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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1334715
審判番号 不服2016-13081  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-31 
確定日 2017-11-16 
事件の表示 特願2014-244488「発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月19日出願公開、特開2015- 53524〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年7月21日(優先権主張平成22年5月17日)に出願した特願2010-164169号の一部を平成26年12月2日に新たな特許出願としたものであって、平成27年10月26日付けで拒絶理由通知が通知され、同年12月24日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年5月24日付け(同年同月31日送達)で拒絶査定がなされた。
これに対し、同年8月31日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、平成29年1月20日に、上申書が提出された。

第2 平成28年8月31日に提出された手続補正書による補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年8月31日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?5を、補正後の特許請求の範囲の請求項1?5と補正するとともに、明細書の記載を補正するものであり、そのうちの補正前後の請求項1及び2は、それぞれ次のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
発光素子を用いた発光装置であって、
基板と、
上記基板上に環状に設けられた樹脂製枠と、
上記樹脂製枠で囲まれた部分をn個(2≦n)の区域に仕切るように上記基板上に設けられた樹脂製隔壁と、
上記各区域にそれぞれ形成された、少なくとも1つの発光素子を含む発光部と、
上記基板上における上記樹脂製枠の外側に形成された外側領域と、
上記外側領域における上記基板上の隅部に設けられ、
上記各発光部に電源をそれぞれ供給するためのアノード電極およびカソード電極と、
ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続される電極配線と、
上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する接続用配線と、
上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線とを備え、
上記各発光部のうち少なくとも2つの発光部は、互いに異なる色を少なくとも1色発光し、
上記アノード電極は、上記基板上の上記樹脂製枠外においてk個(2≦k≦n)設けられ、当該各アノード電極は、アノード電極間で重複しないように、上記各発光部のうち1つまたは複数の発光部に電気的に接続されており、
上記樹脂製枠および上記樹脂製隔壁は、光反射性または光遮光性を有しており、
1つの上記発光部につき、上記発光素子の発光色が1種類であり、
上記発光素子を覆うように区域内に充填された、蛍光体を含有する樹脂からなる蛍光体含有樹脂層を備える各発光部は、1つの当該発光部につき、上記蛍光体の種類が1種類であり、
上記各発光部のうち、少なくとも1つの発光部は、少なくとも青色光および緑色光を発光し、当該発光部とは異なる少なくとも1つの発光部は、少なくとも赤色光を発光することを特徴とする発光装置。」
「【請求項2】
上記発光部は2つ形成されており、
第1の発光部は、上記発光素子としての青色光を発光する青色発光素子と、上記青色発光素子を覆うように上記区域内に充填された、赤色蛍光体を含有する樹脂からなる赤色蛍光体含有樹脂層とにより構成され、
第2の発光部は、上記発光素子としての青色光を発光する青色発光素子と、上記青色発光素子を覆うように上記区域内に充填された、緑色蛍光体を含有する樹脂からなる緑色蛍光体含有樹脂層とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。」

(補正後)
「【請求項1】
発光素子を用いた発光装置であって、
基板と、
上記基板上に環状に設けられた樹脂製枠と、
上記樹脂製枠で囲まれた部分をn個(2≦n)の区域に仕切るように上記基板上に設けられた樹脂製隔壁と、
上記各区域にそれぞれ形成された、少なくとも1つの発光素子を含む発光部と、
上記基板上における上記樹脂製枠の外側に形成された外側領域と、
上記外側領域における上記基板上の隅部に設けられ、
上記各発光部に電源をそれぞれ供給するためのアノード電極およびカソード電極と、
ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続され、上記発光素子を取り囲む電極配線と、
上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する接続用配線と、
上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線とを備え、
上記電極配線は、上記樹脂製枠で覆われた、第1電極配線、第2電極配線および保護素子を含み、
上記第1電極配線および上記第2電極配線は、上記ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続され、
上記第1電極配線は、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する上記接続用配線と電気的に接続され、
上記第2電極配線は、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線と電気的に接続され、
上記保護素子は、上記第1電極配線および上記第2電極配線と電気的に接続され、
上記各発光部のうち少なくとも2つの発光部は、互いに異なる色を少なくとも1色発光し、
上記アノード電極k個(2≦k≦n)が上記基板上の上記隅部に設けられ、当該各アノード電極は、アノード電極間で重複しないように、上記各発光部のうち1つまたは複数の発光部に電気的に接続されており、
上記樹脂製枠および上記樹脂製隔壁は、光反射性または光遮光性を有しており、
1つの上記発光部につき、上記発光素子の発光色が1種類であり、
上記発光素子を覆うように区域内に充填された、蛍光体を含有する樹脂からなる蛍光体含有樹脂層を備える各発光部は、1つの当該発光部につき、上記蛍光体の種類が1種類であり、
上記各発光部のうち、少なくとも1つの発光部は、少なくとも青色光および緑色光を発光し、当該発光部とは異なる少なくとも1つの発光部は、少なくとも赤色光を発光することを特徴とする発光装置。」(下線は補正箇所に付加したもの。以下同じ。)
「【請求項2】
上記発光部は2つ形成されており、
第1の発光部は、上記発光素子としての青色光を発光する青色発光素子と、上記青色発光素子を覆うように上記区域内に充填された、赤色蛍光体を含有する樹脂からなる赤色蛍光体含有樹脂層とにより構成され、
第2の発光部は、上記発光素子としての青色光を発光する青色発光素子と、上記青色発光素子を覆うように上記区域内に充填された、緑色蛍光体を含有する樹脂からなる緑色蛍光体含有樹脂層とにより構成されており、
上記基板上の上記隅部に設けられたk個の上記アノード電極は、第1アノード電極と第2アノード電極とを含み、
上記第1電極配線は中央部が途切れることで、第1の部分と第2の部分とに分離されており、
上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する上記接続用配線は、上記第1アノード電極と上記第1電極配線の上記第1の部分とを電気的に接続する第1接続用配線と、上記第2アノード電極と上記第1電極配線の上記第2の部分とを電気的に接続する第2接続用配線とを含むことを特徴とする請求項1に記載の発光装置。」

2 本件補正についての検討
(1)補正事項の整理
本件補正を整理すると次のとおりである。
[補正事項1]
補正前の請求項1に記載の「電気的に接続される電極配線」を、「電気的に接続され、上記発光素子を取り囲む電極配線」とすること。
[補正事項2]
補正前の請求項1に記載の「を備え、上記各発光部」を、「を備え、上記電極配線は、上記樹脂製枠で覆われた、第1電極配線、第2電極配線および保護素子を含み、上記第1電極配線および上記第2電極配線は、上記ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続され、上記第1電極配線は、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する上記接続用配線と電気的に接続され、上記第2電極配線は、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線と電気的に接続され、上記保護素子は、上記第1電極配線および上記第2電極配線と電気的に接続され、上記各発光部」とすること。
[補正事項3]
補正前の請求項1に記載の「上記アノード電極は、上記基板上の上記樹脂製枠外においてk個(2≦k≦n)設けられ」を、「上記アノード電極k個(2≦k≦n)が上記基板上の上記隅部に設けられ」とすること。
[補正事項4]
補正前の請求項2に記載の「構成されていること」を、「構成されており、上記基板上の上記隅部に設けられたk個の上記アノード電極は、第1アノード電極と第2アノード電極とを含み、上記第1電極配線は中央部が途切れることで、第1の部分と第2の部分とに分離されており、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する上記接続用配線は、上記第1アノード電極と上記第1電極配線の上記第1の部分とを電気的に接続する第1接続用配線と、上記第2アノード電極と上記第1電極配線の上記第2の部分とを電気的に接続する第2接続用配線とを含むこと」とすること。
[補正事項5]
補正前の明細書の段落【0013】を補正すること。

(2)新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否についての検討
以下、補正事項1?5について検討する。

ア 補正事項1について
(ア)補正事項1により補正された事項は、本願の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。また、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「当初明細書等」という。)のの段落【0023】?【0026】、図3、4に記載されているから、補正事項1は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項1は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「電極配線」について、「上記発光素子を取り囲む」という構成を追加して、「電極配線」を限定する補正であり、補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

イ 補正事項2について
(ア)補正事項2により補正された事項は、当初明細書等の段落【0023】?【0027】、【0045】、図3、4に記載されているから、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項2は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「電極配線」について、構成を追加して、「電極配線」を限定する補正であり、補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

ウ 補正事項3について
(ア)補正事項3により補正された事項は、当初明細書等の段落【0021】、図1?5に記載されているから、補正事項3は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項3は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項3は、補正前の請求項1において、「上記基板上における上記樹脂製枠の外側に形成された外側領域」、「上記外側領域における上記基板上の隅部に設けられ、上記各発光部に電源をそれぞれ供給するためのアノード電極およびカソード電極構成」と特定されるとともに、「上記アノード電極は、上記基板上の上記樹脂製枠外においてk個(2≦k≦n)設けられ」と特定されたものを、後者の「アノード電極」についての発明特定事項を、「上記アノード電極k個(2≦k≦n)が上記基板上の上記隅部に設けられ」とする補正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、補正事項1は、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

