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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23F
管理番号 1334388
異議申立番号 異議2017-700166  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-23 
確定日 2017-11-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第5977395号発明「抽出液の製造方法、及び苦みを抑えたコーヒーの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5977395号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5977395号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成27年5月18日に出願され、平成28年7月29日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人天笠勝により特許異議の申立てがされ、平成29年4月25日付けで取消理由が通知され、同年7月20日付けで意見書の提出があったものである。

2 本件発明
本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
加圧ガスを用いる加圧条件下で50℃以下の処理液をコーヒー豆に上方から注ぐことと、
前記コーヒー豆から抽出液を抽出することと、
を含み、
前記コーヒー豆の50重量%以上が粒度1000μm未満である、
アロマ及び甘みが強く苦みを抑えたコーヒーの製造方法であって、
前記抽出液を抽出することにおいて、加圧用ガスによって大気圧に加えて0.03MPa以上0.4MPa以下の圧力を抽出機内部に加える、
コーヒーの製造方法。
【請求項2】
前記コーヒー豆の70重量%以上が粒度1000μm未満である、請求項1に記載の苦みを抑えたコーヒーの製造方法。
【請求項3】
前記抽出液を抽出することにおいて、20℃以上50℃以下の処理液が前記コーヒー豆に注がれる、請求項1又は2に記載の苦みを抑えたコーヒーの製造方法。

3 取消理由の概要
当審において、平成29年4月25日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

本件発明1?3は、下記甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証?甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

甲第2号証:特開2002-177147号公報
甲第3号証:特開2004-261009号公報
甲第4号証:特表2011-507502号公報
甲第5号証:特開2012-239470号公報
甲第6号証:吉野梅夫、外2名、「市販焙煎コーヒーの性状と成分の抽出について」、家政学雑誌、Vol.30(1979)No.8、p.736-739

4 判断
(1)甲第2号証の記載
甲第2号証には、
「窒素ガスにより抽出室内を高圧力下に保ち、
フィルタ上に載置されたコーヒー豆に湯を降りかけ、
抽出室内の圧力を大気圧よりも高圧力にすることにより、フィルタ上に載置されたコーヒー豆への湯の浸透を短時間で達成させることができ、抽出も比較的短時間で行なうことができ、えぐみなどの不要な成分まで抽出されることはなく、
抽出室内の圧力を0.2?0.5MPaに設定する
コーヒー豆の抽出方法。」
の発明(以下「甲2発明」という。)が記載され(特に【請求項1】、【0020】、【0028】、【0030】、【0031】)、原料を抽出することができる処理液として、水や湯を用い得ること(【0022】)が記載されていると認められる。

(2)本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも、本件発明1は、「コーヒー豆の50重量%以上が粒度1000μm未満である」ことが特定されているのに対し、甲2発明は、コーヒー豆の粒度が特定されていない点で相違する。
上記相違点に関し、甲第3号証には、「処理対象食品を平均粒子径で20?50μm程度、好ましくは20?40μmの極めて細かく微粉砕して、60℃未満の低温溶媒を添加してエクルトルーダー処理をする」(【0021】)、「焙煎コーヒー豆は、エクストルーダー内で30?40μmの粒子に微粉砕されて抽出に供された。」(【0034】)との記載があり、甲第5号証には、「冷コーヒー飲料を製造する時は、細挽きコーヒー粉末(ホットコーヒー飲料を製造する時よりも、0から30%平均粒子サイズが小さい)が有利である。」(【0030】)との記載があり、甲第6号証(表4)によれば、市販焙煎コーヒーの粒度分布は、細挽きについて、平均で83.4%が14M(メッシュ)以上、すなわち、1.18mm未満であることが認められる。
しかしながら、甲第3号証には、「二軸エクストルーダーによって、コーヒー焙煎豆を平均粒子径で20?50μm程度、好ましくは20?40μmの極めて細かく微粉砕して、微粉砕したコーヒー焙煎豆表面積を大きくした後、二本のスクリュウ回転による効果的な混練効果により、低温域でも迅速に高濃度抽出することができるというものであり・・・ところが、・・・得られる固液懸濁液は、従来のネルおよび目開き数十μmのメッシュによるろ過作業では、効率的に且つ迅速に固液分離することは不可能であることが判明した。・・・本発明においては、この固液懸濁液を、連続固液分離装置、好ましくは連続固液分離装置の一種であるデカンターおよびこれと類似の遠心分離機によって連続的に固液分離する」(【0015】?【0018】)と記載されている。
すなわち、甲第3号証に記載されたコーヒーの製造方法は、コーヒー豆をエクストルーダー内で20?50μm程度に微粉砕、混練して固液懸濁液となし、これを遠心分離機によって連続的に固液分離するものであって、甲2発明の、フィルタ上に載置されたコーヒー豆に湯を降りかけて製造する方法とは前提となる方法が異なる。
さらに、甲第3号証には、上記のとおり、固液懸濁液をメッシュによるろ過作業により効率的に且つ迅速に固液分離することが不可能である旨記載され、従来の技術として、「工業的にニーダーおよび抽出カラムでドリップする場合には、微粉は目詰まりの原因となるため粉砕時の粒子径を3?5mm程度に統一すべく、予めシフター等で微粉除去を施す等する場合が多い」(【0002】)ことも記載されている。
そうすると、甲第3号証に、コーヒー豆を20?50μm程度に微粉砕するとの技術事項が記載されていても、当該技術事項は、甲2発明とは前提の異なるコーヒー製造方法についてのものである上、フィルタでろ過するには不適当であることも示唆されているのであるから、これを甲2発明に適用することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
また、甲第5号証には、「細挽きコーヒー粉末」との文言があるものの、具体的な粒度の記載はなく、甲第6号証には、8割以上が1.18mm未満の粒度である細挽きコーヒーが示されているものの、市販焙煎コーヒーについての開示であって、工業的にコーヒーを製造する場合に、当該細挽きコーヒーを用いることの記載はない。
そして、甲2発明は、甲第2号証の記載によれば、「豆の内部に含まれる香気を十分に抽出し、味が良くて高品質のコーヒーを工業的に大量生産できる」(【0009】)ものであり、一方、甲第3号証には上記のとおり、「工業的にニーダーおよび抽出カラムでドリップする場合には、微粉は目詰まりの原因となるため粉砕時の粒子径を3?5mm程度に統一」することが記載されていることに照らせば、甲2発明のコーヒー豆について、甲第6号証に開示される市販の細挽きコーヒーの粒度を採用する動機付けは認められない。
また、甲第4号証にも「コーヒー豆の50重量%以上が粒度1000μm未満である」ことの記載や示唆はない。
よって、上記相違点は、甲2発明及び甲第3号証?甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2発明及び甲第3号証?甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

(2)本件発明2、3について
本件発明2、3は本件発明1を減縮したものであるから、本件発明1と同様の理由で、甲2発明及び甲第3号証?甲第6号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

5 むすび
したがって、本件発明1?3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-10-31 
出願番号 特願2015-101139(P2015-101139)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 原 大樹  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 紀本 孝
佐々木 正章
登録日 2016-07-29 
登録番号 特許第5977395号(P5977395)
権利者 ザ コカ・コーラ カンパニー
発明の名称 抽出液の製造方法、及び苦みを抑えたコーヒーの製造方法  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  
代理人 内藤 和彦  

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