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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F16C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1334886
審判番号 不服2016-17882  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-30 
確定日 2017-11-24 
事件の表示 特願2014-246651「回転システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年6月22日出願公開、特開2015-113981〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月5日(パリ条約による優先権主張 2013年12月13日、ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成27年10月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年2月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年7月29日付けで拒絶査定(発送日:同年8月3日)がなされ、これに対し、同年11月30日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正がされ、その後、平成29年3月31日に上申書が提出されたものである。

第2 平成28年11月30日の手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成28年11月30日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
1 本願補正発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前(平成28年2月25日の手続補正書)の請求項1に、

「【請求項1】
真空ポンプとして形成されている回転システムであって、ステータ、ローター(10)およびローター(10)の回転可能な支承の為の永久磁石支承部(14)を有し、その際、永久磁石支承部(14)の共振周波数の調整の為の調整装置(40)が設けられている回転システムにおいて、
調整装置(40)の駆動のための制御ユニットが設けられており、この制御ユニットが、調整装置(40)による共振周波数の調整を、回転システムの作動が最適化され、かつ回転システムによって発生する振動が減少されるよう制御するよう装備されており、
制御ユニットおよび調整装置(40)が、共振周波数を、回転システムの起動の間に急激に減少するよう装備されており、その際、共振周波数の減少によって、回転周波数が共振周波数を通過することを特徴とする回転システム。」
とあったものを、

「【請求項1】
真空ポンプとして形成されている回転システムであって、ステータ、ローター(10)およびローター(10)の回転可能な支承の為の永久磁石支承部(14)を有し、その際、永久磁石支承部(14)の共振周波数の調整の為の調整装置(40)が設けられている回転システムにおいて、
調整装置(40)の駆動のための制御ユニットが設けられており、この制御ユニットが、調整装置(40)による共振周波数の調整を、回転システムの作動が最適化され、かつ回転システムによって発生する振動が減少されるよう制御するよう装備されており、
制御ユニットおよび調整装置(40)が、共振周波数を、回転システムの起動の間に減少するよう装備されており、その際、共振周波数の減少によって、回転周波数が共振周波数を通過し、
永久磁石支承部(14)が、ローター側の支承部材(16)と、ステータ側の支承部材(18)有しており、これらが其々、軸方向に互いに積層された複数の永久磁石のリング24,26からなるリング積層部(20,22)を有しており、ロータ側のマグネットリング(26)が半径方向外側に、ステータ側のマグネットリング(24)が半径方向内側に配置されていることを特徴とする回転システム。」
と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)。

上記補正において、「回転システムの起動の間に急激に減少する」との記載を「回転システムの起動の間に減少する」と補正することは、比較の基準や程度が不明な文言を削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第4号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、上記補正において、発明を特定するために必要な事項である「永久磁石支承部(14)」について、「永久磁石支承部(14)が、ローター側の支承部材(16)と、ステータ側の支承部材(18)有しており、これらが其々、軸方向に互いに積層された複数の永久磁石のリング24,26からなるリング積層部(20,22)を有しており、ロータ側のマグネットリング(26)が半径方向外側に、ステータ側のマグネットリング(24)が半径方向内側に配置されている」との限定を付することは、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開平6-42531号公報(以下「刊行物」という。)には、「磁気軸受装置及びその制御方法」に関して、図面(特に、図1、図4、図5)と共に次の事項が記載されている。下線は当審で付した。

(1)「【0002】
【従来の技術】ターボ分子ポンプやHDD(ハードディスクドライブ)用回転機械等の小型の回転機械は、コンパクト化や低価格化が要求されており、そのためこれに使用されている磁気軸受装置も小型化することが望まれている。」

