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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B01D
管理番号 1334869
審判番号 不服2017-5830  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-24 
確定日 2017-12-12 
事件の表示 特願2012-146768「晶析方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月20日出願公開、特開2014- 8457、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願の出願より審判請求に至る経緯は以下のようである。

平成24年 6月29日 特許願
平成27年 8月20日 刊行物等提出書(以下、「提出書1」という。)
平成28年 7月29日 拒絶理由通知書
同年10月 6日 意見書及び手続補正書
同年12月20日 刊行物等提出書(以下、「提出書2」という。)
平成29年 2月17日 拒絶査定
平成29年 4月24日 手続補正書及び審判請求書

第2 本願発明について
本願の請求項1-3に係る発明は、平成29年4月24日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載される事項によって特定される以下のとおりのものである。
(各請求項に係る発明を請求項の順に「本願発明1」「本願発明2」「本願発明3」と記載し、それらを総称して「本願発明」と記載する。)

【請求項1】
原料を含む液(A)が供給され、かつ器壁の内面が冷却面とされた晶析槽と、晶析槽の器壁の外面側から器壁を冷却するジャケットとを有する晶析装置を用い、原料を含む液(A)を、ジャケットに供給された熱媒体(X)によって晶析装置の冷却面を介して間接的に冷却して、原料の結晶を含む懸濁液(B)とする連続式晶析操作の途中にて、熱媒体(X)を、熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えて晶析操作を中断し、
原料の結晶を含む懸濁液(B)を、晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5℃を超えて高くすることなく、熱媒体(Y)によって冷却面に付着したスケールのうち少なくとも冷却面との界面のスケールを融解することによって、冷却面に付着したスケールを除去する融解操作を行った後、
熱媒体(Y)を、熱媒体(Y)よりも低温の熱媒体(Z)に切り替えて晶析操作を再開する、晶析方法。
【請求項2】
晶析操作における総括伝熱係数の変化によって、冷却面へのスケールの付着を検知し、融解操作を開始する、請求項1に記載の晶析方法。
【請求項3】
冷却面を複数の領域に分割し、領域ごとに異なるタイミングにて融解操作を行う、請求項1または2に記載の晶析方法。

第3 原査定の理由について
原査定の理由の要旨は、請求項1及び2に係る発明(本願発明1及び2に対応)は、下記の引用例2に記載された発明及び引用例1に記載された技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とするものである。
なお、原査定には、付記として、請求項1及び2に係る発明(本願発明1及び2に対応)は、下記の引用例5に記載された発明及び引用例1に記載された技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることも記載されている。

拒絶査定、提出書1、及び提出書2で引用された証拠を下記の表にまとめて示す。



第4 当審の判断
1.引用例2の記載事項
引用例2には次の記載がある。
ア)「【0022】【実施例】次に本発明の具体的態様を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
[参考例1]図1にプロセス流れ図を示す晶析系で、ビスフェノールA製造工程におけるビスフェノールA-フェノール付加物の晶析処理を実施した。図1において、11は晶析原料溶液を供給するライン、2は晶析器、3は晶析器の内部温度を操作する外部循環式冷却器、13は冷却器に冷媒(水)を供給するライン、1は冷却器から冷媒を抜き出すラインの流量を調節する調節弁25を制御するコンピュータ系、4は固液分離器、また14は晶出した付加物結晶を抜き出すラインである。冷却器3のほかに予備冷却器を設置し、冷却器3の除熱能力が低下した時には冷却器を切り替えることによって連続晶析を実施した。冷却器3としては、多管式熱交換器を使用した。晶析原料である不純物を含んだ結晶物および分離ろ液ライン15からくる母液は、晶析器の入口に戻された。晶析原料供給ライン11からの供給量を一定とする条件下において、晶析原料溶液についての晶析器出口温度21、冷媒についての冷却器入口温度17および出口温度24および流量16を連続的に測定し、40℃に制御された冷媒を操作した。」
イ)「【0020】・・・冷却器の切り替えを行った場合にはそれまで使用されていた冷却器についてそのスケールの除去による再生処理を行う。冷却器の再生処理としては、例えば高温の熱媒を通すことによる冷却器の昇温処理・・・があり・・・適切な程度の再生処理条件を適用することができる。」
ウ)「本発明の方法を実施するためのプロセス構成の例を示すプロセス流れ図」(【図面の簡単な説明】)である【図1】を以下に示す。



