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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 一部申し立て 1項2号公然実施  A61K
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1335166
異議申立番号 異議2017-700628  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-20 
確定日 2017-11-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6051055号発明「皮膚外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6051055号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6051055号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成25年1月15日に特許出願され、平成28年12月2日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人山岡篤実により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
特許第6051055号の請求項1、2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)。

3.申立理由の概要
特許異議申立人山岡篤実は、証拠として甲第1号証?甲第20号証(以下、「甲1」?「甲20」という。)を提出し、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、および特許法第36条第6項第1号にそれぞれ違反してされたものであるから、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4.提出された証拠について
(1)甲1?甲9
甲1?甲9は化粧品技術者のためのデータベースサイト「Cosmetic-Info.jp」(平成29年6月18日検索)の写しであり、各種商品の発売日と剤型、成分について、それぞれ下記ア?ケに摘記する事項が記載されているとともに、下記Aの事項が甲1?甲9に共通して欄外末尾部分に記載されている。

甲1:「レヴール リッチ&リペア シャンプー」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成29年6月18日検索]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=16670>

ア「発売日 2010-10-15
剤型分類 シャンプー・コンディショナー
種類 化粧品
全成分リスト ・・・(略)・・・
12.チャ葉エキス ・・・(略)・・・
37.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール ・・・(略)」(甲1)

甲2:「ミツイハーブインクリアフォームII」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成29年6月18日検索]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=17770>

イ「発売日 2011-04-11
剤型分類 洗顔フォーム
種類 化粧品
全成分リスト ・・・(略)・・・
7.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
・・・(略)・・・
15.ブドウ葉エキス
・・・(略)・・・
19.オレンジ油 ・・・(略)」(甲2)

甲3:「EYEZ(アイズ)アイラッシュ ウィッシュ ネオ」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成29年6月18日検索]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=20970>

ウ「発売日 2011-06-27
剤型分類 まつげ美容液
種類 化粧品
全成分リスト ・・・(略)・・・
12.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
・・・(略)・・・
24.ブドウ葉エキス ・・・(略)」(甲3)

甲4:「エンリッチリフトモイスチャーローション」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成29年6月18日検索]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=17169>

エ「発売日 2011-01-21
剤型分類 化粧水
種類 化粧品
全成分リスト ・・・(略)・・・
29.ビルベリー葉エキス
・・・(略)・・・
49.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
・・・(略)・・・
64.レモン果皮油 ・・・(略)・・・
66.オレンジ油 ・・・(略)」(甲4)

甲5:「ウォリュ ネイル オイル エッセンス ワイルドフラワー ポージー」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成29年6月18日検索]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=21959>

オ「発売日 2013-01-05
剤型分類 ネイルケア
種類 化粧品
全成分リスト ・・・(略)・・・
4.オレンジ果皮油 ・・・(略)・・・
9.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
・・・(略)」(甲5)

甲6:「ジェミークリスタルローズPエッセンス」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成29年6月18日検索]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=23931>

カ「発売日 2011-12-07
剤型分類 美容液
種類 化粧品
全成分リスト ・・・(略)・・・
22.ユズ果皮エキス ・・・(略)・・・
25.グルコシルスペリジン ・・・(略)・・・・
32.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
・・・(略)」(甲6)

甲7:「モイスリーフ クレンジング」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成29年6月18日検索]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=28410>

キ「発売日 2012-01-11
剤型分類 クレンジングジェル
種類 化粧品
全成分リスト ・・・(略)・・・
8.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
・・・(略)・・・
17.ユズ果実エキス ・・・(略)」(甲7)

甲8:「イコライズショット」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成29年6月18日検索]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=25118>

ク「発売日 2012-10-15
剤型分類 美容液
種類 化粧品
全成分リスト ・・・(略)・・・
7.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
・・・(略)・・・
15.オウゴンエキス ・・・(略)」(甲8)

甲9:「トリコイストモイスチャーローション」、[online]、Cosmetic-Info.jp、[平成29年6月18日検索]、インターネット<URL:https://www.cosmetic-info.jp/prod/detail.php?id=24994>

ケ「発売日 2011-11-16
剤型分類 ブースター・導入液
種類 化粧品
全成分リスト ・・・(略)・・・
13.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール
・・・(略)・・・
29.モモ葉エキス
・・・(略)・・・
31.ビルベリー葉エキス ・・・(略)」(甲9)

A「この全成分リストは(有)久光工房が調査した情報をもとに作成したものであり、公式情報ではありません。全成分リストはマイナーチェンジなどで予告なく変更になっている場合もあります。
・・・・(略)・・・
本情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。・・・(略)」(甲1?甲9)

以上より、甲1?甲9には、いずれも化粧品である各種商品について、発売日として本件特許の出願日より前である日付が記載され、全成分リスト中に、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールと茶葉エキス等の植物抽出物とを含むことが記載されている。

(2)甲10:特開2012-176903号公報
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲10には、下記コ、サの記載がある(下線は当審で付与した)。

コ「【0001】
本発明は、皮膚外用剤組成物に関し、特にL-アスコルビン酸及びその誘導体を配合した美白効果を有する皮膚外用剤組成物において、使用感触に優れ、十分な防腐性を確保しかつ優れた防腐力が持続しながらも、皮膚刺激が低く、使用性、安全性、安定性を著しく向上させた皮膚外用剤組成物に関する。」

