ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する C10L 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する C10L 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する C10L |
---|---|
管理番号 | 1335341 |
審判番号 | 訂正2017-390068 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2017-07-18 |
確定日 | 2017-11-17 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5756972号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第5756972号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを認める。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件訂正審判の請求に係る特許第5756972号発明(以下「本件特許」という。)は、平成22年2月24日に出願された特許出願(特願2010-58335号)に対し、平成25年11月11日付けで手続補正書が提出され、平成26年6月16日付けで拒絶理由が通知され、同年7月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年12月2日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成27年1月16日付けで意見書及び手続補正書が提出された後に、平成27年6月12日にその請求項1?9に係る発明について特許権の設定登録がなされたものであって、平成29年7月18日に、本件訂正審判の請求がなされ、同年9月7日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年10月6日に意見書が提出された。 第2 請求の趣旨及び理由 本件訂正審判請求の趣旨は、「特許第5756972号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおりに訂正することを認める、との審決を求める。」というものであって、本件特許に係る願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を下記訂正事項1?3のとおりに訂正することを求めるというものである。 1.訂正事項1 特許請求の範囲請求項3の一部に「パラジウム/アルミニウム水素化触媒共存下」と記載されているのを、「パラジウム/アルミナ水素化触媒共存下」に訂正する(請求項3を引用する請求項4?9も同様に訂正する)。 2.訂正事項2 明細書の段落【0015】に、「パラジウム/アルミニウム水素化触媒共存下」と記載されているのを、「パラジウム/アルミナ水素化触媒共存下」に訂正する。 3.訂正事項3 明細書の段落【0032】【表1】に「5質量%バイオディーゼル混合経由」と記載されているのを、「5質量%バイオディーゼル混合軽油」に訂正する。 第3 当審の判断 1.訂正の目的、新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更について ア 訂正事項1、2について 本件請求項3に係る発明は、「(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステル」を、「水素化触媒共存下」、「水素化処理する」「バイオディーゼル燃料の製造方法」に関するものであるところ、上記訂正事項1は、上記「水素化触媒」に含まれる物質に関して、「アルミニウム」を「アルミナ」と訂正するものと認められる。 一方、上記「(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステル」は、「バイオディーゼル燃料」に含まれた水分により加水分解され、脂肪酸が生じることがあること、及び、「バイオディーゼル燃料」に含まれるリノール酸メチルやリノレン酸メチルに代表される多不飽和脂肪酸が、空気中の酸素により酸化され、脂肪酸が生じることがあることは、当業者にとって技術常識である。 そして、生じた「脂肪酸」は、アルミニウムと容易に反応し、アルミニウムを変性、劣化させるものであることも、当業者にとって技術常識である。 なお、平成29年9月7日付けの訂正拒絶理由で引用された特開昭63-291642号公報には、「(従来技術とその問題点)」の欄に「従来から金属アルミニウムや金属亜鉛を担体とする貴金属触媒が各種化学反応に広く使用されている。」(1頁右下欄13?16行)と記載されているものの、該公報に記載された貴金属触媒を具体的にどのような化学反応に用いるかについては記載されておらず、また、同特表2008-505103号公報に記載された水素化触媒は、「マレイン酸」(【0002】)に対して用いられるものであり、同特開平2-202856号公報に記載された水素化触媒は、「DCH(ジシアノシクロヘキサン)類」(2頁右下欄16行)に対して用いられるものであり、同特開平2-157251号公報に記載された水素化触媒は、「長鎖不飽和あるいは飽和脂肪族ニトリル」(2頁左下欄7?8行)に対して用いられるものであり、いずれの触媒も、「(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステル」に対して用いられるものではない。 そうすると、「脂肪酸」と反応し、変性、劣化する「アルミニウム」を、本件請求項3に係る発明の「バイオディーゼル燃料の製造方法」に使用することは、該製造方法における「水素化触媒」として、「アルミニウム」がどのように機能するのかを予測し得ないものとなることから、該製造方法においては「アルミニウム」は使用しないということができ、本件請求項3の記載に接した当業者は、「アルミニウム」は、明らかな誤記と解するものと認められる。そして、これに関して、明細書の段落【0024】及び【0045】(実施例8)等を参酌すれば、「アルミナ」の誤記と理解するというべきである。 また、訂正事項2は、請求項3に対応する発明の詳細な説明について、明細書の段落【0015】の「パラジウム/アルミニウム水素化触媒共存下」と記載されているのを、「パラジウム/アルミナ水素化触媒共存下」に訂正するものであり、「水素化触媒」に含まれる物質について、「アルミニウム」を「アルミナ」と訂正するものであるから、訂正事項1と同様な理由から、明細書の段落【0015】の上記記載に接した当業者は、「アルミニウム」は、「アルミナ」の誤記と理解するというべきである。 したがって、上記訂正事項1、2は、本来その意であることが、明細書又は特許請求の範囲の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すものであり、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものといえ、「誤記の訂正」に該当する。 よって、上記訂正事項1及び2は、誤記の訂正を目的とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。 そして、上記訂正事項1及び2に係る訂正は、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであって、特許法第126条第5項の規定に適合する。 また、上記訂正事項1及び2に係る訂正によって、特許請求の範囲の技術的事項はなんら変更されるものではないことから、該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 イ 訂正事項3について 上記訂正事項3は、明細書の段落【0032】【表1】の「5質量%バイオディーゼル混合経由」という記載の「経由」を、同じ「けいゆ」という読みであって、「ディーゼル燃料」を表す「軽油」と訂正するものであり、上記「経由」という記載に接した当業者は、「ディーゼル燃料」に関する技術についての記載であるから、「経由」は、「軽油」の誤記と理解するというべきである。 したがって、上記訂正事項3に係る訂正も、本来その意であることが、明細書又は特許請求の範囲の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すものであり、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものといえ、「誤記の訂正」に該当する。 