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審決分類 審判 一部申し立て 特29条の2  G02F
管理番号 1335122
異議申立番号 異議2016-700828  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-07 
確定日 2017-10-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5878905号発明「液晶表示装置」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5878905号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された,訂正後の請求項〔1-11〕,〔12,13〕について訂正することを認める。 特許第5878905号の請求項1,3,及び9ないし11に係る特許を維持する。 特許第5878905号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5878905号の請求項1?13に係る特許についての出願(特願2013-209961号)は,平成25年10月7日に出願された特許法第44条第1項の規定による出願であって,2005年5月6日(優先権主張 平成16年5月7日)を国際出願日とする特願2006-542336号から2代目の分割出願であり,平成28年2月5日付けで設定登録がされ,その後,その特許に対し,特許異議申立人 小林敏樹により請求項1,3,8ないし11に対して特許異議の申立てがされたものである。以後の手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年12月28日:取消理由通知(平成29年1月6日発送)
平成29年 3月 7日:訂正請求書・意見書(特許権者)
平成29年 4月10日:通知書(同年4月12日発送)
平成29年 5月11日:意見書(特許異議申立人)
平成29年 9月 4日:訂正拒絶理由通知(同年9月7日発送)
平成29年 9月25日:手続補正書・意見書(特許権者)

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成29年3月7日にされ,平成29年9月25日に手続補正がされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)は,当該手続補正により訂正請求書の要旨が変更されないものと認められるものであり,特許請求の範囲を訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1?13について訂正することを求めるものであって,以下の訂正事項1ないし11からなる。(当審注:下線は,請求人が付したものである。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)である液晶表示装置」とあるのを,「且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,前記第1位相差領域の膜厚が20?80μmである液晶表示装置」と訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3,9?11も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「液晶セルの液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dが0.2?0.4μmである請求項1に記載の液晶表示装置。」とあるのを,「少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,液晶セルの液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dが0.2?0.4μmである液晶表示装置。」と訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜がセルロースアシレートフイルム又はノルボルネン系フイルムを含む請求項1?3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。」とあるのを,「少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜がセルロースアシレートフイルム又はノルボルネン系フイルムを含む液晶表示装置。」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜がアシル基による置換度が2.87以上のセルロースアシレートを含む請求項1?3のいずれか1項に記載の液晶表示装置。」とあるのを,「少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜がアシル基による置換度が2.87以上のセルロースアシレートを含む液晶表示装置。」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「液晶セルの一対の基板のうち視認側と反対側の基板により近い位置に,前記第1位相差領域及び前記第2位相差領域が配置されている請求項1?5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。」とあるのを,「少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,液晶セルの一対の基板のうち視認側と反対側の基板により近い位置に,前記第1位相差領域及び前記第2位相差領域が配置されている液晶表示装置。」と訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「第1偏光膜を挟持する一対の保護膜をさらに有する請求項1?6のいずれか1項に記載の液晶表示装置。」とあるのを,「少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,第1偏光膜を挟持する一対の保護膜をさらに有する液晶表示装置。」と訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9の「請求項1?8のいずれか1項」との記載を,「請求項1?7のいずれか1項」に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10の「請求項1?9のいずれか1項」との記載を,「請求項1?7及び9のいずれか1項」に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11の「請求項1?9のいずれか1項」との記載を,「請求項1?7及び9のいずれか1項」に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1?9のいずれか1項に記載の液晶表示装置を製造する方法であって,
前記第2位相差領域である液晶層の製膜時の溶媒が,アミド,スルホキシド,ヘテロ環化合物,炭化水素,アルキルハライド,エステル,ケトン又はエーテルのいずれか一種類以上であることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。」とあるのを,「少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)である液晶表示装置を製造する方法であって,前記第2位相差領域である液晶層の製膜時の溶媒が,アミド,スルホキシド,ヘテロ環化合物,炭化水素,アルキルハライド,エステル,ケトン又はエーテルのいずれか一種類以上であることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。」と訂正する。

2 当審の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的の適否
請求項1に係る訂正事項1は,第1位相差領域について,その膜厚を20?80μmに限定するものであるから,当該訂正事項は,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無
願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)には,
「【0026】
[第1位相差領域]
本発明では,第1位相差領域は,
・・・(中略)・・・
【0029】
・・・(中略)・・・
また,配向ムラや位相差ムラの少ないものが好ましい。その厚さは,位相差等により適宜に決定しうるが,一般には薄型化の点より1?300μmであるのが好ましく,10?200μmであるのがより好ましく,20?150μmであるのがさらに好ましい。」と記載されており,また,
「【0062】
<第1位相差領域1?4の作製>
ポリカーボネートのペレットをメチレンクロライドに溶解し,金属製のバンド上に流延し,続いて乾燥することにより厚さ80μmのポリカーボネートフイルムを得た。ポリカーボネートフイルムを170℃の温度条件で長手方向に3.5%,4.5%,及び5.5%の一軸延伸を行い,それぞれ第1位相差領域1,第1位相差領域2,及び第1位相差領域3を得た。さらにこの厚さ80μmのポリカーボネートフイルムを,170℃の温度条件で長手方向に3.5%,幅方向に1%の二軸延伸を行い,第1位相差領域4を得た。」
との記載もあるところ,延伸することにより厚さが80μm以上となることはないといえる。
上記記載によれば,願書に添付した明細書には,第1位相差領域について,その膜厚を20?80μmであることが記載されている。よって,訂正事項1は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張,変更の存否
訂正事項1は,上記アのとおり,特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり,この訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。よって,訂正事項1は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的の適否
請求項2に係る訂正事項2は,「請求項1に記載の」との記載を除くとともに,訂正前の請求項1に記載されていた事項を記載したものである。
よって,訂正事項2は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる,「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当するものである。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否
上記アのとおり,訂正事項2は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものに該当するものであり,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。よって,訂正事項2は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的の適否
請求項4に係る訂正事項3は,「請求項1?3のいずれか1項に記載の」との記載を除くとともに,訂正前の請求項1に記載されていた事項を記載したものである。そして,これに伴い,訂正前の請求項2及び3を引用する部分は削除されたものといえる。
よって,訂正事項3は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる,「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものである。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否,独立特許要件
上記アのとおり,訂正事項3は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものであり,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
また,訂正後の請求項4に係る発明は,訂正前の請求項4に係る発明から訂正前の請求項2及び3を引用する部分を削除したものであるから,独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。
よって,訂正事項3は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的の適否
請求項5に係る訂正事項4は,「請求項1?3のいずれか1項に記載の」との記載を除くとともに,訂正前の請求項1に記載されていた事項を記載したものである。そして,これに伴い,訂正前の請求項2及び3を引用する部分は削除されたものといえる。
よって,訂正事項3は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる,「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものである。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否,独立特許要件
上記アのとおり,訂正事項4は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものであり,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
また,訂正後の請求項5に係る発明は,訂正前の請求項5に係る発明から訂正前の請求項2及び3を引用する部分を削除したものであるから,独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。
よって,訂正事項4は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的の適否
請求項6に係る訂正事項5は,「請求項1?5のいずれか1項に記載の」との記載を除くとともに,訂正前の請求項1に記載されていた事項を記載したものである。そして,これに伴い,訂正前の請求項2ないし5を引用する部分は削除されたものといえる。
よって,訂正事項5は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる,「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものである。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否,独立特許要件
上記アのとおり,訂正事項5は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものであり,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
また,訂正後の請求項6に係る発明は,訂正前の請求項6に係る発明から訂正前の請求項2ないし5を引用する部分を削除したものであるから,独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。
よって,訂正事項5は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的の適否
請求項7に係る訂正事項6は,「請求項1?6のいずれか1項に記載の」との記載を除くとともに,訂正前の請求項1に記載されていた事項を記載したものである。そして,これに伴い,訂正前の請求項2ないし6を引用する部分は削除されたものといえる。
よって,訂正事項6は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる,「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものである。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否,独立特許要件
上記アのとおり,訂正事項6は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものであり,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。
また,訂正後の請求項5に係る発明は,訂正前の請求項5に係る発明から訂正前の請求項2ないし6を引用する部分を削除したものであるから,独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。
よって,訂正事項6は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。

