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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特29条の2  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1334376
異議申立番号 異議2017-700269  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-14 
確定日 2017-10-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5993532号発明「揚げ春巻及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5993532号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1-6〕、〔7-8〕について、訂正することを認める。 特許第5993532号の請求項1、3ないし7に係る特許を維持する。 特許第5993532号の請求項2及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5993532号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)12月28日(優先権主張2015年5月28日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月26日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 荒井 夏代 より請求項1ないし8に係る発明の特許に対し特許異議の申立てがされ、平成29年4月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者より平成29年7月6日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、特許異議申立人より平成29年8月10日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否
1 平成29年7月6日付け訂正請求の訂正の内容
平成29年7月6日付け訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である」を加える(請求項1を引用する請求項3、及び請求項3を引用する請求項4ないし6も同様に訂正する。)。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「エタノールまたはエタノール含有物」とあるのを、「エタノール」に訂正する(請求項1を引用する請求項3、及び請求項3を引用する請求項4ないし6も同様に訂正する。)。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、「(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)」を加える(請求項1を引用する請求項3、及び請求項3を引用する請求項4ないし6も同様に訂正する。)。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3において、「請求項1または2に記載の」とあるのを、「請求項1に記載の」に訂正する。

(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7において、「該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である」を加える。

(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7において、「エタノールまたはエタノール含有物」とあるのを、「エタノール」に訂正する。

(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項7において、「(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)」を加える。

(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(10) したがって、特許権者は、特許請求の範囲を、以下のとおり、訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを請求する(下線は訂正箇所を示す。)。
「 【請求項1】
焼成前の春巻皮生地がエタノールを含有することを特徴とする春巻皮であって、該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である、春巻皮(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の春巻皮に中具材が包み込まれてなる、揚げ用春巻。
【請求項4】
冷蔵または冷凍されている、請求項3に記載の揚げ用春巻。
【請求項5】
請求項3または4に記載の揚げ用春巻を油ちょうした揚げ春巻。
【請求項6】
保温器内で保存するための請求項5に記載の揚げ春巻。
【請求項7】
焼成前の春巻皮生地にエタノールを含有させる工程を含むことを特徴とする揚げ春巻の製造方法であって、該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)、揚げ春巻の製造方法。
【請求項8】
(削除)」

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否並びに一群の請求項
(1) 訂正事項1は、請求項1の「焼成前の春巻皮生地がエタノールを含有する」ことについて、その含有量を「該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である」と訂正することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、本件特許明細書の【0012】等の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(2) 訂正事項2は、請求項1の「焼成前の春巻皮生地」が含有する「エタノールまたはエタノール含有物」を「エタノール」と訂正することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、本件特許明細書の【0013】等の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(3) 訂正事項3は、請求項1の焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類に対するエタノールの含有量について、「(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)」と訂正することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、さらに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(4) 訂正事項4は、請求項2を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(5) 訂正事項5は、請求項3において引用する請求項について「請求項1または2」を「請求項1」に限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(6) 訂正事項6は、請求項7の「焼成前の春巻皮生地がエタノールを含有する」ことについて、その含有量を「該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である」と訂正することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、本件特許明細書の【0012】等の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(7) 訂正事項7は、請求項7の「焼成前の春巻皮生地」が含有する「エタノールまたはエタノール含有物」を「エタノール」と訂正することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、本件特許明細書の【0013】等の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(8) 訂正事項8は、請求項7の焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類に対するエタノールの含有量について、「(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)」と訂正することで、特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、さらに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(9) 訂正事項9は、請求項8を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(10) 訂正事項1ないし5に係る訂正前の請求項1ないし6について、請求項2ないし5はそれぞれ請求項1を直接または間接に引用しているものであって、訂正事項1ないし3によって訂正される請求項1と一群の請求項である。また、訂正事項6ないし9に係る訂正前の請求項7ないし8について、請求項8は請求項7を引用しているものであって、訂正事項6ないし8によって訂正される請求項7と一群の請求項である。したがって、本件訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。

3 むすび
よって、本件訂正に係る訂正事項1ないし9は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、並びに、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、請求項〔1-6〕、〔7-8〕について、訂正することを認める。

第3 取消理由についての判断
1 本件特許に係る発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものである。(「第2 1 (10)」参照)

