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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H01B
審判 全部無効 2項進歩性  H01B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01B
管理番号 1335342
審判番号 無効2014-800171  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-10-23 
確定日 2017-11-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5480448号発明「鉛-テルル-リチウム-酸化物を含有する厚膜ペーストと半導体デバイスの製造においてのそれらの使用」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5480448号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯

本件特許第5480448号(請求項の数[3]、以下、「本件特許」という。)は、2011年 5月 4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年 5月 4日、2011年 2月 7日、2011年 2月22日、2011年 3月24日、米国(US))を国際出願日とする特願2013-509212号に係るものであって、その特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明について、平成26年 2月21日に特許権の設定登録がなされた。

これに対して、本件無効審判請求人 木村 智弓(以下「請求人」という。)は、平成26年10月23日付け審判請求書によって、上記請求項1?3に係る発明の特許について、本件特許無効審判〔無効2014-800171号〕を請求した。

その後の手続の経緯は、概略以下のとおりである。
平成27年 2月18日付け 審判事件答弁書(被請求人)
同年 2月18日付け 訂正請求書(被請求人)
同年 3月30日付け 審理事項通知書
同年 5月26日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 5月26日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 6月 8日付け 審理事項通知書
同年 6月 8日付け 上申書(請求人)
同年 6月22日付け 口頭審理陳述要領書2(請求人)
同年 6月22日付け 口頭審理陳述要領書2(被請求人)
同年 6月26日 第1回口頭審理
同年 7月21日付け 上申書(請求人)
同年11月18日付け 審尋(請求人に対して)
同年12月 9日付け 回答書(請求人)
同年12月 9日付け 上申書(請求人)
同年12月 9日付け 証拠説明書(請求人)
平成28年 1月 6日付け 補正許否の決定
同年 2月26日付け 審判事件答弁書2(被請求人)
同年 5月 6日付け 審決の予告
同年 6月28日付け 上申書(被請求人)
同年 6月28日付け 訂正請求書(被請求人)
同年 8月 2日付け 審判事件弁駁書(請求人)
同年11月14日付け 補正許否の決定


第2 訂正請求について
平成28年 6月28日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、上記訂正請求書によれば、特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、請求項ごとに訂正することを請求するものであって、次の事項を訂正内容としている。

なお、平成27年 2月18日付けの訂正請求書による訂正の請求は、本件訂正の請求がなされたため、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げたものとみなされる。

1. 訂正の内容
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「を含む」とあるのを、
「を含み、前記鉛-テルル-リチウム-酸化物が23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含む」に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「厚膜ペースト組成物」とあるのを、
「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物」に訂正する。


2. 訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的
訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、「
a)厚膜ペースト組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属またはその誘導体85?99.75重量%と、
b)固形分に基づいて鉛-テルル-リチウム-酸化物0.25?15重量%と、
c)有機媒体と
を含む厚膜ペースト組成物。」と記載されていたところ、訂正事項1は、この記載のうちの「鉛-テルル-リチウム-酸化物」について、「前記鉛-テルル-リチウム-酸化物が23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含む」との限定を付加するものであるし、訂正事項2は、この記載のうちの「厚膜ペースト組成物。」について、「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための」との限定を付加するものであるから、訂正事項1?2は、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
願書に添付した明細書には、「厚膜ペースト組成物」について、例えば、その【0001】に、「本発明は、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペーストを提供する。」との記載があり、また、例えば、その【0064】?【0097】には、太陽電池の前面に印刷する本発明の厚膜ペースト組成物における、鉛-テルル-リチウム-酸化物は23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含んでいたことが記載されていることからして、訂正事項1?2が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであることは明らかであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことも明らかであるから、訂正事項1?2についての訂正は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。

(4)独立特許要件
本件無効審判は、上記第1に示したとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3を対象としているので、それらの請求項のうちの請求項1についての訂正である、訂正事項1?2には、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

(5)むすび
上記(1)?(4)で検討したとおり、上記訂正請求書による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものであるので、当該訂正を認める。


第3 本件訂正後発明
上記第2のとおり本件訂正を認めるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
a)厚膜ペースト組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属またはその誘導体85?99.75重量%と、
b)固形分に基づいて鉛-テルル-リチウム-酸化物0.25?15重量%と、
c)有機媒体と
を含み、
前記鉛-テルル-リチウム-酸化物が23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含む、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物。
【請求項2】
(a)半導体基板の少なくとも1つの表面上に堆積された1つまたは複数の絶縁膜を含む前記半導体基板を提供する工程と、
(b)厚膜ペースト組成物を前記絶縁膜の少なくとも一部の上に適用して層状構造物を形成する工程であって、前記厚膜ペースト組成物が、
i)前記組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属またはその誘導体85?99.75重量%と、
ii)固形分に基づいて鉛-テルル-リチウム-酸化物0.25?15重量%と、
iii)有機媒体とを含む工程と、
(c)前記半導体基板、1つまたは複数の絶縁膜、および厚膜ペーストを焼成して前記厚膜ペーストの前記有機媒体が揮発させられ、1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触している電極を形成する工程とを含む方法。
【請求項3】
(a)半導体基板と、
(b)前記半導体基板上の1つまたは複数の絶縁層と、
(c)前記1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触し、伝導性金属と鉛-テルル-リチウム-酸化物とを含む電極と
を含む物品。」

なお、上記第2のとおり本件訂正がされたのは、本件の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明のうちの、請求項1に係る発明だけであって、請求項2?3に係る発明については本件訂正がされなかったことから、以下、請求項1に係る発明については「本件訂正発明1」といい、請求項2?3に係る発明については、それぞれ、「本件発明2」、「本件発明3」という。


第4 当事者の主張
1.請求人の主張の概要
請求人は、特許5480448号の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、平成27年 5月26日付け口頭審理陳述要領書、同年 6月 8日付け上申書、同年同月22日付け口頭審理陳述要領書2、同年同月26日の第1回口頭審理(第1回口頭審理調書)、同年 7月21日付け上申書、同年12月 9日付けの上申書(3)、同年同月同日付けの証拠説明書及び平成28年 8月 2日付け審判事件弁駁書において、甲第1?23号証を提示し、以下の無効理由を主張した。

[無効理由1]
本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件訂正発明1の特許は同法第123条第1項第2号に該当するため、無効にされるべきである(平成27年12月 9日付けの上申書第10?12頁の「III 無効審判の請求の根拠」の「第1 無効理由1」参照。)。

[無効理由2]
(1) 本件訂正発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到でき、また、甲第1号証に記載された発明と、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件訂正発明1の特許は同法第123条第1項第2号に該当するため、無効にされるべきである(平成27年12月 9日付けの上申書第10?12頁の「III 無効審判の請求の根拠」の「第2 無効理由2」の「1 訂正発明」参照。)。

(2) 本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到でき、また、甲第1号証に記載された発明と、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明2の特許は同法第123条第1項第2号に該当するため、無効にされるべきである(平成27年12月 9日付けの上申書第10?12頁の「III 無効審判の請求の根拠」の「第2 無効理由2」の「2 本件発明2」参照。)。

(3) 本件発明3は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到でき、また、甲第1号証に記載された発明と、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明3の特許は同法第123条第1項第2号に該当するため、無効にされるべきである(平成27年12月 9日付けの上申書第10?12頁の「III 無効審判の請求の根拠」の「第2 無効理由2」の「3 本件発明3」参照。)。

[無効理由3]
(1) 本件訂正発明1は、甲第2号証に記載された発明と、甲第4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到でき、また、甲第2号証に記載された発明と、甲第1号証に記載の発明と、甲第3、7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件訂正発明1の特許は同法第123条第1項第2号に該当するため、無効にされるべきである(平成27年12月 9日付けの上申書第10?12頁の「III 無効審判の請求の根拠」の「第3 無効理由3」の「1 訂正発明」参照。)。

(2) 本件発明2は、甲第2号証に記載された発明と、甲第4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到でき、また、甲第2号証に記載された発明と、甲第1号証に記載の発明と、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明2の特許は同法第123条第1項第2号に該当するため、無効にされるべきである(平成27年12月 9日付けの上申書第10?12頁の「III 無効審判の請求の根拠」の「第3 無効理由3」の「2 本件発明2」参照。)。

(3) 本件発明3は、甲第2号証に記載された発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到でき、また、甲第2号証に記載された発明と、甲第1号証に記載の発明と、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明3の特許は同法第123条第1項第2号に該当するため、無効にされるべきである(平成27年12月 9日付けの上申書第10?12頁の「III 無効審判の請求の根拠」の「第3 無効理由3」の「2 本件発明3」参照。)。

[無効理由4]
本件発明3は、甲第5号証に記載された発明と、甲第1または甲第2号証に記載された発明とから容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明3の特許は同法第123条第1項第2号に該当するため、無効にされるべきである(平成27年12月 9日付けの上申書第10?12頁の「III 無効審判の請求の根拠」の「第4 無効理由4」参照。)。

[無効理由5]
本件訂正発明1ついての特許は特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、その特許は同法第123条第1項第4号に該当するため、無効にされるべきである(平成27年12月 9日付けの上申書第10?12頁の「III 無効審判の請求の根拠」の「第5 無効理由5」及び平成28年 8月 2日付け審判事件弁駁書第2頁の「6.弁駁の内容」の「第1 はじめに」参照。)。

[証拠方法]
甲第1号証:国際公開第92/00924号
甲第2号証:特開2009-99781号公報
甲第3号証:特開平10-340621号公報
甲第4号証:特開2006-302890号公報
甲第5号証:特表2008-520094号公報
甲第6号証:特許・実用新案審査基準 第II部 第2章 新規性進歩性
甲第7号証:山根正之ら編「ガラス工学ハンドブック」初版第3刷、
2005年2月20日 株式会社朝倉書店発行、第536頁
甲第8号証:平成17年(行ケ)第10042号 特許取消決定取消請求
事件判決
甲第9号証:特開2010-184852号公報
甲第10号証:特開2010-251645号公報
甲第11号証:特開平9-92027号公報
甲第12号証:特表2008-543080号公報
甲第13号証:特開2010-283340号公報
甲第14号証:国際公開第2010/109541号
甲第15号証:国際公開第2009/097264号
甲第16号証:Mohamed M. Hilali, UNDERSTANDING AND DEVELOPMENT OF
MANUFACTURABLE SCREEN-PRINTED CONTACTS ON HIGH
SHEET-RESISTANCE EMITTERS FOR LOW-COST SILICON
SOLAR CELLS , A Thesis Presented to The Academic
Faculty , Georgia Institute of Technology ,
August 2005, p.52-53, p.59-62, p.74-79, p.129, p.183
甲第17号証:特表2011-510897号公報
甲第18号証:特願2013-509214号における平成25年12月
24日付けの拒絶理由通知書
甲第19号証:S.B.Rane et al. , Firing and processing effects on
microstructure of fritted silver thick film electrode
materials for solar cells, Materials Chemistry and
Physics, 82(2003), p.237
甲第20号証:JOHN R. LARRY et al. , Thick-Film Technology:
An Introduction to the Materials ,
IEEE TRANSACTIONS ON COMPONENTS, HYBRIDS, AND
MANUFACTURING TECHNOLOGY, VOL. CHMT-3, NO.2, JUNE
1980, p.211-212
甲第21号証:審判便覧 51-04.1 「請求理由」の要旨変更
甲第22号証:Hilali, Mohamed M., Understanding and Development of
Manufacturable Screen-Printed Contacts on High Sheet-
Resistance Emitters for Low-Cost Silicon Solar Cells
, [online], 2005-09-16, Georgia Tech Library
, [2015年6月24日 検索],インターネット
URL: https://smartech.gatech.edu/handle/1853/7284
甲第23号証:米国特許第7910393号明細書

甲第1?20号証の成立に争いはなく、また、甲第21?23号証にもそれらの成立に疑いを差し挟む余地はない。なお、甲第1?5号証は、審判請求書とともに、甲第6?19号証は、平成27年 5月26日付け口頭審理陳述要領書とともに、甲第20号証は、平成27年 6月 8日付け上申書とともに、甲第21?23号証は、平成27年 7月21日付け上申書とともに、提出された。

2.被請求人の主張の概要
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、平成27年 2月18日付け審判事件答弁書、同年 5月26日付け口頭審理陳述要領書、同年 6月22日付け口頭審理陳述要領書2、同年同月26日の第1回口頭審理(第1回口頭審理調書)、平成28年 2月26日付け審判事件答弁書2及び同年 6月28日付け上申書において、乙第1?4号証を提示し、請求人の主張する上記[無効理由1]?[無効理由5]は、いずれも理由がない、と主張した。

[証拠方法]
乙第1号証:山根正之ら編「ガラス工学ハンドブック」初版第4刷、
2007年3月30日 株式会社朝倉書店発行、
第179?180頁、第508頁
乙第2号証:新村出編「広辞苑 第二版補訂版」第5刷、昭和55年9月
20日 株式会社岩波書店発行、第1872頁
乙第3号証:特許・実用新案審査基準 第II部 第2章 新規性進歩性
乙第4号証:特許・実用新案審査基準 第IX部 審査の進め方

乙第1?4号証の成立に争いはない。なお、乙第1号証は、平成27年 2月18日付け審判事件答弁書とともに、乙第2?4号証は、平成27年 6月22日付け口頭審理陳述要領書2とともに、提出された。


第5 無効理由についての当審の判断
1.主発明が記載された甲各号証の記載事項 (当審注:「…」は記載の省略を表す。)
(1)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に特許協力条約に基づいて公開された甲第1号証(国際公開第92/00924号)
(1a)「 The present invention relates to novel glass compositions and, in particular, to novel low temperature glasses which are useful as sealing glasses or solder glasses, and in electronic paste formulations.
The term "solder glass" or "sealing glass" is a term which is used to describe glasses which form an adhesive bond between two glasses , or between a combination of glass, metal, or a ceramic material.
It is well known in the art that commercially available solder glasses capable of sealing ceramic and electrical component parts, such as television tube and semiconductor devices, are practical in the 400°to 500℃ range. These solder glasses are generally based upon the lead oxide-boron oxide binary system. The lesd oxide-boron oxide eutectic comprises 13% by weight of boron oxide and 87% by weight of lead oxide and represents the most fluid glass in that binary system. It is the starting point from which most commercial solder glasses have been derived. Whilst these glasses, with the addition of certain fillers, have been very successful, these is a need in the art for a solder glasses which will seal at temperatures below the lower limit of the range of use for the lead oxide-boron oxide based glasses.

In order for a glass to qualify as a solder glass it has to meet certain physical criteria. These criteria will depend to a great extent upon the properties of the materials which the solder glass is to unite. Thus, in general, a solder glass should possess the following characteristics:
i) a low viscosity in the melting phase;
ii) a thermal expansion which will match the thermal expansion of the workpiece;
iii) a sealing temperature which is below the lowest annealing and strain points of the materials to which it is to be sealed.
iv) good physical and chemical stability; and
v) a good adhesion to the workpiece.
Various attempts have been made in the prior art to produce solder glasses which meet the above criteria and which will seal at temperature of the order of 300°to 350℃.」(明細書第1頁第3行?第2頁第24行)
(当審訳:本発明は、新規のガラス組成物に関し、特に、シールガラスまたは半田ガラスとして有用であり、電子ペースト製剤においても有用である、新規の低温ガラスに関する。
用語「半田ガラス」または「シールガラス」は、2つのガラスの間、またはガラス、金属、またはセラミック材料の組み合わせの間の接着層を形成するガラスについて記述するために使用される用語である。
セラミックおよび電気構成部品(例えば、テレビブラウン管および半導体デバイス)をシールすることが可能な市販の半田ガラスが400?500℃の範囲内で実用であることは、当該技術分野においてよく知られている。これらの半田ガラスは、一般的に、酸化鉛-酸化ホウ素2成分系に基づいている。酸化鉛-酸化ホウ素共晶物は、13重量%の酸化ホウ素と87重量%の酸化鉛とを含み、二成分系の中で最も流動性のあるガラスである。それは、市販の半田ガラスのほとんどが導出されてきた出発点である。これらのガラスは、特定の充填剤の添加で成功を収めてきたのであるが、半田ガラス業界には、酸化鉛-酸化ホウ素をベースとしたガラスの利用範囲の下限を下回る温度で、シールを行おうとするニーズがある。

ガラスが半田ガラスと見なされるには、特定の物理的基準を満たさなければならない。これらの基準は、半田ガラスが結合させる物質の特性に多くの程度依存するであろう。したがって、一般的に、半田ガラスは、以下の特性を有すべきである。
i) 溶融相における低い粘度;
ii)熱膨張が、加工物の熱膨張と一致すること;
iii)シール温度が、シールされる物質の最も低い徐冷点と歪み点を下回ること;
iv)良好な物理的及び化学的な安定性;
v) 加工物への良好な接着性
上記の基準を満たし、かつ、300?350℃の温度でシールする半田ガラスを製造するために、種々の試みがこれまで行われてきた。)

(1b)「 We have now developed a series of solder glass compositions some of which have dilatometric softening temperatures of below 350℃, which are capable of wetting and bonding to a wide range of glasses, metals and ceramics including typical electronic substrates such as alumina, metallised alumina and silicon, and which are not derived from the lead oxide-boron oxide eutectic or the lead oxide-vanadium pentoxide eutectic mixtures.
Accordingly, the present invention provides a low melting glass composition which comprises in mol percent calculated on an oxide basis i) from 50 to 85% of TeO_(2), or an appropriate amount of a precursor for TeO_(2),
ii) from 0.1 to 30% of an oxide of silver, or an appropriate amount of a precursor therefor,
iii) from 5 to 30% of an oxide of lead and/or an oxide of zinc, or an appropriate amount of a precursor for the said oxide, and
iv) optionally from 0.1 to 44.9% of one or more oxides of Mg, Ti, Ta, Mo, B, W, Tl, V, Li, Na, K, Rb, Cs, Ca, Sr, Zr, Hf, Si, Ge, Al, Ga, In, P, Sn, Sb, Bi, La or a rare earth metal , or an appopriate amount of a precursor for one or more of the chosen oxides, provided that when V is included in the composition it is present in an amount of less than 5 mol %,
and the glass composition having a dilatometric softening temperature, Ts, typically of 380℃ or below.
The low melting glass composition of the present invention thus contain TeO_(2) as the major component in an amount of from 50-85 mol %, preferably 60 to 80 mol %, more preferably 65-75 mol %.
The low melting glass composition of the present invention may be a three oxide system, the first oxide comprising TeO_(2), with the second and third oxides comprising components (ii) and (iii) as defined above. …
The low melting glass composition may be a four or more component system, in which the additional components are as definend above for component (iv). Component(iv) is preferably an oxide of Mo, W, Mg, Tl, B or V, most preferably MoO_(3) or WO_(3).」(明細書第3頁第11行?第4頁第26行)
(当審訳:我々は、今回、一連の半田ガラス組成物であって、いくつかは、350℃未満の熱膨張計的軟化温度を有し、典型的な電子基材(例えば、アルミナ、メタライジングアルミナ及びケイ素)を含む多様なガラス、金属及びセラミックへの濡れ性及び結合性を有することが可能であり、かつ、酸化鉛-酸化ホウ素共晶混合物にも酸化鉛-五酸化バナジウム共晶混合物にも由来しない、半田ガラス組成物を開発した。
したがって、本発明は、低融点ガラス組成物を提供するものであり、当該低融点ガラス組成物は、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、
i) 50?85%のTeO_(2)、又は適正量のTeO_(2)前駆体
ii)0.1?30%の銀の酸化物、又は適正量のその前駆体
iii)5?30%の鉛の酸化物及び/又は亜鉛の酸化物、又は適正量の
前記酸化物の前駆体、及び
iv)任意に、0.1?44.9%のMg、Ti、Ta、Mo、B、W、
Tl、V、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Zr、Hf、
Si、Ge、Al、Ga、In、P、Sn、Sb、Bi、La、又は
希土類金属の1種以上の酸化物、又は適正量の当該選ばれた酸化物の
うちの1種以上の前駆体とを含み、但し、組成物にVが含まれている
場合は、5モル%未満の量で存在し、
そのガラス組成物は、典型的には、熱膨張計的軟化温度Tsが380℃以下である。
本発明の低融点ガラス組成物は、主成分として、TeO_(2)を50?85モル%、好ましくは60?80モル%、より好ましくは65?75モル%含有している。
本発明の低融点ガラス組成物は、TeO_(2)からなる第1の酸化物と、上記した(ii)成分と(iii)成分とからなる第2及び第3の酸化物とを含む、3酸化物系でもよい。…
本発明の低融点ガラス組成物は、4以上の成分系でもよく、そこでの付加成分は、上記した(iv)成分である。成分(iv)は、好ましくはMo、W、Mg、Tl、B及びVの酸化物であり、より好ましくはMoO_(3)又はWO_(3)である。)

