionic,cationic,zwitterionic active detergent material or mixtures thereof;
(b)from 0.0001 to 10% of protease;
(c)from 2 to 40% of at least one carbohydrate selected from oligosaccharides,polysaccharides and derivatives thereof;and
(d)less than 3% of an antioxidant selected from the group consisting of alkalimetalsulphites,alkalimetalbisulphites,alkalimetabisulphites or alkalimetalthiosulphates.
・・(中略)・・
3.A composition according to claim 1 or 2,characterised in that the composition further comprises more than 0.1 and less than 5% of a boron compound,preferably less than 3%,more preferably less than 2.5%.
・・(中略)・・
8.A method for the stabilisation of protease in a physically stable concentrated isotropic liquid detergent composition comprising the steps of
(I)formulating said composition comprising
(a)from 10 to 70% of an anionic,nonionic,cationic,zwitterionic active detergent material or mixtures thereof,
(b)from 0.0001% to 10% of protease;and
(c)less than 3% of an antioxidant selected from the group consisting of alkalimetalsulphites,alkalimetalbisulphites,alkalimetabisulphites or alkalimetalthiosulphates;and
(II)adding 2 to 40% of at least one carbohydrate selected from oligosaccharides,polysaccharides and derivatives thereof,to the composition prepared in step(I).
9.A method according claim 8,characterised in that the composition is according to any one of claim 2 to 7.」(第26頁?第27頁)
(特許請求の範囲
1.(a)アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性イオン性活性洗剤材料又はそれらの混合物を10?70%、
(b)プロテアーゼを0.0001?10%、
(c)オリゴ糖、多糖及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1種の炭水化物を2?40%、並びに
(d)アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ金属重亜硫酸塩、アルカリメタ重亜硫酸塩又はアルカリ金属チオ硫酸塩からなる群から選択される酸化防止剤を3%未満
含む、物理的に安定な濃縮等方性液体洗剤組成物。
・・(中略)・・
3.更に、ホウ素化合物を0.1%超5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは2.5%未満含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
・・(中略)・・
8.物理的に安定な濃縮等方性液体洗剤組成物においてプロテアーゼを安定化させる方法であって、
(I)(a)アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性イオン性活性洗剤材料又はそれらの混合物を10?70%。
(b)プロテアーゼを0.0001?10%、及び
(c)アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ金属重亜硫酸塩、アルカリメタ重亜硫酸塩又はアルカリ金属チオ硫酸塩からなる群から選択される酸化防止剤を3%未満
含む前記組成物を配合するステップと、
(II)ステップ(I)で調製した組成物に、オリゴ糖、多糖及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1種の炭水化物を2?40%加えるステップと
を含む、方法。
9.組成物が、請求項2から7のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。)

(1b)
「FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to an enzymatic liquid detergent composition with good enzyme-stability. In particular,the present invention concerns a concentrated and physically stable isotropic liquid detergent composition with good protease stability suitable for cleaning textile articles.」(第1頁第1行?第8行)
(技術分野
本発明は、良好な酵素安定性を有する酵素液体洗剤組成物に関する。特に、本発明は、織物品を洗浄するのに適した良好なプロテアーゼ安定性を有する、物理的に安定な濃縮等方性液体洗剤組成物に関する。)

(1c)
「ADDITIONAL ENZYME STABILISING SYSTEM

In most cases the inventive composition will not need an additional measure to stabilise the enzyme. However,if needed small amounts of additional stabilising systems can be added,for example,those comprising,boric acid,propylene glycol,short chain carboxylic acids,boronic acids,and mixtures thereof,designed to address different stabilisation problems depending on the type and physical form of the detergent composition.
Another stabilising approach is by use of borate species.See Severson,U.S.4,537,706.Borate stabilisers,when used,are preferably present in an amount of more than 0.1 and less than 5%,preferably less than 3%,more preferably less than 2.5% by weight of boric acid. Other borate compounds may be used such as borax or orthoborate suitable for liquid detergent use. Substituted boric acids such as phenylboronic acid,butaneboronic acid,p-bromophenylboronic acid or the like can be used in place of boric acid and reduced levels of total boron in detergent compositions may be possible though the use of such substituted boron derivatives.