2.引用例2に記載された発明
i)引用例2の記載事項ウ)の【図1】には、晶析装置とそのプロセスが示され、同ア)の記載も合わせてみると、「晶析器2」は冷却機構を有さず、「外部循環式冷却器3」は「多管式熱交換器」であって冷却機構を有するので、後者に着目すると、「外部循環式冷却器3」は「晶析器2」からの流れを冷却して「ビスフェノールA-フェノール付加物」の「結晶」を「晶出」させるから、「外部循環式冷却器3」を出て「晶析器2」へ循環する流れ(【図1】の「22」付近)は、「晶析原料溶液」と「付加物結晶」を共に含むものであり、「晶析器2」自体は冷却機構を有さない同流れのバッファータンクであり、「晶析器2」から「外部循環式冷却器3」へ循環する流れ(【図1】の「23」付近)は、「晶析原料溶液」と「付加物結晶」を共に含むものといえる。
ii)また、「外部循環式冷却器3」を構成する「多管式熱交換器」は「冷媒(水)」により間接的に冷却するものであり、「冷却器3の除熱能力が低下した時」には「予備冷却器」に「切り替える」ことにより「連続晶析」を行うものであり、同イ)の記載から、「冷却器の切り替えを行った場合にはそれまで使用されていた冷却器についてそのスケールの除去による再生処理を行う。冷却器の再生処理としては、例えば高温の熱媒を通すことによる冷却器の昇温処理」を行い、「スケール」を融解するものである。
iii)すると、本願の請求項1の記載に則して整理すると、引用例2には、
「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れが供給され、かつ外部循環式冷却器を多管式熱交換器として構成することで冷却する晶析装置を用い、晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れを、多管式熱交換器としての構成により間接的に冷却して、晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れとし、冷却器の除熱能力が低下した時には予備冷却器に切り替えて連続晶析操作を行い、切り替えられた外部循環式冷却器に付着したスケールを高温の熱媒を通すことにより融解除去して再生処理を行う、晶析プロセス。」の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されていると認められる。

3.本願発明1と引用例2発明との対比
i)引用例2発明の「晶析装置」は、「外部循環式冷却器」を「多管式熱交換器」として構成することで冷却するものであるのに対して、本願発明1の「晶析装置」は、「晶析槽」の「器壁の内面が冷却面」とされ、「器壁の外面側から器壁を冷却するジャケットとを有する」ことで冷却するものであるところ、本願明細書【0025】には「多管式熱交換器」は本願発明1の「ジャケット」にあたることが記載されているから、引用例2発明の「外部循環式冷却器を多管式熱交換器として構成することで冷却する晶析装置」は、本願発明1の「器壁の内面が冷却面とされた晶析槽と、晶析槽の器壁の外面側から器壁を冷却するジャケットとを有する晶析装置」に相当する。
ii)本願発明1では「晶析槽」には「原料を含む液(A)が供給」され、「間接的に冷却」されて「原料の結晶を含む懸濁液(B)」にされるのに対して、引用例2発明では、「外部循環式冷却器」には「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れ」が供給され、「間接的に冷却」されて「付加物結晶」がより多くなった「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れ」にされるものであり、「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れ」は「原料の結晶を含む懸濁液(B)」に相当するから、両者は、「晶析槽」で「間接的に冷却」し「原料の結晶を含む懸濁液(B)」とする点で一致する。
iii)以上から、本願発明1と引用例2発明とは
「器壁の内面が冷却面とされた晶析槽と、晶析槽の器壁の外面側から器壁を冷却するジャケットとを有する晶析装置を用い、晶析装置の冷却面を介して間接的に冷却して、原料の結晶を含む懸濁液(B)とする連続式晶析操作を行う、晶析方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>「晶析槽」に供給される流れについて、本願発明1では「原料を含む液(A)」であるのに対して、引用例2発明では「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れ」である点。