(7)訂正事項7
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7は,請求項8を削除するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否
上記アに記載のとおり,訂正事項7は,請求項を削除する訂正であるから,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。よって,訂正事項7は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項8
ア 訂正の目的の適否
請求項9に係る訂正事項8は,訂正事項7により請求項8が削除されたことに伴い,請求項8を引用する部分を削除するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否
上記アに記載のとおり,訂正事項8は,引用する請求項を一部削除して明瞭でない記載の釈明をするものであるから,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。よって,訂正事項8は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(9)訂正事項9
ア 訂正の目的の適否
請求項10に係る訂正事項9は,訂正事項7により請求項8が削除されたことに伴い,請求項8を引用する部分を削除するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否
上記アに記載のとおり,訂正事項9は,引用する請求項を一部削除して明瞭でない記載の釈明をするものであるから,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。よって,訂正事項9は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(10)訂正事項10
ア 訂正の目的の適否
請求項11に係る訂正事項10は,訂正事項7により請求項8が削除されたことに伴い,請求項8を引用する部分を削除するものであるから,特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否
上記アに記載のとおり,訂正事項10は,引用する請求項を一部削除して明瞭でない記載の釈明をするものであるから,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでない。よって,訂正事項10は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(11)訂正事項11
ア 訂正の目的の適否
請求項12に係る訂正事項11は,訂正前の冒頭にあった「請求項1?9のいずれか1項に記載の」との記載を削除するとともに,訂正前の請求項1に記載されていた事項を記載したものである。そして,これに伴い,訂正前の請求項2ないし9を引用する部分は削除されたものといえる。
よって,訂正事項11は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる,「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものである。
イ 新規事項追加の有無,特許請求の範囲の拡張,変更の存否,独立特許要件
上記アのとおり,訂正事項11は,特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」,及び同項ただし書き第1項に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するものであり,当該訂正は,新たな技術事項を導入するものではなく,実質上特許請求の範囲
を拡張し,又は変更するものでない。
また,訂正後の請求項12に係る発明は,訂正前の請求項12に係る発明から訂正前の請求項2ないし9を引用する部分を削除したものであるから,独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。
よって,訂正事項11は,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。

(12)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?13について,請求項2?13は,請求項1を引用しているものであって,訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項1?13は,一群の請求項である。そして,本件訂正請求は,前記一群の請求項ごとに請求するものであるから,特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(13)むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書き第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので,訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1-11〕,〔12,13〕について訂正を認める。

第3 訂正発明
上記のとおり,本件訂正が認められたので,本件特許の訂正後の請求項1?13に係る発明は,請求項1?13に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「訂正発明1」?「訂正発明13」という。)。
「【請求項1】
少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,前記第1位相差領域の膜厚が20?80μmである液晶表示装置。
【請求項2】
少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,液晶セルの液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dが0.2?0.4μmである液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜の厚みが40μm以下である請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜がセルロースアシレートフイルム又はノルボルネン系フイルムを含む液晶表示装置。
【請求項5】
少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜がアシル基による置換度が2.87以上のセルロースアシレートを含む液晶表示装置。
【請求項6】
少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,液晶セルの一対の基板のうち視認側と反対側の基板により近い位置に,前記第1位相差領域及び前記第2位相差領域が配置されている液晶表示装置。
【請求項7】
少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であり,第1偏光膜を挟持する一対の保護膜をさらに有する液晶表示装置。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
前記第2偏光膜側にバックライトを配置した請求項1?7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
請求項1?7及び9のいずれか1項に記載の液晶表示装置を製造する方法であって,
前記第1位相差領域を二軸延伸することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1?7及び9のいずれか1項に記載の液晶表示装置を製造する方法であって,
前記第2位相差領域を紫外線硬化性の垂直配向棒状液晶化合物で形成することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項12】
少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)で,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)である液晶表示装置を製造する方法であって,前記第2位相差領域である液晶層の製膜時の溶媒が,アミド,スルホキシド,ヘテロ環化合物,炭化水素,アルキルハライド,エステル,ケトン又はエーテルのいずれか一種類以上であることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2位相差領域である液晶層の製膜時の溶媒が,N,N-ジメチルホルムアミド,ジメチルスルホキシド,ピリジン,ベンゼン,ヘキサン,クロロホルム,ジクロロメタン,酢酸メチル,酢酸ブチル,アセトン,メチルエチルケトン,テトラヒドロフラン,又は1,2-ジメトキシエタンのいずれか一種類以上である,請求項12に記載の液晶表示装置の製造方法。」