ENZYMES

”Detersive enzyme”,as used herein,means any enzyme having a cleaning,stain removing or otherwise beneficial effect in a laundry application. Enzymes are included in the present detergent compositions for a variety of purposes,including removal of protein-based,carbohydrate-based, or triglyceride-based stains,for the prevention of refugee dye transfer,and for fabric restoration. Suitable enzymes include proteases,amylases,lipases,cellulases,peroxidases,and mixtures thereof. The enzyme may be of any suitable origin,such as vegetable,animal,bacterial,fungal and yeast origin. Preferred selections are influenced by factors such as pH-activity and/or stability optima,thermostability,and stability to active detergents,builders and the like. In this respect bacterial or fungal enzymes are preferred,such as bacterial amylases and proteases,and fungal cellulases.
・・(中略)・・
Preferred proteolytic enzymes are also modified bacterial serine proteases,such as those described in EP-A-251446(particularly pages 17, 24 and 98),and which is called herein ”Protease B”,and in EP-A- 199404,which refers to a modified bacterial serine proteolytic enzyme which is called ”Protease A” herein,Protease A as disclosed in EP-A-130756.」(第5頁第23行?第8頁第2行)
(追加の酵素安定化系
ほとんどの場合、本発明の組成物は、酵素を安定化させるための追加の手段を必要としない。しかし、必要であれば、洗剤組成物の種類及び物理的形状に応じた様々な安定化の問題に対処するために設計された少量の追加の安定化系、例えばホウ酸、プロピレングリコール、短鎖カルボン酸、ボロン酸及びそれらの混合物を含むもの、を加えることができる。
別の安定化アプローチは、ボレート種の使用によるものである。Severson、U.S.4,537,706参照。ボレート安定剤を使用するとき、これは、好ましくはホウ酸0.1重量%超5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらに、より好ましくは2.5重量%未満の量で存在する。他のボレート化合物、例えば液体洗剤用途に適したホウ砂又はオルトボレートを使用してもよい。置換ホウ酸、例えばフェニルボロン酸、ブタンボロン酸、p-ブロモフェニルボロン酸等をホウ酸の代わりに使用して、洗剤組成物中で全ホウ素レベルを低下させてもよく、これは、このような置換ホウ素誘導体の使用により可能となり得る。

酵素
本明細書で使用する「洗浄性酵素」とは、洗浄、しみ抜き又は洗濯用途において他の有益な効果を有する任意の酵素を意味する。酵素は、タンパク質系、炭水化物系又はトリグリセリド系のしみ抜き、浮遊染料移動の防止のため、及び生地の復元のためを含め様々な目的のために、本発明の洗剤組成物に含まれる。適当な酵素としては、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ及びそれらの混合物が挙げられる。酵素は、任意の適当な起源、例えば、植物起源、動物起源、細菌起源、真菌起源及び酵母起源のものであってよい。好ましい選択は、因子、例えばpH活性及び/又は至適安定性、熱的安定性並びに活性洗剤、ビルダー等に対する安定性により左右される。これに関連して、細菌又は真菌の酵素、例えば細菌アミラーゼ及び細菌プロテアーゼ、並びに真菌セルラーゼが好ましい。
・・(中略)・・
好ましいタンパク質分解酵素はまた、修飾された細菌性セリンプロテアーゼ、例えば、EP-A-251446(特に、17、24及び98頁)に記載されており、本明細書で「プロテアーゼB」と呼ばれるもの、及びEP-A-199404に記載されており、本明細書で「プロテアーゼA」と呼ばれる修飾された細菌性セリンタンパク質分解酵素と称するものもあり、プロテアーゼAはEP-A-130756に開示されている通りである。)