エ 補正事項4について
(ア)補正事項4により補正された事項は、当初明細書等の段落【0023】、【0024】、図3に記載されているから、補正事項4は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項4は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

(イ)補正事項4は、補正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「アノード電極」、「第1電極配線」及び「接続用配線」について、それぞれ構成を追加して、「アノード電極」、「第1電極配線」及び「接続用配線」を限定する補正であり、補正前の請求項に記載された発明と産業上の利用分野及び発明が解決しようとする課題が同一である。
したがって、補正事項4は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、特許法第17条の2第5項に規定する要件を満たしている。

オ 補正事項5について
補正事項5により補正された事項は、当初明細書の段落【0023】?【0026】、図3、4に記載されており、補正事項5は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、補正事項5は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。

新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たすものである。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定の規定に適合するか)について、以下において検討する。

(3)独立特許要件について
ア 本件補正後の発明
本件補正後の請求項1に係る発明は、上記「1 本件補正の内容」の「(補正後)」に記載したとおりである。

イ 引用例の記載と引用発明
(ア)引用例1:特開2009-135485号公報
原査定の拒絶理由で引用された特開2009-135485号公報(以下「引用例1」という。)には、「半導体発光装置およびその製造方法」(発明の名称)に関して、図1?7とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同じ。)。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は半導体発光装置及びその製造方法に関するものである。」

b「【0022】
〔実施形態〕
図1?図3は本発明の一実施形態の半導体発光装置100を説明するもので、図1は半導体発光装置を模式的に示す平面図であり、図2は半導体発光装置の発光部の一つを拡大して模式的に示す平面図であり、図3は半導体発光装置の発光部の一つの縦断面を模式的に示す断面図である。
【0023】
図1示すように、本実施形態の半導体発光装置100は、配線基板1と、複数(本実施形態では4つ)の発光部2とを有する。また、図2,3に示すように、発光部2は、配線基板1上に配置された1つ以上の半導体発光素子21と、配線基板1上に半導体発光素子21を取り囲むように形成された絶縁性の堰22と、配線基板1上の堰22に囲われた領域に形成され半導体発光素子21を封止する封止部23とを備えて構成されている。
【0024】
(1.配線基板)
配線基板1は図1?3に示すように半導体発光装置100を支持するとともに、半導体発光素子21へ電力を供給するための配線(図示省略)を支持体の表層に備えた基板である。本実施形態では、平板状の支持体の表面に配線がプリントされたプリント配線基板を配線基板1として用い、図示しない外部電力から電力を供給されるようになっているものとする(後述する図4,5参照)。本実施形態では配線基板1の片面に直接半導体発光素子21を設けるため、配線も前記の片面にのみ設置すればよい。このように片面のみに配線を設置すればよいことは、通常は配線基板の両面に配線を要するSMD型の半導体発光装置と比較してコスト面で有利であり、好ましい。ただし、配線基板1の形状及び配線の設置手段等は半導体発光装置100の用途等に応じて任意に設定できる。」

c「【0036】
(2.発光部)
発光部2は、図1?3に示すように配線基板1上に設けられたものである。この発光部2は、半導体発光素子21と、堰22と、封止部23とを備えている。
【0037】
(2-1.半導体発光素子)
半導体発光素子21は図1?3に示すように配線基板1上に配置される。この際、図3に示すように、SMD型の半導体発光装置のようにパッケージによるサブマウントを行うことなく、半導体発光素子21を配線基板1に直接設置する。
【0038】
半導体発光素子21としては、発光ダイオード(以下適宜、「LED」という)、レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。中でも、半導体発光素子21としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LED及びLDが好ましい。なぜなら、GaN系LED及びLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し発光出力や外部量子効率が格段に大きく、蛍光体と組み合わせることによって非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。…(略)…
【0039】
本発明においては、通常、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する半導体発光素子を使用する。具体的には、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、更に好ましくは350nm以上、また、通常480nm以下のピーク発光波長を有する半導体発光素子が使用される。短波長すぎると封止部23で発光波長の光が吸収されて高輝度の半導体発光装置を得ることができない可能性があり、また発熱による半導体発光装置の熱劣化の原因となる可能性がある。長波長すぎると蛍光体を用いた波長変換を行うことができず、照明用途として有用な白色光を得ることが出来ない可能性がある。
【0040】
半導体発光素子21は、いわゆるフリップチップにより配置することが好ましい。半導体発光素子21をフリップチップにより接続すれば、半導体発光素子21から発せられる熱を効率よく放熱することが可能だからである。
…(略)…
【0041】
ここでフリップチップとは、半導体発光素子21(チップ)の回路面を配線基板1に対向する向きに設置し、半導体発光素子21と配線基板1とを両者の間に設けられた導電性材料からなるバンプ24により電気的に接続する技術である。半導体発光素子21においては、フリップチップを適用すれば半導体発光素子21がその発光面を配線基板1と対向するようになる。この場合、半導体発光素子21から発せられる光は図3では半導体発光素子21の下側の面及び側面から発せられることになり、通常は配線基板1の表面で反射してから外部に発せられるようになっている。また、半導体発光素子21が透明である場合、当該光は配線基板1で反射する以外に、半導体発光素子21を透過して外部に発せられることもある。
本実施形態においても、図3に示すように、半導体発光素子21はフリップチップにより設置され、その発光面が配線基板1と対向するようになっているものとする。
【0042】
また、半導体発光素子21は、一つの発光部2当たり、1個を単独で設けてもよく、2個以上を設けてもよい。なかでも、堰22を設けたり、封止を行なったりする工程を簡略化できる点、並びに、複数の半導体発光素子を用いることにより異なる発光部2の間で輝度及び発光波長のばらつきを平均化できる点から、一つの発光部2には2個以上の半導体発光素子21を設けることが好ましい。本実施形態においては、一つの発光部2につき9個の半導体発光素子21を設けた例を示す。」

d 「【0043】
(2-2.堰)
堰22は、図1?3に示すように配線基板1上に形成されるものであり、前記の半導体発光素子21を取り囲むように形成されている。発光部2を形成する際、後述する封止部23はこの堰22に堰き止められるようにして形成される。したがって、堰22が形成された寸法、形状、位置等に応じて封止部23の寸法、形状、位置等が設定され、これにより、発光部2の位置、大きさ、デザイン等を決定付けることになる」
…(略)…
【0048】
堰22の色に制限は無いが、通常は透明又は白色に形成する。堰22の表面における光の反射効率を高め、光を効率的に取り出すためである。
【0049】
堰22は、光散乱剤を含有することが好ましい。光散乱剤を含有する材料によって堰22を形成することにより、半導体発光素子21から堰22が存在する方向に発せられた光は、堰22によって散乱、反射されるため、半導体発光装置100から配線基板1に平行な方向または平行に近い方向への光の放射を抑制することができるとともに、半導体発光素子21から配線基板1に垂直に近い方向への光の取り出し効率を高めることができる。
【0050】
また、半導体発光装置100においては、堰22は、封止部23より屈折率が高いことが好ましい。封止部23より屈折率の高い堰22を用いることにより、半導体発光装置100から堰22が存在する方向に発せられた光は、堰22によって反射されるため、半導体発光素子21から配線基板1に平行な方向または平行に近い方向への光の放射を抑制することができるとともに、半導体発光素子21から配線基板1に垂直な方向または垂直に近い方向の光の取り出し効率を高めることができる。
さらに、堰22の表面における反射効率を高める観点からは、堰22と封止部23との屈折率の差は大きいことが好ましい。
【0051】
堰22の材料の好適な例を挙げると、絶縁性を有する観点から樹脂又はセラミックが挙げられ、中でも、低透湿、光伝送または遮断特性、並びに配線基板1に対する密着性などの観点から樹脂が好ましい。樹脂の中でも好適な例を挙げると、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。また、配線基板1、封止部23に対する密着性などの観点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂が特に好ましい。中でも透明である点から、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。なお、堰22の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。」

