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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1334812
審判番号 不服2016-15547  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-18 
確定日 2017-11-22 
事件の表示 特願2014-114785「電力電子機器用キャビネット」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 2日出願公開、特開2015- 23279〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成26年6月3日(パリ条約に基づく優先権主張 平成25年7月16日 韓国(KR))の出願であって、平成27年2月24日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年5月19日付けで手続補正がなされ、同年10月1日付け最後の拒絶理由通知に対する応答時、平成28年1月5日付けで手続補正がなされたが、当該手続補正について、同年6月14日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月18日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.平成28年10月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年10月18日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成28年10月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
モジュール収容部を備える外箱と、
前記外箱の一側壁に区画されて形成されるダクトと、
前記ダクトの下部に形成される吸入口と、
前記ダクトの上部に備えられる循環ファンと、
前記モジュール収容部に収容される電力電子モジュールの一側に結合される放熱板と、
前記モジュール収容部と前記ダクトとの間の隔壁に形成された取付口を貫通して設けられる振動細管型ヒートパイプと、を含み、
前記振動細管型ヒートパイプは、前記放熱板に結合される吸熱部と、前記吸熱部から垂直に折曲形成されて前記ダクト内に置かれて前記循環ファンの高さに配置される放熱部とからなることを特徴とする、電力電子機器用キャビネット。
【請求項2】
前記取付口と前記振動細管型ヒートパイプとの間の空間は、密封処理されることを特徴とする、請求項1に記載の電力電子機器用キャビネット。
【請求項3】
前記モジュール収容部は、前記ダクトによって外気から遮断されて外部の異物が流入しないことを特徴とする、請求項1に記載の電力電子機器用キャビネット。
【請求項4】
前記吸入口には、フィルタが備えられることを特徴とする、請求項1に記載の電力電子機器用キャビネット。
【請求項5】
前記ダクトは、別途製作され、前記外箱に結合するか又は前記外箱から分離できることを特徴とする、請求項1に記載の電力電子機器用キャビネット。」

とあったものが、

「【請求項1】
モジュール収容部を備える外箱と、
前記外箱に結合するか又は前記外箱から分離できるダクトと、
前記ダクトの下部に形成される吸入口と、
前記ダクトの上部に備えられる循環ファンと、
前記モジュール収容部に収容される電力電子モジュールの一側に結合される放熱板と、
前記モジュール収容部と前記ダクトとの間の隔壁に形成された取付口を貫通して設けられる振動細管型ヒートパイプと、を含み、
前記振動細管型ヒートパイプは、前記放熱板に結合される吸熱部と、前記吸熱部から垂直に折曲形成されて前記ダクト内に置かれて前記循環ファンの高さに配置される放熱部とを含み、
前記振動細管型ヒートパイプの吸熱部は、前記放熱板の内部に挿入される方式で係合され、
前記取付口と前記振動細管型ヒートパイプとの間の空間は、密封処理され、
前記吸入口には、フィルタが備えられることを特徴とする、電力電子機器用キャビネット。
【請求項2】
前記モジュール収容部は、前記ダクトによって外気から遮断されて外部の異物が流入しないことを特徴とする、請求項1に記載の電力電子機器用キャビネット。」
と補正された。

上記補正は、
ア.本件補正前の請求項2,4,5を削除するとともに、
イ.請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ダクト」について、「前記外箱に結合するか又は前記外箱から分離できる」ものであることの限定を付加し、
ウ.同じく請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、振動細管型ヒートパイプの「吸熱部」について、「前記放熱板の内部に挿入される方式で係合され」るものであることの限定を付加し、
エ.同じく請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、 隔壁に形成された「取付口」について、振動細管型ヒートパイプとの間の空間は「密封処理され」ていることの限定を付加し、
オ.同じく請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「吸入口」について、「フィルタが備えられる」ことの限定を付加するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除、及び第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-69269号公報(以下、「引用例1」という。)には、「密閉型冷却装置」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】 電子部品或いは電気機器を収納した密閉型筐体内にヒートパイプの受熱部が配され、前記ヒートパイプの放熱部が前記密閉筐体外に配された密閉型冷却装置であって、前記ヒートパイプの放熱部は前記密閉筐体側壁に沿って配され、放熱部側が受熱部側より上に位置することを特徴とする密閉型冷却装置。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項3】前記受熱部または/および放熱部にフィンが取り付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の密閉型冷却装置。
【請求項4】前記受熱部または/および放熱部の近傍にファンが配されていることを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の密閉型冷却装置。」