サ「【0052】
実施例9 美白ローション
・・・(略)・・・
(3)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.5%
・・・(略)・・・
(20)レモンエキス 0.5%
・・・(略)・・・
【0053】
実施例10 美白ローション
・・・(略)・・・
(3)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 1.0%
・・・(略)・・・
(21)レモンエキス 0.2%
・・・(略)・・・
【0054】
実施例11 美白乳液
・・・(略)・・・
(3)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 2.0%
・・・(略)・・・
(18)レモンエキス 0.5%
・・・(略)・・・
【0055】
実施例12 美白乳液
・・・(略)・・・
(2)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 2.0%
・・・(略)・・・
(23)レモンエキス 0.2%
・・・(略)・・・
【0056】
実施例13 美白美容液
・・・(略)・・・
(4)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.5%
・・・(略)・・・
(16)レモンエキス 0.2%
・・・(略)・・・
【0057】
実施例14 美白パック
・・・(略)・・・
(2)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.5%
・・・(略)・・・
(17)レモンエキス 0.5%
・・・(略)・・・
【0058】
実施例15 美白クリーム
・・・(略)・・・
(3)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 1.0%
・・・(略)・・・
(18)レモンエキス 0.5%
・・・(略)・・・
【0059】
実施例16 美白シートマスク
・・・(略)・・・
(2)1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.5%
・・・(略)・・・
(10)レモンエキス 0.2%
・・・(略)」

(3)甲11:特開2011-201848号公報
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲11には、下記シ、スの記載がある(下線は当審で付与した)。

シ「【0001】
本発明は、皮膚からの有効成分の吸収性に優れる外用組成物に関する。」

ス「【0014】
水溶性抗酸化成分としては、植物(例えば、ブドウ、オタネニンジン、コンフリー等)に由来する成分;プロアントシアニジン、アスコルビン酸及びその誘導体、グルコシルヘスペリジン、などが挙げられる。

・・・(略)・・・

【0020】
水溶性血行促進作用成分としては、植物(例えば、オタネニンジン)に由来する成分;グルコシルヘスペリジン、が挙げられる。

・・・(略)・・・

【0027】
その他、フェルラ酸塩及びその誘導体、プラセンタエキス、グルタチオン、ヒノキチオール、カフェイン、ルチン及びその配糖体、ヘスペリジン及びその配糖体などの水溶性成分も好適である。
【0028】
特に好ましい水溶性有効成分として、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、グリチルリチン酸、アルブチン、ハイドロキノン、コウジ酸、ブチルレゾルシノール、グルコシルヘスペリジン、エラスチン分解ペプチド、大豆蛋白分解ペプチド、ニコチン酸アミド、カルノシンなどが挙げられる。

【0047】
製剤実施例5 乳液
・・・(略)・・・
グルコシルヘスペリジン 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.05
・・・(略)・・・
水 残余
100%
【0048】
製剤実施例6 乳液
・・・(略)・・・
グルコシルヘスペリジン 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.1
・・・(略)・・・
水 残余
100%
・・・(略)・・・

【0053】
製剤実施例11 乳液
・・・(略)・・・
グルコシルヘスペリジン 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 5
・・・(略)・・・
水 残余
100%

・・・(略)・・・

【0059】
製剤実施例17 乳液
・・・(略)・・・
グルコシルヘスペリジン 0.1
シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 5
・・・(略)・・・
水 残余
100%」

(4)甲12:化粧品技術者のためのデータベースサイトデータベースサイト「Cosmetic-Info.jp」のトップページの写し(https://www.cosmetic-info.jp/index.php)
甲12は、甲1?甲9を掲載するデータベースサイトのトップページの写しであり、最終ページに下記セの記載がある。

セ「「Cosmetic-Info.jp」に記載されている情報は、メーカー提供情報、公開情報、カタログ、独自調査等の資料を元に、(有)久光工房が独自に作成したデータです。・・・(略)」(4/4ページ、欄外)

(5)甲13:化粧品技術者のためのデータベースサイトデータベースサイト「Cosmetic-Info.jp」を運営する有限会社久光工房の公式サイトの写し(http://www.asahi-net.or.jp/~ds1i-hsmt/index.html)(なお、URLの表記中、「dsli」の前の文字は「?」の半角である。)
甲13は、甲1?甲9を掲載するデータベースサイトを運営する有限会社久光工房の公式サイトトップページの写しであり、「事業内容」欄に下記ソの記載がある。

ソ「化粧品業界向けシステム開発・運用
・化粧品技術者向け技術情報提供サイト「Cosmetic-Info.jp」の開発および運営(公式サイト)・・・(略)」(1/1ページ、「事業内容」欄)

(6)甲14:特開2007-63154号公報
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲14には、下記タの記載がある(下線は当審で付与した)。

