• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1335187
異議申立番号 異議2017-700869  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-13 
確定日 2017-12-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6098982号発明「情報処理装置及び情報処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6098982号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6098982号の請求項1?16に係る特許についての出願は、平成27年8月31日に特許出願され、平成29年3月3日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人矢口太郎(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6098982号の請求項1?16に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3 申立理由の概要
特許異議申立人は、下記の(1)?(4)の申立理由を主張している。

(1)請求項1、2、4?6、11?13、15、16に係る特許は、特開2004-334737号公報(甲第1号証)、特開2004-164155号公報(甲第2号証)又は特開2004-139196号公報(甲第3号証)に基づき、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

(2)請求項1、3、6?10、14、16に係る特許は、主たる証拠として提出された甲第1号証、甲第2号証又は甲第3号証、及び従たる証拠として提出された特開2002-109208号公報(甲第5号証)等(特開2000-172697号公報(甲第6号証)、特開2006-344048号公報(甲第7号証)、ニッキン 2015年6月19日 総合(3)(甲第8号証)、特開2003-109071号公報(甲第9号証)、特開2001-22851号公報(甲第10号証)、デシジョンツリーモデルの個人与信モデルへの応用、データマインテック株式会社、2011年4月21日(甲第11号証)、The Credit Scoring Toolkit:Theory and Practice for Retail Credit Risk Management and Decision Automation、2007年8月30日(甲第12号証)、金融検査マニュアル、金融庁、平成26年(甲第13号証)、特開2004-78435号公報(甲第14号証)、特開2004-139198号公報(甲第15号証)、特開2010-73063号公報(甲第16号証)、特開平11-191124号公報(甲第17号証)、特表2011-530749号公報(甲第18号証)、特開平10-222581号公報(甲第19号証))に基づき、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)請求項1、16に係る特許は、証拠として特開2015-225362号公報(甲第4号証)に基づき、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

(4)請求項1、16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

4 刊行物の記載
(1)甲第1号証には、
「ロジスティック回帰などの機能を実行して信用リスクモデルを決定する信用リスクモデル決定装置100及び信用リスク管理装置200(【0018】、【図1】)、及び、店舗端末300(【0064】、【図1】、【図6】)を備えた信用リスク管理システムであって、
信用リスクモデル決定装置100は、顧客データを加工して、分析対象データと検証用データを作成し、分析対象データから信用リスクモデルを作成し、検証用データによりその信用リスクモデルの精度が所定の判別率を達成しているか否かを判別(検証)し、検証された信用リスクモデルをリスク管理装置に転送し、(【0019】)
分析対象データ(顧客属性情報等)に基づいて【数1】で記述される信用リスクモデルの説明変数(【0055】)とその回帰係数(【0059】)を決定し(【0041】、【0051】、【0055】、【0059】)、
生成した信用リスクモデルに検証用データを適用し、各顧客がデフォルトするか否かを予測し(【0060】)、
複数の顧客の信用リスクに関する実績データである分析対象データ(顧客属性情報等)に基づいて、【数1】で記述される信用リスクモデルの説明変数(【0055】)とその回帰係数(【0059】)を決定すること(【0010】、【0041】、【0051】、【0055】、【0059】)
サンプリングプログラムによって顧客データから検証用データをサンプリングし(【0030】)、生成された信用リスクモデルに検証用データを適用し、各顧客がデフォルトするか否かを予測し(【0060】)、
信用リスク管理装置200は、店舗端末300から送信された、店舗端末300で入力された顧客データと貸倒リスク評価指示により、顧客データを信用リスクモデルに提供して、デフォルト確率を予測し、その予測数値を店舗端末300に返信し、また、その顧客への貸し付けが認められた場合には、貸倒引当金を計上するものであり、(【0020】)
信用リスクモデルを顧客データに適用してデフォルト確率を算出し(【0063】)、
店舗端末300は、店舗の貸付担当者が当該顧客への貸し付けの可否を判断するため、信用リスク管理装置200から送信されたデフォルト確率を表示部340に表示する、(【0064】)
信用リスク管理システム。」
の発明が記載されている。

