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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E06B
審判 全部申し立て 2項進歩性  E06B
審判 全部申し立て 特29条の2  E06B
管理番号 1335183
異議申立番号 異議2017-700430  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-28 
確定日 2017-12-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6017721号発明「採光面材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6017721号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6017721号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成24年8月27日に出願した特願2012-186522号の一部を平成28年4月21日に新たな特許出願としたものであって、同年10月7日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人清竹信司(以下「申立人」という。)より請求項1?3に対して特許異議の申立てがされ、平成29年7月11日付けで取消理由が通知され(発送日:同年7月18日)、同年10月13日に意見書の提出がされたものである。

第2 特許異議の申立てについて
1 請求項1?3に係る発明
請求項1?3に係る発明(以下、「本件発明1」等、あるいはまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された、以下のとおりのものである。

本件発明1
「【請求項1】
建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を屋内に取入れる複層の採光面材であって、
屋外側に設けられる非拡散性の透光板と、屋内側に設けられ透過光を拡散させる拡散板と、これら透光板と拡散板とに挟み付けられている屈折フィルムと、他の透光板とを備え、
前記他の透光板は、前記透光板または前記拡散板に対して空気層を介して組み合わせられ、
前記屈折フィルムは前記空気層に触れていない、
採光面材。」

本件発明2
「【請求項2】
請求項1記載の採光面材において、前記他の透光板は、前記拡散板の屋内側に設けられている採光面材。」

本件発明3
「【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の採光面材において、前記屈折フィルムは、前記透光板と前記拡散板とで隙間なく挟み付けられている採光面材。」

2 甲各号証の記載
甲第1号証:特表2014-515123号公報(特願2014-502608号)
甲第2号証の1:セントラル硝子、「板ガラス総合カタログ商品編」、2009年12月1日、表紙、表紙裏、p.22-23、p.40、裏表紙
甲第2号証の2:日本板硝子株式会社、「ガラス建材総合カタログ2009-2010」、2009年4月、表紙、目次、p.62、p.88、p.248、裏表紙
甲第2号証の3:AGCグラスプロダクツ株式会社、「Asahi Glass Architectual Glass Catalogue 商品編」、2011年5月、表紙、p.5、p.53、p.83、裏付、裏表紙
甲第2号証の4:板硝子協会、「デザインも省エネ性能も!両方満たすなら「Low-E複層ガラス」」、2007年11月、インターネット<http://www.itakyo.or.jp/upload/kenchiku14_2.pdf>
甲第2号証の5:板硝子協会、「わかりやすい「ビルと複層ガラス」」、1999年10月、インターネット<http://www.itakyo.or.jp/upload/kenchiku8.pdf>
甲第2号証の6:特開昭54-155637号公報
甲第2号証の7:実願平4-31155号(実開平5-83287号)のCD-ROM
甲第3号証:特開2011-227120号公報
甲第4号証:特開2011-189590号公報
甲第5号証:特開2008-126631号公報
甲第6号証:特開平8-338902号公報
甲第7号証:特開平2-161091号公報

(1)甲第3号証について
ア 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、図面と共に次の事項が記載されている(当決定で下線を付した。以下同じ。)。
(ア)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光や人工光などの採光器として使用される光学素子、および照明装置に関する。」