(1c)「 The various oxides used in the preparation of the compositions of the present invention are usually in the form of fine powders. Precursors of these oxides can also be useful, providing that they decompose to form the required oxides at a temperature below the melting tenmperature of the glass.…」(明細書第5頁第12?17行)
(当審訳:本発明の組成物の調製で使用される種々の酸化物は、通常、微粉の形態である。これらの酸化物の前駆体もまた有用であり得るが、但し、それらは、ガラスの溶融温度未満で分解して必要とされる酸化物を形成する。…)

(1d)「 The low melting glass compositions of the present invention, optionally in admixture with a filler as described above , may be applied to the substrate surfaces which are to be bonded together either as a molten glass, or as a shaped preform, or the powdered glass may be admixed with an organic vehicle to form a glass paste which is used to coat the substrate. The surstrate is then heated initially to a temperature at which the organic vehicle will "burn off" and then at a temperature sufficient to melt the glass and form the seal. Generally, the composite is heated to a temperature in the range of from 300°to 450℃ to melt the glass and form the bond. The organic vehicle may be any synthetic organic solvent which preferably boils or decomposes at a temperature below the softening point of the glass composition.
In addition to their use as straightforward solder, sealing or bonding glasses, the glasses of this invention may also successfully be employed in passivating, dielectric, resistor, conducting, die attach or similar electronic paste formulations in which the glass acts wholely or in part as the adhesived bond.」(明細書第6頁第31行?第7頁第17行)
(当審訳:本発明の低融点組成物は、上記した充填剤が任意に付加されるが、溶融ガラスとして、あるいは、成形されたプリフォームとして、結合される基板表面に適用されてもよいし、あるいは、基板に塗布するために用いられる、ガラスペーストを形成する有機ビヒクルと混合された、ガラス粉末として、結合される基板表面に適用されてもよい。まず最初に、基板は有機ビヒクルが「焼失する」温度まで加熱され、次いで、ガラスが溶融されてシールが形成されるのに十分な温度に加熱される。一般的に、組成物は、ガラスを溶融して結合を形成するために、300?450℃の範囲の温度に加熱される。有機溶媒は、ガラス組成物の軟化点未満の温度で沸騰又は分解するのであれば、どのような合成有機溶媒でもよい。
半田、シール又は結合ガラスそのものとしての使用に加えて、本発明のガラスは、ガラスが接着結合の全体または一部として働く、不動態化用、誘電体用、抵抗器用、導電体用、ダイアタッチ又は同様の電子ペースト製剤に、効率的に使用される。)

(1e)「 A metal flake or powder filler, such as silver, gold, copper, aluminium or a solder alloy may be admixed with the low melting glass composition of the present invention in an amount of from 25% to 95% by weight based on the total dry weight of the composition, preferably 60 to 95% by weight based on the total dry weight of the composition. The metal-glass mixture may be formulated into a paste by admixture with an organic vehicle. The organic vehicle will generally be used in an amount such that the total solids content of the metal-filled glass paste is in the range of from 70 to 90% solids. The metal-glass mixture is particularly suitable for electronic applications, such as "thick film" conducting pastes and die attach applications in bonding semiconductor devices to a ceramic substrate, such as alimina.」(明細書第7頁第28行?第8頁第9行)
(当審訳:銀、金、銅、アルミニウム又は半田合金のような金属製のフレーク状又は粉末状の充填剤を、組成物の乾燥重量の合計に基づき、25?95重量%の量で、好ましくは60?95重量%の量で、本発明の低融点ガラス組成物に混合してもよい。金属-ガラス混合物は、有機ビヒクルと混合したペーストとしてもよい。有機ビヒクルは、一般的には、金属充填ガラスペーストの固体成分の合計が70?90%の範囲内の量となるように使用される。金属-ガラス混合物は、「厚膜」導電ペーストのような電子用途及びアルミナのようなセラミック基板と半導体装置とを結合するダイアタッチ用途に、好適である。)

(1f)「 The solder glasses and pastes of the present invention may be coated onto metal-glass or ceramic substrates at any chosen thickness but usually at thicknesses in the range of from about 0.5 to 500 micrometres. When the solder glass is used as a paste, either with or without a filler and either with or without a metal flake or powder incorporated therein, the paste will generally be applied to the substrate surface in a conventional manner, for example by brush coating, screen printing, stencilling or stamping. For die attach applications, the paste is typically syringe dispensed. The die is attached by placing it in the centre of the wet paste and setting it by the application of pressure … The structure is then heat treated to "burn off" the organic vehicle and the temperature then raised to melt the low melting glass composition.」(明細書第8頁第10?28行)
(当審訳:本発明の半田ガラス及びペーストは、金属-ガラスの又はセラミックの基板上に、通常0.5?500μmの範囲内の厚さで、被覆される。半田ガラスがペーストで使用されるときは、充填剤の有無やフレーク状又は粉状の金属の有無にかかわらず、ペーストは、一般的には、慣例的方法によって、例えば、刷毛塗り、スクリーン印刷、ステンシル技法又はスタンピングによって、基板表面に適用される。ダイアタッチ用途の際には、ペーストは、シリンジディスペンス型が一般的である。ダイは、ウエットペーストの中心に位置するように接触され、圧力をかけて設置される…その後、構造物は、有機ビヒクルが「焼失する」ように加熱処理され、その後、低融点ガラス組成物を溶融させるように温度が上げられる。)

(1g)「 Example 18
A four oxide tellirite based glass was made from the following components by fusing at a temperature of 775℃ for 10 minutes in a platinum crucible:

Mol%
TeO_(2) 74.42
PbO 4.65
Ag_(2)O 13.95
ZnO 6.98

Ts 235℃
TCE 215 x 10^(-7 ) 」(明細書第12頁第1?14行)
(当審訳: 実施例18
酸化テルルベースの4酸化物のガラスが、次の組成物を白金坩堝中で775℃の温度で10分間溶融することによって、作製された。

モル%
TeO_(2) 74.42
PbO 4.65
Ag_(2)O 13.95
ZnO 6.98

Ts 235℃
TCE 215 x 10^(-7 ))

(1h)「 Examples 1 to 8
A range of three oxide tellurite based glasses were made of the composition TeO_(2):X:Y, investigating the tellurite rich glass region. …The oxides X and Y which were incorporated into the tellurite glass systems were selected from the following:

Ag_(2)O = A ZnO = Z
PbO = P

Glasses were prepared from mixtures of two of these oxides with TeO_(2)(abbreviation T) in the following ratios:

Composition TXY1 = 85:7.5:7.5 mol%
Composition TXY2 = 80:15:5 mol%
Composition TXY3 = 80:5:15 mol%
Composition TXY4 = 70:25:5 mol%
Composition TXY5 = 70:15:15 mol%
Composition TXY6 = 70:5:25 mol%

The mixtures were all fused at a temperature of 775℃ for 10 minutes in a platinum crucible. The glasses were then poured into graphite moulds maintained at room temperature to produce small bars. The bar was then cut to fit a dilatometer and measurements made of the softening temeperature, Ts, and the coefficient of thermal expansion, TCE. In some cases, exact cutting of the glass bar to fit the dilatometer was not possible as the glass bar shattered. The fragments allowed the measurement of Ts but not the measurement of TCE. Table 1 below gives the results. …


(明細書第8頁第32行?第10頁末行)
(当審訳: 実施例1?8
TeO_(2):X:Yという組成の、酸化テルルベースの様々な3酸化物のガラスを作製し、酸化テルルリッチのガラス領域を調査した。…酸化テルルガラス系に組み込まれた酸化物XとYは、次の中から選択された。
Ag_(2)O = A ZnO = Z
PbO = P

これらの酸化物のうちの2つとTeO_(2)(略称T)との以下の比率の混合物から、ガラスを調製した。
組成物TXY1 = 85:7.5:7.5 モル%
組成物TXY2 = 80:15:5 モル%
組成物TXY3 = 80:5:15 モル%
組成物TXY4 = 70:25:5 モル%
組成物TXY5 = 70:15:15 モル%
組成物TXY6 = 70:5:25 モル%

混合物は、全て、白金坩堝中で、775℃の温度で10分間溶融された。ついで、ガラスは、小さな棒材とするために、室温に維持された黒鉛製の型中に注入された。次いで、棒材は、膨張計に合うように切断され、軟化温度Tsと熱膨張計係数TCEが測定された。場合によっては、ガラス棒は、切断の際に砕けた。破片ではTsの測定は可能であるが、TCEの測定はできない。次の表1に結果を示す。

)

(1i)「 Examples 9 to 17
An investigation into four oxide tellurite based glasses was made by adding various fourth oxides in amounts of 1,5,7.5 or 10 mol% to various of certain of the three oxide glass systems previously described. Glasses were prepared from mixtures of the four oxides by fusing at a temperature of 775℃ for 10 minutes in a platinum crucible. The abbreviations for the three oxide system were as described above, the fourth oxide addition being represented by one of the following letters indicating which oxide was added:
MoO_(3) = M
WO_(3) = W
ZnO = Z
and the number 1 or 5 etcetera indicating whether it was added in an amount of 1,5,7.5 or 10 mol%. The results are given in Table 2 below:


(明細書第11頁第1?末行)
(当審訳: 実施例9?17
酸化テルルベースの4酸化物のガラスについての調査が、前述の3酸化物ガラス系に第4の酸化物を1モル%、5モル%、7.5モル%、10モル%添加することによって行われた。ガラスは、4酸化物の混合物を白金坩堝中で、775℃の温度で10分間溶融することによって、調製された。3酸化物系の略称は上述のとおりであり、添加された第4酸化物は、その酸化物を示す次の文字のうちの1つで表される。
MoO_(3) = M
WO_(3) = W
ZnO = Z
そして、1または5などの数字は、1モル%、5モル%、7.5モル%、10モル%のうちのいずれの添加量であったを示している。結果を次の表2に示す。

)

(1j)「
1. A low melting glass composition which comprises in mol percent calculated on an oxide basis
i) from 50 to 85% of TeO_(2), or an appropriate amount of a precursor for TeO_(2),
ii) from 0.1 to 30% of an oxide of silver, or an appropriate amount of a precursor therefor,
iii) from 5 to 30% of an oxide of lead and/or an oxide of zinc, or an appropriate amount of a precursor for the said oxide, and
iv) optionally from 0.1 to 44.9% of one or more oxides of Mg, Ti, Ta, Mo, B, W, Tl, V, Li, Na, K, Rb, Cs, Ca, Sr, Zr, Hf, Si, Ge, Al, Ga, In, P, Sn, Sb, Bi, La or a rare earth metal, or an appopriate amount of a precursor for one or more of the chosen oxides, provided that when V is included in the composition it is present in an amount of less than 5 mol %,
and the glass composition having a dilatometric softening temperature, Ts, typically of 380℃ or below.

22. A metal-filled glass composition which comprises :
a) from 25 to 95% by weight of a metal flake or powder filler,
b) from 5 to 75% by weight of a low melting glass composition as claimed in any one of claims 1 to 14,
the percentages being by weight based on the total weight of the composion.

23. A metal-filled composition as claimed in claim 22 which additionally includes an organic vehicle in an amount such that the metal-filled solder glass paste so formed has a solids content in the range of from 60 to 95% solids.

25. An adhesive bond between a combination of a glass, metal or a ceramic which is formed by a low melting point glass composition as claimed in any one of claims 1 to 14.

26. A structure which includes therein at least one adhesive bond as claimed in claim 25.

28. A method of bonding two substrate surfaces which are the same or different and which are selected from glass, metal or ceramic matrials, which method comprises using as the bond forming material a low melting point glass composition as claimed in any one of claims 1 to 14.

29. A method as claimed in claim 28 wherein the glass composition is applied to the surfaces to be bonded together as a molten glass, a shaped preform or as a powdered glass in admixture with an organic vehicle.
… 」(特許請求の範囲)
(当審訳:
請求項1. 低融点ガラス組成物であって、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、
i) 50?85%のTeO_(2)、又は適正量のTeO_(2)前駆体
ii)0.1?30%の銀の酸化物、又は適正量のその前駆体
iii)5?30%の鉛の酸化物及び/又は亜鉛の酸化物、又は適正量の
前記酸化物の前駆体、及び
iv)任意に、0.1?44.9%のMg、Ti、Ta、Mo、B、W、
Tl、V、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Zr、Hf、
Si、Ge、Al、Ga、In、P、Sn、Sb、Bi、La、又は
希土類金属の1種以上の酸化物、又は適正量の当該選ばれた酸化物の
うちの1種以上の前駆体とを含み、但し、組成物にVが含まれている
場合は、5モル%未満の量で存在し、
典型的には、熱膨張計的軟化温度Tsが380℃以下である、ガラス組成物。

請求項22. 金属充填ガラス組成物であって、
a) 25?95重量%のフレーク状又は粉末状の金属充填剤
b) 5?75重量%の請求項1?14のいずれかに記載の低融点ガラス 組成物からなり、
重量%は、組成物の合計重量を基礎としている、金属充填ガラス組成物。

請求項23. 請求項22に記載の金属充填組成物であって、固形成分が60?95%の範囲内の金属充填半田ガラスペーストが形成されるような量で、有機ビヒクルを付加的に含む、金属充填組成物。

請求項25. 請求項1?14のいずれか一項に記載の低融点ガラス組成物によって形成される、ガラス、金属またはセラミックの組み合わせの間の接着層。

請求項26. 請求項25に記載の接着層の少なくとも一つを含む構造物。

請求項28. 同じか異なり、ガラス、金属又はセラミックから選択された二つの基板の表面を結合する方法であって、前記方法は、請求項1?14のいずれか一項に記載の低融点ガラス組成物を結合層形成材料として使用することを含む、方法。

請求項29. 請求項28に記載の方法であって、ガラス組成物が、溶融ガラス、成形されたプリフォーム又は有機ビヒクルと混合された粉末化されたガラスとして結合表面に適用される方法。)


(2)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第2号証(特開2009-99781号公報)
(2a)「【請求項1】
多結晶Si太陽電池用の導電性ペーストにおいて、該ペーストに含まれる低融点ガラスの組成が、質量%で
SiO_(2) 1?10、
B_(2)O_(3) 5?15、
Al_(2)O_(3) 1?15、
PbO 68?89、
CuO 0?10、
TiO_(2) 0?10
含むSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスであることを特徴とする導電性ペースト。
…」(【特許請求の範囲】)

(2b)「【技術分野】
本発明は、特に多結晶Si太陽電池に形成される受光面電極において、良好なオーミック接触が得られる導電性ペースト材料に関する。」(【0001】)

(2c)「【背景技術】
従来、多結晶Si太陽電池はp型シリコン基板の一方の面にn型シリコン基板層を設けた構造となっており、そのn型シリコン層側を受光面とし、受光面側表面に受光効率をあげるための窒化珪素膜などの反射防止膜を設け、さらにその反射防止膜側に半導体と接続した表面電極と、その裏面に裏面電極を設けることで受光により半導体のpn接合に生じた電力を取り出していた。
このとき、表面電極を形成する場合、受光効率をあげるために形成された窒化珪素膜などの反射防止膜が比較的高い電気抵抗値を持つことから、これら反射防止膜をあらかじめエッチングし、そこへ導電性ペーストなどの電極材料を印刷・焼成することで半導体と電極とを接続していた。
しかしこのようなエッチングによる方法は工程増によるコストアップなどの理由から、このようなエッチングは行わず、電極材料を直接反射防止膜上に印刷・焼成することで同時に反射防止膜を熔融・除去し電極と半導体とを接続する方法がとられるようになってきた。このとき、表面電極材料の導電性ペーストにリン等の周期表第V族に属する元素を含有したり(特許文献1参照)、Ti、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr成分を含有したり(特許文献2参照)、様々な添加剤を種々配合し高いオーミック接触を得ようとする方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭62-49676号公報
【特許文献2】特開2001-313400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように表面電極材料に種々金属を含有する添加剤を配合して焼成した場合、半導体と表面電極の間に安定したオーミック接触をえることができなかった。
そこで本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたもので、反射防止膜をファイアースルーして半導体基板と表面電極との良好なオーミック接触をえることのできる導電性ペーストを提供することにある。」(【0002】?【0006】)

(2d)「【課題を解決するための手段】
本発明は、多結晶Si太陽電池用の導電性ペーストにおいて、該ペーストに含まれる低融点ガラスの組成が、質量%で
SiO_(2) 1?10、B_(2)O_(3) 5?15、Al_(2)O_(3) 1?15、PbO 68?89、CuO 0?10、TiO_(2) 0?10含むSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスであることを特徴とする導電性ペーストである。」(【0007】)

(2e)「SiO_(2)はガラス形成成分であり、別のガラス形成成分であるB_(2)O_(3)と共存させることにより、安定したガラスを形成することができるもので、質量%で1?10%の範囲で含有させる。10%を越えると、ガラスの軟化点が上昇し、成形性、作業性が困難となる。…
B_(2)O_(3)はガラス形成成分であり、ガラス溶融を容易とし、ガラスの熱膨張係数において過度の上昇を抑え、かつ、焼付け時にガラスに適度の流動性を与え、ガラスの誘電率を低下させるものである。ガラス中に5?15%(質量%、以下においても同様である)の範囲で含有させるのが好ましい。2%未満ではガラスの流動性が不充分となり、焼結性が損なわれる。他方15%を越えるとガラスの安定性を低下させる。…
Al_(2)O_(3)はガラスを安定化させ、またその導入により半導体と表面電極とのオーミック接触を上げる効果を持つ。ガラス中に1?15%の範囲で含有させることが好ましい。1未満では上記作用を発揮しえず、15%を超えるとガラスが不安定となる。…
PbOはガラスを低融点化し、流動性を与え、反射防止膜をファイアースルーし半導体と表面電極との接触面を大きくする効果を持つ成分である。ガラス中に68?89%で含有させるのが好ましい。68%未満ではその作用を発揮し得ず、他方89%を超えると熱膨張係数が過大となる。…
CuOはその導入により半導体と表面電極とのオーミック接触を上げる効果があり、0?10%の範囲で含有させるのが好ましい。10%を超えると熔融時においてガラスが結晶化しやすくなる。…
TiO_(2)はその導入により半導体と表面電極とのオーミック接触を上げる効果があり、0?10%の範囲で含有させるのが好ましい。10%を超えると熔融時においてガラスが結晶化しやすくなる。…
この他にも、一般的な酸化物で表すRO(MgO、CaO、SrO、BaO)、R_(2)O(Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O)、In_(2)O_(3)、Bi_(2)O_(3)、SnO_(2)、TeO_(2)などを加えてもよい。 」(【0013】?【0019】)

(2f)「【実施例】

(導電性ペースト材料)
まず、ガラス粉末は、実施例に記載した所定組成となるように各種無機原料を秤量、混合して原料バッチを作製する。この原料バッチを白金ルツボに投入し、電気加熱炉内で1000?1300℃、1?2時間で加熱溶融して表1の実施例1?5、表2の比較例1?4に示す組成のガラスを得た。
【表1】

【表2】

ガラスの一部は型に流し込み、ブロック状にして熱物性(熱膨張係数、軟化点)測定用に供した。残余のガラスは急冷双ロール成形機にてフレーク状とし、粉砕装置で平均粒径1?4μm、最大粒径10μm未満の粉末状に整粒した。
次いで、αテルピネオールとブチルカルビトールアセテートからなるペーストオイルにバインダーとしてのエチルセルロースと上記ガラス粉、また導電性粉末として銀粉末を所定比で混合し、粘度、500±50ポイズ程度の導電性ペーストを調製した。
なお、軟化点は、リトルトン粘度計を用い、粘度係数η=10^(7.6) に達したときの温度とした。また、熱膨張係数は、熱膨張計を用い、5℃/分で昇温したときの30?300℃での伸び量から求めた。
次に、表面に窒化珪素層、また裏面にアルミ電極層が形成された1辺30mmの多結晶シリコンを準備し、その窒化珪素層上部に上記で作製した導電性ペーストをスクリーン印刷した。これらの試験片を、140℃のオーブンで10分間乾燥させ、次に電気炉で800℃条件下で焼成し、サンプルを得た。
このようにして得られたデバイスについて、太陽電池としての集電効率(0?1.0)を測定し、その効率が0.7以上のものを○、0.7未満のものを×とした。
(結果)
低融点ガラス組成および、各種試験結果を表に示す。
表1における実施例1?5に示すように、本発明の組成範囲内においては、軟化点が350℃?500℃であり、好適な熱膨張係数(80?110)×10^(-7)/℃を有しており、更には、集電効率が0.7以上と良好であり、多結晶Si太陽電池用の導電性ペーストとして好適である。
他方、本発明の組成範囲を外れる表2における比較例1?4は、良好な集電特性が得られない、または熔融時に結晶化するなど、多結晶Si太陽電池用の導電性ペーストとしては適用し得ない。」(【0021】?【0032】)