(2)甲第2号証には、
「判別ツリ一法を採用した不芳取引発生確率推計モデルを構築して変換ルールを定義する、個人信用格付けを実現するためのコンピュータシステムであって(【0020】、【0024】)、
モデル構築手法として、不芳取引発生確率の有無を目的クラスとし、その他の項目を説明変数とした判別ツリーモデルを用い、その際、不芳取引発生確率の推計値の算出にあたって、エントロピーの差で定義される利得Gain(X)が算出され(【0024】、【0029】、【0042】、【0050】、【0051】、【0055】)、
不芳取引発生確率推計値から個人信用格付けへの変換規則は、任意に設定可能である【0037】ものの、累積出願確率に対応する不芳取引発生確率推計値や不芳取引発生確率推計値の大きさそのものを閾値として設定した場合に各部分集合毎に具体的な格付けを与え(【0055】、【0056】)るものであり、、
既与信顧客格付けルール生成部28及び未与信顧客格付けルール生成部30は、
ルール適用後の不芳取引発生率の予測値と実際値との比較から、その乖離が所定の範囲を超えたと管理部50が判断した場合に起動されるものであり(【0059】)、
生成された部分集合ごとの、第2の期間(時点「b」から現時点「c」までの期間)不芳取引発生確率推計値を、個人信用格付けに変換するルール(テーブル)を定義して、各部分集合を個人信用格付けと対応付けるものであり、(【0055】、【0058】)、その際、当該ルール(テーブル)は、部分集合と対応する不不芳取引確率推計値とを関連付けたテーブルおよび不芳取引確率推計値と格付けの閾値とを関連付けたテーブルを作成してもよく(【0057】)、
既与信顧客に適用する第1のモデルの説明変数は、第1の時点「a」から第2の時点「b」の前日までの月次の流動性預金残高合計、固定性預金合計、ATM出金、クレジット自振合計、給与振込み、自動振込み、送金、公共料金引落し額、年金振込み額の平均値を収納する銀行口座利用情報、および、第2の時点「b」時点における生年月日、性別、初回口座開設日を収納する個人属性情報と、それらに加えて第1の時点「a」から第2の時点「b」の前日(2001年3月31日)までの月次の融資残高合計、貸金収益額の平均値を収納する融資利用・決済情報であり(【0022】)、
他方、未与信顧客に適用する第2のモデルの説明変数は、同じく第1の時点「a」から第2の時点「b」の前日までの月次の流動性預金残高合計、固定性預金合計、ATM出金、クレジット自振合計、給与振込み、自動振込み、送金、公共料金引落し額、年金振込み額の平均値を収納する銀行口座利用情報、および、第2の時点「b」における生年月日、性別、初回口座開設日を収納する個人属性情報であり、(【0023】)
生成された既与信顧客のためのルール(テーブル)および未与信顧客のためのルール(テーブル)は、それぞれ、既与信顧客格付けルール記憶部44および未与信顧客格付けルール記憶部46に記憶され(【0059】)、
管理部50が操作者から与えられた顧客を特定する情報および格付けの指示に応答して、顧客が、既与信の状態であるか未与信の状態であるかを判断し、顧客が既与信であれば、既与信顧客格付けルール適用部32を起動し、その一方、顧客が未与信であれば、未与信顧客格付けルール適用部34を起動し(【0065】)、
既与信顧客格付けルール適用部32及び未与信顧客格付けルール適用部34は、それぞれ既与信顧客格付けルール記憶部44及び未与信顧客格付けルール記憶部46に記憶された個人信用格付けルール(テーブル)を参照して、前記抽出された顧客の各種情報により特定される部分集合に対応付けられた格付けを決定し、決定された格付けが顧客と関連付けられて顧客格付けデータ記憶部48に記憶され(【0063】、【0064】)、
処理結果を含む画像データを表示装置に与える(【0039】、【0040】、【0047】、【図1】【図2】)、
個人信用格付けを実現するためのコンピュータシステム(【0039】、【図1】)。」
の発明が記載されている。

