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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G03G 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G |
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管理番号 | 1335035 |
審判番号 | 不服2017-1906 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-09 |
確定日 | 2017-12-19 |
事件の表示 | 特願2013-113534「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日出願公開、特開2014- 6520、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張(優先権主張:平成24年6月1日(以下「優先日」という。)、出願番号:特願2012-125954号)を伴う平成25年5月30日の出願であって、平成28年6月17日付けで拒絶理由が通知され、同年8月19日付けで手続補正がされ、同年11月7日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年同月10日)、これに対し、平成29年2月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。 第2 平成29年2月9日付けの手続補正の適否 1.補正の内容 (1)特許請求の範囲について 平成29年2月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし5を、 「【請求項1】 受信した画像情報に基づいて像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像し、現像されたトナー像を記録材に転写することで記録材に画像形成する画像形成装置であって、 トナーとキャリアとを含む現像剤を表面に担持し、像担持体と対向する位置に現像剤を回転搬送して、像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像する現像剤担持体と、 前記現像剤担持体と、現像剤を撹拌混合しながら搬送して前記現像剤担持体に供給する現像剤搬送手段とを有する現像装置と、 前記現像装置の前記現像剤搬送手段の搬送領域に補給するトナーを収納したトナー収納部と、 画像形成動作毎に、前記現像剤担持体の回転軸方向に所定間隔で複数に分割した仮想区域ごとに、受信した画像情報に基づいて前記像担持体に形成される当該静電潜像の現像のために消費されるトナー量を算出する算出手段と、 前記トナー収納部から前記現像装置へのトナーの補給量および補給タイミングを制御するトナー補給制御部とを備え、 前記トナー補給制御部は、前記算出手段によって算出された、各仮想区域において前記静電潜像の現像時に消費されるトナー量と同量のトナーを、前記現像時よりも、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時間分だけ早く前記現像装置に補給することを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】 画像形成を実行するタイミングを制御する画像形成制御部をさらに有し、前記画像形成制御部は、取得した画像情報に基づいて画像形成を実行する際に、各仮想区域においてトナーで現像する時期の方が、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時期よりも先になると判断した場合には、トナーで現像する時期と、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時期が同じになるように、画像形成を開始する時期を遅らせるように制御する請求項1記載の画像形成装置。 【請求項3】 画像形成を実行するタイミングを制御する画像形成制御部をさらに有し、前記トナー補給制御部は、画像形成制御部から、前記現像剤担持体により像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像する時期を取得し、取得した前記時期により、前記現像時よりもトナー収納部から補給されたトナーが仮想区域まで搬送される時間分だけ早く前記現像装置に補給することができないタイミングとなるトナー補給を保留する請求項1記載の画像形成装 置。 