<相違点2>本願発明1の「晶析方法」では、「連続式晶析」の「途中にて、熱媒体(X)を、熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えて晶析操作を中断し、原料の結晶を含む懸濁液(B)を、晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5℃を超えて高くすることなく、熱媒体(Y)によって冷却面に付着したスケールのうち少なくとも冷却面との界面のスケールを融解することによって、冷却面に付着したスケールを除去する融解操作を行った後、熱媒体(Y)を、熱媒体(Y)よりも低温の熱媒体(Z)に切り替えて晶析操作を再開する」ものであるのに対して、引用例2発明では、「冷却器の除熱能力が低下した時には予備冷却器に切り替えて連続晶析操作を行い、切り替えられた外部循環式冷却器に付着したスケールを高温の熱媒を通すことにより融解除去して再生処理を行う」ものである点。

4.相違点の判断
事案に鑑み、相違点2を先に判断する。

4-1.相違点2について
4-1-1.引用例2の記載からの判断
i)本願発明1においては、「スケール」が発生すると「原料の結晶を含む懸濁液(B)全体を実質的に加熱することなく、スケールだけを融解できる」ように、「晶析槽」の「冷却面に付着したスケール」を「晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5℃を超えて高くすること」のないように「熱媒体(X)よりも高温の熱媒体(Y)に切り替えて晶析操作を中断」し、「スケール」を「除去する融解操作」を行う(本願明細書【0046】【0047】【0051】)ものである。
ii)これに対して、引用例2の記載事項イ)とウ)の【図1】から、引用例2発明においては、「冷却器の除熱能力が低下した時」に「冷却器の切り替えを行」い、「それまで使用されていた冷却器についてそのスケールの除去による再生処理を行う。冷却器の再生処理としては、例えば高温の熱媒を通すことによる冷却器の昇温処理」等を行うものである。
すなわち、引用例2発明においては、「スケール」が発生すると、「外部循環式冷却器3」が「予備冷却器」に切り替えられ、「外部循環式冷却器3」に付着したスケールを加熱により融解除去するものである。
しかしながら、引用例2発明においては、「予備冷却器」があることや、大部分の「付加物結晶」が「晶析器」内にあることにより、スケール除去時に、「外部循環式冷却器3」内の「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れ」の昇温を、「付加物結晶」が融解しないように、「晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5℃を超えて高くすること」のないように制限する必要性はないといえる。
iii)したがって、引用例2の記載からは、相違点2における少なくとも「スケール」を融解する温度を「晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5℃を超えて高くすること」のないように制限することについて、容易に想到できるものとはいえない。

4-1-2.引用例1の記載からの判断
(1)引用例1の記載事項
引用例1には次の記載がある。
カ)「【0004】【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問題点を解決すべく鋭意研究した結果、降温工程及び昇温工程からなる一連の操作を複数回繰り返すと、晶析後、スラリーを濾過して得られる湿潤ケーキ中の含液率が低くなること、及び、晶析釜等の冷却伝熱面に発生したスケーリングを効率よく除去できることを見出して、本発明を完成した。即ち、本発明は、回分式で冷却晶析する方法であって、冷却を開始して晶析を終了するまでに、母液温度を降温して溶質の一部を結晶析出させる降温工程と、該工程後、析出した結晶が完全に溶解する前まで、母液温度を昇温する昇温工程からなる一連の操作を複数回行い、さらに最終の降温工程を含み、且つ、各回と最終の降温工程における母液温度の最小値及び昇温工程における母液温度の最大値を、各々、順次低下させることを特徴とする晶析方法を提供するものである。」
キ)「【0006】本発明の晶析方法において、1回目の降温工程は、溶質が溶媒に完溶している母液(このときの母液温度をT_(0)℃とする)を冷却して、溶質の一部を結晶として析出させるために行われる。・・・
【0007】該降温工程から1回目の昇温工程への切り替えは、好ましくは、溶質の一部が結晶として析出しはじめた母液温度(T_(1)℃)よりも約10℃低い母液温度に達した時点、より好ましくは、T_(1)℃よりも約7℃低い母液温度に達した時点、特に好ましくは、T_(1)℃よりも1?5℃低い母液温度に達した時点を目安とすることができる。この1回目の降温工程から1回目の昇温工程への切り替え時の母液温度を、T_(2)℃とする。1回目の昇温工程における最高の母液温度(T_(3)℃という)は前記T_(0)℃よりも低い温度であり、好ましくはT_(1)℃である。母液温度がT_(3)℃に達したら、必要に応じて、同温度における保温工程を入れてもよい。該工程における保温時間は、好ましくは5?30分、より好ましくは15?30分である。該工程の終了後、1回目の一連の操作が終わる。
ク)「【0012】本発明の方法は、特に、晶析釜と循環用ポンプと外部循環熱交換器とが配管により一巡して接続された装置で晶析する場合に、好適に用いられる。この場合、晶析スラリーは、晶析釜Kから配管Aを経由して循環用ポンプPに至り、さらに該ポンプPから配管Bを経由して外部循環熱交換器Eに至り、該熱交換器Eから配管Cを経由して晶析釜Kへ循環される。公知の晶析方法では、上記晶析装置、殊にポンプP中で結晶が破砕されてしまい、大きな結晶を得ることが困難であったにもかかわらず、本発明の晶析方法では、上記した一連の操作を複数回行うため、破砕により生成した微細な結晶を溶解し、且つ、溶けずに残った比較的大きな結晶をさらに大きく成長させることが可能になり、濾過後に得られる湿潤ケーキの含液率低下に基く製品純度の向上を図ることができる。さらに、本発明の晶析方法では、外部循環熱交換器等の伝熱面において発生したスケーリングを除去することもできる。」
ケ)「晶析装置の概略図」(【図面の簡単な説明】)である【図1】を以下に示す。