e 「【0058】
(2-3.封止部)
封止部23は、図1?3に示すように配線基板1上の堰22に囲われた領域に形成される部材であり、半導体発光素子21を封止するものである。封止部23は、半導体発光素子21を封止するとともに、半導体発光素子21からの光を所定の位置に導光する導光部の役割を担保するものである。半導体発光素子21から発せられた光は、この封止部23内を導光されて外部に発せられるようになっている。
…(略)…
【0062】
また、封止材に関して言えば、半導体発光装置100においては、半導体発光素子21を封止している封止部23は、光透過率が高い封止材により形成されていることが、半導体発光装置100からの光取り出し効率を高める観点から、好ましい。中でも、以下に説明する硬化性材料を用いることが好ましい。
【0063】
(2-3-1.硬化性材料)
硬化性材料は、流体状の材料であって、何らかの硬化処理を施すことにより硬化する材料のことをいう。また、流体状とは、例えば液状又はゲル状のことをいう。また、硬化性材料は、半導体発光素子21からの光を所定の位置に導光する封止部23の役割を担保するものである。さらに、硬化性材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。このような硬化性材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
…(略)…
【0065】
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
…(略)…
【0103】
(2-3-2.その他の成分)
封止材には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の無機系材料及び/又は有機系材料などに、更にその他の成分を混合して用いることも可能である。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。その他の成分の例を挙げると、蛍光体、無機粒子などが挙げられる。
【0104】
(2-3-2-1.蛍光体)
封止材に蛍光体を含有させることにより、封止部23を、蛍光体を含有する部材(以下適宜、「蛍光体含有部」という)として形成することができる。この場合には、半導体発光素子21から発せられた光を封止部23内で蛍光体により波長変換し、その波長変換した光を発光部2から発することができる。通常、発光部2から発せられる光は半導体発光素子21から発せられた光と蛍光体が波長変換して発する蛍光との混色となるので、これを利用して、発光部2の発光の色を調整することが可能である。
なお、蛍光体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
…(略)…
【0107】
ただし、上記の結晶母体及び付活剤または共付活剤は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、本明細書における蛍光体の例示では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、…(略)…
【0108】
・赤色蛍光体
赤色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「赤色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、また、通常700nm以下、好ましくは680nm以下が望ましい。
…(略)…
【0114】
・緑色蛍光体
緑色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「緑色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常490nm以上、好ましくは500nm以上、また、通常570nm以下、好ましくは550nm以下が望ましい。
…(略)…
【0118】
・青色蛍光体
青色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「青色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常420nm以上、好ましくは440nm以上、また、通常480nm以下、好ましくは470nm以下が望ましい。…(略)…
…(略)…
【0121】
・黄色蛍光体
黄色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「黄色蛍光体」という。)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。黄色蛍光体の発光ピーク波長が短すぎると黄色成分が少なくなり演色性が劣ることとなる可能性があり、長すぎると封止部23から発せられる光の輝度が低下する可能性がある。」

f 「【0148】
(2-4.発光部に関するその他の事項)
半導体発光装置100においては、発光部2は複数設けられる。本実施形態では図1に示すように発光部2を4つ設けた例を挙げているが、発光部2の数は2以上であれば4つに限定されるものではない。このように発光部2を複数設けることにより、照明用途に適した面発光体を得ることが出来る。
【0149】
また、複数設けられた発光部2から発せられる光は同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、半導体発光装置100を青色、緑色又は赤色の発光装置として構成する場合は、それぞれ、全ての発光部2から青色、緑色又は赤色の光が発せられるように半導体発光素子21及び蛍光体を選択すればよい。また、半導体発光装置100を白色の発光装置として構成する場合は、発光部2のいずれかが青色、いずれかが緑色、残りが赤色の光を発するように半導体発光素子21及び蛍光体を選択し、その光の混色が白色となるようにすればよい。前記のように複数ある発光部2の色が互いに異なる場合は、外部の調光回路によりこれらの発光部2の発光強度を独立に調節し、半導体発光装置100から発せられる光の色調を可変とすることができる利点がある。また例えば、複数ある発光部2のいずれかが白色で、他が赤、青、緑、電球色の何れかから選択される組み合わせとなるように白色の発光装置を構成しても良い。この場合には、半導体発光装置100から発せられる光が単色のみを混色するより短い距離で混色可能となり、より薄型の調光可能照明装置とすることができる。
本実施形態では、前記混色により半導体発光装置100から白色の光が発せられるように構成されているものとする。」

g 「【0151】
(3.作用)
以上のような半導体発光装置100によれば、半導体発光素子21から発せられた光は封止部23内の蛍光体により波長変換され、発光部2から半導体発光装置100の外部に発せられる。この際、各発光部2から発せられた光が異なっている場合には、各発光部2から発せられた光が混色された色(本実施形態では白色)の光が半導体発光装置100から発せられることになる。
【0152】
また、本実施形態の半導体発光装置100は、発光部2を複数備えるとともに、それぞれの発光部2から発せられる光の色が異なっている。このため、半導体発光素子21から発せられる光の強さを発光部2毎に制御することで、半導体発光装置100から発せられる光の色調を調整することができる。例えば、赤みを帯びた白色の光を半導体発光装置100から発するようにしたい場合には、赤色の光に対応する発光部2内の半導体発光素子21に供給する電力を、それ以外の発光部2内の半導体発光素子21に供給する電力に比べて大きくなるように制御すればよい。これにより長期使用時の蛍光体劣化等に伴う半導体発光装置100の色ずれの補正や、生活リズムや使用環境に合わせた色調の調整を簡便に行なうことができ、より快適な照明光源とすることが可能となる。」

h 「【0186】
[その他の実施形態]
本発明の半導体発光装置及びその製造方法は、上述した実施形態におけるものに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
例えば、堰22は発光部2毎に独立して設けず、各発光部2に共有されるよう形成してもよい。具体例を挙げると、図6に示すように、堰22を格子状に形成し、その堰22に囲まれた領域に封止部23を設けるようにしてもよい。なお、図6は本発明の別の実施形態としての半導体発光装置を模式的に表す平面図であり、図1?3と同様の符号は、図1?3と同様のものを示す。」

i 図5、6は、以下のとおりのものであり、図5から、配線基板1上に形成された配線は、堰22に囲まれた内側から堰22の外側まで延在していることが見てとれ、図5、6から、配線基板1における堰22の外側に領域があることが見てとれる。


(イ)引用発明
以上、図1?6を参酌してまとめると、引用例1には、図6に示される「本発明の別の実施形態」として、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「配線基板1と、複数の発光部2とを有する半導体発光装置100であって、
発光部2は、配線基板1上に配置された1つ以上の半導体発光素子21と、配線基板1上に半導体発光素子21を取り囲むように形成された絶縁性の堰22と、配線基板1上の堰22に囲われた領域に形成され半導体発光素子21を封止する封止部23とを備えて構成され、
配線基板1は半導体発光装置100を支持するとともに、半導体発光素子21へ外部電力から電力を供給するための配線を支持体の表層に備えた基板であり、配線基板1上の当該配線は、堰22に囲まれた内側から堰22の外まで延在し、配線基板1における堰22の外側に領域を備え、
半導体発光素子21と配線基板1とは、両者の間に設けられたバンプ24により電気的に接続され、
半導体発光素子21は配線基板1に直接設置され、GaN系LEDが好ましく、
近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する半導体発光素子を使用し、
半導体発光素子21は、一つの発光部2当たり、1個を単独で、または、2個以上が設けられており、工程を簡略化できる点、並びに、複数の半導体発光素子を用いることにより異なる発光部2の間で輝度及び発光波長のばらつきを平均化できる点から、一つの発光部2には2個以上の半導体発光素子21を設けることが好ましく、
堰22の表面は、光の反射効率が高められており、
堰22の材料は、シリコーン樹脂が好ましく、
封止部23を形成する封止材には、例えば、シリコーン樹脂を用い、蛍光体を混合して用い、発光部2から発せられる光は半導体発光素子21から発せられた光と蛍光体が波長変換して発する蛍光との混色となるので、これを利用して、発光部2の発光の色を調整することが可能であり、蛍光体は1種類を単独で用い、
複数設けられた発光部2から発せられる光は、色が互いに異なっており、外部の調光回路によりこれらの発光部2の発光強度が独立に調節され、半導体発光装置100から発せられる光の色調が可変とされており、
半導体発光素子21から発せられる光の強さを発光部2毎に制御することで、半導体発光装置100から発せられる光の色調を調整することができ、
複数ある発光部2のいずれかが白色で、他が赤、青、緑、電球色の何れかから選択される組み合わせとなるように構成して混色し、調光可能照明装置とし、
前記混色により白色の光が発せられるように構成されており、
堰22は格子状に形成され、その堰22に囲まれた領域に封止部23が設けられ、堰22は発光部2毎に独立して設けられず、各発光部2に共有されるよう形成される半導体発光装置100。」

ウ 対比
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「半導体発光装置100」、「配線基板1」の「支持体」及び「半導体発光素子21」はそれぞれ、補正発明の「発光装置」、「基板」及び「発光素子」に相当する。