(2)「【0016】図1に示すように、ケーシング21の中心位置には回転軸22が配設されており、この回転軸22の上部は図7に示したものと同様な磁気軸受としてのラジアル磁気軸受23により、また下部は磁気軸受24により、それぞれ非接触状態で回転自在に支持されている。回転軸22を回転駆動するためのモータ25は、回転軸22に取付けられたモータロータ26と、このモータロータ26の外周面に対向配置されてモータロータ26を回転させるべくケーシング21に取付けられたモータステータ27とを備えており、モータステータ27の励磁コイルに電流を流すことによりモータロータ26とともに回転軸22を回転駆動するようになっている。
【0017】ラジアル磁気軸受23においては、回転軸22に固定されたラジアル磁気軸受ターゲット28には永久磁石29を埋設し、一方、ケーシング21に固定されたラジアル磁気軸受ステータ30には永久磁石31を、前記永久磁石29に対向する位置に埋設している。両永久磁石29,31間に作用する反発力を利用することにより、ロータ28とステータ30との間に微小間隙を保持させて、回転軸22を含む回転体32を非接触状態で半径方向に支持している。
【0018】次に、磁気軸受24について説明する。この磁気軸受24は、永久磁石の反発力を利用して、回転体32の半径方向の運動を受動的に安定化させて回転体32を非接触で固定子33に支持している。
【0019】即ち、環状をなすこの固定子33は、ケーシング21の底部34に立設された圧電アクチュエータ35により軸線方向に可動になっており、その内周面には永久磁石36が埋設されている。圧電アクチュエータ35は、電流を流すと軸線方向に伸縮する圧電素子により構成されている。一方、回転軸22には、前記固定子33の永久磁石36に対向する所定の位置に永久磁石37が埋設されたターゲット38が固定されている。上述の両永久磁石36,37間に作用する反発力により、回転体32は固定子33に対して微小間隙を介して半径方向のほか軸線方向に対しても支持される受動軸受をなしている。」

(3)「【0023】図4は本発明の他の実施例を示す磁気軸受装置の断面図、図5はその制御方法を示すフローチャートである。各図は、軸の共振現象(危険速度)を回避するための磁気軸受装置の制御方法を示している。即ち、本実施例装置は、モータ25に接続されてこのモータ25の回転数の信号が入力され、予め設定された所定の回転数ω_(1 ),ω_(2) か否かを判断する制御回路51を備えている。この設定回転数ω_(1) は共振を起こす恐れのある回転数、設定回転数ω_(2 )は共振の心配のない回転数である。制御回路51から出力される信号は、制御回路45からの出力信号に加算されて電力増幅器46に出力される。これにより、予め設定された設定回転数ω_(1) ,ω_(2) のときに、制御回路51から電力増幅器46に制御信号が出力されて圧電アクチュエータ35の圧電素子を駆動し、固定子側の永久磁石36は軸線方向の位置を変化させる。これにより磁気軸受24のラジアル剛性が変化することとなり、共振現象が回避できる。
【0024】これを図5に基づいて説明すると、回転体32が回転運動を開始し、この時の両永久磁石36,37間のシフト量(ずれ量)がΔZ_(1) の場合(ステップS1)、制御回路51は回転体32の回転数が予め設定された回転数ω_(1 )にまで上昇したか否かを判断し(ステップS2)、共振を起こす恐れのある回転数に近い設定回転数ω_(1 )にまで回転数が上昇した場合には、制御回路51はシフト量をΔZ_(2)とするような制御信号を電力増幅器46に出力する(ステップS3)。すると電力増幅器46は、圧電アクチュエータ35の圧電素子を駆動して固定子33を軸線方向に移動させ、両永久磁石36,37間のシフト量をΔZ_(1 )からΔZ_(2) に変化させる。これにより磁気軸受24のラジアル剛性が変化することとなり、回転体32は共振を起こさない。次いでさらに回転体32の回転数が上昇して共振の恐れがなくなる設定回転数ω_(2) に達したか否かを判断し(ステップS4)、YESであれば、制御回路51はシフト量をΔZ_(2) から元のΔZ_(1) に戻すような制御信号を電力増幅器46に出力し(ステップS5)、これにより圧電アクチュエータ35の圧電素子が駆動されて両永久磁石36,37間のシフト量はΔZ_(1) に戻り、以降回転体32は共振することなく危険速度を通過し、安全に回転運動を継続する。
【0025】また、本実施例においては、回転軸22にセンサターゲット52が取付けられ、このセンサターゲット52をケーシング21に取付けられたラジアル変位センサ53で検出することにより、回転体32の半径方向の振動による変位を検出している。このラジアル変位センサ53からの検出信号は、制御回路51に出力される。回転体32の半径方向の振動が大きくなった場合に、制御回路51は電力増幅器46に制御信号を出力し、これにより圧電素子が駆動されて固定子33とともに固定子側の永久磁石36の位置を軸線方向に変化させ、磁気軸受のラジアル剛性を変化させている。したがって、回転体32の共振現象を更に効果的に回避することができる。」