2 平成29年4月28日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである(なお、上記取消理由通知は本件特許異議の申立てにおいて申立てられたすべての申立理由を含んでいる。)。
(取消理由1) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物(甲1または甲3)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(取消理由2) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物(甲1及び2または甲3及び2)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(取消理由3) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願の日前(優先日前)の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記(甲4)の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



<甲号証一覧>
甲1:特開2002-186437号公報
甲2:特開2003-171号公報
甲3:特開2000-333631号公報
甲4:特願2015-101466号(特開2016-214122号)

3 上記取消理由1及び2については、以下のとおり理由がない。
(1) 請求項1に係る発明について
ア 甲1に記載された発明について
甲1には「焼成せず油ちょうされる春巻きの麺皮(本件特許の請求項1に係る発明の「春巻皮生地」に相当する。)がエタノールを含有する油ちょうされる春巻きの麺皮であって、該焼成せず油ちょうされる春巻きの麺皮全量に対するエタノールの含有量が、所定量である、油ちょうされる春巻きの麺皮。」(【0003】、【0005】?【0007】、【0016】、【0018】等の記載内容参照。)の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
しかしながら、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は甲1発明と、少なくとも、「エタノールの含有量」に関し、本件発明1では、「春巻皮生地全量に対」して「3.0重量%以上であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」のに対し、甲1発明では、「春巻皮生地全量に対」して「所定量であ」り、加えて「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」か否か不明である点(以下「相違点1」という。)で相違している。
ここで、本件発明1は、その構成により、本件発明の効果を奏するものであり、甲1発明から当業者が予想できるものとはいえないから、少なくとも上記相違点1は実質的な相違点であって、本件発明1は甲1発明ではなく、上記取消理由1について理由がない。
そして、甲2には「焼成せず油ちょうされる春巻きの皮(本件発明1の「春巻皮生地」に相当する。以下、同様。)がアルコールを含有する油ちょうされる春巻きの皮であって、該焼成せず油ちょうされる春巻きの皮全量に対するアルコールの含有量が、1.3重量%程度である、油ちょうされる春巻きの皮(ただし、該焼成せず油ちょうされる春巻きの皮製造(「調製」)に用いる原料粉(「穀粉類」)100質量部に対するアルコールの使用量(「含有量」)が、1?5質量部が適当である)。」(以下「甲2記載事項」という。特に、【0001】、【0002】、【0008】、【0013】、【0015】参照。)が記載されているが、本件発明1のような「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である、(春巻皮生地を焼成した)春巻皮(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)」は記載されていないから、上記相違点1に係る本件発明1の構成が記載されていないだけでなく、甲2記載事項は「焼成せず油ちょうされる春巻きの皮」であって「焼成せず油ちょうされる春巻きの皮製造に用いる原料粉100質量部に対するアルコールの使用量が、1?5質量部が適当である」点で、上記相違点1に係る本件発明1の構成と焼成の有無及びアルコールの含有量において相容れないものである。
そうすると、甲2記載事項を考慮しても、甲1発明をして、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
そして、本件発明1は、その構成により、特許明細書の【0010】に記載された「本発明の春巻皮を用いて製造した揚げ春巻は、加温状態で保存しても油ちょう直後の揚げ春巻に特有な『パリパリとした食感』と『ひきの弱い食感』が維持される。よって、本発明の春巻皮は、コンビニエンスストアなどにおいて、油ちょう後に保温器(ホットショーケース)内で一定時間保存して販売される揚げ春巻の製造に適している」との効果(以下「本件発明の効果」という。)を奏するものであり、甲1発明及び甲2記載事項から当業者が予想できるものとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、上記取消理由2について理由がない。