【請求項4】 画像形成を実行するタイミングを制御する画像形成制御部を有し、前記トナー補給制御部は、画像情報に基づいて複数の記録材に対して連続して画像形成を行う際に、前記トナー補給制御部は、画像形成制御部から、画像形成動作毎の前記現像剤担持体により像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像する時期を取得し、取得した前記時期により、前記現像時よりも、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時間分だけ早く前記現像装置に補給することができないタイミングとなるか否かを画像形成動作毎に判断し、前記現像時よりも、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時間分だけ早く前記現像装置に補給することができないタイミングとなる画像形成動作に対するトナー補給を保留する請求項3記載の画像形成装置。 【請求項5】 前記トナー補給制御部は、予め設定された単位時間あたりの上限補給量を超えない範囲で、前記保留したトナー補給を実行する請求項3又は4記載の画像形成装置。」 とする補正(以下「補正事項1」という。)を含んでいる(下線は補正箇所を示す。以下、同様。)。 (2)明細書について 本件補正は、明細書の段落【0010】を、 「【0010】 前記目的を達成する本発明に係る画像形成装置は、受信した画像情報に基づいて像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像し、現像されたトナー像を記録材に転写することで記録材に画像形成する画像形成装置であって、トナーとキャリアとを含む現像剤を表面に担持し、像担持体と対向する位置に現像剤を回転搬送して、像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像する現像剤担持体と、前記現像剤担持体と、現像剤を撹拌混合しながら搬送して前記現像剤担持体に供給する現像剤搬送手段とを有する現像装置と、前記現像装置の前記現像剤搬送手段の搬送領域に補給するトナーを収納したトナー収納部と、画像形成動作毎に、前記現像剤担持体の回転軸方向に所定間隔で複数に分割した仮想区域ごとに、受信した画像情報に基づいて前記像担持体に形成される当該静電潜像の現像のために消費されるトナー量を算出する算出手段と、前記トナー収納部から前記現像装置へのトナーの補給量および補給タイミングを制御するトナー補給制御部とを備え、前記トナー補給制御部は、前記算出手段によって算出された、各仮想区域において前記静電潜像の現像時に消費されるトナー量と同量のトナーを、前記現像時よりも、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時間分だけ早く前記現像装置に補給することを特徴とする。」 とする補正(以下「補正事項2」という。)を含んでいる。 2.補正の適否 (1)補正事項1について 補正事項1は、請求項1について、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「画像情報」に「受信した」との限定を付加するとともに、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「算出手段」について、補正前の「画像形成動作毎に画像情報から、前記現像剤担持体の回転軸方向に所定間隔で複数に分割した仮想区域ごとに、当該静電潜像の現像のために消費されるトナー量を算出する」を「画像形成動作毎に、前記現像剤担持体の回転軸方向に所定間隔で複数に分割した仮想区域ごとに、受信した画像情報に基づいて前記像担持体に形成される当該静電潜像の現像のために消費されるトナー量を算出する」と限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、補正事項1に係る補正に特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 そこで、本件補正後の請求項1ないし5に記載された発明(以下、それぞれ「本願補正発明1」ないし「本願補正発明5」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。 ア.引用例 (ア)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-092025号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 a.