そして、上記訂正事項3に係る訂正は、新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかであって、特許法第126条第5項の規定に適合する。 また、上記訂正事項3に係る訂正によって、特許請求の範囲の技術的事項はなんら変更されるものではないことから、該訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ まとめ 上記訂正事項1?3に係る訂正は、誤記の訂正を目的とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、新たな技術的事項を導入しないものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 2.独立特許要件にいて 上記訂正事項1?3に係る訂正によって、訂正訂正後の請求項1?9に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるという理由は見当たらず、上記訂正事項1?3は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。 第4 むすび したがって、上記訂正事項1?3は、特許法第126条第1項ただし書き第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第126条第5ないし7項の規定に適合するものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 バイオディーゼル燃料の製造方法及びバイオディーゼル燃料組成物 【技術分野】 【0001】 本発明は、1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステルを製造原料とする酸化安定性に優れたバイオディーゼル燃料の製造方法及びその燃料と軽油との混合物の製造方法に関する。特に、前記製造原料を特定の水素化触媒共存下、数気圧程度の低圧の水素雰囲気にて水素化処理することを特徴とする酸化安定性及び低温流動性に優れたバイオディーゼル燃料の製造方法及びその燃料と軽油との混合物の製造法に関する。また、本発明はバイオディーゼル燃料組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、エネルギー源の多様化や地球温暖化防止への対策を目的に、従来の石油を原料とする燃料以外の代替燃料、特にバイオマス燃料の利用に関心が高まっている。なかでも菜種油、大豆油、パーム油、ココナッツ油、ヒマワリ油、ジャトロファ油、牛脂、豚脂、魚油などの動植物油脂や廃食用油を原料とするバイオディーゼル燃料は、硫黄分がほとんど含まれていないという特徴があるうえ、所謂カーボンニュートラルな燃料であるという特徴があるため、石油系軽油代替燃料として注目されているところである。 【0003】 菜種油、大豆油、パーム油、ココナッツ油、ヒマワリ油、ジャトロファ油等の油脂中の主成分であるトリグリセリドは、粘性が高く、そのままディーゼルエンジン燃料に用いると、エンジン内部や噴射バルブにデポジットを生じやすい。一方、前記トリグリセリドと、メタノールやエタノール等の低級アルコール類とを、水酸化カリウム等の均一系触媒存在下で、エステル交換して得られる脂肪酸アルキルエステルは、バイオディーゼル油と呼ばれているが、粘性も低く、ディーゼルエンジン用の石油代替燃料として利用されている。また、ディーゼルエンジン用の石油燃料に一定量添加・配合させる利用法もある。 前記石油代替燃料として利用されるバイオディーゼル油100%の品質に関しては、JIS K2391(日本)、EN14214(欧州)、ASTM D6751-09(米国)の規格がある。一方、バイオディーゼル油と軽油の混合油(以下、バイオディーゼル混合油ということがある)に関しては、品質を確保するため、揮発油等の品質の確保等に関する法律(以下、改正品確法という)が改正され、平成21年2月25日から完全施行された。 中間留分の酸化安定性に係るISO規格(ISO12205)よりさらに厳しい酸化条件下、つまり115℃、純酸素吹き込み条件下で16時間の強制酸化条件で、バイオディーゼル混合油(バイオディーゼル混合率は最大5質量%)の酸化により増加する酸量(酸を塩基性の水酸化カリウムで中和するのに必要な水酸化カリウム量で評価)を0.12mgKOH/g以下に規定する厳しいものである。 【0004】 バイオディーゼル燃料の酸化安定性を向上するために、抗酸化剤を添加する技術が知られている。例えば、抗酸化剤として没食子酸プロピルを添加する技術(特許文献1)やキノリン系またはフェニレンジアミン系抗酸化剤を添加する技術(特許文献2)、ヒンダードアミン系およびヒンダードフェノール系抗酸化剤を添加する技術(特許文献3)が報告されている。 【0005】 バイオディーゼル燃料が酸化されやすいのは、自動酸化を起こしやすい不飽和脂肪酸が含まれているからであり、特に炭素-炭素二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸は非常に酸化されやすく、酸やスラッジ生成の原因となる。したがって、不飽和脂肪酸含有量の多いバイオディーゼル燃料に対しては、抗酸化剤添加は酸化安定性の向上の程度を経済性を有する添加量の範囲内で満足することが出来るほど十分ではない。 また、バイオディーゼル燃料に抗酸化剤を加えても、不飽和結合の重合等に伴いスラッジが生成するという問題点は依然として解消されず、バイオディーゼル燃料の酸化安定性についてのさらなる技術の開発が求められている。 【0006】 酸化安定性の劣るバイオディーゼル燃料中の多価不飽和脂肪酸を低減する方法として、不飽和結合を、水素化処理触媒を用いて水素化する方法が挙げられる。一般に燃料油の水素化処理は高圧水素圧下で行われることが多い。例えば、特許文献4及び5には炭化水素油の水素化処理触媒とその製造方法およびその活性化方法が提案されている。しかし、それら技術では、水素化処理時の圧力は、例えば3.9MPaと、極めて高圧下で水素化処理することが求められる。さらに特許文献6には、脂肪酸アルキルエステル油の部分水素化法が示されているが、10MPaと非常に高圧な条件で水素化が行われており、しかも界面活性剤と均一系触媒を併用しているために、生成物との分離の問題も生じる。 【0007】 しかし、高圧で水素化処理するには、その設備の導入や管理に多額の費用必要とするため、耐圧設備を必要としない水素化処理法の開発が求められている。バイオディーゼル油生産は、地方自治体や小規模製造者によるものが多く、高圧設備を所有していないため、特に、低圧下での水素化処理が望まれている。低圧下での水素化処理が可能となれば、高圧ガス保安法等への対応の困難さも解消されるので、その点でも有利である。 【0008】 一方、水素化処理におけるバイオディーゼル燃料中の脂肪酸成分の変化を見ると、高水素圧下で反応を行うと、1価不飽和脂肪酸アルキルエステルで反応は止まらず、飽和脂肪酸アルキルエステルまで水素化される。飽和脂肪酸アルキルエステルは不飽和脂肪酸アルキルエステルに比べて融点が非常に高いため、低温流動性が悪く、燃料として使用することができなくなる。 【0009】 この問題点を克服するために、本発明者らは、常圧程度の水素圧下で、バイオディーゼル燃料に含まれる脂肪酸アルキルエステル中の酸化安定性の劣る二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸アルキルエステルを、比較的低温流動性や酸化安定性が良好な1価不飽和脂肪酸アルキルエステルまで選択的に水素化して、酸化安定性が極めて優れたバイオディーゼル燃料が得られる水素化処理触媒を提案した(特許文献7)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0010】 【特許文献1】 国際公開2006/129435号パンフレット 【特許文献2】 特開2009-57510号公報 【特許文献3】 特表2009-522421号公報 【特許文献4】 特開平8-332385号公報 【特許文献5】 特開2006-297313号公報 【特許文献6】 国際公開2008/43454号パンフレット 【特許文献7】 国際公開2008/105518号パンフレット 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 しかしながら、前記本発明者らが提案した触媒は、多価不飽和脂肪酸アルキルエステルから1価不飽和脂肪酸アルキルエステルへの選択的水素化に優れているものの、多価不飽和脂肪酸アルキルエステルの水素化やシス体の1価不飽和脂肪酸アルキルエステルの異性化により生成したトランス体の1価不飽和脂肪酸アルキルエステルの含有量が多いことに気づき、また、本発明者らは、前記水素化不飽和脂肪酸アルキルエステルを含むバイオディーゼル燃料は、低温流動性や貯蔵時の成分析出に問題があることに気づいた。