(イ)引用発明において、「堰22」は、「配線基板1上に半導体発光素子21を取り囲むように形成された絶縁性の堰22」であって、「堰22の材料は、シリコーン樹脂が好まし」いから、引用発明の「堰22」は、補正発明の「上記基板上に環状に設けられた樹脂製枠」に相当する。
また、引用発明では、「配線基板1上における堰22の外側に領域を備え」るものであるから、補正発明と引用発明とは、「上記基板上における上記樹脂製枠の外側に形成された外側領域」を備える点で一致する。

さらに、引用発明では、「『堰22は格子状に形成され』、『堰22は発光部2毎に独立して設けられず、各発光部2に共有されるよう形成され』」ているから、堰22のうち、「各発光部2に共有されるように形成され」ている部分は、補正発明の「樹脂製隔壁」に対応し、かつ、堰22の当該部分は、「『堰22』の残りの部分で『囲まれた部分をn個(2≦n)の区域に仕切るように』設けられた」ものであるといえる。
したがって、補正発明と引用発明とは、「『上記樹脂製枠で囲まれた部分をn個(2≦n)の区域に仕切るように』『設けられた樹脂製隔壁』」を備える点で一致する。

(ウ)引用発明では、「『堰22は格子状に形成され』、『堰22は発光部2毎に独立して設けられず、各発光部2に共有されるよう形成され』」ているから、引用発明の「発光部2」は、補正発明の「上記各区域にそれぞれ形成された」ものに対応する。
さらに、引用発明では、「半導体発光素子21は、一つの発光部2当たり、1個を単独で、または、2個以上が設けられて」いるから、補正発明と引用発明とは、「上記各区域にそれぞれ形成された、少なくとも1つの発光素子を含む発光部」を備える点で一致する。

(エ)引用発明では、「半導体発光素子21は配線基板1に直接設置され、GaN系LEDが好ましく」、「配線基板1は半導体発光装置100を支持するとともに、半導体発光素子21へ外部電力から電力を供給するための配線を支持体の表層に備えた基板であり」、「半導体発光素子21と配線基板1とは、両者の間に設けられたバンプ24により電気的に接続され」る。
したがって、引用発明の「半導体発光素子21」は、「電源」が供給されるようになっていることは明らかであるとともに、LEDがアノード電極とカソード電極を有することは技術常識であるから、上記「配線」は、「『GaN系LED』のアノード電極に接続される部分とカソード電極に接続される部分」とを備えるといえる。そして、当該「配線」、当該「アノード電極に接続される部分」及び当該「カソード電極に接続される部分」は、それぞれ補正発明の「電極配線」、「アノード電極」及び「カソード電極」に相当する。
よって、補正発明と引用発明とは、「上記各発光部に電源をそれぞれ供給するためのアノード電極およびカソード電極」と、「上記複数の発光素子と電気的に接続される電極配線」とを備える点で一致し、「上記電極配線と上記アノード電極とは電気的に接続され、上記電極配線と上記カソード電極とは電気的に接続される」点で共通する。

(オ)引用発明では、「複数設けられた発光部2から発せられる光は、色が互いに異なって」いるから、補正発明と引用発明とは、「上記各発光部のうち少なくとも2つの発光部は、互いに異なる色を少なくとも1色発光」する点で一致する。

(カ)引用発明では、「堰22の表面は、光の反射効率が高められており」、かつ、上記(ウ)で検討したように、引用発明の「堰22」は、補正発明の「上記基板上に環状に設けられた樹脂製枠」に相当し、堰22のうち、「各発光部2に共有されるように形成され」ている部分は、補正発明の「樹脂製隔壁」に対応する。
したがって、補正発明と引用発明とは、「上記樹脂製枠および上記樹脂製隔壁は、光反射性を有して」いる点で一致する。

(キ)引用発明では、封止部23は、「配線基板1上の堰22に囲われた領域に形成され半導体発光素子21を封止する封止部23」であり、「堰22は格子状に形成され、その堰22に囲まれた領域に封止部23が設けられ、堰22は発光部2毎に独立して設けられず、各発光部2に共有されるよう形成され」、「封止部23を形成する封止材には、例えば、シリコーン樹脂を用い、蛍光体を混合して用い、発光部2から発せられる光は半導体発光素子21から発せられた光と蛍光体が波長変換して発する蛍光との混色となるので、これを利用して、発光部2の発光の色を調整することが可能であり、蛍光体は1種類を単独で用い」ている。
したがって、引用発明の「封止部23」は、補正発明の「蛍光体を含有する樹脂からなる蛍光体含有樹脂層」に相当するとともに、補正発明における「区域」については、上記(ウ)も踏まえると、補正発明の「上記発光素子を覆うように区域内に充填された」ものに相当するといえる。
よって、補正発明と引用発明とは、「上記発光素子を覆うように区域内に充填された、蛍光体を含有する樹脂からなる蛍光体含有樹脂層を備える各発光部は、1つの当該発光部につき、上記蛍光体の種類が1種類」である点で一致する。

(ク)一致点と相違点を示す前に、上記「1 本件補正の内容」の「(補正後)」に記載された「補正発明」を、符号を用いて分節して、再掲する。
「【請求項1】
(a)発光素子を用いた発光装置であって、
(b)基板と、
(c)上記基板上に環状に設けられた樹脂製枠と、
(d)上記樹脂製枠で囲まれた部分をn個(2≦n)の区域に仕切るように上記基板上に設けられた樹脂製隔壁と、
(e)上記各区域にそれぞれ形成された、少なくとも1つの発光素子を含む発光部と、
(f)上記基板上における上記樹脂製枠の外側に形成された外側領域と、
(g)上記外側領域における上記基板上の隅部に設けられ、
(h)上記各発光部に電源をそれぞれ供給するためのアノード電極およびカソード電極と、
(i)ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続され、(j)上記発光素子を取り囲む電極配線と、
(k)上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する接続用配線と、
上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線とを備え、
(l)上記電極配線は、上記樹脂製枠で覆われた、第1電極配線、第2電極配線および保護素子を含み、
(m)上記第1電極配線および上記第2電極配線は、上記ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続され、
(n)上記第1電極配線は、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する上記接続用配線と電気的に接続され、
上記第2電極配線は、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線と電気的に接続され、
(o)上記保護素子は、上記第1電極配線および上記第2電極配線と電気的に接続され、
(p)上記各発光部のうち少なくとも2つの発光部は、互いに異なる色を少なくとも1色発光し、
(q)上記アノード電極k個(2≦k≦n)が上記基板上の上記隅部に設けられ、当該各アノード電極は、アノード電極間で重複しないように、上記各発光部のうち1つまたは複数の発光部に電気的に接続されており、
(r)上記樹脂製枠および上記樹脂製隔壁は、光反射性または光遮光性を有しており、
(s)1つの上記発光部につき、上記発光素子の発光色が1種類であり、
(t)上記発光素子を覆うように区域内に充填された、蛍光体を含有する樹脂からなる蛍光体含有樹脂層を備える各発光部は、1つの当該発光部につき、上記蛍光体の種類が1種類であり、
(u)上記各発光部のうち、少なくとも1つの発光部は、少なくとも青色光および緑色光を発光し、当該発光部とは異なる少なくとも1つの発光部は、少なくとも赤色光を発光する(v)ことを特徴とする発光装置。」

(ケ)以上(ア)?(キ)をまとめると、補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである(上記(ク)で用いた符号も記入した。「’」は一部一致を示す。)。

<一致点>
「(a)発光素子を用いた発光装置であって、
(b)基板と、
(c)上記基板上に環状に設けられた樹脂製枠と、
(d)上記樹脂製枠で囲まれた部分をn個(2≦n)の区域に仕切るように上記基板上に設けられた樹脂製隔壁と、
(e)上記各区域にそれぞれ形成された、少なくとも1つの発光素子を含む発光部と、
(f)上記基板上における上記樹脂製枠の外側に形成された外側領域と、
(h)上記各発光部に電源をそれぞれ供給するためのアノード電極およびカソード電極と、
(i)’(j)’上記複数の発光素子と電気的に接続される電極配線とを備え、
(k)’上記電極配線と上記アノード電極とは電気的に接続され、上記電極配線と上記カソード電極とは電気的に接続され、
(p)上記各発光部のうち少なくとも2つの発光部は、互いに異なる色を少なくとも1色発光し、
(r)’上記樹脂製枠および上記樹脂製隔壁は、光反射性を有しており、
(t)上記発光素子を覆うように区域内に充填された、蛍光体を含有する樹脂からなる蛍光体含有樹脂層を備える各発光部は、1つの当該発光部につき、上記蛍光体の種類が1種類である(v)発光装置。」

