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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C11B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C11B |
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管理番号 | 1335143 |
異議申立番号 | 異議2017-700322 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-03-31 |
確定日 | 2017-11-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6002506号発明「香料組成物、液体芳香剤及び液体芳香剤物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6002506号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〕、〔2?7〕について訂正することを認める。 特許第6002506号の請求項1?7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6002506号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成24年8月29日に特許出願され、平成28年9月9日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年3月31日に特許異議申立人日本香料工業会(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年5月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月27日に訂正の請求及び意見書の提出があり、同年8月1日付けで訂正の請求を申立人に通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、申立人から何ら応答がなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下の訂正事項1?5のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「・・・・・・で表される質量比が1?15である香料組成物。」を、「・・・・・・で表される質量比が1?15であり、前記(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量が10?40質量%である香料組成物。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2の「請求項1に記載の香料組成物を含有する液体芳香剤。」を、「(a1)成分:デュピカール、マイラックアルデヒド、及びトリプラールから選択される1種以上と、 (a2)成分:カシュメラン、及びδ-ダマスコンと、 (a3)成分:シクロガルバネート、メチルオクチンカーボネート、2-t-ブチルシクロヘキシルアセテート及びcis-3-ヘキセニルアセテートから選択される1種以上と、を含有し、 前記(a2)成分/前記(a1)成分で表される質量比が0.1?2、前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比が1?15であり、 前記(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量が10?40質量%である香料組成物が、分散媒に分散されている液体芳香剤。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3の「3級アミン化合物・・・・・を含有する請求項2に記載の液体芳香剤。」を、「さらに、3級アミン化合物・・・・・を含有する請求項2に記載の液体芳香剤。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4の「ポリエーテル変性シリコーン・・・・・に記載の液体芳香剤。」を、「さらに、ポリエーテル変性シリコーン・・・・・に記載の液体芳香剤。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5の「(D)成分:・・・・・のいずれか一項に記載の液体芳香剤。」を、「さらに、(D)成分:・・・・・のいずれか一項に記載の液体芳香剤。」に訂正する。 2.訂正の目的、一群の請求項、新規事項、特許請求の範囲の拡張・変更について 上記訂正事項1は、請求項1に記載された(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分の合計含有量が「10?40質量%」であることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分の合計含有量が「10?40質量%」の範囲であることは、本件特許明細書【0016】に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記訂正事項2は、請求項2が請求項1を引用する記載であったものを、請求項1を引用しないものに書き改めたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 さらに、請求項2に記載された「液体芳香剤」は、(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を所定の割合で含有する香料組成物が、「分散媒に分散されている」ことを特定するものであることから、特許請求の範囲の減縮をも目的とするものである。 また、当該香料組成物が「分散媒に分散されている」ことは、本件特許明細書【0009】に記載されていることから、上記訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記訂正事項3は、請求項2に記載の液体芳香剤に、「さらに」の語句を追加し、「3級アミン化合物及び4級アンモニウム化合物から選択される1種以上のカチオン性化合物」が(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を含有する香料組成物と別個の追加成分であることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、この点は、本件特許明細書【0023】、【0045】?