「【請求項1】 画像を示す画像データに基づき像担持体を露光することにより、該像担持体上に潜像を形成する露光手段と、 前記像担持体上の潜像をトナーを用いて現像する現像手段と、 トナーを補給するための補給スケジュールに基づき、前記現像手段にトナーを補給する補給手段と、 前記画像データから、該画像データを形成するために、前記現像手段の複数の位置の夫々における所定時間毎のトナー消費量を算出する算出手段と、 前記画像を形成する前の前記現像手段内のトナー量分布と、前記算出手段で算出した前記現像手段の複数の位置の夫々における所定時間毎のトナー消費量とから、前記画像の形成にともなう前記現像手段内のトナー量分布の変遷を予測する予測手段と、 前記予測手段で予測されたトナー量分布から前記画像の形成時における前記補給スケジュールを設定する設定手段と を有することを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】 前記現像手段は、現像室と撹拌室とを有し、 前記算出手段は、前記現像室の複数の位置のそれぞれにおける前記所定時間毎のトナー消費量を算出し、 前記予測手段は、前記画像を形成する前の前記現像室内のトナー量分布と、前記算出手段で算出した前記現像室の複数の位置の夫々における所定時間毎のトナー消費量と、該トナーの攪拌搬送による拡散具合に応じた係数とから、前記現像室の複数の位置および前記撹拌室の複数の位置のそれぞれにおける前記所定時間毎のトナー量を予測する ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 【請求項3】 前記設定手段は、前記予測手段により予測された、トナー補給口に相当する前記現像手段の位置に対する前記所定時間毎のトナー量から、前記補給スケジュールを設定する ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。」 b.「【0005】 ここで、従来の画像形成装置が具備する現像装置の概略構成、及びこの現像装置に使用されている従来の光学反射光量検知方式のトナー濃度検知センサの一例を、図12及び図4を用いて説明する。 (中略) 【0009】 現像室602は、像担持体501に対面した現像領域に相当する位置に開口部を有しており、この開口部に一部露出するようにして現像剤担持体としての現像スリーブ608が回転可能に配置されている。現像スリーブ608は、非磁性材料で構成され、現像動作時には図示矢印方向(図12)に回転し、その内部には、磁界発生部である磁石が固定されている。現像スリーブ608は、ブレードによって層厚規制されている2成分現像剤の層を担持搬送し、像担持体501と対向する現像領域で現像剤を像担持体501の潜像に付着させて現像する。現像効率、即ち、潜像へのトナーの付与率を向上させるために、現像スリーブ608には電源609から直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアス電圧が印加される。」 c.「【0026】 プリンタエンジン2は、プリンタエンジン制御部201、像担持体501、帯電装置502、露光装置503、現像装置504、濃度センサ505、転写装置506、清掃装置507、除電装置508、補給装置509から構成される。プリンタエンジン制御部201は、プリンタコントローラ1から入力される各種の情報に伴い、各装置(501?509)の駆動制御を行う。帯電装置502により電荷を帯びた像担持体501は、露光装置503により画像部を除電され潜像を形成する。像担持体501に形成された潜像は、現像装置504にてトナーが付着され、現像される。濃度センサ505は現像された画像の濃度を測定し、測定データは階調補正やトナー補給等の制御に用いられる。転写装置506は、像担持体501上のトナー画像を紙等の印刷媒体に転写する。トナー画像が転写された印刷媒体は、定着装置(不図示)を経てプリンタエンジン2から出力される。清掃装置507は像担持体501上に残った不要なトナーを清掃し、除電装置508は像担持体501上に残った電荷のムラを全面露光することで消失させ、次の印刷に備える。」 d.「【0031】 まず、プリンタコントローラ1は、外部装置3から入力されたプリントジョブを受け付け、プリントジョブ格納部101に格納する(ステップS401)。プリントジョブは、画像データ、印刷枚数、印刷順序、網点やカラープロファイル等の各種設定から構成される。プリントジョブ格納部101に格納されたプリントジョブは、逐次、トナー消費量算出部102と、画像処理部105へ出力される。 【0032】 次に、トナー消費量算出部102は、プリントジョブ格納部101から出力されたプリントジョブの内容を解析し、画像1枚毎に現像装置504の各位置における単位時間毎のトナー消費量を算出する(ステップS402)。図3は、印刷される画像と算出されるトナー消費量を示すテーブルの模式図である。図3(a)は、A4サイズであり、全面に均一な画素値を有する所謂ベタ画像の例である。本実施例では、画像を主走査方向に4分割、副走査方向に3分割の画像領域に分割し、分割されたそれぞれの画像領域において画素値を積算し、トナー消費量Tuse[mg]を算出する。