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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07C
管理番号 1334613
審判番号 不服2016-14027  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-20 
確定日 2017-11-15 
事件の表示 特願2013-539232「4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精錬するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月24日国際公開、WO2012/066001、平成26年 1月16日国内公表、特表2014-500878〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2011年11月15日(パリ条約に基づく優先権主張 2010年11月17日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月24日付けで拒絶理由が通知され、同年12月10日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年5月18日付けで拒絶査定され、同年9月20日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年9月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年9月20日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成28年9月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、平成27年12月10日付け手続補正により補正した特許請求の範囲の請求項1である
「【請求項1】
4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精錬するための方法であって、カラムK1を使用して4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物Iを蒸留して精錬する工程を含み、及び
混合物Iで構成されるガス状流を、カラムK1内で、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物Aと接触させ、これにより得られる混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量を低下させ、及びカラムの頂部で得られ、且つ4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含むガス状流Oを、5秒以内に、20?60℃の温度に冷却させることを特徴とする方法。」

「【請求項1】
4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精製するための方法であって、カラムK1を使用して4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物Iを蒸留して精製する工程を含み、及び
混合物Iで構成されるガス状流は、カラムK1内で、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物Aと接触され、これにより得られる混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量が低下され、及び
カラムの頂部で得られ、且つ4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含むガス状流Oが、5秒以内に、20?60℃の温度に冷却され、及び
前記化合物Aが、前記蒸留して精製する工程に既に通された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含み、及び
前記化合物Aが、前記カラムK1の頂部で、液体分配器を介して供給される、
ことを特徴とする方法。」
とする補正を含むものである。

2 「沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物A」との発明特定事項について

請求項1には、「化合物Aが前記蒸留して精製する工程に既に通された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含み」と記載されていることから、精製された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含むと解されるが、一方「沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である」とも記載されているので、「少なくとも1種の液状の化合物A」との記載からは、どのような液状化合物を含むのか一義的に明らかとはいえないため、本願明細書全体を参照して用語の意味を理解することとする。

本願明細書には、液状の化合物Aについて、一般的説明として、
「【0045】
基本的に、液状の化合物Aとして、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートに対して不活性なもの、又は4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート自体が考慮される。
【0046】
適切な不活性化合物Aは、特に、ジベンジルエーテル、ターフェニル、フタル酸とネフタレン誘導体の高級エステルである。当然、上述した不活性の化合物の混合物も考慮される。
【0047】
しかしながら化合物Aは、特に好ましくは、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートである。特に好ましくは、化合物Aとして、純度が97質量%以上、特に好ましくは98質量%(重量%)以上、特に98.5質量%以上の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートが使用される。しかしながら基本的に、上述した純度の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートと少なくとも1種の上述した不活性化合物の混合物を使用することもできる。好ましくは、化合物A中の、ASTM D4663-10に従う加水分解性の塩素の含有量は、100ppm以下である。
【0048】
特に好ましくは、化合物Aは、本発明に従う蒸留による精錬が既に行われている4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートである。これにより、本発明に従う蒸留による精錬が既に行われており、及び適切な方法で保管される必要のある(ここで、冒頭に述べた2量体副生成物が形成される)4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートが、部分的に新たに工程に加えられる。これより、2つの長所を同時に得ることができる:一方では、芳香族ハロゲン化合物が少ない4,4’-MDIが許容され、及び他方では、保管した結果、副生成物に部分的に変換された、保管された4,4-MDIが再度、循環され、そして純度のより高い状態で貯蔵(保管)に送られ、これにより保管された4,4-MDIを最適化することができる。ここで、保管-還流割合(保管へと新たに導かれた(追加的に得られた)4,4’-MDIの量に対する、再循環された4,4’-MDIの量の割合)は、好ましくは0.05?0.4、特に0.1?0.3である。
【0049】
極めて好ましくは、化合物Aは、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを保管するための設備から循環された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートである。ここで保管のための設備(装置)は、保管される物質、又は物質混合物の一時的な受け入れのために設けられた、任意の設備であり、例えば容器(コンテナ)、特に保管タンクである。」(下線は当審にて追加、以下同様)、
「【0053】
本発明に従い、混合物Iから成るガス状流は、カラムK1内で、少なくとも1種の液状化合物Aと接触される。基本的に、接触についての複数の方法が考えられる。ここで、ガス流と液状化合物Aの強い接触が行われ、及び液状の化合物Aが導かれる方法が好ましい。このために、液体Aは、適切な方法で分配される必要がある。対応する方法は、この技術分野の当業者にとって公知である。」と説明され、
唯一の実施例1では、
「【0117】
液状化合物Aの供給:カラムK1の頂部で、98.5質量%の4,4’-MDI及び1.5質量%の2,4’-MDIで構成された化合物Aを、液状状態で、最上部のオーダードパッキング要素の上側から供給し、そしてボックスチャンネル液体分配器(11)を使用して分配した。化合物Aの質量流は、0.17kg/hであった。液体Aは、42℃で貯蔵された(高純度の4,4’-MDIが取り込まれた貯蔵タンク(9)からの、及び本発明の方法が既に行われた)4,4’-MDIで構成されていた。化合物Aの二量体含有量は、0.13質量%であった。カラムK1に再循環された生成物(10)の、貯蔵タンク(9)に供給された生成物に対する質量割合は、連続的に0.26g/gであった。」と説明されている。