(4)図1、図4には、回転体32側のターゲット38と、ケーシング21側の固定子33が、其々、軸方向に互いに積層された複数の永久磁石36、37を有することが示されている。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「ターボ分子ポンプとして形成されている回転機械であって、ケーシング21、回転体32および回転体32の非接触状態で回転自在に支持する為の磁気軸受24を有し、その際、磁気軸受24のラジアル剛性を変化させる為の圧電アクチュエータ35が設けられている回転機械において、
圧電アクチュエータ35の駆動のための電力増幅器46及び制御回路51が設けられており、この電力増幅器46及び制御回路51が、圧電アクチュエータ35によるラジアル剛性の変化を、軸の共振現象を回避されるよう制御するよう装備されており、
回転体32が回転運動を開始し、両永久磁石36、37間のシフト量がΔZ_(1)の場合、制御回路51は回転体32の回転数が予め設定された回転数ω_(1)にまで上昇したか否かを判断し、共振を起こす恐れのある回転数に近い設定回転数ω_(1)にまで回転数が上昇した場合には、制御回路51はシフト量をΔZ_(2)とするような制御信号を電力増幅器46に出力し、電力増幅器46は、圧電アクチュエータ35の圧電素子を駆動して固定子33を軸線方向に移動させ、両永久磁石36、37間のシフト量をΔZ_(1)からΔZ_(2)に変化させ、次いでさらに回転体32の回転数が上昇して共振の恐れがなくなる設定回転数ω_(2)に達したか否かを判断し、YESであれば、制御回路51はシフト量をΔZ_(2)から元のΔZ_(1)に戻すような制御信号を電力増幅器46に出力し、これにより圧電アクチュエータ35の圧電素子が駆動されて両永久磁石36、37間のシフト量はΔZ_(1)に戻り、以降回転体32は共振することなく危険速度を通過し、安全に回転運動を継続し、
磁気軸受24が、回転体32側のターゲット38と、ケーシング21側の固定子33を有しており、これらが其々、軸方向に互いに積層された複数の永久磁石36、37を有しており、回転体32側の永久磁石37が半径方向内側に、ケーシング21側の永久磁石36が半径方向外側に配置されている回転機械。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「ターボ分子ポンプ」は本願補正発明の「真空ポンプ」に相当し、同様に、「回転機械」は「回転システム」に、「ケーシング21」はモータステータ27を備えた静的なものであるから「ステータ」に、「回転体32」は「ローター(10)」に、「磁気軸受24」は「永久磁石支承部(14)」に、「電力増幅器46及び制御回路51」は「制御ユニット」に、「回転体32側のターゲット38」は「ローター側の支承部材(16)」に、「ケーシング21側の固定子33」は「ステータ側の支承部材(18)」にそれぞれ相当する。