<相違点1>
a 補正発明では、「(k)上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する接続用配線と、上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線と」を備えるのに対し、
引用発明では、補正発明の上に述べた構成を備えることが特定されていない点(以下「相違点1K」という。)。

b 「電極配線」に関し、
補正発明では、「(i)ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続され、(j)上記発光素子を取り囲む」ものであるのに対し、
引用発明では、「配線基板1は半導体発光装置100を支持するとともに、半導体発光素子21へ外部電力から電力を供給するための配線を支持体の表層に備えた基板であり、配線基板1上の当該配線は、堰22に囲まれた内側から堰22の外まで延在し、配線基板1における堰22の外側に領域を備え、半導体発光素子21と配線基板1とは、両者の間に設けられたバンプ24により電気的に接続され」ているものの、補正発明の上記(i)、(j)の構成であることが特定されていない点(以下、それぞれ「相違点1I」、「相違点1J」という。)。

また、補正発明では、「(l)上記電極配線は、上記樹脂製枠で覆われた、第1電極配線、第2電極配線および保護素子」を含み、
「(m)上記第1電極配線および上記第2電極配線は、上記ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続され」、
「(n)上記第1電極配線は、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する上記接続用配線と電気的に接続され、
上記第2電極配線は、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線と電気的に接続され」、
「(o)上記保護素子は、上記第1電極配線および上記第2電極配線と電気的に接続され」るものであるのに対し、
引用発明では、補正発明の上記(l)?(o)の構成を含むことが特定されていない点(以下、それぞれの構成を備えることが特定されていない点を、順に、「相違点1L」、「相違点1M」、「相違点1N」、「相違点1O」という。)。

c 「アノード電極」および「カソード電極」に関し、
補正発明では、「(g)上記外側領域における上記基板上の隅部に設けられ」、「(q)上記アノード電極k個(2≦k≦n)が上記基板上の上記隅部に設けられ、当該各アノード電極は、アノード電極間で重複しないように、上記各発光部のうち1つまたは複数の発光部に電気的に接続されて」ているのに対し、
引用発明では、「半導体発光素子21は配線基板1に直接設置され」、「配線基板1は半導体発光装置100を支持するとともに、半導体発光素子21へ外部電力から電力を供給するための配線を支持体の表層に備えた基板であり、配線基板1上の当該配線は、堰22に囲まれた内側から堰22の外まで延在し、配線基板1における堰22の外側に領域を備え」ているものの、補正発明の上記(g)、(q)の構成を含むことが特定されていない点(以下、それぞれの構成を備えることが特定されていない点を、順に、「相違点1G」、「相違点1Q」という。)。

<相違点2>
a 補正発明では、「(s)1つの上記発光部につき、上記発光素子の発光色が1種類」であるのに対し、
引用発明では、1つの発光部2における半導体発光素子21の発光色が1種類であるか否か不明である点(以下「相違点2S」という。)。

b 補正発明では、「(u)上記各発光部のうち、少なくとも1つの発光部は、少なくとも青色光および緑色光を発光し、当該発光部とは異なる少なくとも1つの発光部は、少なくとも赤色光を発光する」のに対し、
引用発明では、「『半導体発光素子21は』『GaN系LEDが好ましく、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する半導体発光素子を使用し、半導体発光素子21は、一つの発光部2当たり、1個を単独で、または、2個以上が設けられており、工程を簡略化できる点、並びに、複数の半導体発光素子を用いることにより異なる発光部2の間で輝度及び発光波長のばらつきを平均化できる点から、一つの発光部2には2個以上の半導体発光素子21を設けることが好ましく』」、
「『封止部23を形成する封止材には』、『蛍光体を混合して用い、発光部2から発せられる光は半導体発光素子21から発せられた光と蛍光体が波長変換して発する蛍光との混色となるので、これを利用して、発光部2の発光の色を調整することが可能であり、蛍光体は1種類を単独で用い』」、
「複数設けられた発光部2から発せられる光は、色が互いに異なっており、外部の調光回路によりこれらの発光部2の発光強度が独立に調節され、半導体発光装置100から発せられる光の色調が可変とされており、
半導体発光素子21から発せられる光の強さを発光部2毎に制御することで、半導体発光装置100から発せられる光の色調を調整することができ、
複数ある発光部2のいずれかが白色で、他が赤、青、緑、電球色の何れかから選択される組み合わせとなるように構成して混色し、調光可能照明装置とし、
前記混色により白色の光が発せられるように構成されて」いるものの、補正発明の上に述べた構成を備えることが特定されていない点(以下「相違点2U」という。)。

エ 判断
(ア)相違点1K、1I、1J、1L、1M、1N、1O、1Gについて
先ず、相違点1のうち、相違点1K、1I、1J、1L、1M、1N、1O、1Gについて、検討する。

a 先ず、上記相違点1K、1I、1J、1M、1N、1Gについて、検討する。

発光素子を用いた発光装置において、
基板上における発光部の外側に形成された外側領域と、
「(g)上記外側領域における上記基板上の隅部に設けられ、
(h)上記各発光部に電源をそれぞれ供給するためのアノード電極およびカソード電極と、
(i)ワイヤボンディングにより複数の発光素子と電気的に接続される電極配線と、
(k)上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する接続用配線と、
上記外側領域に設けられ、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線とを備え、
(m)上記第1電極配線および上記第2電極配線は、上記ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続され、
(n)上記第1電極配線は、上記電極配線と上記アノード電極とを電気的に接続する上記接続用配線と電気的に接続され、
上記第2電極配線は、上記電極配線と上記カソード電極とを電気的に接続する接続用配線と電気的に接続され」るという構成は、
例えば、下記の周知例1(特に、段落【0061】?【0065】及び図1?3、11参照。)には、絶縁基板3の隅部に設けられた外部接続ランド12,13、配線パターン4a?4c、及び、外部引き出し配線パターン16,17が、並びに、下記の周知例2(特に、段落【0022】、【0038】及び図1、3参照。)には、実装基板20の隅部に設けられた外部接続用電極部23b、端子部23a、及び、配線パターン23(但し、端子部23aと外部接続用電極部23bを除く部分。)が、それぞれ記載されているように、周知の構成である。

一方、本願の明細書の発明の詳細な説明の段落【0023】?【0025】の記載、及び、図3、4に示された上面図によれば、補正発明の「(i)ワイヤボンディングにより上記複数の発光素子と電気的に接続され、(j)上記発光素子を取り囲む電極配線」は、例えば、図4において電極配線114a?114cとして示された、互いに平行に設けられた直線状の電極配線を包含するものと認められるところ、例えば、周知例1には、互いに平行に設けられた直線状の配線パターン4a,4b,4c,4dが示されている。

したがって、引用発明において、周知例1、2に記載のような上記周知の構成に基づき、上記相違点1G、1I、1J、1K、1M、1Nに係る補正発明の構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