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1,3,8ないし11に係る特許に対して,当審が特許権者に通知した取消理由の概要は,請求項1,3,8ないし11に係る発明は,遡及出願の優先日前の外国語特許出願であって,その出願後に国際公開がされ,我が国への翻訳文の提出がされた甲第1号証(国際公開第2005/065057号)に係る外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2に規定する発明に該当するから,請求項1,3,8ないし11に係る特許は,特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである,というものである。

第5 取消理由についての判断
1 甲1発明
(1)甲第1号証(国際公開第2005/065057号)には以下の各記載がある(下線は当審で付加。以下同様。)。なお,日本語訳出には,甲1号証のファミリ文献である特表2006-520008号公報を参考とした。
ア「It is an object of the present invention to provide an IPS-LCD, which has high-contrast characteristics and low color shift at the front side and inclination angle by minimizing light leakage in the dark state at inclination angle.」(2ページ7?11行)
(日本語訳:
本発明は,傾斜角の暗状態での光漏れを最小化することにより正面及び傾斜角で高いコントラスト特性,低い色ずれを有するIPS-LCDを提供することを目的とする。)

イ「The liquid crystal display including the compensation films according to the present invention comprises the first polarizer 1, a horizontally aligned liquid crystal cell 3 having liquid crystals with positive dielectric anisotropy (Δε > 0) or negative dielectric anisotropy (Δε < 0) filled between two sheets of glass substrates, and the second polarizer 2, in which the optical axis 6 of the liquid crystals in the liquid crystal cell lies in a plane parallel to the polarizers.」(4ページ20行?28行)
(日本語訳:
本発明に係る補償フィルムが使用される液晶表示装置は,第一の偏光板1と,二枚のガラス基板の間に正の誘電率異方性(Δε>0)または負の誘電率異方性(Δε>0)を有する液晶で充填され水平配向された液晶セル3,及び第二の偏光板2を備え,液晶セル内の液晶の光軸6が偏光板に平行な面内に置かれている。)

ウ「In this embodiment, the positive C-plate preferably has a thickness-direction retardation value ranging from 50 nm to 500 nm at a wavelength of 550 nm.」(10ページ29行?31行)
(日本語訳:
このとき,+C-プレートは,550nm波長で50?500nmの範囲の厚み方向の位相差値を有することが好ましい。)

エ「A backlight should be arranged adjacent to the first polarizer, and if the backlight is arranged adjacent to the second polarizer, the viewing-angle compensation characteristics will vary.」(11ページ21行?24行)
(日本語訳:
バックライトの位置は,第一の偏光板に隣接する所に配置される必要があり,第二の偏光板に配置すれば,視野角の補償特性が変わる。)

オ「In this embodiment, the negative biaxial retardation film preferably has an in-plane retardation value ranging from 20 nm to 200 nm and a thickness-direction retardation value ranging from -50 nm to -300 nm.」(15ページ23行?26行)
(日本語訳:
本実施例では,負の位相差値フィルムは,550nm波長で20?200nmの範囲の面内位相差値を有し,負の厚み方向の位相差値を有し,550nmで-50nm?-300nmの範囲の値を有することが好ましい。)

カ「In the present invention, the polarizers may have internal and external protective films.」(19ページ14行?15行)
(日本語訳:
本発明における偏光板は,内部と外部保護フィルムを有してもよい。)

キ「As the internal protective film for the first polarizer, the second polarizer or both the two polarizers, a film having a zero or negative thickness-direction retardation value is preferably used.」(19ページ31行?20ページ2行)
(日本語訳:
第一の偏光板の内部保護フィルムと第二の偏光板の内部保護フィルムのいずれか一方,または両方は,0または負の厚み方向の位相差値を有することが好ましい。)

ク「Meanwhile, the internal protective films for the first polarizer 1 and the second polarizer 2 is preferably made of a material selected from the group consisting of unstretched COP, 40-μm TAC, 80 μm-TAC, and PNB.」(20ページ5行?8行)
(日本語訳:
一方,第一の偏光板1と第二の偏光板2の内部保護フィルムは,延伸されていないCOP,40μmTAC,80μmTAC,PNBより構成される群から選ばれた材料で作製されることが好ましい。)

ケ「In the present invention, the negative biaxial retardation film 12 can serve as an internal protective film for the polarizers.」(20ページ17行?19行)
(日本語訳:
本発明において,負の二軸性位相差フィルム12を偏光板の内部保護フィルムとして使用してもよい。)

コ「The negative biaxial retardation film 12 is made of a stretched TAC film and has an m-plane retardation value (R_( in )) of 110 nm and a thickness-direction retardation value (R_( th )) of -48 nm.」(21ページ23行?26行)
(日本語訳:
負の二軸性位相差フィルム12は,延伸されたTACフィルムから構成されており,面内位相差値R_(in)=110nm,厚み方向の位相差値R_(th)=-48nmを有している。)

サ「The positive C-plate 11 is an UV cured, homeotropically aligned liquid crystal film and has a retardation value (R_( th )) of 133 nm.」(21ページ26行?28行)
(日本語訳:
+C-プレート11は,UV硬化された垂直配向液晶フィルムであり,位相差値はR_(th)=133nmを有している。)

シ「Two sheets of the polarizers comprise an internal protective film of COP having a retardation value of almost zero.」(21ページ28行?30行)
(日本語訳:
二枚の偏光板は,位相差値がほぼ0であるCOP内部保護フィルムを含む。)

ス「An in-plane switching liquid crystal display comprising a first polarizer, a horizontally aligned liquid crystal cell filled with liquid crystals having positive dielectric anisotropy (Δε > 0) or negative dielectric anisotropy (Δε < 0) , and a second polarizer, the optical axis of the liquid crystals in the liquid crystal cell lying in a plane parallel to the polarizers」(請求項1)
(日本語訳:
第一の偏光板と,正の誘電率異方性(Δε>0)または負の誘電率異方性(Δε>0)を有する液晶で充填され水平配向された液晶セルと,及び第二の偏光板とを備え,液晶セル内の液晶の光軸が偏光板に平行な面内に置かれているIPS液晶表示装置)

