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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G09G
管理番号 1334818
審判番号 不服2017-2630  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-23 
確定日 2017-12-12 
事件の表示 特願2015-530717「液晶表示装置およびその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月12日国際公開、WO2015/019636、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成26年2月18日(優先権主張平成25年8月8日を伴う国際出願)
拒絶査定: 平成28年12月21日(送達日:同年同月27日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年2月23日
手続補正: 平成29年2月23日


第2 原査定の概要
原査定(平成28年12月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

2.(新規性)この出願の請求項1-2,4-5,10に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3.(進歩性)この出願の請求項1-2,4-5,10に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明、及び下記の引用文献6,7に記載された周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、この出願の請求項8-9に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明、及び下記の引用文献4,5に記載された周知技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(なお、平成29年2月23日付けの手続補正により、請求項10は削除された。)

引用文献等一覧
1.国際公開第2011/104979号
2.国際公開第2010/084619号
3.特開2007-279660号公報
4.国際公開第2013/054745号(周知技術を示す文献)
5.国際公開第2013/006668号(周知技術を示す文献)
6.特開2010-261985号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)
7.国際公開第2008/096481号(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)


第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成29年2月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
1フレーム期間を複数のフィールドに分割してフィールド毎に異なる色を表示することによってカラー表示を行うフィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置であって、
画像を表示する液晶パネルと、
前記液晶パネルに光を照射するバックライトと、
入力画像データをフィールド毎の入力階調データに分離する入力画像データ分離部と、
各フィールドの終了時点についての予想到達階調に相当するデータである液晶状態データを求めつつ、前記液晶パネルに印加する電圧に相当するデータである印加階調データを前記入力階調データを補正することによって求めるデータ補正部と、
前記印加階調データに基づいて前記液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動部と、
フィールド毎に異なる色の光が前記液晶パネルに照射されるよう前記バックライトを駆動するバックライト駆動部と
を備え、
前記データ補正部は、
現フィールドについての前記入力階調データと現フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データとに基づいて現フィールドについての前記液晶状態データを求める、1フレーム期間を構成する前記複数のフィールドと1対1で対応するように設けられた液晶状態データ取得部と、
現フィールドについての前記入力階調データを現フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データに基づいて補正することによって現フィールドについての前記印加階調データを求める、1フレーム期間を構成する前記複数のフィールドと1対1で対応するように設けられた印加階調データ取得部と
を含み、
前記印加階調データ取得部は、各フィールドにおける表示輝度が前記入力画像データ分離部によって得られた前記入力階調データに相当する表示輝度となるよう、前記印加階調データを求め、
前記液晶状態データ取得部および前記印加階調データ取得部が1フレーム期間を構成する前記複数のフィールドと1対1で対応するように設けられていることにより、任意の表示フィールドについての前記印加階調データは、表示フィールドの1つ前のフィールドについての前記入力階調データと表示フィールドの2つ前のフィールドについての前記液晶状態データとに基づいて表示フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データを求め、その求めた液晶状態データに基づいて表示フィールドについての前記入力階調データを補正することによって求められることを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項2】