(a)周知例1:特開2008-227412号公報
・「【0061】
また、本発明の発光装置は、図3に示すように、絶縁基板3上に、配線パターン4の一端と正電極外部接続ランド12および負電極外部接続ランド13との間を電気的に接続するための外部引き出し配線パターン16,17がさらに形成されていることが好ましい。このような外部引き出し配線パターン16,17により、電源(図示せず)と配線パターン4との間を、正電極外部接続ランド12および外部引き出し配線パターン16、負電極外部接続ランド13および外部引き出し配線パターン17をそれぞれ介して、電気的に接続することができる。
【0062】
さらに本発明の発光装置は、絶縁基板上に、検査用のパターンがさらに形成されてなるのが好ましい。図3には、配線パターン4aと配線パターン4bとの間、配線パターン4cと配線パターン4dとの間にそれぞれスポット状の検査用のパターン18が形成された例を示している。このような検査用のパターン18が絶縁基板3上に形成されていることで、配線パターン4aと配線パターン4bとの間、配線パターン4bと配線パターン4cとの間および配線パターン4cと配線パターン4dとの間の導通の検査を検査用のパターン18を介して容易に行うことができるようになる。また、この検査用のパターン18は、ダイボンド、ワイヤボンディングを自動化装置で行う際の認識パターンとしても用いることができる。なお、検査用のパターンは、図3に示したようなスポット状に限定されるものではなく、配線パターン4bと配線パターン4cとそれぞれ電気的に繋がっておりプローブを当てられる大きさのパターンにて実現されてもよい。
【0063】
本発明はまた、発光装置の製造方法についても提供する。上述してきた本発明の発光装置は、その製造方法については特に制限されるものではないが、本発明の発光装置の製造方法を適用することで好適に製造することができる。本発明の発光装置の製造方法は、絶縁基板上に配線パターンを形成する工程と、配線パターン間に発光素子を搭載する工程と、発光素子と配線パターンとを電気的に接続する工程と、貫通孔を有するシリコーンゴムシートを絶縁基板上に載置する工程と、シリコーンゴムシートの貫通孔内に、発光素子を封止する封止体を形成する工程とを基本的に含む。ここで、図11は、本発明の発光装置の製造方法の好ましい一例として、図1に示した発光装置1を製造する場合を段階的に示す図である。以下、図11を参照して、本発明の発光装置の製造方法について具体的に説明する。
【0064】
まず、図11(a)に示すように、絶縁基板3上に、配線パターン4を形成する。上述したように図11は図1に示した発光装置1を製造する場合であるので、配線パターン4として、4つの直線状の配線パターン4a,4b,4c,4dを平行に配置して絶縁基板3上に形成する。好適な具体例として、厚み1mmの酸化アルミニウムで形成された白色の絶縁基板3上に、厚み0.07mmの金膜をスパッタリング法を用いて形成した後、フォトエッチング法にて配線パターン4a,4b,4c,4d(幅1mm、間隔2mm)を形成する場合が挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、上述したように発光素子との間の電気的接続の位置決め用または発光素子の搭載位置の目安用のパターン7として直線から外側に膨らんだパターン、外部引き出し配線パターン16,17、検査用のパターンを形成する場合には、所望のパターンとなるように設計してフォトエッチングを行えばよい。
【0065】
次に、図11(b)に示すように、配線パターン4間に発光素子5を搭載する。ここで、発光素子5の搭載は、たとえばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、イミド樹脂などの熱硬化性樹脂を用いて発光素子5を絶縁基板3に直に接着することで行うことができる。そうすることにより、沿面放電電圧で決まる絶縁耐圧をできる限り高くすることができる。すなわち、電極方向に配列された発光素子と発光素子との間の絶縁耐圧は発光素子間の距離と絶縁基板の誘電率で決まり、発光素子と電極との間の絶縁耐圧も同様に発光素子と電極との最短距離と絶縁基板の誘電率で決まる。好適な具体例としては、絶縁基板3上に平行に形成された直線状の配線パターン4a,4b,4c,4dのそれぞれの間に、発光素子5として短辺幅0.24mm、長辺0.48mm、厚み0.14mmのLEDチップをエポキシ樹脂を用いて接着し、固定する場合が挙げられるが、これに限定されるものではない。その後、図11(b)に示すように、所望の電気的接続の状態に応じて、配線パターン4と発光素子5とをワイヤボンディングWを用いて電気的に接続する。」

(b)周知例2:特開2009-141219号公報
・「【0022】
実装基板20は、LEDチップ10が電気的に接続される配線パターン23,23が形成された絶縁性基板(例えば、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板などの電気絶縁性を有し且つ熱伝導率の高いセラミックス基板や、ホーロー基板、表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコン基板など)20aと、絶縁性基板20aよりも熱伝導率の高い材料(例えば、Cuなどの熱伝導率の高い金属材料)により形成され絶縁性基板20aの厚み方向に貫設された伝熱部20b,20bとで構成されている。また、本実施形態におけるLEDチップ10は、上述のように厚み方向の一表面側に各電極が形成されており、両電極それぞれがボンディングワイヤ14を介して配線パターン23,23の端子部23a,23aと直接接続されている。ここで、各配線パターン23,23は、一端側に上述の端子部23a,23aが形成され、他端側に外部接続用電極部23bが形成されている。なお、配線パターン23,23は、Cu膜とNi膜とAu膜との積層膜により構成され、最上層がAu膜となっている。」
・「【0038】
本実施形態の発光装置1は、LEDチップ10として厚み方向の両面に電極が形成されたものを用いており、実装基板20における各LEDチップ10の実装面側に、各LEDチップ10それぞれが接合される複数の導体パターン(ダイパッド)24が設けられており、複数個のLEDチップ10が導体パターン24およびボンディングワイヤ14を介して直列接続されており、当該複数個のLEDチップ10の直列回路の一端側のLEDチップ10(図3(a)における左下のLEDチップ10)の電極がボンディングワイヤ14を介して一方の配線パターン23と電気的に接続され、上記直列回路の他端側のLEDチップ10(図3(a)における右下のLEDチップ10)が接合された導体パターン24がボンディングワイヤ14を介して他方の配線パターン23と電気的に接続されている。ここにおいて、LEDチップ10のチップサイズは特に限定するものではないが、例えば実施形態1におけるLEDチップ10のチップサイズが1mm□であるとすれば、本実施形態では0.3mm□のものを用いることにより、発光装置1全体の大型化を抑えながらも発光装置1全体としての光束の向上を図れる。」

b 次に、上記相違点1L、1Oについて、検討する。

発光素子を用いた発光装置であって、基板上に設けられ、発光部を囲む樹脂製枠と、発光素子と電気的に接続される電極配線を備えたものにおいて、正極・負極側それぞれの電極配線と接続された保護素子を設け、当該保護素子と電極配線とを樹脂製枠で覆われたものとすることは、例えば、下記の周知例3(特に、段落【0023】、【0024】及び図3参照。)、及び、下記の周知例4(特に、段落【0035】及び図1参照。)に記載されているように、周知技術(以下「周知技術1」という。)である。
したがって、引用発明において、周知例3、4に記載の周知技術1に基づき、上記相違点1L、1Oに係る補正発明の構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

(a)周知例3:特開2009-164157号公報
・「【0023】
図3は、保護素子を用いた発光装置300の一部断面図である。尚、発光装置300の外観は図1Aと同様の形状であり、光反射樹脂302の形状は図1Aに示す発光装置100の光反射樹脂と同様の形状であり、その一部の断面が観察できるように図示してある。図3に示すように、発光装置300は、基板301の上に導体配線303A、303B、が設けられている。発光素子304は、導体配線303A上に載置されるとともに、導電性ワイヤ305を用いて導体配線303A及び303Bと接続されている。保護素子307は、導体配線303B上に載置され、導電性接合部材によって固定されているとともに、導電性ワイヤを用いて導体配線303Aと接続されている。そして、この保護素子307を埋設するように光反射樹脂302が設けられている。
【0024】
ここでは、保護素子307は、その全体が光反射樹脂302に埋設されるように設けられており、このような構成とすることで発光素子304からの光の吸収を抑制することができる。尚、保護素子の全体ではなく、その少なくとも一部を被覆してもよい。また、保素子と導体配線とを接続する導電性ワイヤも光反射樹脂に埋設するようにするのが好ましい。」

(b)周知例4:特開2009-182307号公報
・「【0035】
また、発光素子の他に、保護素子を設けることもできる。保護素子は、発光素子と同様に導電性ワイヤなどを用いて導体配線と電気的に接続させる。この場合、後工程で形成される光反射樹脂が設けられる位置に、保護素子を設けるのが好ましい。これにより、保護素子による光の吸収を低減することができる。さらに、発光素子と光反射樹脂との間に保護素子が存在しないことで、配光特性が均一になりやすい。しかも、光反射樹脂の内部に保護素子が埋設することで、発光素子を小型化することができる。」

c よって、引用発明において、周知例1、2に記載の周知の構成及び周知例3、4に記載の周知技術1に基づき、相違点1K、1I、1J、1L、1M、1N、1O、1Gに係る補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(イ)相違点1Qについて
次に、相違点1のうち、相違点1Qについて、検討する。

引用発明は、「複数設けられた発光部2から発せられる光は、色が互いに異なっており、外部の調光回路によりこれらの発光部2の発光強度が独立に調節され、半導体発光装置100から発せられる光の色調が可変とされて」いるものであるところ、複数設けられた発光部2を独立に調節するために、アノード電極を共通(1個)とせずに、2個以上設けることは常套手段であるものと認められ、例えば、アノード電極をk個(2≦k≦n)設けることは、下記の周知例5(特に、段落【0025】及び図1,3参照。)、及び、下記の周知例6(特に、段落【0010】及び図1参照。)に記載されているように、周知技術(以下「周知技術2」という。)である。

したがって、引用発明において、周知技術2に基づき、補正発明の「(q)上記アノード電極k個(2≦k≦n)が上記基板上の上記隅部に設けられ、当該各アノード電極は、アノード電極間で重複しないように、上記各発光部のうち1つまたは複数の発光部に電気的に接続されて」いる構成を備えるものとすること、すなわち、引用発明において、周知例5、6に記載の周知技術2に基づき、相違点1Qに係る補正発明の構成を採用することは、当業者であれば適宜なし得たことである。