これらの発明の詳細な説明の記載をみると、化合物Aには、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以外に特定の化合物を有するとまではいえないが、請求項1の化合物Aは、蒸留工程を通された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含みとの記載から、一定量の不純物を含むと解され、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上であるとも記載されている。
したがって、特許請求の範囲の「沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物A」との発明特定事項は、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以外の液状化合物としては特定せず、「4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI)を主要成分として含み、4,4’-MDIに対する不純物を含んだ、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である液状の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート含有組成物」であると理解すべきである。

3 補正の適否
上記補正は、発明を特定する事項である本件補正前の請求項1の「化合物A」に関して、「記化合物Aが、前記蒸留して精製する工程に既に通された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含み、及び 前記化合物Aが、前記カラムK1の頂部で、液体分配器を介して供給される」と限定するもので、補正前後で、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について検討する。

(1)引用刊行物
刊行物1:特開昭58-90540号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1)
刊行物2:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典4 縮刷版」1963年10月15日、共立出版、821?822頁
刊行物3:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典2 縮刷版」1963年8月25日、共立出版、684頁
刊行物4:社団法人 化学工学協会編「化学装置便覧」昭和45年6月15日、丸善、894頁
刊行物5:特開昭53-9750号公報

なお、刊行物2?5は本願優先日時点の技術常識を示す文献である。

(2)刊行物の記載事項
ア 刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭58-90540号公報には、以下の記載がある。
(1a)「(1) アニリン/ホルムアルデヒド縮合生成物のホスゲン化によって得られるジフェニルメタン系のポリイソシアネート混合物からジイソシアネートジフェニルメタン異性体を蒸留によって分離する方法であって前記異性体を前記混合物から第一の蒸留工程で分離し、前記第一の蒸留工程から得られる留出物を第二の蒸留工程でさらに蒸留し、前記第二の蒸留工程に導入された生成物の0.5ないし20重量%の量を前記第二の蒸留工程の缶出物から除去し、次いで前記第二の蒸留工程の塔頂生成物として得られる留出物から2,2′-ジイソシアネートジフェニルメタンおよび2,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを第三の蒸留工程で分離し、そして最後に極めて純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを得るために前記第三の工程から残留する缶出物を精製することを含む4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの製造方法において、(a)前記第一、第二および第三の蒸留工程の凝縮器出口の温度をこれらの温度が夫々の場合蒸留塔中の真空度によって予め定められる送入蒸気の温度よりも10ないし50℃低くなるように、130ないし230℃に調節し、そして(b)前記第三の工程から残留する缶出物を二つの蒸留工程において、初めの最終工程では前記第三の工程から残留する缶出物の50ないし90重量%が純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの形態で塔頂生成物として単離されかつ次の最終工程では前記第一の最終工程の缶出物が塔頂生成物としてのさらに別の量の純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンおよび缶出物としての蒸留残渣として分けられるようにして精製することを特徴とする前記4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの製造方法。
(2) 初めの最終工程での還流比が0.2:1ないし2:1であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の方法。
(3) 最後の最終工程での還流比が0.2:1ないし3:1であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の方法。
(4) 初めの最終工程および次の最終工程の留出物が50℃以下に迅速に冷却されることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の方法。
(5) 得られる留出物および還流物の凝縮熱が2?16バールの圧力状態の蒸気を回復するために用いられることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の方法。」(特許請求の範囲)(下線は当審にて追加、以下同様)

(1b)「本発明はアニリン/ホルムアルデヒド縮合生成物のホスゲン化によって得られたジフェニルメタン系のポリイソシアネート混合物を精製して極めて純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを製造するための新規な蒸留方法に関する。酸触媒の存在下におけるアニリンとホルムアルデヒドとの縮合およびこれに引きつづく生成ポリアミン混合物のホスゲン化によって得られるジフェニルメタン系のポリイソシアネート混合物はジイソシアネートジフェニルメタンの異性体および高級同族体の他に、たとえばモノイソシアネート、着色された不純物および有機的に結合された塩素を有する化合物を含んでいる。これらの後者の化合物の中には加水分解性の塩素と呼ばれる多少とも容易に分離できる形態の塩素を含むものもあるが、分離があまり容易でない塩素を含む化合物も存在する。これらの種々の塩素化合物がポリウレタンを生成するイソシアネートとポリオールとの反応に影響を及ぼしそして特にイソシアネートとポリオールとの間の反応速度に作用することが知られている。弾性ポリウレタンの製造のために大量に用いられる4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの場合には、前記生成物の塩素含有分を制御することによってポリウレタン反応に作用する有機塩素化合物の影響を抑止し、または少なくともこの影響を均一化することが特に望ましい。このようにこれら化合物中の塩素の含有量は4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの純度についての一つの重要なパラメータとなる。」(2頁左上欄12行?右上欄20行)

