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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1335074
審判番号 不服2015-10465  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-03 
確定日 2017-12-14 
事件の表示 特願2013- 55183「NK細胞活性化剤」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月 5日出願公開、特開2013-173746〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成16年7月9日(優先日:平成15年12月12日、特願2003-414258号)を出願日とする特願2004-203601号の一部を平成22年10月13日に新たな出願(特願2010-230889号)とし、さらにその一部を平成25年3月18日に新たな出願としたものであって、平成26年5月21日付け拒絶理由通知に応答して平成26年7月15日付けで意見書が提出されたが、平成27年2月23日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成27年6月3日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判請求と同時に手続補正がなされ、平成27年7月16日付けで請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出され、平成27年9月10日付けで前置報告がなされた。
その後、前合議体からの平成28年5月26日付け拒絶理由通知に応答して平成28年7月26日付けで手続補正書及び意見書が提出された。

2.特許法第30条第1項の規定の適用の可否

特許法第30条は平成23年に改正された(平成23年改正法の施行日:平成24年4月1日)が、「平成23年 特許法等の一部を改正する法律」の附則第2条第1項の「第1条の規定による改正後の特許法(以下「新特許法」という。)第30条の規定は、・・・この法律の施行の日前にした特許出願に係る発明については、なお従前の例による。」との規定、及び附則第2条第2項の「当該優先権の主張の基礎とされた同項に規定する先の出願がこの法律の施行の日前にされたものであるときは、・・・なお従前の例による。」との規定に従い、平成11年改正特許法の第30条第1項の規定の適用の可否について、以下に検討する。
請求人は、本願(特願2013-55183、出願日:平成25年3月18日)について、その出願と同時に「特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面」を特許庁長官に提出していない。
請求人は、本願の原出願(特願2010-230889号、出願日:平成22年10月13日)について、その出願と同時に「特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面」を特許庁長官に提出していない。
請求人は、本願の原出願の原出願であり、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う特許出願である特願2004-203601号(出願日:平成16年7月9日、以下、「出願A」という。)について、その出願と同時に「特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面」を特許庁長官に提出していない。
「出願A」は、平成15年12月12日を出願日とする特願2003-414258号(以下、「基礎出願X」という。)を「先の出願」とする、特許法第41条第1項の優先権主張(いわゆる「国内優先権主張」)を伴う特許出願である。
請求人は、「基礎出願X」について、その出願と同時に「特許法第30条第1項の規定の適用を受けようとする旨を記載した書面」を特許庁長官に提出した(「基礎出願X」の願書に【特記事項】として記載した)。そして、「基礎出願X」の出願日から30日以内である平成15年12月16日に、同法第30条第1項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面(いわゆる「新規性の喪失の例外証明書」)として、刊行物A(「糖質工学によるアプローチ 炭水化物の多面的利用技術の展開」、ニューフード・クリエイション技術研究組合、2003年11月20日、第172-189頁)を特許庁長官に提出した。
このような場合、「出願A」について、同法第30条第1項の規定の適用が受けられるかについて、以下に検討する。
平成11年改正特許法の第30条第4項には「第1項又は前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第29条第1項各号の一に該当するに至った発明が第1項又は前項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を特許出願の日から30日以内に特許庁長官に提出しなければならない。」という手続が規定されている。
ここで、特許法第30条の規定の趣旨は、「特許出願に係る発明が、同法第29条第1項各号に該当する場合、その発明は新規性を喪失するが、この原則を貫くと、発明者に対して酷な結果を強いることになり、また、産業の発達を目的とする法の趣旨にそわないことがあるため、この原則に対する例外を認める措置を設けた。」というものである。
そして、具体的に同法第30条第1項ないし第3項に規定する理由により公知となったような例外的な場合には、当該発明の新規性は喪失されないものとし、他方、同法第30条第1項ないし第3項による救済的措置は、原則に対する例外であるから、同法第30条第1項ないし第3項の適用を受けるために、同法第30条第4項に規定される手続要件が定められた。
このような特許法第30条の規定の趣旨からみると、同法第30条第4項に規定される所定の手続が履践されない場合に、新規性喪失の原則に対する例外である同法第30条第1項ないし第3項による救済的措置を受けることはできず、また、特許出願において、同法第30条第4項に規定される所定の手続を何ら履践しなかったにもかかわらず、その手続を追完することによって同法第30条第1項ないし第3項の適用を受けることは許されない(要すれば、東京地裁平成13年(行ウ)第284号、平成14年5月22日判決を参照のこと)。
さらに、平成11年改正特許法の第41条第2項には、「前項の規定による優先権の主張を伴う特許出願に係る発明のうち、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面・・・に記載された発明・・・についての第29条第29条の2本文、第30条第1項から第3項まで、第39条第1項から第4項まで・・・の規定の適用については、当該特許出願は、当該先の出願の時になされたものとみなす。」(なお、下線は当審合議体が付加した。以下同様である。)と規定されているが、同法第41条第2項には、上記「出願A」の出願と同時に履践されるべき同法第30条第4項に規定される所定の手続が、「基礎出願X」の出願時になされたものとみなすことは規定されていない。
そうすると、請求人は、「出願A」について、その出願と同時に同法第30条第4項に規定される「その旨を記載した書面」を特許庁長官に提出せず、同法第30条第4項に規定される手続要件を満たさなかったのであるから、「出願A」について同法第30条第1項の規定の適用を受けることはできない。
次に、「本願の原出願」である特願2010-230889号(出願日:平成22年10月13日)について、同法第30条第1項の規定の適用の可否を検討する。
平成11年改正特許法の第44条第1項の規定による特許出願(いわゆる分割出願)について、同法第44条第4項に「第1項に規定する新たな特許出願をする場合には、もとの特許出願について提出された書面又は書類であって、新たな特許出願について第30条4項第41条第4項又は第43条第1項及び第3項(前条第3項において準用する場合を含む。)の規定により提出しなければならないものは、当該新たな特許出願と同時に特許庁長官に提出されたものとみなす。」と規定されているが、上記のように「出願A」の出願と同時に同法第30条第4項に規定される「その旨を記載した書面」が特許庁長官に提出されなかったのであるから、「出願A」の一部を新たな出願としたものである「本願の原出願」は、同法第30条第1項の規定の適用を受けることはできない。
同様の理由により、「本願の原出願」の一部を新たな出願とした特許出願である本願(特願2013-55183号、出願日:平成25年3月18日)が、同法第30条第1項の規定の適用を受けることはできないことは明らかである。

