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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1334387
異議申立番号 異議2017-700256  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-13 
確定日 2017-10-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第5991905号発明「ペースト状香辛料の製造方法,及びそれにより得られるペースト状香辛料」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5991905号の請求項1?4に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5991905号の請求項1?4に係る特許(以下「本件特許」という。)に係る経緯は,概ね,次のとおりである。すなわち,平成24年11月29日に特許出願がなされ,平成28年8月26日に特許権の設定登録がなされたところ,平成29年3月13日に特許異議申立人奥谷宏邦により特許異議の申立てがなされた。平成29年4月27日付けで取消理由を通知し,期間を指定して,意見書を提出する機会を与えたが,特許権者から何らの応答はなかった。

第2 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件特許の請求項1?4に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりである。以下,本件特許に係る発明を請求項の番号に従って「本件発明1」などという。
【請求項1】
ペースト状香辛料の製造方法であって,
該ペースト状香辛料が,配合原料として少なくとも,食用油脂,香辛料,乳化剤,および糖アルコールを含有し,
該ペースト状香辛料の食用油脂含有量が12?65%,水分含有量が5?25%であり,配合原料である粉体の一部と食用油脂とを混合することにより粉体の油中分散物を調製する工程1,
および該油中分散物に他の原料を混合する工程2を有し,
工程1で食用油脂と混合する粉体の合計量が,ペースト状香辛料全体に対して5?50%である,
ペースト状香辛料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のペースト状香辛料の製造方法であって,
香辛料(固形分換算)を5?40%含む,
ペースト状香辛料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のペースト状香辛料の製造方法により得られるペースト状香辛料であって,
食用油脂12?65%,水分5?25%,香辛料,乳化剤,および糖アルコールを含有し,
ペースト状香辛料100gに対し水300gを添加し,ハンドホイッパーを用いて,25℃,120rpmで3分間撹拌混合し,その後5分間静置した際に,油相又は水相の分離が視認できない特性を有する,
ペースト状香辛料。
【請求項4】
請求項3記載のペースト状香辛料であって,
積分球式光電光度法を用いて濁度測定することにより得られる前記ペースト状香辛料の全光線透過率T1(対照:清水,波長390nm,光路長5mm)が,前記ペースト状香辛料を水で3倍に希釈することにより油脂が微細粒子化して乳化状態となった場合の全光線透過率T2よりも高い,
ペースト状香辛料。

2 取消理由の概要
本件特許に対し通知した取消理由は,概ね,次のとおりである。
(1) 本件特許は,特許請求の範囲の記載が後記3の点で不備のため,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。
(2) 本件特許は,特許請求の範囲の記載が後記4の点で不備のため,特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。
(3) 本件特許は,発明の詳細な説明の記載が後記5の点で不備のため,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり,取り消すべきものである。
(4) 本件発明1?4は,本件特許の出願前に日本国内又は外国において,頒布された後記6の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。

3 36条6項1号について
(異議申立書3(4)(4-1)(4?9頁)参照)
発明の詳細な説明の記載によれば,実施例1?9は,工程1において粉体原料の全てを食用油脂に混合させており,粉体原料の一部と食用油脂とを混合させていないから,本件発明1?4は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。
よって,請求項1?4の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。

4 36条6項2号について
(異議申立書3(4)(4-2)(9?10頁)参照)
本件発明3及び4は,「ペースト状香辛料」という物の発明であるが,「請求項1又は2に記載のペースト状香辛料の製造方法により得られるペースト状香辛料であって」(請求項3)とは,製造方法の発明を引用する場合に該当するため,当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。
ここで,物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号,平成24年(受)第2658号)。
しかしながら,本件特許明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がなく,当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとも言えない。
よって,本件発明3及び4は明確でないから,請求項3及び4の記載は,特許法36条6項2号の要件を満たしていない。

5 36条4項1号について
(異議申立書3(4)(4-3)(10?11頁)参照)
発明の詳細な説明の記載によれば,実施例1?9は,工程1において粉体原料の一部と食用油脂とを混合させていないから,発明の詳細な説明の記載が明らかに不十分である。
よって,発明の詳細な説明は,当業者が本件発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから,特許法36条4項1号の要件を満たしていない。

6 29条2項について
(異議申立書3(1),(4)(4-5)(2?3,11?15頁)参照)
(1) 甲号証
甲1号証:特開2006-149288号公報
甲2号証:特開2002-281898号公報
甲3号証:特開平11-56291号公報
(2) 本件発明1?4は,甲1号証に記載された発明及び甲2,3号証に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって,本件発明1?4は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
以上のとおり,本件特許は,特許法36条6項1号,同条6項2号,同条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法113条4号に該当し,取り消されるべきものである。
また,本件発明1?4(請求項1?4に係る発明)は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,本件特許は,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-09-14 
出願番号 特願2012-260410(P2012-260410)
審決分類 P 1 651・ 121- Z (A23L)
P 1 651・ 536- Z (A23L)
P 1 651・ 537- Z (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 太田 雄三  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 山崎 勝司
窪田 治彦
登録日 2016-08-26 
登録番号 特許第5991905号(P5991905)
権利者 キユーピー株式会社
発明の名称 ペースト状香辛料の製造方法、及びそれにより得られるペースト状香辛料  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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