セ「 in which the absorption axis of the first polarizer is perpendicular to the absorption axis of the second polarizer, the optical axis of the liquid crystals in the liquid crystal cell is parallel to the absorption axis of the adjacent first polarizer,」(請求項1)
(日本語訳:
第一の偏光板の吸収軸と第二の偏光板の吸収軸とが直交し,液晶セル内の液晶の光軸が隣接する第一の偏光板の吸収軸に平行であり,)

ソ「at least one negative biaxial retardation film (n _(x) > n_( y) > n_( z) wherein n x and n y represent in-plane refractive indexes, and n z represents the thickness-direction refractive index of the film) and at least one positive C-plate (n_( x) = n_( y) < n_( z) ) are arranged between the polarizers and the liquid crystal cell,」(請求項1)
(日本語訳:
一つ以上の負の二軸性位相差フィルム(n_(x)>n_(y)>n_(z),ここで,n_(x),n_(y)は,面内屈折率を表し,n_(z)は,フィルムの厚み方向の屈折率を表す)と一つ以上の+C-プレート(n_(x)=n_(y)<n_(z))を偏光板と液晶セルとの間に配し,)

タ「the negative biaxial retardation film having negative thickness-direction retardation value (R_(th),_( biaxial )= d x (n_( z )-n_( y )) wherein d represents the thickness of the film) and positive in-plane retardation value (R_(in , biaxial )= d x (n_( x )-n_( y )) wherein d represents the thickness of the film) , and the positive C- plate having thickness-direction retardation value (R_(th, positive c plate )= d x (n_( z )-n_( y )) .」(請求項1)
(日本語訳:
負の二軸性位相差フィルムは,負の厚み方向の位相差値(R_(th,biaxial)=d×(n_(z)-n_(y)),このとき,dはフィルムの厚み)と正の面内位相差値(R_(in,biaxial)=d×(n_(x)-n_(y)),このとき,dはフィルムの厚み)を有し,+C-プレートは,厚み方向の位相差値 R_(th,+C)=d×(n_(z)-n_(y)) を有する)

チ「The in-plane switching liquid crystal display of Claim 1, wherein the negative biaxial retardation film and the positive C-plate are arranged between the liquid crystal cell and the second polarizer, the positive C-plate is arranged between the negative biaxial retardation film and the liquid crystal cell, and the optical axis of the negative biaxial retardation film is perpendicular to the absorption axis of the second polarizer.」(請求項2)
(日本語訳:
負の二軸性位相差フィルムと+C-プレートが液晶セルと第2の偏光板との間に配されており,+C-プレートが負の二軸性位相差フィルムと液晶セルとの間に配されており,負の二軸性位相差フィルムの光軸は,隣接する第2の偏光板の吸収軸に直交する,請求項1に記載のIPS液晶表示装置。)

ツ「The in-plane switching liquid crystal display of any one of Claims 1 to 5, wherein the negative biaxial retardation film is made of an uniaxially stretched triacetate cellulose (TAC) , uniaxially stretched polynorbornene (PNB), biaxially stretched polycarbonate or UV curable liquid crystal film.」(請求項12)
(日本語訳:
負の二軸性位相差フィルムは,一軸延伸されたトリアセテートセルロース(TAC),一軸延伸されたポリノルボルネン(PNB),二軸延伸されたポリカーボネート,またはUV硬化型液晶フィルムで作製された,請求項1乃至5のいずれかに記載のIPS液晶表示装置。)

テ ここで,図1は以下のものである。


ト 甲第1号証の4ページ20行?28行(上記イ)の記載とともに図1を参照すると,「液晶セル3が,液晶分子7を含む液晶層と,該液晶層を挟持する一対の基板15及び16からなる」こと,「液晶層の液晶分子7が,一対の基板15及び16の表面に対して平行に配向する」こと,及び,「液晶分子7の光軸6とは,液晶分子7の長軸方向を指すこと」が見て取れる。

(2)以上を総合すると,甲第1号証には以下の発明が記載されているものと認められる(以下「甲1発明」という。)。
「傾斜角の暗状態での光漏れを最小化することにより正面及び傾斜角で高いコントラスト特性,低い色ずれを有するIPS液晶表示装置であって,
第一の偏光板1と,二枚のガラス基板15,16の間に正の誘電率異方性(Δε>0)または負の誘電率異方性(Δε>0)を有する液晶で充填され水平配向された液晶セル3,及び第二の偏光板2を備え,液晶セル内の液晶の光軸6が偏光板に平行な面内に置かれており,
液晶セル3は,液晶分子7を含む液晶層と,該液晶層を挟持する一対の基板15及び16からなり,液晶層の液晶分子7が,一対の基板15及び16の表面に対して平行に配向し,ここで,液晶分子7の光軸6とは,液晶分子7の長軸方向を指し,
第一の偏光板1の吸収軸と第二の偏光板2の吸収軸とが直交し,液晶セル3内の液晶の光軸6が隣接する第一の偏光板1の吸収軸に平行であり,
一つ以上の負の二軸性位相差フィルム(n_(x)>n_(y)>n_(z),ここで,n_(x),n_(y)は,面内屈折率を表し,n_(z)は,フィルムの厚み方向の屈折率を表す)と一つ以上の+Cプレート(n_(x)=n_(y)<n_(z))を偏光板と液晶セルとの間に配し,