タ「【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のインターロイキン6産生抑制剤は、カテキン類を有効成分とするものである。このカテキン類は、特に制限はないが、エピガロカテキンガレート、(+)カテキン、エピカテキン、エピガロカテキンが好ましい。これらのカテキン類は、茶、カカオ種子、ブドウ葉などの植物から抽出したものを用いてもよく、また、合成したものを用いてもよい。
・・・(略)・・・
【実施例1】
【0013】
この実施例は、カテキン類について、紫外線照射に起因する表皮細胞由来のインターロイキン6の産生を抑制する効果を確認する試験例である。試験には、ヒト由来正常ケラチノサイト培養細胞を使用した。すなわち、ケラチノサイト基本培地(Humedia KG-2、クラボ)を3.5mmペトリ培養皿に適量とり、1×104細胞を播種し、37℃、二酸化炭素濃度5%中にて培養した。一昼夜後、細胞をハンクス液にて洗浄し、KGM2培地に交換し、さらに37℃で24時間培養した。その後、この培地に、カテキン類を添加しないもの、並びにカテキン類、すなわちエピガロカテキンガレート、(+)カテキン、エピカテキン及びエピガロカテキン(いずれも、フナコシ株式会社から販売されている試薬を用いた。以下の実施例でも同じである。)のそれぞれを100μMづつ添加したものを調製した。・・・(略)・・・、培養後の培養上清液を試料とし、ヒトELISAバイオトラックシステム(アマシャム)を用いそれぞれの試料のインターロイキン6産生量を測定した。カテキン類無添加のときの測定値に対する比で、カテキン類のそれぞれのインターロイキン6産生抑制率(%)を求めた。
・・・(略)・・・
【実施例2】
【0016】
この実施例は、カテキン類の皮膚抗炎症効果、皮膚肥厚抑制効果を試験した試験例である。この実施例では、下記の試料調製法、試料塗布法、紫外線照射法及び評価方法によって試験した。
(A)試料(皮膚障害抑制剤)の調製法
カテキン類として、(+)カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートを用いた。これらのそれぞれを基剤(ポリエチレングリコール1000:エチルアルコール(容量比)=1:1)に1%になるように溶解し、各試料を調製した。
・・・(略)・・・
【0022】
〔参考例2〕 化粧水の例
(成分) (%)
(1)グリセリン 10.0
(2)1,3-ブチレングリコール 6.0
(3)クエン酸 0.1
(4)クエン酸ナトリウム 0.3
(5)(+)カテキン 0.1
(6)エピガロカテキン 0.05
(7)精製水 残量
(8)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5
(9)エチルアルコール 8.0
(10)防腐剤 適量
(11)香料 適量
【0023】
(製法)
A.成分(1)?(6)を混合溶解する。
B.成分(7)?(11)を混合溶解する。
C.AとBを混合して、均一にし、化粧水を得た。
【0024】
得られた化粧水は、着色・変臭、沈殿もなく安定性が高く、皮膚に適用すると、みずみずしい伸び広がりがあり、皮膚の炎症や、皮膚の肥厚も見られず皮膚を柔軟にするものであり、また、連日使用しても皮膚刺激もなく安全性に優れるものであった。」

(7)甲15:特開2006-206527号公報
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲15には、下記チの記載がある(下線は当審で付与した)。

チ「【0029】
ぶどう葉に豊富に含まれるポリフェノールは、体のサビともいうべき活性酸素のダメージを抑え、老化防止、生活習慣病の改善などに効果を表す成分で、多種多様な種類がある。このポリフェノール類で特に注目されるのが、アントシアニジン類、トランス-レスベラトールなどの成分である。アントシアニン類(及びポロアントシアニジン類)は、赤ブドウ葉の成分中でもとくに強い抗酸化作用を持ち、血管の保護、血液循環の改善、動脈硬化の予防などに効果がある。プロアントシアニジンの臨床試験では50人の慢性下肢静脈不全患者に対し、薬剤diosminの効果と比較する二重盲検試験を行ったところ、どちらのグループでも改善効果が確認されましたが、プロアントシアニジンを投与したグループに置いて優位に血液循環の改善効果が認められたという報告がある。(Delacroix P.et al. Revur de Medcin.22.1793(1981))トランス-レスベラトールはブドウが真菌や紫外線からのストレスから身を守るために産出される活性代謝物である。抗炎症活性や抗血小板活性を持ち、さらに悪玉コレステロール(LDL)の量を減らして善玉コレステロール(HDL)を増加させて、動脈硬化にも効果をあらわす。」

(8)甲16:特開2008-184385号公報
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲16には、下記ツの記載がある(下線は当審で付与した)。

ツ「【0002】
ヘスペリジンは、種々の生理活性を有することが公知である。ヘスペリジンは、例えば、血圧を下げる作用、抗アレルギー作用、LDL-コレステロールを減少させ血中コレステロール値を改善する作用、抗癌作用、毛細血管壁の透過性および脆弱性を低下させる作用、大腸炎抑制作用、関節炎抑制作用、血小板および細胞の凝集抑制作用などを有する。
【0003】
ヘスペリジンは、天然の状態では、アグリコンであるヘスペレチンに糖が結合した配糖体の形で存在する。ヘスペリジンは、動物により摂取された後、腸管中に存在する細菌が産生する酵素により糖が加水分解されてアグリコンとなった後、大腸から体内に取り込まれると考えられている。
【0004】
このように、ヘスペリジンおよびヘスペレチンは、非常に優れた生理作用を有する。しかも、ヘスペリジンは柑橘類の果実中に多量に存在することから、原料を容易にかつ安価に入手し得る。
・・・(略)・・・
【0051】
・・・(略)・・・
ヘスペレチンは、ヘスペリジンのアグリコンである。ヘスペレチンは、ヘスペリジンをヘスペリジナーゼまたはナリンギナーゼによって分解することにより入手され得る。ヘスペリジンはフラボノイドの一種であり、柑橘類(例えば、温州みかん、夏みかん、伊予みかん、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ)に含まれており、特に温州みかんに多く含まれている。ヘスペリジンは、未熟期のみかんに多量に含まれる。ヘスペリジンは、ミカンの部位でも、黄色い外果皮と果肉との間にある、白い中果皮に最も多く含まれている。ヘスペリジンは、柑橘類の果皮、果汁または種子より抽出することができる。
・・・(略)」