(1c)「本発明の方法によって特に純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを得るための新規な方法が新たに開示された。
本発明はアニリン/ホルムアルデヒド縮合物のホスゲン化により得られたジフェニルメタン系のポリイソシアネート混合物からジイソシアネートジフェニルメタン異性体を蒸留によって分離することにより極めて純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを製造する方法に関する。この方法においては、第一の蒸留工程の塔頂生成物が第二の蒸留工程においてさらに蒸留され、この工程に導入された生成物の量の0.5?20重量%が第二の工程の缶出生成物(sump product)として抜き出される。第二工程の塔頂生成物からの2,2′-および2,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンはその他の生成物から次の第三の蒸留工程中で分離されこの第三の工程の缶出生成物はさらに別の蒸留によって精製され極めて純粋な4,4′--ジイソシアネートジフェニルメタンが得られる。この方法は特に、(a)最初の三つの蒸留工程の凝縮器の出口温度を130℃?230℃に調整して温度が蒸留塔内部の真空度によって予め決定される供給物の送入蒸気温度より10?50℃低くなるようにし、そして(b)第三の工程中に残存する缶出生成物を二つの最終工程で精製して初めの最終工程では第三の工程の缶出物を純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの形態における塔頂生成物として単離し、次の最終工程では第一の最終工程の缶出物を蒸留によって塔頂生成物としての付加的な純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンおよび缶出物としての蒸留残渣に分離する点に特徴がある。」(3頁左上欄15行?左下欄6行)

(1d)「第3図は本発明による新規な方法の一例を示す。
ジフェニルメタン系のポリイソシアネート混合物は蒸留工程(1)に供給されて高級同族体を含む缶出物生成物と粗製ジイソシアネートジフェニルメタン異性体の混合物とに分離される。工程(1)での蒸留操作は一般に還流を伴なわない単一蒸留工程である。もとより工程(1)での蒸留は還流を伴なう蒸留塔を用いて行なうこともできるが、これは前記のように必要なことではない。蒸留生成物は凝縮器の出口温度が130?230℃、好ましくは130?200℃そして特に140?160℃となるように凝縮される。工程(1)で留去される蒸留生成物の量は供給物の性質および缶出生成物の有するべき粘度にしたがって変わる。これは極めて広い範囲内で変えることができ全く重要なことではない。
ジイソシアネートジフェニルメタン異性体よりも沸点の高い工程(1)の蒸留生成物中の不純物は一つまたはそれ以上の蒸留塔がうなっていて蒸留工程(1)の下流に接続されている蒸留工程(2)によって分離される。工程(2)での蒸留は0.1:1?10:1、好ましくは0.3:1?3:1の還流比(還流比=除去される蒸留生成物の重量に対する還流物の重量比で行なわれる。工程(2)に導入される混合物の0.5?20、好ましくは1?10重量%が工程(2)の塔底から仕切りによって連続的に除去される。生成物の大部分の量は工程(2)の塔頂の上方に蒸留され、その凝縮温度は前記の温度に対応する。
工程(2)の蒸留生成物中に含まれる2,2′-および2,4′-異性体は、これも一つまたはそれ以上の蒸留塔からなりかつ工程(2)の下流に接続された蒸留工程(3)によって分離される。蒸留工程(3)は2:1?45:1、好ましくは15:1?30:1の還流比で操作される。凝縮温度はこの場合には前記の範囲内で調節される。
蒸留工程(3)の缶出物として残留するすでに精製された4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンは最終工程(4)および(4′)中での蒸留によって最終的に精製される。工程(3)での蒸留はこの工程(3)の缶出生成物が3重量%の2,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの混合成分を有するようにして行なわれる。
工程(3)の缶出物をさらに精製する目的のために、工程(3)からの残留する缶出物の50?90重量%初めの最終工程(4)において4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの形態で塔頂に蒸留しこの工程は好ましくは0.2:1?2:1の還流比で操作される。5ppm以下のフェニルイソシアネートおよび5ppm以下の加水分解性の塩素を含む蒸留生成物は初めの最終工程(4)から出た直後に好ましくは50℃以下に冷却される。基本的にはこの工程(4)も一つまたはそれ以上の直列に接続された蒸留塔からなるものとすることができ、上流側に接続された塔の缶出物が夫々下流側に接続された塔に供給される。工程(4)に幾つかの塔を用いる場合には、工程(3)から生じた缶出物の50?90重量%を初めの最終工程(4)で4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの形態で塔頂に蒸留させるという前記の条件が工程(4)の全ての塔の合計量に適用される。
工程(4)の缶出物、すなわち単一の塔を用いた場合にはこの単一の塔の缶出物を、また直列に接続された幾つかの蒸留塔を用いた場合にはこれら塔の中の最後のものの缶出物を最後の最終工程(4′)中に導入する。ここで前記の缶出物は蒸留によって塔頂生成物としての付加的な純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンおよび工程(1)の缶出物の合計量を基準として5?10重量%の缶出生成物に分離される。単一の蒸留塔からなる工程(4′)の還流比は0.2:1?3:1、好ましくは0.2:1?1:1である。塔頂生成物として得られる4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの品質は工程(4)の塔頂生成物の品質に対応する。この場合にも、塔頂生成物は好ましくは塔から出た直後に50℃以下に冷却される。この冷却操作によって二量体の生成が実質的に防止される。最後の最終工程(4′)から残留する缶出物は熱効果によって形成された不純物を含みかつ4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンよりも沸点の高い塩素を含有する不純物を含んでいる。
本発明方法の特定の具体例によれば、蒸留工程での凝縮器中で生じる凝縮熱は蒸気を2?16バールの圧力状態に回復させるために用いることができる。この目的のために、凝縮器は凝縮液の排出温度によって選択された圧力下で水と共に動作される。
本発明の方法に用いられる蒸留工程は単一の蒸留工程のみからなる最後の最終工程(4′)を別としてそれぞれの場合、一つもしくはそれ以上の蒸留装置からなり、それによって特に蒸留工程(2)、(3)、(4)および(4′)の場合には効果的に分割された蒸留塔が用いられる。蒸留工程(1)?(3)の場合には、凝縮器の出口温度は前記の範囲、すなわち130?230℃、好ましくは130?200℃そして特に140?160℃の範囲内とせねばならず、そしてまたこれと同時に第二の条件、すなわち凝縮器の出口温度を塔中の真空度によって夫々の場合について予め定められるように蒸気の送入温度よりも10?50℃、好ましくは20?40℃だけ低くすることが常に満足させられなければならない。蒸留工程(4)および(4′)はこれらの条件にしたがって操作されるが、蒸留生成物の50℃以下の冷却は凝縮器の出口で直ちに行なわなければならない。」(4頁左上欄11行?5頁右上欄15行)