(2)引用例1に記載された技術手段
i)引用例1の上記記載事項カ)ないしク)、及び、ケ)の【図1】から、引用例1には、「晶析釜」を用いる「回分式」での「冷却晶析方法」において、「晶析釜及び外部循環熱交換器の冷却伝熱面に発生したスケーリングを効率よく除去」する等のために、「冷却を開始して晶析を終了するまでに、母液温度を降温して溶質の一部を結晶析出させる降温工程と、該工程後、析出した結晶が完全に溶解する前まで、母液温度を昇温する昇温工程からなる一連の操作を複数回行い、さらに最終の降温工程を含み、且つ、各回と最終の降温工程における母液温度の最小値及び昇温工程における母液温度の最大値を、各々、順次低下」させる「晶析方法」についての技術手段が記載されている。
ii)さらに、同キ)から、同「晶析方法」においては、晶析のために「T_(2)℃」の「母液温度」へ降温していたものを「溶質の一部が結晶として析出しはじめた母液温度」である「T_(3)℃」(「T_(3)℃」は「T_(1)℃」に等しいことが好ましい)に1回目の昇温をするから、このときは「晶析釜等の冷却伝熱面に発生したスケーリング」を「溶解」し得るが、その後の昇温工程では順次「T_(1)℃」よりも低い温度に昇温されることになるから、同技術手段においては1回目の昇温でのみ「スケーリング」を「溶解」し得るものといえ、ここで、晶析操作時の「母液温度」「T_(2)℃」と、そこから1回目の昇温時の「T_(3)℃」(「T_(1)℃」)との温度差は「1?5℃」である。
iii)すると、引用例1には、「晶析釜及び外部循環熱交換器の冷却伝熱面に発生したスケーリングを効率よく除去」するために、晶析操作時と昇温時で「母液温度」の温度差を「1?5℃」とする「晶析釜及び外部循環熱交換器を用いる回分式の冷却晶析方法」についての技術手段が記載されているといえる。