(3)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第5号証(特表2008-520094号公報)
(3a)「 混合物から製造される太陽電池コンタクトであって、該混合物が、
a.固体部分、及び
b.有機部分を含み、
c.該固体部分が、
i.約85?約99重量%の銀成分、及び
ii.約1?約15重量%のガラス成分を含み、
iii.該ガラス成分が
a.約15?約75mol%のPbO、
b.約5?50mol%のSiO_(2)を含み、
c.B_(2)O_(3)を含まない
ことを特徴とする太陽電池コンタクト。 」(【請求項1】)

(3b)「【技術分野】
本発明は、ペースト組成物、及び太陽電池のコンタクトの製造方法、並びに光二次電池の製造に用いられる他の関連成分に関連する。」(【0001】)

(3c)「【背景技術】
太陽電池は、通常、太陽光を有用な電気エネルギーに変換するシリコン(Si)のような半導体によって製造される。太陽電池は、一般的に、Siの薄ウェハーから作られ、このウェハーは好適なリン源からリン(P)をP型Siウェハーへと拡散することにより形成されるPN接合を要する。シリコンウェハーの太陽光が入射する側は、入射する太陽光の反射損失を防ぐため、通常反射防止膜(ARC)で覆われており、これによって太陽電池の効率が高められる。前面コンタクト(front-contact)として知られる二次元の電極グリッドパターンはN型シリコンへの連絡を形成し、もう一方の側(裏面コンタクト;back-contact)は、アルミニウム(Al)コーティングによってP型シリコンへと連絡する。これらのコンタクトは、PN接合部から外部へと出力するための電気的な出力路である。」(【0002】)

(3d)「 本発明は、前面コンタクト(front-contact)のペースト原料に用いるためのガラス組成物を提供するものであって、これらは高性能(効率(η)及び曲線因子(FF)によって計測される)の太陽電池を得るための低い直列抵抗(Rs)及び高い並列抵抗(Rsh)を備えている。本発明には、概略、固体部分と有機部分の混合物成分から製造される太陽電池コンタクトが含まれる。…
本発明の組成物及び方法は、前面コンタクト成分間(典型的にはAgとSiである)において、ガラス媒体を通じて最適な相互作用、結合、及び接触の形成を促進することによって、従来技術の欠点を克服するものである。ガラス及び銀を含有する導電性のペーストは、シリコン基板上に印刷された後に焼成され、ガラスが熔融し、金属が焼結する。焼成後、Ag/Siの導電性単独系統が形成され、バルクペーストとシリコンウェハーの間に導電性のブリッジを作る。有鉛ガラスは、比較的低温での優れたフロー特性により、低い温度での焼成を可能にする。」(【0003】?【0004】)

(3e)「ペーストのプリント及び焼成。前記ペースト組成物は、太陽電池コンタクトあるいは他の太陽電池部品の製造工程で用いられる。本発明の太陽電池コンタクトの製造方法においては、(1)銀含有ペーストをシリコン基板に塗布し、(2)ペーストを乾燥させ、(3)ペーストを焼成して金属を焼結させ、シリコンへのコンタクトを形成する工程が含まれる。ペーストのプリントパターンは、炉設定温度約650?950℃、又はウェハー温度約550?850℃といった好適な温度で焼成される。好適には、炉設定温度は、約750-930℃で、ペーストは空気中で焼成される。焼成中、反射防止SiN_(X)層がガラスによって酸化、腐食され、Si基板との反応によってAg/Si単独系統が形成し、これがシリコンに対してエピタキシャルに結合していると考えられる。焼成条件は、シリコンウェハー上のシリコン/ペースト界面において、Ag/Si単独系統の十分な密度を生成するために選択され、これが低い抵抗性、高い変換効率、高い曲線因子を有する前面コンタクト及び太陽電池の生産につながる。
標準的なARCは、Si_(3)N_(4)のような、総称してSiN_(X)と呼ばれる窒化ケイ素のようなシリコン化合物から作られる。この層は絶縁体として働き、接触抵抗を増加させる傾向にある。したがって、ガラス成分によるこのARC層の腐食は、前面コンタクトの形成に必要な工程である。…」(【0027】?【0028】)

(3f)「【実施例1】
実施例:12.5cm×12.5cm、厚さ250-300μmの多結晶シリコンウェハーを窒化ケイ素反射防止膜によって被覆した。これらのウェハーのシート抵抗は約1Ω-cmであった。
市販の裏面用アルミニウムペースト(Ferro CN53-038)及び裏面銀ペースト(Ferro CN33-451)を裏面コンタクトのために用いた。前面コンタクトパターンは、280メッシュスクリーンを使用し、フィンガーラインのオープニング100μm、ライン間のスペース約2.8mmでプリントした。実施例のペーストに用いられたガラス組成物は、周知のガラス製造技術によって調製した。ガラス組成物を表4に、このガラス組成物の特性を表5に、ペースト組成物を表6に示す。前面コンタクトをプリントした後、サンプルを約100?約150℃で約3?約15分間乾燥した。プリントしたウェハーは、3ゾーン赤外線(IR)ベルト炉を使用し、約3m(120”)/minのベルト速度で、3つのゾーンの設定温度がそれぞれ780℃、810℃、930℃の条件で、共焼成した。ゾーンは、それぞれ7”、16”、7”であった。ほとんどのサンプルの焼成後のフィンガー幅は、約120?約170μmで、焼成後の厚さは、約10?15μmであった。
太陽電池の電気的性能は、Oriel Instrument Co.社(コネチカット州ストラトフォード)のModel 91193-1000を用いて、ASTM G-173-03に準じ、AM 1.5の太陽光条件で測定した。電気的試験の結果を表7に示す。
【表4】

ガラス組成物A?Eの特性は、つづく表5に説明する。Tgは、ガラス転移温度を表す。TCEは、25?300℃の範囲での熱膨張係数である。
【表5】

表6のペースト剤は、Ferro Corporation(オハイオ州クリーブランド)より市販されている有機ビヒクルV131及びV132を使用して製造された。表6中の量は、すべて固体部分及び有機部分を含むペーストの重量パーセントである。
【表6】

表6の前面コンタクトペーストは、本発明に開示された焼成プロフィールに従って焼成した。得られた太陽電池の電気的特性を表7に説明する。
【表7】

Iscとは、出力電圧0で測定された短絡電流を意味し、Vocとは、出力電流0で測定された開回路電圧を意味する。R_(S)及びR_(sh)は前記定義の通りである。」(【0033】?【0042】)

(3g)「ガラス組成物からの銀の溶解及び沈殿の反応速度は、アルカリ金属酸化物の存在によって大きく変化する。この点から、本発明の組成物は、さらに、例えば、Na_(2)O、K_(2)O及びLi_(2)O及びそれらの組み合わせのようなアルカリ金属酸化物を含んでいてもよい。特に、本発明の一実施例のガラス成分は、約0.1?約15mol%のNa_(2)O+K_(2)O+Li_(2)O、もしくはさらに好適には、約0.1?約5mol%のこれらのアルカリ金属酸化物を含んでいてもよい。」(【0022】)

(3h)「前面コンタクトペースト又はインク中のガラスは、効率的な前面コンタクト銀-シリコン界面を形成するために、多くの主要な役割を果たす。前面コンタクトペーストガラスは、焼成を通じて下部のSiとのコンタクトを形成するため、一般に窒化ケイ素(SiN_(X))又は二酸化チタン(TiO_(2))から作られる反射防止膜を腐食させる。ガラスはまた、Siとの自己-制御相互作用(Siの一部を酸化してSiO_(2)としてガラス中へ溶解させる)にも関与する。SiO_(2)が局所的に集まることでガラスの粘性が増加し、この増加によりSiがSiO_(2)としてさらに溶解することが一時的に制限されるため、ガラスとSiとの自己制御相互作用が生じてもPN接合は保たれる。ガラスはまた、ガラスに溶解しているAg金属を溶解し、Agイオンをシリコン界面へ移動させ、有益なAg/Si単独系統を界面で形成するために、ガラスからAgを沈殿させる。最終的に、ガラスは、バルク銀の抵抗を減少させるための銀ペーストの緻密性を高める働きをし、シリコンウェハーと焼成(銀)ペースト間の結合(密着)を高める。」(【0023】)


2.周知技術が記載された甲各号証の記載事項 (当審注:「…」は記載の省略を表す。)
(1)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第3号証(特開平10-340621号公報)
(1ア)「【発明の実施の形態】この発明に用いられる導電性粉末としては、従来の導体ペーストに用いられている銀粉末を主成分とし、必要に応じてパラジウムおよび/または白金の微粉末を加えたものが好適に用いられる。ガラスとしては、この発明による組成のガラスをボールミルで微粉砕したものを用いることができ、導電性粉末100重量部に対して5ないし20重量部配合することが必要である。5重量部未満の配合量では、基板との密着が十分とならず、20重量部を越えるとメッキ性が悪くなるからである。ガラス成分の組成範囲をこの発明の様に限定した理由は次の通りである。PbOは、50重量%未満では融点が高くなってしまうのでこの発明の主旨である低軟化点化に反し、60重量%を越えると耐メッキ薬品性が低下する。SiO_(2)は、ガラスのネットワークフォーマとして機能するが、25重量%未満では耐メッキ薬品性が低下し、35重量%を越えて配合すると融点が上昇してしまう。ZrO_(2)及びTiO_(2)は、耐メッキ液特性を向上させる働きがあり、3重量%未満ではこの効果が出にくく、8重量%を越えると融点が上がってしまう。最後にLi_(2)O、Na_(2)O、K_(2)Oであるが、これらの成分はガラスの融点を低下させる効果をもたらすもので、合計6重量%未満ではその効果が乏しくなり、逆に9重量%を越えると融点が下がり過ぎたり耐薬品性・耐水性が低下してしまう。この発明に使用される有機ビヒクルとしては、エチルセルロース樹脂をターピネオールやブチルカルビトールアセテート等の有機溶剤に溶解したものが好適である。」(【0005】)

(1イ)「(A)銀、パラジウム、白金の内少なくとも一つの成分からなる導電性粉末100重量部、及び(B)無機結合材としてPbO:50?60重量%、SiO_(2):25?35重量%、ZrO_(2)、TiO_(2)の合計3?8重量%、及びLi_(2)O、Na_(2)O、K_(2)Oの合計6?9重量%からなるガラス5?20重量部とを(C)有機ビヒクル中に分散させてなる導体ペースト。」(【請求項1】)

(1ウ)「【産業上の利用分野】この発明は、抵抗器の電極形成に使用される導体ペーストに関するものである。特に、チップ抵抗器の端子電極形成に用いるに好適な導体ペーストに関するものである。」(【0001】)

(1エ)「【従来の技術】代表的なチップ抵抗器の製造工程は次の様である。先ず、アルミナセラミック等の絶縁基板上に導体ペーストを塗布乾燥後850℃で焼成して一次電極を形成する。次に、同様にして抵抗体を形成した後、一次保護コートをかけてからトリミングして抵抗値調整を行う。更に、二次保護コートを形成、基板を分割後、端面に導体ペーストをディップまたは印刷によって塗布してから600℃で焼成して端子電極を形成し、最後にメッキを行って完成する。この様な工程に使用される電極形成用導体ペーストとしては、導電成分としての銀、銀パラジウム、銀白金のいずれかを主成分とし、無機結合材としてのガラス及び金属酸化物粉末と共に有機ビヒクル中に分散させたものが一般に用いられている。この内、端子電極形成用導体ペーストについては、電極膜を絶縁基板に固着させ且つメッキ工程で薬剤に浸食されない様にするため、600℃以上の温度で焼成することが要求されていた。
【発明が解決しようとする課題】所が、上記の工程では抵抗体形成後のトリミングによって抵抗値調整をしても、端子電極形成の際に600℃以上の温度で再焼成される為、抵抗値が変動してしまい、極端な場合、規格を外れてしまうことがあった。そこでこの発明は、上記の問題点を解決し、端子電極形成に用いた場合に、抵抗値変動を最小に抑える事が可能な導体ペーストを提供することを目的とする。」(【0002】?【0003】)

(1オ)「【実施例】エチルセルロース樹脂をターピネオールに溶解した有機ビヒクル中に、表1のガラスフリットaと、微細な銀粉末及びパラジウム粉末または白金粉末を、表2に示す比率で混合し、三本ロールを用いて混練分散して導体ペーストを作成した。
【表1】

【表2】

こうして作製した導体ペーストを、1インチ角サイズの96%アルミナ基板にスクリーン印刷し、120℃で10分間乾燥後540℃、560℃、600℃の温度で焼成して5mm角と2mm角の2種類の導体パターンを形成した試料を作製して評価を行った。メッキ性については、代用特性として半田ぬれ性で評価した。試料をロジンフラックス中に浸漬してから、220℃で溶融した2Ag/62Sn/36Pb組成の半田に5秒間浸漬し冷却後、5mm角パターンについて半田濡れ面積を測定した。この際、濡れ面積98%以上を良、90?97%を可、89%以下を不可と判定した。続いて、耐酸性を調べるため、別の2mm角パターンの試料を10%に希釈した塩酸に所定時間浸漬後、水洗して乾燥後し、ロジンフラックスに浸漬し220℃の上記組成の半田に5秒間浸漬して予備半田とし、冷却後直径0.6mmの半田メッキ軟導線を半田付けした後、ピールテストにより密着強度を測定した。又、塩酸に浸漬しない試料についても、密着強度を測定した。これらの評価結果を表3にまとめた。表2及び3より、この発明によれば、600℃焼成では勿論のこと、560℃に焼成温度を下げた場合でも、メッキ性、耐酸性の特性に優れている事がわかる。
【表3】

【比較例】比較例として、ガラスの配合量を過剰にしたもの及び過小にしたものについて調べるため、表2の後半の配合比で作成した導体ペーストを用い、実施例と同様にして試料作成と評価を行った。この結果を同じく表3の後半にまとめた。
【発明の効果】以上の通りこの発明の導体ペーストによれば、ガラスの組成及び配合量を適切に選んだことにより、チップ抵抗器の端子電極形成に用いた場合、従来より40℃程度低い温度での焼成が可能となり、予め抵抗値調整した抵抗体の抵抗値ドリフトが小さく抑えられると共に、優れた半田特性及びメッキ性を備えた導電膜を得る事ができる。…」(【0007】?【0013】)


(2)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開2006-302890号公報)
(2ア)「【請求項1】
a)導電性銀粉末と、
b)粒径が7ナノメートルから100ナノメートル未満の範囲内にあるZn含有添加剤と、
c)軟化点が300から600℃の範囲内にあるガラスフリットとが、
d)有機媒体中に分散されている
ことを特徴とする厚膜導電性組成物。

【請求項4】
前記ガラスフリット組成物は、全ガラスフリット組成物に対して、SiO_(2)を21?29重量パーセント、Al_(2)O_(3)を0.1?8重量パーセント、PbOを50?62重量パーセント、B_(2)O_(3)を7?10重量パーセント、ZnOを0?4重量パーセント、Li_(2)Oを0?0.1重量パーセント、およびTiO_(2)を2?7重量パーセント含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
…」(【特許請求の範囲】)

(2イ)「【技術分野】
本発明は、主に、シリコン半導体デバイスを対象とする。詳細には、本発明は、太陽電池デバイスの正面に使用される導電性銀ペーストを対象とする。」(【0001】)

(2ウ)「【背景技術】
本発明は、広範な半導体デバイスに適用することができるが、光ダイオードおよび太陽電池などの受光素子に、特に有効である。本発明の背景を、従来技術の特定の例としての太陽電池に関して、以下に述べる。
p-型ベースを有する従来の太陽電池構造は、典型的な場合には電池の正面または太陽側にある負電極と、裏面にある正電極とを有する。半導体本体のpn接合に向かう適切な波長の放射線は、この本体内に正孔-電子対を発生させる外部エネルギーの供給源として働くことが、周知である。p-n接合に存在する電位差のため、正孔と電子とはこの接合部を反対方向に横断し、それによって、電力を外部回路に送出することが可能な電流の流れを引き起こす。ほとんどの太陽電池は、メタライズされているシリコンウェーハ、すなわち導電性である金属接点が設けられているシリコンウェーハの形をとる。
現在、地球上で使用されているほとんどの発電太陽電池は、シリコン太陽電池である。大量生産でのプロセスの流れは、一般に、単純化を最大限に実現すること、および製造コストを最小限に抑えることを目標としている。特に電極は、スクリーン印刷などの方法を使用して金属ペーストを形成することにより、作製される。この製造方法の例を、図1に関連して以下に述べる。図1は、p-型シリコン基板10を示す。
図1(b)では、逆の導電型であるn型拡散層20が、リン(P)などの熱拡散によって形成されている。オキシ塩化リン(POCl_(3))が、リン拡散源として一般に使用される。任意の特定の変更がない場合、拡散層20は、シリコン基板10の全面に形成される。この拡散層は、1平方当たりのオーム数(オーム/□)が数十オーム程度の面積抵抗率と、約0.3から0.5μmの厚さとを有する。
この拡散層の一面をレジストなどで保護した後、図1(c)に示すように、拡散層20が一方の主要面にのみ残るよう、エッチングによってほとんどの面から除去する。次いで有機溶媒などを使用して、レジストを除去する。
次に窒化シリコン膜30を、熱化学気相成長法(CVD)などのプロセスにより図1(d)に示される手法で、約700から900Åの厚さになるまで反射防止コーティングとしてn-型拡散層20上に形成する。
図1(e)に示すように、窒化シリコン膜30上に正面電極用の銀ペースト500をスクリーン印刷し、次いで乾燥させる。…
…さらに、正面電極を形成する銀ペースト500は、焼成により焼結し、窒化シリコン膜30内に浸透させ、それによって、n-型層20に電気的に接触可能になる。このタイプのプロセスを、一般に「ファイアスルー」と呼ぶ。このファイアスルー状態は、図1(f)の層501で明らかにされている。
Shuichi他による文献(例えば、特許文献1参照。)は、半導体基板の一方の主要面に、他方の導電型を示す領域を形成し、かつ半導体基板のこの主要面上に反射防止コーティングを形成することによって得られる太陽電池について、教示している。得られる太陽電池は、反射防止コーティング上に被覆され、かつ焼成された、電極材料を有する。電極材料には、例えば鉛、ホウ素、およびケイ素が含まれ、さらに、約300から600℃の軟化点を有するガラスフリット中に、チタン、ビスマス、コバルト、亜鉛、ジルコニウム、鉄、およびクロムからの1種または複数の粉末を含有する。これらの粉末は、0.1から5μmの平均粒径を有する。Shuichi他は、平均粒径が0.1μm未満である粉末は電極内での分散性に乏しく、その電極は、不十分な接着強度(引張り強さ)を示すことになると教示している。
【特許文献1】日本国特許出願公開第2001-313400号明細書」(【0002】?【0012】)

(2エ)「…電極を、図1(e)および(f)に示されるものと同様のステップによって形成する。すなわち図1(e)に示すように、…正面電極を形成する銀ペーストを、基板10の裏面の場合と同じ方法で窒化シリコン膜30上にスクリーン印刷し、その後、乾燥および焼成を、典型的な場合には700から975℃の温度範囲でかつ数分から10分を超える時間にわたり、酸素と窒素との混合ガス流を流通させながら、赤外炉内で実施する。
図1(f)に示すように、焼成中、裏面では、…裏面電極を形成する。
正面では、本発明の正面電極銀ペースト500が、銀、Zn含有添加剤、ガラスフリット、有機媒体、および任意選択の金属酸化物からなり、n-型層20との電気接触が実現されるよう焼成する間、窒化シリコン膜30と反応しかつ窒化シリコン膜30に浸透することが可能である(ファイアスルー)。このファイアスルー状態、すなわち正面電極銀ペーストが融解し、窒化シリコン膜30に浸透する程度は、窒化シリコン膜30の品質および厚さ、正面電極銀ペーストの組成、および焼成条件に依存する。太陽電池の変換効率および耐湿信頼性は、明らかに、このファイアスルー状態にかなり依存する。」(【0046】?【0048】)

(2オ)「
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】


上記(2ウ)?(2エ)を踏まえると、【図1A】?【図1F】からは、p-型シリコン基板10の正面にn-型拡散層20と窒化シリコン膜30とを形成した後、その窒化シリコン膜30上に銀ペースト500をスクリーン印刷し、乾燥し、焼成すると、当該銀ペースト500が、上記窒化シリコン膜30と反応しかつ上記窒化シリコン膜30内に浸透して、n-型拡散層20と電気的に接触するようになるとの、太陽電池デバイス製作の一連のプロセスが見て取れる。


(3)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第7号証(山根正之ら編「ガラス工学ハンドブック」初版第3刷、2005年2月20日 株式会社朝倉書店発行、第536頁)
「9.2.3 新光学ガラス
a. 低融点ガラス
近年光学ガラスの製造は精密に形状や表面を加工した型によりプレスし直接レンズを製造するモールドプレスが行われている.この方法によればプレスする型を非球面に加工すれば近似する形状を有するレンズが容易に作成できるため,従来研削によってしかつくることができなかった非球面レンズを大量に製造することが可能になっている.…
このようにモールドプレスの利点は明らかであるが,この方式ではモールド型の寿命がレンズの生産性に直接関与することから,できる限り低温でプレスすることが望まれる.このために光学的特性を維持しつつ軟化温度を低下させたガラスが開発されている.
アルカリ金属酸化物,とくにLi_(2)O,2価成分ではPbO,ZnOがガラスの軟化温度を低下させることが知られている.…」