イ.「【0008】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を図を参照して具体的に説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。図1は本発明の密閉型冷却装置の第1の実施形態を示す縦断面説明図である。高温に発熱する電子部品或いは電気機器を収納した密閉筐体1内にヒートパイプ2の受熱部3が配され、ヒートパイプ2の放熱部4は密閉筐体1外側のケーシング5内に配されている。
【0009】ヒートパイプ2の放熱部4は、密閉筐体側壁(鉛直)に沿って、受熱部3より上に配され、ヒートパイプ2は受熱部3と放熱部4の間で角度θで曲げられている。この角度θが90度以上であれば、放熱部4側は受熱部3側より全長に渡り上に位置し、ヒートパイプ2中の熱媒体は適正に作動し、ヒートパイプ2は良好に機能する。
【0010】受熱部3および放熱部4には板状フィン6が、その面がヒートパイプ2の長さ方向に対して直角になるように取り付けられ、受熱部3および放熱部4の近傍にはそれぞれファン7、8が配されており、このファンにより送風することにより受熱効率或いは放熱効率が向上する。」

ウ.「【0013】本発明において、受熱部3または放熱部4に取り付けるフィンには、前記板状フィン6の他、図3(イ)に示す放射状フィン11、図3(ロ)に示す両端傾斜フィン12、図3(ハ)に示すコルゲートフィン13、図3(ニ)に示すヒートパイプ挿通孔15付きフィン14など任意の形状のフィンが適用できる。」

・上記引用例1に記載の「密閉型冷却装置」は、上記「ア.」の【請求項1】、「イ.」の段落【0008】の記載事項、及び図1によれば、高温に発熱する電子部品或いは電気機器を収納した密閉筐体1内にヒートパイプ2の受熱部3が配され、ヒートパイプ2の放熱部4が密閉筐体1外のケーシング5内に配された密閉型冷却装置に関するものである。
・上記「ア.」の【請求項1】、「イ.」の段落【0009】の記載事項、及び図1によれば、ヒートパイプ2は、受熱部3と放熱部4の間で略90度で曲げられ、放熱部4が鉛直な密閉筐体側壁に沿って配され、放熱部4側が受熱部3側より上に位置している。
・上記「ア.」の【請求項3】、「ウ.」の記載事項、及び図1、図3(ニ)によれば、ヒートパイプ2の受熱部3には、フィンが取り付けられてなるものである。
・上記「ア.」の【請求項4】、「イ.」の段落【0010】、及び図1によれば、ケーシング5の上部側であって、ヒートパイプ2の放熱部4の近傍にはファン8が配され、また、図1によれば、ケーシング5の下部側には吸気口が形成されている。
・図1によれば、ケーシング5は、密閉筐体1に結合されている。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「高温に発熱する電子部品或いは電気機器を収納した密閉筐体と、
前記密閉筐体に結合されているケーシングであって、その上部側にはファンが配され、その下部側には吸気口が形成されたケーシングと、
前記密閉筐体内に受熱部が配され、前記密閉筐体外の前記ケーシング内に放熱部が配されたヒートパイプと、を備え、
前記ヒートパイプは、前記受熱部と前記放熱部の間で略90度で曲げられ、前記放熱部が鉛直な前記密閉筐体の側壁に沿って配され、放熱部側が受熱部側より上に位置してなり、前記ファンは当該放熱部の近傍であり、
前記ヒートパイプの前記受熱部にはフィンが取り付けられてなる、密閉型冷却装置。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「高温に発熱する電子部品或いは電気機器を収納した密閉筐体と」によれば、
引用発明における「密閉筐体」は、本願補正発明でいう「外箱」に相当し、
また、引用発明における「高温に発熱する電子部品或いは電気機器」は、電子部品についても当然、回路基板に実装されて設けられているはずであることから、当該「高温に発熱する電子部品或いは電気機器」と本願補正発明でいう「電力電子モジュール」とは、「電子機器」である点で共通するということができ、
さらに、引用発明の「密閉筐体」にあっても、高温に発熱する電子部品或いは電気機器を収納する収納部を備えることは自明なことであるから、
本願補正発明と引用発明とは、「電子機器収容部を備える外箱と」を含み、「前記電子機器収容部に収容される電子機器と」を含むものである点で共通するといえる。
ただし、収納部に収納される電子機器について、本願補正発明では、「電力電子モジュール」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点で相違し、
さらに、本願補正発明では、電子機器(電力電子モジュール)の一側に結合される「放熱板」を含む旨特定するのに対し、引用発明では、そのような放熱板を含むことの特定を有していない点で相違している。