(3)相違点2について
i)引用例1に記載の技術手段は、上記「4-1-2.(1)(2)i)ii)」でみたように、「回分式」の「晶析釜K」で「一連の操作を複数回行」う「冷却晶析方法」なので、「晶析スラリー」が「晶析釜K」に供給され、「外部循環熱交換器E」で冷却されて、より多くの「結晶」が「晶析」された「晶析スラリー」にされて、再び「晶析釜K」に供給される循環流になっているものといえる。
すると、引用例2発明も、「外部循環式冷却器3」を「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れ」が循環流として流れるものであるから、共に循環流であるので、引用例2発明に引用例1に記載の技術手段を適用する動機付けはあるといえる。
ii)しかしながら、引用例1に記載の技術手段では、晶析操作時の「母液温度」「T_(2)℃」と、そこから1回目の昇温時の「溶質の一部が結晶として析出しはじめた母液温度」である「T_(3)℃」(「T_(1)℃」)との温度差は「1?5℃」であって、「T_(3)℃」では晶析結晶はほとんど融解しており、晶析させるための「T_(2)℃」はなるべく低温である必要があるので、そのための温度差(T_(3)℃-T_(2)℃)が「1?5℃」であるといえる。
すなわち、引用例1に記載の技術手段は、「晶析操作を中断する直前の温度」である「T_(2)℃」よりも「1?5℃」高い「T_(3)℃」にしてスケールを融解するが、晶析結晶もほとんど融解するものであり、その温度差を「1?5℃」からより小さい「0.5℃を超えて高くすることな」いものとすることは、「T_(2)℃」においても晶析結晶が融解してしまうかもしれないから、記載も示唆もされていないといえる。
iii)したがって、引用例1の記載からは、相違点2における少なくとも「スケール」を融解する温度を「晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5℃を超えて高くすること」のないように制限することについて、容易に想到できるものとはいえない。

4-1-3.相違点2についての結言
以上から、相違点2に係る本願発明1の特定事項について、引用例2又は1に記載されているとも、引用例2又は1の記載から容易に想到できるものともいえない。

4-2.相違点1について
次に相違点1について検討する。
相違点1は、「晶析槽」に供給される流れについて、本願発明1では「原料を含む液(A)」であるのに対して、引用例2発明では「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れ(B)」である点で、両者は相違するとするものであるが、これは、本願発明1では、「原料を含む液(A)」が「晶析槽」に供給され、そこで冷却されて「原料の結晶を含む懸濁液(B)」にされて、同「(B)」は「晶析槽」に供給される同「(A)」と混合されることがない「連続式」の一過流であるのに対して、引用例2発明では、「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れ」が「外部循環式冷却器」に供給され、そこで冷却されて、より多くの「付加物結晶」が晶析された「晶析原料溶液と付加物結晶を共に含む流れ」にされて、再び「外部循環式冷却器」に供給される連続式ではあるが循環流になっている点で、両者は異なっていることを意味する。
そこで検討するに、引用例1及び引用例2には、上記「4-1.」で摘示したように、循環式の晶析装置しか記載されていない。
したがって、相違点1に係る本願発明1の特定事項について、引用例2又は1の記載から容易に想到できるものとはいえない。

4-3.原査定の付記についての判断
原査定に付記された引用例5の記載に基づく本願発明1の容易想到性について検討する。
引用例5には、「本発明に係る方法において用いる晶析装置は・・・攪拌槽と、該攪拌槽の周面に外側から冷却媒体を接触させるための冷却ジャケットを備える冷却器とを備え、該攪拌槽の周面を伝熱面として熱交換により攪拌槽内を冷却し、攪拌槽内に懸濁結晶スラリーを保持することができる懸濁型ジャケット冷却式晶析槽(攪拌槽型晶析装置)が好ましい。なお、本発明に係る方法において、晶析操作は連続式であっても回分式であってもよい。」(【0024】)と記載され、「攪拌槽」と「該攪拌槽の周面に外側から冷却媒体を接触させるための冷却ジャケットを備える冷却器」とを備え、「該攪拌槽の周面を伝熱面として熱交換により攪拌槽内を冷却し、攪拌槽内に懸濁結晶スラリーを保持すること」ができる「連続式」の「懸濁型ジャケット冷却式晶析槽」について示唆されているが、当該「晶析槽」に、「外部循環熱交換器」を用いる「回分式」の引用例1に記載の技術手段を適用することは容易に成し得ることとはいえない。

4-4.結言
以上から、引用例1、2、5のいずれにも、相違点2における少なくとも「スケール」を融解する温度を「晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5℃を超えて高くすること」のないように制限することについて、記載されているとも、示唆されているものともいえない。
また、少なくとも引用例1、2のいずれにも、相違点1における「晶析槽」に供給される流れが「結晶の原料」を含まない「原料を含む液(A)」である点について、記載されているとも、示唆されているものともいえない。
したがって、本願発明1は引用例2に記載された発明及び引用例1、2、5に記載された技術手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
本願発明1を引用する本願発明2についても同様である。

