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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04R
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04R
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H04R
管理番号 1334394
異議申立番号 異議2017-700797  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-18 
確定日 2017-11-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6085504号発明「イヤホンコード」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6085504号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6085504号の請求項1に係る特許についての出願は、平成25年3月28日の出願であって、平成29年2月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年8月18日に特許異議申立人 特許業務法人みのり特許事務所により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6085504号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、本件発明は次のとおりのものである。

「【請求項1】
繊維断面の最も長い径をa、最も短い径をbとしたときに、下記式(1)で表される扁平率fが0<f<0.5となるような断面の溶融異方性芳香族ポリエステル繊維を芯糸に用いるイヤホンコードであって、該イヤホンコードをイヤホンハウジングに通してコード末端部に結節を作り、その結節をイヤホンハウジングに引っ掛けて作成した試験片をインストロンやオートグラフ等の万能試験機の片方にハウジングを固定し、もう片方にイヤホンコードを固定して引張試験を行った際、結節破断荷重の平均値が50N以上で、最低値が50N以上、かつ結節破断荷重のバラつきがCV値で3%以下であるイヤホンコード。
f = ( a - b ) / a ・・・ ( 1 )」

第3 申立理由の概要
1.申立理由1(進歩性)
特許異議申立人は、証拠として、下記の甲第1号証ないし甲第8号証を提出し、請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

記(証拠一覧)
甲第1号証:特開昭62-57993号公報
甲第2号証:特開2007-321060号公報
甲第3号証:特開2010-196207号公報
甲第4号証:特開2006-336147号公報
甲第5号証:本件出願経過書類(公開特許公報)
甲第6号証:本件出願経過書類(拒絶理由通知書)
甲第7号証:本件出願経過書類(意見書)
甲第8号証:本件出願経過書類(手続補正書)

2.申立理由2(実施可能要件)
特許異議申立人は、請求項1に係る特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

3.申立理由3(サポート要件)及び申立理由4(明確性)
(1)申立理由3(サポート要件)
特許異議申立人は、請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(2)申立理由4(明確性)
特許異議申立人は、請求項1に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、請求項1に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

第4 申立理由1(進歩性)について
1.甲第1号証ないし甲第4号証の記載
(1)甲第1号証(特開昭62-57993号公報)
甲第1号証には、「高強度ロープ」に関して、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
ア.「2.特許請求の範囲
構成モノマー単位のうち20?80モル%がp-ヒドロキシ安息香酸残基である溶融時に異方性を示す芳香族ポリエステルを溶融紡糸することによって得られる繊維を用いたことを特徴とする高強度ロープ。」(第1頁左下欄第4行?第9行)
イ.「本発明で用いる芳香族ポリエステル繊維は溶融紡糸で得られるため、紡糸口金、吐出条件、巻取条件等を変更することにより、用途、物性に応じた単繊維の径や断面形状を制御することができる。」(第3頁右上欄第6行?第10行)
ウ.「得られた繊維はほぼ真円に近い断面を持ち、」(第4頁右上欄第17行?第18行)

そして、上記アないしウの記載事項を総合勘案すると、甲第1号証には次の技術事項が記載されている。

「溶融時に異方性を示す芳香族ポリエステルを溶融紡糸することによって得られる繊維が、ほぼ真円に近い断面を持つようにすること。」

(2)甲第2号証(特開2007-321060号公報)
甲第2号証には「被覆付き繊維強化合成樹脂線状物」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
エ.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維からなる芯側補強繊維と、有機繊維からなる鞘側補強繊維と、前記無機繊維と前記有機繊維との間に介在するマトリックス樹脂と、前記鞘側補強繊維の外周を覆う外周被覆層とを含む被覆付き繊維強化合成樹脂線状物であって、
前記芯側補強繊維の外周に、前記鞘側補強繊維が、当該芯側補強繊維の周囲を包囲するように、真円状に配置されていることを特徴とする被覆付き繊維強化合成樹脂線状物。
(中略)
【請求項3】
前記鞘側補強繊維が、ポリエステル等の有機繊維であることを特徴とする請求項1記載の被覆付き繊維強化合成樹脂線状物。
(中略)
【請求項7】
前記被覆付き繊維強化合成樹脂線状物は、前記芯側補強繊維と、前記鞘側補強繊維、および、前記外周被覆層が、同真円状に配置され、その偏平率(真円率)が、7%以下(93%以上)とすることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項記載の被覆付き繊維強化合成樹脂線状物。」
オ.「【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、有機繊維と無機繊維とを規則的に配置することで、製造の容易性を確保し、かつ、性能のバラツキを小さくすることができる被覆付き繊維強化合成樹脂線状物を提供することにある。
カ.「【0025】
以上のように構成された被覆付き繊維強化合成樹脂線状物10によれば、芯側補強繊維12の外周に、鞘側補強繊維14が真円状に配置されているので、無機繊維と有機繊維との偏在がなくなり、性能のバラツキが非常に小さくなる。この結果、熱による収縮率及び熱処理後のサンプル形状の安定性に寄与する。」
キ.「【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明にかかる被覆付き繊維強化合成樹脂線状物によれば、有機繊維と無機繊維とを規則的に配置することで、製造の容易性を確保し、かつ、性能のバラツキを小さくすることができるので、光ファイバケーブルの抗張力体として有効に利用することができる。」