(1d)
「OPTIONAL INGREDIENTS

The compositions herein can further comprise a variety of optional ingredients. However,preferably they are substantially free of amine.A wide variety of other ingredients useful in detergent compositions can be included in the compositions herein,including other active ingredients,carriers,hydrotropes,processing aids,dyes or pigments,solvents for liquid formulations,solid fillers for bar compositions,etc. If high sudsing is desired,suds boosters such as the C10-C16 alkanolamides can be incorporated into the compositions,typically at 1%-10% levels. The C10-C14 monoethanol and diethanol amides illustrate a typical class of such suds boosters. Use of such suds boosters with high sudsing;adjunct surfactants such as the amine oxides,betaines and sultaines noted above is also advantageous. If desired,soluble magnesium salts such as MgC12(当審注:「MgCl2」の誤記と解される。),MgSO4,and the like,can be added at levels of,typically,0.1%-2%,to provide additional suds and to enhance grease removal performance.」(第14頁第15行?第29行)
(任意選択の成分
本明細書の組成物は、更に、様々な任意選択の成分を含むことができる。しかし、それらはアミンを実質的に含まないことが好ましい。他の活性成分、担体、ハイドロトロープ、加工助剤、染料又は顔料、液体配合物用の溶媒、固形組成物用の固体充填剤等を含む、洗剤組成物で有用な広範な種類の他の成分が、本明細書の組成物に含まれていてもよい。高起泡性が所望される場合、増泡剤、例えばC10?C16アルカノールアミドを典型的には1%?10%の量で組成物に組み込んでもよい。C10?C14モノエタノールアミド及びジエタノールアミドは、このような増泡剤の典型的な部類を例示している。このような増泡剤を、高起泡性補助界面活性剤、例えば上に記載のアミンオキシド、ベタイン及びスルタインと併用することも有利である。所望であれば、可溶性マグネシウム塩、例えば、MgCl_(2)、MgSO_(4)等を、更なる泡をもたらすために、及び油除去性能を向上させるために、通常0.1%?2%の濃度で加えることができる。)

(2)甲1に記載された発明
甲1には、「プロテアーゼを0.0001?10%・・含む、物理的に安定な濃縮等方性液体洗剤組成物」及び「更に、ホウ素化合物を0.1%超5%未満・・含むことを特徴とする、請求項1・・に記載の組成物」が記載されており(摘示(1a)の請求項1及び3参照。)、当該「組成物」が「良好な酵素安定性を有する酵素液体洗剤組成物」であることも記載されている(摘示(1b)参照。)
そして、上記甲1には、上記「ホウ素化合物」として、「必要であれば、洗剤組成物の種類及び物理的形状に応じた様々な安定化の問題に対処するために設計された少量の追加の安定化系、例えばホウ酸、・・ボロン酸及びそれらの混合物を含むもの、を加えることができる。」とともに、さらに上記「ホウ酸」に代えて「置換ホウ酸、例えばフェニルボロン酸、ブタンボロン酸、p-ブロモフェニルボロン酸等をホウ酸の代わりに使用して、洗剤組成物中で全ホウ素レベルを低下させてもよ」いことが記載されている(摘示(1c)の「追加の酵素安定化系」の欄参照。)。
また、甲1には、「酵素は、タンパク質系、・・のしみ抜き・・のためを含め様々な目的のために、本発明の洗剤組成物に含まれる。適当な酵素としては、プロテアーゼ・・が挙げられる」及び「酵素は、・・細菌又は真菌の酵素、例えば細菌アミラーゼ及び細菌プロテアーゼ、並びに真菌セルラーゼが好ましい」と記載され、「好ましいタンパク質分解酵素」すなわち「プロテアーゼ」として「修飾された細菌性セリンプロテアーゼ」が挙げられている(摘示(1c)の「酵素」の欄参照。)。
さらに、甲1には、「任意選択の成分」として、「所望であれば、可溶性マグネシウム塩、例えば、MgCl_(2)、MgSO_(4)等を、・・通常0.1%?2%の濃度で加えることができる」ことも記載されている(摘示(1d)参照。)。
そして、甲1には、「組成物が、請求項2から7のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする、請求項8に記載の方法」と記載され、請求項3の組成物、すなわち「更に、ホウ素化合物を0.1%超5%未満・・含むことを特徴とする、請求項1・・に記載の組成物」という「物理的に安定な濃縮等方性液体洗剤組成物においてプロテアーゼを安定化させる方法」についても記載されている(摘示(1a)の請求項3、請求項8及び請求項9参照。)。
してみると、甲1には、上記記載(特に下線部)からみて、
「セリンプロテアーゼなどの酵素、フェニルボロン酸などの酵素安定化剤及び塩化マグネシウム,硫酸マグネシウムなどの可溶性マグネシウム塩の0.1?2%を含む、酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明1」という。)、
「セリンプロテアーゼなどの酵素、フェニルボロン酸などの酵素安定化剤及び塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの可溶性マグネシウム塩の0.1?2%をそれぞれ任意の順序で混合してなる、甲1発明1の酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物の製造方法。」
に係る発明(以下「甲1発明2」という。)及び
「セリンプロテアーゼなどの酵素を含む酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物において、フェニルボロン酸などの酵素安定化剤と共に塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの可溶性マグネシウム塩の0.1?2%を添加使用する方法。」
に係る発明(以下「甲1発明3」という。)が記載されているものと認められる。

