• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01B
管理番号 1335051
審判番号 不服2017-4057  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-21 
確定日 2017-12-22 
事件の表示 特願2015- 82530「角度測定方法及び角度測定システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月20日出願公開、特開2015-148627、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成22年10月27日
(特願2010-241174号の分割出願である特願2014-239656号の分割出願)
拒絶査定: 平成28年12月16日(送達日:同年同月20日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成29年3月21日


第2 原査定の概要
原査定(平成28年12月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1(サポート要件)について
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

・請求項 1-2
請求項1-2には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1-2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなるから、請求項1-2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
意見書では「回転角度を補正する手段については、本願明細書に記載された実施形態のように外付けの外部装置(データ処理装置12)で実施する態様もあることを考慮すると、発明の課題を解決するための手段として含めることは必ずしも必要とするものではない」との主張がなされているが、
光学式位置確認手段により検出した、被測定物の回転軸に対する角度検出手段の回転軸の偏心量に基づいて、回転角度を補正する、という発明の課題を解決するための手段が、請求項1-2の記載に反映されていなければ、請求項1-2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる(特許・実用新案審査基準第II部第2章第2節の2.2(4)、3.1.2、3.2.2等を参照されたい。)。なお、「外付けの外部装置(データ処理装置12)」は、明細書を参照する限り、請求項1に係る角度測定システムと対応すると思われる「角度測定システム100」等の構成要素の一つである。また、請求項2に係る角度測定方法については、「回転角度を補正する手段」が「外付けの外部装置(データ処理装置12)」か否かは関係がない。
また、「角度検出手段が被測定物に取り付けられることは自明である・・・ことを考慮すると、発明の課題を解決するための手段として含めることは必ずしも必要とするものではない」とも主張されているが、
被測定物に角度検出手段を取り付ける、という発明の前提が請求項1-2の記載で明確に特定されなければ、被測定物にロータリエンコーダを取り付ける際に、被測定物の回転軸とロータリエンコーダの回転軸との偏心が生じ、その偏心に因り測定誤差が発生する、という課題も発生し得ない。

理由2(明確性)について
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・請求項 1-2
明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、請求項1-2に係る発明における、支持基準体に接触せずに支持基準体の位置を光学的に検出することの技術的意味を理解することができず、請求項1-2の記載から発明を明確に把握することができないから、請求項1-2に係る発明は明確でない。
意見書では「本願の請求項1-2に係る発明は、・・・角度検出手段によって検出した駆動回転体の支持基準体に対する回転角度を、光学式位置確認手段によって検出した支持基準体の位置に基づいて補正することができ、駆動回転体の回転角度を精度良く検出することが可能となる・・・上述しましたように、請求項1-2に係る発明における、支持基準体に接触せずに支持基準体の位置を光学的に検出することの技術的意味も明確なものと考えます。」との主張がなされているが、
角度検出手段によって検出した駆動回転体の支持基準体に対する回転角度を、光学式位置確認手段によって検出した支持基準体の位置に基づいて補正する、という点は、請求項1、2に記載されているわけではない(特許・実用新案審査基準第II部第2章第3節の2.2(2)b等を参照されたい。)。なお、「角度検出手段によって検出した駆動回転体の支持基準体に対する回転角度を、光学式位置確認手段によって検出した支持基準体の位置に基づいて補正する」と一般化することにも疑義がある(明細書で開示されたものは、あくまでも、光学式位置確認手段により検出した支持基準体の位置から算出される、被測定物の回転軸に対する角度検出手段の回転軸の偏心量に基づいて、回転角度を補正する、というものである。)。

理由3(進歩性)について
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1-2
・引用文献等 1-3
引用文献等一覧
1.特開平11-51702号公報
2.特開平2-128117号公報
3.特開昭61-118614号公報(周知技術を示す文献)


第3 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、出願時の特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
回転駆動する駆動回転体と、前記駆動回転体を支持する支持基準体とを有し、前記駆動回転体の前記支持基準体に対する回転角度を検出する角度検出手段と、
前記支持基準体に接触せずに前記支持基準体の位置を光学的に検出する光学式位置確認手段と、
を備える角度測定システム。
【請求項2】
支持基準体に支持され回転駆動する駆動回転体の前記支持基準体に対する回転角度を検出する角度検出ステップと、
前記支持基準体に接触せずに前記支持基準体の位置を光学的に検出する光学式位置確認ステップと、
を備える角度測定方法。」