また、刊行物の「これにより、予め設定された設定回転数ω_(1) ,ω_(2 )のときに、制御回路51から電力増幅器46に制御信号が出力されて圧電アクチュエータ35の圧電素子を駆動し、固定子側の永久磁石36は軸線方向の位置を変化させる。磁気軸受24のラジアル剛性が変化することとなり、共振現象が回避できる」(段落【0023】)との記載、及び本願明細書の「図2は、マグネット支承部14のローター側のマグネットリング積層部20とステータ側のマグネットリング22を示す。リング積層部20,22の間の軸方向のオフセットdは消えていない。オフセットdの結果、同じ軸方向に極性を向けられたリング積層部20,22のマグネットリング24,26は、もはや半径方向において互いに正確に重なり合っていない(ずれの無い位置でない)。その代り、マグネットリング24は、その軸方向の端部領域において、軸方向の反対の方向に向けられた極性を有するマグネットリング26に向かって位置するか、ローター側のマグネットリング積層部20から外へと動かされる。これによって、リング積層部20,22の間の磁気的な反発力が弱められる。このことは、マグネット支承部14の半径方向のより少ない強度を結果として有する。これによって再び、マグネット支承部の共振周波数が低くなる。図1におよび2には表されていない制御ユニットによる調整装置40の適当な駆動によって、永久磁石支承部14の共振周波数が調整されることが可能であり、そして真空ポンプの作動は、真空ポンプの作動中にローター10によって引き起こされる振動が抑圧されることが可能である。」(平成28年11月30日の手続補正により補正された段落【0065】、段落【0066】)との記載からみて、引用発明の「磁気軸受24のラジアル剛性を変化させる」ことは本願補正発明の「永久磁石支承部(14)の共振周波数の調整」をすることに相当し、引用発明の「磁気軸受24のラジアル剛性を変化させる為の圧電アクチュエータ35」は、本願補正発明の「永久磁石支承部(14)の共振周波数の調整の為の調整装置(40)」に相当し、軸の共振現象を回避されるように制御すれば、回転機械によって発生する振動が減少し、また、軸の共振現象の回避は、回転機械の作動の最適化の一種であるから、引用発明の「電力増幅器46及び制御回路51が、圧電アクチュエータ35によるラジアル剛性の変化を、軸の共振現象を回避されるよう制御する」ことは、本願補正発明の「制御ユニットが、調整装置(40)による共振周波数の調整を、回転システムの作動が最適化され、かつ回転システムによって発生する振動が減少されるよう制御する」ことに相当する。

引用発明の「軸方向に互いに積層された複数の永久磁石36、37」は、本願補正発明の「軸方向に互いに積層された複数の永久磁石」に相当し、また、永久磁石が各々リング状に構成されていることは回転機械の磁気軸受の技術常識から自明であるから、本願補正発明の「軸方向に互いに積層された複数の永久磁石のリング24,26からなるリング積層部(20,22)」にも相当する。

したがって、両者は、
「真空ポンプとして形成されている回転システムであって、ステータ、ローターおよびローターの回転可能な支承の為の永久磁石支承部を有し、その際、永久磁石支承部の共振周波数の調整の為の調整装置が設けられている回転システムにおいて、
調整装置の駆動のための制御ユニットが設けられており、この制御ユニットが、調整装置による共振周波数の調整を、回転システムの作動が最適化され、かつ回転システムによって発生する振動が減少されるよう制御するよう装備されており、
永久磁石支承部が、ローター側の支承部材と、ステータ側の支承部材有しており、これらが其々、軸方向に互いに積層された複数の永久磁石のリングからなるリング積層部を有する回転システム。」
である点で一致し、次の点で相違している。

〔相違点1〕
本願補正発明は、「制御ユニットおよび調整装置(40)が、共振周波数を、回転システムの起動の間に減少するよう装備されており、その際、共振周波数の減少によって、回転周波数が共振周波数を通過」するものであるのに対して、引用発明は、「回転体32が回転運動を開始し、両永久磁石36、37間のシフト量がΔZ_(1)の場合、制御回路51は回転体32の回転数が予め設定された回転数ω_(1)にまで上昇したか否かを判断し、共振を起こす恐れのある回転数に近い設定回転数ω_(1)にまで回転数が上昇した場合には、制御回路51はシフト量をΔZ_(2)とするような制御信号を電力増幅器46に出力し、電力増幅器46は、圧電アクチュエータ35の圧電素子を駆動して固定子33を軸線方向に移動させ、両永久磁石36、37間のシフト量をΔZ_(1)からΔZ_(2)に変化させ、次いでさらに回転体32の回転数が上昇して共振の恐れがなくなる設定回転数ω_(2) に達したか否かを判断し、YESであれば、制御回路51はシフト量をΔZ_(2)から元のΔZ_(1)に戻すような制御信号を電力増幅器46に出力し、これにより圧電アクチュエータ35の圧電素子が駆動されて両永久磁石36、37間のシフト量はΔZ_(1)に戻り、以降回転体32は共振することなく危険速度を通過し、安全に回転運動を継続」するものである点。