(イ)
「【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態に係る光学素子を窓に用いた例を示す室内の概略斜視図である。本実施形態の光学素子1は、屋外から照射される太陽光L1を室内Rへ取り込む太陽光採光器として構成され、例えば、建屋の窓材に適用される。光学素子1は、上空から照射される太陽光L1を室内Rの天井Rtに向けて指向的に出射する機能を有する。天井Rtに向けて取り込まれた太陽光は、天井Rtにおいて拡散反射されて室内Rを照射する。このように太陽光が室内の照明に用いられることで、日中における照明器具LFの使用電力の削減が図られることになる。
【0015】
[光学素子]
図2は、光学素子1の構成を示す概略断面図である。光学素子1は、第1の透光フィルム101、第2の透光フィルム102および基材111の積層構造を有する。図2において、X軸方向は光学素子1の厚み方向、Y軸方向は光学素子1の表面における水平方向、そしてZ軸方向は上記表面における上下方向を意味する。
【0016】
第1の透光フィルム101は、透明性を有する材料で形成される。第1の透光フィルム101としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、これらに限られない。
【0017】
第2の透光フィルム102(第1の基体)は、第1の透光フィルム101と対向する一方の表面102a(第1の面)に、後述する構造層13が形成されている。このため、形状転写性に優れた樹脂材料を用いることで、形状精度に優れた構造層を形成することができる。また、第2の透光フィルム102は、ガラスで形成されてもよい。第2の透光フィルム102の表面102aは、透明な粘着層104を介して第1の透光フィルム101に接合されている。これにより、構造層13を内包する透光層14が形成される。透光層14は、第1の透光フィルム101、第2の透光フィルム102および粘着層104で構成される。
【0018】
第2の透光フィルム102は、透明性を有する材料で形成される。第2の透光フィルム102は、第1の透光フィルム101と同種の樹脂材料で形成されてもよいが、本実施形態では、第2の透光フィルム102は、紫外線硬化樹脂で形成されている。
【0019】 ・・・
【0020】 ・・・
【0021】 ・・・
【0022】
[構造層]
次に、構造層13の詳細について説明する。
【0023】
構造層13は、上下方向(Z軸方向)に所定ピッチで配列された空隙130(反射体)の周期構造を有する。空隙130は、X軸方向(第1の方向)に高さh(第1の長さ)、Z軸方向(第2の方向)に幅w(第2の長さ)を有し、Z軸方向に配列ピッチpで形成されている。また、空隙130は、Y軸方向に直線的に形成されている。
【0024】
図2において空隙130各々の上面は、光入射面11から入射した光L1を光出射面12に向けて反射する反射面13aを形成する。すなわち、反射面13aは、第2の透光フィルム102を構成する樹脂材料と空隙130内の空気との界面で形成される。本実施形態では、第2の透光フィルム102の相対屈折率が例えば1.3?1.7とされ、空隙130内の空気(屈折率1)との屈折率差を有する。なお、上記第2の媒質は空気に限られない。例えば、空隙130内に第2の透光フィルム102よりも低屈折率の材料が充填されることで反射面13aが形成されてもよい。
【0025】
図3は、反射面13aの作用を説明する模式図である。反射面13aは、反射面13aに対し上方から入射する入射光L1を全反射することで、上方へ向けて出射される出射光L2を形成する。なお、ここでは光の出射方向が上方である場合を説明するが、これに限定されず、光の入射方向や当該光学素子の設置方向などに応じて光の出射方向は変更され得る。
【0026】
図3を参照して、反射面13aの高さをh、配列ピッチをp、反射面13aに入射する入射光L1のX軸方向に対する入射角をθとする。ここで、入射角θは、反射面13aに入射する光のうちXY平面内で進行する光のX軸方向に対する入射角を意味する。このとき、反射面13aにおいて入射光L1が全反射する場合、以下の(1)式を満たすとき、入射角θで入射する全入射光線は角度θで上方へ向けて出射される。」

(ウ)
「【0058】
<第3の実施形態>
図11は、本発明の第3の実施形態に係る光学素子の斜視図である。本実施形態の光学素子3は、空隙130が一方の表面に形成された透光フィルム102と、プリズム112pが配列された構造面を有するプリズムシート112(第2の基体)との積層構造を有する。空隙130は、透光フィルム102の光入射側の面に形成され、プリズム112pは光出射側の面に形成されている。プリズム112pは、Z軸方向に稜線方向を有し、Y軸方向に配列されている。
【0059】 ・・・
【0060】 ・・・
【0061】 ・・・
【0062】
光拡散性を有する基体としては、上述のプリズムシートに限られず、シボ付きのフィルムや、スジ状のシボが形成された透光性フィルムや、表面に半球状あるいは円柱状の曲面レンズが形成された透光性フィルムなど、周期的または非周期的な形状の光拡散要素を有する各種透光性フィルムを用いることができる。また、光拡散性フィルムとして、透光フィルム102と同一の構造面を有するフィルムを用いてもよい。この場合、光入射側に位置する透光フィルム102と形状が交差するような向きに当該フィルムを積層することで、拡散度を高めることができる。」