トランス体は飽和脂肪酸アルキルエステルと同様にシス体に比べて分子の直線性が良いため結晶化しやすく、融点も高い。例えば、未処理のバイオディーゼル燃料に含まれるシス体であるオレイン酸の融点が13.4℃であるのに対し、同じ位置に二重結合を有するトランス体のエライジン酸の融点は46.5℃ではるかに高い。したがって、融点の高いトランス体の生成を抑制することが、低温流動性に優れ、結晶析出のない酸化安定性の高いバイオディーゼル燃料を製造するのに不可欠となると本発明者らは認識した。 【0012】 そこで、本発明の目的は、酸化安定性及び低温流動性に優れたバイオディーゼル燃料の製造のために、トランス体の生成を抑制しつつ多価不飽和脂肪酸アルキルエステルから1価不飽和脂肪酸アルキルエステルへの選択的水素化を可能にするバイオディーゼル燃料の製造方法及びバイオディーゼル燃料組成物の提供にある。 【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明者らは、バイオディーゼル燃料の水素化処理触媒の改善を種々試み、その結果、また、前記触媒は、脂肪酸アルキルエステルと軽油の混合物を低圧下で水素化処理する場合には軽油中の硫黄に対する耐久性の面で有用であるものの、脂肪酸アルキルエステルを単独で処理する場合、水素化触媒組成物に含まれる希土類元素は必ずしも必要でないことを見出した。 【0014】 さらに、炭素-炭素二重結合が多孔性無機酸化物担体上の酸性水酸基に吸着・濃縮され水素化反応とともにトランス体への異性化反応を受け易くなることを抑えるため、多孔性無機酸化物担体として酸点の少ない担体を用いること、さらに活性成分である貴金属を担体の表面のみに担持させることにより、上記要求を満足させうる触媒を得ることができることを見出し、ついに本発明を完成させるに至った。 【0015】 すなわち、請求項1の発明は、パラジウム(Pd)及び白金(Pt)を、シリカ/アルミナ比が40以上のゼオライトに、Pd/Pt原子比が0.1/10?10/1であって、貴金属担持量として0.1?10質量%担持させた触媒を、アルミナ担体と混練して得ることを特徴とする、1MPa未満の水素圧雰囲気にて、(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料製造用、又は軽油混合バイオディーゼル燃料製造用水素化触媒組成物である。 請求項2の発明は、(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステルを、請求項1に記載の水素化触媒共存下、1MPa未満の水素圧雰囲気にて水素化処理することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法である。 請求項3の発明は、(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステルを、表面のみにパラジウムを担持させたパラジウム/アルミナ水素化触媒共存下、1MPa未満の水素圧雰囲気にて水素化処理することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法である。 請求項4の発明は、請求項2または3に記載の方法で廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理による脂肪酸アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が18.4質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が9.9質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が16.8質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法である。 請求項5の発明は、請求項2または3に記載の方法でジャトロファ油アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理によるジャトロファ油アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が24.8質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が9質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が13.7質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法である。 請求項6の発明は、請求項2または3に記載の方法でなたね油アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理によるなたね油アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が15.2質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が9.8質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が16.9質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法である。 請求項7の発明は、請求項2または3に記載の方法でパーム油アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理によるパーム油アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が53.2質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が6.8質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が4.8質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法である。 請求項8の発明は、請求項2または3に記載の方法で魚油アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理による魚油アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が33質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が16.5質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が27.4質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法である。 【0016】 請求項9の発明は、請求項2?8のいずれか記載の水素化処理物を、軽油と混合することを特徴とする、軽油含有バイオディーゼル燃料の製造方法である。 【0017】 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明でいう油脂は、動物性油脂でも植物性油脂でも利用可能であり、また廃食用油も利用可能である。バイオディーゼル原料としての油脂は、例えば、トリグリセリド中の脂肪酸組成により、次のように大きく分類される。 Aグループ:炭素数14以下の脂肪酸量が2.5%質量以下、炭素数16の脂肪酸量が30%質量以下、炭素数18の脂肪酸量が70%質量以上、炭素数20以上の脂肪酸量が3%質量以下の油脂。このAグループの中には、菜種油、大豆油、ジャトロファ油、紅花油、ひまわり油、オリーブ油、綿実油、桐油等が含まれる。 Bグループ:炭素数14以下の脂肪酸量が2.5%質量以下、炭素数16の脂肪酸量が30%質量?60質量%、炭素数18の脂肪酸量が40質量%?70%質量、炭素数20以上の脂肪酸量が3%質量以下の油脂。このBグループの中には、粗製パーム油、天然の抗酸化剤等を除去処理した精製パーム油等が含まれる。 Cグループ:炭素数14以下の脂肪酸量が10%質量以下、炭素数16の脂肪酸量が10?30%質量、炭素数18の脂肪酸量が10?35%質量、炭素数20以上の脂肪酸量が10%質量以上、4価以上の不飽和脂肪酸量が10%質量以上の油脂。このCグループの中には、魚油が含まれる。 Dグループ:炭素数14以下の脂肪酸量が20%質量以上、炭素数16の脂肪酸量が30%質量以下、炭素数18の脂肪酸量が40%質量以下、炭素数20以上の脂肪酸量が3%質量以下の油脂。このDグループの中には、ココナッツ油やパーム核油が含まれ、飽和分が90%程度以上である。廃食油の組成は原料依存性が高いが、主要成分は上記のA及びBグループに属する。 