2.甲2の記載事項
上記甲2には、申立人が申立書第72頁第6行?第18行で主張するとおりの事項が記載されている。

3.甲3の記載事項
上記甲3には、申立人が申立書第77頁第5行?第15行で主張するとおりの事項が記載されている。

4.甲4の記載事項
上記甲4には、申立人が申立書第82頁第5行?第18行で主張するとおりの事項及び酵素安定化剤として水溶性カルシウム塩を使用できること(【0057】?【0058】)が記載されている。

5.甲5の記載事項
上記甲5には、申立人が申立書第86頁第6行?第24行で主張するとおりの事項が記載されている。

6.甲6の記載事項
上記甲6には、申立人が申立書第91頁第6行?第19行で主張するとおりの事項が記載されている。

7.甲7の記載事項
上記甲7には、申立人が申立書第100頁第8行?第14行で主張するとおりの事項が記載されている。

8.甲8の記載事項
上記甲8には、申立人が申立書第105頁第8行?第15行で主張するとおりの事項が記載されている。

9.甲9の記載事項
上記甲9には、申立人が申立書第97頁第3行?第8行で主張するとおりの事項が記載されている。

10.甲10の記載事項
上記甲10には、申立人が申立書第110頁第7行?第14行で主張するとおりの事項が記載されている。

11.甲11の記載事項
上記甲11には、申立人が申立書第115頁第7行?第19行で主張するとおりの事項が記載されている。

12.甲12の記載事項
上記甲12には、申立人が申立書第121頁第7行?第20行で主張するとおりの事項が記載されている。

13.甲13の記載事項
上記甲13には、申立人が申立書第126頁第8行?第15行で主張するとおりの事項が記載されている。

14.甲14の記載事項
上記甲14には、申立人が申立書第131頁第15行?第132頁第1行で主張するとおりの事項が記載されている。

15.甲15の記載事項
上記甲15には、申立人が申立書第132頁第2行?第6行で主張するとおりの事項が記載されている。

16.甲16、甲17及び甲18の記載事項
上記甲16、甲17及び甲18には、それぞれ、申立人が申立書第137頁第6行?第12行で主張するとおりの事項が記載されている。

17.甲19の記載事項
上記甲19には、申立人が申立書第140頁第20行?第24行で主張するとおりの事項が記載されている。

18.甲20の記載事項
上記甲20には、申立人が申立書第91頁第15行?第18行で主張するとおりの事項が記載されている。

19.甲21及び甲22について
甲21は本件特許に係る特許公報であり、甲22は本願の審査過程において、特許権者が提出した平成25年7月3日付け意見書であるから、特に記載事項を摘示することは行わない。