(エ)
「【0079】
そして以上の実施形態では、光学素子は、図1に示したように、窓材Wに第1の透光フィルム101、粘着層104、第2の透光フィルム102および基材111を順に積層した構成を説明したが、これに限られない。例えば図17(A)?(D)に示すように、光学素子の積層構造は、任意に設定することが可能である。
【0080】 ・・・
【0081】
図17(C)および(D)は、空隙部が光出射側に位置するように透光フィルム102を窓材Wに貼り付けた例をそれぞれ示す。このような構成によっても、上述の第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。図17(C)において、基材111は、図17(E)に示すように省略されてもよい。また、図17(D)は、透光フィルム102の光出射側にプリズムやシボ等の光拡散要素が表面に形成された形状付きフィルム114を積層した例を示す。この作用効果は、図11を参照して説明した実施形態と同様である。
【0082】 ・・・
【0083】
図18(C)は、図17(A)における基材111を、光拡散性を有するフィルム114に置き換えた構成例を示している。図18(D)は、図17(B)の構成例において透光フィルム102の光出射側に、光拡散性を有する形状付きフィルム115を接合した例を示している。形状付きフィルム115の接合に代えて、透光フィルム102の光出射面に直接凹凸形状を形成することで光拡散機能を付与してもよい。」

(オ)上記(ア)?(エ)の記載及び図17(D)、図18(C)から、光学素子は、屋外側から屋内側に向けて、窓材W、粘着層104、第2の透光フィルム102、形状付きフィルム114の順に密着して積層されていることが見て取れる。

イ 甲第3号証に記載された発明の認定
甲第3号証には、上記アを踏まえると、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「屋外から照射される太陽光L1を室内Rへ取り込む太陽光採光器として構成され、建屋の窓材に適用され、光学素子は上空から照射される太陽光L1を室内Rの天井Rtに向けて指向的に出射する機能を有し、
光学素子は、窓材W、粘着層104、第2の透光フィルム102、プリズムやシボ等の光拡散要素が表面に形成された形状付きフィルム114の積層構造からなり、
第2の透光フィルム102(第1の基体)は、構造層13が形成されており、構造層13は、上下方向(Z軸方向)に所定ピッチで配列された空隙130(反射体)の周期構造を有し、空隙130各々の上面は、光入射面11から入射した光L1を光出射面12に向けて反射する反射面13aを形成し、反射面13aに対し上方から入射する入射光L1を全反射することで、上方へ向けて出射される出射光L2を形成し、
屋外側から屋内側に向けて、窓材W、粘着層104、第2の透光フィルム102、形状付きフィルム114の順に密着して積層されている、
太陽光採光器」

(2)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、図面と共に次の事項が記載されている。
(ア)
「【請求項1】
第1グレージング基材と、
前記第1グレージング基材に配置された可視光拡散層と、
前記可視光拡散層に隣接する光方向転換層と、を備える、
太陽光方向転換グレージングユニットであって、
前記光方向転換層は複数のプリズム構造を形成する主面を備え、
前記可視光拡散層及び光方向転換層は、入射する太陽光が前記光方向転換層に接触する前に前記可視光拡散層に接触するように配向される、
太陽光方向転換グレージングユニット。」

(イ)
「【技術分野】
【0001】
本開示は、概して光方向転換構成体に関するものであり、特に、太陽光方向転換グレージングユニットに関する。」

(ウ)
「【発明を実施するための形態】
【0010】
建物内の部屋、廊下などに自然の日光を提供するために窓及び同様の構成体が使用される。しかしながら、自然の太陽光は、典型的には光が部屋又は廊下に遠くまで透過し得ないような角度で窓に当たる。加えて、入射光は、窓付近において不快なほどに強いことがあるため、窓付近に座っているユーザーはシャッター、ブラインド又はカーテンを閉ざしたくなることがあり、したがって部屋の照明のこの潜在的な光源は排除される。したがって、通常の入射角から、部屋、廊下、又は他の屋内空間の天井への方向に日光を方向転換させ得る構成体が望ましい。
【0011】 ・・・
【0012】 ・・・
【0013】 ・・・
【0014】 ・・・
【0015】
本開示の一実施形態では、ハイブリッド構成体は、グレージング基材と、第1グレージング基材に配置された可視光拡散層と、可視光拡散層に隣接する光方向転換層と、を備える。可視光拡散層及び光方向転換層は、入射する太陽光が光方向転換層に接触する前に可視光拡散層に接触するように配向される。要素のこの配向には、特定の利点がある。例えば、入射する太陽光を拡散層に接触させることは、散乱光が光方向転換層に接触することを引き起こして、グレアの低減及び方向転換された光の色形成といった、上述したような望ましい特徴をもたらす。要素のこの配向により達成される追加的な望ましい特徴は、拡散層に接触する全ての入射光の散乱が、光方向転換層に接触しない光のグレアでさえも低減することである。光方向転換層に接触しない入射光は正常なグレアを作り出すことができる。入射光が光方向転換層に接触することができないのは、それが方向転換され得ない入射角であるためか、又は、方向転換層を含まない窓の部分に入射光が接触しているためかのいずれかによる(光方向転換層が窓の一部のみにあることが望ましい場合があり、光方向転換層は模様を有していてもよい、すなわち、連続層でなくてもよい)。光拡散層及び光方向転換層をともに積層して、複合多層構成体を形成してもよく、あるいは、それらの層は、分離された物品であってもよい。ハイブリッド構成体には追加層が存在してもよい。」