イ 甲3に記載された発明について
甲3には「焼成前の安定均一化した小麦粉バッター(本件発明1の「春巻皮生地」に相当する。以下、同様。)がエタノールを含有する春巻きの皮(「春巻皮」)であって、該焼成前の安定均一化した小麦粉バッター全量に対するエタノールの含有量が、所定量である、春巻きの皮。」(【0001】、【0011】、【0014】?【0016】等の記載内容参照。)の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。
しかしながら、本件発明1は甲3発明と、少なくとも、「エタノールの含有量」に関し、本件発明1では、「春巻皮生地全量に対」して「3.0重量%以上であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」のに対し、甲3発明では、「春巻皮生地全量に対」して「所定量であ」り、加えて「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」か否か不明である点(以下「相違点2」という。)で相違している。
ここで、本件発明1は、その構成により、本件発明の効果を奏するものであり、甲3発明から当業者が予想できるものとはいえないから、少なくとも上記相違点2は実質的な相違点であって、本件発明1は甲3発明ではなく、上記取消理由1について理由がない。
そして、既に「ア」で述べたとおり、甲2には、甲2記載事項が記載されているが、本件発明1のような「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である、(春巻皮生地を焼成した)春巻皮(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)」は記載されていないから、上記相違点2に係る本件発明1の構成が記載されていないだけでなく、「焼成せず油ちょうされる春巻きの皮」であって「焼成せず油ちょうされる春巻きの皮製造に用いる原料分100質量部に対するアルコールの使用量が、1?5質量部が適当である」点で、上記相違点2に係る本件発明1の構成とアルコールの含有量において相容れないものである。加えて、甲3発明と甲2記載事項とは春巻きの皮の焼成の有無において正反対であるから、甲3発明のエタノールの含有量として甲2記載事項のアルコール含有量を単純に参酌できるものではない。
そうすると、甲2に記載された事項を考慮しても、甲3発明をして、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件発明1は、甲3発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、上記取消理由2について理由がない。

(2) 請求項3ないし6に係る発明について
請求項3ないし6は直接・間接的に請求項1を引用するものであるから、請求項3ないし6に係る発明は本件発明1の発明特定事項をすべて含むところ、上述のとおり本件発明1は上記取消理由1及び2について理由がないから、同様の理由により、請求項3ないし6に係る発明は、上記取消理由1及び2について理由がない。

(3) 請求項7に係る発明について
ア 甲1に記載された発明について
甲1には、「焼成せず油ちょうされる春巻きの麺皮(本件特許の請求項7に係る発明の「春巻皮生地」に相当する。以下、同様。)にエタノールを含有させる工程を含む油ちょうした春巻き(「揚げ春巻」)の製造方法であって、該焼成せず油ちょうされる春巻きの麺皮全量に対するエタノールの含有量が、所定量である、油ちょうした春巻きの製造方法。」(【0003】、【0005】?【0007】、【0016】、【0018】等の記載内容参照。)の発明(以下「甲1方法発明」という。)が記載されている。
しかしながら、本件特許の請求項7に係る発明(以下「本件発明7」という。)は甲1方法発明と、少なくとも、「エタノールの含有量」に関し、本件発明7では、「春巻皮生地全量に対」して「3.0重量%以上であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」のに対し、甲1方法発明では、「春巻皮生地全量に対」して「所定量であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」か否か不明である点(以下「相違点3」という。)で相違している。
ここで、本件発明7は、その構成により、本件発明の効果を奏するものであり、甲1方法発明から当業者が予想できるものとはいえないから、少なくとも上記相違点3は実質的な相違点であって、本件発明7は甲1方法発明ではなく、上記取消理由1について理由がない。
そして、既に「(1) ア」で述べたとおり、甲2には、甲2記載事項が記載されているが、本件発明7のような「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)」点は記載されていないから、上記相違点3に係る本件発明7の構成が記載されていないだけでなく、「焼成せず油ちょうされる春巻きの皮製造に用いる原料分100質量部に対するアルコールの使用量が、1?5質量部が適当である」点で、上記相違点3に係る本件発明7の構成とアルコールの含有量において相容れないものである。
そうすると、甲2記載事項を考慮しても、甲1方法発明をして、上記相違点3に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件発明7は、甲1方法発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、上記取消理由2について理由がない。

イ 甲3に記載された発明について
甲3には「焼成前の安定均一化した小麦粉バッター(本件発明7の「春巻皮生地」に相当する。以下、同様。)にエタノールを含有させる工程を含む揚げた春巻き(「揚げ春巻」)の製造方法であって、該焼成前の安定均一化した小麦粉バッター全量に対するエタノールの含有量が、所定量である、揚げた春巻きの製造方法。」(【0001】、【0011】、【0014】?【0016】等の記載内容参照。)の発明(以下、「甲3方法発明」という。)が記載されている。
しかしながら、本件発明7は甲3方法発明と、少なくとも、「エタノールの含有量」に関し、本件発明7では、「春巻皮生地全量に対」して「3.0重量%以上であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」のに対し、甲3方法発明では、「春巻皮生地全量に対」して「所定量であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」か否か不明である点(以下「相違点4」という。)で相違している。
ここで、本件発明7は、その構成により、本件発明の効果を奏するものであり、甲3方法発明から当業者が予想できるものとはいえないから、少なくとも上記相違点4は実質的な相違点であって、本件発明7は甲3方法発明ではなく、上記取消理由1について理由がない。
そして、既に「(1) ア」で述べたとおり、甲2には、甲2記載事項が記載されているが、本件発明7のような「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)」点は記載されていないから、上記相違点4に係る本件発明7の構成が記載されていないだけでなく、「焼成せず油ちょうされる春巻きの皮製造に用いる原料分100質量部に対するアルコールの使用量が、1?5質量部が適当である」点で、上記相違点4に係る本件発明7の構成とアルコールの含有量において相容れないものである。
そうすると、甲2記載事項を考慮しても、甲3方法発明をして、上記相違点4に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、本件発明7は、甲3方法発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、上記取消理由2について理由がない。