【0018】 これら油脂をエステル交換反応処理し、脂肪酸アルキルエステルにさせることが必要である。本発明での脂肪酸アルキルエステルは、バイオディーゼル燃料を製造できる脂肪酸アルキルエステルであれば特に制限されないのであって、脂肪酸アルキルエステルの原料、製法なども特に制限されない。 前記エステル交換反応はすでに広く研究されており、本発明ではそれら成果を利用すればよい。たとえば、油脂にアルコールを接触・混合させ、その際、油脂とアルコールとのモル比は1:3?1:12とすることが好ましい。上記アルコールとしては、低級アルコールが好ましく、その中でもメタノールやエタノールがより好ましく、エステル交換反応特性の面からメタノールが特に好ましい。 エステル交換反応を促進させるために、アルカリ触媒、酸触媒、固体触媒などの触媒を共存させることが好ましい。触媒の使用量は、使用する触媒、反応条件、用いる油脂やアルコール等によって異なるが、例えば、均質系触媒の場合には、油脂重量に対して0.3?2.0%、非均質系触媒の場合は、反応器の体積に対して5?80%用いることができる。エステル交換反応温度及び反応時間は、用いる油脂、アルコール、触媒などによって異なるのであるが、例えば、40?120℃で0.1?6時間とすることができる。反応終了後、副生するグリセリンを除去することが好ましい。エステル交換反応は、回分式反応器または連続式反応器を用いて行えばよい。なお、前記触媒としてリパーゼなどの酵素を用いてもよい。 【0019】 本発明では、遊離脂肪酸をエステル化することによって脂肪酸アルキルエステルを調製することも出来る。遊離脂肪酸としては飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよく、それらの混合物でもよい。これらの脂肪酸が油脂由来の脂肪酸であることが好ましく、脂肪酸の炭素数は前記油脂のグリセリドを構成する酸の炭素数であることが好ましい。なお、前記油脂中に存在する遊離脂肪酸などをエステル化して脂肪酸アルキルエステルを調製することも出来る。 前記脂肪酸アルキルエステル中には、二重結合を有しない飽和脂肪酸アルキルエステル(炭素数10のカプリン酸アルキルエステル、炭素数12のラウリン酸アルキルエステル、炭素数14のミリスチン酸アルキルエステル、炭素数16のパルミチン酸アルキルエステル、炭素数18のステアリン酸アルキルエステル、炭素数20のアラキジン酸アルキルエステル、炭素数22のベヘン酸アルキルエステル、炭素数24のリグノセリン酸アルキルエステル等)、二重結合を1個有する1価不飽和脂肪酸アルキルエステル(炭素数16のパルミトレイン酸アルキルエステル、炭素数18のオレイン酸アルキルエステル、炭素数20のエイコセン酸アルキルエステル、炭素数22のエルカ酸アルキルエステル等)、二重結合を2個有する2価不飽和脂肪酸アルキルエステル(炭素数18のリノール酸アルキルエステル等)、二重結合を3個有する3価不飽和脂肪酸アルキルエステル(炭素数18のリノレン酸アルキルエステル等)、二重結合を4個有する4価不飽和脂肪酸アルキルエステル(炭素数18のステアリドン酸アルキルエステル等)、二重結合を5個有する5価不飽和脂肪酸アルキルエステル(炭素数20のエイコサペンタエン酸アルキルエステル、炭素数22のドコサペンタエン酸アルキルエステル等)、二重結合を6個有する6価不飽和脂肪酸アルキルエステル(炭素数22のドコサヘキサエン酸アルキルエステル等)等が含まれる。 【0020】 かくして得られる脂肪酸アルキルエステルは精製処理し、水素化処理できるが、精製処理を施さない粗製脂肪酸アルキルエステルを水素化処理してもよい。本発明では、前記粗製脂肪酸アルキルエステルを利用することが好ましい。例えば、粗製脂肪酸アルキルエステルには各種抗酸化剤が含まれており有利な結果をもたらす。 前記脂肪酸アルキルエステルを低圧の水素圧雰囲気下で水素化処理することが、本発明の一つの大きな特徴である。ここでいう低圧とは、従来から炭化水素油の水素化処理技術分野で採用されている圧力よりも低い圧力を意味する。 脂肪酸アルキルエステルの水素化処理により二重結合が飽和化されると共に、幾何異性体(二重結合の位置がシス位からトランス位へ変化した脂肪酸アルキルエステル)や位置異性体(二重結合の位置が変化した脂肪酸アルキルエステル)、更には、反応中間体である共役体(通常見られる二重結合間のメチレン基が無く、共役二重結合を持つ脂肪酸アルキルエステル)も同時に生成する。炭素数18のリノール酸アルキルエステルの例では、水素化処理で、シス及びトランス体を含むオクタデセン酸アルキルエステル、ステアリン酸アルキルエステル、共役リノール酸アルキルエステルが生成される。 脂肪酸の酸化安定性は二重結合の数の増加と共に悪くなり、炭素数18の脂肪酸の場合、二重結合を3個有するリノレン酸は二重結合を2個有するリノール酸の約10倍酸化されやすく、二重結合を2個有するリノレン酸は二重結合を1個有するオレイン酸の約10倍酸化されやすい。このため、水素化処理では、脂肪酸アルキルエステル中の多価不飽和脂肪酸量を低減させることが極めて重要である。前記多価不飽和脂肪酸量の量は例えば脂肪酸アルキルエステル中に10質量%以下であることが好ましい。さらに、水素化処理される脂肪酸アルキルエステルの種類等により変動するのであるが、8質量%以下であることが好ましい場合もある。 【0021】 本発明では、特に水素圧が約1MPa(絶対圧)以下という低圧で水素化処理することが好ましいが、約0.7MPa以下でも水素化処理できるが、さらに、約0.5MPa以下でも水素化処理できる。この1MPaの値は優れたバイオディーゼル燃料を調製でき、しかも経済的に有利である点から求められた値である。また、圧力が低ければ、そして常圧付近に近づけば、それだけ反応や装置の運転器具やその維持管理、運転経費などの点でも有利である。 【0022】 不飽和脂肪酸アルキルエステルの水素化に伴い、水素化前の原料には存在しないトランス脂肪酸アルキルエステル量が増加するが、シス体に比べ、トランス体は飽和脂肪酸と同様に分子の直線性が良いため結晶化しやすく、融点も高いため、低温流動性に優れ、結晶析出のないバイオディーゼル燃料を得るためには飽和脂肪酸の生成とともにトランス脂肪酸アルキルエステル生成量の適正化も重要である。すなわち、バイオディーゼル燃料の水素化処理により1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が17質量%以下となることが好ましい。さらに、水素化処理される脂肪酸アルキルエステルの種類等により変動するのであるが、5質量%以下であることが好ましい場合もある。 また、魚油を出発原料とする場合は、1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が17質量%より大きくなることもあり、とくに前記Cグループの油脂を出発原料とする場合は、28質量%以下となることが好ましい。 【0023】 より具体的に説明すると、脂肪酸組成が次のとおりの脂肪酸アルキルエステルを水素化処理し、下記(b)のような特性を有する水素化処理脂肪酸アルキルエステルとすることが好ましい。 (1)炭素数14以下の脂肪酸量が2.5質量%以下、 (2)炭素数16の脂肪酸量が30質量%以下、 (3)炭素数18の脂肪酸量が70質量%以上、 (4)炭素数20以上の脂肪酸量が3質量%以下、 (b)特性 (1)2価以上の不飽和脂肪酸アルキルエステル量が10質量%以下、 (2)1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が17質量%以下。 また、脂肪酸組成が次のとおりの脂肪酸アルキルエステルを水素化処理し、下記(b)のような特性を有する水素化処理脂肪酸アルキルエステルとすることが好ましい。 (1)炭素数14以下の脂肪酸量が2.5質量%以下、 (2)炭素数16の脂肪酸量が30質量%?60質量%、 (3)炭素数18の脂肪酸量が40質量%?70質量%、 (4)炭素数20以上の脂肪酸量が3質量%以下、 (b)特性 (1)2価以上の不飽和脂肪酸アルキルエステル量が8質量%以下、 (2)1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が5質量%以下。 さらに、脂肪酸組成が次のとおりの脂肪酸アルキルエステルを水素化処理し、下記(b)のような特性を有する水素化処理脂肪酸アルキルエステルとすることが好ましい。 (1)炭素数14以下の脂肪酸量が10%質量以下、 (2)炭素数16の脂肪酸量が10?30%質量、 (3)炭素数18の脂肪酸量が10?35%質量、 (4)炭素数20以上の脂肪酸量が30%質量以上 (5)4価以上の不飽和脂肪酸量が10%質量以上 (b)特性 (1)2価以上の不飽和脂肪酸アルキルエステル量が15質量%以下、 (2)1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が28質量%以下。 