(1e)7頁の表3においては、4’の塔からの蒸留排出生成物として、加水分解性塩素、全塩素量が、それぞれ、5ppm,20ppm(還流量800kg/h),5ppm,17ppm(還流量970kg/h)であることが示されている。

イ 刊行物2
本願の優先日前に頒布された刊行物2の辞典には、以下の記載がある。
(2a)「蒸留・・・
塔頂からでた蒸気を凝縮させたのちに一部を塔頂にもどし(還流^(*))という)て塔内を流れ落ちるようにしたものである。この際還流されない凝縮液は留出液として取り出される。蒸留塔を用いると,塔内で再蒸留が繰り返されると同時に蒸気は流下する液と接触して凝縮するが,ほぼ等モルの液を蒸発させるので蒸気の量が減少することなく,原理的には望む濃度の純粋成分を一時に多量に得ることができるのである。このような蒸留法を特に精留^(*)という。」(821頁の「蒸留」の説明として、822頁左欄16?26行)

(2b)「蒸留の方式には、連続蒸留と回分蒸留とがあって,前者(図参照)では原料を連続的に蒸留カンまたは蒸留塔の中央付近に供給し,頂部およびカン底から連続的に軽い成分と重い成分とを抜き出し

」(822頁左欄35?42行及び図面)

ウ 刊行物3
本願の優先日前に頒布された刊行物3の辞典には、以下の記載がある。
(3a)「還流・・・
加熱によって生じた蒸気を凝縮させて液状とし,再びもとにもどす操作をいう。
・・・
精留塔^(*)の塔頂から出てくる蒸気を凝縮させて液状とし,塔の上部にもどす操作であるが,その目的は精留塔内を流下する液量を増加させ,精留^(*)効果を強めるためである。還流する液を環流液または単に還流といい」(84頁左欄下から20?下から4行)

(3b)「

」(684頁右欄上部図面)

エ 刊行物4
本願の優先日前に頒布された刊行物4には、以下の記載がある。
(4a)蒸留塔の充てん(審決注:原文は漢字、以下同様)の内部構造として、「4)液分配器・・・充てん塔の効率は主として充てん層の気液接触の良否で決まる。充てん層に液が均一に分布するかどうかが塔の効率に大きく影響する。このためつぎに示すように液分散器には種々の工夫がなされている。
・・・
リング型分散器はリング状のパイプに孔をあけ液を分散する方式で,蒸留塔に多く使用されている。」(894頁下から2行?896頁1行)