(4) 特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人は、平成29年8月10日付け意見書(2ページ18行?3ページ12行、3ページ23?末行)において、甲1に記載された発明について、
(ア) 本件特許明細書の実施例及び比較例並びに図1及び2の記載からすると、本件特許に係る発明の課題は、「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である」ことではなく、むしろ春巻皮生地の焼成温度を低めに設定することにより解決されたとするのが妥当であり、「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である」ことについて、特許明細書においてその意義が不明確で、臨界的意義も示されていないから、焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量を3.0重量%以上とすることは、甲1発明において当業者が適宜なし得る設計事項である旨主張し、
(イ) 甲第5号証(特開平7-241178号公報)を意見書に添付し提出して、春巻き等のフライ様食品の油ちょう後の長時間経過後のパリパリ感(クリスピー感)を評価する方法として、ホットショーケース内で保存した後に評価することも従来行われているから、加温状態で保存後のパリパリ感の良さをもって、油ちょう後、時間が経過した後のパリパリ感の良さとは全く異なる効果のごとく特許権者が主張することは失当である旨、主張する。
しかし、上記(ア)の主張に関し、本件特許明細書には、焼成温度が春巻皮生地の凝固・硬さの状態に影響する旨記載されており(【0016】)、実施例及び比較例並びに図1及び2の記載からすると、本件特許に係る発明の課題が、春巻皮生地の焼成温度を低めに設定することにより解決されたという可能性も否定できないが、「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である」こと、すなわち「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量」を特定することにより本件特許に係る発明の課題が解決されたということも十分確認でき、特に図1及び2の記載からすると、「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である」実施例4ないし実施例7については、その他の実施例や比較例に比較して、本件発明の効果が認められる。よって、上記(ア)の主張は採用できない。
また、上記(イ)の主張に関し、甲第5号証記載の発明は、甲第5号証の特許請求の範囲の請求項1に「衣に包まれた中具の構造を有し、油調されているフライ様食品において、該衣に食用ワックスが含有されていることを特徴とする当該フライ様食品。」と記載されているように、「焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である」ことの効果について示唆するものとはいえず、上記(イ)の主張は採用できない。

イ 加えて、特許異議申立人は、平成29年8月10日付け意見書(4ページ下から8行?下から3行)において、甲3に記載された発明について、本件特許明細書には、エタノールの含有量3.0重量%以上の臨界的意義が示されておらず、保存後のパリパリ感等の食感を評価する方法として、ホットケース内で保存した後に評価することも従来行われており、加温状態で保存後のパリパリ感の良さをもって、油ちょう後、長間常温で保存した後のパリパリ感の良さとは全く異なる効果のごとく特許権者が主張することは失当である旨、主張するが、上記「ア」において(ア)の主張について述べたのと同様な理由により、また、既に述べたように本件発明の効果は甲3(方法)発明から当業者が予想できるものとはいえないから、該主張は採用できない。

4 上記取消理由3については、以下のとおり理由がない。
(1) 本件発明1について
甲4には「焼成前の春巻皮生地がエタノールを含有する春巻皮であって、該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、1.3重量%程度である、春巻皮(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である)。」(【特許請求の範囲】、【0001】、【0008】、【0014】、【0015】、【0040】?【0043】、【0046】?【0049】等の記載内容参照。)の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されている。
しかしながら、本件発明1は甲4発明と、少なくとも、「エタノールの含有量」に関し、本件発明1では、「春巻皮生地全量に対」して「3.0重量%以上であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」のに対し、甲4発明では、「春巻皮生地全量に対」して「1.3重量%程度であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である」点(以下「相違点5」という。)で相違している。特に、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」点と「0.5?5質量部である」点とは、正反対であって相容れない関係といえる。
そして、本件発明1は、その構成により、本件発明の効果を奏するものであり、甲4発明から当業者が予想できるものとはいえないから、少なくとも上記相違点5は実質的な相違点であって、本件発明1は甲4発明と同一ではなく、上記取消理由3について理由がない。