なお、請求人は、同法第30条第1項の規定の適用の可否について、平成27年7月16日付けで補正された請求の理由及び平成28年7月26日付け意見書において、以下のように主張している。
「特許法第41条2項には「第30条第1項から第3項まで」の規定の運用について、当該特許出願(「出願A」)は、当該先の出願時(「基礎出願X」の出願時)にされたものとみなす旨が規定されているのであるから、「出願A」を出願する際にすべき同法第30条第4項の手続は、文理上、「基礎出願X」の時にしたものとみなされると解さざるを得ない。
そうすると、「基礎出願X」の出願時に同法第30条第4項の手続がなされている以上、「出願A」が満たすべき同法第30条第4項の要件は「基礎出願X」の出願時に既に満たされていることになる。
したがって、「基礎出願X」の出願時に既に提出された第30条第4項でいう書面を「出願A」の出願時に求める根拠はなく、求めること自体違法である。」
しかし、既に指摘したように、平成11年改正特許法の第41条第2項には、「出願A」の出願と同時に提出されるべき同法第30条第4項に規定される「その旨を記載した書面」を「基礎出願X」の出願時に提出したものとみなす規定がなく、さらに同法第30条第1項ないし第3項による救済的措置は新規性喪失の原則に対する例外であるという趣旨からみて、「出願A」が同法第41条に基づく優先権主張を伴う特許出願であることを考慮しても、先の特許出願である「基礎出願X」とは別個の特許出願である以上、「出願A」について同法第30条第1項の適用を受けようとする場合には、同法第30条第4項の規定に従い、「出願A」の出願と同時に同法第30条第4項に規定される「その旨を記載した書面」を特許庁長官に提出しなければならない、と解さざるを得ない。
よって、請求人の上記主張は認められない。

3.本願発明

本願請求項1?6に係る発明は、平成28年7月26日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されたとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「酸性多糖類を有効成分として含有することを特徴とするNK細胞活性化剤。」(以下、「本願発明」という。)

4.刊行物に記載された事項

当審の平成28年5月26日付け拒絶理由通知に引用された、本願の優先日(平成15年12月12日)前に頒布された刊行物である「糖質工学によるアプローチ 炭水化物の多面的利用技術の展開,ニューフード・クリエイション技術研究組合,2003年11月20日,第172-189頁」は、「基礎出願X」で「新規性の喪失の例外証明書」として提出された「刊行物A」である。
ここで、本願の優先日(平成15年12月12日)は、「刊行物A」が頒布された日から6月以内の日であるが、上記「2.特許法第30条第1項の規定の適用の可否」で検討したように、「基礎出願X」を先の特許出願とする「出願A」(出願日:平成16年7月9日)は同法第30条第1項の規定の適用を受けることができないのであるから、「出願A」の一部を平成22年10月13日に新たな出願(特願2010-230889号)とし、さらにその一部を平成25年3月18日に新たな出願としたものである本願は、同法第30条第1項の規定の適用を受けることができない。