オ 刊行物5
本願の優先日前に頒布された刊行物5には、以下の記載がある。
(5a)「酸触媒の存在下にアニリンとホルムアルデヒドとを縮合させた後、生成するポリアミン混合物をホスゲンと反応させると、常に2,2’-、2,4’-及び4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン異性体が同時に生成する。これらの異性体が種々の不純物量を含むことは知られており、不純物の例には、有機的に結合した塩素を加水分解可能な塩素の形で幾らか含むものがある。加水分解可能な塩素を含む種々の化合物量は、イソシアネートとポリオールからポリウレタンを生成させる反応を阻止するように働くので、これらの塩素化合物は、この反応の速度に影響を及ぼす。一般に、反応速度を遅くする。従ってインシアネートの加水分解可能な塩素含有量は、インシアネートの純度を考慮する場合の重要なパラメーターである。加水分解可能な塩素を含む化合物の例は、アニリンとホルムアルデヒドの縮合時の副生成物例えばp-アミノベンジルアニリン、N-メチルアミン化合物・・・である。
・・・
市販のジイソシアネート中の塩素を含む化合物は、その濃度が低く、多様性のため、また多小熱による影響や相互反応により生じる変化のために、分析が困難である。ジフェニルメタンジイソシアネートを蒸留する150℃を超える温度では、置換基や触媒の存在にもよるが、激しいN、N-ジ置換カルバミン酸クロライドの反応が起きるという文献がある。かかる激しい反応においては、事実上不揮発性の塩素含有化合物が低沸点化合物に変換され、例えばホスゲンとp-アミノベンジルアニリンから生成する酸クロライドは、p-インシアネートベンジルクロライドとフェニルイソシアネートに変換され・・・塩素の官能も変化する。カルバミン酸クロライド中の加水分解し易い塩素は、ベンジルクロライド中の一層強く結合した塩素となる。」(2頁左上欄4行?左下欄14行)

(3)刊行物1記載の発明
摘記(1a)には、アニリン/ホルムアルデヒド縮合生成物のホスゲン化によって得られるジフェニルメタン系のポリイソシアネート混合物からジイソシアネートジフェニルメタン異性体を蒸留によって分離する方法として、最後に極めて純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを得るために、缶出物を精製することを含む4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの製造方法において、最後の最終工程での還流比が0.2:1ないし3:1であり、最終工程の留出物が50℃以下に迅速に冷却されることが記載され、摘記(1c)には、最終工程では第一の最終工程の缶出物を蒸留によって塔頂生成物としての付加的な純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを分離することが記載されている。
そして、摘記(1d)には、その具体的実施例として、単一の蒸留塔からなる工程(4′)の還流比は0.2:1?3:1、好ましくは0.2:1?1:1であること、塔頂生成物として得られる4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの品質は工程(4)の塔頂生成物の品質に対応し、塔頂生成物は塔から出た直後に50℃以下に冷却され、この冷却操作によって二量体の生成が実質的に防止されること、最後の最終工程(4′)から残留する缶出物は熱効果によって形成された不純物を含みかつ4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンよりも沸点の高い塩素を含有する不純物を含んでいることが記載されている。
したがって、刊行物1には、実施例の発明として、以下の発明が記載されているといえる(以下「刊行物1発明」という。)。

「アニリン/ホルムアルデヒド縮合生成物のホスゲン化によって得られるジフェニルメタン系のポリイソシアネート混合物からジイソシアネートジフェニルメタン異性体を蒸留によって分離する方法として、最後に極めて純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを得るために、缶出物を精製することを含む4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの製造方法において、第一の最終工程の缶出物を蒸留によって塔頂生成物として純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを分離し、最後の最終工程での還流比が0.2:1ないし3:1で還流し、最終工程の留出物が50℃以下に迅速に冷却され、冷却操作によって二量体の生成が実質的に防止され、最後の最終工程から残留する缶出物は熱効果によって形成された不純物を含みかつ4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンよりも沸点の高い塩素を含有する不純物を含んでいる方法」

