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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1335137
異議申立番号 異議2017-700197  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-27 
確定日 2017-11-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5983183号発明「外用消炎鎮痛剤製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 1.特許第5983183号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕について訂正することを認める。2.特許第5983183号の請求項1?8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5983183号(請求項の数は8、以下「本件特許」という。)は、平成24年8月24日(優先権主張平成23年8月26日)に特許出願され、平成28年8月12日にその特許権が設定登録され、その後、特許異議申立人黒川真一(以下、単に「異議申立人」という。)より本件特許の請求項1?8に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがなされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。

平成29年4月26日付け:取消理由の通知
同年7月25日 :訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年9月25日 :意見書の提出(異議申立人)

第2 訂正の可否
1.訂正の内容
平成29年7月25日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、実質的に以下(1)?(3)のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり訂正する。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?8についても併せて訂正する。なお、訂正前の請求項1?8は、一群の請求項である。

・本件訂正前
「【請求項1】
(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が30?70質量%である液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品。」

・本件訂正後
「【請求項1】
(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40?70質量%である、均質な液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品」

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7を以下のとおり訂正する。
また、請求項7を引用する請求項8についても併せて訂正する。

・本件訂正前
「【請求項7】
液体組成物が、さらに組成物中15?65質量%の水を含有する請求項1?6のいずれか1項記載の外用消炎鎮痛剤製品。」

・本件訂正後
「【請求項7】
液体組成物が、さらに組成物中15?52質量%の水を含有する請求項1?6のいずれか1項記載の外用消炎鎮痛剤製品。」

(3)訂正事項3
明細書の段落【0006】を、以下のとおり訂正する。

・本件訂正前
「従って、本発明は下記外用消炎鎮痛剤製品を提供する。
[1].(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が30?70質量%である液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品。
・・・
[7].液体組成物が、さらに組成物中15?65質量%の水を含有する[1]?[6]のいずれかに記載の外用消炎鎮痛剤製品。
・・・」

・本件訂正後
「従って、本発明は下記外用消炎鎮痛剤製品を提供する。
[1].(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40?70質量%である、均質な液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品。
・・・
[7].液体組成物が、さらに組成物中15?52質量%の水を含有する[1]?[6]のいずれかに記載の外用消炎鎮痛剤製品。
・・・」

2.本件訂正の可否についての判断
(1)訂正事項1について
この訂正は、請求項1に係る発明である「外用消炎鎮痛剤製品」に関し、(B)成分の含有量を「30?70質量%」から「40?70質量%」へと減縮するとともに、ロールオン容器に充填される「液体組成物」について「均質な」という要件を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、(B)成分の含有量を「40?70質量%」とすることは、願書に添付した明細書の段落【0016】に記載されており、また、「液体組成物」を「均質な」ものとすることは、同段落【0024】に記載されているから、この訂正は新規事項の追加に該当しない。そして、この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
この訂正は、組成物中の水の含有量を「15?65質量%」から「15?52質量%」へと減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。また、水の含有量を52質量%にすることは、願書に添付した明細書の段落【0055】の実施例24に記載されているから、この訂正は新規事項の追加に該当しない。そして、この訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
この訂正は、明細書の段落【0006】の記載について、特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるといえる。また、この訂正が新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。
よって、結論1.のとおり、本件訂正を認める。

第3 本件発明
上記第2の2.で検討のとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?8に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明8」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、請求項2?8の記載は省略する。)。

「【請求項1】
(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40?70質量%である、均質な液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品」

第4 取消理由についての判断
1.取消理由の概要
平成29年4月26日付け取消理由の内容は、概略、以下のとおりである。(なお、以下、「甲第1号証」等を「甲1」等と省略して表記する。)

本件特許の請求項1?8に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

引用文献1:特開2011-046746号公報(甲1)
引用文献2:米国特許第2937392号明細書(甲2)
引用文献3:米国特許出願公開第2010/0256100号明細書(甲3)
引用文献4:久光製薬株式会社、”『ココサロ(登録商標)』新発売のお知らせ”、[online]、平成22年6月、[平成28年10月15日検索]、インターネット <URL:http://www.hisamitsu.co.jp/company/pdf/newitem_100615.pdf>(甲4-1)
引用文献5:サンケイリビング新聞社、”読者がおすすめ! 仕事中・ランチタイムに気分を上げるお気に入りアイテム/シティリビングWeb東京版”、[online]、平成23年2月16日、[平成28年10月15日検索]、インターネット <URL:http://city.living.jp/tokyo2/tokusyu/110216/01.html>(甲4-2)
引用文献6:特開昭48-099316号公報(審査において提示された周知技術を示す文献)
引用文献7:特開昭61-137814号公報(審査において提示された周知技術を示す文献)