イ.引用発明における「前記密閉筐体に結合されているケーシングであって、その上部側にはファンが配され、その下部側には吸気口が形成されたケーシングと」によれば、
引用発明における「ケーシング」は、本願補正発明でいう「ダクト」に相当し、
さらに、引用発明における、ケーシングの上部側に配された「ファン」、ケーシングの下部側に形成された「吸気口」が、それぞれ本願補正発明でいう「循環ファン」、「吸入口」に相当するといえ、
本願補正発明と引用発明とは、「前記外箱に結合するダクトと、前記ダクトの下部に形成される吸入口と、前記ダクトの上部に備えられる循環ファンと」を含むものである点で一致する。

ウ.引用発明における「前記密閉筐体内に受熱部が配され、前記密閉筐体外の前記ケーシング内に放熱部が配されたヒートパイプと」によれば、
引用発明における「ヒートパイプ」と本願補正発明の「振動細管型ヒートパイプ」とは、「ヒートパイプ」である点で共通し、
引用発明における「ヒートパイプ」にあっても、受熱部が密閉筐体内に配され、放熱部が密閉筐体外のケーシング内に配されていることから、密閉筐体とケーシングとの間の隔壁を貫通して設けられていることは明らかであり、当然、当該隔壁にはヒートパイプを貫通して設けるための取付口が形成されているといえ、
本願補正発明と引用発明とは、「前記電子機器収容部と前記ダクトとの間の隔壁に形成された取付口を貫通して設けられるヒートパイプと」を含むものである点で共通する。
ただし、ヒートパイプについて、本願補正発明では、「振動細管型」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違している。

エ.引用発明における「前記ヒートパイプは、前記受熱部と前記放熱部の間で略90度で曲げられ、前記放熱部が鉛直な前記密閉筐体の側壁に沿って配され、前記放熱部側が前記受熱部側より上に位置してなり、前記ファンは当該放熱部の近傍であり」によれば、
引用発明における、ヒートパイプの「受熱部」、「放熱部」が、それぞれ本願補正発明でいう、振動細管型ヒートパイプの「吸熱部」、「放熱部」に相当し、
引用発明における「ヒートパイプ」にあっても、受熱部と放熱部の間で略90度で曲げられ、つまり垂直に折曲形成されており、さらに、放熱部がケーシング内においてファンの近傍に位置している、すなわち放熱部がファンの高さに配置されているといえることから、
本願補正発明と引用発明とは、「前記ヒートパイプは、前記電子機器に熱的に結合される吸熱部と、前記吸熱部から垂直に折曲形成されて前記ダクト内に置かれて前記循環ファンの高さに配置される放熱部と」を含むものである点で共通するということができる。
ただし、電子機器に熱的に結合される吸熱部について、本願補正発明では、「前記放熱板」に結合される、つまり「放熱板」を介して電子機器の一側と(熱的に)結合される旨特定するのに対し、引用発明では、そのような放熱板を介することの特定を有していない点で相違している。