(3)甲第3号証には、
「計算機200において重回帰分析やニューラルネットワークなどのデータマイニングの手法により、商品又はサービスについて顧客の将来契約見込み確率などを予測する予測モデルを作成するシステム(【0011】【0016】【0022】【0029】)であって、
顧客の属性情報や取引状況などに関する情報を収集した顧客情報300(【0019】)に基づいて、契約見込み確率の予測対象であるカードローン契約と各顧客情報の項目との変量の関係を誤差が最も少なく当てはまるように、選択された各顧客情報の項目についてa1・・・anを算出して、【数1】の関係式で表現される予測モデルを生成し(【0022】、【0024】、【0028】、【0029】、【0030】)、
予測に利用する顧客情報に関する項目として商品契約に関連が高い項目が選択され、商品契約見込み確率予測モデルに顧客情報の予測利用項目に対応するデータを入力して、各顧客のある時点から予測対象期間後の時点での予測対象項目の商品についての契約見込み契約見込み確率を予測し(【0030】)、
顧客番号毎の商品別の予測結果からなる商品別契約見込み確率ファイル600、すなわち、顧客毎の確率データ、を出力装置204に出力し(【図6】、【0032】)、
商品契約と過去の顧客情報との関係について、顧客情報300を用いて予測対象商品についてある時点より予測したい期間前の顧客情報との関係を予測モデルとしてモデルを作成し(【0022】)、
パラメータ設定画面500において、予測対象項目と予測期間、利用項目を入力装置202から入力せずに、予め記憶装置203に登録しておき(【0030】)、予測したい期間がTヶ月後の時には、予測モデル作成基準となる、ある時点とそこからTヶ月前の顧客情報300を用いて予測モデルとしてモデル化しておき(【0023】)、予測対象期間についての確率予測モデルに、顧客情報のある時点でのデータを入力し(すなわち、ある時点での顧客情報を予測対象として選択し)(【0030】)、各顧客のある時点から予測対象期間後の時点での予測対象項目の商品についての契約見込み確率を予測する(【0030】、【図6】)、
システム(【0011】、【発明の名称】)。」
の発明が記載されている。

(4)甲第4号証には、
「分析装置12、営業担当者端末14等を備えた営業支援システムであって(【0015】、【図1】)
分析装置12のモデル生成部62は、営業支援情報保持部42に情報が格納された各顧客について、商品購入実績情報を参照してモデルを生成し(【0051】)、モデル生成部62の解析エンジン64が多重ロジスティック回帰分析を実行して、基本顧客情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性のそれぞれを説明変数とし、分析対象商品またはサービスに対する購買確度を被説明変数(目的変数)とする下記の数式のような購買確度モデルを生成し、(【0055】、図2)

(数式)
商品の購買確度
=F(顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性)
=ax1+bx2+cy1+dy2+ez1+fz2
(x1、x2は顧客基本情報の項目、y1、y2は推定顧客属性の項目、z1、z2は顧客住所の地域特定の項目)

地域特性保持部32は、各地域に居住する住民に関する属性を示す情報を地域特性情報として保持し(【0023】?【0026】)、
ATM顧客属性生成部は、ある近傍施設と特定ATMとの距離が近いほど近傍施設の訪問者属性を特定ATMのATM顧客属性に強く反映させ(【0037】)、
顧客属性推定部は、顧客の口座情報と、ATM利用頻度、曜日・時間帯等を勘案して、顧客が利用したATMの属性から顧客の属性を推定し(【0040】)、
購買確度算出部66は、購買確度モデルに対して、顧客基本情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性を入力することで、顧客による分析対象商品またはサービスの購買確度を算出し(【0057】)、
購買確度一覧画面のウェブページを営業担当者端末14のディスプレイ(【0058】、【0068】、【図8】)に表示する、
営業支援システム」
の発明が記載されている。

5 判断
(1)請求項1に係る発明について
ア 3(1)(2)のうち、甲第1号証を主引用例とする申立理由について
請求項1に係る発明と甲第1号証又は甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証の刊行物には、「ある顧客が所定の金融商品を利用する可能性に関するニーズ情報又は前記ある顧客に金銭を貸し付けた際の貸倒リスクもしくは延滞リスクに関するリスク情報を生成する生成部」が「対象となる複数のある顧客を選択し、当該複数のある顧客に対する前記ニーズ情報又は前記リスク情報を生成する」ことが記載されていない。したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証の刊行物に記載された発明ではない。