2.取消理由についての判断
(1)引用文献の記載事項
引用文献1には、以下の事項(1-1)?(1-5)が記載されている。

(1-1)「【請求項3】
フェニル酢酸誘導体又はその薬学的に許容される塩、及びメントール類を含有する消炎鎮痛剤。」(特許請求の範囲参照)
(1-2)「【0008】
本発明の消炎鎮痛剤は、フェニル酢酸誘導体又はその薬学的に許容される塩、及びメントール類を含有することを特徴とする。本発明の消炎鎮痛剤の剤型は特に制限されず、例えば、液剤(ローション剤、乳剤等)、軟膏剤、クリーム剤、硬膏剤、ゲル剤、エアゾール剤などの形態で使用することができる。好ましい剤型は、ローション剤、貼付剤である。」
(1-3)「【0017】
液剤を調製する場合、通常の液剤の調製方法により調製することができる。例えば上記各成分を上記溶剤に順次添加し、必要に応じて加熱し、溶解することによって調製することができる。」
(1-4)「【0032】
実施例1
下記表1に示す液剤を調製し、この液剤を肩こりを訴える10名の被験者の肩に適用した。適用後30分、60分後の肩こり改善度合いを各人ごとに評価し、その改善度合いによって評価点を付け、これを表2に示した。この評価点の平均値を肩こり改善度の指標とした。」
(1-5)「【0038】
処方例2(ローション剤)
4-ビフェニル酢酸 3g
l-メントール 3g
プロピレングリコール 10g
エタノール 40mL
イソプロパノール 20g
精製水 適 量
合 計 100mL」

また、引用文献2には以下の事項(2-1)?(2-3)が、引用文献3には以下の事項(3-1)?(3-3)が、引用文献4には以下の事項(4-1)及び(4-2)が、引用文献5には以下の事項(5-1)及び(5-2)が、引用文献6には以下の事項(6-1)が、引用文献7には以下の事項(7-1)及び(7-2)が、それぞれ記載されている。なお、引用文献2,3は英語文献であるため、異議申立人による抄訳文に基づく訳文を示す(下線は当審による。)。

(2-1)「本発明は、液体のインク、化粧品、医薬製剤、食品及び他の液体物質のロールオンアプリケータに関する。」(第1欄第15?17行参照)
(2-2)「ロールオンアプリケータは今日でも一般的に使用されている。それらは、液体のための容器と、ボールシートと、前記シート上に回転可能に支持されたボールとを有するノズルを含む。選択された表面に液体を塗布するためには、ノズルが下方を向くように容器を反転させ、次いでその容器をボールがその転がり接触で表面を横切って移動させるだけでよい。ボールは、容器の液体内容物で被覆され、次に、選択された表面を同じ材料で被覆する。」(第1欄第21?30行参照)
(2-3)「ここでノズルアセンブリを見ると、・・・。ボール34は、金属、好ましくはステンレススチール、又はニッケル、クロムなどの金属のような防食及び防錆材料でめっきされたスチールでできている。」(第2欄第56?62行参照)

(3-1)「[0002] 本発明は、高レベルのサリチル酸及び/又はその少なくとも1つの誘導体を含有する化粧用及び/又は皮膚病用の組成物を含むロールオンアプリケータ構造を特徴とするパッケージング及び塗布アセンブリ、特に、脂性の及び/又はにきびの多い及び/又は脂漏性の皮膚に対するケア用に用いられるものに関する。」
(3-2)「[0009] さらに、アプリケータボールを使用するロールオン装置は、身体消臭剤の容器及び塗布のために広く使用されている。
[0010] ロールオンタイプの化粧品及び/又は衛生用品の例には、消臭剤や、ガーニエ(Garnier)によって栄養学的範囲で販売されているカフェインアイロールオン製品が含まれる。
[0011] ロールオンタイプの化粧品の容器及び塗布のためのアセンブリの他の例は、米国特許第5,553,957号、米国特許第4,033,700号、米国特許第4,021,125号、及び米国特許第6,132,126号といった特許文献に記載されている。」
(3-3)「[0034] 1つの好ましい実施形態では、アプリケータ要素は、好ましくはボール、より好ましくは金属ボール、及び非常に好ましくはステンレススチールボールである。」

(4-1)「

」(第2頁下段参照)
(4-2)「

」(第3頁上段参照)

(5-1)「ステンレスボールで塗りやすいし、気分転換したいときにサっと塗れるのがいいですね。ダイエットにいいというウワサがあったグレープフルーツの香りを使っています(笑)。(矢島美穂さん、金融、31歳)」
(5-2)「写真/久光製薬「ココサロ」(ボディ用ローション)ラベンダーの香り、グレープフルーツの香り、ユーカリの香り 各498円」