オ.そして、引用発明における「密閉型冷却装置」は、高温に発熱する電子部品或いは電気機器を収納してなる密閉筐体を備えるものであることから、当該「密閉型冷却装置」と本願補正発明でいう「電力電子機器用キャビネット」とは、「電子機器用キャビネット」といえるものである点で共通する。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「電子機器収容部を備える外箱と、
前記外箱に結合するダクトと、
前記ダクトの下部に形成される吸入口と、
前記ダクトの上部に備えられる循環ファンと、
前記電子機器収容部に収容される電子機器と、
前記電子機器収容部と前記ダクトとの間の隔壁に形成された取付口を貫通して設けられるヒートパイプと、を含み、
前記ヒートパイプは、前記電子機器に熱的に結合される吸熱部と、前記吸熱部から垂直に折曲形成されて前記ダクト内に置かれて前記循環ファンの高さに配置される放熱部とを含むことを特徴とする、電子機器用キャビネット。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
電子機器収納部に収納される電子機器について、本願補正発明では、「電力電子モジュール」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点。

[相違点2]
本願補正発明では、電子機器(電力電子モジュール)の一側に結合される「放熱板」を含み、ヒートパイプの吸熱部は、当該「放熱板」に結合される、つまりヒートパイプの吸熱部は「放熱板」を介して電子機器の一側と結合するものである旨特定するのに対し、引用発明では、そのような放熱板を含む(介する)ことの特定を有していない点。

[相違点3]
ヒートパイプについて、本願補正発明では、「振動細管型」である旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

[相違点4]
上記相違点2にも関連して、本願補正発明では、振動細管型ヒートパイプの吸熱部は、「前記放熱板の内部に挿入される方式で係合され」る旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

[相違点5]
本願補正発明では、「前記取付口と前記振動細管型ヒートパイプとの間の空間は、密封処理され」ている旨特定するのに対し、引用発明では、そのような明確な特定を有していない点。

[相違点6]
本願補正発明では、吸入口には、「フィルタが備えられる」旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
[相違点1]について
引用発明にあっても、密閉筐体の電子機器収納部に収納される電子機器(電子部品或いは電気機器)は、「高温に発熱する」ものであるところ、そのような密閉筐体に収納されるとともに高温に発熱する電子機器として、例えば原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-57481号公報(以下、「引用例2」という。特に段落【0002】?【0003】を参照)に記載のように、パワートランジスタ等の発熱量の多い電子部品をユニット化したプリント配線基板に実装してなる基板ユニット(本願補正発明でいう「電力電子モジュール」に相当)は周知のものであり、引用発明においても、収納される電子機器を、このような基板ユニット、つまり本願補正発明でいう「電力電子モジュール」とすることは当業者であれば適宜なし得ることである。

[相違点2]及び[相違点4]について
例えば引用例2(【請求項1】、段落【0018】?【0020】、図4等を参照)や引用例1(特に段落【0013】、図3(二)を参照。「ヒートパイプ挿通孔15付きフィン14」において、ヒートパイプ挿通孔15が設けられた板状部が、本願補正発明でいう「放熱板」に相当するとみることができる。)、さらには特開平8-316386号公報(【請求項1】、段落【0015】?【0017】、図1、図2を参照)に見られるように、ヒートパイプの吸熱部と電子部品・電子機器の一側との熱的な結合を「放熱板」を介して行うことは周知の技術事項であり、さらに、引用例1や上記特開平8-316386号公報に記載のように、ヒートパイプの吸熱部と放熱板との係合(結合)を、ヒートパイプの吸熱部を放熱板の内部(孔)に挿入することにより行うことも周知といえる技術事項であり、引用発明においても、これら周知の技術事項を採用して[相違点2]及び[相違点4]に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。