(4)対比・判断
ア 対比
刊行物1発明の「アニリン/ホルムアルデヒド縮合生成物のホスゲン化によって得られるジフェニルメタン系のポリイソシアネート混合物からジイソシアネートジフェニルメタン異性体を蒸留によって分離する方法として、最後に極めて純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを得るために、缶出物を精製することを含む4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの製造方法」は、本願補正発明の「4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精製するための方法であって、カラムK1を使用して4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物Iを蒸留して精製する工程を含」む「方法」に該当する。
次に、刊行物1発明の「第一の最終工程の缶出物を蒸留によって塔頂生成物として純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを分離し、最後の最終工程での還流比が0.2:1ないし3:1で還流」することは、還流によって、蒸留塔頂部から留出する、蒸留によって精製された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む蒸気が冷却され液化され、再び蒸留塔にもどされ、精製中の蒸気と接触されることを意味する。
このとき、再び蒸留塔にもどされた液体には、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートが含まれているのはもちろん、冷却により液化していることから高沸点の不純物を少量含有していることは明らかである。
一方、本願補正発明の「沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物A」は、前述のとおり「4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI)を主要成分として含み、4,4’-MDIに対する不純物を含んだ、沸点が4,4’-MDI以上である液状の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート含有組成物」であると理解すべきであるから、刊行物1発明における蒸留塔で精製後、冷却液化し、還流操作によって、再び蒸留塔にもどされた還流液に相当するといえる。

したがって、刊行物1発明の「第一の最終工程の缶出物を蒸留によって塔頂生成物として純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを分離し、最後の最終工程での還流比が0.2:1ないし3:1で還流する」ことは、本願補正発明の「混合物Iで構成されるガス状流は、カラムK1内で、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物Aと接触され、」及び「カラムの頂部で得られ、且つ4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含むガス状流Oが、」「冷却され、」及び「前記化合物Aが、前記蒸留して精製する工程に既に通された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含み」「前記化合物Aが、前記カラムK1に供給される」ことに相当するといえる。

そうすると、本願補正発明と刊行物1発明とは、
「4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精製するための方法であって、カラムK1を使用して4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物Iを蒸留して精製する工程を含み、及び
混合物Iで構成されるガス状流は、カラムK1内で、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物Aと接触され、カラムの頂部で得られ、且つ4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含むガス状流Oが、冷却され、及び
前記化合物Aが、前記蒸留して精製する工程に既に通された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含み、及び前記化合物Aが、前記カラムK1に供給される方法。」 である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:本願補正発明は、カラムK1内で混合物Iで構成されるガス状流と液状の化合物Aとの接触によって、「混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量が低下され」ることが特定されているのに対して、刊行物1発明ではその点が明らかでない点

相違点2:本願補正発明は、カラムの頂部で得られたガス状流の冷却条件を「5秒以内に、20?60℃の温度に冷却され」としているのに対して、刊行物1発明では、「50℃以下に迅速に冷却され」る点

相違点3:本願補正発明は、化合物Aが「カラムK1の頂部で、液体分配器を介して供給される」ことが特定されているのに対して、刊行物1発明では還流される液体の供給場所と供給手段が明らかでない点

相違点の判断
上記相違点について検討する。

(ア)相違点1について
a 刊行物1発明において、還流液と接触をしながらカラム4’の頂部から得られた蒸留生成物の芳香族ハロゲン化合物の含有量が低下されていることの直接の記載はないが、「最後の最終工程(4′)から残留する缶出物は熱効果によって形成された不純物を含みかつ4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンよりも沸点の高い塩素を含有する不純物を含んでいる。」(摘記(1d))との記載から、還流液との接触により、最後の最終工程(4′)からの蒸留排出生成物の4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンは、沸点の高い塩素を含有する不純物含有量が低下したことが示唆され、刊行物1には、最終工程(4′)の蒸留排出生成物の加水分解性塩素及び全塩素量がそれぞれ、ppmオーダー、10?20ppmに低下していることが読み取れる(摘記(1e))。

b そして、刊行物1発明も本願補正発明と全く同じように、アニリン/ホルムアルデヒド縮合生成物のホスゲン化を経て得られた4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートの混合物から蒸留精製したものであるから、刊行物5の摘記(5a)に記載されるような、各種芳香族塩素化合物に相当する化合物が生じていることは明らかであり、蒸留精製によってそれらの含有量が一定程度低下していることが理解できる。

c したがって、刊行物1発明において、混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量が低下されることは、当業者であれば容易に認識できることであり、それを発明特定事項として単に規定したにすぎない。

(イ)相違点2について
刊行物1には、塔頂生成物は塔から出た直後に50℃以下に冷却され、この冷却操作によって二量体の生成が実質的に防止されることが記載され、最後の最終工程(4′)から残留する缶出物は熱効果によって形成された不純物を含むことが記載されており、本願明細書における「迅速な冷却によって、副生成物の形成、特に二量体副生成物の形成がさらに低減される。」(【0065】)冷却条件の技術的意義と同じである。
したがって、刊行物1発明の「50℃以下に迅速に冷却」することは、温度に関しては、20℃?60℃に冷却することに該当しているし、二量体の生成を防ぐとの目的に照らして、その具体的態様である、迅速に冷却するとの冷却条件を5秒以内と設定することは、当業者が容易になし得る技術的事項にすぎない。