尚、以降の説明を平易にするために、実施例1の画像形成装置は、入力画像データの画素値に比例してトナーを消費するものとする。トナー消費量は、各画素の画素値ni,j(i、jは、それぞれ縦横の座標)を用いて、以下の式により算出できる。」 e.「【0036】 図4(a)は実施例1の図1中の現像装置504を上方からみた模式図である。現像装置504は、感光体等の像担持体501に対向して配置されており、その内部は垂直方向に延在する隔壁601によって現像室(第1室)602と撹拌室(第2室)603とに区画されている。現像室602及び撹拌室603には、非磁性トナーと磁性キャリアを含む2成分現像剤が収容されている。 【0037】 現像室602にはそれぞれスクリュータイプの第1の現像剤撹拌・搬送部604が配置され、撹拌室603には第2の現像剤撹拌・搬送部605が配置されている。第1の現像剤撹拌・搬送部604は回転することにより、現像室602内の現像剤を撹拌搬送する。また、第2の現像剤撹拌・搬送部605には、補給装置509から、この第2の現像剤撹拌・搬送部605の上流側の上部に設けられたトナー補給口606(図4)を介してトナーが供給される。そして、第2の現像剤撹拌・搬送部605は回転することにより、供給されたトナーと既に撹拌室603内にある現像剤とを撹拌搬送する。これにより、トナー濃度を均一化する。」 f.「【0046】 図5は実施例1の印刷画像の一例と、この印刷画像を形成する際のある時間(単位時間)における、現像装置504内の位置とトナー消費量との関係を示す模式図である。図5中のA、B、C、Dは現像装置504内の位置を表しており、それぞれの位置は図4に示す現像装置504を簡略化した図4(b)に示す各点A、B、C、Dに対応している。点A?Bは現像スリーブ608が配置されている領域であるので、トナーが消費される。一方、点C?Dは第2の現像剤撹拌・搬送部605内の領域であるので、トナーは消費されない。 【0047】 図3(b)と(c)は同じ量のトナーを消費する画像であるが、画像内でトナーを使用する領域が異なる。図3(b)では主走査方向の右半分にトナー消費が集中するため、現像装置504内の現像スリーブ608にトナーを供給する領域の半分の領域(2、3)で集中的にトナーが消費される。一方、図3(c)では、現像装置504内の現像スリーブ608にトナーを供給する全領域(0?3)で平均的にトナーを消費するが、消費される時間が少ない。このように、画像のパターンによって現像装置504内のトナー量分布に与える影響が異なる。」 g.上記a.によれば、「現像手段」は「像担持体上の潜像をトナーを用いて現像」(【請求項1】)し、「現像室と撹拌室とを有」(【請求項2】)する一方、上記c.及びe.によれば、「現像装置」は「像担持体501に形成された潜像は、現像装置504にてトナーが付着され、現像され」(段落【0026】)、「その内部は垂直方向に延在する隔壁601によって現像室(第1室)602と撹拌室(第2室)603とに区画されている」(段落【0036】)と記載されている。そうすると、「現像手段」及び「現像装置504」はともに像担持体上の潜像をトナーを用いて現像し、現像室と撹拌室とを有するものであるから、「現像手段」は「現像装置504」を指すといえる。 h.上記a.によれば、「補給手段」は「現像手段にトナーを補給する」(【請求項2】)一方、上記e.によれば、「撹拌室603には第2の現像剤撹拌・搬送部605が配置され」、「第2の現像剤撹拌・搬送部605には、補給装置509から、この第2の現像剤撹拌・搬送部605の上流側の上部に設けられたトナー補給口606(図4)を介してトナーが供給される」(段落【0037】)。そうすると、「補給手段」及び「補給装置509」はともに現像手段にトナーを補給するものであるから、「補給手段」は「補給装置509」を指すといえる。 i.上記b.の「従来の画像形成装置が具備する現像装置」において「現像室602は、像担持体501に対面した現像領域に相当する位置に開口部を有しており、この開口部に一部露出するようにして現像剤担持体としての現像スリーブ608が回転可能に配置されている。現像スリーブ608は、非磁性材料で構成され、現像動作時には図示矢印方向(図12)に回転し、その内部には、磁界発生部である磁石が固定されている。現像スリーブ608は、ブレードによって層厚規制されている2成分現像剤の層を担持搬送し、像担持体501と対向する現像領域で現像剤を像担持体501の潜像に付着させて現像する」と記載され図12に図示された従来の「現像スリーブ608」は、上記f.に記載されるとともに図1に図示された「現像スリーブ608」と整合するものであって、上記b.