負の二軸性位相差フィルムは,負の厚み方向の位相差値(R_(th,biaxial)=d×(n_(z)-n_(y)),このとき,dはフィルムの厚み)と正の面内位相差値(R_(in,biaxial)=d×(n_(x)-n_(y)),このとき,dはフィルムの厚み)を有し,+Cプレートは,厚み方向の位相差値 R_(th,+C)=d×(n_(z)-n_(y)) を有し,
負の二軸性位相差フィルムと+Cプレートが液晶セル3と第2の偏光板2との間に配されており,+Cプレートが負の二軸性位相差フィルムと液晶セル3との間に配されており,負の二軸性位相差フィルムの光軸は,隣接する第2の偏光板2の吸収軸に直交し,
負の二軸性位相差フィルムは,一軸延伸されたトリアセテートセルロース(TAC),一軸延伸されたポリノルボルネン(PNB),二軸延伸されたポリカーボネート,またはUV硬化型液晶フィルムで作製され,
負の二軸性位相差フィルムは,550nm波長で20?200nmの範囲の面内位相差値R_(in,biaxial)を有し,負の厚み方向の位相差値R_(th,biaxial)を有し,550nmで-50nm?-300nmの範囲の値を有することが好ましく,
例えば,負の二軸性位相差フィルムは,延伸されたTACフィルムから構成されており,面内位相差値R_(in,biaxial)=110nm,厚み方向の位相差値R_(th,biaxial)=-48nmを有しており,

+Cプレートは,550nm波長で50?500nmの範囲の厚み方向の位相差値R_(th,+C)を有することが好ましく,
例えば,+Cプレート11は,UV硬化された垂直配向液晶フィルムであり,位相差値はR_(th,+C)=133nmを有しており,

バックライトの位置は,第一の偏光板1に隣接する所に配置され,

第一の偏光板1及び第二の偏光板2は,内部と外部保護フィルムを有してもよく,
第一の偏光板1の内部保護フィルムと第二の偏光板2の内部保護フィルムのいずれか一方,または両方は,0または負の厚み方向の位相差値を有することが好ましく,
第一の偏光板1と第二の偏光板2の内部保護フィルムは,延伸されていないCOP,40μmTAC,80μmTAC,PNBより構成される群から選ばれた材料で作製されることが好ましく,
第一の偏光板1と第二の偏光板2は,位相差値がほぼ0であるCOP内部保護フィルムを含んでもよく,
負の二軸性位相差フィルムを偏光板の内部保護フィルムとして使用してもよいものである,
IPS液晶表示装置。」

2 対比
(1)訂正発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「第二の偏光板2」,「負の二軸性位相差フィルム」,「+Cプレート」,「液晶セル3」,「第一の偏光板1」及び「IPS液晶表示装置」は,それぞれ,訂正発明1の「第1偏光膜」,「第1位相差領域」,「第2位相差領域」,「液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セル」,「第2偏光膜」及び「液晶表示装置」に相当する。

イ 甲1発明において,「傾斜角の暗状態での光漏れを最小化すること」を考慮すると,「液晶セル3は,液晶分子7を含む液晶層と,該液晶層を挟持する一対の基板15及び16からなり,液晶層の液晶分子7が,一対の基板15及び16の表面に対して平行に配向し,ここで,液晶分子7の光軸6とは,液晶分子7の長軸方向を指し」ていることは,訂正発明1の「黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する」ことに相当する。

ウ 上記ア,イから,甲1発明の,「傾斜角の暗状態での光漏れを最小化することにより正面及び傾斜角で高いコントラスト特性,低い色ずれを有するIPS液晶表示装置であって,第一の偏光板1と,二枚のガラス基板15,16の間に正の誘電率異方性(Δε>0)または負の誘電率異方性(Δε>0)を有する液晶で充填され水平配向された液晶セル3,及び第二の偏光板2を備え,液晶セル内の液晶の光軸6が偏光板に平行な面内に置かれており,液晶セル3は,液晶分子7を含む液晶層と,該液晶層を挟持する一対の基板15及び16からなり,液晶層の液晶分子7が,一対の基板15及び16の表面に対して平行に配向し,ここで,液晶分子7の光軸6とは,液晶分子7の長軸方向を指」すものであって,「一つ以上の負の二軸性位相差フィルム(n_(x)>n_(y)>n_(z),ここで,n_(x),n_(y)は,面内屈折率を表し,n_(z)は,フィルムの厚み方向の屈折率を表す)と一つ以上の+Cプレート(n_(x)=n_(y)<n_(z))を偏光板と液晶セルとの間に配し」たものは,訂正発明1の「少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置」に相当する。

エ 甲1発明の「負の二軸性位相差フィルムは,550nm波長で20?200nmの範囲の面内位相差値R_(in,biaxial)を有」することは,訂正発明1の「前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで」あることに相当する。

オ 甲1発明の「負の二軸性位相差フィルムは,・・・,二軸延伸されたポリカーボネート,・・・で作製され」たことは,訂正発明1の「第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであ」ることに相当する。

カ 甲1発明においては,「+Cプレート(n_(x)=n_(y)<n_(z))」は,面内屈折率がn_(x)=n_(y)であってともに等しいから,面内リタデーションがゼロであり,またこれにより,面内に光学軸がないことは明らかであるから,甲1発明の「+Cプレート(n_(x)=n_(y)<n_(z))」は,訂正発明1の「前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれて」いないことに相当する。

キ 甲1発明においては,「第一の偏光板1の吸収軸と第二の偏光板2の吸収軸とが直交し,液晶セル3内の液晶の光軸6が隣接する第一の偏光板1の吸収軸に平行であ」るところ,一般に,偏光板の吸収軸と透過軸は直交していることと前記イを考慮すると,甲1発明の当該構成は,訂正発明1の「前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であ」ることに相当する。

ク 甲1発明の「負の二軸性位相差フィルムと+Cプレートが液晶セル3と第2の偏光板2との間に配されており,+Cプレートが負の二軸性位相差フィルムと液晶セル3との間に配されており,負の二軸性位相差フィルムの光軸は,隣接する第2の偏光板2の吸収軸に直交し」ていることは,一般に偏光板の吸収軸と透過軸は直交していることを考慮すると,訂正発明1の「第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であ」ることに相当するといえる。

ケ 甲1発明の「第一の偏光板1及び第二の偏光板2は,内部と外部保護フィルムを有してもよ」いことは,訂正発明1の「第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され」ることに相当する。

コ 甲1発明の「第一の偏光板1と第二の偏光板2は,位相差値がほぼ0であるCOP内部保護フィルムを含んでもよ」いことについて,「位相差値がほぼ0」とは,位相差値が0に極めて近い値を含むことは明らかである。
よって,上記ケを考慮すると,甲1発明の,「第一の偏光板1及び第二の偏光板2は,内部と外部保護フィルムを有してもよく,」「第一の偏光板1の内部保護フィルムと第二の偏光板2の内部保護フィルムのいずれか一方,または両方は,0または負の厚み方向の位相差値を有することが好ましく,」「第一の偏光板1と第二の偏光板2は,位相差値がほぼ0であるCOP内部保護フィルムを含んでもよ」いことは,訂正発明1の「第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)であ」ることに相当する。