(9)甲17:特開平9-118611号公報
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲17には、下記テの記載がある(下線は当審で付与した)。

テ「【0019】ヘスペリジンは、みかん、レモン、橙などの果皮や生薬の陳皮から得られるフラボン配糖体で、みかんのメタノール抽出エキス中にはおよそ4%含まれていて、この抽出エキスの状態でも、またヘスペリジンを単一物質にまで精製しても用いることができる。さらに抽出段階や、単一物質としたヘスペリジン自身を酸やアルカリ、または酵素などで処理すると、ヘスペリジンの糖が切断されヘスペレチンにすることができ、しかもこのヘスペレチンもリパーゼ阻害効果を示す。ヘスペリジンは、既に「天然物便覧」(1981年、食品と科学社、152 頁)に収録され、苦味剤としての用途がある。ヘスペレチンはヘスペリジンとしてレモン、みかん、橙などの果皮に含まれる。中果皮の発達している系統のものはナリンジンを含み、中果皮の薄い系統のものはヘスペリジンを含有するものが多い、夏みかんは両系統の間種と見られているが成分においてもナリンジンとヘスペリジンを含有する。ヘスペリジンはヘスペレチンの配糖体であり、抗毛細血管透過作用がある。ナリンゲニンは配糖体ナリンジンとして、橙、温州みかん、夏みかん、ザボンなどの果皮に含まれ、苦味はない。・・・(略)」

(10)甲18:特開2008-273860号公報
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲18には、下記トの記載がある(下線は当審で付与した)。

ト「【0088】
・・・(略)・・・比較実験として、柚子果皮に含まれる代表的なフラボノイドであるナリンギンおよびヘスペリジン、ならびに植物の成長抑制物質であるアブシジン酸についても同様にして、NF-κB亢進に対する抑制効果を調べた。」

(11)甲19:特開平8-104628号公報
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲19には、下記ナの記載がある(下線は当審で付与した)。

ナ「【0008】フラボン類またはアントシアニジンを成分として含む生薬としては、例えばオウゴン、ヨウバイヒ等を挙げることができる。オウゴンはコガネバナ(Scutellaria baicalensis Georg.)の周皮を除いた根を乾燥したものである。ヨウバイヒはヤマモモ(Myrica rubra Sieb et. Zucc. )の樹皮を乾燥したものである。・・・(略)」

(12)甲20:Japan. J. Breed.Vol.24, No.1:13-16(1974)「モモの赤葉とわい性の遺伝」清家金嗣・吉田雅夫 著
本件特許出願前に頒布された刊行物である甲20には、下記ニ、ヌの記載がある(下線は当審で付与した)。

ニ「供試材料は赤芽(赤葉で普通型のモモ品種)と寿星桃(葉に赤色色素を発現しないわい性のモモ品種、以下緑葉でわい性型とよぶ)を用いた。」(第13頁左欄「材料および方法」の項、第1段落)

ヌ「モモ果肉に含まれる赤色色素についてはVAN BLALICON(1967)がシアニジン3-グルコサイド(クリサンテミン)であることを報告している。本試験に用いた赤芽においても、その葉に含まれる赤色色素は、PPCによる定性分析の結果、クリサンテミンのRf値(中林ら 1967)とほぼ一致していたので、クリサンテミンであると推定された。」(第14頁右欄「考察」の項、第1段落)

5.判断
(1)特許法第29条第1項第2号について(甲1?9、甲12、13)
出願前に「公然実施をされた発明」とは、出願前に発明の内容が公然知られる状況または公然知られるおそれのある状況で実施された発明をいうとされる。
甲1?甲9は、化粧品技術者のためのデータベースサイト「Cosmetic-Info.jp」における、化粧品である種々の製品に関する情報掲載ページの写しであり、当該データベースについて、さらに甲12、甲13が提出されている。
甲12の記載事項(4.摘記セ)によれば、甲1?9に記載の情報は、運営者である有限会社久光工房が、各メーカーから提供された情報や公開情報、独自調査等を元に作成したものであることは理解できるものの、具体的にどのような一次情報に基づいてどのように作成した「全成分リスト」等の商品情報を、どのような手順を経て当該サイトに掲載するのか、といった情報は記載されておらず、甲1?甲9に記載される内容の情報源や掲載に当たっての加工の仕方を、客観的な根拠に基づいて確認することはできない。甲13は有限会社久光工房が当該データベースサイトを運営することが記載されているものの、掲載情報を具体的にどのような手順で作成するかについては、やはり示されていない(4.摘記ソ)。また、甲1?甲9には共通して上記4.(1)Aに摘記した事項が記載されているが、これを参照しても、当該データベースサイトに掲載される商品情報の作成手順についての詳細は明らかでない。
そのため、甲1?甲9に記載される各種化粧品が、甲1?甲9に記載される発売日に実際に販売開始されたと確認できる客観的な根拠は見出せない。
また、摘記Aにも言及があるように、商品の含有成分について発売後の変更が行われる場合があることや、一般に組成物の含有成分の種類や含有量は専門的な化学分析等を経て明らかになることを考慮すると、甲1?甲9に記載された各種化粧品が、甲1?甲9の「全成分リスト」で示される成分を含有するものであることが、発売時から、専門的な化学分析等を必要とせず知られ得る状態にあったことは確認できない。
したがって、甲1?甲9に記載された各種化粧品は、甲12、13を参照しても発売日を特定できず、その含有成分が甲1?甲9に記載されたとおりであることが公然知られ得る状態で本件特許出願前に実施されていたものとは認められない。
よって、本件特許発明1、2は、その出願前に公然実施された発明であるとはいえず、本件特許が特許法第29条第1項第2号に違反してされたものであるという特許異議申立人の主張は理由がない。