(エ)
「【0088】
図6で、ハイブリッド構成体600は、第1グレージング基材610と、第1グレージング基材610上に配置された可視光拡散層620と、光方向転換層630と、第2グレージング基材640と、を備える。この構成体は、入射する太陽光が最初に第1グレージング基材610に接触し、連続して第1グレージング基材610及び可視光拡散層620を通過してから光方向転換層630に接触し、上方に方向付けられるように構成されている。可視光拡散層620と光方向転換層630とは、分離した層でもよく、又は、例えばフィルムのような光拡散及び方向転換構成体の複合体であってもよい。いくつかの実施形態では、光学的に透明な接着剤の層を使用して、可視光拡散層620を第1グレージング基材610(図に示されていない)に接着すること、及び/又は光方向転換層630を可視光拡散層620及び/又は第2グレージング基材640(図に示されていない)に接着することができる。上述のように、可視光拡散層620は、第1グレージング基材610上のフィルム又はコーティング、テクスチャード表面又はトポグラフィー、若しくは可視光拡散基材である場合がある。いくつかの実施形態では、光方向転換層630と第2グレージング基材640との間に空隙(図に示されていない)が存在してもよい。この空隙は、真空空間でもよく、例えば空気又は他のガスで満たされていてもよい。」

イ 甲第1号証に記載された発明の認定
甲第1号証には、上記アを踏まえると、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「建物内の部屋、廊下などに自然の日光を提供するために窓に使用され、通常の入射角から、部屋、廊下、又は他の屋内空間の天井への方向に日光を方向転換させ得るハイブリッド構成体600において、
ハイブリッド構成体600は、第1グレージング基材610と、第1グレージング基材610上に配置された可視光拡散層620と、光方向転換層630と、第2グレージング基材640と、を備え、入射する太陽光が最初に第1グレージング基材610に接触し、連続して第1グレージング基材610及び可視光拡散層620を通過してから光方向転換層630に接触し、上方に方向付けられるように構成されている、
ハイブリッド構成体」

(3)甲第2号証の1?甲第2号証の7について
甲第2号証の1?甲第2号証の7には、申立人が主張するとおり、以下の技術事項が記載されている(申立書8頁5行?10頁23行)。

「他の透光板(板ガラス)を備え、前記他の透光板は、前記透光板(板ガラス)に対して空気層(中空層)を介して組み合わせられた複層ガラス」

(4)甲第4号証について
甲第4号証には、申立人が主張するとおり、以下の技術事項が記載されている(申立書13頁下から2行?14頁5行)。

「建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を屋内に取入れる複層の採光面材(光学積層体1)であって、
屋外側に設けられる非拡散性の透光板(第2の透明基材12)と、
これら透光板と(第1の透明基材11)とに挟み付けられている屈折フィルム(構造面21a及び光学機能層22)と、
前記屈折フィルムは前記空気層に触れていない(中間層31、32)、
採光面材(光学積層体1)」

(5)甲第5号証について
甲第5号証には、申立人が主張するとおり、以下の技術事項が記載されている(申立書16頁6行?16行)。

「建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を屋内に取入れる複層の採光面材(積層透明板状体7)であって、
屋外側に設けられる非拡散性の透光板(室外側透明板状体1)と、
これら透光板と(室内側透明板状体6)とに挟み付けられている屈折フィルム(フィルム4)と、
他の透光板とを備え(複層窓)、
前記他の透光板は、前記透光板または(室内側透明板状体6)に対して空気層を介して組み合わせられ(複層窓)、
前記屈折フィルムは前記空気層に触れていない(中間膜2、バリアフィルム3)、
採光面材(積層透明板状体7)。」