したがって、上記エないしキの記載事項と図面の記載とを総合勘案すると、甲第2号証には次の技術事項が記載されている。

「被覆付き繊維強化合成樹脂線状物において、性能のバラツキを小さくするために、無機繊維からなる芯側補強繊維の外周に、ポリエステル等の有機繊維からなる鞘側補強繊維を真円状に配置し、その偏平率(真円率)を7%以下(93%以上)とすること。」

(3)甲第3号証(特開2010-196207号公報)
甲第3号証には、「複合紐状品」に関して、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

ク.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
テンションメンバーと、このテンションメンバーを被覆する被覆材とを含む複合紐状品であって、
前記テンションメンバーが、下記[A]、[B]、[C]、[D]、[E]の反復構成単位からなる部分が90モル%以上であり、[A]:[B]:[C]:[D]:[E]=100:1?20:5?100:2?80:2?20のモル比を有する芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸され、
150℃雰囲気下の強度(T150)が17cN/dtex以上であり、かつ
150℃雰囲気下の弾性率(E150)が710cN/dtex以上である溶融異方性ポリエステルアミド繊維を含む耐熱性テンションメンバーである複合紐状品。
(以下省略)」
ケ.「【0002】
テンションメンバ-は、従来、給電、信号電送のためのコード類・ケーブル類において、引張破断を防止するための抗張力材として用いられている。」
コ.「【0073】
特に、本発明の複合紐状品は、高い耐ハンダ性が求められる細径(例えば、電線コード径が1.5mm以下、好ましくは0.5?1.0mm程度)の細径電線コード(例えば、イヤホンコードなど)や、高温雰囲気下で用いられる耐熱性ケーブル類、耐熱性電線などとして、有用である。」

そして、上記クないしコの記載事項を総合勘案すると、甲第3号証には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。

「芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸された溶融異方性ポリエステルアミド繊維を含むテンションメンバーを含むイヤホンコード。」

(4)甲第4号証(特開2006-336147号公報)
甲第4号証には、「極細溶融異方性芳香族ポリエステル繊維」に関して、以下の事項が図面とともに記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

サ.「【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径0.001?1μmの無機微粒子が単繊維表面に0.05?2質量%付着されてなり、単糸繊度が0.01?1.5dtex、熱処理後の強度が15cN/dtex以上である溶融異方性芳香族ポリエステル繊維。」
シ.「【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融異方性芳香族ポリエステル繊維、特に単糸繊度が0.01?1.5dtexの極細繊度にも関わらず、高強度、高弾性率である溶融異方性芳香族ポリエステル繊維に関し、例えば防弾服、防刃、防アイスピック服などの防護材に用いることができ、かつ衣服等にしたときの風合いも良好な溶融異方性芳香族ポリエステル繊維とその製造方法に関するものである。
ス.「【発明の効果】
【0009】
本発明の無機微粒子を繊維表面に付着させた溶融異方性芳香族ポリエステル繊維は高強度でかつ単繊度が細く、単糸同士の膠着もないことから、結節強力、屈曲疲労性が優れるので、ロープ、ケーブル、テンションメンバー、FRP、防弾チョッキ等幅広い用途に使用可能である。」

したがって、上記サないしスの記載事項と図面の記載とを総合勘案すると、甲第4号証には次の技術事項が記載されている。

「平均粒径0.001?1μmの無機微粒子を単繊維表面に0.05?2質量%付着させた単糸繊度が0.01?1.5dtexの極細溶融異方性芳香族ポリエステル繊維は、高強度でかつ単糸同士の膠着もないこと。」