(2)以上から,訂正発明1と甲1発明とは以下の点で一致する。
「少なくとも,第1偏光膜と,第1位相差領域と,第2位相差領域と,液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと,第2偏光膜とを含み,黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって,
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,さらに,第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり,前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり,且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず,及び
前記第1偏光膜の透過軸が,黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり,
第1偏光膜,第1位相差領域,第2位相差領域及び液晶セルを,この順序で有し,且つ第1位相差領域の遅相軸が,前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり,
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され,該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm,且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし,Re=0mm,かつRth=0mmを除く)である液晶表示装置。」

一方,両者は以下の各点で相違する。
《相違点1》
訂正発明1は「前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで,前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)」構成を備えるのに対して,甲1発明は,「前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで」あることに対応する構成は備えるものの,「前記面内レターデーション(Re)と,前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)」構成を備えるか否か明らかでない。

《相違点2》
訂正発明1は「前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで」ある構成を備えるのに対して,甲1発明がそのような構成を備えるか否か明らかでない。

《相違点3》
訂正発明1は,「前記第1位相差領域の膜厚が20?80μmである」構成を備えるのに対して,甲1発明がそのような構成を備えるか否か明らかでない。

3 判断
まず,相違点3について検討する
(1)相違点3について
甲1発明においては,訂正発明1の「第1位相差領域」に対応する「負の二軸性位相差フィルム」の膜厚について何も規定されておらず,また,甲1号証全体の記載を見ても,負の二軸性位相差フィルムの膜厚について明記はない。
ところで,甲1発明においては,「負の二軸性位相差フィルムは,550nm波長で20?200nmの範囲の面内位相差値R_(in,biaxial)を有し,負の厚み方向の位相差値R_(th,biaxial)を有し,550nmで-50nm?-300nmの範囲の値を有することが好ましく,」「例えば,負の二軸性位相差フィルムは,延伸されたTACフィルムから構成されており,面内位相差値R_(in,biaxial)=110nm,厚み方向の位相差値R_(th,biaxial)=-48nmを有しており,」とされているところ,「負の二軸性位相差フィルムを偏光板の内部保護フィルムとして使用してもよいものである」とされているから,甲1発明は,上記の「負の二軸性位相差フィルム」をそのまま「偏光板の内部保護フィルム」とする構成を備えるとはいえる。
一方,甲1発明では,「第一の偏光板1と第二の偏光板2の内部保護フィルムは,延伸されていないCOP,40μmTAC,80μmTAC,PNBより構成される群から選ばれた材料で作製されることが好ましく」ともされ,「40μmTAC,80μmTAC」については膜厚も記載されており,申立人は当該構成を根拠として,甲1発明において,「負の二軸性位相差フィルム」の厚さが20?80μmの範囲内であるとしている。
しかしながら,当該構成は,「第一の偏光板1と第二の偏光板2の内部保護フィルム」として好ましい材料が示されているものであり,これらをそのまま「負の二軸性位相差フィルム」として用いるものとはいえない。
さらに,訂正発明1においては,「第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nm」であるところ,被申立人が提出した乙1号証の表1を参照すると,甲1発明において,上記膜厚も記載された「40μmTAC,80μmTAC」を用いて,当該数値範囲のリタデーション(Re)が構成できるとはいえない。
よって,甲1発明が,相違点1に係る構成を備えるとはいえない。

(2)相違点1について
次に,相違点1について検討する。
本件特許明細書によれば,訂正発明1に係る「面内レタデーション(Re)」及び「厚み方向のレターデーション(Rth)」は,「本明細書において,Re,Rthは各々,波長550nmにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長550nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。」(段落【0011】)ところ,甲第3号証には,当該「KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)」について,その「面内レタデーション(Re)」及び「厚み方向のレターデーション(Rth)」の算出について以下の記載がある。

「前記保護フィルムは,面内屈折率が最大となる方向をX軸,X軸に垂直な方向をY軸,フィルムの厚さ方向の屈折率をZ軸とし,それぞれの軸方向の屈折率をnx,ny,nz,透明性フィルムの厚さをd(nm)とした場合に,
面内位相差Re=(nx-ny)×dが,20nm以下であり,
かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2-nz}×dが,30nm以下であることが好ましい。」(段落【0045】)
「なお,面内位相差Re,厚み方向位相差Rthは,屈折率nx,ny,nzを自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA21ADH)により計測した結果から算出した。」(段落【0092】)

したがって,訂正発明1においては,面内位相差Re=(nx-ny)×dに対して,厚み方向位相差は,Rth={(nx+ny)/2-nz}×dと算出しているといえる。
一方,甲1発明においては,「面内位相差値(R_(in,biaxial)=d×(n_(x)-n_(y))」及び「厚み方向の位相差値(R_(th,biaxial)=d×(n_(z)-n_(y))」としているから,訂正発明1と甲1発明とは,厚み方向の位相差についてその定義が異なるところ,甲1発明における厚み方向の位相差値を訂正発明1に係る定義に基づいた値に換算するには,各式から,訂正発明1に係る厚み方向位相差Rth=R_(in,biaxial)/2-R_(th,biaxial)と換算できることがわかる。
甲1発明に係る「負の二軸性位相差フィルム」は「負の厚み方向の位相差値R_(th,biaxial)を有し,550nmで-50nm?-300nmの範囲の値を有することが好まし」いところ,当該数値範囲を上記式により換算すると,60?400nmとなる。
そして,当該換算後の甲1発明に係る厚み方向の位相差値Rthと「550nm波長で20?200nmの範囲の面内位相差値R_(in,biaxial)」から,訂正発明1に係る式に基づいてNzを算出すると,0.8?20.5となり,訂正発明1に係る「Nz値が0.8を超え1.5以下(ただし,Nz=0.8?1.2を除く)」範囲に重複する。
よって,甲1発明は,「負の二軸性位相差フィルム」について「好ましい」とされた数値範囲,すなわち「550nm波長で20?200nmの範囲の面内位相差値R_(in,biaxial)を有し,負の厚み方向の位相差値R_(th,biaxial)を有し,550nmで-50nm?-300nmの範囲の値」の点のみから見れば,相違点1に係る構成を備えるといえる。