(6-1)「特許請求の範囲
主基剤として高級脂肪酸エステル類、ラノリン類、グリコール類等の単独若しくは混合を用いこれに鎮痛消炎主剤を入れたものに、被膜形成物質としてアルミニウムオクトエートを添加しロ-ルオンタイプ又はエアゾール剤型の持続性効果をもたらしめることを特徴とする外用鎮痛消炎剤の製法。」

(7-1)「(1)低級一価アルコールと低級一価脂肪酸エステルとを主成分とする溶媒に、分子内に酢酸基又はプロピオン酸基を有する非ステロイド系の消炎鎮痛薬、及びメチルメタアクリレートとブチルメタアクリレートの共重合体からなる被膜形成物質を含有せしめたことを特徴とする消炎鎮痛外用液剤。」(特許請求の範囲参照)
(7-2)「本発明によって得られる外用液剤は、例えばロールオンタイプの容器を用いることで手軽に治療に供することができる。」(第4頁右下欄第8?10行参照)

(2)引用発明
上記記載事項(1-1)、(1-2)、(1-4)、(1-5)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「以下の組成を有するローション剤であって、肩こり改善のために使用可能な消炎鎮痛剤

4-ビフェニル酢酸 3g
l-メントール 3g
プロピレングリコール 10g
エタノール 40mL
イソプロパノール 20g
精製水 適 量
合 計 100mL」

(3)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と引用発明とを対比すると、後者における「4-ビフェニル酢酸」、「エタノール及びイソプロパノール」、「l-メントール」、「ローション剤」、「消炎鎮痛剤」はそれぞれ、前者における「(A)消炎鎮痛成分」、「(B)低級アルコール」、「(C)メントール」、「液体組成物」、「外用消炎鎮痛剤」に相当する。
そして、エタノールの密度が0.789g/mLであること、イソプロパノールの密度が0.785g/mLであること、及びプロピレングリコールの比重が水=1に対して1.04であることを考慮すると、引用発明の組成は、概ね以下のような組成であるといえる(要すれば、特許異議申立書第19頁第13行から第20頁第7行を参照のこと)。

「4-ビフェニル酢酸 約3.3質量%( 3.0g)
l-メントール 約3.3質量%( 3.0g)
プロピレングリコール 約10.9質量%( 10.0g)
エタノール 約34.3質量%(約31.6g)
イソプロパノール 約21.7質量%( 20.0g)
精製水 約26.6質量%(約24.5g)」

そうすると、引用発明における(B)成分の含有量は約56.0質量%となるから、本件発明1における「(B)成分の含有量が40?70質量%である」に相当する。
したがって、本件発明1と引用発明は、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40?70質量%である液体組成物を備えた、外用消炎鎮痛剤製品」

<相違点>
相違点1:
本件発明1においては、「液体組成物」が「均質な」ものであることが特定されているのに対し、引用発明では、そのことが特定されていない点。

相違点2:
本件発明1においては「液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器」を備えることが特定されているのに対し、引用発明においてはそのことが特定されていない点。

イ.相違点の判断
a.相違点1について
引用文献1には、引用発明のローション剤が均質であることについて明記はされていないが、段落【0017】に「液剤を調製する場合、通常の液剤の調製方法により調製することができる。例えば上記各成分を上記溶剤に順次添加し、必要に応じて加熱し、溶解することによって調製することができる。」(記載事項(1-3)参照)と記載されているように、ローション剤のような液体組成物を調製するに当たって、各成分を溶解して用いるべきであることは本件特許の優先日時点での技術常識であり、単に混合しただけで溶解しない場合には、加熱等の手段を講じることは、当業者が当然に行うことである。
そして、液体組成物において各成分が溶解していれば、当該液体組成物が均質であるといえることは明らかであるから、引用発明のローション剤が均質であることは、明記されていないとしても、記載されているに等しい事項といえる。よって、この点は実質的な相違点ではない。
なおこの点に関し、特許権者は、平成29年7月25日付け意見書において、実験成績証明書(乙第1号証)を示しつつ、引用発明のローション剤が均質でないことを主張しているが、当該実験成績証明書に記載された実験においては、各成分を溶解するために加熱などの工程を行ったことは記載されていないから、当該実験のみをもって、引用発明の液体組成物が均質なものではないと結論づけることはできない。