(2)特許法第29条第1項第3号、および同法第29条第2項について
(2-1)甲1?甲9に記載された発明を引用発明とする場合
(2-1-1)甲1?甲9の公開時
上記5.(1)でも言及したが、甲1?甲9の情報がどのような手順で作成され当該データベースに掲載されるのかは甲12、13を参照しても明らかでなく、甲1?甲9の情報が電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった時を特定できる客観的な根拠は見出せない。
この点につき異議申立人は「「Cosmetic-Info.jp」のような化粧品技術者のためのデータベースサイトは、通常、商品の発売後、直ちに公開されることから、・・・(略)」と繰り返し述べる(特許異議申立書第21頁最終段落、第22頁第4段落等)が、商品情報データベース一般についても、あるいは甲1?甲9に係る「Cosmetic-Info.jp」についても、そのような事実を認めるに足る具体的な根拠は何ら示されていない。
また、甲1?甲9に記載されている事項から確認できる日付としては、提出されたプリントアウト書面に記載されている、検索およびプリント日の「2017/06/18」もあるが、これを考慮しても、2017年6月18日に当該サイトに甲1?甲9の情報が掲載されていたことは分かるものの、依然として甲1?甲9の情報が公衆に利用可能となった時は不明であり、本件特許の出願前に甲1?甲9の情報が電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっていたとすることはできない。

(2-1-2)甲1?甲9に記載された発明、対比、検討
次に、念のため甲1?甲9に記載された事項についても検討する。甲1?甲9には、各種化粧品についての「全成分リスト」が記載され、いずれのリスト中にも「シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール」と種々の植物の抽出物等が記載されている(4.(1) 摘記ア?ケ)。
そうすると、甲1?甲9には、共通して次の発明が記載されているといえる。

「植物抽出物等とシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコールとを含有する皮膚外用組成物。」

そして、植物抽出物等として甲1?甲9にはそれぞれ下記の物質が記載されている。
甲1:チャ葉エキス
甲2:ブドウ葉エキス、オレンジ油
甲3:ブドウ葉エキス
甲4:ビルベリー葉エキス、レモン果皮油、オレンジ油
甲5:オレンジ果皮油
甲6:ユズ果実エキス、グルコシルヘスペリジン
甲7:ユズ果実エキス
甲8:オウゴンエキス
甲9:モモ葉エキス、ビルベリー葉エキス

甲1?甲9に共通して記載されている「シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール」は、本件特許発明2の式(2)の化合物に相当するから、本件特許発明1における一般式(1)で示されるシクロヘキサンジカルボン酸エステルにも相当する。
そうすると、甲1?甲9に記載された発明(以下、「引用発明1」?「引用発明9」という。)と、本件特許発明1、2とは、本件特許発明1、2はグラブリジン等の特定のポリフェノール化合物を含有するのに対し、引用発明1?9では上記の植物抽出物等を含有する点で、それぞれ相違する。

以下、相違点について検討する。
本件特許発明1、2の、グラブリジン、エピガロカテキン、ヘスペリジン、クルクミン、シアニジンのいずれかであるポリフェノールとその由来について、本件特許明細書には、次のa?dの記載がある(下線は当審で付与した)。

a「【0029】
前記ポリフェノールとしては、例えば、合成されたもの、又は、植物から抽出されたものなどが挙げられる。植物から抽出されたポリフェノールは、例えば、植物抽出物に含まれている。
・・・(略)・・・
【0031】
前記植物抽出物としては、例えば、アセンヤク、アルニカ、イチョウ、イラクサ、ウコン、エイジツ、オウゴン、オウバク、カミツレ、甘草、クララ、ゲンノショウコ、ウーロン茶、紅茶、若しくは緑茶などの茶、シャクヤク、シラカバ、セイヨウニワトコ、セージ、ゼニアオイ、タイム、チョウジ、チンピ、ツボクサ、ノバラ、ハマメリス、ビルベリー、ホップ、マロニエ、ミカン、メリッサ、モモ(葉)、ユキノシタ、ユズ、ヨモギ、ローズマリーなどの植物の抽出物が挙げられる。」

b「【0036】
前記茶抽出物は、ツバキ属(Camellia)チャノキ(sinensis)種に属する植物の葉に抽出処理を施すことにより得られるものである。
該抽出処理においては、抽出溶媒として、例えば、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、エタノール水溶液、プロピレングリコール水溶液、又は、グリセリン水溶液などが採用される。
前記ツバキ属(Camellia)チャノキ(sinensis)種に属する植物としては、Thea sinensis Linne、又は、Thea sinensis O. Kuntzeが好ましい。
前記茶抽出物は、ポリフェノールとして少なくともエピガロカテキンを含んでいる。」