(a)周知例5:特開2009-158872号公報
・「【0025】
図1に示すように後述する直列回路の数と同数のアノード電極6が装置基板2の上部に位置に設けられているとともに、装置基板2の下部に位置して一つのカソード電極7が設けられている。これらアノード電極6とカソード電極7は絶縁層4の表面にメッキされている。
【0026】
背面絶縁層8は金属ベース3の前記一面と反対側の面からなる背面全体に張り合わされている。なお、装置基板2の背面には背面絶縁層8を金属ベース3との間にはさんで図示シなヒートシンクが取付けられるようになっている。
【0027】
図1において左右方向に並べられた直列回路C1?C5は、アノード電極6とカソード電極7間に設けられている。これら直列回路C1?C5は、複数の半導体発光素子例えばLED11と、前記パッド5と、これらを電気的に直列に接続した金の細線からなるボンディングワイヤ12により形成されていて、装置基板2上に蛇行状に配設されている。ボンディングワイヤ12の一端はLED11の正極又は負極にファーストボンディングして接続され、ボンディングワイヤ12の他端はパッド5にセカンドボンディングして接続されている。」

(b)周知例6:特表2009-521077号公報
・「【0010】
本明細書において、同一の構成要素および構造には同一の参照符号を使用する。図1において、符号1は照明装置、符号10は基板、符号11は第1の色の、好ましくは青色のLED、符号12は第2の色の、好ましくは赤色のLED、符号13は第3の色の、好ましくは緑色のLED、符号14は白色のLEDを表す。符号15および16は、LED用の接続手段を表す。これらの接続手段は、LEDを個別に駆動し得るように設けられている。示した実施形態においては、各LEDは、共通の接点、たとえばパッド15を通じてアクセス可能な共通のカソードを有し、また、それぞれ独自の逆の接点、この例においては、種々の色用の複数のパッド16で表した、個別のアノードを有している。したがって、これらのLEDは独立に駆動することができる。」

(ウ)相違点2S、2Uについて
次に、相違点2S、2Uについて、検討する。

a 先ず、相違点2Sについて、検討する。
引用発明は、「『半導体発光素子21は』『GaN系LEDが好ましく、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する半導体発光素子を使用し』」、「半導体発光素子21は、一つの発光部2当たり、1個を単独で、または、2個以上が設けられており、工程を簡略化できる点、並びに、複数の半導体発光素子を用いることにより異なる発光部2の間で輝度及び発光波長のばらつきを平均化できる点から、一つの発光部2には2個以上の半導体発光素子21を設けることが好ましく」、「『封止部23を形成する封止材には』、『蛍光体を混合して用い、発光部2から発せられる光は半導体発光素子21から発せられた光と蛍光体が波長変換して発する蛍光との混色となるので、これを利用して、発光部2の発光の色を調整することが可能であり、蛍光体は1種類を単独で用い』」、「複数設けられた発光部2から発せられる光は、色が互いに異なっており、外部の調光回路によりこれらの発光部2の発光強度が独立に調節され、半導体発光装置100から発せられる光の色調が可変とされており、半導体発光素子21から発せられる光の強さを発光部2毎に制御することで、半導体発光装置100から発せられる光の色調を調整することができ」、「前記混色により白色の光が発せられるように構成されて」いるものである。
したがって、引用発明において、1つの発光部について、LEDの発光色を2種類以上とし、蛍光体を1種類単独で用い、複数設けられた発光部からの発光色を互いに異なるものすることにより、発光部2の発光強度を独立に調節し、光の強さを発光部2毎に制御するようにすることも実現可能ではあるものの、この場合1つの発光部につき、LEDの発光色を1種類とする場合に比べて、発光部毎の発光色の調整が必要となるなど、発光装置からの発光の色調の調整が単純ではなくなることは明らかである。
したがって、引用発明において、1つの発光部2につき、半導体発光素子21の発光色を1種類とする構成を採用することは、当業者が適宜選択し得たことである。
よって、引用発明において、上記相違点2Sに係る補正発明の構成を採用することは、当業者が適宜選択し得たことである。

b 次に、相違点2Uについて、検討する。
(a)引用発明は、上記aに記載した構成に加え、「複数ある発光部2のいずれかが白色で、他が赤、青、緑、電球色の何れかから選択される組み合わせとなるように構成して混色し、調光可能照明装置」とするものである。

(b)上記aで検討したように、引用発明において、「1つの発光部2につき、半導体発光素子21の発光色を1種類とする構成」を採用するに際して、上記(a)において、他の発光部2として赤色を選択し、白色の発光部との組み合わせで混色する場合について検討する。
各発光部における発光色の組み合わせ、及び、各発光部における発光素子の発光色と用いる蛍光体との組み合わせを適宜選択して、所望の白色照明装置や白色光源を得ることは、例えば、下記の周知例7(特に、段落【0007】、【0030】、【0034】?【0039】、及び図2等参照。)、下記の周知例8(特に、段落【0007】、【0039】?【0041】及び図7参照。)、及び、下記の周知例9(特に、請求項1、3、段落【0008】、【0012】?【0016】参照。)に記載されているように、周知技術(以下「周知技術3」という。)である。

また、引用例1の段落【0104】?【0121】(上記「イ(ア)引用例1」の摘記事項eを参照。)には、混色を得るための蛍光体として、赤色蛍光体や緑色蛍光体が例示されている。
更に、下記の周知例9には、白色発光部に青色発光ダイオードと緑色蛍光体を用い、赤色発光部に青色発光ダイオードと赤色蛍光体を用いる、フラッシュ用などの照明装置が開示されている。

これらを踏まえ、引用発明における「GaN系LEDが好ましく、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する半導体発光素子」として青色LEDを選択するならば、下記の周知例9に開示の照明装置のように、白色発光部に青色発光ダイオードと緑色蛍光体を用い、赤色発光部に青色発光ダイオードと赤色蛍光体を用いることにより、上記(a)に記載の引用発明の構成である「白色の発光部と赤色の発光部との組み合わせ」を実現できることは明らかである。

したがって、引用発明において、周知例7?9に記載の周知技術3並びに引用例1に記載の技術事項に基づき、補正発明の「(u)上記各発光部のうち、少なくとも1つの発光部は、少なくとも青色光および緑色光を発光し、当該発光部とは異なる少なくとも1つの発光部は、少なくとも赤色光を発光する」構成を採用することは、当業者が適宜選択し得たことである。
よって、引用発明において、上記相違点2Uに係る補正発明の構成を採用することは、当業者が適宜選択し得たことである。

(a)周知例7:特開2008-160061号公報
・「【0007】
請求項1記載の照明装置は、青色光を発光する青色発光素子と、この青色発光素子を被覆する黄色系蛍光体を有する白色発光素子と;赤色光を発光する赤色発光素子と;緑色光を発光する緑色発光素子と;前記赤色発光素子および前記緑色発光素子に供給する電流を調整し、該赤色発光素子および該緑色発光素子からの発光の出力を調整することにより、色温度を制御する色温度制御手段と;を具備することを特徴としている。」
・「【0030】
図1に示す照明装置10においては、白色発光素子11に供給する(流す)電流を制御することによって、所定の色温度の白色光を生成するとともに、赤色発光素子12および緑色発光素子13に対して流す電流を調整し、これらの発光素子からの発光の出力を制御することにより、照明装置10全体としての発光における黒体放射軌跡との偏差の程度を低減することができる。
…(略)…
【0034】
図2は、図1に示す照明装置の変形例を概略的に示す構成図である。なお、図1に示す照明装置と同一あるいは類似の構成要素に関しては同じ参照数字を用いて表している。図1に示す照明装置10においては、白色発光素子11、赤色発光素子12および緑色発光素子13がそれぞれ独立に配列されていたが、図2に示す本実施形態では、照明装置20を画定する1つのケース内に、青色LEDチップ111、赤色LEDチップ121および緑色LEDチップ131がそれぞれ配置され、白色発光素子11、赤色発光素子12および緑色発光素子13が互いに隔別されることなく形成されている。
【0035】
本実施形態では、中央に青色LEDチップ111を配置し、その左側に赤色LEDチップ121を配置し、その右側に緑色LEDチップ131を配置している。なお、この配列は、上述したように適宜入れ替えることができ、赤色LEDチップ121を青色LEDチップ111の右側に配置し、緑色LEDチップ131を青色LEDチップ111の左側に配置するようにすることもできる。また、青色LEDチップ111の左右どちらか一方の側に赤色LEDチップ121と緑色LEDチップ131をいずれも配置するように構成することもできる。なお、これら各色のLEDチップ111,121,131はそれぞれ基板14上に配置されている。
【0036】
また、本実施形態の照明装置20においては、青色LEDチップ111、赤色LEDチップ121および緑色LEDチップ131を被覆するようにして、蛍光体含有樹脂層112が形成されている。上述したように、蛍光体含有樹脂層112は、透明樹脂113中に黄色系蛍光体114を含有させることによって形成される。青色系LEDチップ111から発光された青色光は、黄色系蛍光体114を励起して黄色光を発光させ、これら青色光と黄色光との混色により白色光が生成される。なお、黄色系蛍光体114は厳密な黄色光を発する蛍光体を意味するものではなく、黄色光から橙色光までの広範囲の光を含む蛍光体を意味するものである。このような蛍光体としては、RE_(3)(Al,Ga)_(5)O_(12):Ce蛍光体などのYAG蛍光体、AE_(2)SiO_(4):Eu蛍光体などのケイ酸塩蛍光体、酸化物蛍光体(サイアロン系蛍光体など)、窒化物蛍光体(CaAlSiN_(3):Euなど)などを例示することができる。
【0037】
透明樹脂113としては、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂などを用いることができ、適宜所定の温度まで加熱し硬化させて使用される。なお、黄色系蛍光体114の粒径は、例えば平均粒径が10?20μmとなるように調整することが好ましい。そのような粒径の調整によって、黄色系蛍光体114の発光効率さらには白色発光素子11の発光効率が増大する。但し、黄色系蛍光体114の全てがこの範囲にある必要はなく、全体の約70%以上が上記範囲であれば良い。また、黄色系蛍光体114の配合割合は、例えば、透明樹脂113に対して黄色系蛍光体114の配合割合を5?20重量%とすることができる。なお、図2においては、特に図示していないが、基板14上には青色LEDチップ111、赤色LEDチップ121および緑色LEDチップ131を電気的に制御するための回路配線が形成されている。この回路配線は、基板14が絶縁性を呈する場合においては、基板14上に直接形成することができるが、基板14が電気導電性を呈する場合は、所定の絶縁層を介して形成する。
【0038】
図2に示す照明装置20においては、青色LEDチップ111に流す電流を制御することによって、所定の色温度の白色光を発光するとともに、赤色LEDチップ121および緑色LEDチップ131に対して流す電流を調整して、赤色発光素子12および緑色発光素子13からの発光の出力を制御することにより、照明装置20全体としての発光における黒体放射軌跡との偏差の程度を低減することができる。具体的には、色温度で規定される色合いの青色光を青色LEDチップ111により生成し、赤色LEDチップ121および緑色LEDチップ131で赤色および緑色の色変化を生ぜしめることにより、色温度を調整することができ、照明装置20全体で見た場合の黒体放射軌跡との偏差を低減することができる。
【0039】
なお、上記実施形態においては、赤色発光素子12および緑色発光素子13はいずれもLEDチップ自体が赤色光および緑色光を発光するように構成しているが、白色発光素子11と同様に、青色LEDチップを用い、これを赤色系蛍光体および黄色系蛍光体で被覆することにより、赤色発光素子12および緑色発光素子13を構成しても良い。すなわち、青色LEDチップからの青色光と、この青色光の励起により赤色系蛍光体および黄色系蛍光体から発光される赤色光および黄色光との混色により、赤色光および緑色光がそれぞれ発光されるように構成しても良い。」