の記載及び図1と図12との対応関係を踏まえると、図1からは、現像装置は、回転可能に配置されて、現像剤の層を担持搬送し、像担持体と対向する現像領域で現像剤を像担持体の潜像に付着させて現像する現像剤担持体としての現像スリーブを有することが看取できる。 上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「プリンタコントローラは、外部装置から入力されたプリントジョブを受け付け、 プリントジョブは、画像データ、印刷枚数、印刷順序、網点やカラープロファイル等の各種設定から構成され、 転写装置は、像担持体上のトナー画像を紙等の印刷媒体に転写し、 画像を示す画像データに基づき像担持体を露光することにより、該像担持体上に潜像を形成する露光手段と、 前記像担持体上の潜像をトナーを用いて現像する現像手段と、 トナーを補給するための補給スケジュールに基づき、前記現像手段にトナーを補給する補給手段と、 前記画像データから、該画像データを形成するために、前記現像手段の複数の位置の夫々における所定時間毎のトナー消費量を算出する算出手段と、 前記画像を形成する前の前記現像手段内のトナー量分布と、前記算出手段で算出した前記現像手段の複数の位置の夫々における所定時間毎のトナー消費量とから、前記画像の形成にともなう前記現像手段内のトナー量分布の変遷を予測する予測手段と、 前記予測手段で予測されたトナー量分布から前記画像の形成時における前記補給スケジュールを設定する設定手段とを有し、 前記現像手段は、現像室と撹拌室とを有し、 現像室及び撹拌室には、非磁性トナーと磁性キャリアを含む2成分現像剤が収容され、 撹拌室には第2の現像剤撹拌・搬送部が配置され、第2の現像剤撹拌・搬送部には、補給手段から、この第2の現像剤撹拌・搬送部の上流側の上部に設けられたトナー補給口を介してトナーが供給され、第2の現像剤撹拌・搬送部は回転することにより、供給されたトナーと既に撹拌室内にある現像剤とを撹拌搬送し、 現像手段は、回転可能に配置されて、現像剤の層を担持搬送し、像担持体と対向する現像領域で現像剤を像担持体の潜像に付着させて現像する現像剤担持体としての現像スリーブを有し、 前記算出手段は、前記現像室の複数の位置のそれぞれにおける前記所定時間毎のトナー消費量を算出し、 画像を主走査方向に4分割、副走査方向に3分割の画像領域に分割し、分割されたそれぞれの画像領域において画素値を積算し、トナー消費量を算出し、 前記予測手段は、前記画像を形成する前の前記現像室内のトナー量分布と、前記算出手段で算出した前記現像室の複数の位置の夫々における所定時間毎のトナー消費量と、該トナーの攪拌搬送による拡散具合に応じた係数とから、前記現像室の複数の位置および前記撹拌室の複数の位置のそれぞれにおける前記所定時間毎のトナー量を予測し、 前記設定手段は、前記予測手段により予測された、トナー補給口に相当する前記現像手段の位置に対する前記所定時間毎のトナー量から、前記補給スケジュールを設定する画像形成装置。」 (イ)引用例2 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2007-292802号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「【0049】 また、本発明の画像形成装置は、上記記載の画像形成装置において、制御手段からの制御信号に基づいて、現像剤を交換するための処理を実行する現像剤交換手段をさらに備えていることが好ましい。」 b.「【0051】 また、本発明の画像形成装置は、上記記載の画像形成装置において、上記現像剤を上記現像ユニットから回収する回収ユニットと、未使用の現像剤を収容すると共に上記現像ユニットに該未使用の現像剤を供給する供給ユニットとをさらに備え、上記現像剤交換手段は、所定量の現像剤を上記現像ユニットから上記回収ユニットに回収させた後、該回収された現像剤と同一量の現像剤を上記供給ユニットから上記現像ユニットに供給させることが好ましい。 【0052】 上記構成によると、上記回収ユニットが所定量の現像剤を上記現像ユニットから回収した後、上記供給ユニットが該回収された現像剤と同一量の現像剤を上記現像ユニットに供給する。これにより、回収した現像剤と同一量の未使用の現像剤を供給するため、常に現像ユニットに収容された現像剤の量は略一定となり、現像ユニット内部における攪拌ストレスが一定となる。そのため、トナーの帯電量を安定させることができる共に、現像剤担持体表面において均一な磁気ブラシを形成できるため、良質で安定した画像の形成を維持することができる。」 