さらに、甲第1号証の「デフォルト確率」は、店舗の貸付担当者が当該顧客への貸し付けの可否を判断するために店舗端末に表示されるものであり(甲第1号証【0064】)、甲第1号証において、この「デフォルト確率」に基づいて貸し付けの可否を判断するためには、それぞれの顧客につき個別に「デフォルト確率」が算出されることが前提として不可欠であるから、「デフォルト確率」を「複数のある顧客に対する」「リスク情報」とすることが動機付けられることはない。したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて容易になし得たものではない。
したがって、請求項1に係る発明は、周知事項を示すために異議申立人が提示した甲第5乃至7号証の記載に関わらず、上記甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものではない。

特許異議申立人は、この点を、甲第1号証に記載された発明との相違点でないと主張している。
しかし、上記したとおり、甲第1号証の「デフォルト確率」は、店舗の貸付担当者が当該顧客への貸し付けの可否を判断するために店舗端末に表示されるものであって(甲第1号証【0064】)、それぞれの顧客について個別に算出される必要があるから、甲第1号証は、「複数のある顧客に対する」「リスク情報」を生成しないのであり、この点は相違点となる。
よって、かかる主張を採用することはできない。

イ 3(1)(2)のうち、甲第2号証を主引用例とする申立理由について
請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号証の刊行物には、「前記採用変数及び前記係数」が「過去の実績データに基づき決定される」ことが記載されていない。したがって、請求項1に係る発明は、上記甲第2号証に記載された発明ではない。

さらに、甲第2号証の刊行物においては、「既与信顧客」と「未与信顧客」に適用するモデルの「説明変数」が、それぞれ、「第1の時点「a」から第2の時点「b」の前日までの月次の流動性預金残高合計、固定性預金合計、ATM出金、クレジット自振合計、給与振込み、自動振込み、送金、公共料金引落し額、年金振込み額の平均値を収納する銀行口座利用情報、および、第2の時点「b」時点における生年月日、性別、初回口座開設日を収納する個人属性情報と、それらに加えて第1の時点「a」から第2の時点「b」の前日(2001年3月31日)までの月次の融資残高合計、貸金収益額の平均値を収納する融資利用・決済情報」と「第1の時点「a」から第2の時点「b」の前日までの月次の流動性預金残高合計、固定性預金合計、ATM出金、クレジット自振合計、給与振込み、自動振込み、送金、公共料金引落し額、年金振込み額の平均値を収納する銀行口座利用情報、および、第2の時点「b」における生年月日、性別、初回口座開設日を収納する個人属性情報」であることが明示されている。
いうなれば、甲第2号証の刊行物においては、「説明変数」が「既与信顧客」か「未与信顧客」かに応じて予め決定されたものであって、過去の実績データに基づいて決定されるものではないことが明示されている。
しかも、このことは、「個人向け金融商品の利用の有無に関わらず、銀行取引口座開設後一定期間以上経過している顧客に対する個人信用格付けを行う」ものである甲第2号証に記載された発明における課題解決手段として不可欠であるから、このような「説明変数」を「過去の実績データに基づき決定される」ものとすることが動機付けられることはない。
したがって、請求項1に係る発明は、周知事項を示すために異議申立人が提示した甲第5乃至7号証の記載に関わらず、甲第2号証に記載された発明に基づいて容易になし得たものではない。

特許異議申立人は、この点について、甲2発明における、第1の時点から第2の時点の前日までの月次の流動性預金残高合計等の銀行口座利用情報等を説明変数とする機能が請求項1に係る発明の「前記採用変数及び前記係数は過去の実績に基づき決定され」に相当すると主張している。
しかし、甲第2号証の刊行物における「説明変数」は、「既与信顧客」か「未与信顧客」かに応じて予め決定されたものであり、このことは、上記したとおり明示されている。よって、甲第2号証の刊行物における「説明変数」は、過去の実績データに基づいて決定されるものではないのであり、この点は相違点となる。
よって、かかる主張を採用することはできない。

ウ 3(1)(2)のうち、甲第3号証を主引用例とする申立理由について
請求項1に係る発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証の刊行物には、「前記採用変数及び前記係数」が「過去の実績データに基づき決定される」こと、及び、「ある顧客が所定の金融商品を利用する可能性に関するニーズ情報又は前記ある顧客に金銭を貸し付けた際の貸倒リスクもしくは延滞リスクに関するリスク情報を生成する生成部」が「対象となる複数のある顧客を選択し、当該複数のある顧客に対する前記ニーズ情報又は前記リスク情報を生成する」ことが記載されていない。
したがって、請求項1に係る発明は、上記甲第3号証に記載された発明ではない。