上記「刊行物A」には以下の事項が記載されている。
(A1)
「免疫賦活作用を有する糖類等を利用した機能性食品素材の製造技術の開発」(172頁2?3行、タイトル)

(A2)
「§1.乳酸菌産生多糖体の精製
1・1 供試乳酸菌
当社保有の乳酸菌ライブラリーよりそれぞれ小規模の培養を行い,培養液の粘性が上昇するものを多糖体産生乳酸菌として選択した。その中から本研究ではLactobacillus helveticus var. jugurti 806株(以下806株とする),Lb. bulgaricus T2038-5株(以下T2038-5株とする),Lb. bulgaricus OLL1073R-1株(以下1073R-1株とする)の3菌株について多糖体の特徴を明らかにし,その免疫賦活効果を評価した。」(172頁下から6?13行)

(A3)
「§2.多糖体の構成糖・構成糖比の同定
2・1 多糖体の加水分解
(中略)
2・2 薄層クロマトグラフィー(TLC)による分析
・・・その結果、806株の中性多糖体はグルコースおよびガラクトース,T2038-5株,1073R-1株より得られた中性多糖体はグルコース,ガラクトース,マンノース,キシロースが構成糖として検出された(図7・6,図7・7,図7・8)。1073R-1株の酸性多糖体については高分子量の多糖体はグルコースとガラクトース,低分子量の多糖体にはマンノースのみが含まれていた(図7・9,図7・10)。」(175頁下から13行?178頁本文3行)

(A4)
「2・2 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析
(中略)
1073R-1株酸性多糖体では高分子の多糖体はグルコース,ガラクトースの構成比が1:1.25であり、低分子量の多糖体についてはマンノースのみを構成糖としていた(図7・14)。
それぞれの構成糖に関してはHPLC,TLCの結果により決定したが,T2038-5株,1073R-1株中性多糖体のマンノース,キシロースに関しては非常に微量であり構成糖としては希であるため,培地成分等である可能性も考えられる(表7・1)。」(178頁本文4行?180頁4行)

(A5)180頁の「表7・1」




(A6)
「§3.多糖体のサイトカイン産生誘導活性
3・1 マウス脾臓細胞に対するインターフェロン-γ誘導活性
乳酸菌産生多糖体の免疫賦活作用をマウスの脾臓細胞を用いてin vitroで評価した。・・・今回,我々は感染防御能を有する多糖体の評価を目的としてマウス脾臓細胞へのインターフェロン-γ(以下IFN-γ)の産生誘導活性を測定した。IFN-γは感染防御に重要である細胞性免疫の増強に関わるサイトカインであり,それ自身もウイルス感染細胞に対して効果を発揮することが知られている。」(180頁下から7行?181頁2行)

(A7)
「3)サイトカイン産生誘導活性の測定 806株,T2038-5株,1073R-1株それぞれが産生する中性多糖体3種類,1073R-1株が産生する酸性多糖体2種類についてマウスC3H/HeJ脾臓細胞に対するIFN-γ産生誘導活性の測定を行った。(中略)
その結果,1073R-1株酸性多糖体でIFN-γ濃度上昇がみられた。特に分子量1×10^(6)Da以上,グルコース,ガラクトースからなる酸性多糖体ではIFN-γ濃度の上昇が顕著であり,20μg/mlでコントロールに比べ有意に高いIFN-γ濃度となった(図7・16)。
また、同培養上清についてサイトカインであるIL-12(p40)濃度の測定を行ったところ,顕著なIFN-γ産生誘導が見られた酸性多糖体と1073R-1株の中性多糖体においてIL-12(p40)濃度がの上昇が見られた(図7・17)。
今回の検討において1073R-1株の産生する酸性多糖体がIFN-γ,IL-12産生誘導活性を有することが明らかとなり,免疫賦活効果をもつ可能性を見出した。」(182頁本文1行?最下行)

(A8)183頁の「図7・16」及び「図7・17」




(A9)
「4)多糖体による免疫賦活 IL-12はIFN-γの産生,細胞性免疫の増強に大きく関わっているサイトカインである。(中略)
また,これらIL-12,IFN-γによって活性化したマクロファージなどの貧食細胞やNK細胞は自らもIL-12,IFN-γを産生することが知られている。脾臓細胞培養上清中のIL-12,IFN-γ濃度上昇にはこれらも関与している可能性がある(図7・19)。」(183頁本文1行?184頁本文4行)