【0046】等に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記訂正事項4は、請求項2又は3に記載の液体芳香剤に、「さらに」の語句を追加し、「ポリエーテル変性シリコーン」が(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を含有する香料組成物と別個の追加成分であることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、この点は、本件特許明細書【0047】、【0063】等に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記訂正事項5は、請求項2?4のいずれか一項に記載の液体芳香剤に、「さらに」の語句を追加し、「(D)成分:メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、及びアミノカルボン酸系金属錯体からなる群から選択される1種以上」が(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分を含有する香料組成物と別個の追加成分であることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、この点は、本件特許明細書【0064】、【0065】等に記載されており、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 そして、これらの訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するから、訂正後の請求項1?7について訂正を認める。 訂正後の請求項2に係る訂正事項2は、引用関係の解消を目的とする訂正を含むものであって、その訂正が認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項3?7は、各々訂正する請求項2を引用するものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであり、訂正後の請求項2?7について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項1、請求項2?7について請求項ごとに訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1.本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?7に係る発明(以下、請求項に係る各発明を項番に従って「本件発明1」などといい、併せて「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された、次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 (a1)成分:デュピカール、マイラックアルデヒド、及びトリプラールから選択される1種以上と、 (a2)成分:カシュメラン、及びδ-ダマスコンと、 (a3)成分:シクロガルバネート、メチルオクチンカーボネート、2-t-ブチルシクロヘキシルアセテート及びcis-3-ヘキセニルアセテートから選択される1種以上と、を含有し、 前記(a2)成分/前記(a1)成分で表される質量比が0.1?2、前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比が1?15であり、 前記(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量が10?40質量%である香料組成物。 【請求項2】 (a1)成分:デュピカール、マイラックアルデヒド、及びトリプラールから選択される1種以上と、 (a2)成分:カシュメラン、及びδ-ダマスコンと、 (a3)成分:シクロガルバネート、メチルオクチンカーボネート、2-t-ブチルシクロヘキシルアセテート及びcis-3-ヘキセニルアセテートから選択される1種以上と、を含有し、 前記(a2)成分/前記(a1)成分で表される質量比が0.1?2、前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比が1?15であり、 前記(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量が10?40質量%である香料組成物が、分散媒に分散されている液体芳香剤。 【請求項3】 さらに、3級アミン化合物及び4級アンモニウム化合物から選択される1種以上のカチオン性化合物を含有する請求項2に記載の液体芳香剤。 【請求項4】 さらに、ポリエーテル変性シリコーンを含有する請求項2又は3に記載の液体芳香剤。 【請求項5】 さらに、(D)成分:メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、及びアミノカルボン酸系金属錯体からなる群から選択される1種以上を含む、請求項2?4のいずれか一項に記載の液体芳香剤。 【請求項6】 請求項2?5のいずれか1項に記載の液体芳香剤が容器に収容されてなる液体芳香剤物品。 【請求項7】 前記容器はスプレー容器である請求項6に記載の液体芳香剤物品。」 2.取消理由の概要 理由1.本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 理由2.本件特許の請求項1?7に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された刊行物1?5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (なお、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由も同趣旨である。) 3.甲第1号証?甲第5号証の記載 (1)甲第1号証 申立人が、甲第1号証として提出した特開2006-2059号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1-1)「本発明の香料組成物を使用する対象製品としては、例えば香水,オードパルファム,オードトワレ,コロンなどの芳香化粧品、デオドラント剤,制汗剤、シャンプー,リンス,ヘアートリートメント,ヘアースタイリングフォーム,ヘアースタイリングスプレー,ヘアースタイリングジェルなどのヘアケアおよびヘアスタイリング製品、石鹸,ボディシャンプー,粉末状入浴剤,液体入浴剤,発泡入浴剤などの浴室内にて使用する化粧品、フェイスローション,フェイスミルク,フェイスクリーム,ボディミルク,ボディイローション等の人体用基礎化粧品、衣料用洗剤,衣料用柔軟材等の衣料用製品、トイレ用洗剤,台所用食器洗剤,芳香剤等の住居用製品が挙げられる。好ましくは、入浴剤やシャンプー,リンス,ボディソープなどの浴室内にて使用する化粧品や香水・コロンなどの芳香化粧品および室内芳香剤であり、とくに好ましくは粉末状入浴剤,液体入浴剤,発泡入浴剤などの入浴剤である。」(【0010】) (1-2)「表1に香料処方A,香料処方B,香料処方C、表2に香料処方D、表3に実施例1?6,比較例1?3の香料組成物処方及び自然の温泉の香りをイメージできるかの確認試験結果およびリラックス感向上度試験結果を記す。表3から明らかなように、実施例1?6の香料組成物は、自然の温泉の香りをイメージできる香気を持ち、かつリラックス感を向上させることが確認できた。なお、処方量は特に記載の無い限りは質量%で記してある。 ・・・・・・ 【表2】 」(【0025】、【0027】の【表2】) (2)引用例2 申立人が、甲第2号証として提出した特開2004-189893号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。 (2-1)「更に、本発明の漂白性組成物には、本発明の目的を損なわない限り、上記成分に加えて、通常、漂白性組成物に配合する各種成分を配合することができ、例えば下記(1)?(8)の補助成分を含有することができる。 (1)香料 香料として使用される香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」,Vol.Iand II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)及び「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)及び「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)及び「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等で見られ、それぞれを引用することにより本明細書の開示の一部とされる。 代表的な香料としては、・・・・・・・等の合成香料及び動物、植物からの天然香料、天然香料及び/又は合成香料を含む調合香料の1種又は2種以上を混合して使用することができる。 具体的には、・・・・・・アルファダマスコン、ベータダマスコン、デルタダマスコン、・・・・・等が挙げられる。」(【0084】?【0087】) (2-2)「尚、実施例及び比較例における略称成分は、以下の意味を示す。 ・・・・・・ 香料組成物:香料組成物A?Hは、下記表6?23に示す配合にて得られる。 【表6】 【表7】 ・・・・・・ 【表11】 ・・・・・・」(【0135】?【0144】) (2-3)「【表15】 【表16】 ・・・・・・ 【表20】 ・・・・・・」(【0145】?【0153】) (3)引用例3 申立人が、甲第3号証として提出した特開2003-171690号公報(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。 (3-1)「[実施例1?11及び比較例1?7] 表9及び表10の組成に従って、それぞれ液体漂白性組成物、粉末漂白性組成物の常法に準じて実施例1?6及び比較例1?4の液体漂白性組成物、実施例7?11及び比較例5?7の粉末漂白性組成物を調製した。各組成物について、下記方法により、過酸化物の保存安定性、衣類の風合いを評価した。結果を表9及び表10に併記する。なお、表中の略称成分は、以下の意味を有する。 ・・・・・・ 香料組成物:香料組成物A?Dは、表1?7に示す配合にて得られる混合物を用いた。 【表1】 ・・・・・・ 【表5】 ・・・・・・」(【0065】?【0073】) (4)引用例4 申立人が、甲第4号証として提出した特開2003-89800号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている。 (4-1)「[実施例1?21及び比較例1?12] 表9?11の組成に従って、それぞれ液体漂白性組成物、粉末漂白性組成物の常法に準じて実施例1?7及び比較例1?6の液体漂白性組成物、実施例8?21及び比較例7?12の粉末漂白性組成物を調製した。各組成物について、下記方法により、漂白力(漂白率)、過酸化水素残存率を評価した。結果を表9?11に併記する。なお、表中の略称成分は、以下の意味を有する。 ・・・・・・ 香料組成物:香料組成物A?Dは、表1?7に示す配合にて得られる混合物を用いた。 ・・・・・・ 【表1】 ・・・・・・ 【表5】 ・・・・・・」(【0072】?【0083】) (5)引用例5 申立人が、甲第5号証として提出した特開2007-284538号公報(以下、「引用例5」という。)には、以下の事項が記載されている。 (5-1)「【請求項1】 炭素数5?10のアルキル基を有するアルキルグリセリルエーテルを含有する、体積平均粒径20?300μmの水性液滴の乾燥促進剤。 【請求項2】 請求項1記載の乾燥促進剤を含有する、体積平均粒径20?300μmの粒子として噴霧される水性組成物。 【請求項3】 界面活性剤、及びシリコーン化合物から選ばれる一種以上を含有する請求項2記載の水性組成物。」(特許請求の範囲) (5-2)「界面活性剤としては陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。 ・・・・・・ 陽イオン界面活性剤としては、窒素原子に結合する基のうち1?3個が炭素数8?20のアルキル基又はアルケニル基であり、残りが炭素数1?3のアルキル基、炭素数1?3のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩、窒素原子に結合する基のうち1?3個が炭素数7から19のアルカノイル(アルケノイル)オキシエチル基及び/又はアルカノイル(アルケノイル)アミノプロピル基であり、残りが炭素数1?3のアルキル基、炭素数1?3のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基である4級アンモニウム塩を挙げることができる。塩としてはハロゲン塩、炭素数1?12の脂肪酸塩、炭素数1?3のアルキル硫酸エステル塩、炭素数1?3のアルキル基が1?3個置換していてもよいベンゼンスルホン酸塩である。」(【0015】) (5-3)「本発明の技術は、対象物に噴霧する水性組成物を含むトイレタリー製品に応用することができ、具体的には消臭剤、芳香剤、殺虫剤、衣類のしわ除去剤、アイロン補助剤、スプレー式帯電防止剤、花粉やダニアレルゲン対策製品などを挙げることができ、特に消臭剤、芳香剤、衣類のしわ除去剤は、界面活性剤又はシリコーン化合物が配合されることが多く、しかも噴霧液滴が拡散し、床などに落下付着する頻度が高いため本発明の技術が非常に有効になる。特に、各製品の有効成分とを含有する水性組成物をスプレー容器に収容してなるスプレー式の製品に本発明は好適である。」(【0021】) (5-4)「消臭基剤としては、一般に消臭効果を有することが知られている植物抽出物、シクロデキストリンなどの包接化合物、中和消臭効果を有する緩衝剤を挙げることができる。 ・・・・・・ シクロデキストリンとしてはd-グルコースがα-1,4結合により環状に結合したものであり、6個結合したものがα-シクロデキストリン、7個のものがβ-シクロデキストリン、8個のものがγ-シクロデキストリンである。本発明では、α型、β型、γ型-シクロデキストリンのいずれをも使用することができる。」(【0024】、【0026】) (5-5)「<配合例1> 表1に本発明の効果を有する消臭剤組成物の配合例を示す。これらは、トリガー式スプレーヤーを用いて、体積平均粒径が20?300μmである水性液滴として空間に噴霧した場合、乾燥促進剤を含有しない組成物に対して、乾燥速度が著しく向上するため、噴霧液滴が床に沈降しても床すべりが起こらない。 