(4)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第11号証(特開平9-92027号公報)
(4ア)「【従来の技術】従来より、蛍光表示管は、自己発光型ディスプレイとして広く用いられている。
図1は、蛍光表示管の構成を示す部分断面図である。この蛍光表示管1は、絶縁性基板として表面を洗浄化したガラス基板3上に、スクリーン印刷法により所定のパターンを有する導体配線層5、5aを形成し、さらに、この導体配線層5、5aが形成されたガラス基板3上に、スクリーン印刷法により誘電体ガラスを主成分とした絶縁体層7が形成されている。なお、絶縁体層7は、鉄、クロム、マンガン、コバルト等の酸化物からなる複合酸化物を含有しているため、黒色を呈している。
また、この絶縁体層7の所定位置には導体配線層5、5aと電気的接続をとるスルーホール7aが形成されている。そして、この絶縁体層7の表面には、スルーホール7aを通して導体配線層5に導通接続させる所定パターンの陽極導体層9がスクリーン印刷法で塗布、乾燥させて形成されている。
さらに、この陽極導体層9上には蛍光体層11がスクリーン印刷法や電着法により塗布、乾燥させて形成している。
次に、ガラス基板3上に形成されたこれらの陽極導体層9および蛍光体層11の積層体を空気中で450℃?580℃の温度で同時に加熱焼成を行い、陽極導体層9および蛍光体層11内の有機ビヒクルのバインダーを完全に除去させるとともに焼結させることによって、陽極導体層9および蛍光体層11からなる陽極13が形成され、パターン表示部15が構成される。」(【0002】?【0006】)

(4イ)「【図1】


上記(4ア)を踏まえると、【図1】からは、絶縁基板としてのガラス基板3上に形成された所定のパターンを有する導体配線層5、5aと、陽極導体層9および蛍光体層11からなる陽極13との導通接続は、黒色を呈している絶縁体層7の所定位置に形成されているスルーホール7aを通して行われているという、蛍光表示管1の構成が見て取れる。


(5)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第12号証(特表2008-543080号公報)
(5ア)「【請求項1】
混合物から作成されるコンタクトを含む太陽電池であって、焼成の前に、該混合物が、
a.固体部分と、
b.有機部分と、を含み、
c.該固体部分が、
i.導電性金属成分約85?約99重量%と、
ii.ガラス成分約1?約15重量%と、を含み、該ガラス成分が鉛を含まないことを特徴とする太陽電池
【請求項2】
請求項1の太陽電池コンタクトにおいて、該コンタクトが前面コンタクトであり、該金属成分が銀を含み、該ガラス成分が、Bi_(2)O_(3)約5?約85モル%と、SiO_(2)約1?約70モル%とを含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。

【請求項11】
請求項2の太陽電池コンタクトにおいて、該固体部分が、Bi_(2)O_(3),Sb_(2)O_(3),In_(2)O_(3),Ga_(2)O_(3),SnO,ZnO,SiO_(2),ZrO_(2),Al_(2)O_(3),B_(2)O_(3),V_(2)O_(5),Ta_(2)O_(5),12Bi_(2)O_(3)・SiO_(2),2Bi_(2)O_(3)・SiO_(2),3Bi_(2)O_(3)・5SiO_(2),Bi_(2)O_(3)・4SiO_(2),6Bi_(2)O_(3)・SiO_(2),Bi_(2)O_(3)・SiO_(2),2Bi_(2)O_(3)・3SiO_(2),Bi_(2)O_(3)・2TiO_(2),2Bi_(2)O_(3)・3TiO_(2),2Bi_(2)O_(3)・4TiO_(2),6Bi_(2)O_(3)・TiO_(2),6Bi_(2)O_(3)・V_(2)O_(5),BiVO_(4),2Bi_(2)O_(3)・3V_(2)O_(5),BiV_(3)O_(9),6.5Bi_(2)O_(3)・2.5V_(2)O_(5)・TiO_(2),2ZnO・3TiO_(2),ZnO・SiO_(2),ZrO_(2)・SiO_(2),MgO・V_(2)O_(5),SrO・V_(2)O_(5),CaO・V_(2)O_(5),BaO・V_(2)O_(5),ZnO・V_(2)O_(5),Na_(2)O・17V_(2)O_(5),K_(2)O・4V_(2)O_(5),2Li_(2)O・5V_(2)O_(5),これらの反応物及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる結晶性添加物をさらに含むことを特徴とする太陽電池コンタクト。
…」(【特許請求の範囲】)

(5イ)「【背景技術】
太陽電池は、通常、太陽光を有用な電気エネルギーに変換するシリコン(Si)のような半導体によって製造される。太陽電池は、一般的に、Siの薄ウェハーから作られ、このウェハーは好適なリン源からリン(P)をP型Siウェハーへと拡散することにより形成されるPN接合を要する。シリコンウェハーの太陽光が入射する側は、入射する太陽光の反射損失を防ぐため、通常反射防止膜(ARC)で覆われており、これによって太陽電池の効率が高められる。前面コンタクト(front-contact)として知られる二次元の電極グリッドパターンはN型シリコンへの連絡を形成し、もう一方の側(裏面コンタクト;back-contact)は、アルミニウム(Al)コーティングによってP型シリコンへと連絡する。また、銀リアコンタクト(silver-rear contact)として知られるコンタクトは、銀、又は銀-アルミニウムペーストにより作成され、シリコンのN側に印刷、焼成することで、タブを固くつなぎ、太陽電池モジュールにおいて一つのセルを次のセルへと電気的に連絡することを可能としている。これらのコンタクトは、PN接合部から外部へと出力するための電気的な出力路である。
太陽電池コンタクトに用いられる従来のペーストは、鉛フリットを含んでいる。太陽電池ペーストのガラス成分中にPbOを含有することによって、(a)ペースト組成物の焼結温度を低く抑える、(b)シリコン基盤との促進作用、焼結の際にシリコンとの低い接触抵抗の形成を促進する、といった所望の効果が得られる。…しかしながら、環境問題への懸念から、ペースト組成物におけるPbO(同様にCdO)の使用は、現在、可能な限り強く忌避されている。このため、光電池産業においては、鉛フリー及びカドミウムフリーのペースト組成物、鉛フリー及びカドミウムフリーのガラスを用いた太陽電池コンタクトペーストとして好適な特性を与えることのできる組成物の必要性が存在する」(【0002】?【0003】)

(5ウ)「【発明の開示】
本発明は、太陽電池コンタクトのペースト原料に用いるための鉛フリー及びカドミウムフリーのガラス組成物を提供するものであって、これらは高性能(効率(η)及び曲線因子(FF)によって計測される)の太陽電池を得るための低い直列抵抗(R_(s))及び高い並列抵抗(R_(sh))を備えている。本発明には、概略、焼成前に、固体部分と有機部分とを含む混合物から作成される太陽電池コンタクトが含まれる。固体部分は、約85?約99重量%の導電性金属成分、及び約1?約15重量%の鉛フリーのガラス成分を含む。」(【0004】)

(5エ)「銀-及びガラス-含有の厚膜フィルムペーストは、光照射によって発生する電流を集電するため、シリコンベース太陽電池の前面コンタクトの形成に使用される。ペーストは一般的にスクリーン印刷で塗布されるものの、噴出、パッド印刷、及びホットメルト印刷のような方法も使用される。スクリーン印刷された前面コンタクトを有する太陽電池は、比較的低温(ウェハー温度550℃?850℃、焼成炉の設定温度650℃?1000℃)で焼成され、リンをドープしたシリコンウェハーのN側と銀ベースのペーストとの間に低い抵抗のコンタクトを形成する。また、ここでは太陽電池の製造方法も想定される。」(【0008】)

(5オ)「ペーストのプリント及び焼成。以上のペースト組成物は、太陽電池コンタクトあるいは他の太陽電池部品の製造工程で用いられる。本発明の太陽電池コンタクトの形成方法においては、(1)シリコン基板に銀含有ペーストを塗布し、(2)ペーストを乾燥し、(3)ペーストを焼成して金属を焼結し、シリコンへのコンタクトを形成する工程、が含まれる。ペーストのプリントパターンは、炉設定温度約650?950℃、又はウェハー温度約550?850℃といった好適な温度で焼成される。好ましくは、炉設定温度は、約750?930℃であり、ペーストは空気中で焼成される。焼成中、反射防止SiN_(x)層がガラスによって酸化、腐食され、Si基板との反応によってAg/Si単独系統が形成し、これがシリコンに対してエピタキシャルに結合していると考えられる。焼成条件は、シリコンウェハー上のシリコン/ペースト界面において、十分な密度のAg/Si単独系統を生成するために選択され、これが低い抵抗性、高い変換効率、高い曲線因子を有する前面コンタクト及び太陽電池の生産につながる。」(【0023】)


(6)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に特許協力条約に基づいて公開された国際出願である甲第15号証(国際公開第2009/097264号)
なお、当審訳にあたっては、甲第15号証に対応する公表公報として提出されている甲第17号証(特表2011-510897号公報)の対応箇所を参考にした。
(6ア)「…Crystalline silicon PV cells in today's industry are typically coated with an anti-reflective coating to promote light adsorption, which increases PV cells efficiency. However, the anti-reflective coating imposes high electrocal resistance to the charge carrier flowing from the semiconductor to the metal contact. Such anti-reflective coating often comprise silicon nitride, titanium oxide or silicon oxide.
Conductive inks are used to form these conductive grids or metal contacts. Conductive inks typically include a glass frit, a conductive species, such as silver particles, and an organic medium. To form the metal contacts, conductive inks are printed onto the substrate in a pattern of grid lines or other pattern by screen printing or other process. The substrate is then fired, during which electrical contact is made between the grid lines and the substrate. This contact is enhanced by the formation of individual silver crystallites at the glass-substrate interface.…
As otherwise mentioned herein, the anti-reflective coating enhances light absorption but also acts as an insulator which impairs the excited electrons from flowing from the substrate to the metal contacts. Accordingly, the conductive ink should penetrate the anti-reflective coating to form metal contacts having ohmic contact with the substrate. To accomplish this, conductive inks incorporate glass frits to aid with sintering silver particles to a substrate and to promote adhesion and ohmic contact between the formed metal contact and the substrate. When the glass frit liquefies, it tends to flow toward the interface between the silver particles and the anti-reflective coating on the substrate. The melted glass dissolves the anti-reflective coating materials as well as some of the metal particles and substrate. Once the temperature decreases, the molten silver and the melted or dissolved substrate recrystallize through the liquid phase. As a result, some of the silver crystallites are able to penetrate the antireflective layer and form ohmic contact with the substrate. This process is referred to as "fire-through" and facilitates a low contact resistance formation and a stronger bond between conductive grid or metal contact and the substrate.」([0003]?[0005])
(当審訳:…今日の産業における結晶シリコン光起電力電池は、通常、光の吸収を促進し、光起電力電池の効率を向上するため、反射防止膜で被覆されている。しかしながら、反射防止膜は、半導体から金属接点へ流れる電荷担体に、高い電気抵抗を加える。そのような反射防止膜は多くの場合、窒化ケイ素、酸化チタン、又は酸化ケイ素を含む。
導電性インクはこれらの導電グリッド又は金属接点を形成するために使用される。導電性インクは通常、ガラスフリット、銀粒子等の導電性種及び有機媒体を含む。金属接点を形成するため、導電性インクは、スクリーン印刷又はその他の方法によって格子線のパターン又はその他のパターンで基板上に印刷される。その後、基板は焼成され、その間に格子線と基板との間に電気接点が構成される。この接点はガラス基材界面で、個々の銀結晶子の形成によって強化される。…
ここで別の点について述べると、反射防止膜は、光吸収を増強するだけでなく、基板から金属接点への流れから励起された電子を減ずる絶縁体としても作用する。従って、導電性インクは、基板とオーミック接触を有する金属接点を形成するため、反射防止膜を突き抜けるほうが良い。これを達成するため、導電性インクは、銀粒子が基板へ焼結することを補助し、及び形成された金属接点と基板との間の接着及びオーミック接触の形成を促進するガラスフリットを包含する。ガラスフリットが液化した場合、基板上の銀粒子と反射防止膜との間の接触面に向かって流れる傾向がある。融解したガラスは反射防止膜の材料を一部の金属粒子や基板と同様に溶解する。温度が低下した時点で、融解した銀及び融解又は溶解した基板は液相を通じて再結晶化する。その結果、銀の結晶子の一部は反射防止層を突き抜け、基板とのオーミック接触を形成することができる。この方法は、「ファイヤースルー」といわれ、低い接触抵抗の形成、及び導電グリッド又は金属接点と基板との間のより強力な結合形成を促進する。)(甲第17号証の【0003】?【0005】)

(6イ)「Embodiments of the present invention relate to tellurium containing frits having no intentionally added lead and the uses thereof. According to one or more embodiments, the frits described herein have very low viscosity and are particularly corrosive. For example, in one or more embodiments, the frits tend to dissolve refractory materials typically used in PV applications as anti-reflective layers such as SiO_(2), TiO_(2) and SiN_(x) .」([0008])
(当審訳: 本発明の実施形態は、意図的に添加された鉛を有さない、テルルを含むガラスフリット、及びその用途に関する。一以上の実施形態によれば、ここに記載されたガラスフリットは、非常に低粘度であり、特に腐食性である。例えば、一以上の実施形態において、そのガラスフリットは、通常、光起電性製品において反射防止層として使用される、SiO_(2)、TiO_(2)、SiN_(x)等の難溶性物質を溶解する傾向がある。)(甲第17号証の【0008】)

(6ウ)「EXAMPLES
Two inks (Ink A and Ink B) were prepared having at least a frit and a conductive species. Inks A and B were prepared using a general procedure. The general procedure includes batching and dispersing the examples using triple roll milling. Alternative dispersion processes known in the industry such as bead milling, sand milling and colloid milling could also be used to disperse the solid particles in the organic binder medium.
Inks A and B both had a frit content of 3% by weight and silver in an amount of 97% by weight (on a solids basis). Both frits were bismuth borosilicate compositions, had similar coefficients of thermal expansion and glass transition temperatures. Ink A contained a frit known in the art which had no intentionally added lead. Ink B contained a frit known in the art which had no intentionally added lead and also incorporated TeO_(2) .
Eight textured, monocrystalline silicon wafers with a 40 ohm/square phosphorus doped emitter and boron doped base having a silicon nitride anti reflective coating were used. The back surfaces of the eight wafers were printed with commercially available back surface aluminum ink and silver rear contact ink. Both inks were thoroughly dried. Four wafers were then printed on the front surface with Ink A using a 325 mesh screen (Cells 1-4). Four additional wafers were printed on the front surface with Ink B in an identical manner (Comparative Cells 5-8). The PV cells were then dried and fired in an infrared furnace to a peak firing temperature as noted in Table 1. Each wafer was fired at the peak temperature for approximately 3 to 5 seconds. After cooling, the parts were tested for their current-voltage (I-V) characteristics.


The "fill factor" and "efficiency" refer to measurements of the performance of a semiconductor. The term "fill factor" is defined as the ratio of the maximum power (V_(mp) x J_(mp) ) divided by the short-circuit current (I_(sc) ) and open-circuit voltage (V_(oc) ) in light current density - voltage (J-V) characteristics of solar cells. The open circuit voltage (Voc) is the maximum voltage obtainable at the load under open-circuit conditions. The short circuit current density (J_(sc )) is the maximum current through the load under short-circuit conditions. The fill factor (FF), is thus defined as (V_(mp)J_(mp))/(V_(oc)J_(sc)), where J_(mp) and V_(mp) represent the current density and voltage at the maximum power point. The cell efficiency, η, is given by the equation η = (I_(sc)V_(oc)FF)/P_(in) where I_(sc) equals the short circuit current, V_(oc) equals the open circuit voltage, FF equals fill factor and P_(in) is the power of the incident solar radiation.
The fill factor and efficiency of Comparative Cells 5-8, which contain TeO_(2), was significantly higher than Cells 1-4, which did not contain TeO_(2). This improvement was observed at both firing temperatures. Without being bound by theory, it is believed that the use of TeO_(2) reduces the viscosity of the molten frit, thereby enabling the frit to penetrate, dissolve and/or digest the anti-reflective layer of the PV cell and improving ohmic contact between the silver or formed metal contact and the substrate cell.」([0039]?[0043]))
(当審訳:【実施例】
少なくともガラスフリット及び導電性種を有する2種のインク(インクA及びインクB)を調製した。インクA及びBは一般的な手順で調製した。一般的な手順は、計量、及び、例えば、3本ロールミル法(triple roll milling)を使用する分散を含む。業界で知られている、ビーズミル法、サンドミル法及びコロイドミル法等の別の分散方法もまた有機バインダー媒体に固体微粒子を分散するために使用できる。
インクA及びBの両方は、ガラスフリットを3質量%、及び銀を97質量%の含有量で(固形分を基準として)有していた。両方のガラスフリットはホウケイ酸ビスマス(bismuth borosilicate)組成物であり、同様な熱膨張係数及びガラス転移温度を有していた。
インクAは意図的に添加された鉛を有さない、当技術分野で公知のガラスフリットを含んでいた。インクBは意図的に添加された鉛を有さず、TeO_(2)を包含する当技術分野で公知のガラスフリットを含んでいた。
8個のテクスチャー処理された、リンドープによるエミッタ電極及びボロンドープによるベース電極で40オーム/スクエアー(ohm/square)を有し、窒化ケイ素の反射防止膜を有する単結晶シリコンウェハーを使用した。8個のウェハーの裏面は市販の裏面アルミニウムインク(back surface aluminum ink)及び銀リアコンタクトインク(silver rear contact ink)で印刷した。両方のインクを完全に乾燥した。その後、4個のウェハーについて、表面にインクAで325メッシュスクリーンを使用して印刷した(セル1-4)(比較例に相当)。別の4個のウェハーについては、表面にインクBで同じ方法で印刷した(比較セル5-8)(実施例に相当)。その後、各PVセルを乾燥し、赤外炉において、表1に示した最高焼成温度に焼成した。各ウェハーを最高温度でおよそ3?5秒間焼成した。冷却後、各セルについて、その電流電圧(I-V)特性を試験した。
【表1】

「曲線因子(fill factor)」及び「効率(efficiency)」は 半導体の性能の評価を参照にする。用語「曲線因子」は、太陽電池の光電流密度-電圧(J-V)特性において、最大出力(maximum power)(V_(mp) x J_(mp))を短絡電流(short-circuit current)(I_(sc))と開放電圧(open-circuit voltage)(V_(oc))の積で除した比として定義される。開放電圧(V_(oc))は開放条件(open-circuit condition)下の負荷で、得られる最大電圧である。短絡電流密度(short-circuit current density)(J_(sc))は短絡条件(short-circuit condition)下の負荷で流れる最大電流である。曲線因子(FF)はこのように(V_(mp)J_(mp))/V_(oc)J_(sc))、[但し、J_(mp)及びV_(mp)は、最大出力点(maximum power point)での電流密度及び電圧を表す。]として定義される。セル効率、ηは、方程式、η=(I_(sc)V_(oc)F)/P_(in)、[但し、I_(sc)は短絡電流に相当し、V_(oc)は開放電圧に相当し、FFは曲線因子に相当し、及びP_(in)は入射する太陽放射力である。]によって得られる。
TeO_(2)を含む比較セル5?8(実施例)の曲線因子及び効率は、TeO_(2)を含まないセル1?4(比較例)に比べて有意に高かった。この改良は両方の焼成温度で認められた。理論にかかわらず、TeO_(2)の使用は、融解されたガラスフリットの粘度を低下させ、その結果、ガラスフリットが光起電力電池の反射防止層を突き抜け、溶解し、及び/又は消化し、銀又は形成された金属接点と基板セルとの間の抵抗接点を改良することが可能となっているものと考えられる。)(甲第17号証の【0040】?【0045】)

(6エ)「
1. A frit comprising: TeO_(2); and one or more of Bi_(2)O_(3) and SiO_(2), the frit containing no intentionally-added lead.
2. The frit of claim 1, further comprising B_(2)O_(3) .