前記データ補正部は、1フィールド分のデータの保持が可能なフィールドメモリを更に含み、
1フレーム期間は、P(Pは3以上の整数)個のフィールドに分割され、
前記フィールドメモリには、P番目のフィールドについての前記液晶状態データが保持され、
1番目のフィールドについての前記液晶状態データ取得部は、現フレームの1番目のフィールドについての前記入力階調データと、前記フィールドメモリに保持されている前フレームのP番目のフィールドについての前記液晶状態データとに基づいて、現フレームの1番目のフィールドについての前記液晶状態データを求め、
1番目のフィールドについての前記印加階調データ取得部は、現フレームの1番目のフィールドについての前記入力階調データを前記フィールドメモリに保持されている前フレームのP番目のフィールドについての前記液晶状態データに基づいて補正することによって、現フレームの1番目のフィールドについての前記印加階調データを求め、
Q(Qは2以上P以下の整数)番目のフィールドについての前記液晶状態データ取得部は、現フレームのQ番目のフィールドについての前記入力階調データと、現フレームの(Q-1)番目のフィールドについての前記液晶状態データとに基づいて、現フレームのQ番目のフィールドについての前記液晶状態データを求め、
Q番目のフィールドについての前記印加階調データ取得部は、現フレームのQ番目のフィールドについての前記入力階調データを現フレームの(Q-1)番目のフィールドについての前記液晶状態データに基づいて補正することによって、現フレームのQ番目のフィールドについての前記印加階調データを求めることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記液晶パネル上の領域を複数のエリアに分割して各エリアに含まれる画素についての前記入力階調データに基づいて各エリアに対応する前記バックライトの発光輝度を求めるとともに、前記入力画像データ分離部によって得られた前記入力階調データを前記発光輝度に基づいて変換するデータ変換部を更に備え、
前記データ補正部には、前記入力階調データとして前記データ変換部による変換後の入力階調データが与えられ、
前記バックライト駆動部は、前記データ変換部によって求められた発光輝度に基づいて各エリアに対応するバックライトが発光するよう、前記バックライトを駆動することを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶状態データ取得部は、
現フィールドについての前記入力階調データに対応付けられる値,現フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データに対応付けられる値,および現フィールドについての前記入力階調データに対応付けられる値と現フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データに対応付けられる値との組合せに対応する値を格納する液晶状態データ取得用ルックアップテーブルを有し、
前記液晶状態データ取得用ルックアップテーブルに基づいて、現フィールドについての前記液晶状態データを求め、
前記印加階調データ取得部は、
現フィールドについての前記入力階調データに対応付けられる値,現フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データに対応付けられる値,および現フィールドについての前記入力階調データに対応付けられる値と現フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データに対応付けられる値との組合せに対応する値を格納する印加階調データ取得用ルックアップテーブルを有し、
前記印加階調データ取得用ルックアップテーブルに基づいて、現フィールドについての前記印加階調データを求めることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
1フレーム期間は、赤色の画面を表示する赤色フィールド,緑色の画面を表示する緑色フィールド,および青色の画面を表示する青色フィールドからなる3つのフィールドに分割されていることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
1フレーム期間は、白色の画面を表示する白色フィールド,赤色の画面を表示する赤色フィールド,緑色の画面を表示する緑色フィールド,および青色の画面を表示する青色フィールドからなる4つのフィールドに分割されていることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
1フレーム期間は、混色の画面の表示が可能な3つ以上のフィールドに分割され、
前記3つ以上のフィールドでは、互いに異なる色の画面が表示されることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記液晶パネルは、
マトリクス状に配置された画素電極と、
前記画素電極と対向するように配置された共通電極と、
前記画素電極と前記共通電極とに挟持された液晶と、
走査信号線と、
前記印加階調データに応じた映像信号が印加される映像信号線と、
前記走査信号線に制御端子が接続され、前記映像信号線に第1導通端子が接続され、前記画素電極に第2導通端子が接続され、酸化物半導体によりチャネル層が形成された薄膜トランジスタと
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記酸化物半導体の主成分は、インジウム(In),ガリウム(Ga),亜鉛(Zn),および酸素(О)から成ることを特徴とする、請求項8に記載の液晶表示装置。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「[0004] 特許文献2には、カラー表示方式として、FSC(Field Sequential Color:フィールドシーケンシャルカラー)方式を採用した液晶表示装置が記載されている。」