第4 理由1についての検討
本願の請求項1及び2には、「前記支持基準体に接触せずに前記支持基準体の位置を光学的に検出する光学式位置確認」手段もしくはステップが含まれており、これは発明の詳細な説明に記載されている、「光学式位置確認手段により検出した、被測定物の回転軸に対する角度検出手段の回転軸の偏心量に基づいて、回転角度を補正する」ことを可能とする位置情報を得るための手段もしくはステップであると認められるから、請求項1-2には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されており、請求項1-2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲内のものといえる。
したがって、請求項1-2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。


第5 理由2についての検討
本願の請求項1及び2には、「前記支持基準体に接触せずに前記支持基準体の位置を光学的に検出する光学式位置確認」手段もしくはステップが含まれており、これらの手段もしくはステップ自体の構成は明確である。
そうすると、請求項1及び2の記載自体は明確であるといえるから、その技術的意味を考えるまでもなく、請求項1-2に係る発明は明確である。

第6 理由3についての検討
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平11-51702号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、角度検出装置に係り、さらに詳しくは、回転体の周面又は端面に円周方向に配列された所定ピッチの明暗のパターンを用いて回転体の回転角を検出する角度検出装置に関する。」

「【0012】図1には、第1の実施形態に係る角度検出装置が取り付けられた望遠鏡の一部が示されている。この図1において、望遠鏡の鏡筒102を支持する一方の支軸11が固定部100に不図示の軸受けを介して回転軸X-X回りに回動可能に支持されている。鏡筒102は、例えば直径約8mの光学系(図示省略)を保持しており、この光学系の光軸の方向は、図1におけるほぼ紙面上下方向となっている。前記支軸11の一端(図1における右端)には、支軸11より一回り大きな外径を有する回転体としての目盛ドラム12が図1における右側から被せられた状態で複数本のボルト104によって固定されている。このため、支軸11及び目盛ドラム12が一体的に回転軸X-X回りに回動すると、支軸11に支持された鏡筒102が回転軸X-Xに直交する面内方向で起伏回動するような構成になっている。
【0013】目盛ドラム12の図1における上側の外周面に対向して、検出ユニット13がボルト106によって固定部100に固定されている。目盛ドラム12と検出ユニット13との間には、微少寸法のクリアランスが設定されており、これら目盛ドラム12と検出ユニット13とによって本発明に係る角度検出装置10が構成されている。この角度検出装置10は、前記鏡筒102の傾きを調整して該鏡筒102に保持された光学系の光軸方向を所定の方位に設定するために、目盛ドラム12の回転角ひいては支軸11の回転角を検出するためのものである。
【0014】図2には、角度検出装置10の概略構成が示されている。この角度検出装置10を構成する回転体としての目盛ドラム12には、その外周面に周方向に沿って帯状の金属テープ14が貼り付けられ、この金属テープ14の表面には、図3に拡大して示されるようなピッチPの明暗パターン(ラインアンドスペースパターン又はインクリメンタルパターン)から成る目盛格子15が形成されている。この目盛格子15は、光の反射率の大きな金のベースの表面に所定間隔(ピッチPの間隔)で光を拡散反射する部分をエッチングにより形成したものである。
【0015】前記検出ユニット13の内部には、図2に示されるように、前記目盛格子15に所定方向から光を斜めに照射する光源部16と、前記光の照射により金属テープ14表面の目盛格子15から生ずる反射光(検出光)を走査板20を介して受光する検出器18と、目盛ドラム12の周面の基準位置(ここでは、測定開始時点の位置を基準位置とする)からの変位を検出する、変位に応じた変位信号を出力する変位検出部としての斜入射光式の位置検出系22とが設けられている。」

上記記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「支軸11及び支軸11の一端に固定されている支軸11より一回り大きな外径を有する回転体としての目盛ドラム12と、軸受けを介して回転軸X-X回りに回動可能に支軸11を支持する固定部100とを有し、固定部100に固定されている検出ユニット13と目盛ドラム12とによって構成されて、目盛ドラム12の回転角ひいては支軸11の回転角を検出する角度検出装置10と、(【0012】、【0013】参照。)
目盛ドラム12の周面の基準位置からの変位を検出する変位検出部としての斜入射光式の位置検出系22と、(【0015】参照。)
を備える回転体の回転角を検出する角度検出装置(【0001】参照。)。」