10. A conductive ink comprising a substantially lead-free frit according to any of claims 2-9 and a conductive species.
…」(claims)
(当審訳:
【請求項1】
TeO_(2)、並びにBi_(2)O_(3)及びSiO_(2)の1種以上を含み、且つ意図的に添加された鉛を含まないことを特徴とするガラスフリット。
【請求項2】
更に、B_(2)O_(3)を含む請求項1に記載のガラスフリット。

【請求項10】
請求項2?9のいずれか1項に記載の実質的に無鉛のガラスフリット、及び導電性種を含むことを特徴とする導電性インク。
…)(甲第17号証の【特許請求の範囲】)


(7)甲第22号証によれば、公開日が2005年9月16日とされ、また、甲第23号証によれば、米国特許商標庁において2010年6月3日を優先権主張の日とする米国特許出願に対して、公知文献として扱われた、
甲第16号証(Mohamed M. Hilali, UNDERSTANDING AND DEVELOPMENT OF
MANUFACTURABLE SCREEN-PRINTED CONTACTS ON HIGH
SHEET-RESISTANCE EMITTERS FOR LOW-COST SILICON
SOLAR CELLS, A Thesis Presented to The Academic
Faculty, Georgia Institute of Technology,
August 2005, p.52-53, p.59-62, p.74-79, p.129,
p.183 )
(7ア)「3.1.3.1 The Composition of Screen-Printing Pastes
The paste is composed of four different materials: metal powders, glass frit and modifiers, solvent, and non-volatile polymers or resin, which are blended together. The role of these ingredients is described below:
1- Functional phase, which consists if the metal powder (e.g., Ag in the case of conductive metal pastes for printing the front grid), and is responsible for providing the current condition;
2- Binder phase, which holds the paste to the subatrate, dissolves the metal powder and sticks to the substrate or provides adhesion during high-temperature firing. It also affects the sintering kinetics. This is also called glass frit, which is a mixture of metal oxides and silicon dioxide to form a uniform glass. Before being added to the paste, the glass is milled to a thin sheet and crushed. Normally, lead oxide is the most important ingredient, which is added in amounts of 2-5% for the sintering action. Other components can be bismuth, boron, aluminum, copper, and titanium. Phosphorus can also be added to improve the contact with the n-type emitter.
3- Vehicle, which acts as a carrier for the powders and consist of both volatile solvents and non-volatile polymers. These substances evaporate during the drying and burn-off steps before the actual firing step. The vehicle is aiso responsible for pseudoplastics behavior and adhesion of the paste to the substrate during printing.
4- Modifiers, which are small amounts of additives that are proprietary to the paste manufacturer. These additives control the behavior of the paste before and after processing. The modifiers include combinations of elemental metals such as Ge, Bi, Pb, Li, Cd, In, and Zn.」(第52頁第1行?第53頁第2行)
(当審訳:3.1.3.1 スクリーン印刷ペーストの組成
ペーストは、ブレンドして一体化された4つの異なる材料:金属粉末と、ガラスフリット及び改質剤と、溶媒と、不揮発性ポリマー又は樹脂とで構成される。これらの役割を以下に記載する。
1- 機能相、金属粉末(例えば、フロントグリッドを印刷するための導電性金属ペーストの場合はAg)からなり、電流の通電に関与する。
2- バインダー相、ペーストを基板に保持するか、金属粉末を溶解して基板に固着させるか、又は高温焼成時に接着を提供する。焼結速度にも影響を及ぼす。この相は、ガラスフリットとも呼ばれ、金属酸化物と二酸化珪素との混合物であり、溶融されて均一なガラスを形成する。ペーストに添加される前に、ガラスは、薄いシートにミルされ、破砕される。通常、酸化鉛が最も重要な成分であり、焼結作用を得るために2?5%の量で添加される。他の成分は、ビスマス、ホウ素、アルミニウム、銅、及びチタンであり得る。n型エミッターとの接触を改良するために、リンが添加されることもあり得る。
3- ビヒクル、粉末の媒体として機能し、揮発性溶剤及び不揮発性ポリマーの両方からなる。これらの物質は、実際の焼成工程の前の乾燥工程及びバーンオフ工程で蒸発する。ビヒクルはまた、印刷時にペーストの擬塑性挙動及び基板への接着に関与する。
4- 改質剤、ペースト製造業者独自の少量の添加剤である。この添加剤は処理前後のペーストの挙動を制御する。改質剤は、Ge、Bi、Pb、Li、Cd、In、Znなどの単体金属の組み合わせを含む。
…)

(7イ)「3.1.3.5 The Screen-Printed Paste Firing Process
Follwing the printing of the cell, the metal paste is fired. This is done in a radiatin lamp-heated belt furnace in an industrial production environment. The firing is basically a three-step process:
1. Drying: Drying is performed to evaporate all the solvents in the paste, which otherwise cause gas bubbles at higher temperatures and result in cracking of the metallization. Drying is done at ?150℃.
2. Buru-out: The burn-out process is done at temperatures in the range of 300-400℃ to drive out the organic binders.
3. Firing: The firing step is also called the sintering step during which the Ag metal grid adheres to the underlying Si. Conventional firing is done at temperatures in the range of 700-800℃. As a rule, it is best to fire fast and hot.
The profiles of these three steps are described in Figure 3.4. Cracking in the metallization can happen if the outside surface of the paste is dried too fast, forming a crust that cannnot be permeated by the solvent.

During the burnout process, sufficient airflow must be present to have complete oxidation of the organic components; otherwise, carbon will be present in the paste and can diffuse into the junction during firing. The thermogravimetric analysis(TGA) gives the temperature at which all the organic constituents in the paste are burn out; this depends on the type of polymers used. However, excessive burn-out is not critical and should be avoided since gas bubbles can give cracks in the matallization.
The firing step is also called the sintering step. The upward slope of firing proifile can be set to 50℃/s, while the downward slope can be set to slower rates to obtain better adhesion of the Ag to the Si and prevent detachment as a result of differences in the expansion coefficients. A value of -10℃/s has been deemed the best cooling rate in terms of specific contact resistance. The cell stays around 30-60 s at a temperature less than 50℃ from the peak. Conditions with the high belt loading of cells, an insufficient air injection, and rapid firing may produce a net reducing atmosphere in the local environment of the thick-film conductor, which is capable of converting the lead oxide (and bismuth oxide if present in the glass) contained in the glass to metallic lead(and bismuth).
During the firing process the silicate glass systems, such as the ones used for solar cell thick-film contacts, form a viscous glass at the firing temperature, and a major part of densification results from the viscous flow under the pressure caused by the fine pores. In other words, vitrification takes place and is responsible for forming a bond for the thick-film contact. The processes or steps that take place during the firing cycle are shown in Figure 3.5. Ag is screen printed on top of the silicon nitride antireflection coating and then fired. Between 100-200℃, the solvent evaporates; from 200-400℃ the polymer or resin burns out; from 400-600℃ the glass frit starts to melt and Ag particles start to coalesce and sinter; from 600-800℃ molten glass with some amount of dissolved Ag etches the silicon nitride antireflection coating and reaches the Si surface where it reacts and etches a very thin layer of Si. Ag in the glass then precipitates onto the Si surface in the form of crystallites.
Contact formation can influence series resistance, shunt resistance, and junction leakage current, which in turn can degrade the fill factor. Optimizing the firing process means finding the temperature profile where V_(OC) is unaffected and good fill factor(>0.78) is achieved. The optimum firing condition depends on the frit composition and the emitter profile. Firing fast and hot generally gives optimum results because the impurities do not get a chance to diffuse and the sintering is effective. The activation energy for the impurities to diffuse into the emitter region is generally lower than that used for the sintering.

」(第59頁第18行?第62頁下から4行)
(当審訳:3.1.3.5 スクリーン印刷ペーストの焼成工程
セルの印刷に続いて、金属ペーストが焼成される。これは、工業的生産環境において、放射線ランプヒータベルト炉内で行われる。焼成は、基本的には、以下の3工程プロセスである。
1.乾燥:乾燥は、ペースト中のすべての溶媒を蒸発させるために行われる。乾燥が行われない場合、より高い温度で気泡が発生し、導体薄膜の亀裂を招く。乾燥は約150℃で行われる。
2.バーンアウト:バーンアウトプロセスは、有機バインダーを除去するために、300?400℃の範囲の温度で行われる。
3.焼成:焼成工程は、焼結工程とも呼ばれ、この工程では、銀グリッドが下側のSiと接着する。焼結は、700?800℃の範囲の温度で行われる。原則として、高速かつ高温で焼成することが最良とされる。
これら3つの工程のプロファイルは、図3.4に記載されている。ペースト外表面の乾燥が早すぎると、溶媒が浸透できない層が形成されるため、導体薄膜の亀裂を生じ得る得る。

バーンアウト工程では、有機成分の完全な酸化のための気流が必要とされる。さもなければ、炭素がペースト中に残存して、焼成時に接合部に拡散する可能性がある。熱重量測定(TGA)により、ペースト中の全ての有機成分がバーンアウトされる温度が与えられる。これは、使用されたポリマーのタイプに依存する。過剰なバーンアウトは、重大問題ではないが、気泡が導体薄膜に亀裂を与える得るので、避けるべきである。
焼成工程は焼結工程とも呼ばれる。焼成プロファイルの加熱速度は、50℃/秒に設定可能であり、一方、冷却速度は、SiへのAgのより良好な接着を得るために、かつ膨張係数の差の結果としての剥離を防止するために、より遅い速度に設定可能である。-10℃/秒が特定の接触抵抗に関しての最良の冷却速度であるとみなされてきた。セルは、ピークよりも50℃低い温度で30?60秒間維持される。高ベルト負荷、不十分な空気注入、急速焼成の条件下では、厚膜伝導体が局所的に還元雰囲気となるため、ガラス中の酸化鉛(及びガラス中に酸化ビスマスが存在する場合)は、金属鉛(及びビスマス)に変換され得る。
焼成プロセスの間、太陽電池の厚膜接点に使用されるようなケイ酸塩ガラス系は、焼成温度で粘性ガラスを形成し、細孔によって引き起こされる圧力下での粘性流から大部分の緻密化が生じる。言い換えると、ガラス化が起こり、厚膜接点の形成に関与する。焼成サイクルの間に起こる、プロセス又は工程は、図3.5に示されている。Agは、窒化珪素反射防止膜上にスクリーン印刷され、次いで、焼成される。100?200℃で溶媒が蒸発し、200?400℃でポリマー又は樹脂がバーンアウトされ、400?600℃でガラスフリットが溶融を開始し、かつAg粒子が合体及び焼結を開始し、600?800℃である程度の溶融Agを含む溶融ガラスが窒化珪素反射防止膜をエッチングし、Si表面に達し、そこでSiの極薄層と反応してエッチングする。次いで、ガラス中のAgが結晶化形態でSi表面上に析出する。
接点形成は、直列抵抗、短絡抵抗、及び接合漏れ電流に影響を及ぼす可能性があり、さらには、曲線因子を低下させ得る。焼成工程の最適化とは、VOCが影響を受けず、かつ、良好な曲線因子(≧0.78)が達成させる温度プロファイルを見出すことを意味する。最適焼成条件は、フリット組成及びエミッタープロファイルに依存する。一般的には、高速高温の焼成が最適な結果を与える。なぜなら、不純物が拡散する機会を与えられず、焼結が効果的であるからである。エミッター領域に拡散する不純物の活性化エネルギーは、一般的には、焼結に使用される物のそれよりも低い。

)

(7ウ)「3.2.2 Current Understanding of the Contact Formation and Current Transport in the Screen-Printed Contacts
3.2.2.1 Contact Formation Mechanism
During solar cell processing, a Ag grid is generally screen printed on top of the SiN_(x) antireflection coating and fired through the SiN_(x) film onto the emitter surface. The contact formation occurs when the screen-printed thick film experiences elevated temperatures(>650℃) during the firing process. Upon heating, the glass frit fluidizes and wets the SiN_(x) surface, dissolving the silver and etching the silicon nitride. The etching of SiN_(x) takes place by a redox reaction, χSi+2MO_(χ),_(glass)→χSiO_(2)+2M, where M is the metal in the glass frit. This behavior has been supported by the presence of metal precipitates observed in the glass after firing. Figure 3.11 shows an SEM/EDS image demonstrating the presence of lead precipitates in the glass after firing. Subsequently, the glass frit also etches or dissolves a small amount of the Si surface. This has been demonstrared by Schubert et al. in Fig.3.12, Where significant Si etching was observed by a paste which contained only glass frit with no Ag. Upon cooling, the excess Si contained in the glass frit crystallizes epitaxially on the substrate. This mechanism is shown Figure 3.13. However, this model has not been validated experimentally; dissolved Si could alternatively become oxidaized and precipitate in the glass layer. Excess Ag in the molten glass re-crystallizes epitaxially at the Si surface in the shape of inverted pyramid-like Ag crystallites.


A model for contact formation has been proposed in the literature[81]. Five steps in Figure 3.14 pictorially summarize this model for the contact formation. Figure 3.14(a) shows that the screen-printed Ag gridline contains the inorganic constituents (Ag particles, glass frit, and modifiers). Figure 3.14(b) shows that, upon heating , the glass frit starts to melt at temperatures >450℃. The glass frit wets the surface and then starts to etch or react with the SiN_(x) layer underneath (Fig.3.14(c)). In addition, the Ag particles begin to sinter and dissolve in the glas frit. Once the glass frit etches through the SiN_(x) film, it starts to etch or dissolve the Si surface underneath the SiN_(x) at temperatures ?670-700℃. (Fig.3.14(d)). Upon cooling, the excess Si in the glass frit crystallizes epitaxially, and some of the dissolved Ag in the frit precipitates as Ag crystallites, which get embedded into the Si surface at the Ag-Si interface, forming a direct contact with the Si emitter to provide a path or interconnection for current transport(Fig.3.14(e)). Finally, lead and possibly other metals also precipitate in the glass layer.

」(第74頁下から9行?第79頁末行)
(当審訳: 3.2.2 スクリーン印刷接点における接点形成及び電流輸送に関する現在の理解
3.2.2.1 接点形成機構
太陽電池の作製時、Agグリッドは、一般的には、SiN_(x)反射防止膜上にスクリーン印刷され、SiN_(x)膜を介してエミッター表面上に焼成される。スクリーン印刷厚膜が焼成プロセス時に高温(>650℃)を受けると、接点形成が起こる。加熱すると、ガラスフリットが流動化してSiN_(x)表面を湿潤にし、それにより、銀が溶解して窒化珪素がエッチングされる。SiN_(x)のエッチングは、χSi+2MO_(χ,glass)→χSiO_(2)+2M(式中、Mは、ガラスフリット中の金属である)というレドックス反応により起こる。この挙動は、焼成後のガラスで観測される金属析出物の存在により裏付けられた。図3.11は、焼成後のガラス中の鉛析出物の存在を実証するSEM/EDS画像を示している、続いて、ガラスフリットは、また、Si表面の少量をエッチング又は溶解する。このことは、図3.12のように、Agなしでガラスフリットのみを含有するペーストにより、有意なSiエッチングが観測されたとの、シューベルトらの報告により実証されている。冷却時に、ガラスフリット中に含有される過剰なSiが、基板上にエピタキシャルに結晶化する。この機構は、図3.13に示されている。しかしながら、このモデルは、実験的に検証されておらず、溶解されたSiは、代替的に、酸化状態になってガラス層中に析出する可能性がある。溶融ガラス中の過剰なAgは、逆ピラミッド状のAg結晶がSi表面でエピタキシャルに再結晶化する。


接点形成モデルは、文献[81]で提案されてきた。図3.14の5つの工程は、接点形成のモデルを図式化してまとめたものである。図3.14(a)は、スクリーン印刷されたAgグリッド線が無機成分(Ag粒子、ガラスフリット、及び改質剤)を含有することを示している。図3.14(b)は、加熱するとガラスフリットが450℃よりも高いの温度で溶融を開始することを示している。ガラスフリットは、表面を湿潤にし、次いで、下側のSiN_(x)層のエッチング又はそれとの反応を開始する(図3.14(c))。それに加えて、Ag粒子は、焼結及びガラスフリット中への溶解を開始する。ガラスフリットは、SiN_(x)層をエッチングすると、約670?700℃の温度でSiN_(x)の下側のSi表面のエッチング又は溶解を開始する(図3.14(d))。冷却すると、ガラスフリット中の過剰なSiは、エピタキシャルに結晶化し、フリット中に溶解されたAgの一部は、Ag結晶として析出し、これは、Ag-Si界面でSi表面内に埋め込まれた状態となり、その結果、Siエミッターとの直接接触を形成して、電流輸送のための経路又は相互接続を提供する(図3.14(e))。最終的に、鉛及びおそらく他の金属もまた、ガラス層中に析出する。

)

(7エ)「 The first requirement for achieving low-resistivity ohmic contact to the Si emitter is to punch through the SiN_(x) layer during the contact firing process. Second, the paste and firing combination must result in a metal-Si contact area fraction that is sufficient for low contact resistivity. Third, the fired or modified glass layer should be thin enough for tunneling and/or it should be conductive to allow for current transport. In addition, the 100 Ω/sq emitter is more prone to shunting since it has a shallower p-n junction compared to the 45 Ω/sq. This adds another constraint to the chemistry of the glass frit and metallic constituents of the paste to prevent shunting and excessive impurity diffusion.」(第129頁下から9行?末行)
(当審訳:Siエミッタへの低低効率オーム接点を実現する第1の要件は、接点焼成プロセス時にSiN_(x)層を貫通することである。第2に、ペーストと焼成との組合せは、低接触抵抗率を得るのに十分な金属-Si接触面積率をもたらすものでなければならない。第3に、焼成又は改質されたガラス層は、トンネリングに十分な薄さにすべきであり、かつ/又は電流輸送を可能にするために伝導性にすべきである。それに加えて、100Ω/sqのエミッターは、45Ω/sqのそれと比較して、より浅いp-n接合を有するため、短絡を起こしやすい。このことから、短絡及び過剰な不純物拡散防止のために、ペーストのガラスフリット及び金属成分の化学的性質には、さらなる制約が課される。)

(7オ)「Figure 7.16 demonstrates the presence of Ag precipitation within the glass layer formed using the Ferro pastes.

」(第183頁第2行?下から7行)
(当審訳:図7.16は、フェロペーストを用いて形成されたガラス層内のAg析出物の存在を実証する。

)


(8)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第19号証(S.B.Rane et al. , Firing and processing effects on microstructure of fritted silver thick film electrode materials for solar cells, Materials Chemistry and Physics, 82(2003) , p.237 )
「1. Introduction
Thick film technology is widely used for versatile applications (viz. communications, military equipment, medical equipments, automotive electronics, photovoltaic,etc.).The steady growth of thick film technology has been due to the continual flow of new microelectronic circuit needs and the ability to develop materials to accommodate them. Amongst the various thick film conductors, silver has established as a high reliability option since it has enormous economic advantage compared to gold /platinum conductors. However, the solubility of silver in molten tin-lead solder and tendency of silver ion migration under the influence of an electrical field and moisture are serious problems associated with silver thick film conductors. Such problems can be circumvented by avoiding large voltage difference between adjacent conductors or by using protective over-glazes or by alloying with 20-40% of palladium.
In addition to usage as conductor terminations in hybrid microelectronic circuits, the fired-on type silver based pastes are used as the front grid of silicon solar cells. The prime pre-requisite of such silver paste is low series resistance, low metal area coverage and good adhesion after firing to the single crystal and polycrystalline silicon surface. The parameters, such as particle size, shape and distribution, of silver powder are of utmost importance, which have direct bearing on the printing and, in turn, on the microstructure and electrical properties of the resulting films. The influence of the surfactant treatments and surface area of the silver powder on the rheology of silver thick film paste has been rarely reported. Normally, relatively low firing temperature(600-850℃) type silver pastes are recommended for silicon solar cells. This necessities working out of a glass composition to have the glass softening temparature in 400-600℃ range. The other important aspect is that the glass frit binder should not chemically react with silver or polysilicon, which can adversely affect the resultant photovoltaic properties. These three aspects of glass are to be kept in mind when the composition and post-processing conditions of silver pastes for solar cells are optimized. Thus, controlling the properties (viz. conductivity, contact resistance, solderability, adhesion, solder leach resistance, etc.) of resulting conductor thick film pastes for solar cells is not an easy task and demands thorough understanding of microstructure ⇔ property ⇔ processing relationship.
This paper reports the microstructural, physico-chemical and electrical properties of the fritted silver thick film electrode paste formulated using different powder processing conditions, which also included treatment with surfactants.(第237頁の「1. Introduction」)
(当審訳:1.緒言
厚膜技術は、様々な用途(すなわち、通信機関、軍用機器、医療機器、自動車用電子部品、光起電力素子等)に広く使用されている。厚膜技術の安定した成長は、新しい超小型電子回路ニーズの持続的流れとそれらに適合する材料開発能力に依存している。種々の厚膜導体の中で、銀は、金/白金の導体と比べて巨大な経済的利益を有することから、信頼性の高い選択肢として定着してきた。しかしながら、溶融スズ-鉛半田への銀の溶解性並びに電場及び湿度の影響下での銀イオンのマイグレーションの傾向は、銀の厚膜技術に付随する深刻な問題である。そのような問題は、近接導体間の大きな電位差を排除することにより、あるいは、保護用オーバーグレーズを用いることにより、あるいは、20?40%のパラジウムと合金化することにより、回避することが可能である。
焼付け型の銀系ペーストは、ハイブリッド超小型電子回路の導体終端としての使用に加え、シリコン太陽電池のフロントグリッドとして使用される。そのような銀ペーストの主要な前提条件は、低い直列抵抗、金属の面積の低い被覆率、並びに、単結晶及び多結晶のシリコン表面への良好な焼成後接着である。粒子サイズ、形状、分布といった銀粉末のパラメーターは、最も重要であり、印刷に対して、ひいては得られる膜のマイクロ構造及び電気的性質に対して、直接影響を及ぼす。銀厚膜ペーストのレオロジーに及ぼす銀粉末の界面活性剤による処理及び表面積の影響は、ほとんど報告されていない。通常、焼成温度が比較的低い(600?850℃)タイプの銀ペーストが、シリコン太陽電池として推奨されている。このため、ガラス組成物が400?600℃の範囲内のガラス軟化温度を有するようにする必要がある。他の重要な点は、ガラスフリットバインダーが銀やポリシリコンと化学反応してはならないことである。化学反応すると、得られる光起電特性に悪影響を及ぼす可能性がある。太陽電池用として銀ペーストの組成及び後処理条件を最適化する場合、ガラスのこれら3つの点に留意すべきである。したがって、太陽電池用として得られる導体厚膜ペーストの性質(すなわち、伝導率、接触抵抗、半田付け性、接着性、耐半田浸食性等)の制御は、容易な作業ではなく、マイクロ構造⇔性質⇔処理の関係の十分な理解が必要になる。
本稿では、界面活性剤による処理も含め、様々な粉末処理を施して形成されるフリット銀厚膜電極ペーストのマイクロ構造的な、物理化学的な及び電気的な性質を報告する。)