(6)甲第6号証について
甲第6号証には、申立人が主張するとおり、以下の技術事項が記載されている(申立書17頁下から3行?18頁3行)。

「建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を屋内に取入れる複層の採光面材(光制御積層体)であって、
屋外側に設けられる非拡散性の透光板(透明板状体1a)と、
これら透光板と(透明板状体1b)とに挟み付けられている屈折フィルム(光制御フィルム4)と、
前記屈折フィルムは前記空気層に触れていない(接着膜2a,2b)、
採光面材(光制御積層体)。」

(7)甲第7号証について
甲第7号証には、申立人が主張するとおり、以下の技術事項が記載されている(申立書19頁13行?22行)。

「建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を屋内に取入れる複層の採光面材(調光ガラス20)であって、
屋外側に設けられる非拡散性の透光板(板ガラス42)と、
これら透光板(板ガラス41)とに挟み付けられている屈折フィルム(液晶シート40)と、
他の透光板とを備え(別の板ガラス48)、
前記他の透光板は、前記透光板または(板ガラス41)に対して空気層(空気層46)を介して組み合わせられ、
前記屈折フィルムは前記空気層に触れていない、
採光面材(調光ガラス20)。」

3 取消理由の概要
請求項1?3に係る特許に対して平成29年7月11日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりのものである。
本件特許の請求項1?3に係る発明は、その出願前において頒布された甲第2号証の1?7、甲第3号証、甲第7号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

4 取消理由通知の取消理由について
(1)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲3発明の対比
a 甲3発明の「太陽光採光器」は窓材等からなるので、面材ということができる。したがって、甲3発明の「太陽光採光器」は本件発明1の「採光面材」に相当する。また、甲3発明の「太陽光採光器」は「屋外から照射される太陽光L1を室内Rへ取り込む太陽光採光器として構成され、建屋の窓材に適用され」るものであるから、本件発明1の「建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を屋内に取入れる複層の採光面材」である点でも一致する。

b 甲3発明の「第2の透光フィルム102」は光を屈折させるフィルムであるから、本件発明1の「屈折フィルム」に相当する。また、甲3発明の「窓材W」は、本件発明1の「非拡散性の透光板」に相当する。

c 甲3発明の「プリズムやシボ等の光拡散要素が表面に形成された形状付きフィルム114」は、透過光を拡散させる機能を有しているので、本件発明1の「透過光を拡散させる拡散板」と、「透過光を拡散させる拡散部材」である点で共通する。

d したがって、本件発明1と甲3発明は、以下の一致点で一致し、相違点1、2で相違する。

<一致点>
「建物の開口部に設けられて前記開口部を塞ぎ屋外の光を屋内に取入れる複層の採光面材であって、
屋外側に設けられる非拡散性の透光板と、屋内側に設けられ透過光を拡散させる拡散部材と、これら透光板と拡散部材とに挟み付けられている屈折フィルムとを備えた、
採光面材。」

<相違点1>
本件発明1が「他の透光板」を有し、「前記他の透光板は、前記透光板または前記拡散板に対して空気層を介して組み合わせられ、前記屈折フィルムは前記空気層に触れていない」のに対し、甲3発明はそのような特定がなされていない点。