II.取消理由についての検討
甲1に記載された発明を主たる引用発明とする取消理由1につき本件の各発明ごとに検討する。

1.本件発明1について

(1)対比・検討
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1における「セリンプロテアーゼなどの酵素」、「フェニルボロン酸などの酵素安定化剤」、「塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの可溶性マグネシウム塩」並びに「酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物」は、それぞれ、本件発明1における「酵素成分」及び「当該酵素成分がセリンプロテアーゼである」、「フェニルボロン酸成分又はその誘導体」、「溶解した塩成分」及び「当該塩成分が、塩化物、硫酸塩・・であるアニオン、並びにMg・・からなる・・カチオンを含み」並びに「液体組成物」に相当し、また、甲1発明1における「塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの可溶性マグネシウム塩の0.1?2%を含む」は、本件発明1における「当該塩成分の含有量が、組成物全体の0.5?10重量%であり」との間で「0.5?2(重量)%」の範囲で重複するものといえる。
してみると、本件発明1と甲1発明1とは、
「酵素成分、フェニルボロン酸成分又はその誘導体、及び溶解した塩成分を含む液体組成物であり、当該塩成分が、塩化物又は硫酸塩であるアニオン、並びにMgからなるカチオンを含み、当該塩成分の含有量が、組成物全体の0.5?2重量%であり、当該酵素成分がセリンプロテアーゼである、前記組成物。」
の点で一致し、「組成物」なる物として区別できるような実質的な相違点が存するものとは認められない。
なお、仮に、実質的な相違点があったとしても、甲1には、プロテアーゼの安定性の指標である酵素活性残量72%が達成されることが開示されており(必要ならば第23頁第23行?第25頁第2行「Example 1-4」の結果参照。)、また、本件明細書の実施例に係る記載(【0114】?【0130】)からみても、本件発明1のものが当該相違点により甲1発明1に比して格別顕著な効果を奏し得るものと認めることはできないから、本件発明1が、甲1発明1に対して選択発明として成立するものでもない。
したがって、本件発明1は、甲1発明1と同一であるか、仮に同一でないとしても、本件発明1は、甲1発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)小括
よって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができないものである。

2.本件発明6について

(1)対比
本件発明6と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2における「酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物の製造方法」が、本件発明6における「液体組成物を製造するプロセス」に相当することが明らかであるから、両者は「液体組成物を製造するプロセス」の点で一致し、下記の2点において、相違するものといえる。

相違点1:本件発明6では「請求項1に記載の液体組成物を製造するプロセス」であるのに対して、甲1発明2では「甲1発明1の酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物の製造方法」である点
相違点2:本件発明6では「a)液体を提供し;b)a)の液体に前記水溶性の塩を添加し;c)a)に前記酵素及び前記フェニルボロン酸又はその誘導体を、b)と同時に、又はb)の後に添加し;そしてd)その組成物を混合させる工程」と添加順序につき規定されているのに対して、甲1発明2では、「セリンプロテアーゼなどの酵素、フェニルボロン酸などの酵素安定化剤及び塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの可溶性マグネシウム塩の0.1?2%をそれぞれ任意の順序で混合してなる」点

(2)検討

ア.相違点1について
本件発明6における「請求項1に記載の液体組成物」、すなわち「本件発明1の液体組成物」は、上記1.で説示したとおりの理由により、甲1発明1の「酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物」と同一であるから、上記相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。

イ.相違点2について
上記甲1発明2における「任意の順序」には、水溶性の塩を水などの溶媒(液体)に溶解させたものに酵素及び酵素安定化剤を添加する態様も含まれることが当業者に自明であり、更に本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を検討しても、本件発明6の添加順序とすることによる効果上の差異などが存するものでもない。
してみると、本件発明6の添加順序により液体組成物を構成した点に格別な技術的創意が存するものとは認められず、甲1発明2において、本件発明6のような添加順序とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、上記相違点2は、当業者が適宜なし得ることである。