【0024】 水素化処理時には、水素化触媒を共存させることが必要である。水素化触媒としては、周期律表第8?10族貴金属から選ばれた少なくとも一種の貴金属を含有する水素化触媒を用いることが好都合である。前記貴金属としては、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)等が挙げられるが、それらに限定されない。これら貴金属を単独で用いてもよいが、複数の貴金属を用いてもよい。これら貴金属の中では、特にパラジウム(Pd)、白金(Pt)単独、あるいはそれらを共存させることが好ましい。それらのパラジウム(Pd)、白金(Pt)に、さらにロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、ルテニウム(Ru)などを共存させることも有効である。また、燃料精製用水素化触媒組成物には通常希土類元素が共存されるが、本発明では、前記希土類元素は必ずしも必要でない。 それら貴金属は、多孔性の担体に担持させることが好ましい。担体として、とくに制限されないのであり、公知の多孔性無機酸化物や結晶性アルミノシリケートゼオライト、多孔性炭素含有物などからなる担体を利用することが出来る。多孔性無機酸化物としては、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-ボリア、アルミナ-チタニア、アルミナ-リン、シリカ-チタニア、チタニア-ジルコニア、超安定化Y型ゼオライトなど、通常、軽油などの水素化処理触媒に使用される多孔性無機酸化物が使用可能である。好ましい担体としては、例えば酸点が低い担体など表面酸性が少ない担体を示すことができる。また、表面酸性が少なく、金属含浸液が内部に浸透せず、担体表面上にのみ担持される細孔構造を持つ担体などが好ましい担体として挙げられる。前記酸点の測定法としては幾つかの方法が知られているが、酸点前記酸点の測定法としては幾つかの方法が知られている。前記酸点が低い担体としては、酸点へアンモニアが吸着する際の熱量を測定することにより、酸強度分布を測定するアンモニア吸着熱法を用いて測定したときに、吸着熱が90kJ/molよりも小さい値の担体を例示することができる。具体的な担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ/アルミナ比が40以上のゼオライトなどが挙げられる。 また、該貴金属の担体への担持方法としては、通常の水素化処理触媒の製造方法が採用でき、例えば、担体に該含浸溶液を公知の含浸方法で担持する方法や担体前駆物質と該含浸溶液を混練した後、成型、乾燥、焼成する方法などが挙げられる。 前記貴金属が担持された水素化触媒では、好ましい貴金属担持量として0.1?10質量%である。また、前記貴金属がパラジウムと白金からなる場合、好ましいPd/Pt原子比は0.1/10?10/1である。 水素化触媒の使用量は水素化処理する脂肪酸アルキルエステル等の原料、水素化処理条件などにより変動するので一概に規定することが出来ないが、例えば、懸濁床で用いる場合、好ましい触媒と水素化処理する材料の質量比は10^(-4)?10^(-1)の範囲が好ましく、より好ましくは10^(-3)?3×10^(-2)である。 【0025】 上記脂肪酸アルキルエステルを水素化処理する条件は上記水素化触媒を用い、水素圧を上記低圧の範囲で行う限り特に制限されないのであり、本発明の特徴である酸化安定性に優れたバイオディーゼル燃料を製造することが出来る条件であればどのような条件であってもよい。好ましい水素化処理温度は、不飽和脂肪酸の熱重合を回避するために室温以上180℃程度以下であり、より好ましくは、40℃以上150℃以下である。好ましい水素処理時間は30分?2時間である。 【0026】 前記水素化反応は所定量の脂肪酸アルキルエステルを反応容器に仕込み、所定量の水素化触媒共存下、低圧で水素化処理する回分式低圧触媒反応器を備える水素化処理システムを利用して行うことができるが、触媒層に脂肪酸アルキルエステルと水素を連続的に供給する流通条件下、低圧で水素化処理する流通式低圧触媒反応器を備える水素化処理システムを利用して行うこともできる。後者の場合、流通式低圧触媒反応器から排出された水素ガスは水素ガス精製装置にて精製処理され、水素ガス供給装置に返送される。 なお、脂肪酸アルキルエステルは水素化処理される前に、脱水・乾燥装置にて脱水・乾燥処理されてもよい。ここで、低圧触媒反応器とは本発明が規定する低圧雰囲気で水素化処理することができる触媒反応器を意味する。 【0027】 本発明では、上記脂肪酸アルキルエステルを軽油に添加・混合し、次いでその混合物を水素化処理することも出来る。脂肪酸アルキルエステルを軽油に添加する量は特に制限されないのであり、例えば、脂肪酸アルキルエステルを軽油に50質量%程度以下添加することができるが、脂肪酸アルキルエステルを軽油に20質量%程度以下添加することが現実的である。上記脂肪酸アルキルエステルと軽油との混合物を水素化処理する条件は上記水素化処理の条件とほぼ同様である。 本発明では、上記脂肪酸アルキルエステルを水素化処理して得たバイオディーゼル燃料を、軽油に添加・混合し、燃料とすることも出来る。前記バイオディーゼル燃料を軽油に添加する量は特に制限されないのであり、例えば、脂肪酸アルキルエステルを軽油に50質量%程度以下添加することができるが、脂肪酸アルキルエステルを軽油に20質量%程度以下添加することが現実的である。 【0028】 本発明で得られるバイオディーゼル燃料は極めて酸化安定性に優れている。例えば、水素化処理した脂肪酸アルキルエステルを軽油に5%混合した混合油は、前記改正品確法で追加された酸価増加量の基準を達成している。すなわち、バイオディーゼル燃料の強制酸化処理後の酸価増加量は0.12mgKOH/g以下である。バイオディーゼル燃料の酸価はJIS K2501に準拠して測定できる。本発明のバイオディーゼル燃料は、JIS K2390、EN14214およびASTM D6751で規定されている規格を満足でき、東アジアサミット推奨規格(EEBS)および世界燃料憲章(WWFC)で規定されている規格も十分満足することができる。 本発明で得られるバイオディーゼル燃料を用いた軽油含有バイオディーゼル燃料は酸化安定性に優れているだけでなく、低温流動性の低下を抑えることが出来る。すなわち、前記軽油含有バイオディーゼル燃料は低温流動性に関する燃料規格を満たすものであり、流動点、曇り点、目詰まり点などの値も規格を満たす。例えば、JIS K2204の軽油規格中に示されている2号軽油(春?秋用)の-7.5℃以下との規定を十分満足するし、欧州連合(EU)における春?秋用の燃料、オーストラリアでの全季節における燃料、アジア、その中でも東アジアの全域、全季節における燃料としても採用可能である。また、前記記載の地域以外でも利用することができる。なお、低温流動性向上剤を燃料中に配合することによって低温特性はさらに改善されるので、前記記載された地域、またはそれら地域以外の地域での低温時でも本発明のバイオディーゼル燃料の利用が可能である。例えば、北海道極寒向けの特3号軽油(流動点<-30℃)にも対応可能である。 前記低温流動性向上剤はすでに知られており、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系の添加剤を使用することができる。低温流動性向上剤の使用量添加方法などは公知の技術を採用すればよい。 前記流動点は、試料を45℃に加熱した後、試料をかき混ぜないで規定の方法(JIS K2269)で冷却したとき、試料が流動する最低温度をいい、前記曇り点は、試料をかき混ぜないで規定の方法で冷却したとき、パラフィンワックスの析出によって試験管底部の試料がかすみ状になるか曇り始める温度をいい、前記目詰まり点は、規定の方法で試料を冷却しながら眼開き45μmの金網を通して吸引ろ過したとき、試料20mlのろ過時間が60秒を超えたときの温度又は試料が金網付きろ過器を通らなくなったときの温度をいう。 【発明の効果】 【0029】 本発明により、酸化安定性に優れたバイオディーゼル燃料を耐圧/高圧設備を要しない常圧条件下で水素化処理することにより製造することができる。本発明により、従来法である抗酸化剤を添加する方法を用いることなく、我が国のバイオディーゼル燃料混合軽油の酸化安定性に係る品質確保規制をクリアできる石油との混合基材を提供することが出来る。また、精製処理を施さない粗製脂肪酸アルキルエステル、特に各種天然抗酸化剤を含む粗製脂肪酸アルキルエステルを利用すると、40℃程度の低い温度で水素化処理することができ、しかも酸化安定性に優れたバイオディーゼル燃料が得られる。このバイオディーゼル燃料は高濃度の硫黄を含有する軽油と20質量%まで混合可能である。