(3)申立人の主張について
被申立人は,意見書において,甲第1号証には,負の二軸性位相差フィルムとして,一軸延伸TAC,一軸延伸PNB,二軸延伸PC,UV硬化型液晶フィルムが列挙されているが,これらのフィルムは,「一般的に,本伴特許の訂正後の請求項1で規定する,第一位相差領域についてのNz係数(Nz値が0.8を超え1.5以下,ただし,Nz=0.8?1.2を除く),レターデーション(Re=60?200nm),並びに膜厚(20?80μm)の三つのパラメータを同時に充足するものではない旨主張し,これに対して,申立人は,意見書において,参考資料1(特開2003-75637号公報)を挙げ,甲1発明には,一軸延伸PNBを用いる構成が含まれ,これによれば,Nz(即ち,(nx-nz)/(nx-ny))=1.35,Re=125nm,膜厚40μmというように,前記三つのパラメータを同時に充足する旨主張する。
確かに,申立人は,異議申立書において,甲1発明の「二軸性位相差フィルム」の厚さが20?80μmの範囲内であると主張した根拠として,「負の二軸性位相差フィルムを偏光板の内部保護フィルムとして使用してもよいものであ」り,「第一の偏光板1と第二の偏光板2の内部保護フィルムは,延伸されていないCOP,40μmTAC,80μmTAC,PNBより構成される群から選ばれた材料で作製されることが好ましく」(下線は当審で付加。)との構成を指摘している。
しかしながら,上記(1)で検討したとおり,甲1発明は,負の二軸性位相差フィルムの厚さについて何ら規定していないのであり,また,上記被申立人の主張にあるように,負の二軸性位相差フィルムの材料として列挙されたもののうちには,前記三つのパラメータを同時に充足しないものも含まれることから,PNBを「第一の偏光板1と第二の偏光板2の内部保護フィルム」として採用することによって,前記三つのパラメータを同時に充足する可能性があるとしても,甲第1号証には,甲1発明が前記三つのパラメータを同時に満足するものとして記載されているとはいえない。

したがって,相違点2について検討するまでもなく,訂正発明1は,甲第1号証に記載されたものではない。

4 請求項3について
訂正発明3には,訂正発明1に係る「液晶表示装置」を引用して,訂正発明1を技術的に限定したものを含む。
甲1発明は,「第一の偏光板1と第二の偏光板2の内部保護フィルムは,延伸されていないCOP,40μmTAC,80μmTAC,PNBより構成される群から選ばれた材料で作製されることが好まし」いものであり,このうち,「40μmTAC」はその厚みが40μmであるものといえるが,上記2及び3で検討したとおり,訂正発明1は,甲第1号証に記載されたものではない。
よって,訂正発明3は甲第1号証に記載されたものではない。

5 請求項9について
訂正発明9には,訂正発明1に係る「液晶表示装置」を引用して,訂正発明1を技術的に限定したものを含む。
甲1発明においては,「バックライトの位置は,第一の偏光板1に隣接する所に配置され」たものであり,これは訂正発明9の「前記第2偏光膜側にバックライトを配置した」構成に対応するものといえるが,上記2及び3で検討したとおり,訂正発明1は,甲第1号証に記載されたものではない。
よって,訂正発明9は甲第1号証に記載されたものではない。

6 請求項10について
訂正発明10には,訂正発明1に係る「液晶表示装置」を引用して,当該「液晶表示装置」「を製造する方法」としたものを含む。
甲1発明においては,,「負の二軸性位相差フィルムは,一軸延伸されたトリアセテートセルロース(TAC),一軸延伸されたポリノルボルネン(PNB),二軸延伸されたポリカーボネート,またはUV硬化型液晶フィルムで作製され」たものであり,「二軸延伸されたポリカーボネート」により作成されたものを含む。
しかしながら,上記2及び3で検討したとおり,訂正発明1は,甲第1号証に記載されたものではないから,訂正発明1に係る「液晶表示装置」「を製造する方法」についても,甲第1号証に記載されたものとはいえない。
よって,訂正発明10は甲第1号証に記載されたものではない。

7 請求項11について
訂正発明11には,訂正発明1に係る「液晶表示装置」を引用して,当該「液晶表示装置」「を製造する方法」としたものを含む。
甲1発明においては,「例えば,+Cプレート11は,UV硬化された垂直配向液晶フィルムであり」たものであるところ,当該「UV硬化された垂直配向液晶フィルム」を形成するにあたり,「液晶フィルム」を構成する液晶分子として,棒状液晶化合物を用いることは,甲第5号証に「塗布層を100℃で1分加熱して,棒状液晶性分子を配向させ,光学異方性素子を作製した。形成した液晶層中の棒状液晶性分子について,配向性状態を偏光顕微鏡を用いて観察したところ棒状液晶性分子は,支持体面に対し90゜の角度で垂直(ホメオトロピック)配向していた。」(段落【0280】)と記載されているように,周知の事項といえるから,甲1発明には,「第2位相差領域を紫外線硬化性の垂直配向棒状液晶化合物で形成すること」により作成されたものを含むといえる。
しかしながら,上記2及び3で検討したとおり,訂正発明1は,甲第1号証に記載されたものではないから,訂正発明1に係る「液晶表示装置」「を製造する方法」についても,甲第1号証に記載されたものとはいえない。
よって,訂正発明11は甲第1号証に記載されたものではない。

8 まとめ
上記2?7で検討したとおり,訂正発明1,3,9,10及び11は,いずれも甲第1号証に記載されたものではない。
よって,「他の出願」である甲第2号証に係る出願の優先権証明書において,甲第1号証の記載と対応する記載がされているか否か検討するまでもなく,上記のとおり,訂正発明1,3,9,10及び11が,甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえないから,訂正発明1,3,9,10及び11は,特許法第29条の2に規定する発明に該当しない。