なお、原査定で引用していない提出書1、2に記載の引用例3及び6についても、一応検討する。

引用例6について検討する。
i)引用例6には、「本発明は純度が低い化合物を晶析を繰り返して高純度に精製する方法において結晶の晶析を、化合物を溶解した容器に浸漬した冷却装置の表面の近傍で行って冷却装置に付着させ、次いで該装置を移動することにより、付着した結晶を次の容器まで運搬し、そこで結晶を脱離し精製する方法。更には脱離した結晶を溶解させて次の晶析の原料として前記と同様な晶析、運搬、脱離、溶解の操作を繰り返しすることを特徴とする精製方法及びそれらを実施する為の精製装置である。」(【0005】)と記載され、以下に示す【図2】とあわせてみれば、引用例6には、「溶解槽16」内で冷却されている「フィンチューブ13」に晶析付着した溶液中の化合物を、「フィンチューブ13」ごと「溶解槽16」から引き抜いて、別の容器で溶解させる技術手段が示されており、これは連続式の晶析装置ではないし、器壁の内面を冷却面とするものでもない。
ii)したがって、本願発明1について、引用例6に記載されているとも、引用例6の記載から容易に想到できるものともいえない。
以下に引用例6の【図2】を示す。



次に引用例3について検討する。
i)引用例3には、「晶析塔およびクーラーを用意し、該晶析塔から晶析液の一部を抜き出して該クーラーで冷却し、冷却後の晶析液を該晶析塔に再循環させることにより晶析塔内で結晶の析出を生ぜしめ、析出した結晶を該晶析塔から抜き出して晶析液から分離する一方、該晶析塔には新たな晶析液を導入することからなる晶析方法において、該クーラーを複数基並列に設け、複数基のクーラーのうち1基を予備クーラーとし、予備クーラー以外のクーラーのみを用いて晶析液の冷却を行ない、伝熱面に結晶が析出し伝熱効率が低下したクーラーを予備クーラーと交換して連続運転を行うとともに、その伝熱効率が低下したクーラーを加温することにより伝熱面に付着した結晶を溶解して再生することを特徴とする方法。」(【請求項1】)、「・・・クーラー伝熱面に微細な結晶がわずかに析出した時点でそのクーラーの負荷を予備クーラーに切換え、当該クーラーには必要に応じて冷却媒体の代りに加温媒体を流して伝熱面に析出した微細な結晶を溶解除去するのである。この加温媒体は別途に循環ラインを設けておき、当該クーラーを加温媒体循環ラインに接続すればよい。このようにして微細な結晶をそれが堅いスケールを形成する前に除去するため、時間と手間のかかるスケール洗浄作業を行なわなくても、当該クーラーを単にラインからはずして加温するだけで上記問題を回避できるのである。」(【0011】)と記載され、以下に示す【図2】とあわせてみれば、引用例3には、「晶析塔」と「クーラーを複数基並列」に設け、「複数基のクーラーのうち1基を予備クーラーとし、予備クーラー以外のクーラーのみを用いて晶析液の冷却を行ない、伝熱面に結晶が析出し伝熱効率が低下したクーラーを予備クーラーと交換して連続運転」を行う「晶析方法」について記載されており、これは循環式の晶析装置であって、しかも、「切り換え」て交換された「クーラー」は「晶析塔」と接続されていないので「晶析塔」内の「結晶」を溶解してしまうことはないから、「加温媒体」で「伝熱面に析出した微細な結晶を溶解除去」するときに、本願発明1のような「晶析操作を中断する直前の温度よりも0.5℃を超えて高くすること」なく「除去する融解操作」を行う等の制限を行う技術的な動機付けがない。
ii)したがって、本願発明1の相違点1,2に係る特定事項について、引用例3に記載されているとも、引用例3の記載から容易に想到できるものともいえない。
以下に引用例3の【図2】を示す。



第5 むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-28 
出願番号 特願2012-146768(P2012-146768)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森井 隆信神田 和輝團野 克也  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 中澤 登
後藤 政博
発明の名称 晶析方法  
代理人 志賀 正武  
代理人 鈴木 三義  
代理人 高橋 詔男  
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