(A10)184頁の「図7・19」




(A11)
「§4.多糖体の経口投与による免疫賦活効果
4・1 多糖体のマウスへの経口投与
1073R-1株が産生する酸性多糖体はin vitroにおいてマウス脾臓細胞に対するIFN-γ産生誘導活性を有することが明らかとなった。そこで,この多糖体についてマウスへの経口投与による免疫賦活効果を検討した。投与には1073R-1株の培養物よりDEAE-Celluloseを用いて分離した中性多糖体と酸性多糖体を使用した。(中略)
4・2 脾臓細胞を用いた評価
1)IFN-γ産生誘導 2週間の投与終了後,個々のマウスより脾臓細胞を調製し,細胞刺激としてT細胞のマイトジェンであるコンカナバリンA(final 1μg/ml)(以下conAとする)添加あるいは非添加のRPMI1640(10%FBS)培地を用いて24時間培養した。・・・培養終了後・・・IFN-γ濃度を測定した。
その結果,培養液にconAを添加した脾臓細胞において1073R-1株の酸性多糖体投与群では中性多糖体投与群,菌体投与群に対して有意に高いIFN-γが見られた(図7・20)。しかし,コントロールである水投与群との間に差は見られなかった。

今回の試験においてコントロールのIFN-γ産生量が比較的高かった。これについてはコントロールである水投与群で投与期間中,6匹のうち3匹で体重減少が観察されており,脾臓細胞IFN-γ産生量を含めたマウスの体調に変化をもたらす何らかの要因があったと考えている。
」(184頁本文7行?185頁下から3行)

(A12)
「2)NK活性 in vivoにおけるIFN-γの産生量増加はマクロファージやNK細胞の活性化を誘導し,マクロファージの貧食能,NK活性の上昇などの効果が現れる可能性がある。(中略)
そこで我々は酸性多糖体の投与による脾臓細胞のNK活性上昇を確認するため,再度投与試験を行い,NK活性の比較を行った。投与はコントロールである水投与群と酸性多糖体投与群の2群とし,その他は上記の条件を用いた。
その結果、酸性多糖体投与群においてコントロールに比べ高いNK活性を検出した(図7・22)。したがって,1073R-1株が産生する酸性多糖体はin vitroでのIFN-γ産生誘導活性を有するばかりでなくin vivoにおいてもIFN-γ産生を誘導し,NK活性の上昇を介して生体の免疫機能を強化する可能性が示唆された。」(185頁下から2行?187頁6行)

(A13)187頁の「図7・22」




(A14)
「まとめ
Lactobacillus bulgaricus OLL1073R-1株は2種類の酸性多糖体を産生する。このうちグルコース:ガラクトース=1:1.25からなる分子量100万以上の酸性多糖体にマウス脾臓細胞に対するIFN-γならびにIL-12産生誘導活性が認められた(in vitro)。この多糖体は抗原提示細胞に認識され,IL-12産生を介してT細胞からのIFN-γ産生を誘導する可能性が考えられる。IFN-γはそれ自身がウイルス感染細胞の死滅に効果をもつだけでなく,感染細胞やガン細胞を攻撃する貪食細胞やNK細胞を活性化することが知られており,この多糖体は感染防御やガン予防などに効果が期待できる素材と考えられる。今回,マウスへの経口投与実験において脾臓細胞ではIFN-γ産生誘導,NK活性の上昇が認められ、バイエル板細胞のIgA産生量は増加していた。腸管内においてバイエル板をはじめとする腸管関連リンパ組織が刺激されるとすれば,全身系の免疫賦活効果も期待できると考える。
また,多糖体の機能性食品素材としての利用には発酵乳が適当である。Lactobacillus bulgaricus OLL1073R-1株など,活性を有する多糖体を産生する乳酸菌を用いて発酵乳を作製し,機能性食品として発酵乳の有効性を評価していくことから今後の課題である。」(189頁1?17行)