さらに、本発明のバイオディーゼル燃料及びバイオディーゼル燃料混合軽油は酸化安定性に優れるだけではなく、低温特性も満足し、さらにスラッジ(沈殿物)の生成抑制にも有効であり、極めて実用的な発明である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0030】 以下、本発明を実施例に基づき説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されない。 【0031】 脂肪酸アルキルエステル油として、精製パーム油のメチルエステル油、菜種油のメチルエステル油、ジャトロファ油のメチルエステル油、魚油のメチルエステル油、廃食用油のメチルエステル油を用いた。ジャトロファ油メチルエステルは、タイ国から入手したものである。その他のメチルエステル油は、国内で入手したものである。各メチルエステル油の脂肪酸組成を表1に示す。ここで示すFAMEは、脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Ester)である。cis-1価は、炭素炭素不飽和二重結合が一つでシス体を意味し、trans-1価は、炭素炭素不飽和二重結合が一つでトランス体を意味する。 【0032】 【表1】 【0033】 実施例1 (水素化処理用触媒の調製) 高シリカ/アルミナ比の超安定化Y型ゼオライト(シリカ/アルミナ比=390。吸着熱≧90kJ/molの酸点量:0mol/g)20gに、金属換算で0.24gとなるようPdテトラアンミン錯体水溶液およびPtテトラアンミン錯体水溶液(Pd/Ptモル比=4/1)にPdとPtを含浸法により担持させて触媒Aを得た。この水素化触媒を、水素化処理直前に水素気流中、300℃で3時間還元処理した。還元処理後の水素化触媒は、反応に用いるバイオディーゼル燃料に浸し、水素化反応処理実験に供した。 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒Aを1.0?1.4mm径に成型した触媒A(1)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0034】 参考例1 水素化バイオディーゼル燃料中の脂肪酸組成の測定 水素化後のバイオディーゼル燃料中に含まれる脂肪酸組成を測定した。測定には、ガスクロマトグラフ(Agilent社製、6890N型)を用いた(分析条件:検出器=FID、カラム=88%シアノプロピル)アリルポリシロキサンキャピラリーカラム(Agilent HP-88 長さ×内径×膜厚=100m×250μm×0.2μm)、昇温条件=155℃、20分→昇温2℃/分→230℃、2.5分、キャリアガス流量:2.40ml/分(定流量モード)、スプリット比:100:1)。 【0035】 実施例2 (水素化処理用触媒の調製) 高シリカ/アルミナ比の超安定化Y型ゼオライト(シリカ/アルミナ比=390)20gに、金属換算で0.24gとなるようPdテトラアンミン錯体水溶液を含浸法により担持させて触媒Bを得た。この水素化触媒を、水素化処理直前に水素気流中、300℃で3時間還元処理した。還元処理後の水素化触媒は、反応に用いるバイオディーゼル燃料に浸し、水素化反応処理実験に供した。 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒Bを1.0?1.4mm径に成型した触媒B(1)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1.5時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0036】 実施例3 (水素化処理用触媒の調製) 高シリカ/アルミナ比の超安定化Y型ゼオライト(シリカ/アルミナ比=390)20gに、金属換算で0.24gとなるようPtテトラアンミン錯体水溶液を含浸法により担持させて触媒Cを得た。この水素化触媒を、水素化処理直前に水素気流中、300℃で3時間還元処理した。還元処理後の水素化触媒は、反応に用いるバイオディーゼル燃料に浸し、水素化反応処理実験に供した。 バイオディーゼル燃料の製造 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒Cを1.0?1.4mm径に成型した触媒C(1)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で2時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0037】 実施例4 バイオディーゼル燃料の製造 (水素化処理用触媒の調製) 触媒Aをアルミナ担体と混練して水素化触媒Dを得た。この水素化触媒を、水素化処理直前に水素気流中、300℃で3時間還元処理した。還元処理後の水素化触媒は、反応に用いるバイオディーゼル燃料に浸し、水素化反応処理実験に供した。 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒Dを1.0?1.4mm径に成型した触媒D(1)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で2時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0038】 実施例5 バイオディーゼル燃料の製造 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒D(1)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.3MPa、80℃で2時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0039】 実施例6 バイオディーゼル燃料の製造 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒Dを3.2mm径に成型した触媒D(3)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で2時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0040】 実施例7 バイオディーゼル燃料の製造 (バイオディーゼル燃料の製造) 触媒Dを1.0?1.4mm径に成型した触媒D(1)2.6gをステンレス製反応管に仕込み、表1記載の廃食用油メチルエステル125gを循環式固定床流通反応装置により水素圧0.5MPa、WHSV=231h^(-1)、95℃で循環させて触媒層に流通させることにより1.5時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0041】 比較例1 (水素化処理用触媒の調製) 特許第3463089号の実施例1に準拠して、希土類元素としてYbを担持した超安定化Y型ゼオライト(Yb-超安定化Y型ゼオライト、Yb含有量;5質量%)20gに、金属換算で0.24gとなるようPdテトラアンミン錯体水溶液およびPtテトラアンミン錯体水溶液(Pd/Ptモル比=4/1)を含浸法により担持させてPd-Pt/Yb-Yゼオライト触媒をアルミナ担体と混練し、担体表面上に担持した水素化触媒aを得た。この水素化触媒を、水素化処理直前に水素気流中、300℃で3時間還元処理した。還元処理後の水素化触媒は、反応に用いるバイオディーゼル燃料に浸し、水素化反応処理実験に供した。 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒aを1.0?1.4mm径に成型した触媒a(1)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0042】 比較例2 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒aを3.2mm径に成型した触媒a(3)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0043】 比較例3 (水素化処理用触媒の調製) 低シリカ/アルミナ比の超安定化Y型ゼオライト(シリカ/アルミナ比=13。吸着熱≧90kJ/molの酸点量:0.97mol/g)にPdとPtを含浸法により担持させて触媒bを得た。当該ゼオライトは実施例1に用いたシリカ/アルミナ比の超安定化Y型ゼオライトに比べ、アンモニア吸着熱測定で測定された強酸点(吸着熱>90kJ/mol)を有する。この水素化触媒を、水素化処理直前に水素気流中、300℃で3時間還元処理した。還元処理後の水素化触媒は、反応に用いるバイオディーゼル燃料に浸し、水素化反応処理実験に供した。 