上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「制御手段からの制御信号に基づいて、現像剤を交換するための処理を実行する現像剤交換手段を備え、 現像剤を現像ユニットから回収する回収ユニットと、未使用の現像剤を収容すると共に上記現像ユニットに該未使用の現像剤を供給する供給ユニットとをさらに備え、上記現像剤交換手段は、所定量の現像剤を上記現像ユニットから上記回収ユニットに回収させた後、該回収された現像剤と同一量の現像剤を上記供給ユニットから上記現像ユニットに供給させ、 回収した現像剤と同一量の未使用の現像剤を供給するため、常に現像ユニットに収容された現像剤の量は略一定となる 画像形成装置。」 (ウ)引用例3 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭54-101330号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「1.記録体上に静電潜像を形成した後、乾式現像装置によって現像し、トナー像を転写紙に転写する型式の電子複写装置において、転写紙上のトナー像を定着させる加熱定着ローラー装置と、トナーとキャリヤとから成る2成分現像剤を使用した乾式現像装置とを有し、連続複写時に転写紙上の画像濃度を上記加熱定着ローラー装置の定着下限温度にあわせて変化させるようにしたことを特徴とする電子複写装置。」(第1ページ左下欄第4?12行) b.「同じ装置を用いて、連続複写のためプリセットカウンターを操作すると、それに応動してトナー補給装置とトナー濃度検知装置との電気的接続を断にしてトナーの補給が行われないように構成し複写を行った。この時定着ローラーのシリコンゴム表面は155℃まで下がったが、画像濃度が定着下限温度Tl以上となるように制御されたので定着不良は発生しなかった。もちろん、転写紙上の画像は濃度的には問題とはならなかった。 なお、第5図において、連続複写終了後、機械を直ちに停止してしまうと、トナー濃度は低下したままであり、次に通常の複写を行う時十分な画像濃度の画像を得ることが出来ないので、連続複写の終了後は直ちに複写装置は停止せず、一定時間後に停止させるようにし、その間にトナー補給動作を行って出来る丈、元のトナー濃度に戻すように構成する。」(第4ページ左上欄第19行?右上欄第15行) 上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「記録体上に静電潜像を形成した後、乾式現像装置によって現像し、トナー像を転写紙に転写する型式の電子複写装置において、 連続複写のためプリセットカウンターを操作すると、それに応動してトナー補給装置とトナー濃度検知装置との電気的接続を断にしてトナーの補給が行われないように構成し、 連続複写の終了後は直ちに複写装置は停止せず、一定時間後に停止させるようにし、その間にトナー補給動作を行って出来る丈、元のトナー濃度に戻すように構成した 電子複写装置。」 イ.対比 本願補正発明1と引用発明1とを対比する。 後者の「像担持体」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「像担持体」に相当し、同様に、「潜像」は「静電潜像」に、「トナー」は「トナー」に、「トナー画像」は「トナー像」に、「印刷媒体」は「記録材」に、「磁性キャリア」は「キャリア」に、「現像剤」は「現像剤」に、「現像剤担持体としての現像スリーブ」は「現像剤担持体」に、「第2の現像剤撹拌・搬送部」は「現像剤搬送手段」に、「現像手段」は「現像装置」に、「画像領域」は「仮想区域」に、「トナー消費量」は「消費されるトナー量」に、「算出手段」は「算出手段」に、「補給スケジュール」は「補給タイミング」にそれぞれ相当する。 後者においては「プリンタコントローラは、外部装置から入力されたプリントジョブを受け付け、プリントジョブは、画像データ、印刷枚数、印刷順序、網点やカラープロファイル等の各種設定から構成され」るから、後者の「画像データ」は「外部装置から入力されたプリントジョブ」に含まれるものであって、前者の「受信した画像情報」に相当する。 後者の「画像形成装置」は「画像を示す画像データに基づき像担持体を露光することにより、該像担持体上に潜像を形成」し、「像担持体上の潜像をトナーを用いて現像」し、「転写装置は、像担持体上のトナー画像を紙等の印刷媒体に転写」するから、前者の「画像情報に基づいて像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像し、現像されたトナー像を記録材に転写することで記録材に画像形成する画像形成装置」に相当する。 後者の「現像剤」は「非磁性トナーと磁性キャリアを含む2成分現像剤」であるから、後者の「回転可能に配置されて、現像剤の層を担持搬送し、像担持体と対向する現像領域で現像剤を像担持体の潜像に付着させて現像する現像剤担持体としての現像スリーブ」は、前者の「トナーとキャリアとを含む現像剤を表面に担持し、像担持体と対向する位置に現像剤を回転搬送して、像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像する現像剤担持体」に相当する。 