第5 むすび
以上のとおりであるから,異議申立書に記載された理由によっては,訂正発明1,3,9,10及び11に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に訂正発明1,3,9,10及び11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして,訂正により請求項8が削除されたため,請求項8に係る特許に対して,特許異議申立人 小林 敏樹がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項に係る特許が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで、前記面内レターデーション(Re)と、前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし、Nz=0.8?1.2を除く)で、さらに、第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり、前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり、且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず、前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで、及び
前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり、
第1偏光膜、第1位相差領域、第2位相差領域及び液晶セルを、この順序で有し、且つ第1位相差領域の遅相軸が、前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり、
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され、該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm、且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし、Re=0mm、かつRth=0mmを除く)であり、前記第1位相差領域の膜厚が20?80μmである液晶表示装置。
【請求項2】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで、前記面内レターデーション(Re)と、前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし、Nz=0.8?1.2を除く)で、さらに、第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり、前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり、且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず、前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで、及び
前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり、
第1偏光膜、第1位相差領域、第2位相差領域及び液晶セルを、この順序で有し、且つ第1位相差領域の遅相軸が、前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり、
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され、該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm、且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし、Re=0mm、かつRth=0mmを除く)であり、液晶セルの液晶層の厚さd(μm)と屈折率異方性Δnとの積Δn・dが0.2?0.4μmである液晶表示装置。
【請求項3】
前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜の厚みが40μm以下である請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで、前記面内レターデーション(Re)と、前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし、Nz=0.8?1.2を除く)で、さらに、第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり、前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり、且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず、前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで、及び
前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり、
第1偏光膜、第1位相差領域、第2位相差領域及び液晶セルを、この順序で有し、且つ第1位相差領域の遅相軸が、前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり、
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され、該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm、且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし、Re=0mm、かつRth=0mmを除く)であり、前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜がセルロースアシレートフイルム又はノルボルネン系フイルムを含む液晶表示装置。
【請求項5】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで、前記面内レターデーション(Re)と、前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし、Nz=0.8?1.2を除く)で、さらに、第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり、前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり、且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず、前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで、及び
前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり、
第1偏光膜、第1位相差領域、第2位相差領域及び液晶セルを、この順序で有し、且つ第1位相差領域の遅相軸が、前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり、
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され、該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm、且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし、Re=0mm、かつRth=0mmを除く)であり、前記第2偏光膜を挟持する保護膜のうち少なくとも液晶層に近い側の保護膜がアシル基による置換度が2.87以上のセルロースアシレートを含む液晶表示装置。
【請求項6】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで、前記面内レターデーション(Re)と、前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし、Nz=0.8?1.2を除く)で、さらに、第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり、前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり、且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず、前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで、及び
前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり、
第1偏光膜、第1位相差領域、第2位相差領域及び液晶セルを、この順序で有し、且つ第1位相差領域の遅相軸が、前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり、
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され、該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm、且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし、Re=0mm、かつRth=0mmを除く)であり、液晶セルの一対の基板のうち視認側と反対側の基板により近い位置に、前記第1位相差領域及び前記第2位相差領域が配置されている液晶表示装置。
【請求項7】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで、前記面内レターデーション(Re)と、前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし、Nz=0.8?1.2を除く)で、さらに、第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり、前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり、且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず、前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで、及び
前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり、
第1偏光膜、第1位相差領域、第2位相差領域及び液晶セルを、この順序で有し、且つ第1位相差領域の遅相軸が、前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり、
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され、該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm、且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし、Re=0mm、かつRth=0mmを除く)であり、第1偏光膜を挟持する一対の保護膜をさらに有する液晶表示装置。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
前記第2偏光膜側にバックライトを配置した請求項1?7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
請求項1?7及び9のいずれか1項に記載の液晶表示装置を製造する方法であって、
前記第1位相差領域を二軸延伸することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1?7及び9のいずれか1項に記載の液晶表示装置を製造する方法であって、
前記第2位相差領域を紫外線硬化性の垂直配向棒状液晶化合物で形成することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項12】
少なくとも、第1偏光膜と、第1位相差領域と、第2位相差領域と、液晶層及び該液晶層を挟持する一対の基板からなる液晶セルと、第2偏光膜とを含み、黒表示時に該液晶層の液晶分子が前記一対の基板の表面に対して平行に配向する液晶表示装置であって、
前記第1位相差領域のレターデーション(Re)が60nm?200nmで、前記面内レターデーション(Re)と、前記第1位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)を用いてNz=Rth/Re+0.5で定義される第1位相差領域のNz値が0.8を超え1.5以下(ただし、Nz=0.8?1.2を除く)で、さらに、第1位相差領域は二軸配向した複屈折ポリマーフイルムであり、前記第2位相差領域の面内のレターデーションが50nm以下であり、且つ光学軸が前記第2位相差領域の面内に含まれておらず、前記第2位相差領域の厚み方向のレターデーション(Rth)が-200nm?-50nmで、及び
前記第1偏光膜の透過軸が、黒表示時の液晶分子の遅相軸方向に平行であり、
第1偏光膜、第1位相差領域、第2位相差領域及び液晶セルを、この順序で有し、且つ第1位相差領域の遅相軸が、前記第1の偏光膜の透過軸に平行であり、
第2偏光膜は一対の保護膜によって挟持され、該一対の保護膜の液晶層に近い側の保護膜の面内レターデーション(Re)が0?5nm、且つ厚み方向のレターデーション(Rth)が20nm?-20nm(ただし、Re=0mm、かつRth=0mmを除く)である液晶表示装置を製造する方法であって、
前記第2位相差領域である液晶層の製膜時の溶媒が、アミド、スルホキシド、ヘテロ環化合物、炭化水素、アルキルハライド、エステル、ケトン又はエーテルのいずれか一種類以上であることを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2位相差領域である液晶層の製膜時の溶媒が、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ベンゼン、ヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸メチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、又は1,2-ジメトキシエタンのいずれか一種類以上である、請求項12に記載の液晶表示装置の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-10-10 
出願番号 特願2013-209961(P2013-209961)
審決分類 P 1 652・ 16- YAA (G02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山口 裕之鈴木 俊光  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 近藤 幸浩
恩田 春香
登録日 2016-02-05 
登録番号 特許第5878905号(P5878905)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
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