「[0072] したがって、FSC方式の液晶表示装置でオーバードライブを適用する場合、ある色の映像信号を補正するために、他の色の映像信号を用いる必要がある。」

「[0091] [第1の実施の形態]
図4は、本発明の第1の実施の形態の液晶表示装置1を示したブロック図である。
[0092] 図4において、液晶表示装置1は、液晶表示素子2と、補正部3と、データ並べ替え部4と、照射部5と、を含む。データ並べ替え部4は、フレームメモリ(Frame Memory)4aと、メモリ制御部4bと、を含む。照射部5は、照明部5aと、タイミング制御部5bと、を含む。
[0093] 液晶表示装置1は、複数の色のそれぞれに1対1で対応する複数の映像信号(以下、単に「複数の映像信号」と称する)を受け付ける。
[0094] 液晶表示装置1は、複数の映像信号に対応する複数の色の画像を順番に表示することにより、カラー画像を表示するFSC方式の液晶表示装置である。
[0095] 各映像信号は、複数の画像データを有する。映像信号内の各画像データは、液晶表示素子2内の複数の画素のそれぞれに対応する。このため、本実施形態では、映像信号内の各画像データの配列の順番は、液晶表示素子2内の複数の画素への供給の順番に対応づけられる。
[0096] 液晶表示素子2は、複数の画素を有する。液晶表示素子2は、駆動信号を受け付けると、複数の画素を用いて、その駆動信号に応じて、自己に照射された光を変調し、画像を形成する光を出力する。
[0097] なお、液晶表示装置1がプロジェクタ(投写型表示装置)である場合、液晶表示素子2にて変調されて出力された光は、投写光学系(不図示)によって拡大され、スクリーン(不図示)に投写される。また、液晶表示装置1が直視型表示装置である場合、液晶表示素子2にて変調されて出力された光は、使用者の目に到達する。」

「[0103] ゲートドライバ2bは、出力フィールド同期タイミングに同期した垂直同期信号に応じてフィールドごとにおける垂直走査(走査線の選択)を開始し、水平同期信号に応じて、走査線2dを順番に1つずつ選択し、選択された走査線2dにゲート駆動信号を供給する。
・・・
[0106] ソースドライバ2cは、選択されたデータ線2eと選択された走査線2dとによって特定される画素2aに対応する画像データ(本実施形態では、その画像データを補正した補正画像データ)を、選択されたデータ線2eに供給する。
・・・
[0109] ゲートドライバ2bとソースドライバ2cは、タイミング制御部5bから供給される出力フィールドの同期タイミングを示すタイミング信号(垂直同期信号)、水平同期信号および転送クロック信号等に基づいて動作する。なお、この動作は、公知技術であるため、その詳細な説明は省略する。
[0110] 図4に戻って、補正部3は、一般的に補正手段と呼ぶことができる。
[0111] 補正部3は、入力フレームの同期タイミングを示すタイミング信号に同期した複数の色の映像信号を入力し、複数の色のそれぞれに1対1で対応する複数の補正信号を出力する。」

「[0126] 照射部5は、補正部3から出力された複数の補正信号のいずれかが、駆動信号として液晶表示素子2へ出力されるごとに、液晶表示素子2へ出力された補正信号の元になった映像信号に対応する色の光を、液晶表示素子2に照射する。ただし、照射部5は、光を照射するタイミング(期間と位相)を、液晶表示素子2に駆動信号が出力されてからの光透過率の応答の程度を考慮して調整する。
[0127] 照明部5aは、赤色の光を発するR色LEDと、緑色の光を発するG色LEDと、青色の光を発するB色LEDと、を含む。」

「[0133] 照明部5aは、タイミング制御部5bからのタイミング信号によって、出力フィールド同期タイミングに同期して、R色LEDと、G色LEDと、B色LEDとを、この順番で1つずつ点灯する。」

「[0141] 補正部3の働きは、FSC方式に起因する階調再現性および色再現性の低下を改善することと、画面内位置による階調再現性および色再現性の差異を低減すること、の2つである。」