(2)引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平2-128117号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【特許請求の範囲】
回転軸に固定されたメインスケールと、このメインスケールに対向してハウジングに対し固定されたインデックススケールと、上記メインスケールとインデックススケールの両側に相対向してそれぞれ配設された発光素子および受光素子とを備えた光学式ロータリエンコーダにおいて、上記インデックススケールを円板状に形成し、このインデックススケールの円周方向に複数種類のスリット窓群を、群相互間のスリット窓のピッチを互いに異ならせて配設し、インデックススケールを上記ハウジングに直接固定したことを特徴とする光学式ロータリエンコーダ。」

(3)引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開昭61-118614号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「制御機械の回転部品の回転角度などの位置を検出する手段として、ロータリエンコーダがある。・・・ところがコードホイールが偏心して回転されると、その位相差が90°からずれてしまう。」(第1頁右欄第7行目?第2頁左上欄第11行)

2 対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「支軸11及び支軸11の一端に固定されている支軸11より一回り大きな外径を有する回転体としての目盛ドラム12」は、本願発明1の「回転駆動する駆動回転体」に相当し、引用発明の「軸受けを介して回転軸X-X回りに回動可能に支軸11を支持する固定部100」は、本願発明1の「駆動回転体を支持する支持基準体」に相当するから、引用発明の「固定部100に固定されている検出ユニット13と目盛ドラム12とによって構成されて、目盛ドラム12の回転角ひいては支軸11の回転角を検出する角度検出装置10」は、本願発明1の「前記駆動回転体の前記支持基準体に対する回転角度を検出する角度検出手段」に相当するといえる。
また、引用発明の「斜入射光式の位置検出系22」は、本願発明1の「位置を光学的に検出する光学式位置確認手段」に相当するから、引用発明の「目盛ドラム12の周面の基準位置からの変位を検出する変位検出部としての斜入射光式の位置検出系22」と、本願発明1の「前記支持基準体に接触せずに前記支持基準体の位置を光学的に検出する光学式位置確認手段」とは、共に「対象の位置を光学的に検出する光学式位置確認手段」である点で共通するといえる。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「回転駆動する駆動回転体と、前記駆動回転体を支持する支持基準体とを有し、前記駆動回転体の前記支持基準体に対する回転角度を検出する角度検出手段と、
対象の位置を光学的に検出する光学式位置確認手段と、
を備える角度測定システム。」

(相違点)
相違点1:本願発明1の光学式位置確認手段は、「支持基準体に接触せずに前記支持基準体の位置を光学的に検出する光学式位置確認手段」であるのに対し、引用発明の有するものは「目盛ドラム12の周面の基準位置からの変位を検出する変位検出部としての斜入射光式の位置検出系22」であって、固定部100(支持基準体に相当)の位置を検出するものではない点。

イ 相違点についての判断
相違点1に係る本願発明1の「支持基準体に接触せずに前記支持基準体の位置を光学的に検出する光学式位置確認手段」という構成は、上記引用文献2,3には記載も示唆もされていない。
また、引用発明における「固定部100」は、角度検出の対象でもある「支軸11」を回動可能に支持するものであって、該角度検出の基準とされる構造体であるから、当業者が位置検出の対象として通常想定するものであるともいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「支持基準体に接触せずに前記支持基準体の位置を光学的に検出する光学式位置確認手段」に対応する構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定について
1 理由1(特許法第36条第6項第1号)について
上記「第4 理由1についての検討」において述べたように、請求項1-2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないということはできない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2(特許法第36条第6項第2号)について
上記「第5 理由2についての検討」において述べたように、請求項1-2に係る発明は明確である。
したがって、原査定の理由2を維持することはできない。

3 理由3(特許法第29条第2項)について
上記「第6 理由3についての検討」において述べたように、請求項1-2に係る発明は、当業者であっても、引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由3を維持することはできない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-12 
出願番号 特願2015-82530(P2015-82530)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G01B)
P 1 8・ 121- WY (G01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 ▲うし▼田 真悟
中塚 直樹
発明の名称 角度測定方法及び角度測定システム  
代理人 松浦 憲三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