(9)本件特許に係る出願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第20号証(JOHN R. LARRY et al. , Thick-Film Technology: An Introduction to the Materials, IEEE TRANSACTIONS ON COMPONENTS, HYBRIDS, AND MANUFACTURING TECHNOLOGY, VOL. CHMT-3, NO.2, JUNE 1980, p.211-212)
(9ア)「Abstract- The use of thick-film technology to manufacture electronic circuits and discrete passive components continues to grow at a rapid rate worldwide. When applied to hybride microcircuits, it can be viewed as a means of packaging active devices, spanning the gap between monolithic integrated circuit chips and printed circuit boards with attached active and passive components. The strength of the thick-film approach is a consequence of function, size, and unit cost trade-offs; advances in materials have played a major role relative to each of these factors. Thick-film materials are developed to meet needs defined by electronic circuit design and process engineers. A general understanding of thick films is provided from a materials standpoint, particularly for the new engineer. Background is developed for a basic, yet simple, understanding of the components that make up resistor, conductor, and dielectric compositions, of processing, and of the properties of the final thick-film composite structures.」(第211頁左欄第1?15行)
(当審訳:要約- 電子回路や個々の受動部品の製造のために厚膜技術の利用は、世界的に急速に増加し続けている。ハイブリッドマイクロ回路に適用する場合、厚膜技術は、モノシリック集積回路チップと、能動部品や受動部品が取り付けられたプリント回路基板との間のギャップをまたいで能動デバイスをパッケージ化する手段とみなすことができる。厚膜法の強さは、機能、サイズ、単価コストのトレードオフの結果であり、材料の進歩がこれらの要因の各々に対して、主役を果たしてきた。厚膜材料は、電子回路設計とプロセスの技術者によって明確にされるニーズに合うように開発される。とりわけ新たしい技術者に対しては、材料の観点から厚膜の一般的な知識が提供される。抵抗体、導体及び誘電体の組成物を構成する成分、処理、厚膜複合構造体の性質を理解するための基本的で、簡単な背景的知識を紹介する。)

(9イ)「 INTRODUCTION
Over the past 20 years thick-film materials have been used to manufacture an increasing variety of resistor networks, hybrid integrated circuits, hybrid integrated networks, and components for all segments of the electronics industry: military, industrial, data processing, medical, automotive, telecommunications, and consumer. Extensive proliferation into these worldwide markets is primarily a consequence of performance latitude, circuit reliability, process economics, and adaptability to circuit miniaturization and high-volume production. Although many factors have contributed to the rapid and sustained growth of thick-film electronics, advances in materials technology have been essential. This paper reviews some of the important advances in materials for microcircuits, with sections covering resistors, conductors, dielectrics, and vehicles. Although much of the materials technology is proprietary, an attempt is made to provide details where possible. Where appropriate, chronological perspective is provided, and the paper is structured in the context of an "introduction ." Within this context, references have been omitted. 」(第211頁左欄第16?37行)
(当審訳: 緒言
過去20年間にわたり、厚膜材料は、多様化する抵抗ネットワーク、ハイブリッド集積回路、ハイブリッド統合ネットワーク、及び電子工業の全ての分野(軍事、工業、データ処理、医療、自動車、電気通信及び消費者)の部品を製造するために利用されてきた。これらの世界市場への広範な拡大は、主に、性能の程度、回路の信頼性、プロセスの製材性並びに回路の小型化及び量産化への適合の結果である。多くの因子が厚膜エレクトロニクスの迅速かつ持続的な成長に寄与したが、材料技術の進歩がその本質をなしている。本稿では、抵抗体、導体、誘電体及びビヒクルを扱う分野におけるマイクロ回路材料の重要な進歩のいくつかを取り上げる。材料技術の多くには所有権者がいるが、できる限り詳細を提示するように試みる。適宜、時系列的な展望を示し、「入門」の観点から本稿を構成している。このような観点のため、参照文献は省略した。)

(9ウ)「 OVERVIEW OF THE MATERIALS AND THE PROCESS
Thick-film compositions are dispersions of inorganic powders in organics fluid vehicles. The materials exhibit pseudoplastic or thixotropic rheology with viscosity an inverse function of shear rate. They are used to form conductors, resistors, and other passive circuit elements on ceramic substrates such as 85-99-percent alumina. The latter usually are 0.5-1 mm thick with length and width dimensions of 1-10cm.
Circuit patterns are produced with automated screen printing machines. In principle, the process is much like the age-old silk screening technique in which composition or ink is forced through a screen with a rubber squeegee. A portion of the screen, generally stainless steel in construction, is dammed or masked with a polymeric material such that the screen openings form a pattern. Composition forced through these openings reproduce the pattern on the underlying substrate. The printing process is very fast, and modern machines with in-line feedthrough equipment can pattern nearly 2000 substrates/h. Throughput can be increased significantly when many circuits are printed on a single substrate. For example, conductor patterns for 25 2-cm by 2-cm circuits can be printed simultaneously on a 10 cm by 10 cm substrate. A subsequent scribing and snapping operation separates the individual circuits.
The pattern is dried below 200℃ and then fired in a conveyor belt furnace adjusted to provide reproducible time-temperature profiles. Firing duration is of the order of 20-60 min and peak firing temperatures are usually set between 600℃ and 1000℃. Most thick-film compositions have a wide firing latitude, and, within relatively broad limits, the precise shape of the profile is not critical. However, it is important to maintain any given firing schedule as invariant as possible to insure the reproducibility of the performance characteristics of the fired films.
Conductors and resistors formed by sequential printing and firing yield resistor networks. The attachment of leads completes the circuits. The interconnection of active devices yields hybrid integrated networks. The addition of printed capacitors, monolithic capacitors, and other discrete components yields hybrid integrated circuits, such as the one shown in Fig.1. The thick-film technique can also be used to produce complex multilayer circuits with several layers of printed conductor wiring separated by layers of a printed insulating dielectric. The dielectric is patterned with through-holes, called vias, for the connection of conductors. A thick-film circuit production line requires relatively low inverstment and is very versatile. It is ideal for long production runs of like parts; and because the turnaround time is fast-that is, the changing of the screens is simple and rapid-it is effective for prototyping or the short-run production of different parts.
Thick-film microcircuits provide an enormous range of functionality in relatively small packages, particularly compared to printed circuit boards containing discrete components. Also, substrate requirements are much less stringent than those for thin-film circuits, and the overall investment is lower. In many applications thick-film technology can be thought of as a versatile low-cost size-efficient way of packaging active devices.
Fig.2 is a simplified flowchart for making thick-film microcircuit compositions. Metals, metal oxides, solvents, resins, and other raw materials are converted to intermediates such as metal powders, glass powders, and vehicles by chemical and mechanical processes. The intermediates are combined or formulated to compositions by mechanical processes. The key to producing compositions reproducibly is control of the interdiates; and back integration to intermediates from readily available raw materials is important. With intermediates of controlled high quality, conversion to reproducible compositions is relatively straightforward.
Fig.3 reviews the major components of thick-film compositions. Each usually contains three basic parts: a functional phase, a permanent binder, and a vehicle. Functional phasee in conductors are usually precious metals and mixtures of precious metals or alloys. However, nitrogen-fireable compositions based on copper are being tested extensively by many firms and are currently being used to produce a limited number of communications circuits. Air-fireable nickel-based materials are important in dc gas discharge displays. The functional phase of early resistors was Pd/PdO/Ag, but today most systems contain conductive oxides such as RuO_(2) or Bi_(2)Ru_(2)O_(7). Nitrogenfireable materials with other functional phases are currently being field tested. Typical dielectric functional phases are ferroelectric crystalline oxides such as barium titanate, glasses, glass-ceramics, and mixtures of these materials.
Historically, permanent binders have been glasses such as aluminosilicates and borosilicates. These are many types of glasses that are effective in binding functional phases to alumina or other ceramic substrates. In the last 10 years mixtures of certain crystalline oxides have been found to work well, and, in some systems, oxides are more effective than glass, particularly at low-volume percent concentrations, yield very dense fired films. Some compositions are formulated with mixtures of oxides and glasses to produce mixed bonded systems.
A vehicle typically contains two phases: a volatile solvent and a nonvolatile resin. It is the carrier for the particles of the binder and the functional phase that enables them to be screen-printed.
During the firing of thick-film patterns the following events occur: first, the volatile portion of the vehicle evaporates; then, combustion of the nonvolatile phase takes place at temperatures between 200 and 400℃. With increasing temperature many important reactions begin to occur. The binder will begin to flow and/or react with the substrate. It may react with the functional phase and will certainly influence the sintering kinetics of the functional phase. An understanding of the essential elements of these reactions is important in the development of materials with the complex combination of performance characteristics needed for high-tolerance reliable circuits.
The following sections review some of the important meterials and performance characteristics of resistors, conductors, dielectrics, and vehicles with relevance to modern circuit requirements.」(第211頁左欄第38行?第212頁右欄下から16行)
(当審訳: 材料及びプロセスの概要
厚膜組成物は、有機液体ビヒクル中の無機粉末の分散物である。この材料は、粘度がせん断速度の逆関数となるという、擬塑性又はチキソトロピー性のレオロジーを呈する。この材料は、85?99%がアルミナでなるようなセラミック基板上に導体、抵抗体及びその他の受動回路素子を形成するために使用される。基板は、通常、0.5?1mmの厚みで、長さ及び幅の寸法は1?10cmである。
回路パターンは、自動スクリーン印刷機で作成される。原理的には、このプロセスは、ゴムスキージーにより組成物又はインキがスクリーンを通って押し出される従来のシルクスクリーン印刷技術に非常に類似している。スクリーン開口がパターンを形成するように、一般的にはステンレス鋼で形成される、スクリーンの一部が高分子物質で埋められ、又はマスクされる。この開口を通って押し出された組成物は、下に位置する基板上にパターンを再形成する。印刷プロセスは非常に高速であり、フィールドスルー装置を内蔵する最近の機械では、1時間当たり約2000基板にパターン形成できる。単一の基板上に多くの回路を印刷する場合は、スループットを有意に増加することができる。例えば、10cm×10cmの基板上に25個の2cm×2cmの導体パターンを同時に印刷することができる。後続の溝加工及び割断操作により、個々の回路に分離される。
パターンは、200℃未満で乾燥され、再現可能な時間-温度プロファイルとなるように調整された、ベルト搬送式内で焼成される。焼成時間は20?60分程度であり、ピーク焼成温度は、通常、600℃から1000℃の間に設定される。ほとんどの厚膜組成物は、広い焼成ラチチュードを有し、比較的広い範囲内で、プロファイル精密さは重要ではない。しかしながら、焼成された膜の性能特性の再現性を保障するためには、与えられた焼成スケジュールを可能な限り変更しないことが重要である。
逐次的な印刷及び焼成により形成された導体及び抵抗体は、抵抗ネットワークを生成する。リードを取り付けると回路が完成する。能動素子を相互接続するとハイブリッド統合ネットワークが得られる。印刷コンデンサー、モノリシックコンデンサー及び他の個別部品を追加すると、図1に示されるような、ハイブリッド集積回路が得られる。また、厚膜技術を利用して、印刷絶縁誘電体層により分離されたいくつかの印刷導体配線層を有する複合多層回路を生成することができる。誘電体は、導体を接続するためのビアと呼ばれるスルーホールとともにパターン化される。厚膜回路製造ラインは、必要な投資額が比較的低く、非常に汎用性があり、類似のパーツの長期間にわたる製造運転に理想的である。さらに、ターンアラウンド時間が短いために、すなわち、スクリーンの交換が単純かつ迅速であるために、プロトタイプの作成又は異なるパーツの短期間の作成にも有効である。
厚膜マイクロ回路は、特に個別部品を含有するプリント回路基板と比較して、比較的小さいパッケージで非常に広範な機能を提供する。また、基板の必要条件は、薄膜回路のそれよりも厳しくはなく、投資総額がより低い。多くの用途では、厚膜技術は、能動素子をパッケージ化する汎用的な低コストのサイズ効率の高い方法と考えることができる。
図2は、厚膜マイクロ組成物を作成するための単純化されたフローチャートである。金属、金属酸化物、溶媒、樹脂及び他の原料は、化学的及び機械的プロセスにより、金属粉末、ガラス粉末、ビヒクル等の中間生成物に変換される。中間生成物は、機械的プロセスによって組み合わされるか、配合されて組成物になる。組成物を再現性よく生成するのに重要な点は、中間生成物の制御であり、容易に入手可能な原料から中間生成物への統合が重要である。制御された高品質の中間生成物を用いれば、再現性のある組成物への変換は比較的容易である。
図3に、厚膜組成物の主要成分を概説する。通常、3つの基本部分、すなわち、機能相、バインダー及びビヒクルを含有する。導体の機能相は、通常、貴金属及び貴金属の混合物又は合金である。銅系の窒素焼成可能な組成物は、多くの企業により広範囲に試験されており、現在、通信回路の製造に限定的に使用されている。空気焼成可能なニッケル系材料は、直流ガス放電ディスプレイに重要である。初期の抵抗体の機能相は、Pd/PdO/Agであったが、現在のほとんどの系は、RuO_(2)やBi_(2)Ru_(2)O_(7)等の導電性酸化物を含有する。他の機能相を有する窒素焼成可能な材料は、現在、フィールド試験が行われている。典型的な誘電体機能相は、強誘電体結晶性酸化物、例えば、チタン酸バリウム、ガラス、ガラス-セラミック及びこれらの材料の混合物である。
歴史的には、バインダーは、アルミノシリケートやボロシリケート等のガラスである。機能相をアルミナ基板又は他のセラミック基板に結合するのに有効な多くのタイプのガラスが存在する。過去10年間、特定の結晶性酸化物の混合物は、いくつかの系で良好に機能することが見い出されており、酸化物は、特に低堆積%濃度では、ガラスよりも有効であり、非常に密な焼成膜を与える。いくつかの組成物は、混合結合系を生成するように酸化物とガラスとの混合物を用いて配合される。
ビヒクルとは、典型的には、2相、すなわち、揮発性溶媒及び不揮発性樹脂を含有する。ビヒクルとは、バインダー及び機能相の粒子のスクリーン印刷を可能にする媒介物である。
厚膜パターンの焼成時、次の事象が生ずる。最初に、ビヒクルの揮発性部分が蒸発し、次いで、200?400℃の温度で不揮発性相の燃焼が生ずる。温度の上昇に伴って、多くの重要な反応が起こり始める。バインダーは、流動及び/又は基板との反応を始める。バインダーは、機能相と反応する可能性があり、機能相の焼結速度に確実に影響する。これらの反応の必須要素を理解することは、許容度の高い信頼性ある回路に必要とされる複雑に組み合わされた性能特性を有する材料を開発するうえで重要である。
次のセクションでは、最近の回路要件に適合する抵抗体、導体、誘電体及びビヒクルの重要な材料及び性能特性のいくつかを取り上げる。)

(9エ)「

」(第212頁のFig.1?3)
(当審訳:

)

なお、請求人が提示した甲第1?23号証のうち、甲第6、8?10、13?14、17?18、21?23号証については、本件特許に係る出願の優先権主張の日前に公知の文献とはいえないので、上記1.?2.において記載事項の摘示は行わなかった。


3.[無効理由1]について
(1)甲第1号証に記載された発明
ア. 上記1.(1j)からすると、甲第1号証には、「低融点ガラス組成物であって、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、
i) 50?85%のTeO_(2)、又は適正量のTeO_(2)前駆体
ii)0.1?30%の銀の酸化物、又は適正量のその前駆体
iii)5?30%の鉛の酸化物及び/又は亜鉛の酸化物、又は適正量の
前記酸化物の前駆体、及び
iv)任意に、0.1?44.9%のMg、Ti、Ta、Mo、B、W、
Tl、V、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Zr、Hf、
Si、Ge、Al、Ga、In、P、Sn、Sb、Bi、La、又は
希土類金属の1種以上の酸化物、又は適正量の当該選ばれた酸化物の
うちの1種以上の前駆体とを含み、但し、組成物にVが含まれている
場合は、5モル%未満の量で存在し、
典型的には、熱膨張計的軟化温度Tsが380℃以下である、低融点ガラス組成物。」、
「金属充填ガラス組成物であって、
a) 25?95重量%のフレーク状又は粉末状の金属充填剤
b) 5?75重量%の前記の低融点ガラス組成物
からなり、
重量%は、組成物の合計重量を基礎としている、金属充填ガラス組成物。」、及び、
「その金属充填組成物であって、固形成分が60?95%の範囲内の金属充填半田ガラスペーストが形成されるような量で、有機ビヒクルを付加的に含む、金属充填組成物。」という発明がそれぞれ記載されていると認められる。

イ. 上記ア.に示した発明について、金属充填半田ガラスペーストに注目すると、甲第1号証には、次のことが記載されているといえる。
(イ-1)金属充填半田ガラスペーストは、固形成分が60?95%の範囲内となるような量で、金属充填組成物に有機ビヒクルを付加的に含むこと。
(イ-2)前記金属充填組成物は、25?95重量%のフレーク状又は粉末状の金属充填剤と、5?75重量%の低融点ガラス組成物とからなること。
(イ-3)前記低融点ガラス組成物は、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、
i) 50?85%のTeO_(2)、又は適正量のTeO_(2)前駆体
ii)0.1?30%の銀の酸化物、又は適正量のその前駆体
iii)5?30%の鉛の酸化物及び/又は亜鉛の酸化物、又は適正量
の前記酸化物の前駆体、及び
iv)任意に、0.1?44.9%のMg、Ti、Ta、Mo、B、W、
Tl、V、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Zr、Hf、
Si、Ge、Al、Ga、In、P、Sn、Sb、Bi、La、
又は希土類金属の1種以上の酸化物、又は適正量の当該選ばれた酸化
物のうちの1種以上の前駆体とを含み、但し、組成物にVが含まれて
ている場合は、5モル%未満の量で存在し、
典型的には、熱膨張計的軟化温度Tsが380℃以下の、低融点ガラス組成物であること。

ウ. 上記イ.に示したことによると、金属充填組成物は、25?95重量%のフレーク状又は粉末状の金属充填剤と、5?75重量%の低融点ガラス組成物とからなり、その金属充填組成物に有機ビヒクルを、固形成分が60?95%の範囲内となるような量で、付加的に含めたのが、金属充填半田ガラスペーストであるところ、その固形成分には、前記フレーク状又は粉末状の金属充填剤以外に、前記低融点ガラス組成物も含まれるのか否かが明らかではないが、上記1.(1c)の、「本発明の組成物の調製で使用される種々の酸化物は、通常、微粉の形態である。これらの酸化物の前駆体もまた有用であり得るが、但し、それらは、ガラスの溶融温度未満で分解して必要とされる酸化物を形成する。」との記載に照らすならば、前記低融点ガラス組成物は、通常、微粉の形態であるから、前記固形成分には、前記フレーク状又は粉末状の金属充填剤とともに、前記低融点ガラス組成物も含まれるのが、通常であるといえる。

エ. また、上記1.(1a)、(1b)、(1f)によれば、「金属充填半田ガラスペースト」とは、前記低融点ガラス組成物が「半田ガラス組成物」であることを表していると認められる。