2.対比・判断
(1)対比
本件発明は「イヤホンコード」の発明であるのに対して、特許異議申立人が提出した甲第1号証ないし甲第4号証のうち、イヤホンコードについての記載があるのは甲第3号証のみである。そこで、本件発明と甲3発明とを対比すると、甲3発明の「芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸された溶融異方性ポリエステルアミド繊維」及び「テンションメンバー」は、本件発明の「溶融異方性芳香族ポリエステル繊維」及び「芯糸」にそれぞれ相当するから、本件発明と甲3発明とは、
「溶融異方性芳香族ポリエステル繊維を芯糸に用いるイヤホンコード。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明においては、溶融異方性芳香族ポリエステル繊維を用いた芯糸が、「扁平率fが0<f<0.5となるような断面」を有している(なお、上記扁平率fは、繊維断面の最も長い径をa、最も短い径をbとしたときに、f = ( a - b ) / aで表される。)のに対して、甲3発明においては、芯糸の断面形状や扁平率については特定されていない点。

<相違点2>
本件発明においては、「該イヤホンコードをイヤホンハウジングに通してコード末端部に結節を作り、その結節をイヤホンハウジングに引っ掛けて作成した試験片をインストロンやオートグラフ等の万能試験機の片方にハウジングを固定し、もう片方にイヤホンコードを固定して引張試験を行った際、結節破断荷重の平均値が50N以上で、最低値が50N以上、かつ結節破断荷重のバラつきがCV値で3%以下である」のに対して、甲3発明においては、イヤホンコードの結節破断荷重の大きさやバラつきについては特定されていない点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
甲第1号証には、「溶融時に異方性を示す芳香族ポリエステルを溶融紡糸することによって得られる繊維が、ほぼ真円に近い断面を持つようにすること」が記載されている(上記1.(1)参照。)が、そのような繊維を芯糸に用いてイヤホンコードを製造することについては、何ら記載されておらず、したがって、イヤホンコードの断面における芯糸の形状あるいは扁平率についての記載もない。
また、甲第2号証には、「被覆付き繊維強化合成樹脂線状物において、性能のバラツキを小さくするために、無機繊維からなる芯側補強繊維の外周に、ポリエステル等の有機繊維からなる鞘側補強繊維を真円状に配置し、その偏平率(真円率)を7%以下(93%以上)とすること」が記載されている(上記1.(2)参照。)が、被覆付き繊維強化合成樹脂線状物におけるポリエステル等の有機繊維の「配置」が真円状であるというだけであって、被覆付き繊維強化合成樹脂線状物の断面における個々の有機繊維の「断面形状あるいは扁平率」については何ら記載されていない。なお、甲第2号証に記載の上記配置は「光ファイバケーブル」に用いるもの(上記1.(2)キ参照。)であって、イヤホンコードに用いる配置ではない。
そして、本件発明における芯糸の扁平率fが、イヤホンコードの断面における芯糸の扁平率を意味することは、本件発明が「イヤホンコード」の発明であることや、本件特許明細書の【0001】、【0005】、【0009】、【0018】、及び【0028】等の記載からみても明らかであり、これに対して、上述したとおり、甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも、イヤホンコードの断面における芯糸の形状あるいは扁平率については記載されていない。したがって、本件発明の上記相違点1に係る発明特定事項は、甲3発明及び甲第1号証又は甲第2号証の技術事項から、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
また、甲第4号証には、無機微粒子を単繊維表面を付着させた極細溶融異方性芳香族ポリエステル繊維について記載されている(上記1.(4)参照。)が、甲第1号証及び甲第2号証と同様に、イヤホンコードに用いることについては記載されておらず、甲第1号証ないし甲第3号証と同様に、イヤホンコードの断面における芯糸の形状あるいは扁平率についても記載されていない。したがって、甲第4号証に記載の技術事項を加味しても、本件発明の上記相違点1に係る発明特定事項は、当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
以上のとおりであるから、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明又は技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、特許異議申立人は、本件発明の上記相違点1に係る発明特定事項は、甲第1号証、甲第3号証、及び甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易になし得た事項であることは、本件の出願経過(甲第5号証ないし甲第8号証)からみて、本件特許権者も承服している旨を主張している。
しかしながら、意見書(甲第7号証)の記載をみても、拒絶の理由を発見しない旨を認定された旧請求項2の要件を旧請求項1に付加したという補正の概要について記載されているだけであって、旧請求項1に対する拒絶理由に対する具体的な意見(承服したか否か)は記載されていない。
したがって、特許異議申立人の上記主張内容を認めるに足る根拠はない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