後者の「現像手段」は「現像室と撹拌室とを有し」、「撹拌室には第2の現像剤撹拌・搬送部が配置され、第2の現像剤撹拌・搬送部には、補給手段から、この第2の現像剤撹拌・搬送部の上流側の上部に設けられたトナー補給口を介してトナーが供給され、第2の現像剤撹拌・搬送部は回転することにより、供給されたトナーと既に撹拌室内にある現像剤とを撹拌搬送」するものである。また、回転可能に配置されて、現像剤の層を担持搬送し、像担持体と対向する現像領域で現像剤を像担持体の潜像に付着させて現像する現像剤担持体としての現像スリーブを有」するから、第2の現像剤撹拌・搬送部が搬送した現像剤が現像剤担持体に供給されることは明らかである。そうすると、後者の当該「現像手段」は、前者の「前記現像剤担持体と、現像剤を撹拌混合しながら搬送して前記現像剤担持体に供給する現像剤搬送手段とを有する現像装置」に相当する。 後者においては、「撹拌室には第2の現像剤撹拌・搬送部が配置され、第2の現像剤撹拌・搬送部には、補給手段から、この第2の現像剤撹拌・搬送部の上流側の上部に設けられたトナー補給口を介してトナーが供給され」るのだから、後者が供給するトナーを収容するものを有していることは明らかであって、このものは前者の「前記現像装置の前記現像剤搬送手段の搬送領域に補給するトナーを収納したトナー収納部」に相当する。 後者においては、「画像を主走査方向に4分割、副走査方向に3分割の画像領域に分割し、分割されたそれぞれの画像領域において画素値を積算し、トナー消費量を算出」するから、後者がトナー消費量を算出する手段を有していることは明らかである。また、上述の「画像データ」と同様に後者における「画像」は前者の「受信した画像情報」に相当し、後者においてトナーが像担持体に形成される潜像の現像のために消費されることも明らかであるから、後者の当該手段は、前者の「画像形成動作毎に、前記現像剤担持体の回転軸方向に所定間隔で複数に分割した仮想区域ごとに、受信した画像情報に基づいて前記像担持体に形成される当該静電潜像の現像のために消費されるトナー量を算出する算出手段」に相当する。 後者においては「設定手段は、前記予測手段により予測された、トナー補給口に相当する前記現像手段の位置に対する前記所定時間毎のトナー量から、前記補給スケジュールを設定する」から、「補給スケジュール」は「所定時間毎のトナー量」を含むといえ、また、「補給スケジュール」は前者の補給の「タイミング」に相当するものである。そして、「トナー収納部」については上述のとおりであるから、後者の「トナーを補給するための補給スケジュールに基づき、前記現像手段にトナーを補給する補給手段」は、前者の「前記トナー収納部から前記現像装置へのトナーの補給量および補給タイミングを制御するトナー補給制御部」に相当する。 したがって、両者は、 「受信した画像情報に基づいて像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像し、現像されたトナー像を記録材に転写することで記録材に画像形成する画像形成装置であって、 トナーとキャリアとを含む現像剤を表面に担持し、像担持体と対向する位置に現像剤を回転搬送して、像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像する現像剤担持体と、 前記現像剤担持体と、現像剤を撹拌混合しながら搬送して前記現像剤担持体に供給する現像剤搬送手段とを有する現像装置と、 前記現像装置の前記現像剤搬送手段の搬送領域に補給するトナーを収納したトナー収納部と、 画像形成動作毎に、前記現像剤担持体の回転軸方向に所定間隔で複数に分割した仮想区域ごとに、受信した画像情報に基づいて前記像担持体に形成される当該静電潜像の現像のために消費されるトナー量を算出する算出手段と、 前記トナー収納部から前記現像装置へのトナーの補給量および補給タイミングを制御するトナー補給制御部とを備える画像形成装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 前者のトナー補給制御部が、「算出手段によって算出された、各仮想区域において静電潜像の現像時に消費されるトナー量と同量のトナーを、現像時よりも、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時間分だけ早く前記現像装置に補給する」のに対して、後者は、そのようなものでない点。 ウ.判断 上記相違点について検討する。 引用発明2の「現像剤」は、本願補正発明1の「トナー」に相当する。 