上記記載より、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数の映像信号に対応する複数の色の画像を順番に表示することにより、カラー画像を表示するFSC方式の液晶表示装置であって、([0094]参照。)
駆動信号を受け付けると、複数の画素を用いて、その駆動信号に応じて、自己に照射された光を変調し、画像を形成する光を出力する液晶表示素子2と、([0096]参照。)
液晶表示素子2へ出力された補正信号の元になった映像信号に対応する色の光を、液晶表示素子2に照射する照射部5と、([0126]参照。)
入力フレームの同期タイミングを示すタイミング信号に同期した複数の色の映像信号を入力し、複数の色のそれぞれに1対1で対応する複数の補正信号を出力する補正部3と、([0111]参照。)
出力フィールド同期タイミングに同期した垂直同期信号に応じてフィールドごとにおける垂直走査(走査線の選択)を開始し、水平同期信号に応じて、走査線2dを順番に1つずつ選択し、選択された走査線2dにゲート駆動信号を供給するゲートドライバ2bと、([0103]参照。)選択されたデータ線2eと選択された走査線2dとによって特定される画素2aに対応する画像データを補正した補正画像データを、選択されたデータ線2eに供給するソースドライバ2cと、([0106]参照。)ゲートドライバ2bとソースドライバ2cに、出力フィールドの同期タイミングを示すタイミング信号(垂直同期信号)、水平同期信号および転送クロック信号等を供給するタイミング制御部5bと、([0109]参照。)
タイミング制御部5bからのタイミング信号によって、出力フィールド同期タイミングに同期して、R色LEDと、G色LEDと、B色LEDとを、この順番で1つずつ点灯する、照射部5に含まれる照明部5aと、([0092]、[0133]参照。)
を備え、
補正部3の働きは、FSC方式に起因する階調再現性および色再現性の低下を改善することと、画面内位置による階調再現性および色再現性の差異を低減すること、の2つである、([0141]参照。)液晶表示装置。」

2.引用文献6について
また、原査定において周知技術を示す文献として引用された上記引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関し、特に、ディスプレイの応答速度を改善するオーバードライブ処理を行う場合に用いて好適な画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関する。」

「【0158】
[オーバードライブ処理部183の構成例]
次に、図12は、第1及び第2の参照フレームを用いて、第1の参照フレームにおける予測値を生成し、生成した予測値を参照して、対象フレームの画素の画素値に対するオーバードライブ処理を行うオーバードライブ処理部183の構成例を示している。」

「【0163】
予測値生成部223は、ガンマ補正部221からの第1の参照フレーム、及びガンマ補正部222からの第2の参照フレームに基づいて、オーバードライブ処理が施された第1の参照フレームをLCD185に表示させた場合に、LCD185の液晶応答波形が到達する値を、予測値として生成する。」

「【0170】
なお、補正値生成部143は、ガンマ補正部141からの対象フレームを構成する画素の画素値と、その画素と同じ位置に存在する、加算部242からの予測フレームを構成する画素の画素値(予測値)との組合せに対応付けられている補正値を、内蔵するルックアップテーブル143aから読み出し、加算部144に供給する。」

3.引用文献7について
また、原査定において周知技術を示す文献として引用された上記引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0001] 本発明は、階調変換テーブルを参照することにより入力階調データを階調変換してオーバーシュート駆動を行う液晶駆動装置、液晶表示装置及び液晶駆動方法に関するものである。」