オ. 上記ア.?エ.の検討から、甲第1号証には、金属充填半田ガラスペーストに注目すると、次の発明が記載されているといえる。
「固形成分が60?95%の範囲内となるような量で有機ビヒクルを付加的に含む、金属充填半田ガラスペーストであって、
前記固形成分は、25?95重量%のフレーク状又は粉末状の金属充填剤と、5?75重量%の微粉の形態の低融点ガラス組成物とからなり、
前記低融点ガラス組成物は、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、
i) 50?85%のTeO_(2)
ii)0.1?30%の銀の酸化物
iii)5?30%の鉛の酸化物及び/又は亜鉛の酸化物
iv)任意に、0.1?44.9%のMg、Ti、Ta、Mo、B、W、
Tl、V、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Zr、Hf、
Si、Ge、Al、Ga、In、P、Sn、Sb、Bi、La、又は
希土類金属の1種以上の酸化物とを含み、但し、組成物にVが含まれて
いる場合は、5モル%未満の量で存在し、
典型的には、熱膨張計的軟化温度Tsが380℃以下の、半田ガラス組成物である、
金属充填半田ガラスペースト。」に係る発明(以下、「甲1a発明」という。)。


(2) 本件訂正発明1と甲1a発明との対比
本件訂正発明1と甲1a発明とを対比するに、甲1a発明における「金属充填半田ガラスペースト」は、上記1.(1f)によれば、「厚膜」導電ペーストに好適とされているから、本件訂正発明1における「厚膜ペースト組成物」に相当するといえ、また、甲1a発明における「フレーク状又は粉末状の金属充填剤」、「有機ビヒクル」は、上記1.(1f)によれば、いずれも、「厚膜」導電ペーストで用いられる成分であるから、それぞれ、本件訂正発明1における「伝導性金属」、「有機媒体」に相当するといえ、また、甲1a発明における「固形成分」、「微粉の形態の低融点ガラス組成物」は、それぞれ、本件訂正発明1における「固形分」、「酸化物」に相当する。そして、甲1a発明における「固形成分は、25?95重量%のフレーク状又は粉末状の金属充填剤と、5?75重量%の微粉の形態の低融点ガラス組成物とからな」ることは、本件訂正発明1における「全固形分に基づいて伝導性金属85?99.75重量%」と、「全固形分に基づいて伝導性金属85?95重量%」の範囲で一致し、また、本件訂正発明1における「固形分に基づいて酸化物0.25?15重量%」と、「固形分に基づいて酸化物5?15重量%」の範囲で一致する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<一致点>
a)厚膜ペースト組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属85?95重量%と、
b)固形分に基づいて酸化物5?15重量%と、
c)有機媒体と
を含む厚膜ペースト組成物。

<相違点>
相違点1-1: 酸化物が、本件訂正発明1では「鉛-テルル-リチウム-酸化物」であって、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含」むのに対し、甲1a発明では、微粉の形態の低融点ガラス組成物であって、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで50?85%のTeO_(2)を含むものの、「鉛-テルル-リチウム-酸化物」であるのか否かが明らかでないし、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含むのか否かが明らかでない点。

相違点1-2: 厚膜ペーストが、本件訂正発明1では「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための」ものであるのに対し、甲1a発明では、「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための」ものであるのか否かが明らかでない点。


(3) 相違点についての当審の判断
(3-1) 上記相違点1-1についての当審の判断
ア. そこで、まず、上記相違点1-1につき検討するに、甲1a発明における酸化物は、上記(1)オ.によれば、「微粉の形態の低融点ガラス組成物」をなしており、
「前記低融点ガラス組成物は、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、
i) 50?85%のTeO_(2)
ii)0.1?30%の銀の酸化物
iii)5?30%の鉛の酸化物及び/又は亜鉛の酸化物
iv)任意に、0.1?44.9%のMg、Ti、Ta、Mo、B、W、
Tl、V、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Zr、Hf、
Si、Ge、Al、Ga、In、P、Sn、Sb、Bi、La、
又は希土類金属の1種以上の酸化物とを含み、但し、組成物にVが含
まれている場合は、5モル%未満の量で存在し、
典型的には、熱膨張計的軟化温度Tsが380℃以下の、半田ガラス組成物である、」とされている。

イ. 上記ア.に示した低融点ガラス組成物は、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、50?85%のTeO_(2)を含んでいるが、上記ア.のような記載では、低融点ガラス組成物を構成する具体的組成が確定できず、低融点ガラス組成物の1モル当たりの重量を確定することができないため、TeO_(2)の含有量を重量%に換算することができない。

ウ. そこで、低融点ガラス組成物を構成する具体的組成についての記載の有無につき、甲第1号証を参照してみるに、上記1.(1g)には、実施例18として、TeO_(2) 74.42モル%、PbO 4.65モル%、Ag_(2)O 13.95モル%、ZnO 6.98モル%からなり、熱膨張計的軟化温度(以下、単に「軟化温度」という。)Tsが235℃で、熱膨張係数TCEが215×10^(-7)である低融点ガラス組成物、すなわち、軟化温度Tsが380℃以下の半田ガラス組成物(以下、単に「半田ガラス組成物」という。)が記載されている。

エ. ここで、上記ウ.に示した半田ガラス組成物について、TeO_(2)、PbO、Ag_(2)O、ZnOについての1モル当たりの重量は、それぞれ、159.6、 223.2、 231.8、 81.39であることを考慮して、重量%に換算したTeO_(2)の含有量を求めると、次の式により、71.05重量%であることが分かる。
そして、これにより、上記1.(1g)に実施例18として記載されている半田ガラス組成物は、本件訂正発明1の「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含」むとの発明特定事項を備えていないことが明らかとなる。

重量%に換算したTeO_(2)の含有量=
74.42×159.6/(74.42×159.6+4.65×223.2+13.95×231.8+6.98×81.39)= 71.05

オ. また、甲第1号証には、上記1.(1h)に、実施例1?8の半田ガラス組成物についての記載があり、これらの低融点ガラス組成物について、上記エ.と同様にして、重量%に換算したTeO_(2)の含有量を求めると、実施例1?8のうちの、実施例3?4の半田ガラス組成物は、いずれも、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含」むとの特定事項を備えていることが明らかとなる。
すなわち、実施例3としての、TeO_(2) 70モル%、PbO 15モル%、Ag_(2)O 15モル%からなり、軟化温度Tsが250℃で、熱膨張係数TCEが228×10^(-7)である半田ガラス組成物は、TeO_(2) 62重量%、PbO 19重量%、Ag_(2)O 19重量%からなり、
また、実施例4としての、TeO_(2) 70モル%、PbO 5モル%、Ag_(2)O 25モル%からなり、軟化温度Tsが310℃で、熱膨張係数TCEが246×10^(-7)である半田ガラス組成物は、TeO_(2) 62重量%、PbO 6重量%、Ag_(2)O 32重量%からなることから、
実施例3?4として記載されている半田ガラス組成物は、いずれも、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含」むとの特定事項を備えていることが明らかとなるし、また、これらの半田ガラス組成物は、いずれも、TeO_(2)とPbOとAg_(2)Oとを含んでいることから、テルル-鉛-銀-酸化物であるといえる。

カ. さらに、甲第1号証には、上記1.(1i)に、実施例9?17の低融点ガラス組成物についての記載があり、実施例2と実施例8のそれぞれの3酸化物ガラスに、任意に添加される、MoO_(3)、WO_(3)等の第4の酸化物を1モル%、5モル%、7.5モル%、10モル%それぞれ添加した低融点ガラス組成物について、軟化温度Tsと熱膨張係数TECとを確認すると、MoO_(3)、WO_(3)等の第4の酸化物を添加した、実施例9?17の低融点ガラス組成物は、3酸化物ガラスに添加した成分とその添加量に応じて、3酸化物ガラスよりも、軟化温度Tsが少し上昇し、熱膨張係数TECが少し低減する傾向にあるものの、軟化温度Tsが380℃以下との要件を満たしているから、半田ガラス組成物であることが把握される。

キ. 甲第1号証には、上記オ.?カ.での検討からすると、甲1a発明における半田ガラス組成物として、実施例3?4のテルル-鉛-銀-酸化物に、任意にMoO_(3)、WO_(3)等の第4の酸化物を、例えば、5モル%添加した半田ガラス組成物であって、軟化温度Tsが実施例3の250℃や実施例4の310℃から少し上昇し、熱膨張係数TECが実施例3の228×10^(-7)や実施例4の246×10^(-7)から少し低減した半田ガラス組成物を用いることが記載されているといえるところ、上記ア.に示したとおり、甲1a発明は、半田ガラス組成物として、任意に添加するの第4の酸化物としてLiの酸化物を用いるものを含んでいる。

ク. 上記オ.?キ.での検討を踏まえると、甲1a発明は、半田ガラス組成物として、実施例3?4のテルル-鉛-銀-酸化物に、任意にLiの酸化物を5モル%添加したものを含んでいるところ、当該半田ガラス組成物は、テルル-鉛-銀-酸化物にLiの酸化物を添加したものであるから、テルル-鉛-銀-リチウム-酸化物といえ、そして、当該酸化物は、酸化鉛と酸化テルルと酸化リチウムとを含んでいるから、鉛-テルル-リチウム-酸化物の一態様である。
そして、それらの半田ガラス組成物は、具体的には、
実施例3のテルル-鉛-銀-酸化物に任意にLiの酸化物を5モル%添加したものは、TeO_(2) 70モル%、PbO 15モル%、Ag_(2)O 15モル%からなる半田ガラス組成物に、任意にLi_(2)Oを5モル%添加したものであるから、その添加の結果、
TeO_(2) 66.7モル%、PbO 14.3モル%、Ag_(2)O 14.3モル%、Li_(2)O 4.8モル%からなる、半田ガラス組成物となるところ、
Li_(2)Oについての1モル当たりの重量が29.88であることを考慮して、上記エ.と同様にして重量%に換算すると、
TeO_(2) 61.6重量%、PbO 18.5重量%、Ag_(2)O 19.2重量%、Li_(2)O 0.8重量%からなる半田ガラス組成物であることが分かるし、
実施例4のテルル-鉛-銀-酸化物に任意にLiの酸化物を5モル%添加したものは、TeO_(2) 70モル%、PbO 5モル%、Ag_(2)O 25モル%からなる半田ガラス組成物に、任意にLi_(2)Oを5モル%添加したものであるから、その添加の結果、
TeO_(2) 66.7モル%、PbO 4.8モル%、Ag_(2)O 23.8モル%、Li_(2)O 4.8モル%からなる、半田ガラス組成物となるところ、
Li_(2)Oについての1モル当たりの重量が29.88であることを考慮して、上記エ.と同様にして重量%に換算すると、
TeO_(2) 61.3重量%、PbO 6.1重量%、Ag_(2)O 31.8重量%、Li_(2)O 0.8重量%からなる半田ガラス組成物であることが分かり、
いずれの半田ガラスも、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含」むとの特定事項を備えていることが明らかとなる。
してみると、甲1a発明は、半田ガラス組成物が23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含むテルル-鉛-銀-リチウム-酸化物となる、厚膜ペーストを含んでいるといえ、上記相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えていることとなる。

ケ. よって、上記相違点1-1は実質的な相違点とはいえない。


(3-2) 上記相違点1-2についての当審の判断
サ. 次に、上記相違点1-2につき検討するに、甲1a発明の厚膜ペーストは、上記(1)オ.に示したとおり、軟化温度Tsが380℃以下の半田ガラス組成物を備えており、そして、甲第1号証には、上記1.の(1a)?(1d)によれば、ガラス組成物が、2つのガラスの間、またはガラス、金属、またはセラミック材料の組み合わせの間の接着層を形成する半田ガラスとして有用であることから、結合される基板表面に適用され、ガラスが溶融して結合を形成するために、300?450℃の範囲の温度に加熱されて、前記ガラスが接着結合として働く、ダイアタッチと同様の電子用途に効率的に使用されるとされている。

シ. 甲第1号証には、上記1.の(1e)のように、「金属-セラミック混合物」は、「厚膜」導電ペーストのような電子用途及びアルミナのようなセラミック基板と半導体装置とを結合するダイアタッチ用途に、好適である。」との記載も見受けられるものの、上記サ.に示した甲第1号証の記載事項、及び、上記1.の(1j)に示される甲第1号証の特許請求の範囲の記載を勘案すると、上記1.の(1e)の「「厚膜」導電ペーストのような電子用途」とは、セラミック基板と半導体装置とを結合するダイアタッチ用途と同様の電子用途であり、セラミック基板と半導体装置とを「厚膜」導電ペーストで結合する電子用途を意味していると解される。

ス. また、甲第1号証全体の記載を参照しても、甲1a発明の厚膜ペーストが、「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するため」に用いられるとの具体的な記載は見当たらない。

セ. 上記2.の(9ア)?(9ウ)によれば、厚膜組成物は、導体である機能相、ガラスであるバインダー及びスクリーン印刷を可能にするビヒクルを主要成分として含有するところ、上記(1)オ.に示したとおり、甲1a発明の厚膜ペーストも、フレーク状又は粉末状の金属充填剤と半田ガラス組成物と有機ビヒクルと主要成分として含有していることから、厚膜組成物に属すると認められ、そして、その厚膜組成物は、上記2.の(9ア)?(9ウ)によれば、太陽電池デバイスを含む、電子工業の全ての分野(軍事、工業、データ処理、医療、自動車、電気通信及び消費者)において、セラミック基板上に導体、抵抗体及びその他の受動回路素子を形成するために使用され、ニーズに合うように材料開発されてきたとの事項が技術常識とされているものの、例えば、上記2.の(9ウ)に示されている、厚膜組成物のピーク焼成温度は、通常、600℃から1000℃の間に設定されるとの事項やバインダーはアルミノシリケートやボロシリケート等のガラスであるとの事項は、上記サ.に示した、甲1a発明の厚膜ペーストについての、300?450℃の範囲の温度に加熱されて、前記ガラスが接着結合として働くとの事項とは整合しておらず、上記2.の(9ア)?(9ウ)に記載される、太陽電池デバイスを含む、電子工業の全て分野において使用される等の事項がそのまま、甲1a発明の厚膜ペーストに当てはめられるとはいえない。

ソ. また、上記2.の(8)によれば、厚膜ペーストが焼付け型の銀系の厚膜ペーストである場合、通常、焼成温度が比較的低い(600?850℃)タイプについては、太陽電池デバイスの前面電極である、シリコン太陽電池のフロントグリッドとして推奨されているが、このためには、ガラス組成物が400?600℃の範囲内のガラス軟化温度を有するようにする必要があるとの事項が技術常識とされているから、上記サ.に示したような、軟化温度Tsが380℃以下の半田ガラス組成物を備えており、300?450℃の範囲の温度に加熱されて、前記ガラスが接着結合として働く、甲1a発明の厚膜ペーストは、焼付け型の銀系の厚膜ペーストであるとはいえない。

タ. 上記シ.?ソ.での検討を踏まえると、甲1a発明の厚膜ペーストが、「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するため」に用いられることは、甲第1号証には記載も示唆もされていないといえるため、上記相違点2は実質的な相違点である。

(4) 小括
以上の検討により、本件訂正発明1は甲第1号証に記載された発明と同一とはいえず、[無効理由1]によっては、本件訂正発明1の特許を無効とすることはできない。


4.[無効理由2]について
(1) 上記第4の1.の[無効理由2](1)に示した、本件訂正発明1に関する無効理由について検討する。

(1-1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証に記載された発明は、上記3.の(1)で検討したとおりのものであるところ、上記3.の(2)に示したように、「金属充填半田ガラスペースト」は「厚膜」導電ペーストに好適とされているから、「金属充填半田ガラスペースト」を「厚膜導電ペースト」と読み替えると、次のとおりのものである。
「固形成分が60?95%の範囲内となるような量で有機ビヒクルを付加的に含む、厚膜導電ペーストであって、
前記固形成分は、25?95重量%のフレーク状又は粉末状の金属充填剤と、5?75重量%の微粉の形態の酸化物の低融点ガラス組成物とからなり、
前記低融点ガラス組成物は、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、
i) 50?85%のTeO_(2)
ii)0.1?30%の銀の酸化物
iii)5?30%の鉛の酸化物及び/又は亜鉛の酸化物
iv)任意に、0.1?44.9%のMg、Ti、Ta、Mo、B、W、
Tl、V、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Zr、Hf、
Si、Ge、Al、Ga、In、P、Sn、Sb、Bi、La、又は
希土類金属の1種以上の酸化物とを含み、但し、組成物にVが含まれて
いる場合は、5モル%未満の量で存在し、
典型的には、熱膨張計的軟化温度Tsが380℃以下の、半田ガラス組成物である、
厚膜導電ペースト。」に係る発明(以下、「甲1b発明」という。)


(1-2) 本件訂正発明1と甲1b発明との対比・判断
ア. 本件訂正発明1と甲1b発明とを対比するに、上記3.(2)での検討と同様にして、両者は、次に示す相違点1-3?1-4の点で相違し、その余の点で一致していると認められる。

相違点1-3: 酸化物が、本件訂正発明1では「鉛-テルル-リチウム-酸化物」であって、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含」むのに対し、甲1b発明では、微粉の形態の酸化物の低融点ガラス組成物であって、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで50?85%のTeO_(2)を含むものの、「鉛-テルル-リチウム-酸化物」であるのか否かが明らかでないし、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含むのか否かが明らかでない点。

相違点1-4: 厚膜ペーストが、本件訂正発明1では「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための」ものであるのに対し、甲1b発明では、「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための」ものであるのか否かが明らかでない点。


イ. 上記相違点1-3につき検討するに、その相違点は上記相違点1-1と同じ相違点であり、当該相違点については、上記3.(3-1)ア.?ク.での検討と同様にして、甲第1号証には、甲1b発明における半田ガラス組成物が、
実施例3のテルル-鉛-銀-酸化物に任意にLiの酸化物を5モル%添加した、TeO_(2) 61.6重量%、PbO 18.5重量%、Ag_(2)O 19.2重量%、Li_(2)O 0.8重量%からなる半田ガラス組成物である場合、及び、
実施例4のテルル-鉛-銀-酸化物に任意にLiの酸化物を5モル%添加した、TeO_(2) 61.3重量%、PbO 6.1重量%、Ag_(2)O 31.8重量%、Li_(2)O 0.8重量%からなる半田ガラス組成物である場合(以下、甲1b発明における半田ガラス組成物がこれらの半田ガラス組成物のいずれかである場合を「甲1b’発明」という。)も記載されているところ、
このような甲1b’発明において半田ガラス組成物は、テルル-鉛-銀-酸化物にリチウム酸化物を添加したものであるから、テルル-鉛-銀-リチウム-酸化物といえ、そして、当該酸化物は、酸化鉛と酸化テルルと酸化リチウムとを含んでいるから、鉛-テルル-リチウム-酸化物の一態様であるし、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含」むとの特定事項を備えているから、甲1b’発明は、上記相違点1-3に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えていることとなる。

ウ. よって、上記相違点1-3は実質的な相違点とはいえない。


エ. 次に、上記相違点1-4につき検討するに、その相違点は上記相違点1-2と同じ相違点であり、上記3.(3-2)サ.?ソ.での検討と同様にして、甲1b’発明を含む、甲1b発明の厚膜ペーストが、「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するため」に用いられることは、甲第1号証には記載も示唆もされていないから、上記相違点1-4は実質的な相違点である。

オ. そうすると、[無効理由2]により本件訂正発明1の特許を無効とするには、上記相違点1-3に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備える、甲1b’発明の厚膜ペーストを含む、甲1b発明の厚膜ペーストに、上記相違点1-4に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えさせることが、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到できたといえるか、また、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できたといえる必要があるので、これらの観点から、以下、検討する。

カ. ファイアースルーとは、本件の明細書にも記載されているように、p型シリコンでなる半導体基板の前面全体にn型拡散層が形成され、そのn型拡散層の上に反射防止層が形成された、太陽電池デバイスに対し、前記反射防止層の上に電極を形成するにあたって、前記反射防止層の上に印刷した厚膜ペーストが焼成の間に焼結して前記反射防止層を貫通し、それによって前記n型拡散層との電気的接触を達成するプロセスのことであるとされており(【0044】?【0052】)、そして、ファイアースルーを行うために用いられる厚膜ペーストが、上記相違点1-4に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えた厚膜ペーストである。
そうすると、上記オ.の観点からの検討は、甲1b’発明の厚膜ペーストを含む、甲1b発明の厚膜ペーストを、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から、あるいは、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから、ファイアースルーを行うために用いることが容易に想到できたといえるか否かの検討を行うこととなる。