【表1】 1)緑茶の乾燥葉を減圧条件下、加熱により気化した乾留物 2)メチルジヒドロジャスモネート100質量部、リナロール30質量部、イソイースーパー30質量部、テンタローム30質量部、エチレンブラッシレート50質量部、バニリン10質量部、α-メチルイオノン30質量部、サリチル酸シス-3-ヘキセニル30質量部、ジプロピレングリコール残部、合計1000質量部の香料組成物 3)N-ラウロイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド 4)N-オクチル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウムクロリド」(【0051】?【0053】) (5-6)「<配合例2> 表2に本発明の効果を有する芳香剤組成物の配合例を示す。これらは、トリガー式スプレーヤーを用いて、体積平均粒径が20?300μmである水性液滴として空間に噴霧した場合、乾燥促進剤を含有しない組成物に対して、乾燥速度が著しく向上するため、噴霧液滴が床に沈降しても床すべりが起こらない。 【表2】 5)パーライド70質量部、α-イソメチルイオノン30質量部、イソイースーパー30質量部、γ-ウンデカラクトン10質量部、リラール30質量部、リナロール50質量部、ヘキシルシンナミックアルデヒド100質量部、メチルジヒドロジャスモネート50質量部、ジエチレングリコールモノメチルエーテル300質量部、ジプロピレングリコール残部、合計1000質量部の香料組成物 6)リリアール100質量部、メチルジヒドロジャスモネート100質量部、メチルイオノンG100質量部、ヘキシルシンナミックアルデヒド100質量部、アンブロキサン50質量部、テンタローム50質量部、ヘリオナール200質量部、フェニルエチルアルコール残部、合計1000質量部の香料組成物 7)平均EO付加モル数10のポリオキシエチレンラウリルエーテル 8)平均縮合度1.3のラウリルグルコシド」(【0054】?【0056】) (5-7)「<配合例3> 表3に本発明の効果を有するしわ除去剤組成物の配合例を示す。これらは、トリガー式スプレーヤーを用いて、体積平均粒径が20?300μmである水性液滴として衣類に噴霧した場合、拡散した噴霧液滴が床に沈降しても、乾燥促進剤を含有しない組成物に対して、乾燥速度が著しく向上するため、床すべりが起こらない。 【表3】 9)25℃における粘度50,000mm2/sのシリコーン化合物 10)ポリエーテル変性シリコーン(KF-6012、信越化学工業(株)製) 11)平均EO付加モル数12のポリオキシエチレンラウリルエーテル 12)N,N-ジドデシル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド 13)ポリエチレングリコール(平均EO付加モル数90)モノメタクリル酸エステル/メタクリル酸=50/50(質量比)共重合体、重量平均分子量=76,000」(【0057】?【0059】) 4.当審における判断 (1)理由1 特許法第29条第1項第3号(新規性)について ア.引用発明1 引用例1には、上記3.(1-1)及び(1-2)の【表2】「香料処方D」から、香料成分及びその配合量(0/00)として、「トリプラール 5.0」、「カシュメラン 5.0」、「δ-ダマスコン 0.2」及び「シス3ヘキセニルアセテート 5.0」を含む香料組成物が記載されている。 なお、引用例1の処方量(配合量)は、上記3.(1-2)によれば、特に記載のない限り質量%で記されているが、同【表2】の配合量は、0/00(パーミル記号)で表現されていることから、1000分の1を表す質量千分率で表現されているものと認められる。 そうすると、引用例1には、「トリプラール:5.0(質量0/00)、カシュメラン:5.0(質量0/00)、δ-ダマスコン:0.2(質量0/00)及びシス3ヘキセニルアセテート:5.0(質量0/00)をそれぞれ含み、これらの合計含有量が15.2(質量0/00)である香料組成物」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 イ.本件発明1と引用発明1との対比・判断 引用発明1の「トリプラール」は、本件発明1の(a1)成分である「トリプラール」に相当し、引用発明1の「カシュメラン」及び「δ-ダマスコン」は、本件発明1の(a2)成分の「カシュメラン、及びδ-ダマスコン」に相当し、引用発明1の「シス3ヘキセニルアセテート」は、本件発明1の(a3)成分の「cis-3-ヘキセニルアセテート」に相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明1は、「(a1)成分:トリプラールと、(a2)成分:カシュメラン、及びδ-ダマスコンと、(a3)成分:cis-3-ヘキセニルアセテートと、を含有する香料組成物。」である点で一致している。 また、引用発明1の上記成分の配合量について、本件発明1に記載された(a2)成分/(a1)成分で表される質量比、及び(a3)成分/(a1)成分で表される質量比に相当する比率を計算すると、引用発明1の「カシュメラン」と「δ-ダマスコン」の合計5.2(質量0/00)と「トリプラール」の5.0(質量0/00)の比は、5.2/5.0=1.04(a2/a1の質量比に相当)となり、本件発明1に記載された「前記(a2)成分/前記(a1)成分で表される質量比が0.1?2」の範囲に包含され、「シス3ヘキセニルアセテート」の5.0(質量0/00)と「トリプラール」の5.0(質量0/00)の比は、5.0/5.0=1(a3/a1の質量比に相当)となり、本件発明1に記載された「前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比が1?15」の下限値と一致する。 しかし、本件発明1は、「(a1)成分と(a2)成分と(a3)の合計含有量」が「10?40質量%」であるのに対して、引用発明1は、「(a1)成分と(a2)成分と(a3)の合計含有量」に相当する含有量が5.2+5.0+5.0=15.2(質量0/00)、すなわち、質量%に換算すると1.52質量%であり、本件発明1の「(a1)成分と(a2)成分と(a3)の合計含有量」の範囲に引用発明1の値は含まれず、両者は、「(a1)成分と(a2)成分と(a3)の合計含有量」において実質的に相違している。 ウ.小括 したがって、本件発明1と引用発明1との間には、「(a1)成分と(a2)成分と(a3)の合計含有量」において実質的な相違点があるから、両者は同一ではなく、本件発明1は、引用例1に記載された発明ではない。 (2)理由2 特許法第29条第2項(進歩性)について ア.引用発明1?3 (ア)引用発明1 引用例1には、上記4.(1)アのとおり、「引用発明1」が記載されていると認められる。 (イ)引用発明2 引用例2には、上記3.(2-1)?(2-3)から、香料成分及びその配合量が、「トリプラール 0.250質量%」、「マイラックアルデヒド 0.010質量%」、「酢酸cis-3-ヘキセニル 0.500質量%」、「ダマスコン 0.100質量%」及び「カシュメラン 0.100質量%」を含む香料組成物(香料組成物B)、及び「トリプラ-ル 0.400質量%」、「マイラックアルデヒド 0.015質量%」、「酢酸cis-3-ヘキセニル 0.800質量%」、「ダマスコン 0.150質量%」及び「カシュメラン 0.150質量%」を含む香料組成物(香料組成物F)が記載されている。 