「[0080] なお、変換部としては、図7に示した変換部22bに代えて、図8に示した変換部22b’を用いることもできる。この変換部22b’は、現垂直表示期間の入力階調データを示す画像信号と、フレームメモリ22b1によって1垂直表示期間遅延させることにより得られた前垂直表示期間の入力階調データを示す画像信号とを、階調予測回路22b3に入力することにより、指定された階調変換テーブル21b”を参照して、前垂直表示期間における液晶の到達階調を予測し、その予測結果をフレームメモリ22b1によって1垂直表示期間遅延させて前垂直表示期間の入力階調データとしたものと、現垂直表示期間の入力階調データを示す画像信号とを、階調変換回路22b2に入力することにより、指定された階調変換テーブル21b’を参照して階調変換を行うものである。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「複数の映像信号に対応する複数の色の画像を順番に表示することにより、カラー画像を表示するFSC方式の液晶表示装置」は、本願発明1の「1フレーム期間を複数のフィールドに分割してフィールド毎に異なる色を表示することによってカラー表示を行うフィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置」に相当する。
また、引用発明の「駆動信号を受け付けると、複数の画素を用いて、その駆動信号に応じて、自己に照射された光を変調し、画像を形成する光を出力する液晶表示素子2」は、本願発明1の「画像を表示する液晶パネル」に相当し、引用発明の「液晶表示素子2へ出力された補正信号の元になった映像信号に対応する色の光を、液晶表示素子2に照射する照射部5」は、本願発明1の「前記液晶パネルに光を照射するバックライト」に相当する。
次に、引用発明の「入力フレームの同期タイミングを示すタイミング信号に同期した複数の色の映像信号を入力し、複数の色のそれぞれに1対1で対応する複数の補正信号を出力する補正部3」と、本願発明1の「入力画像データをフィールド毎の入力階調データに分離する入力画像データ分離部と、各フィールドの終了時点についての予想到達階調に相当するデータである液晶状態データを求めつつ、前記液晶パネルに印加する電圧に相当するデータである印加階調データを前記入力階調データを補正することによって求めるデータ補正部」とは、共に「前記液晶パネルに印加する電圧に相当するデータである印加階調データを入力データを補正することによって求めるデータ補正部」である点で共通するといえる。
さらに、引用発明の「出力フィールド同期タイミングに同期した垂直同期信号に応じてフィールドごとにおける垂直走査(走査線の選択)を開始し、水平同期信号に応じて、走査線2dを順番に1つずつ選択し、選択された走査線2dにゲート駆動信号を供給するゲートドライバ2bと、選択されたデータ線2eと選択された走査線2dとによって特定される画素2aに対応する画像データを補正した補正画像データを、選択されたデータ線2eに供給するソースドライバ2cと、ゲートドライバ2bとソースドライバ2cに、出力フィールドの同期タイミングを示すタイミング信号(垂直同期信号)、水平同期信号および転送クロック信号等を供給するタイミング制御部5bと、」が、本願発明1の「前記印加階調データに基づいて前記液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動部」に相当する。
また、引用発明においては「照明部5a」が「タイミング制御部5bからのタイミング信号によって、出力フィールド同期タイミングに同期して、R色LEDと、G色LEDと、B色LEDとを、この順番で1つずつ点灯する」のであるから、引用発明の「タイミング制御部5b」は、本願発明1の「フィールド毎に異なる色の光が前記液晶パネルに照射されるよう前記バックライトを駆動するバックライト駆動部」にも相当するといえる。
そして引用発明においては、「補正部3の働きは、FSC方式に起因する階調再現性および色再現性の低下を改善することと、画面内位置による階調再現性および色再現性の差異を低減すること、の2つである、」とされているのであるから、補正部3の出力する補正信号が、入力される複数の色の映像信号に相当する表示輝度となるように補正されるものであることは明らかであり、これは本願発明1において「前記データ補正部は」「各フィールドにおける表示輝度が前記入力画像データ分離部によって得られた前記入力階調データに相当する表示輝度となるよう、前記印加階調データを求め」ることに相当するといえる。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「1フレーム期間を複数のフィールドに分割してフィールド毎に異なる色を表示することによってカラー表示を行うフィールドシーケンシャル方式の液晶表示装置であって、
画像を表示する液晶パネルと、
前記液晶パネルに光を照射するバックライトと、
前記液晶パネルに印加する電圧に相当するデータである印加階調データを入力データを補正することによって求めるデータ補正部と、
前記印加階調データに基づいて前記液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動部と、
フィールド毎に異なる色の光が前記液晶パネルに照射されるよう前記バックライトを駆動するバックライト駆動部と
を備え、
前記データ補正部は、
各フィールドにおける表示輝度が入力データに相当する表示輝度となるよう、前記印加階調データを求めることを特徴とする、液晶表示装置。」

(相違点)
相違点1:本願発明1は、「入力画像データをフィールド毎の入力階調データに分離する入力画像データ分離部」を備え、その後の処理が「入力階調データ」に対して行われているのに対し、引用発明においては、そのような分離部を有することが必ずしも明らかとはいえない点。