b.相違点2について
引用文献1には、「ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器」を用いることは記載されていないものの、剤型は特に制限されないことが記載されており(記載事項(1-2)参照)、また、消炎鎮痛成分を含有する液体組成物の容器としてロールオン容器を使用し得ること(記載事項(6-1)、(7-1)、(7-2)参照)、及び医薬等に用いるロールオン容器の塗布ボールとしてステンレス製のものを使用し得ること(記載事項(2-1)?(2-3)、(3-1)?(3-3)参照)は、本件特許の優先日時点での技術常識である。
そして、引用文献5には、「ココサロ(登録商標)」という商品について、「ステンレスボールで塗りやすい」というユーザーの評価が記載されており(記載事項(5-1)、(5-2)参照)、引用文献4によると、「ココサロ(登録商標)」は、水、エタノール及びメントールが配合されているローションをロールオン容器に充填した製品であると認められる(記載事項(4-1)、(4-2)参照)。
そうすると、水、エタノール及びメントールを含有するローション剤である引用発明を、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器に充填して用いることによって、「ココサロ(登録商標)」と同様に「塗りやすい」との効果が奏されることは、当業者が当然に期待し得ることであるといえる。
しかしながら、本件発明1によって奏される効果の一つである「塗布ムラの改善」については、引用文献1?7に記載も示唆もされておらず、また、本件特許の優先日時点の技術常識からも予測できない効果である。かかる効果に関し、本件特許の明細書には、本件発明1の外用消炎鎮痛剤製品を用いた場合に、接触角が30度未満、ぬれ性が2.9秒以下であり、塗布ムラの評価が「◎」又は「○」であったことを示す試験結果が多数示されている(実施例1?27)。他方、特許権者が平成29年7月25日付け意見書とともに提出した実験成績証明書(乙第2号証)においては、引用文献4及び5に記載された「ココサロ(登録商標)」を用いて同様の試験を行った場合に、接触角が50度、ぬれ性が5秒以上、塗布ムラの評価が「△」であったことが示されている。これらの結果から、「塗布ムラの改善」に関して、本件発明1が、引用文献4及び5に記載された「ココサロ(登録商標)」よりも優れた効果を有するものであること、すなわち、単にローション剤をステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器に充填して用いるだけでは奏されることのない優れた効果を奏するものであることが裏付けられる。
そうすると、引用発明を、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器に充填して用いることによって、引用文献1?7の記載、及び本件特許の優先日時点の技術常識からは予測し難い格別な効果が奏されるといえるから、上記相違点2を想到容易であるということはできない。

ウ.小括
以上のとおり、本件発明1は、引用文献1?7に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。

(4)本件発明2?8
請求項2?8の記載は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものである。そして、本件発明1が、引用文献1?7に記載の発明に基づいて想到容易であるということができないことは上述のとおりであるから、本件発明2?8も同様の理由により、想到容易であるということはできない。

3.まとめ
以上のとおり、本件発明1?8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。

第5 特許異議申立理由について
1.特許異議申立理由の概要
異議申立人の主張する異議申立理由は、概略、以下のとおりである。

・申立理由
本件発明1?8は、甲1?甲3に記載された発明、及び本件特許の優先日時点の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

甲1:特開2011-046746号公報(取消理由における引用文献1)
甲2:米国特許第2937392号明細書(取消理由における引用文献2)
甲3:米国特許出願公開第2010/0256100号明細書(取消理由における引用文献3)