そうすると、引用例2には、「トリプラール:0.250質量%、マイラックアルデヒド:0.010質量%、酢酸cis-3-ヘキセニル:0.500質量%、ダマスコン:0.100質量%及びカシュメラン:0.100質量%,又は、トリプラール:0.400質量%、マイラックアルデヒド:0.015質量%、酢酸cis-3-ヘキセニル:0.800質量%、ダマスコン:0.150質量%及びカシュメラン:0.150質量%を、それぞれ含む香料組成物」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (ウ)引用発明3 引用例3には、上記3.(3-1)から、香料成分及びその配合量が、「トリプラ-ル 0.400質量%」、「マイラックアルデヒド 0.015質量%」、「酢酸cis-3-ヘキセニル 0.800質量%」、「ダマスコン 0.150質量%」及び「カシュメラン 0.150質量%」を含む香料組成物(香料組成物B)が記載されている。 そうすると、引用例3には、「トリプラール:0.400質量%、マイラックアルデヒド:0.015質量%、酢酸cis-3-ヘキセニル:0.8000質量%、ダマスコン:0.150質量%及びカシュメラン:0.150質量%を、それぞれ含む香料組成物」の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 なお、引用例4にも、上記3.(4-1)から、引用例3と同様に、上記「引用発明3」が記載されていると認められる。 イ.本件発明1と各引用発明との対比・判断 (ア)本件発明1と引用発明1について 本件発明1と引用発明1とを対比すると、上記4.(1)イで検討したとおり、「(a1)成分:トリプラールと、(a2)成分:カシュメラン、及びδ-ダマスコンと、(a3)成分:cis-3-ヘキセニルアセテートと、を含有し、前記(a2)成分/前記(a1)成分で表される質量比が1.04で包含され、前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比が下限値の1である香料組成物。」である点で一致し、「(a1)成分と(a2)成分と(a3)の合計含有量」について、本件発明1は、「10?40質量%」であるのに対して、引用発明1は、「1.52質量%」である点(相違点1)で相違しており、さらに、以下の点でも相違する。 (相違点2) 前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比(以下、「(a3)成分/前記(a1)成分比」という。)について、本件発明1は、1より大きく、15以下の範囲を含むのに対して、引用発明1は、下限値の1のみである点。 (相違点1)について、以下に検討する。 引用発明1は、本件発明1の(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分を含むが、その合計含有量は、香料組成物の1.52質量%と少ないことに加え、引用発明1を認定した引用例1の上記3.(1-2)の【表2】の「香料処方D」には、当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分に該当する4種類以外に93種類にも及ぶ合計97種類の化学物質を含む香料組成物が記載されている。 そうすると、引用例1には、この合計97種類の化学物質を含む香料組成物において、この中から当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分に該当する4種類の成分のみの合計含有量を増加させるということは、記載も示唆もないといわざるを得ない。 また、引用例2における(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量は、香料組成物の「0.96質量%」又は「1.515質量%」であり、引用例3及び4における(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量は、香料組成物の「1.515質量%」である。そして、引用例2?4に記載された香料組成物も、(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分に該当する5種類以外に、他に多くの香料成分(179種類と182種類に及ぶ)を含むこと、さらに、これらの香料組成物が漂白性組成物の補助成分として添加することが記載されるにとどまることから、引用例2?4に記載された香料組成物においても、当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分に該当する成分のみの合計含有量を増加させるということは、記載も示唆もないといわざるを得ない。 そうすると、引用発明1において、これらの引用例1?4に記載された技術的事項を組み合わせたとしても、引用発明1における当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量を「10?40質量%」の範囲にすることを当業者が導き出すことは困難といわざるを得ない。 そして、本件発明1の効果は、「当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分」の合計含有量を「10?40質量%」にしたことによって、「生活空間の印象を良好に高められる」という効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、(相違点1)において、技術的困難性が認められ、そのことにより所期の効果を奏するものであるから、(相違点2)について検討するまでもなく、引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとは認められない。 (イ)本件発明1と引用発明2について 引用発明2の「トリプラール」と「マイラックアルデヒド」は、本件発明1の(a1)成分である「トリプラール」と「マイラックアルデヒド」に相当し、引用発明2の「酢酸cis-3-ヘキセニル」は、本件発明1の(a3)成分である「cis-3-ヘキセニルアセテート」に相当し、引用発明2の「ダマスコン」と「カシュメラン」は、本件発明1の「ダマスコン」及び「カシュメラン」に相当する。 また、引用発明2の(a1)成分?(a3)成分の配合量は、(a1)成分が0.260質量%、(a2)成分が0.200質量%、(a3)成分が0.500質量%の場合と、(a1)成分が0.415質量%、(a2)成分が0.300質量%、(a3)成分が0.800質量%の場合があり、それぞれの場合について、(a2)成分/(a1)成分比及び(a3)成分/前記(a1)成分比を計算すると、(a2)成分/(a1)成分比は、0.200/0.260=0.77、0.300/0.415=0.72となり、(a3)成分/(a1)成分比は、0.500/0.260=1.92、0.800/0.415=1.93となる。 