5.対比・判断

刊行物Aには、Lactbacillus bulgaricusOLL1073R-1株が産生する酸性多糖体が、in vitroでマウス脾臓細胞に対するIFN-γ、IL-12産生誘導活性を有することが記載されている(摘記(A2)?(A8))。
また、刊行物Aには、上記酸性多糖体を強制経口投与したマウスから調製した脾臓細胞をconAで刺激したところ、1073R-1株の酸性多糖体投与群では中性多糖体投与群、菌体投与群に対して有意に高いIFN-γが見られ(摘記(A11))、1073R-1株の酸性多糖体投与群においてコントロール(水投与群)に比べ高いNK活性を検出したことが記載されている(摘記(A12)?(A13))。
さらに、刊行物Aには、1073R-1株が産生する酸性多糖体は感染防御やガン予防などに効果が期待できると考えられること、そして、例えば発酵乳のような機能性食品の素材に利用することが記載されている(摘記(A1)及び(A14))。
そして、刊行物Aで、1073R-1株の酸性多糖体投与群においてコントロール(水投与群)に比べ高いNK活性を検出したこと(摘記(A12)?(A13))は、当該酸性多糖体がNK活性上昇作用を奏することを意味するので、刊行物Aには「NK活性上昇作用を有する、Lactbacillus bulgaricusOLL1073R-1株が産生する酸性多糖体を有効成分とする機能性食品素材」の発明(以下、「刊行物A発明」という。)が記載されている。
そこで、本願発明と刊行物A発明を対比する。
刊行物A発明の「NK活性上昇作用を有する、Lactbacillus bulgaricusOLL1073R-1株が産生する酸性多糖体」は、本願発明の「酸性多糖類」に相当する。
また、本願発明の「NK細胞活性化剤」も刊行物A発明の「機能性食品素材」も、いずれも生体に対して有用な作用をもたらすものであることに変わりはない。
そうすると、本願発明と刊行物A発明とは「NK活性上昇作用を有する酸性多糖類を有効成分とする、生体に対して有用な作用をもたらすもの」の発明である点で一致し、以下の点で一応相違している。
(a)「生体に対して有用な作用をもたらすもの」が、本願発明では「NK細胞活性化剤」と称されているのに対し、刊行物A発明では「機能性食品素材」と称されている点。
そこで、上記(a)の点について検討する。
刊行物Aの「4)多糖体による免疫賦活・・・また,これらIL-12,IFN-γによって活性化したマクロファージなどの貧食細胞やNK細胞は」(摘記(A9))との記載、184頁の「図7・19」(摘記(A10))、及び「2)NK活性 in vivoにおけるIFN-γの産生量増加はマクロファージやNK細胞の活性化を誘導し,・・・NK活性の上昇などの効果が現れる可能性がある。」(摘記(A12))との記載からみて、刊行物A発明で、Lactbacillus bulgaricusOLL1073R-1株が産生する酸性多糖体が「NK活性上昇作用を有する」ことは、当該酸性多糖体が「NK細胞活性化作用を有する」ことを意味している。
そうすると、かかる酸性多糖体を有効成分とする機能性食品素材が、生体に対しNK細胞活性化作用をもたらすことは明らかであるから、刊行物A発明の「機能性食品素材」は「NK細胞活性化剤」と同義であると解されるので、上記(a)の点は実質的な相違点ではない。
仮に、刊行物A発明の「機能性食品素材」が「NK細胞活性化剤」と同義とはいえないとしても、刊行物Aの「4)多糖体による免疫賦活・・・また,これらIL-12,IFN-γによって活性化したマクロファージなどの貧食細胞やNK細胞は」(摘記(A9))との記載、184頁の「図7・19」(摘記(A10))、及び「2)NK活性 in vivoにおけるIFN-γの産生量増加はマクロファージやNK細胞の活性化を誘導し,・・・NK活性の上昇などの効果が現れる可能性がある。」(摘記(A12))との記載からみて、刊行物A発明の「機能性食品素材」を「NK細胞活性化剤」に適用することは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。
そして、本願明細書の実施例2(段落【0015】)には、刊行物Aと同様にLactbacillus bulgaricusOLL1073R-1株が産生した酸性多糖(段落【0014】の実施例1)を経口投与したマウスから調製した脾臓細胞を用いてNK細胞活性化作用を試験したところ、コントロール(水投与群)に比べて上記酸性多糖を投与した群からは有意に高いNK活性が検出されたという実験結果が記載されている(段落【0015】及び【図3】)。
しかし、上記実施例2で示されたNK細胞活性化作用は、刊行物Aで、上記実施例2と同様の実験方法により示されたNK細胞活性化作用(摘記(A12)?(A13))より優れたものともいえないから、本願発明による効果は、刊行物Aの記載から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

6.むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、本願優先日前に頒布された刊行物Aに記載された発明であるか、あるいは本願優先日前に頒布された刊行物Aに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第1項3号に該当し、又は第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-02 
結審通知日 2016-11-07 
審決日 2016-11-22 
出願番号 特願2013-55183(P2013-55183)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A61K)
P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深草 亜子  
特許庁審判長 内藤 伸一
特許庁審判官 山本 吾一
前田 佳与子
発明の名称 NK細胞活性化剤  
代理人 葛和 清司  
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