c「【0037】
前記ミカン抽出物としては、例えば、ミカン属(Citrus)に属する植物に抽出処理を施すことにより得られるものが挙げられる。
該抽出処理においては、抽出溶媒として、例えば、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、又は、これらの混合液などが採用される。
具体的には、前記ミカン抽出物としては、例えば、ウンシュウミカン(Citrus unshiu Markovich)、又はその近縁植物(Rutaceae)の果皮(チンピともいう)に抽出処理を施すことにより得られるチンピ抽出物が挙げられる。
前記チンピ抽出物は、ポリフェノールとして少なくともヘスペリジンを含んでいる。」

d「【0039】
前記ビルベリー抽出物は、スノキ属(Vaccinium)に属する植物の果実、又は葉に抽出処理を施すことにより得られるものである。
該抽出処理においては、抽出溶媒として、例えば、プロピレングリコール水溶液、又は、1,3-ブチレングリコール水溶液などが採用される。
前記スノキ属(Vaccinium)に属する植物としては、ビルベリー(Vaccinium myrtillus)が好ましい。
前記ビルベリー抽出物は、ポリフェノールとして少なくともシアニジンを含んでいる。」

上記a?dのとおり、本件特許明細書には、本件特許発明1、2のポリフェノールの抽出源として種々の植物が使用可能であることが記載され、甲1に記載のチャ葉、甲4、甲9に記載のビルベリー、甲6、7に記載のユズ、甲8に記載のオウゴン、甲9に記載のモモ葉などが挙げられている。チャノキ種の葉の抽出物にはエピガロカテキンが(b)、ミカン抽出物のうち特にチンピの抽出物にはヘスペリジンが(c)、果実や葉を用いるビルベリーの抽出物にはシアニジンが(d)、それぞれ含まれ得ることが記載されるものの、オウゴン抽出物やモモ葉抽出物がいずれのポリフェノールを含有する可能性があるのかは記載されていない。
また、甲14にはエピガロカテキンを含むカテキン類が茶、カカオ種子、ブドウ葉などから抽出できることが(4.摘記タ【0009】)、甲15にはブドウ葉にポリフェノール類であるアントシアニジン類が含まれることが(4.摘記チ【0029】)、甲16にはヘスペリジンが柑橘類、特に温州みかんに多く含まれ、未熟期のみかんや、白い中果皮に多量に含まれることが(4.摘記ツ【0051】)、甲17にはヘスペリジンがみかん等の果皮や生薬の陳皮から得られることが(4.摘記テ)、甲18には柚子果皮にフラボノイドであるナリンギンおよびヘスペリジンが含まれることが(4.摘記ト)、甲19にはオウゴンにアントシアニジンを成分として含むことが(4.摘記ナ)、甲20には赤芽品種のモモの葉にはシアニジン3-グリコサイドを含むことが(4.摘記ニ、ヌ)、それぞれ記載されている。

上記の、本件特許明細書の発明の詳細な説明や甲14?甲20の記載からは、本件特許発明1、2の特定のポリフェノールが甲1?甲9に記載の植物抽出物の抽出源である植物に含有される成分であること、甲1?甲9に記載の商品に含まれるとされる植物抽出物中にも含有される可能性があることが理解できる。
しかしながら、植物から抽出される成分は抽出に用いる溶媒の種類等の条件によって異なることや、同属、同種の植物であっても品種が異なれば含有する成分や含有量が異なることは、よく知られている。この技術常識に照らせば、甲1?甲9に記載の植物抽出物は単に由来植物が分かるに過ぎず、本件特許発明1、2のポリフェノールを含有するように調製されたものであるかは明らかでない。この点につき、異議申立人は特に説明をしていない。

例えば甲1について見ると、甲1に記載の「チャ葉エキス」はその原料であるチャ葉の品種や産地が不明であり、どのような製法で得られたものかも明らかでない。甲14には、エピガロカテキン等のカテキン類が茶その他の植物に含まれるという一般的な技術事項や、エピガロカテキンをフナコシ株式会社から販売されている試薬として入手したことは記載されているが、甲1の製品に用いられている特定の「チャ葉エキス」との具体的な関係は示されていないし、例えば、化粧品原料として用いられている「チャ葉エキス」であれば原料や製法によらずカテキン類のうち特定の化合物である「エピガロカテキン」を必ず含有している、などといった事実を確認できるような根拠も見出せない。そうすると、甲1に記載の「チャ葉エキス」について、甲14を参照しても、エピガロカテキンを含有しているかは確認できない。

甲1について見たのと同様に、甲2、3に記載の「ブドウ葉エキス」、甲4?7に記載の柑橘類の抽出物、甲8に記載の「オウゴンエキス」、甲9に記載の「モモ葉エキス」についても、甲14?甲20を参照しても本件特許発明の特定のポリフェノールを含有しているとは断定できない。甲4、9に記載の「ビルベリー葉エキス」については、甲14?20には特段関連する記載は見当たらず、異議申立書でも特に言及されていない。
甲6には本件特許発明1、2のポリフェノールに対応する成分として「グルコシルヘスペリジン」も記載されているが、「グルコシルヘスペリジン」はヘスペリジンにさらに糖分子を付加した構造であり、本件特許発明1、2のヘスペリジンとは異なる化合物である。異議申立人は、この点につき、「(略)・・・グルコシルヘスペリジンは、ヘスペリジンに糖を転移したものであり、ヘスペリジンと一応相違する。しかしながら、「ヘスペリジン」、「グルコシルヘスペリジン」は、いずれもビタミンPとして同様の生理機能を発揮するものであり、均等であるといえることから、甲6号商品に含まれる「グルコシルヘスペリジン」は、本件特許発明1の「ヘスペリジン」に相当するといえる。」(特許異議申立書第25頁、(6)エ)と主張する。
しかしながら、ヘスペリジンとグルコシルヘスペリジンの生理機能が同様であることと、グルコヘスペリジンがヘスペリジンに相当するかどうかは別の問題であって、両者は明らかに別異の化合物であるから、特許異議申立人の上記主張は、理由がない。