そうすると、本件発明1と引用発明2とを対比すると、「(a1)成分:マイラックアルデヒド及びトリプラールと、(a2)成分:カシュメラン、ダマスコンと、(a3)成分:cis-3-ヘキセニルアセテートと、を含有し、前記(a2)成分/前記(a1)成分で表される質量比が0.72?0.77の範囲で、前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比が1.92?1.93の範囲で、それぞれ重複している香料組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点3) (a2)成分のダマスコンについて、本件発明1は、「δ-ダマスコン」であるのに対して、引用発明2は、特に明記されていない点。 (相違点4) 「(a1)成分と(a2)成分と(a3)の合計含有量」について、本件発明1は、「10?40質量%」であるのに対して、引用発明2は、「0.96質量%」又は「1.515質量%」である点。 本件発明の事情に鑑み、(相違点4)から、検討する。 引用発明2には、本件発明1の(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分を含むが、その合計含有量は、香料組成物の「0.96質量%」又は「1.515質量%」と少量である。加えて、引用発明2を認定した引用例2の上記3.(2-2)及び(2-3)の香料組成物B、Eは、当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分に該当する5種以外にそれぞれ179種類、182種類にも及び数多くの香料成分を含んでおり、さらに、これらの香料組成物が漂白性組成物の補助成分として添加するものであることが記載されるにとどまることから、引用例2には、香料組成物において、当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量のみを増加させるということは、記載も示唆もされていないといわざるを得ない。 また、引用例1や、引用例3?4について、(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量のみを増加させるという記載も示唆もないことは、上記イ.(ア)の(相違点1)ですでに検討したとおりである。 そうすると、引用例2を主引用例とした場合も、当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量を「10?40質量%」の範囲にすることを当業者が導き出すことは困難といわざるを得ない。 そして、本件発明1の効果は、「当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分」の合計含有量を「10?40質量%」にしたことによって、「生活空間の印象を良好に高められる」という効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、(相違点4)において、技術的困難性が認められ、そのことにより所期の効果を奏するものと認められるから、(相違点3)について検討するまでもなく、引用例2及び引用例1、3?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとは認められない。 (ウ)本件発明1と引用発明3について 引用発明3の「トリプラール」と「マイラックアルデヒド」は、本件発明1の(a1)成分である「トリプラール」と「マイラックアルデヒド」に相当し、引用発明3の「酢酸cis-3-ヘキセニル」は、本件発明1の(a3)成分である「cis-3-ヘキセニルアセテート」に相当し、引用発明3の「ダマスコン」と「カシュメラン」は、本件発明1の「ダマスコン」及び「カシュメラン」に相当する。 また、引用発明3の(a1)成分?(a3)成分の配合量は、(a1)成分が0.415質量%、(a2)成分が0.300質量%、(a3)成分が0.800質量%であり、その組成物の(a2)成分/(a1)成分比及び(a3)成分/前記(a1)成分比を計算すると、(a2)成分/(a1)成分比は、0.300/0.415=0.72となり、(a3)成分/(a1)成分比は、0.800/0.415=1.93となる。 そうすると、本件発明1と引用発明3とを対比すると、「(a1)成分:マイラックアルデヒド及びトリプラールと、(a2)成分:カシュメラン、ダマスコンと、(a3)成分:cis-3-ヘキセニルアセテートと、を含有し、前記(a2)成分/前記(a1)成分で表される質量比が0.72で包含され、前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比が1.93で包含される香料組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点5) (a2)成分のダマスコンについて、本件発明1は、「δ-ダマスコン」であるのに対して、引用発明3は、特に明記されていない点。 (相違点6) 「(a1)成分と(a2)成分と(a3)の合計含有量」について、本件発明1は、「10?40質量%」であるのに対して、引用発明3は、「1.515質量%」である点。 本件発明の事情に鑑み、(相違点6)から検討する。 (相違点6)は、上記イ.(イ)の(相違点4)ですでに検討した事項と同様であり、引用発明3は、本件発明1の(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分を含むが、その合計含有量は、「1.515質量%」と少量であることに加えて、引用発明3を認定した引用例3の上記3.(3-1)の香料組成物Bには、当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分に該当する5種類以外に182種類にも及ぶ数多くの香料成分を含んでおり、さらに、この香料組成物が漂白性組成物の補助成分として添加するものであることが記載されるにとどまることから、引用例3は、香料組成物において、当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量のみを増加させるということは、記載も示唆もされていないといわざるを得ない。 また、引用例1?2、4について、(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量のみを増加させるという記載も示唆もないことは、上記イ.(ア)の(相違点1)ですでに検討したとおりである。 そうすると、引用例3を主引用例とした場合も、当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量を「10?40質量%」の範囲にすることを当業者が導き出すことは困難といわざるを得ない。 そして、本件発明1の効果は、「当該(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分」の合計含有量を「10?40質量%」にしたことによって、「生活空間の印象を良好に高められる」という効果を奏するものである。 したがって、本件発明1は、(相違点6)において、技術的困難性が認められ、そのことにより所期の効果を奏するものと認められるから、(相違点5)について検討するまでもなく、引用例3及び引用例1?2、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとは認められない。 