(ウ)相違点3について
蒸留塔において、還流を実施する場合、還流液を蒸留塔の頂部にもどすことは、刊行物2の摘記(2a),刊行物3の摘記(3a)に示されるとおり、技術常識であり、蒸留塔の構造として、液分配器が充てん層での気液接触を良くするために配置されることが、慣用技術であるから(摘記(4a))、刊行物1発明において、還流される液体を蒸留塔の頂部に液体分配器を介して供給するようにすることは、当業者であれば容易に想到し得る技術的事項であるといえる。

(エ)本願補正発明の効果について
本願明細書には、【0118】に、生成物として、ガス状の流れOが得られ、98.5質量%の4,4′-MDIが含まれ、塩素や二量体の少ない生成物が得られたことが記載されているが、刊行物1には、塔頂生成物を直後に50℃以下に冷却することで二量体の生成が実質的に防止されていることや、沸点の僅かに高い塩素化合物を含めて4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートから不純物が分離されるとともに、新たな不純物の形成が防止されることも記載され、かつ最終的に加水分解性塩素や全塩素量がそれぞれ数ppm、10?20ppmになったことが示されているのであり、還流によって、精留効果が高まり、純粋な生成物が得られることは技術常識であるから(刊行物2の摘記(2a)、刊行物3の摘記(3a))、刊行物1発明において、還流を行った結果として、本願補正発明の効果が当業者の予想を超える顕著なものと認めることはできない。
また、貯蔵保管に伴う効果に関しては、図面にある貯蔵タンクの存在を前提とするものであり、本願補正発明の特定事項となっていないものであるから、特許請求の範囲に基づかない効果である。

したがって、本願補正発明の効果は、刊行物1記載の発明及び刊行物2?5の本願優先日時点の技術常識からみて、当業者の予測を超える顕著なものとはいえない。

(オ)請求人の主張について
ア 請求人は、平成28年9月20日付け審判請求書において、メチレンジフェニルジイソシアネートが貯蔵の間に、液相中に二量体の副生物を形成することを見出し回避した点、化合物AがカラムK1の頂部で液体分配器を介して供給されることで、望ましくない芳香族ハロゲン化合物が低減される点を主張している。

ウ しかしながら、上述のとおり、貯蔵するための装置から4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを再循環させる点は、本願補正発明に相当する請求項に特定されていない事項であり、特許請求の範囲に基づかない主張であるし、単に液相中で、二量体の副生物を形成すること自体であれば、刊行物1発明でも、低温にすぐに冷却しないと二量体が形成されてしまうことが記載されているのであるから、当業者の予測を超える顕著な効果とはいえない。

エ また、カラムK1の頂部で液体分配器を介して供給されることで、望ましくない芳香族ハロゲン化合物が低減される点も、上述のとおり、頂部から還流液を供給して蒸気と接触させるに際して、液体分配器を介して供給して気液接触を向上させることが技術常識であり、刊行物1発明でも、塩素含有有機化合物が除去されたことがすでに示唆されているのであるから、当業者の予測を超える顕著な効果とはいえない。

オ 小括
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正却下のまとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明の認定
第2で検討したとおり、平成28年9月20日付け手続補正は却下されることとなったので、この出願の請求項1に係る発明は、平成27年12月10日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「【請求項1】
4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精錬するための方法であって、カラムK1を使用して4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物Iを蒸留して精錬する工程を含み、及び
混合物Iで構成されるガス状流を、カラムK1内で、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物Aと接触させ、これにより得られる混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量を低下させ、及びカラムの頂部で得られ、且つ4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含むガス状流Oを、5秒以内に、20?60℃の温度に冷却させることを特徴とする方法。」

第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の1つは、概略、以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である「特開昭58-90540号公報」に記載された発明及び技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
特開58-90540号公報は、前記刊行物1である。

第5 当審の判断
当審は、原査定の拒絶の理由のとおり、本願発明は、前記刊行物1に記載された発明及び本願出願時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,と判断する。
理由は以下のとおりである。

1 引用刊行物
刊行物1:特開昭58-90540号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1)
刊行物2:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典4 縮刷版」1963年10月15日、共立出版、821?822頁
刊行物3:化学大辞典編集委員会編「化学大辞典2 縮刷版」1963年8月25日、共立出版、684頁
刊行物4:社団法人 化学工学協会編「化学装置便覧」昭和45年6月15日、丸善、894頁
刊行物5:特開昭53-9750号公報