ウ.本件発明6の効果について
さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき本件発明6の効果につき検討しても、本件発明6の添加順序を特に選択することにより、有意な効果上の差異などが存するものとも認められない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明6は、甲1に記載された発明(甲1発明2)に基いて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3.本件発明7について

(1)対比・検討
本件発明7と甲1発明3とを対比すると、甲1発明3における「酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物」は、「液体洗剤組成物」が被洗浄材を洗浄するために使用する物であることが明らかであるから、本件発明7における「対象を洗浄するための、・・組成物の使用」に相当し、また、甲1発明3における「セリンプロテアーゼなどの酵素を含」み、「フェニルボロン酸などの酵素安定化剤と共に塩化マグネシウム,硫酸マグネシウムなどの可溶性マグネシウム塩の0.1?2%を添加使用」してなる「酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物」は、すなわち、甲1発明1の「酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物」であるものと解されるから、当該「酵素安定性が良好な酵素含有液体洗剤組成物」は、上記1.で説示したとおりの理由により、本件発明7における「請求項1に記載の組成物」(すなわち、本件発明1)に相当するものといえる。
してみると、本件発明7と甲1発明3とは、
「対象を洗浄するための、請求項1に記載の組成物の使用」
の点で一致し、実質的な相違点が存するものとは認められない。
したがって、本件発明7は、甲1発明3と同一であるか、仮に同一でないとしても、本件発明7は、甲1発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)小括
よって、本件発明7は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができないものである。

4.検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1及び7は、いずれも甲1に記載された発明(甲1発明1及び甲1発明3)と同一であり、本件発明1、6及び7は、いずれも甲1に記載された発明(甲1発明1ないし甲1発明3)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

III.判断のまとめ
以上のとおり、本件発明1、6及び7は、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができないものであって、本件発明1、6及び7に係る特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消すべきものである。

第6 結び
以上のとおりであるから、本件発明1、6及び7についての特許はいずれも取り消すべきものである。
また、本件特許の請求項2ないし5及び8に係る異議申立は、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酵素成分、フェニルボロン酸成分又はその誘導体、及び溶解した塩成分を含む液体組成物であり、当該塩成分が、塩化物、硫酸塩、又は硝酸塩であるアニオン、並びにMg、Zn、及びそれらの組合せからなる群から選択される1つ以上のカチオンを含み、当該塩成分の含有量が、組成物全体の0.5?10重量%であり、及び当該フェニルボロン酸の誘導体が、
【化1】

[式中、
Rは水素、ヒドロキシ、C_(1)?C_(6)アルキル、及びC_(1)?C_(6)アルケニルからなる群から選択される]
で表され、当該酵素成分がセリンプロテアーゼである、前記組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
請求項1に記載の液体組成物を製造するプロセスであり:
a)液体を提供し;
b)a)の液体に前記水溶性の塩を添加し;
c)a)に前記酵素及び前記フェニルボロン酸又はその誘導体を、b)と同時に、又はb)の後に添加し;そして
d)その組成物を混合させる工程を含む前記プロセス。
【請求項7】
対象を洗浄するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項8】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-05-12 
出願番号 特願2010-500277(P2010-500277)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (C11D)
P 1 651・ 113- ZAA (C11D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 古妻 泰一  
特許庁審判長 國島 明弘
特許庁審判官 橋本 栄和
豊永 茂弘
登録日 2015-03-27 
登録番号 特許第5718636号(P5718636)
権利者 ノボザイムス アクティーゼルスカブ
発明の名称 安定な酵素溶液及び製造方法  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 古賀 哲次  
代理人 武居 良太郎  
代理人 平木 祐輔  
代理人 田中 夏夫  
代理人 新井 栄一  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 福本 積  
代理人 大島 浩明  
代理人 大島 浩明  
代理人 菊田 尚子  
代理人 青木 篤  
代理人 武居 良太郎  
代理人 福本 積  
代理人 石田 敬  
代理人 藤田 節  
代理人 青木 篤  
代理人 岩崎 正路  
代理人 池田 直俊  
代理人 渡辺 陽一  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