2.当合議体の判断
本件発明1?8が、取消理由における引用文献1?7に記載の発明に基づいて想到容易であるということができないことは上記第4の2.で述べたとおりであるから、当合議体は、上記申立理由に理由がないと判断する。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
外用消炎鎮痛剤製品
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物が、金属塗布ボールを有する容器に充填された、外用消炎鎮痛剤製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗布部位に組成物を塗布する塗布容器としてはスポンジ製のものがある。しかし、スポンジ容器は、塗布時の摩擦による摩損・劣化が生じ、時には破損することがある。また塗布対象部分で使用したときに液だれが生じることが多く、衣類の汚染が問題である。液だれをなくすために、少なく塗布しようとすると、塗布面積が少なくなるため、患部全域に有効成分が行き渡らず、効果が少なくなるという問題がある。また、塗布時の押し圧による効果感は低い。それを解決する手段として、塗布部がロールオン形状のものがある。しかしながら、これは塗付時に塗布ムラが生じるという問題があった。以上のことから、塗布ボールを有するロールオン容器に充填された組成物の塗布時の塗布ムラを解消する技術が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-186997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ロールオン容器に充填された組成物の塗布時の塗布ムラを解消し、組成物中の薬用成分を対象塗布部位に効果的に塗布でき、腰の痛み、肩凝り、筋肉痛改善効果を向上させる、外用消炎鎮痛剤製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が30?70質量%である液体組成物を、金属塗布ボールを有するロールオン容器に充填し、金属塗布ボールを有するロールオン容器から、対象塗布部位に塗布することにより、凝りが改善すると共に、塗布時の塗布ムラを解消することによって、組成物中の(A)消炎鎮痛成分を効果的に塗布でき、腰の痛み、肩凝り、筋肉痛の改善効果が飛躍的に向上することを知見し、本発明をなすに至ったものである。さらに、充填された組成物が、金属塗布ボール材と特定の接触角及びぬれ性を有することで、上記効果がより高くなることを知見した。
【0006】
従って、本発明は下記外用消炎鎮痛剤製品を提供する。
[1].(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40?70質量%である、均質な液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品。
[2].塗布対象部分に塗布ボールを押し付け、転動させることにより、充填された液体組成物を塗布対象部分に塗るものである[1]記載の外用消炎鎮痛剤製品。
[3].液体組成物が、金属塗布ボール材との接触角が30度以下、ぬれ性が2.9秒以下である[1]又は[2]記載の外用消炎鎮痛剤製品。
[4].(A)成分の含有量が、0.5?10質量%である[1]、[2]又は[3]記載の外用消炎鎮痛剤製品。
[5].(C)成分の含有量が、0.1?10質量%である[1]?[4]のいずれかに記載の外用消炎鎮痛剤製品。
[6].金属塗布ボールの大きさが、3?30mmφである[1]?[5]のいずれかに記載の外用消炎鎮痛剤製品。
[7].液体組成物が、さらに組成物中15?52質量%の水を含有する[1]?[6]のいずれかに記載の外用消炎鎮痛剤製品。
[8].腰の痛み、筋肉痛、又は腰、肩もしくは足の凝りの緩和・改善用である[1]?[7]のいずれかに記載の外用消炎鎮痛剤製品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充填された液体組成物の対象塗布部位への塗布ムラを解消し、腰の痛み、肩凝り、筋肉痛改善効果が飛躍的に向上した、消炎鎮痛成分を含有する組成物が、ロールオン容器に充填された外用消炎鎮痛剤製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の外用消炎鎮痛剤製品は、(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が30?70質量%である液体組成物と、この液体組成物を充填した金属塗布ボールを有するロールオン容器とを備えたものである。
【0009】
[金属塗布ボールを有するロールオン容器]
塗布ボールを有するロールオン容器とは、回転する塗布ボールを有し、塗布対象部分に塗布ボールを押し付け、転動させることにより、充填された組成物を塗布対象部分に塗るものである。塗布ボールを有するロールオン容器は手を汚さずに塗りやすいという利点を有する一方、塗布ムラを生じやすいという問題があった。ロールオン容器としては、塗布ボールを有することが重要であり、液体を収容する容器本体は特に限定されない。容器としては、例えば、特開2005-186997号公報に記載されたものが挙げられる。
【0010】
塗布ボール部分は金属塗布ボール(金属球)であり、形は特に限定されないが、回転を容易にする点から、真球に近いものが好ましい。また、防錆又は防錆処理を施した金属球が好ましい。プラスチック製だと本発明の液体組成物と組み合わせても、接触角、ぬれ性を上げることが困難であり、塗布ムラを解消することが難しくなり、目的とする凝り改善効果が低い。また、液体組成物によるクラッキング等の劣化が懸念される。また、本発明の液体組成物との組み合わせによる塗布ムラ解消効果、液体組成物の安定性、金属塗布ボールの腐食性の点から、金属塗布ボールの素材はステンレス(鋼)が好ましい。ステンレスとしては、SUS201(JIS規格、以下同様)、202、301、302、303、304、305、316、316L、317、329J1、403、405、420、430、430LX、630、チタン処理、クロム処理等が挙げられる。中でも、SUS304、SUS316、SUS316L、チタン処理金属球が好ましく、SUS304がより好ましい。金属球の数は1個でも複数でもよいが、携帯性の点から1個が好ましい。
【0011】
金属塗布ボールの大きさは塗布対象部分に合わせて適宜選定されるが、例えば、肩凝り改善を目的とする場合には、3?30mmφが好ましく、5?25mmφがより好ましく、8?18mmφがさらに好ましい。金属塗布ボールの直径が小さすぎると、塗付距離に対する液塗布量が少なくなり、凝り改善効果が低くなる傾向があり、一方、大きすぎると塗布距離に対する塗布量は多くなるが、凝り部分を適度に刺激するロール指圧の距離(回数)が減るため、押圧効果があまり得られず、凝り改善効果が低くなる傾向がある。
【0012】
[液体組成物]
本発明の液体組成物は、(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が30?70質量%であるものである。
【0013】
(A)消炎鎮痛成分
(A)成分を配合することで、金属塗布ボールを有するロールオン容器に充填された液体組成物(以下、充填された液体組成物と略す場合がある。)を、塗布対象に塗布ムラなく塗ることができ、結果として腰の痛み、肩凝り、筋肉痛改善効果が向上する。