引用発明2の「現像剤交換手段」は、「所定量の現像剤を上記現像ユニットから上記回収ユニットに回収させた後、該回収された現像剤と同一量の現像剤を上記供給ユニットから上記現像ユニットに供給させ、回収した現像剤と同一量の未使用の現像剤を供給するため、常に現像ユニットに収容された現像剤の量は略一定となる」から、本願補正発明1の「算出手段によって算出された、各仮想区域において静電潜像の現像時に消費されるトナー量と同量のトナーを、現像時よりも、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時間分だけ早く前記現像装置に補給する」ものである「トナー補給制御部」とは、「トナー量と同量のトナーを補給する」との概念で共通する。 しかしながら、引用発明2の「現像剤交換手段」は、「現像剤を交換するための処理を実行する」ものであるから、その「回収された現像剤」は「現像剤を交換する」際に回収されるものであって、本願補正発明1のように「静電潜像の現像時に消費される」ものではない。 そうすると、引用発明2は本願補正発明1の「静電潜像の現像時に消費される」トナー量と同量のトナーを現像装置に補給するとの発明特定事項を備えるものではない。また、引用発明2は現像時にトナーを補給するものではないから、本願補正発明1の「トナーを、現像時よりも、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時間分だけ早く現像装置に補給する」との発明特定事項も備えていない。 したがって、引用発明1において引用発明2を参酌しても、上記相違点に係る本願補正発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。 また、上記相違点に係る本件補正発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 そして、本願補正発明1は、上記相違点に係る本願補正発明1の発明特定事項を備えることによって、本願明細書に記載の「本発明の画像形成装置では、現像剤担持体の回転軸方向に所定間隔で複数に分割した仮想区域ごとに、画像が形成される際に消費されるトナー量を予め算出し、そして、仮想区域ごとに算出されたトナー量を、現像時よりも、トナー収納部から補給されたトナーが各仮想区域まで搬送される時間分だけ早く現像手段に補給するので、現像手段内のトナー濃度の低下に起因する画像濃度低下や過剰なトナー補給によるトナー飛散を防止できる。」(段落【0015】)という作用効果を奏するものである。 また、引用発明3も、上記相違点に係る本願補正発明1の発明特定事項を備えるものではない。 したがって、本願補正発明1は、当業者が引用発明1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願補正発明2ないし5は、本願補正発明1をさらに限定したものである。すると、本補正願発明2ないし5は、本補正願発明1と同様に、当業者が引用発明1ないし3に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、本件補正の補正事項1は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 (2)補正事項2について 補正事項2は、補正事項1に伴って特許請求の範囲の記載との整合を図るため、明細書の段落【0010】を補正するものである。 したがって、補正事項2は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、補正事項2に係る補正に特許法第17条の2第3項及び第4項に違反するところはない。 3.まとめ 本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし5に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される、上記第2の1.(1)に記載したとおりのものである そして、本願の請求項1ないし5に係る発明は上記第2の2.(1)のとおり、当業者が引用発明1ないし3に基づいて容易に発明することができたものではない。 したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-12-05 |
出願番号 | 特願2013-113534(P2013-113534) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WY
(G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 齋藤 卓司、田代 憲司 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 森次 顕 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 山田 茂樹 |