<相違点2>
拡散部材について、本件発明1が「拡散板」であるのに対し、甲3発明が「プリズムやシボ等の光拡散要素が表面に形成された形状付きフィルム」である点。

(イ)判断
相違点2について検討するに、本件発明1において、本件明細書の「【0020】・・・透光板2は、例えば単板の透明ガラスが用いられるが、透明ガラス以外の透明アクリル樹脂等の透明な合成樹脂等の板材を用いても良い。拡散板3としては、単板のすりガラスが用いられるが、この他に、単板の透明ガラスの片面に光拡散性を有する拡散フィルムを貼付けたものや、透過光拡散光性の合成樹脂板を用いても良い。屈折フィルム4は、フィルムに限らず、屈折素材を透光板2等にコーティングした層であっても良い。また、屈折フィルム4には、具体的には、市販のアクリル系等の合成樹脂を主材料とする屈折フィルムを用いることができる。」(下線は当決定で付与。)の記載から見て、「透光板」と「拡散板」によって「屈折フィルム」が挟み付けられていることから、板材間にフィルムが挟み付けられている層構成となっていることは明らかである。
一方、甲3発明では、「窓材」と「第2の透光フィルム」によって「形状付きフィルム」が挟み付けられており、「窓材」は通常「板」であるから、「窓材」という板材に複数のフィルム(第2の透光フィルム、形状付きフィルム)が積層されるように構成されており、それぞれのフィルムは屈折フィルム、拡散フィルムとして機能すると共に、耐久性の観点からも窓材があれば足りているわけであるから、拡散フィルム(形状付きフィルム)を板材とし、本件発明1のように板材間に屈折フィルムが挟み付けられている層構成とする動機付けはないというべきである。
また、その他の証拠である甲第2号証の1?甲第2号証の7、甲第7号証には、相違点2に係る構成は開示されていない。
よって、甲3発明において、相違点2に係る本件発明1の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

(ウ)小括
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第3号証、及び甲第2号証の1?甲第2号証の7、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア(イ)参照)により、甲第3号証、及び甲第2号証の1?甲第2号証の7、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)まとめ
したがって、本件発明1?3は、甲第3号証、及び甲第2号証の1?甲第2号証の7、甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条の2
申立人は、本件発明は、甲1発明と同一であるから、本件発明に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものである旨を主張している(申立書26頁1行?7行)。
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明を比較すると、少なくとも以下の相違点3で相違する。

<相違点3>
拡散板と屈折フィルムについて、本件発明1では屋外側から屈折フィルム、拡散板の順に配置されているのに対し、甲1発明では屋外側から可視光拡散層(拡散板に相当)、光方向転換層(屈折フィルムに相当)の順に配置されている点。

相違点3について検討するに、甲1発明では、「【0015】・・・可視光拡散層及び光方向転換層は、入射する太陽光が光方向転換層に接触する前に可視光拡散層に接触するように配向される。要素のこの配向には、特定の利点がある。」(上記2(2)ア(ウ)参照)と記載されているように、屋外側から可視光拡散層、光方向転換層の順に配置することに技術的意義があるわけであるから、その順序を本件発明1のように反対にすることには阻害要因があるし、設計上の微差ということもできない。
したがって、本件発明1は、甲1発明と同一ではない。

イ 本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア参照)により、甲1発明と同一ではない。

ウ まとめ
したがって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではなく、申立人の主張する上記申立理由により特許を取り消すことはできない。

(2)特許法第29条第2項
申立人は、本件発明は、甲3発明、甲第4号証?甲第7号証に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨を主張している(申立書26頁15行?27行)。
上記4(1)において検討したとおり、甲3発明、及び甲第2号証の1?甲第2号証の7、甲第7号証に記載された発明に基いて本件発明の構成(特に本件発明1の相違点2に係る構成)にすることは、当業者が容易に想到し得ることではなく、さらに、その他の証拠である甲第4号証?甲第6号証においても、上記相違点2の構成は記載されていない。
よって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、申立人の主張する上記申立理由により特許を取り消すことはできない。

(3)特許法第29条第1項第3号
申立人は、本件発明は、甲3発明と同一であるから本件発明に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである旨を主張している(申立書26頁8行?14行)。
上記4(1)及び5(2)において検討したとおり、甲3発明、及び甲第2号証の1?甲第2号証の7、甲第4号証?甲第7号証に記載された発明に基いて本件発明の構成にすることは、当業者が容易に想到し得ることではないから、本件発明が甲3発明と同一でないことは明らかである。
よって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
したがって、申立人の主張する上記申立理由により特許を取り消すことはできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、平成29年7月11日付け取消理由通知及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-11-27 
出願番号 特願2016-85056(P2016-85056)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (E06B)
P 1 651・ 16- Y (E06B)
P 1 651・ 121- Y (E06B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 仲野 一秀  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 西田 秀彦
井上 博之
登録日 2016-10-07 
登録番号 特許第6017721号(P6017721)
権利者 大和ハウス工業株式会社
発明の名称 採光面材  
代理人 杉本 修司  
代理人 野田 雅士  
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