甲8の「オウゴンエキス」については、甲19にオウゴンがアントシアニジンを含むことが記載されているものの(摘記テ)、アントシアニジンはシアニジンと骨格を同じくする類似化合物を総称する名称であって、シアニジンのみを指すものではない。よって、仮に甲8に記載のオウゴンエキスがアントシアニジンを含むものだとしても、それがシアニジンであるか不明である。

また、甲9の「モモ葉エキス」について、甲20には品種によってシアニジン3-グルコサイドが発現するものとしないものがあることが記載されている。すると、甲9の「モモ葉エキス」がシアニジン3-グルコサイドを含有するとは断定できないし、シアニジン3-グルコサイドはシアニジンにさらに糖が結合したシアニジン誘導体の一種であって「シアニジン」とは別個の化合物である。よって、甲20に記載の事項を踏まえても、甲9の「モモ葉エキス」がシアニンジンを含有するかは不明である。
この点につき、異議申立人は、「シアニジン3-グルコサイドは、シアニジンに糖が結合したものであり、シアニジンと一応相違する、しかしながら、シアニジン3-グルコサイドの活性部位は、シアニジンと同様の構造であり、「シアニジン3-グルコサイド」と「シアニジン」は均等物であるといえる。」(特許異議申立書第27頁(9)ウ)と主張するが、活性部位の構造が同様であっても、シアニジンとシアニジン3-グルコサイドは異なる化合物であり、シアニジン3-グルコサイドがシアニジンに相当するということはできないから、当該主張は理由がない。

よって、甲1?甲9に記載の植物抽出物等は、いずれも本件特許発明1、2のポリフェノールに相当するとはいえない。

以上をまとめると、甲1?甲9に記載された発明は本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるとはいえず、また、甲1?甲9に記載された発明は本件特許発明1、2でもない。

また、甲1?甲9には、各種化粧品において、それぞれの植物抽出物をどのような成分や作用を目的として配合しているのか何ら記載されておらず、それぞれの植物抽出物に換えて、その由来植物に含まれ得る多種多様な成分のうち特に本件特許発明1、2のポリフェノールを配合する動機や理由は見出せない。
よって、効果について検討するまでもなく、本件特許発明1、2は、甲1?甲9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。

(2-2)甲10に記載の発明を引用発明とする場合
上記、4.(1)コ、サに摘記したとおり、甲10には、美白ローション、美白乳液等の皮膚外用剤組成物において、「1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール」と「レモンエキス」とを含有することが記載されており、要するに次の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されている。

「レモンエキスと、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールとを含む、皮膚外用剤組成物。」

甲10発明の1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールは、本件特許請求項2に記載の式(2)において、シクロヘキサンの置換位置が1位と4位に限定された化合物であるから、本件特許発明1、2がグラブリジン、エピガロカテキン、ヘスペリジン、クルクミン、及びシアニジンからなる群より選択されるポリフェノールを含むのに対し、甲10発明ではレモンエキスを含む点で両者は相違する。

上記相違点について検討する。
甲10発明の「レモンエキス」は、具体的にどのような組成のものであるか明らかでない。既に検討したとおり、本件特許発明1、2のポリフェノールの1つであるヘスペリジンは柑橘類に含まれる成分であるものの、植物の抽出物の組成は原料植物が同じでも種々の条件によって変わるところ、甲10に記載の「レモンエキス」は、その主要成分も、原料や抽出方法の詳細も明らかでなく、必ずしもヘスペリジンを含有するとは断定できない。また、レモンエキスの主要成分としてはクエン酸やビタミンCなどが知られるところ、甲10発明におけるレモンエキスの配合目的が成分中のヘスペリジンを特に利用するためともいえない。さらに、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールとともに配合することによって経時変色を防止できることについて、甲10には何の記載も示唆も無く、当業者といえどもそのような効果を予測することはできない。
そうすると、甲10発明においてレモンエキスに換えてヘスペリジンを配合し、本件特許発明1、2とすることは、当業者が容易にできたこととはいえない。
したがって、本件特許発明1、2は甲10発明ではないし、甲10発明に基いて当業者が容易に発明することができたものでもない。

(2-3)甲11に記載の発明を引用発明とする場合
上記、4.(1)シ、スに摘記したとおり、甲11には、要するに次の発明(以下、「甲11発明」という。)が記載されている。

「グルコシルヘスペリジンと、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールとを含む、外用組成物。」

甲11発明のシクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールは、本件特許請求項2に記載の式(2)で示される化合物であるから、本件特許発明1、2がポリフェノールの1つとしてヘスペリジンを含有するのに対し、甲11発明はグルコシルヘスペリジンを含有する点で両者は相違する。