消炎鎮痛成分としては、消炎鎮痛効果を有する薬物であれば制限はないが、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、インドメタシン、ピロキシカム、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナク、ケトプロフェン及びこれらの薬学的に許容される塩が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらの中でもフェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、インドメタシンが好ましい。
【0014】
(A)成分の含有量は、その薬物で効果が得られる量が様々で一概にはいえないが、組成物中0.5質量%以上とすることで、腰の痛み、肩凝り、筋肉痛改善の効果をより得ることができ、0.5?10質量%が好ましく、1?5質量%がより好ましい。10質量%を超えて配合しても、効果がさほど高くならず、組成物の均質性を保つことが困難になるおそれがある。
【0015】
(B)低級アルコール
低級(炭素数1?4)アルコールとしては、特に限定されることはないが、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール等が挙げられる。これらの中でも、塗布ムラのなさ、腰の痛み、肩凝り、筋肉痛改善効果、臭い、刺激等の点からエチルアルコール(エタノール)が好ましい。
【0016】
(B)成分の含有量は、組成物中30?70質量%であり、40?70質量%がより好ましい。(B)成分の含有量が30質量%未満では、接触角が30度を超え、塗りムラが生じる。また、(A)消炎鎮痛成分の溶解性が悪くなり、液体組成物の均質性を保てなくなるおそれがある。一方、70質量%を超えると、人によっては皮膚刺激性が出てくる可能性がある。
【0017】
(C)メントール
メントールとしては、l-メントール、dl-メントール等の公知のものを用いることができ、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。(A)?(C)成分を併用して配合することで、液体組成物を、塗布対象に塗布ムラなく塗布でき、腰の痛み、肩凝り、筋肉痛改善効果が向上する。
【0018】
(C)成分の含有量は、組成物中0.1?10質量%が好ましく、0.5?8質量%がより好ましく、3?8質量%がさらに好ましい。このような範囲とすることで、塗布ムラのなさ、腰の痛み、肩凝り、筋肉痛改善効果をより得ることができる。なお、10質量%を超えると、液体組成物の均質性を保てなくなるおそれがある。
【0019】
本発明の構成とすることで、本発明の充填された液体組成物は対象に塗布ムラなく塗布することができ、凝り改善効果が向上する。また、液体組成物が、金属塗布ボール材(金属塗布ボールの材料をいう、本発明の接触角及びぬれ性の測定では金属塗布ボールと同じ素材の板を用いる)との接触角が30度以下、ぬれ性が2.9秒以下であることが好ましい。このような範囲とすることで、塗布ムラをより抑制することができる。なお、下限は特に限定されないが、接触角10度、ぬれ性0秒(接触時にすでに15度未満)を選択できる。
【0020】
本発明の充填された液体組成物を、対象に塗布ムラなく塗布することができる指標として、金属塗布ボール材との接触角及びぬれ性を選定すること、そして接触角30度以下、ぬれ性2.9秒以下を選択することで、目的が達せられることは本発明者の新知見である。なお、本発明の構成(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が30?70質量%である液体組成物とすることで、金属塗布ボール材との接触角及びぬれ性を上記範囲にすることができる。
【0021】
接触角は、液体組成物と金属塗布ボールとのなじみやすさの指標である。接触角が30度を超えると、液膜が厚くなり、液がボタボタとムラを生じて出やすくなるおそれがある。ぬれ性は、液体組成物の塗布ボール表面への広がりやすさの指標であり、2.9秒以下とすることで、表面に速く広がることによって、3?30mmφ程度の塗布ボールへ液体組成物がスムースに連続的に供給され、その結果、液体組成物は連続的に転写可能となる。上記接触角及びぬれ性は、金属塗布ボールと同じ材料の金属板で確認するものであるが、上記接触角及びぬれ性の範囲とすることで、3?30mmφ程度の金属塗布ボールを有する容器で塗布した場合、液体組成物の対象塗布部位への塗布ムラが解消されることを知見した。
【0022】
接触角は以下の測定方法による。
接触角は、常法に従い接触角測定装置により測定する。CCDカメラにて取りこまれた液滴画像から、自動的に固体間/気液間の境界を決定し、カーブフィッティングを行い、接触角を測定する。液体組成物を金属塗布ボールと同じ素材の金属板に、高さ約4mmから滴下液量6μLを、6μL/sの流量で滴下した際の、金属板に接触直後の液体組成物の左右の接触角度を計測する。計測した結果から、左右の平均接触角を10度刻みで記録し、それを製剤の接触角と規定する。例えば、10度としたものは4.5?14.4度である。
【0023】
ぬれ性は以下の測定方法による。
接触角が計測され始めてから、左右の平均接触角15度未満になるまでの時間(秒)をぬれ性とした。
【0024】
本発明の液体組成物は、液体組成物全体が溶液、懸濁液、乳濁液として均質なものとすることが好ましい。このようにすることで、腰の痛み、肩凝り、筋肉痛の改善効果を、使用当初から使い切るまで、塗布ムラのなさを確保し、均一に効果を保つことができる。本発明において、「均質」とは、成分や密度、品質等にムラがなく一様であることをいう。
【0025】
本発明の液体組成物には、腰の痛み、肩凝り、消炎鎮痛剤組成物に通常使用される、(A)成分以外の薬物及び添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて配合することができる。アルニカチンキ等の血流促進成分、消炎鎮痛成分、低級アルコール、メントール以外の成分が多いと、均質な液体組成物の調製が難しくなるだけでなく、金属塗布ボール材への接触角やぬれ性が低下する。
【0026】
清涼化剤としては、精油、例えば、カンフル、dl-カンフル、ハッカ油、スペアミント油、ペパーミント油が挙げられる。
【0027】
界面活性剤としては、例えば、化粧品、医薬品、医薬部外品等一般外用剤に使用される界面活性剤であれば特に制限はない。親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビットミツロウ、及び、蔗糖脂肪酸エステル等が挙げられる。親水性の非イオン界面活性剤としては、化粧品や医薬品、医薬部外品等、一般外用剤に使用される親水性非イオン界面活性剤であれば特に制限はないが、例えば、自己乳化型グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及び、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ酸オレイン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル)等が挙げられる。これらを組み合わせて使用することもできる。上述の非イオン界面活性剤等以外に、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸セッケン類、ラウリル硫酸ナトリウム、POEラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル類、ラウロイルサルコシンナトリウム、ココイル-N-メチルタウリンナトリウム、ラウリルグルタミン酸ナトリウム等のアシル化アミノ酸塩類、モノラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤等を挙げることができる。界面活性剤としては、この中でも非イオン界面活性剤が好ましい。