ウ.本件発明2と各引用発明との対比・判断 (ア)本件発明2と引用発明1について 本件発明2は、本件発明1の香料組成物が、分散媒に分散されている液体芳香剤に関する発明である。 香料成分が、分散媒に分散されている液体芳香剤は、確かに、引用例5の3.(5-3)及び(5-6)に記載されているように当業者によく知られた技術的事項である。 しかしながら、上記イ.(ア)で検討したとおり、本件発明1の香料組成物は、引用例1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでないから、本件発明1の香料組成物が、分散媒に分散されている本件発明2も、本件発明1と同様に、引用例1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (イ)本件発明2と引用発明2について 本件発明2は、本件発明1の香料組成物が、分散媒に分散されている液体芳香剤に関する発明である。 香料成分が、分散媒に分散されている液体芳香剤は、確かに、引用例5の3.(5-3)及び(5-6)に記載されているように当業者によく知られた技術的事項である。 しかしながら、上記イ.(イ)で検討したとおり、本件発明1の香料組成物は、引用例2及び引用例1、3?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明1の香料組成物が、分散媒に分散されている本件発明2も、本件発明1と同様に、引用例2及び引用例1、3?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (ウ)本件発明2と引用発明3について 本件発明2は、本件発明1の香料組成物が、分散媒に分散されている液体芳香剤に関する発明である。 香料成分が、分散媒に分散されている液体芳香剤は、確かに、引用例5の3.(5-3)及び(5-6)に記載されているように当業者によく知られた技術的事項である。 しかしながら、上記イ.(ウ)で検討したとおり、本件発明1の香料組成物は、引用例3及び引用例1?2、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではないから、本件発明1の香料組成物が、分散媒に分散されている本件発明2も、本件発明1と同様に、引用例3及び引用例1?2、4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 エ.本件発明3?5と各引用発明との対比・判断 (ア)本件発明3?5と引用発明1について 本件発明3?5は、本件発明2を直接あるいは、間接的に引用し、本件発明3は、「さらに、3級アミン化合物及び4級アンモニウム化合物から選択される1種以上のカチオン性化合物を含有する」ことを、本件発明4は、「さらに、ポリエーテル変性シリコーンを含有する」ことを、本件発明5は、「さらに、(D)成分:メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、及びアミノカルボン酸系金属錯体からなる群から選択される1種以上を含む」ことを、それぞれ特定するものである。 しかしながら、上記ウ.(ア)で検討したとおり、本件発明2は、引用例1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえないから、引用例5に、液体芳香剤を含む水性組成物において、「4級アンモニウム化合物」(上記3.(5-2)、(5-5)及び(5-7))、「ポリエーテル変性シリコーン」(上記3.(5-7))、「シクロデキストリンなどの包摂化合物」(上記3.(5-4)及び(5-5))などを含有させることが記載されていたとしても、本件発明3?5は、引用例1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (イ)本件発明3?5と引用発明2について 本件発明3?5は、本件発明2を直接あるいは、間接的に引用し、本件発明3は、「さらに、3級アミン化合物及び4級アンモニウム化合物から選択される1種以上のカチオン性化合物を含有する」ことを、本件発明4は、「さらに、ポリエーテル変性シリコーンを含有する」ことを、本件発明5は、「さらに、(D)成分:メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、及びアミノカルボン酸系金属錯体からなる群から選択される1種以上を含む」ことを、それぞれ特定するものである。 しかしながら、上記ウ.(イ)で検討したとおり、本件発明2は、引用例2及び引用例1、3?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえないから、引用例5に、液体芳香剤を含む水性組成物において、「4級アンモニウム化合物」(上記3.(5-2)、(5-5)及び(5-7))、「ポリエーテル変性シリコーン」(上記3.(5-7))、「シクロデキストリンなどの包摂化合物」(上記3.(5-4)及び(5-5))などを含有させることが記載されていたとしても、本件発明3?5は、引用例2及び引用例1、3?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (ウ)本件発明3?5と引用発明3について 本件発明3?5は、本件発明2を直接あるいは、間接的に引用し、本件発明3は、「さらに、3級アミン化合物及び4級アンモニウム化合物から選択される1種以上のカチオン性化合物を含有する」ことを、本件発明4は、「さらに、ポリエーテル変性シリコーンを含有する」ことを、本件発明5は、「さらに、(D)成分:メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、及びアミノカルボン酸系金属錯体からなる群から選択される1種以上を含む」ことを、それぞれ特定するものである。 しかしながら、上記ウ.(ウ)で検討したとおり、本件発明2は、引用例3及び引用例1?2、4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえないから、引用例5に、液体芳香剤を含む水性組成物において、「4級アンモニウム化合物」(上記3.(5-2)、(5-5)及び(5-7))、「ポリエーテル変性シリコーン」(上記3.(5-7))、「シクロデキストリンなどの包摂化合物」(上記3.(5-4)及び(5-5))などを含有させることが記載されていたとしても、本件発明3?5は、引用例3及び引用例1?2、4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 オ.本件発明6?7と各引用発明との対比・判断 (ア)本件発明6?7と引用発明1について 本件発明6?7は、本件発明2を直接あるいは、間接的に引用し、本件発明6は、「液体芳香剤が容器に収容されてなる」ことを、本件発明7は、「前記容器はスプレー容器である」ことを、それぞれ特定するものである。 しかしながら、上記ウ.