なお、刊行物2?5は、本願優先日時点の技術常識を示す文献である。

2 引用刊行物の記載
各刊行物には、第2 3(2)に記載のとおりの記載がある。

3 刊行物1に記載された発明について
第2 3(3)に記載のとおり刊行物1には、刊行物1発明が記載されているといえる。

「アニリン/ホルムアルデヒド縮合生成物のホスゲン化によって得られるジフェニルメタン系のポリイソシアネート混合物からジイソシアネートジフェニルメタン異性体を蒸留によって分離する方法として、最後に極めて純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを得るために、缶出物を精製することを含む4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンの製造方法において、第一の最終工程の缶出物を蒸留によって塔頂生成物として純粋な4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンを分離し、最後の最終工程での還流比が0.2:1ないし3:1であり、最終工程の留出物が50℃以下に迅速に冷却され、冷却操作によって二量体の生成が実質的に防止され、最後の最終工程から残留する缶出物は熱効果によって形成された不純物を含みかつ4,4′-ジイソシアネートジフェニルメタンよりも沸点の高い塩素を含有する不純物を含んでいる方法」

4 対比・判断
(1)対比
本願補正発明において、本願発明の「精錬」との明らかな誤記を「精製」との用語に補正した点、「混合物Iで構成されるガス状流を、カラムK1内で、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物Aと接触させ、これにより得られる混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量を低下させ」との本願発明の記載を、本願補正発明において、「混合物Iで構成されるガス状流は、カラムK1内で、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物Aと接触され、これにより得られる混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量が低下され」と明りょうでない記載の釈明に関する補正をした点を除くと、本願発明は、本願補正発明の発明特定事項のうち、「前記化合物Aが、前記蒸留して精製する工程に既に通された4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含み」、「前記化合物Aが、前記カラムK1の頂部で、液体分配器を介して供給される」との各特定事項を削除したもので、本願補正発明をすべて包含するものである。

したがって、「第2 3(4)ア 対比」において、検討したのと同様に、以下のとおり、本願発明と刊行物1発明との一致点・相違点が認定できる。

「4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精製するための方法であって、カラムK1を使用して4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物Iを蒸留して精製する工程を含み、及び
混合物Iで構成されるガス状流を、カラムK1内で、沸点が4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート以上である少なくとも1種の液状の化合物Aと接触させ、カラムの頂部で得られ、且つ4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含むガス状流Oが、冷却される方法。」 である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1’:本願発明は、カラムK1内で混合物Iで構成されるガス状流と液状の化合物Aとの接触によって、「混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量を低下させ」ることが特定されているのに対して、刊行物1発明ではその点が明らかでない点

相違点2’:本願発明は、カラムの頂部で得られたガス状流の冷却条件を「5秒以内に、20?60℃の温度に冷却させる」としているのに対して、刊行物1発明では、「50℃以下に迅速に冷却され」る点

(2)判断
相違点1’及び相違点2’は、上記のとおり、それぞれ、相違点1及び相違点2と実質的に同じものであり、第2 3(4)において検討したとおり、本願補正発明が、刊行物1発明及び本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものといえるのであるから、同様に本願発明は、刊行物1発明及び本願優先日時点の技術常識に基いて、当業者が容易に発明することができたものといえる。

(3) 請求人の主張について
ア 請求人は、平成27年12月10日付け意見書において、引用文献1は、少なくとも3つの蒸留工程を必要とする精製方法であるのに対して、本願発明は、カラムK1のみで、液状化合物Aと接触させる構成で、混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量を低減し、カラム頂部で得られるガス状流Oを5秒以内に20?60℃に冷却することで、望ましくない副生成物の生成を回避している旨主張している。

イ しかしながら、本願明細書においても、カラム1に導入される混合物1は、第2のカラムK2から由来し、カラムK2内で異性体との分離が行われていることが記載され(【0093】)、蒸留工程をさらに2工程で設計することもできる(【0101】)と記載されているのであるから、本願発明が、「4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精錬するための方法であって、カラムK1を使用して4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物Iを蒸留して精錬する工程を含み」とカラムK1を使用する工程を含むことだけを特定していることも考慮すると、刊行物1発明との相違点に関して主張したものとはいえない。

ウ また、液状化合物Aと接触させる構成で、混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量を低減し、カラム頂部で得られるガス状流Oを5秒以内に20?60℃に冷却することで、望ましくない副生成物の生成を回避している点は、上述のとおり、還流液と蒸留塔の蒸気を接触させることで、混合物中の芳香族ハロゲン化合物の含有量も低減されることは当業者であれば容易に想起できる技術的事項であり、刊行物1発明においても、すぐに50℃以下に冷却して二量体の形成を抑制しているのであるから、同様の望ましくない副生成物の生成を回避しているといえる。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明および刊行物1に記載された技術的事項、及び本願優先日時点での技術常識に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明することができたものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-15 
結審通知日 2017-06-20 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2013-539232(P2013-539232)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07C)
P 1 8・ 575- Z (C07C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斉藤 貴子  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 加藤 幹
瀬良 聡機
発明の名称 4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む混合物を精錬するための方法  
代理人 江藤 聡明  
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