さらに、甲第3号証の刊行物の「契約見込み確率」は、顧客見込み金額とともに顧客収益の算出のために用いられるものであり(【0011】?【0013】)、そうである以上、顧客毎に予測される必要がある。この事に照らせば、「契約見込み確率」が個客毎に予測されることを前提として「予測に利用する項目」を顧客毎に「商品契約に関連が高い項目」として個別に選択可能とし、また、顧客毎の確率データを出力しているところを、顧客毎に選択するのではなく、また、「複数のある顧客に対する」データを出力するようにすることは、甲第3号証の記載に照らして動機付けられることはない。
したがって、請求項1に係る発明は、周知事項を示すために異議申立人が提示した甲第5乃至7号証の記載に関わらず、甲第3号証に記載された発明に基づいて容易になし得たものではない。

エ 3(3)の申立理由について
請求項1に係る発明と甲第4号証に記載された発明とを対比すると、本件発明の「採用変数」は、「金融機関を利用する複数の顧客の属性情報、複数の顧客に関する審査情報及び複数の顧客の前記金融機関における取引情報のいずれか1つ以上から生成される」ものであるのに対し、甲第4号証に記載された発明の「説明変数」は、「基本顧客情報、推定顧客属性、顧客住所の地域特性のそれぞれ」である点で相違する。

そして、甲第4号証に記載された発明は、ATM顧客属性生成部と顧客属性推定部によって顧客が利用したATMの属性から推定された「推定顧客属性」及び地域特性保持部32が保持する「顧客住所の地域特性」とを説明変数とするモデルを用いることにより「金融機関が従来より保持していた顧客情報では捉えられない顧客像」を「精度よく捉え」ようとするものである(【0005】、【0013】)から、この相違点は、実質的なものである。
よって、請求項1に係る発明は、上記甲第4号証に記載された発明ではない。

異議申立人は、甲第4号訟の「説明変数」が本件発明の「採用変数」に相当する旨を述べているものの、それ以上に上記相違点がないことを積極的に主張していない。

オ 3(4)の申立理由について
異議申立人は、特許請求の範囲においては、「生成部」が「対象となる複数のある顧客」の選択をどのように行うかについて限定がされていないのに対し、対応する明細書の記載においては、「ランダム」に選択する以外の方法が記載されていないと主張する。
しかし、明細書には、「生成部11はランダムに対象となる顧客を選択し、当該顧客に対するニーズ情報及びリスク情報を生成してもよい」(【0050】)として、個客を選択する方法が任意であって、「ランダム」が例示である旨が明示されており、また、明細書全体をみても、どのように対象となる個客を選択するかが特定されていない発明が開示されているものと認められる。
よって、この申立理由は、理由がない。

(2)請求項2?16に係る発明について
請求項2乃至15に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであり、また、請求項16は、請求項1に係る発明に対応する方法発明である。

してみると、(1)のア乃至ウにおいて示した判断と同様の理由により、請求項2、4?6、11?13、15、16に係る発明は、いずれも、甲第1乃至3号証のいずれかに記載された発明でないから、3(1)の申立理由は、理由がない。
さらに、(1)のア乃至ウにおいて示した判断に照らせば、請求項3、6?10、14、16に係る発明は、いずれも、従たる証拠として提出された甲第5乃至甲第19号証の記載の記載に関わらず、甲第1乃至第3号証のいずれかに記載された発明に基づいて容易になし得たものでないから、3(2)の申立理由も、理由がない。

請求項16についての3(3)の申立理由は、(1)エに示した判断と同様の理由により、理由がない。

請求項16についての3(4)の申立理由は、(1)オに示した判断と同様の理由により、理由がない。

6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-12-06 
出願番号 特願2015-170822(P2015-170822)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
P 1 651・ 537- Y (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田付 徳雄上田 威  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 石川 正二
相崎 裕恒
登録日 2017-03-03 
登録番号 特許第6098982号(P6098982)
権利者 株式会社三菱総合研究所
発明の名称 情報処理装置及び情報処理方法  
代理人 大野 浩之  
代理人 大野 聖二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