〔相違点2〕
本願補正発明は、「ロータ側のマグネットリング(26)が半径方向外側に、ステータ側のマグネットリング(24)が半径方向内側に配置されている」ものであるのに対して、引用発明は、「回転体32側の永久磁石が半径方向内側に、ケーシング21側の永久磁石が半径方向外側に配置されている」ものである点。

4 当審の判断
そこで、各相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明が「回転体32が回転運動を開始し、両永久磁石36、37間のシフト量がΔZ_(1)の場合、制御回路51は回転体32の回転数が予め設定された回転数ω_(1)にまで上昇したか否かを判断し、共振を起こす恐れのある回転数に近い設定回転数ω_(1)にまで回転数が上昇した場合には、制御回路51はシフト量をΔZ_(2)とするような制御信号を電力増幅器46に出力し、電力増幅器46は、圧電アクチュエータ35の圧電素子を駆動して固定子33を軸線方向に移動させ、両永久磁石36、37間のシフト量をΔZ_(1)からΔZ_(2)に変化させ」るにあたって、シフト量ΔZ_(1)とΔZ_(2)の大小関係がΔZ_(1)>ΔZ_(2)とΔZ_(1)<ΔZ_(2)との2通りであることは明らかである。シフト量ΔZ_(2)>ΔZ_(1)の場合、シフト量をΔZ_(1)からΔZ_(2)に増加させると、ラジアル剛性は減少することになる。逆に、シフト量ΔZ_(1)>ΔZ_(2)の場合、シフト量をΔZ_(1)からΔZ_(2)に減少させることになるが、その後、「次いでさらに回転体32の回転数が上昇して共振の恐れがなくなる設定回転数ω_(2)に達したか否かを判断し、YESであれば、制御回路51はシフト量をΔZ_(2 )から元のΔZ_(1 )に戻すような制御信号を電力増幅器46に出力し、これにより圧電アクチュエータ35の圧電素子が駆動されて両永久磁石36,37間のシフト量はΔZ_(1)に戻」す際に、シフト量は、ΔZ_(2)からΔZ_(1)に増加させて、ラジアル剛性は減少することになる。

すなわち、引用発明は、シフト量ΔZ_(1)、ΔZ_(2)の大小関係がいずれであっても、電力増幅器46及び制御回路51並びに圧電アクチュエータ35が、回転機械が回転運動を開始してから、安全に回転運動を継続できるようになるまでの間に、ラジアル剛性を減少させるものである。
一方、本願補正発明の「共振周波数を、回転システムの起動の間に減少する」ことについて、本願明細書には、「リング積層部20,22の間の磁気的な反発力が弱められる。このことは、マグネット支承部14の半径方向のより少ない強度を結果として有する。これによって再び、マグネット支承部の共振周波数が低くなる。」との記載(前記段落【0066】)がある。この記載によれば、本願補正発明の「共振周波数を、回転システムの起動の間に減少する」ことは、リング積層部20,22の間の磁気的な反発力が弱められ、マグネット支承部14の半径方向の強度がより少なくなり、これによって、マグネット支承部の共振周波数が低くなることにより生じるものである。
そうすると、引用発明はラジアル剛性を減少させるものであるから、共振周波数を減少させ、それによって、危険速度を通過するものであるといえる。
そして、引用発明の「危険速度を通過する」ことは、刊行物の「軸の共振現象(危険速度)を回避する」(段落【0023】)との記載からみて、本願補正発明の「回転周波数が共振周波数を通過する」ことに相当する。
したがって、引用発明は、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項を備えたものであるから、相違点1は実質的な相違点ではない。