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒bを1.0?1.4mm径に成型した触媒b(1)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表2に示す組成であった。 【0044】 【表2】 【0045】 実施例8 (水素化処理用触媒の調製) アルミナ担体20gに金属換算で0.1gとなるようPdテトラアンミン錯体水溶液含浸法により担持させて表面のみにパラジウムを担持させたPd/アルミナ水素化触媒Eを得た。当該アルミナ担体は、アンモニア吸着熱測定で測定された強酸点(吸着熱≧90kJ/mol)量は、高シリカ/アルミナ比のゼオライトよりさらに小さい。この水素化触媒を、水素化処理直前に水素気流中、300℃で3時間還元処理した。還元処理後の水素化触媒は、反応に用いるバイオディーゼル燃料に浸し、水素化反応処理実験に供した。 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステルを125g、触媒Eを1.0?1.4mm径に成型した触媒E(1)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表3に示す組成であった。 【0046】 比較例4 (水素化処理用触媒の調製) アルミナ担体にPd0.5wt%になるよう含浸法により担体に均一に担持させたPd/アルミナ水素化触媒dを得た。この水素化触媒を、水素化処理直前に水素気流中、300℃で3時間還元処理した。還元処理後の水素化触媒は、反応に用いるバイオディーゼル燃料に浸し、水素化反応処理実験に供した。 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の廃食用油メチルエステル(A)を125g、触媒dを1.0?1.4mm径に成型した触媒d(1)1.0gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表3に示す組成であった。 【0047】 【表3】 【0048】 実施例9 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載のジャトロファ油メチルエステルを125g、触媒E(1)4.8gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表4に示す組成であった。 【0049】 実施例10 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載のジャトロファ油メチルエステルを125g、触媒E(1)2.4gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で0.8時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表4に示す組成であった。 【0050】 実施例11 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載のジャトロファ油メチルエステルを125g、触媒E(1)1.2gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で0.8時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表4に示す組成であった。 【0051】 比較例5 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載のジャトロファ油メチルエステルを125g、触媒d(1)4.8gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表4に示す組成であった。 【0052】 【表4】 【0053】 実施例12 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の菜種油メチルエステルを150g、触媒D(1)1gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1.5時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表5に示す組成であった。 【0054】 実施例13 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の菜種油メチルエステルを150g、触媒E(1)1gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、80℃で1.5時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表5に示す組成であった。 【0055】 【表5】 【0056】 実施例14 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の精製パーム油メチルエステルを125g、触媒D(1)0.96gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、100℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表6に示す組成であった。 【0057】 実施例15 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の精製パーム油メチルエステルを125g、触媒E(1)0.96gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、100℃で1時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表6に示す組成であった。 【0058】 【表6】 【0059】 実施例16 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の魚油メチルエステルを150g、触媒D(1)4.8gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、120℃で2時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表7に示す組成であった。 【0060】 実施例17 (バイオディーゼル燃料の製造) 表1記載の魚油メチルエステルを150g、触媒E(1)4.8gをガラス製のオートクレーブに仕込み、水素圧0.5MPa、120℃で2時間水素化処理し、バイオディーゼル燃料を得た。生成油を参考例1の条件によりガスクロマトグラフで分析したところ、表7に示す組成であった。 【0061】 【表7】 【0062】 それぞれのバイオディーゼル燃料の酸化安定度を参考例2により、市販の軽油に5質量%バイオディーゼル燃料を混合した混合軽油の酸化安定度を参考例3によりそれぞれ測定した。測定結果を表7に記載した。また、低温流動性の指標として、流動点測定を参考例4により行った。測定結果を表7に記載した。表中、ランシマット法の酸化安定度の数値の単位は時間であり(以下、同様)、強制酸化試験の酸化安定度の指標である酸価増加量の数値の単位はmgKOH/gであり、流動点の単位は℃である。 【0063】 参考例2 酸化安定度の測定(ランシマット法) ランシマット(Rancimat)法は、EN14112に規定されている脂肪酸アルキルエステル100%の酸化安定性評価の試験法であり、本法により実施例1?17及び比較例1?6に示した水素化処理後の脂肪酸アルキルエステル100%から成るバイオディーゼル燃料の酸化安定性を評価した。 すなわち、試料3gを反応容器に入れ、110℃に加熱しながら、その中に清浄空気を10l/hで送り込み、揮発性分解物を水中に捕集し、捕集水の導電率が急激に変化する折曲点までの時間(誘導時間)を測定した。測定には、自動油脂安定性試験装置(メトローム社製、ランシマット743型)を用いた。 【0064】 参考例3 酸化安定度の測定(混合軽油の強制酸化による酸価増加量測定) 強制酸化による酸価増加量測定は、揮発油等の品質の確保に関する法律の改正に伴う、平成19年度経済産業省告示第81号に規定されている軽油に5質量%のバイオディーゼル燃料を混合した混合軽油の酸化安定性評価の試験法であり、本法により実施例1?17及び比較例1?6に示した水素化処理後の脂肪酸アルキルエステル5質量%バイオディーゼル燃料/軽油混合物の酸化安定性を評価した。 すなわち、試料20gを反応容器に入れ、115℃に加熱しながら、その中に純酸素を100ml/分で送り込み、16時間酸化させた時の、酸化前後の酸価を測定し、その差を算出し、酸価増加量を得た。酸価測定には、自動滴定装置(メトローム社製、タイトランド型)を用いた。 