[相違点3]について
例えば原査定の拒絶の理由に引用された特表2010-516996号公報(段落【0037】?【0040】を参照)や特表2012-529619号公報(段落【0049】?【0051】を参照)に記載のように、「振動細管型」ヒートパイプは周知のものであり、引用発明においても、ヒートパイプとして、「振動細管型」のものを用いることは当業者が容易になし得ることである。

[相違点5]について
引用発明において、電子機器(電子部品或いは電気機器)を収納する筐体は「密閉」筐体であり、筐体内が密閉された状態を保つために、ヒートパイプが貫通する取付口とヒートパイプとの間の空間も密封処理することは当業者であれば当然になし得る技術事項にすぎない。

[相違点6]について
例えば引用例2(段落【0006】を参照)に記載のように、電子機器の筐体の吸入口(吸気口)にフィルタを設けることは周知といえる技術事項であり、引用発明においても、吸気口にフィルタを設けることは当業者であれば適宜なし得ることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

<<上申書において提示の補正案について>>
請求人は平成29年5月29日付け上申書において、特許請求の範囲についての補正案を提示しているが、引用発明にあっても、ケーシングをその強度等を考慮して箱状に形成し、これを密閉筐体に結合することによって両者の間の隔壁が2重の壁からなるようにすることは当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎず〔なお、請求人は、2重の壁が形成される結果、モジュール収容部への外気の効果を減少できるなどと主張しているが、外箱(筐体)は金属材など空気を透過しない材質で構成されるのが通常であるから、壁を2重にしたからといってモジュール収容部への外気の効果が格別減少するというものでもないはずである。〕、依然として進歩性を有していないものであり、また、改めて補正の機会を与えるべき法的根拠も見出せない。

3.本願発明について

平成28年10月18日付けの手続補正は上記のとおり却下され、さらに、平成28年1月5日付けの手続補正についても同年6月14日付けで補正の却下の決定がなされているので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年5月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
モジュール収容部を備える外箱と、
前記外箱の一側壁に区画されて形成されるダクトと、
前記ダクトの下部に形成される吸入口と、
前記ダクトの上部に備えられる循環ファンと、
前記モジュール収容部に収容される電力電子モジュールの一側に結合される放熱板と、
前記モジュール収容部と前記ダクトとの間の隔壁に形成された取付口を貫通して設けられる振動細管型ヒートパイプと、を含み、
前記振動細管型ヒートパイプは、前記放熱板に結合される吸熱部と、前記吸熱部から垂直に折曲形成されて前記ダクト内に置かれて前記循環ファンの高さに配置される放熱部とからなることを特徴とする、電力電子機器用キャビネット。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明における、(a)発明特定事項である「ダクト」について、「前記外箱に結合するか又は前記外箱から分離できる」ものであることの限定を省き、(b)同じく発明特定事項である、振動細管型ヒートパイプの「吸熱部」について、「前記放熱板の内部に挿入される方式で係合され」るものであることの限定を省き、(c)同じく発明特定事項である、 隔壁に形成された「取付口」について、振動細管型ヒートパイプとの間の空間は「密封処理され」ていることの限定を省き、(d)同じく発明特定事項である「吸入口」について、「フィルタが備えられる」ことの限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-26 
結審通知日 2017-06-27 
審決日 2017-07-11 
出願番号 特願2014-114785(P2014-114785)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 昭浩井上 信小金井 匠  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 井上 信一
酒井 朋広
発明の名称 電力電子機器用キャビネット  
代理人 青木 篤  
代理人 中村 健一  
代理人 鶴田 準一  
代理人 南山 知広  
代理人 河合 章  

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