(b)周知例8:特開2005-167138号公報
・「【0007】
本発明は、上記の問題点を解消し、十分な発光強度の赤色成分を有し、高輝度、且つ、優れた演色性を有し、照明や液晶表示装置のバックライト、インジケータ、電飾などの光源に適した効率の良い白色発光素子を提供することを目的としている。」
・「【実施例5】
【0039】
図7に本実施例5の白色発光素子の断面図(ボンディング線は図示省略)を示す。
【0040】
本実施例5の白色発光素子は、図に示すように、2つの青色発光ダイオード1a、1bをステム6上に並べて配置し、一方の青色発光ダイオード1aを、赤色発光螢光体21を分散した樹脂44で封止し、他方の青色発光ダイオード1bを、黄色発光螢光体YAG:Ce2aを分散した樹脂43で封止し、全体を第三の樹脂45で封止して、一方の青色発光ダイオード1aの発光により赤色発光螢光体を励起・発光させ、他方の青色発光ダイオード1bの発光により黄色発光螢光体YAG:Ceを励起・発光させている。第三の樹脂45は、光散乱体9を分散・封入、或いは、表面を粗面にする等の光散乱構造にして、発光色が独立で視認されないようになっている。赤色発光螢光体21は、実施例1または実施例2で使用したリチウムホウ酸塩系螢光体を用いた。
【0041】
本実施例5は、各青色発光ダイオードの駆動電流を個別に制御することで赤色、黄色、青色の輝度を独立に制御できるので、外部の駆動回路で演色性を制御できる利点がある。」

(c)周知例9:特開2006-196777号公報
・「【請求項1】
第1の発光ダイオードと有機赤色発光蛍光体を含む少なくとも一つの第1の発光素子と、第2の発光ダイオードと有機赤色発光蛍光体以外の蛍光体を含む複数の第2の発光素子とを配列してなり、前記第1の発光ダイオードの個数は、前記第2の発光ダイオードの個数より少なく、前記第1及び第2の発光ダイオードが紫外線から青色可視光にかけての波長領域に属する波長の光を発光する同一種類の発光ダイオードであることを特徴とする照明装置。
…(略)…
【請求項3】
前記有機赤色発光蛍光体以外の蛍光体は、前記発光ダイオードが青色可視光を発光する場合には、黄色発光蛍光体と緑色発光蛍光体の少なくともいずれかの蛍光体を含み、前記発光ダイオードが青色可視光以外の光を発光する場合には、黄色発光蛍光体と緑色発光蛍光体の少なくともいずれかの蛍光体、若しくは青色発光蛍光体、又はその両方の蛍光体を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。」
・「【0012】
そこで、本発明では、赤色発光蛍光体を含む発光素子のみを分離し、この発光素子により、耐久性を低下させることなく、従来の3倍以上の光度を実現することが可能となった。
【0013】
なお、本発明に用いる発光ダイオードは、紫外線から青色可視光にかけての波長領域に属する波長の光を発光するものである。上記波長領域に属する波長の光には、紫外線、近紫外線、可視光(紫色、青紫、青色等)が含まれ、波長領域は典型的には、380nm程度以上483nm程度以下である。特に、ユーロピウム等の希土類元素に有機基が配位した希土類錯体を蛍光体として用いる場合は、395nm程度以上420nm程度以下、或いは455nm程度以上480nm程度以下の波長の光を用いることが好ましい。
…(略)…
【0015】
本発明の第1の態様に係る照明装置は、発光ダイオードのすべてが紫外線から青色可視光にかけての波長領域に属する波長の光を発光する同一種類の発光ダイオードであるので、発光ダイオードのすべてが共通の電源装置で駆動可能となり、駆動回路が単純化され、フラッシュ部の小型軽量化を実現することが出来、携帯機器への搭載を容易にすることが出来る。
【0016】
本発明の第1の態様に係る照明装置において、有機赤色発光蛍光体以外の蛍光体は、発光ダイオードが青色可視光を発光する場合には、黄色発光蛍光体と緑色発光蛍光体の少なくともいずれかの蛍光体を含み、発光ダイオードが青色可視光以外の光を発光する場合には、黄色発光蛍光体と緑色発光蛍光体の少なくともいずれかの蛍光体、若しくは青色発光蛍光体、又はその両方の蛍光体を含むものとすることが出来る。」

c 以上のとおりであるから、引用発明において、周知例7?9に記載の周知技術3及び引用例1に記載の技術事項に基づき、相違点2S、2Uに係る補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(エ)判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、引用発明において、引用例1に記載の技術、上記周知の構成、及び上記周知技術1?3に基づいて、相違点1、2に係る補正発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
そして、補正発明によって当業者が予期し得ない格別の効果が奏されるとは認められず、相違点1、2を総合判断しても、補正発明は当業者が容易に発明をすることができたものというほかない。
よって、補正発明は、当業者が、引用発明、引用例1に記載の技術、上記周知の構成、及び上記周知技術1?3に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

オ 独立特許要件についてのまとめ
よって、本件補正は、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。

3 補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成27年12月24日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載されている事項により特定されるものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定されるとおりのものである。

2 引用例の記載と引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された特開2009-135485号公報(引用例1、再掲)には、「半導体発光装置及びその製造方法」(発明の名称)に関して、図1?7とともに上記「第2 2(3)イ(ア)引用例1」に記載した事項が記載されており、引用例1には上記「第2 2(3)イ(イ)引用発明」に記載したとおりの引用発明が記載されている。

3 対比・判断
補正発明は、上記「第2 2 本件補正についての検討」で検討したように、補正事項1、2により構成を追加して限定するとともに、補正事項3により明りょうでない記載を釈明したものである。
そうすると、上記「第2 2 本件補正についての検討」において検討したとおり、補正発明は、当業者が、引用発明、引用例1に記載の技術、上記周知の構成、及び周知技術1?3に基づいて、容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が、引用発明、引用例1に記載の技術、上記周知の構成、及び上記周知技術1?3に基づいて、容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-15 
結審通知日 2017-09-19 
審決日 2017-10-03 
出願番号 特願2014-244488(P2014-244488)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高椋 健司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 恩田 春香
星野 浩一
発明の名称 発光装置  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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