【0028】
高級アルコールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
【0029】
高級脂肪酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。
【0030】
ステロール類としては、特に限定されるものではないが、例えば、コレステロール、コレスタノール、ラノステロール、デヒドロコレステロール等の動物性ステロール、βシトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、エルゴステロール等の植物性ステロール、ミコステロール、チモステロール等の微生物由来のステロール類等が挙げられる。これらは、そのままでも、安定化のために水素添加等の化学処理を施されていてもよい。
【0031】
油性成分としては、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素類、オリーブ油、マカデミアンナッツ油、ホホバ油等の植物油、牛脂等の動物油、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/エイコサン二酸)ポリグリセリル等の重縮合物等のエステル類、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、シクロメチコン等のシリコーン類等が挙げることができる。
【0032】
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等を挙げることができる。中でも、塗りムラ抑制の点から、1,3-ブチレングリコールが好ましい。また、プロピレングリコールは、べたつき、使用感が悪くなるので配合しないことが好ましく、プロピレングリコールを含有しない液体組成物とすることよい。
【0033】
溶剤としては、水等が挙げられる。水を配合した場合の含有量は、組成物中15?65質量%が好ましく、25?60質量%がより好ましい。
【0034】
色素は、衣類への汚染を考え、配合しない場合が多いが、必要に応じて法定色素(染料、顔料、レーキ)等を配合することができる。
【0035】
香料としては、精油又は合成香料が挙げられる。ユーカリ油、ラベンダー油、ローズマリー油、レモン油、オレンジ油、グレープフルーツ油等の精油、ラベンダー香料、ハーブ香料、ローズマリー香料、柑橘系香料、グレープフルーツ香料等の合成香料が挙げられる。
【0036】
防腐剤としては、パラベン類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
粘度調整剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、キサンタンガム、プルラン等の水溶性高分子等が挙げられる。
【0038】
pH調整剤・緩衝剤としては、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸、塩酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トロメタモール等が挙げられる。なお、本発明の液体組成物のpHは5?9が好ましい。
【0039】
その他、ノニル酸ワニリルアミド、乳酸メンチル、カンタリスチンキ等の局所刺激剤、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシチンキ、塩化カルプロニウム、センブリエキス等の血行促進剤、オサンショウエキス等の生薬成分、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルリチン、グアイアズレン等の抗炎症剤、アミノ酸等のNMF成分、水溶性コラーゲン、エラスチン、グリチルリチン酸、サリチル酸、グリチルレチン酸、セラミド等の肌荒れ防止剤、パントテン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール、ビタミンE、ビタミンE酢酸エステル、レチノール、ビタミンA酸等の抗老化剤や各種ビタミン類やその誘導体、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、エラグ酸、ルシノール、グリシン亜鉛錯体、トラネキサム酸及びその誘導体等の美白剤、キレート剤としてエデト酸ナトリウム水和物等を挙げることができる。
【0040】
上記に記した、(A)、(B)及び(C)以外の成分の配合量は、組成物中50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0041】
本発明の液体組成物の調製方法は特に限定されないが、例えば、パドルミキサー、ホモミキサー等の通常の攪拌、乳化装置により混合することにより得ることができる。
【0042】
本発明の液体組成物は、外用消炎鎮痛剤組成物としても好適であり、金属塗布ボールを有するロールオン容器充填用液体組成物としても好適である。なお、金属塗布ボールを有するロールオン容器は上述したとおりである。
【0043】
[外用消炎鎮痛剤製品]
本発明において外用消炎鎮痛剤製品とは、上記液体組成物と、この液体組成物を充填した金属塗布ボールを有するロールオン容器とを備えたものをいう。効果としては、腰の痛み、筋肉痛、凝りの緩和、改善が挙げられ、凝りとしては、腰の凝り、肩の凝り、足の凝り等特に限定されないが、特に肩凝りに対して効果をより発揮することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示し、表中の各成分量はAIを示す。
【0045】
[実施例1?27、比較例1?5]
表1?8に示す組成の液体組成物(25℃でのpH5?9の範囲に入るものであった。)を調製し、表中の塗布ボール1個を有するロールオン容器(ポリプロピレン製)に充填した。
充填後の液体組成物について、下記測定及び評価を行った。結果を表中に併記する。
【0046】
(1)接触角
液体組成物を金属塗布ボールと同じ材料の金属板(大きさ50mm×50mm、厚み1mm)に、高さ約4mmから滴下液量6μLを、6μL/sの流量で滴下した際の、金属板に接触直後の液体組成物の左右の接触角度を計測した。接触角測定装置は、英弘精機(株)自動接触角測定装置OCAシリーズを使用した。左右の平均接触角を10度刻みで記録する。例えば、10度としたものは4.5?14.4度である。
【0047】
(2)ぬれ性
接触角が計測され始めてから、左右の平均接触角15度未満になるまでの時間(秒)を0.1秒刻みで測定した。
【0048】
(3)塗布ムラ
被験者(5名)が容器に充填された液体組成物を、15cm程度の距離を10往復して塗布した。その際の塗布ムラを、液が続いて出る(塗布ムラがない)、液が続いて出ない(塗布ムラがある)を確認した。なお、液だれが認められたものは、塗布ムラが観察されなくても×とする。結果を下記評価基準で示す。
<評価基準>
◎:被験者すべて塗布ムラが観察されなかった。
○:塗布ムラが観察されなかった被験者の方が多かった。
△:塗布ムラが観察された被験者の方が多かった。
×:すべての被験者で塗布ムラが観察された/液だれが認められた。
【0049】
(4)肩凝り改善
塗布ムラを測定した5人の被験者が、使用実感がなくなった後に、肩凝りの改善効果を下記7段階評価で評価した。結果を5人の平均点で示す。
<肩凝り改善評価基準>
7:非常に満足
6:かなり満足
5:やや満足
4:どちらともいえない
3:やや不満
2:かなり不満
1:非常に不満
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【0055】
【表6】