相違点2:本願発明1は、「各フィールドの終了時点についての予想到達階調に相当するデータである液晶状態データを求めつつ、前記液晶パネルに印加する電圧に相当するデータである印加階調データを前記入力階調データを補正することによって求めるデータ補正部」を備えるのに対し、引用発明の「入力フレームの同期タイミングを示すタイミング信号に同期した複数の色の映像信号を入力し、複数の色のそれぞれに1対1で対応する複数の補正信号を出力する補正部3」は「各フィールドの終了時点についての予想到達階調に相当するデータである液晶状態データを求め」るものではない点。

相違点3:本願発明1においては「データ補正部」が、「現フィールドについての前記入力階調データと現フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データとに基づいて現フィールドについての前記液晶状態データを求める、1フレーム期間を構成する前記複数のフィールドと1対1で対応するように設けられた液晶状態データ取得部と、現フィールドについての前記入力階調データを現フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データに基づいて補正することによって現フィールドについての前記印加階調データを求める、1フレーム期間を構成する前記複数のフィールドと1対1で対応するように設けられた印加階調データ取得部とを含」むとされているのに対し、引用発明の「補正部3」は「現フィールドについての前記入力階調データと現フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データとに基づいて現フィールドについての前記液晶状態データを求め」るものではない点。

相違点4:本願発明1においては、「前記液晶状態データ取得部および前記印加階調データ取得部が1フレーム期間を構成する前記複数のフィールドと1対1で対応するように設けられていることにより、任意の表示フィールドについての前記印加階調データは、表示フィールドの1つ前のフィールドについての前記入力階調データと表示フィールドの2つ前のフィールドについての前記液晶状態データとに基づいて表示フィールドの1つ前のフィールドについての前記液晶状態データを求め、その求めた液晶状態データに基づいて表示フィールドについての前記入力階調データを補正することによって求められることを特徴とする」とされているのに対し、引用発明においては「液晶状態データを求め」るとはされていない点。


(2)相違点についての判断
本願発明1の内容に鑑み、上記相違点3について検討すると、相違点3に係る本願発明1の構成は、引用文献2には記載も示唆もされておらず、本願発明1が引用文献2に記載された発明であるとはいえない。
さらに、上記「第4」2.に示したように、引用文献6には、「第1及び第2の参照フレームを用いて、第1の参照フレームにおける予測値を生成」することが記載されているが、これは本願発明1において「現フィールドについて」の「入力階調データ」と「現フィールドの1つ前のフィールドについて」の「入力階調データ」とに基づいて「液晶状態データ」を求めることに相当する。また、上記「第4」3.に示したように、引用文献7には、「現垂直表示期間の入力階調データを示す画像信号」及び「前垂直表示期間の入力階調データを示す画像信号」によって「液晶の到達階調を予測」することが記載されているが、これに関しても同様といえる。
すなわち、引用文献6,7には、本願発明1の「現フィールドについて」の「入力階調データ」と「現フィールドの1つ前のフィールドについて」の「入力階調データ」とに基づいて「液晶状態データ」を求めることが記載されているだけであって、本願発明1のように、「現フィールドについて」の「入力階調データ」と「現フィールドの1つ前のフィールドについて」の「液晶状態データ」とに基づいて「液晶状態データ」を求めることは記載も示唆もされていない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は当業者であっても、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。
なお、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、原査定において示された他の引用文献(引用文献1,3-5)においても記載も示唆もされていない。

2.本願発明2-9について
本願発明2-9も、上記相違点3に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであり、また該構成は引用文献1,3-5においても記載も示唆もされていないものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献2に記載された発明であるとはいえない。また、当業者であっても、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
1.理由2(特許法第29条第1項)について
本願発明1-2,4-5は上記相違点3に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、引用文献2に記載された発明であるとはいえない。したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

2.理由3(特許法第29条第2項)について
本願発明1-2,4-5,8-9は上記相違点3に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、当業者であっても、引用文献2に記載された発明及び周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。引用文献2に記載された発明であるとはいえない。したがって、原査定の理由3を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-27 
出願番号 特願2015-530717(P2015-530717)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G09G)
P 1 8・ 121- WY (G09G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 直行  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中塚 直樹
須原 宏光
発明の名称 液晶表示装置およびその駆動方法  
代理人 島田 明宏  

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