(2) 請求項3ないし6に係る発明について
請求項3ないし6は直接・間接的に請求項1を引用するものであるから、請求項3ないし6に係る発明は本件発明1の発明特定事項をすべて含むところ、上述のとおり本件発明1は上記取消理由3について理由がないから、同様の理由により、請求項3ないし6に係る発明は、上記取消理由3について理由がない。

(3) 本件発明7について
甲4には「焼成前の春巻皮生地にエタノールを含有させる工程を含む油ちょうした春巻き(本件発明7の「揚げ春巻」に相当する。)の製造方法であって、該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、1.3重量%程度である(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である)、油ちょうした春巻きの製造方法。」(【特許請求の範囲】、【0001】、【0008】、【0014】、【0015】、【0040】?【0043】、【0046】?【0049】等の記載内容参照。)の発明(以下、「甲4方法発明」という。)が記載されている。
しかしながら、本件発明7は甲4方法発明と、少なくとも、「エタノールの含有量」に関し、本件発明7では、「春巻皮生地全量に対」して「3.0重量%以上であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」のに対し、甲4方法発明では、「春巻皮生地全量に対」して「1.3重量%程度であ」り、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である」点(以下「相違点6」という。)で相違している。特に、「該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対」して「0.5?5質量部である場合を除く」点と「0.5?5質量部である」点とは、正反対であって相容れない関係といえる。
そして、本件発明7は、その構成により、本件発明の効果を奏するものであり、甲4方法発明から当業者が予想できるものとはいえないから、少なくとも上記相違点6は実質的な相違点であって、本件発明7は甲4方法発明と同一ではなく、上記取消理由3について理由がない。

(4) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成29年8月10日付け意見書(6ページ4?10行)において、甲4に記載された発明について、本件特許明細書には、エタノールの含有量3.0重量%以上の臨界的意義が示されておらず、春巻き等のフライ様食品の油ちょう後長時間放置後のパリパリ感を評価する方法の一態様として、ホットケース内で保存した後に評価することも従来行われており、加温状態で保存後のパリパリ感の良さをもって、油ちょう後4時間常温放置後のパリパリ感の良さと全く異なる効果のごとく主張することは失当である旨、主張するが、上記「3 (4) ア」において(ア)の主張について述べたのと同様な理由により、また、既に述べたように本件発明の効果は甲4(方法)発明から当業者が予想できるものとはいえないから、該主張は採用できない。

5 請求項2及び8に係る特許について
請求項2及び8に係る特許は、本件訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2及び8に対しての上記取消理由1ないし3については、対象となる請求項が存在しない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由通知に記載した上記取消理由1ないし3によっては、本件特許の請求項1、3ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項2及び8に係る特許は、本件訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2及び8に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼成前の春巻皮生地がエタノールを含有することを特徴とする春巻皮であって、該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である、春巻皮(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の春巻皮に中具材が包み込まれてなる、揚げ用春巻。
【請求項4】
冷蔵または冷凍されている、請求項3に記載の揚げ用春巻。
【請求項5】
請求項3または4に記載の揚げ用春巻を油ちょうした揚げ春巻。
【請求項6】
保温器内で保存するための請求項5に記載の揚げ春巻。
【請求項7】
焼成前の春巻皮生地にエタノールを含有させる工程を含むことを特徴とする揚げ春巻の製造方法であって、該焼成前の春巻皮生地全量に対するエタノールの含有量が、3.0重量%以上である(ただし、該焼成前の春巻皮生地調製に用いる穀粉類100質量部に対するエタノールの含有量が、0.5?5質量部である場合を除く)、揚げ春巻の製造方法。
【請求項8】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-10-02 
出願番号 特願2016-505345(P2016-505345)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 16- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 白井 美香保  
特許庁審判長 中村 則夫
特許庁審判官 田村 嘉章
窪田 治彦
登録日 2016-08-26 
登録番号 特許第5993532号(P5993532)
権利者 株式会社ニチレイフーズ
発明の名称 揚げ春巻及びその製造方法  
代理人 深見 伸子  
代理人 藤田 節  
代理人 深見 伸子  
代理人 平木 祐輔  
代理人 平木 祐輔  
代理人 藤田 節  
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