【0056】
【表7】

【0057】
【表8】

【0058】
なお、実施例1の液体組成物をポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)のプラスチック板(細川製作所製、素材なりの表面、大きさ50mm×50mm、厚み3mm)で実施例と同様に測定及び評価(塗布ボールの大きさは直径11.1mm)を行った。結果を下記表に示す。
【0059】
【表9】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)消炎鎮痛成分、(B)低級アルコール及び(C)メントールを含有し、(B)成分の含有量が40?70質量%である、均質な液体組成物と、この液体組成物を充填した、ステンレスからなる塗布ボールを有するロールオン容器とを備えた、外用消炎鎮痛剤製品。
【請求項2】
塗布対象部分に塗布ボールを押し付け、転動させることにより、充填された液体組成物を塗布対象部分に塗るものである請求項1記載の外用消炎鎮痛剤製品。
【請求項3】
液体組成物が、金属塗布ボール材との接触角が30度以下、ぬれ性が2.9秒以下である請求項1又は2記載の外用消炎鎮痛剤製品。
【請求項4】
(A)成分の含有量が、0.5?10質量%である請求項1、2又は3記載の外用消炎鎮痛剤製品。
【請求項5】
(C)成分の含有量が、0.1?10質量%である請求項1?4のいずれか1項記載の外用消炎鎮痛剤製品。
【請求項6】
金属塗布ボールの大きさが、3?30mmφである請求項1?5のいずれか1項記載の外用消炎鎮痛剤製品。
【請求項7】
液体組成物が、さらに組成物中15?52質量%の水を含有する請求項1?6のいずれか1項記載の外用消炎鎮痛剤製品。
【請求項8】
腰の痛み、筋肉痛、又は腰、肩もしくは足の凝りの緩和・改善用である請求項1?7のいずれか1項記載の外用消炎鎮痛剤製品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-10-23 
出願番号 特願2012-185232(P2012-185232)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今村 明子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 安川 聡
小川 慶子
登録日 2016-08-12 
登録番号 特許第5983183号(P5983183)
権利者 ライオン株式会社
発明の名称 外用消炎鎮痛剤製品  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  
代理人 特許業務法人英明国際特許事務所  

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