異議申立人は、この点について「(略)・・・グルコシルヘスペリジンは、ヘスペリジンに糖を転移したものであり、ヘスペリジンと一応相違する。しかしながら、「ヘスペリジン」、「グルコシルヘスペリジン」は、いずれもビタミンPとして同様の生理機能を発揮するものであり、均等であるといえることから、甲11発明の「グルコシルヘスペリジン」は、本件特許発明1の「構成A、A’」に実質的に同一であるといえる。」(特許異議申立書第28?29頁、(4-3-3)イ)と主張する。
しかしながら、ヘスペリジンとグルコシルヘスペリジンの生理機能が同様であることと、グルコヘスペリジンがヘスペリジンに相当するかどうかは別の問題であって、両者は明らかに別異の化合物であるから、特許異議申立人の上記主張は、理由がない。

上記の相違点について検討する。
グルコシルヘスペリジンは、ヘスペリジンに糖を付加して水やアルコールへの溶解性を向上させた化合物である。摘記スによれば、甲11発明においてグルコシルヘスペリジンは水溶性抗酸化成分や水溶性血行促進作用成分として用いられており、また、甲11発明の実施例はいずれも水を主要基材として用いる水性組成物であるところ、天然に存在し得るヘスペリジンの水溶性を向上させたグルコシルヘスペリジンを、敢えて水溶性の低いヘスペリジンに置換すべき理由は見当たらない。また、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコールとともに配合することによって経時変色を防止できることについて、甲11には何の記載も示唆も無く、当業者といえどもそのような効果を予測することはできない。
そうすると、甲11発明においてグルコシルヘスペリジンに換えてヘスペリジンを配合し、本件特許発明1、2の構成とすることは、当業者が容易にできたこととはいえない。
したがって、本件特許発明1、2は甲11発明と同一ではないし、甲11発明に基いて当業者が容易に発明することができたものでもない。

以上のとおりであるから、本件特許が特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項に違反してされたものであるという特許異議申立人の主張は理由がない。

(3)特許法第36条第6項第1号について
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する条件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、本件特許発明が解決しようとする課題は、異議申立人も主張するとおり、ポリフェノールの酸化等により皮膚外用組成物の経時的な変色を抑制するというものである、といえる(【0003】?【0007】)。
この課題を解決する手段として、本件特許請求項1,2に係る発明では、特定のポリフェノールとともに一般式(1)で示されるシクロヘキサンジカルボン酸エステルを含有することを必須の発明特定事項としており、それらの含有量について特段の範囲や制限を設けていない。
この点につき、特許異議申立人は、「皮膚外用組成物の変色を抑制するという課題を解決するためには、その前提として、皮膚外用組成物を着色する程度にポリフェノールを含有する必要がある。しかしながら、本件特許発明1,2は、ポリフェノールの含有量が特定されていないことから、皮膚外用組成物が着色しない程度のわずかな含有量のものまで包含されている。」と述べ、「本件特許発明1、2は、本件特許発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求している」旨、主張する(特許異議申立書第29頁(4-4))。

しかしながら、下記のとおり、異議申立人の上記主張は理由がない。
まず、変色とは、何らかの色の変化をいうのが一般的な理解であるところ、そのような変化は、異議申立人がポリフェノールに由来する色として想定していると思われる有彩色からの変化に限られない。皮膚外用組成物においても、例えば白色や無色の組成物が経時変化により黄変などの着色を呈することがあり、これも変色といえる。本件特許発明の具体的な「変色」について実施例を見ると、製造直後の試料と50℃で1ヶ月保管後の試料のそれぞれについて、分光測色計を用いてL、a、b値を測定し、L、a、b値から算出されるΔEの変化率を評価しており、初期の色やその濃度によらず、物理的に測定できる色調変化を対象にしていると認められる(段落【0061】)。
してみると、異議申立人の上記主張は、その前提において誤りであり、理由がない。
加えて、【表8】に記載される実施例28?32によれば、固形分を5重量%、うちグラブリジンを0.5重量%含有する甘草抽出物(段落【0047】参照)を4重量部含有する組成物において、シクロヘキサンジカルボン酸エステルの配合量が0.001重量部から5重量部まで増大するにしたがってΔEの変化率が8.9%から0.6%へ減少しており、ポリフェノールを含有する組成物の変色抑制の効果は、併用するシクロヘキサンジカルボン酸の量に依存することが理解できる。すると、当業者は、ポリフェノールの含有量に応じて適した量のシクロヘキサンジカルボン酸を用いれば組成物の変色を所望の程度に抑制することができることを認識し、適切なシクロヘキサンジカルボン酸エステルの量を設定することができるのであって、ポリフェノールの含有量そのものの範囲を限定しなければ組成物の変色抑制という課題を解決できることが認識できないというものではない。
よって、本件特許発明1、2はいわゆるサポート要件を満たさないということはできず、本件特許が特許法第36条第6項第1項に違反してされたものであるという特許異議申立人の主張は理由がない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-11-13 
出願番号 特願2013-4749(P2013-4749)
審決分類 P 1 652・ 537- Y (A61K)
P 1 652・ 112- Y (A61K)
P 1 652・ 121- Y (A61K)
P 1 652・ 113- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鳥居 福代  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 穴吹 智子
淺野 美奈
登録日 2016-12-02 
登録番号 特許第6051055号(P6051055)
権利者 ピアス株式会社
発明の名称 皮膚外用組成物  
代理人 藤本 昇  
代理人 中谷 寛昭  
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