(ア)で検討したとおり、本件発明2は、引用例1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえないから、引用例5に、液体芳香剤を含む水性組成物において、当該「水性組成物をスプレー容器に収容してなるスプレー式の製品に本発明は好適である。」(上記3.(5-3))こと、具体的な配合例(同(5-6))が記載されていたとしても、本件発明6?7は、引用例1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (イ)本件発明6?7と引用発明2について 本件発明6?7は、本件発明2を直接あるいは、間接的に引用し、本件発明6は、「液体芳香剤が容器に収容されてなる」ことを、本件発明7は、「前記容器はスプレー容器である」ことを、それぞれ特定するものである。 しかしながら、上記ウ.(イ)で検討したとおり、本件発明2は、引用例2及び引用例1、3?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえないから、引用例5に、液体芳香剤を含む水性組成物において、当該「水性組成物をスプレー容器に収容してなるスプレー式の製品に本発明は好適である。」(上記3.(5-3))こと、具体的な配合例(同(5-6))が記載されていたとしても、本件発明6?7は、引用例2及び引用例1、3?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 (ウ)本件発明6?7と引用発明3について 本件発明6?7は、本件発明2を直接あるいは、間接的に引用し、本件発明6は、「液体芳香剤が容器に収容されてなる」ことを、本件発明7は、「前記容器はスプレー容器である」ことを、それぞれ特定するものである。 しかしながら、上記ウ.(ウ)で検討したとおり、本件発明2は、引用例3及び引用例1?2、4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえないから、引用例5に、液体芳香剤を含む水性組成物において、当該「水性組成物をスプレー容器に収容してなるスプレー式の製品に本発明は好適である。」(上記3.(5-3))こと、具体的な配合例(同(5-6))が記載されていたとしても、本件発明6?7は、引用例3及び引用例1?2、4?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。 カ.小括 したがって、本件発明1?7は、引用例1、引用例2あるいは引用例3のいずれを主引例としても、引用例1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 5.申立人の主張について 申立人は、訂正請求前の本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明に対し、引用例1に記載された発明と同一である、あるいは、訂正請求前の本件特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明に対し、刊行物1又は刊行物2、刊行物5の記載及び周知技術(刊行物2?4)に基づき当業者が容易に発明をすることができたものと主張して、特許異議の申立てを行った。 しかしながら、上記第2で検討したとおり、本件訂正請求が認められた結果、本件発明は、上記第3 1.のとおりとなった。 そして、本件発明は、上記第3 4.(1)及び(2)で検討したとおりであるから、申立人の主張は採用することができない。 なお、申立人は、特許法第120条の5第5項による通知書を送付したが、意見書の提出を行わなかった。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a1)成分:デュピカール、マイラックアルデヒド、及びトリプラールから選択される1種以上と、 (a2)成分:カシュメラン、及びδ-ダマスコンと、 (a3)成分:シクロガルバネート、メチルオクチンカーボネート、2-t-ブチルシクロヘキシルアセテート及びcis-3-ヘキセニルアセテートから選択される1種以上と、を含有し、 前記(a2)成分/前記(a1)成分で表される質量比が0.1?2、前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比が1?15であり、 前記(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量が10?40質量%である香料組成物。 【請求項2】 (a1)成分:デュピカール、マイラックアルデヒド、及びトリプラールから選択される1種以上と、 (a2)成分:カシュメラン、及びδ-ダマスコンと、 (a3)成分:シクロガルバネート、メチルオクチンカーボネート、2-t-ブチルシクロヘキシルアセテート及びcis-3-ヘキセニルアセテートから選択される1種以上と、を含有し、 前記(a2)成分/前記(a1)成分で表される質量比が0.1?2、前記(a3)成分/前記(a1)成分で表される質量比が1?15であり、 前記(a1)成分と(a2)成分と(a3)成分の合計含有量が10?40質量%である香料組成物が、分散媒に分散されている液体芳香剤。 【請求項3】 さらに、3級アミン化合物及び4級アンモニウム化合物から選択される1種以上のカチオン性化合物を含有する請求項2に記載の液体芳香剤。 【請求項4】 さらに、ポリエーテル変性シリコーンを含有する請求項2又は3に記載の液体芳香剤。 【請求項5】 さらに、(D)成分:メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、及びアミノカルボン酸系金属錯体からなる群から選択される1種以上を含む、請求項2?4のいずれか一項に記載の液体芳香剤。 【請求項6】 請求項2?5のいずれか1項に記載の液体芳香剤が容器に収容されてなる液体芳香剤物品。 【請求項7】 前記容器はスプレー容器である請求項6に記載の液体芳香剤物品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-10-25 |
出願番号 | 特願2012-189236(P2012-189236) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C11B)
P 1 651・ 113- YAA (C11B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | ▲吉▼澤 英一 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
佐々木 秀次 原 賢一 |
登録日 | 2016-09-09 |
登録番号 | 特許第6002506号(P6002506) |
権利者 | ライオン株式会社 |
発明の名称 | 香料組成物、液体芳香剤及び液体芳香剤物品 |
代理人 | 加藤 広之 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 田▲崎▼ 聡 |
代理人 | 川越 雄一郎 |
代理人 | 川越 雄一郎 |
代理人 | 加藤 広之 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 田▲崎▼ 聡 |