第5 申立理由2ないし4について
1.申立理由2(実施可能要件)について
特許異議申立人は、イヤホンコードの結節破断荷重は、テンションメンバーの扁平率、種類や本数のみならず、被覆樹脂の種類や量、導電線の種類や本数等によって影響されるという本件出願時の技術常識を考慮すると、実施例には、被覆樹脂の種類や量、導電線の種類や本数等の具体的な手段が記載されていないため、発明の詳細な説明は、本件発明のイヤホンコードを作れるように記載がされておらず、したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨を主張している。
しかしながら、本件明細書の段落【0021】に「本発明においては芯線の太さ、及び被覆樹脂の素材、コードの太さなどは特に限定されるものではない。」と記載されているように、芯線の太さ、被覆樹脂の素材、コードの太さなどは当業者が適宜選択し得る事項であり、かつ、特許異議申立人が主張するように、イヤホンコードの結節破断荷重が、被覆樹脂の種類や量、導電線の種類や本数等の事項よって影響されることは、本件出願時の技術常識であることを勘案すると、溶融異方性芳香族ポリエステル繊維を用いた芯糸の扁平率f以外の事項については、所望する結節破断荷重の値等に応じて、当業者が適宜選択し得るものであると認められる。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

2.申立理由3(サポート要件)について
特許異議申立人は、イヤホンコードの結節破断荷重は、テンションメンバーである芯糸の扁平率や種類のみならず、テンションメンバーの太さや本数、導電線の種類や本数、被覆樹脂の種類や量等によって影響されるという本件出願時の技術常識を考慮すると、本件発明の範囲にまで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできず、また、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであり、したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない旨を主張している。
しかしながら、上記1.で説示したとおり、本件出願時の技術常識を勘案すると、溶融異方性芳香族ポリエステル繊維を用いた芯糸の扁平率f以外の事項については、所望する結節破断荷重の値等に応じて、当業者が適宜選択し得るものであると認められるから、本件発明の範囲にまで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできないとまではいえない。また、結節破断荷重のバラつきが大きいという課題(段落【0005】)については、芯糸の断面形状を制御し、扁平率fを0<f<0.5とすることによって解決している(段落【0006】及び【0007】)のであるから、本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるということもできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

3.申立理由4(明確性)について
特許異議申立人は、本件発明の「該イヤホンコードをイヤホンハウジングに通してコード末端部に結節を作り、その結節をイヤホンハウジングに引っ掛けて作成した試験片をインストロンやオートグラフ等の万能試験機の片方にハウジングを固定し、もう片方にイヤホンコードを固定して引張試験を行った際、結節破断荷重の平均値が50N以上で、最低値が50N以上、かつ結節破断荷重のバラつきがCV値で3%以下である」は、物の特性を用いて物を特定しようとするものであるところ、本件明細書の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても、芯糸の扁平率fを0.5未満とすること以外にどのような構成を加えることで、かかる特性を実現するイヤホンコードが得られるのかを理解することができず、すなわち、本件発明は技術的に十分に特定されておらず、したがって、本件発明は明確でない旨を主張している。
しかしながら、上記1.で説示したとおり、本件出願時の技術常識を勘案すると、溶融異方性芳香族ポリエステル繊維を用いた芯糸の扁平率f以外の事項については、所望する結節破断荷重の値等に応じて、当業者が適宜選択し得るものであると認められるから、特許請求の範囲に芯糸の扁平率f以外の具体的内容が特定されていないからといって、技術的に十分な特定がなされていないとまではいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、請求項1に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。
また、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということもできない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-10-26 
出願番号 特願2013-67704(P2013-67704)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (H04R)
P 1 651・ 121- Y (H04R)
P 1 651・ 537- Y (H04R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 千本 潤介  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 國分 直樹
井上 信一
登録日 2017-02-03 
登録番号 特許第6085504号(P6085504)
権利者 株式会社クラレ
発明の名称 イヤホンコード  
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