(2)相違点2について
本願の優先日前に、ターボ分子ポンプとして形成されている回転機械において、ロータ側のマグネットリングが半径方向外側に、ステータ側のマグネットリングが半径方向内側に配置されている構成は、独国特許出願公開第102010045716号明細書(Fig.2のPermanentmagnetlagers[永久磁石軸受]114、wellenseitigen Lagerrotor[シャフト側軸受ローター] 118、gehaeuseseitig angeordneten Lagerstator[ハウジング側軸受ステーター]116を参照)、特開2000-274392号公報(段落【0021】、段落【0025】、段落【0026】、図1、図2)、特表2005-504930号公報(段落【0012】、段落【0013】、図1、図3)、独国特許出願公開第2825551号明細書(Fig.1の permanentmagnetischen Statorringen[永久磁石ステーターリング] 6、Rotor verbundenen permanentmagnetischen Ringen[ローターに接続された永久磁石リング] 7を参照)に記載されるように周知技術である。

そうすると、引用発明と上記周知技術は、ターボ分子ポンプとして形成されている回転機械において磁気軸受を設ける点で共通するから、引用発明に上記周知技術を適用し、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)効果について
本願補正発明が奏する効果は、全体としてみて、引用発明及び上記周知技術から予測することができ、格別なものではない。

(4)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ところで、審判請求人は、平成29年3月31日提出の上申書において、請求項1のステータ側のマグネットリング(24)と調整装置(40)について、「ステータ側のマグネットリング(24)が、調整装置(40)に直接接続されており、かつこの調整装置(40)を介してステータ側の担持部分(36)に固定されており、調整装置(40)が、ステータ側のマグネットリング(24)を、担持部分(36)に対して軸方向でスライドさせる」との事項を付加する補正案を提示しているが、例えば、前掲の独国特許出願公開第102010045716号明細書のFig.2には、シャフト側軸受ステーター116がステータ側の坦持部分に直接接続されることが記載されていることからみて、補正案の上記事項のようにすることは、当業者にとって格別の困難性があるとはいえない。
したがって、審判請求人の提示する補正案は採用できない。

5 むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成28年2月25日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2〔理由〕1」に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、その記載事項、及び引用発明は、前記「第2〔理由〕2」に記載したとおりである。

3 対比及び当審の判断
本願発明は、前記「第2〔理由〕」で検討した本願補正発明に対し、「共振周波数」の「減少」について、「急激に」との事項を付加し、「永久磁石支承部(14)」についての「永久磁石支承部(14)が、ローター側の支承部材(16)と、ステータ側の支承部材(18)有しており、これらが其々、軸方向に互いに積層された複数の永久磁石のリング24,26からなるリング積層部(20,22)を有しており、ロータ側のマグネットリング(26)が半径方向外側に、ステータ側のマグネットリング(24)が半径方向内側に配置されている」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明と引用発明とは、前記「第2〔理由〕3」に記載した一致点で一致し、同相違点1で相違し、さらに次の点で相違する。

〔相違点3〕
本願発明は、制御ユニットおよび調整装置(40)が、共振周波数を回転システムの起動の間に「急激に」減少するのに対し、
引用発明は、磁気軸受24のラジアル剛性を変化させる点。

そこで各相違点について検討する。
相違点1については前記「第2〔理由〕4(1)」のとおりである。
次に、相違点3について検討する。
共振周波数を「急激に」減少させるとの記載は、共振周波数の減少の比較の基準や程度が特定されていないことから、明確ではない。他方、引用発明におけるラジアル剛性の変化の基準や程度は様々に設定されるものであるから、本願発明での「急激に」と一致する程度となる場合がある。
また、仮にそうでないとしても、引用発明において、危険速度を通過するにあたって、軸の共振現象を短時間に回避するために、ラジアル剛性を「急激に」変化させることは、当業者が容易に想到し得たことである。

そうしてみると、本願発明は、引用発明と同一であるか、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 まとめ
したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、又は引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-22 
結審通知日 2017-06-28 
審決日 2017-07-14 
出願番号 特願2014-246651(P2014-246651)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (F16C)
P 1 8・ 121- Z (F16C)
P 1 8・ 575- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
滝谷 亮一
発明の名称 回転システム  
代理人 清田 栄章  
代理人 中村 真介  
代理人 江崎 光史  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 篠原 淳司  
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