【0065】 参考例4 流動点の測定 流動点の測定は、脂肪酸アルキルエステル実施例1?17及び比較例1?6に示した水素化処理後の脂肪酸アルキルエステル100%から成るバイオディーゼル燃料及び5質量%水素化処理バイオディーゼル燃料/軽油混合物について測定した。流動点測定には、米国規格ASTM D6749に準拠した自動流動点・曇り点試験器(田中科学機器製作(株)社製、MPC-102A型)を用いた。 【0066】 【表8】 【0067】 なお、本発明を次のように記載することができる。 (I)(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸をエステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステルから得られる、清浄空気流通下、110℃で加熱した際の揮発性分解物捕集水が急激に変化する折曲点までの時間(誘導時間)が10時間以上であり、軽油に5質量%混合した混合軽油の純酸素流通下、115℃で16時間強制酸化させた後の酸化増加量が0.12mgKOH/g以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料。 (II)(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸をエステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステルを、表面酸性が少なく、金属含浸液が内部に浸透せず、担体表面上にのみ担持される細孔構造を持つ担体に周期律表第8?10族貴金属から選ばれた少なくとも一種の貴金属を担持した水素化触媒共存下の水素圧雰囲気にて水素化処理して得られ、清浄空気流通下、110℃で加熱した際の揮発性分解物捕集水が急激に変化する折曲点までの時間(誘導時間)が10時間以上であり、軽油に5質量%混合した混合軽油の純酸素流通下、115℃で16時間強制酸化させた後の酸化増加量が0.12mgKOH/g以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料。 (III)請求項1に記載の脂肪酸アルキルエステルを水素化処理してバイオディーゼル燃料の製造、又は軽油含有バイオディーゼル燃料の製造のための表面酸性が少なく、金属含浸液が内部に浸透せず、担体表面上にのみ担持される細孔構造を持つ担体に周期律表第8?10族貴金属から選ばれた少なくとも一種の貴金属を担持した水素化触媒組成物の使用。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 パラジウム(Pd)及び白金(Pt)を、シリカ/アルミナ比が40以上のゼオライトに、Pd/Pt原子比が0.1/10?10/1であって、貴金属担持量として0.1?10質量%担持させた触媒を、アルミナ担体と混錬して得ることを特徴とする、1MPa未満の水素圧雰囲気にて、(1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料製造用、又は軽油混合バイオディーゼル燃料製造用水素化触媒組成物。 【請求項2】 (1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステルを、請求項1に記載の水素化触媒共存下、1MPa未満の水素圧雰囲気にて水素化処理することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。 【請求項3】 (1)エステル交換反応処理した油脂及び/又は廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステル、及び/又は(2)脂肪酸エステル化反応処理した脂肪酸アルキルエステルを、表面のみにパラジウムを担持させたパラジウム/アルミナ水素化触媒共存下、1MPa未満の水素圧雰囲気にて水素化処理することを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。 【請求項4】 請求項2または3に記載の方法で廃食用油から調製した脂肪酸アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理による脂肪酸アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が18.4質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が9.9質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が16.8質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。 【請求項5】 請求項2または3に記載の方法でジャトロファ油アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理によるジャトロファ油アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が24.8質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が9質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が13.7質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。 【請求項6】 請求項2または3に記載の方法で、なたね油アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理によるなたね油アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が15.9質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が9.8質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が16.9質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。 【請求項7】 請求項2または3に記載の方法でパーム油アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理によるパーム油アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が53.2質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が6.8質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が4.8質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。 【請求項8】 請求項2または3に記載の方法で魚油アルキルエステルを水素化処理するバイオディーゼル燃料の製造方法であって、前記水素化処理による魚油アルキルエステルの飽和脂肪酸の量が33質量%以下であって2価以上の不飽和脂肪酸の量が16.5質量%以下であり、かつ炭素数18の1価不飽和脂肪酸アルキルエステル中のトランス脂肪酸アルキルエステル比率が27.4質量%以下であることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。 【請求項9】 請求項2?8のいずれか記載の水素化処理物を、軽油と混合することを特徴とする、軽油含有バイオディーゼル燃料の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2017-10-19 |
結審通知日 | 2017-10-23 |
審決日 | 2017-11-09 |
出願番号 | 特願2010-58335(P2010-58335) |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Y
(C10L)
P 1 41・ 854- Y (C10L) P 1 41・ 852- Y (C10L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 福山 則明、藤代 亮 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
川端 修 日比野 隆治 |
登録日 | 2015-06-12 |
登録番号 | 特許第5756972号(P5756972) |
発明の名称 | バイオディーゼル燃料の製造方法及びバイオディーゼル燃料組成物 |
代理人 | 江幡 敏夫 |
代理人 | 江幡 敏夫 |