キ. ここで、甲1b’発明の厚膜ペーストは、上記イ.に示したように、半田ガラス組成物として、甲第1号証の実施例3のテルル-鉛-銀-酸化物に任意にLiの酸化物を5モル%添加した、半田ガラス組成物、あるいは、
甲第1号証の実施例4のテルル-鉛-銀-酸化物に任意にLiの酸化物を5モル%添加した、半田ガラス組成物を備えたものであるところ、
Liの酸化物は任意に添加された成分にすぎないから、甲1b’発明の厚膜ペーストをファイアースルーを行うために用いることができるというには、Liの酸化物が添加されていない場合にも、ファイアースルーを行うために用いることができるといえる必要がある。
そのため、甲1b’発明の厚膜ペーストが備える半田ガラス組成物にLiの酸化物が添加されていない場合、すなわち、甲1b発明の厚膜ペーストが半田ガラス組成物として、甲第1号証の実施例3?4のテルル-鉛-銀-酸化物の半田ガラス組成物を備える場合に、当該厚膜ペーストを、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から、あるいは、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから、ファイアースルーを行うために用いることが容易に想到できたといえるか否かの検討を行う必要がある。

ク. ところで、上記2.の末尾で指摘したとおり、甲第2、4、5、9?16号証のうち、甲第9?10、13?14号証は、本件特許に係る出願の優先権主張の日前に公知の文献とはいえないので、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術との主張について、周知技術の内容把握は、実質的には、甲第2、4、5、11?12、15?16号証から行うこととなる。

ケ. 甲第2、4、5、11?12、15?16号証には、ファイアースルーについて、次のような事項が記載されている。
(ケ-1) 甲第2号証には、上記1.(2a)?(2g)によれば、
反射防止膜をファイアースルーして半導体基板と表面電極との良好なオーミック接触を得ることのできる導電性ペーストは、そのペーストに含まれる低融点ガラスの組成が、重量%で、SiO_(2) 1?10、B_(2)O_(3) 5?15、Al_(2)O_(3) 1?15、PbO 68?89、CuO 0?10、TiO_(2) 0?10含むSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスである、(以下、「低融点ガラスの組成が所定組成である」という。)導電性ペーストであり、前記低融点ガラスの組成が所定組成である実施例1?5の導電性ペースト、及び、前記低融点ガラスの組成が所定組成と異なる比較例1?4の導電性ペーストを、太陽電池デバイスの窒化珪素でなる反射防止膜の上にスクリーン印刷して、電気炉で800℃の条件下で焼成したところ、実施例1?5の導電性ペーストを用いた場合には、前記反射防止膜をファイアースルーして半導体基板と表面電極との良好なオーミック接触を得ることができたものの、前記低融点ガラスの組成が所定組成ではない比較例3?4の導電性ペーストを用いた場合には、半導体基板と表面電極とのオーミック接触を得ることができなかったという事項が記載されている。

(ケ-2) 甲第4号証には、上記2.(2ア)?(2オ)によれば、
導電性銀粉末と、粒径が7ナノメートルから100ナノメートル未満の範囲内にあるZn含有添加剤と、ガラスフリットとが、有機媒体中に分散されている、太陽電池デバイスの正面に使用される導電性銀ペーストであって、前記ガラスフリットは、全ガラスフリットに対して、SiO_(2)を21?29重量パーセント、Al_(2)O_(3)を0.1?8重量パーセント、PbOを50?62重量パーセント、B_(2)O_(3)を7?10重量パーセント、ZnOを0?4重量パーセント、Li_(2)Oを0?0.1重量パーセント、およびTiO_(2)を2?7重量パーセント含むという、導電性銀ペーストを、窒化シリコン膜上にスクリーン印刷し、700から975℃の温度範囲で、酸素と窒素との混合ガスを流通させながら、赤外炉内で焼成することで、前記導電性銀ペーストが、窒化シリコンと反応しかつ窒化シリコン膜に浸透することが可能となるという事項が記載されている。

(ケ-3) 甲第5号証には、上記1.(3a)?(3f)によれば、
太陽電池の前面コンタクトを製造するための、ペースト組成物であって、固体部分及び有機部分を含み、該固体部分が約85?約99重量%の銀成分、及び、約1?約15重量%のガラス成分を含み、該ガラス成分が約15?約75mol%のPbO、約5?50mol%のSiO_(2)を含み、B_(2)O_(3)を含まない、ペースト組成物を、シリコン基板に塗布して乾燥させ、炉設定温度約650?950℃で焼成して金属を焼結させ、その焼成中、反射防止層が前記ガラスによって酸化、腐食されて、シリコンへのコンタクトを形成する工程が含まれるという事項が記載されている。

(ケ-4) 甲第11号証には、上記2.(4ア)?(4イ)によれば、
絶縁基板としてのガラス基板3上に形成された所定のパターンを有する導体配線層5、5aと、陽極導体層9および蛍光体層11からなる陽極13との導通接続は、黒色を呈している絶縁体層7の所定位置に形成されているスルーホール7aを通して行われているという、蛍光表示管1の構成が記載されているだけであり、ファイアースルーについて事項は記載されていない。

(ケ-5) 甲第12号証には、上記2.(5ア)?(5オ)によれば、
太陽電池の前面コンタクトを作成するための、厚膜ペーストであって、固体部分と有機部分とを含み、該固体部分が、銀を含む導電性金属成分約85?約99重量%と、Bi_(2)O_(3)約5?約85モル%とSiO_(2)約1?約70モル%とを含むガラス成分約1?約15重量%と、を含み、該ガラス成分がPbOを含まない、厚膜ペーストを、シリコン基板に塗布し、乾燥し、炉設定温度約650?950℃で空気中で焼成して金属を焼結し、焼成中、反射防止SiN_(X)層がガラスによって酸化、腐食され、Si基板との反応によってAg/Si単独系統が形成されるという事項が記載されている。

(ケ-6) 甲第15号証には、上記2.(6ア)?(6エ)によれば、今日の産業における結晶シリコン光起電力電池は、通常、光の吸収を促進し、光起電力電池の効率を向上するための、反射防止膜で被覆されているが、その反射防止膜は絶縁体としても作用するので、基板とオーミック接触を有する金属接点を形成するために、導電性インクはガラスフリットを包含しており、ガラスフリットが液化した場合、反射防止膜を一部の金属粒子や基板と同様に溶解し、温度が低下した時点で、融解した銀及び融解又は溶解した基板は液相を通じて再結晶化し、その結果、銀の結晶子の一部は反射防止層を突き抜け、基板との抵抗接点を形成することができるところ、当該導電性インクが、TeO_(2)、B_(2)O_(3)並びにBi_(2)O_(3)及びSiO_(2)の1種以上を含み、且つ意図的に添加された鉛を含まないガラスフリットを含んでいると、そのガラスフリットは、通常、光起電性製品において反射防止層として使用される、SiO_(2)、TiO_(2)、SiNx等の難溶性物質を溶解する傾向があるという事項が記載されている。

(ケ-7) 甲第16号証には、上記2.(7ア)?(7オ)によれば、太陽電池のフロントグリッドを印刷するための導電性ペーストは、Ag粉末と、酸化鉛等の金属酸化物と二酸化珪素との混合物であるガラスフリット及びGe等の単体金属である改質剤と、揮発性溶媒と、不揮発性ポリマー又は樹脂とで構成され、その導電性ペーストは、太陽電池の窒化珪素反射防止膜上にスクリーン印刷され、約150℃で乾燥されて揮発性溶媒が蒸発され、300?400℃でバーンアウトされて不揮発性ポリマー又は樹脂が除去され、700?800℃で焼成されて溶融Agを含む溶融ガラスが窒化珪素反射膜をエッチングしてSi表面に達し、次いで、ガラス中のAgが結晶化形態でSi表面上に析出して接点が形成されるという事項が記載され、前記接点の形成モデル、及び、前記接点の形成要件が詳細に記載されている。


コ. 上記(ケ-1)?(ケ-7)を参照すると、厚膜ペーストをファイアースルーを行うために用いることは周知であるとしても、ファイアースルーを行うためには、太陽電池デバイスの難溶性の反射防止層の上に印刷された、厚膜ペーストが焼成の間に焼結し、前記厚膜ペーストに含有されていた溶融ガラスが前記難溶性の反射防止層を溶解して貫通する必要があるため、どのような厚膜ペーストであってもファイアースルーを行うために用いることができるというわけではなくて、例えば、上記(ケ-1)にも明示されるように、厚膜ペーストに含まれる低融点ガラスの組成が所定組成である必要があるといえる。また、上記2.(8)に示されている、太陽電池用として得られる厚膜ペーストの性質の制御は、容易な作業ではなく、マイクロ構造⇔性質⇔処理の関係の十分な理解が必要になるとの技術常識を考慮すると、ファイアースルーを行うために用いられていない厚膜ペーストを、ファイアースルーを行うために用いることは容易なことではないといえる。

サ. 甲1b発明の厚膜ペーストが半田ガラス組成物として、上記キ.に示した、甲第1号証の実施例3のテルル-鉛-銀-酸化物の半田ガラス組成物を備えるとは、具体的には、上記3.(3-1)オ.に示したとおり、
TeO_(2) 70モル%、PbO 15モル%、Ag_(2)O 15モル%からなるガラス組成物、重量%に換算すると、
TeO_(2) 62重量%、PbO 19重量%、Ag_(2)O 19重量%からなるガラス組成物を備えることであるし、
また、甲1b発明の厚膜ペーストが半田ガラス組成物として、上記キ.に示した、甲第1号証の実施例4のテルル-鉛-銀-酸化物の半田ガラス組成物を備えるとは、具体的には、上記3.(3-1)オ.に示したとおり、
TeO_(2) 70モル%、PbO 5モル%、Ag_(2)O 25モル%からなるガラス組成物、重量%に換算すると、
TeO_(2) 62重量%、PbO 6重量%、Ag_(2)O 32重量%からなるガラス組成物を備えることであるところ、
甲第2、4、5、11?12、15?16号証を参照しても、甲第1号証の実施例3?4の半田ガラス組成物を備える、甲1b発明の厚膜ペーストをファイアースルーを行うために用いることが容易に想到できたとはいえない。

すなわち、ファイアースルーを行うために用いることができる厚膜ペーストに含まれるガラスについて、
上記(ケ-1)を参照すると、甲第2号証では、重量%で、SiO_(2) を1?10、B_(2)O_(3) を5?15、Al_(2)O_(3) を1?15、PbOを 68?89、CuOを 0?10、TiO_(2) を0?10含むガラスとされており、
上記(ケ-2)を参照すると、甲第4号証では、重量%で、SiO_(2)を21?29、Al_(2)O_(3)を0.1?8、PbOを50?62、B_(2)O_(3)を7?10、ZnOを0?4、Li_(2)Oを0?0.1、およびTiO_(2)を2?7含むガラスとされており、
上記(ケ-3)を参照すると、甲第5号証では、モル%で、PbOを約15?約75、SiO_(2)を約5?50含み、B_(2)O_(3)を含まないガラスとされており、
上記(ケ-4)を参照すると、甲第11号証では、ファイアースルーを行うために用いることができる厚膜ペーストは記載されておらず、
上記(ケ-5)を参照すると、甲第12号証では、モル%で、Bi_(2)O_(3)を約5?約85、SiO_(2)を約1?約70含み、PbOを含まないガラスとされており、
上記(ケ-6)を参照すると、甲第15号証では、TeO_(2)、B_(2)O_(3)並びにBi_(2)O_(3)及びSiO_(2)の1種以上を含み、且つ意図的に添加された鉛を含まないガラスとされており、
上記(ケ-7)を参照すると、甲第16号証では、酸化鉛等の金属酸化物と二酸化珪素との混合物であるガラスとされていることから、
甲第2、4、5、11?12、15?16号証のいずれにも、甲第1号証の実施例3?4のテルル-鉛-銀-酸化物の半田ガラス組成物が、ファイアースルーを行うために用いることができる厚膜ペーストに含まれる所定組成のガラスに属することは記載されていない。
そうすると、甲第1号証の実施例3?4の半田ガラス組成物を備える、甲1b発明の厚膜ペーストは、甲第2、4、5、11?12、15?16号証を参照しても、太陽電池用の厚膜ペーストに属するとはいえない。

シ. また、甲1b発明において、実施例3?4の半田ガラス組成物以外のテルル-鉛-銀-酸化物の半田ガラス組成物を備える厚膜ペーストについても、上記サ.の検討と同様にして、甲第2、4、5、11?12、15?16号証を参照しても、太陽電池用の厚膜ペーストに属するとはいえない。

ス. そして、上記コ.に示したように、太陽電池用として得られる厚膜ペーストの性質の制御は、容易な作業ではないとの技術常識を考慮すると、ファイアースルーを行うために用いられてはいない甲1b発明の厚膜ペーストを、ファイアースルーを行うために用いることは容易なことではないといえる。
したがって、甲第2、4、5、11?12、15?16号証を参照しても、甲1b発明の厚膜ペーストは、ファイアースルーを行うために用いることが容易に想到できた厚膜ペーストであるとはいえない。


セ. 上記オ.?ス.の検討を踏まえると、甲1b発明の厚膜ペーストに、上記相違点1-4に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えさせることが、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到できたとはいえない。


ソ. また、甲第3及び7号証には、次のような事項が記載されている。
(ソ-1) 甲第3号証には、上記2.(1ア)?(1オ)によれば、
アルミナ基板上に抵抗器の電極を形成するのに使用される導体ペーストであって、銀、パラジウム、白金の内少なくとも一つの成分からなる導電性粉末100重量部、及び、無機結合材としてPbO:50?60重量%、SiO_(2):25?35重量%、ZrO_(2)、TiO_(2)の合計3?8重量%、及びLi_(2)O、Na_(2)O、K_(2)Oの合計6?9重量%からなるガラス5?20重量部とを、有機ビヒクル中に分散させてなる導体ペーストに関し、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)Oは、ガラスの融点を低下させる効果をもたらすという事項が記載されている。

(ソ-2) 甲第7号証には、上記2.(3)によれば、
精密に形状や表面を加工した型によりプレスして直接製造するモールドプレスにより製造されるレンズにおいて用いられる光学ガラスに関し、アルカリ金属酸化物、とくにLi_(2)O、2価成分ではPbO、ZnOがガラスの軟化温度を低下させるという事項が記載されている。

タ. 甲第3号証には、上記(ソ-1)に示されるように、アルミナ基板上に抵抗器の電極を形成するのに使用される導体ペーストで用いられる、PbO:50?60重量%、SiO_(2):25?35重量%、ZrO_(2)、TiO_(2)の合計3?8重量%含むガラスに関し、Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)Oは、ガラスの融点を低下させる効果をもたらすという事項が、また、甲第7号証には、上記(ソ-2)に示されるように、モールドプレスにより製造されるレンズにおいて用いられる光学ガラスに関し、Li_(2)O、2価成分ではPbO、ZnOがガラスの軟化温度を低下させるという事項が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲1b発明における半田ガラス組成物はテルル-鉛-銀-酸化物の半田ガラス組成物であって、
甲第3号証に記載されるような、PbO:50?60重量%、SiO_(2):25?35重量%、ZrO_(2)、TiO_(2)の合計3?8重量%含むガラスではないし、
甲第7号証に記載されるような、モールドプレスにより製造されるレンズにおいて用いられる光学ガラスでもない。
そのため、甲第3及び7号証に記載の発明を甲1b発明の厚膜ペーストと組み合わせることに合理性はない。
そして、上記オ.?ス.の検討も勘案すると、甲1b発明の厚膜ペーストに、上記相違点1-4に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えさせることが、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できたともいえない。

チ. 上記ソ.?タ.の検討を踏まえると、甲1b発明の厚膜ペーストに、上記相違点1-4に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えさせることが、甲第3及び7号証に記載の発明と甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できたとはいえない。


(1-3) 小括
以上の検討により、本件訂正発明1の特許は、[無効理由2]によっては、無効とすることはできない。


(2) 上記第4の1.の[無効理由2](2)に示した、本件発明2に関する無効理由について検討する。

(2-1) 甲第1号証に記載された発明
ナ. 上記(1-1)に示した甲1b発明の厚膜導電ペーストに関して、甲第1号証には、上記1.(1d)によれば、「本発明の低融点組成物は、…結合される基板表面に適用されてもよいし、あるいは、基板に塗布するために用いられる、ガラスペーストを形成する有機ビヒクルと混合された、ガラス粉末として、結合される基板表面に適用されてもよい。まず最初に、基板は有機ビヒクルが「焼失する」温度まで加熱され、次いで、ガラスが溶融されてシールが形成されるのに十分な温度に加熱される。一般的に、組成物は、ガラスを溶融して結合を形成するために、300?450℃の範囲の温度に加熱される。…本発明のガラスは、ガラスが接着結合の全体または一部として働く、…ダイアタッチ又は同様の電子ペースト製剤に、効率的に使用される。」との記載があり、
上記1.(1e)によれば、「金属-ガラス混合物は、有機ビヒクルと混合したペーストとしてもよい。…金属-ガラス混合物は、「厚膜」導電ペーストのような電子用途及びアルミナのようなセラミック基板と半導体装置とを結合するダイアタッチ用途に、好適である。」との記載があり、
上記1.(1f)によれば、「本発明の半田ガラス及びペーストは、金属-ガラスの又はセラミックの基板上に、通常0.5?500μmの範囲内の厚さで、被覆される。…ダイアタッチ用途の際には、…ダイは、ウエットペーストの中心に位置するように接触され、圧力をかけて設置される…その後、構造物は、有機ビヒクルが「焼失する」ように加熱処理され、その後、低融点ガラス組成物を溶融させるように温度が上げられる。」との記載があり、
また、上記1.(1j)によれば、その特許請求の範囲に、
「…
請求項28. 同じか異なり、ガラス、金属又はセラミックから選択された二つの基板の表面を結合する方法であって、前記方法は、請求項1?14のいずれか一項に記載の低融点ガラス組成物を結合層形成材料として使用することを含む、方法。
請求項29. 請求項28に記載の方法であって、ガラス組成物が、溶融ガラス、成形されたプリフォーム又は有機ビヒクルと混合された粉末化されたガラスとして結合表面に適用される方法。」という発明が記載されている。

ニ. そして、上記1.(1e)の「「厚膜」導電ペーストのような電子用途」とは、上記3.の(3-2)シ.での検討と同様にして、セラミック基板と半導体装置とを「厚膜」導電ペーストで結合する電子用途を意味していると解される。また、ダイアタッチ用途の際の「ダイ」が「半導体装置」を意味していることは技術常識である。

ヌ. 上記ナ.?ニ.の検討から、甲第1号証には、甲1b発明の厚膜導電ペーストの使用方法に注目すると、次の発明が記載されているといえる。
「厚膜導電ペーストが、結合される基板表面上に0.5?500μmの範囲内の厚さで被覆され、そのペーストの中心に位置するように半導体装置が接触されて圧力をかけて設置され、前記基板は、有機ビヒクルが焼失するように加熱処理され、その後、ガラスを溶融して前記基板と前記半導体装置と結合を形成するために、300?450℃の範囲の温度に加熱される方法であって、
前記厚膜導電ペーストは、固形成分が60?95%の範囲内となるような量で有機ビヒクルを付加的に含む、前記厚膜導電ペーストであって、
前記固形成分は、25?95重量%のフレーク状又は粉末状の金属充填剤と、5?75重量%の微粉の形態の酸化物の低融点ガラス組成物とからなり、
前記低融点ガラス組成物は、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、
i) 50?85%のTeO_(2)
ii)0.1?30%の銀の酸化物
iii)5?30%の鉛の酸化物及び/又は亜鉛の酸化物
iv)任意に、0.1?44.9%のMg、Ti、Ta、Mo、B、W、
Tl、V、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Zr、Hf、
Si、Ge、Al、Ga、In、P、Sn、Sb、Bi、La、又は
希土類金属の1種以上の酸化物とを含み、但し、組成物にVが含まれて
いる場合は、5モル%未満の量で存在し、
典型的には、熱膨張計的軟化温度Tsが380℃以下の、半田ガラス組成物である、
前記方法。」に係る発明(以下、「「甲1c発明」という。)


(2-2) 本件発明2と甲1c発明との対比
本件発明2と甲1c発明とを対比するに、甲1c発明における「厚膜導電ペースト」は、上記(1-2)ア.?ウ.での検討を踏まえると、
本件発明2における「厚膜ペースト組成物が、
i)前記組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属またはその誘導体85?99.75重量%と、
ii)固形分に基づいて鉛-テルル-リチウム-酸化物0.25?15重量%と、
iii)有機媒体とを含む」との発明特定事項を備えていると認められる。
してみると、両者は、次に示す相違点1-5の点で相違し、その余の点で一致していると認められる。

相違点1-5:方法が、本件発明2では、「
(a)半導体基板の少なくとも1つの表面上に堆積された1つまたは複数の絶縁膜を含む前記半導体基板を提供する工程と、
(b)厚膜ペースト組成物を前記絶縁膜の少なくとも一部の上に適用して層状構造物を形成する工程と、
(c)前記半導体基板、1つまたは複数の絶縁膜、および厚膜ペーストを焼成して前記厚膜ペーストの前記有機媒体が揮発させられ、1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触している電極を形成する工程とを含む」のに対し、
甲1c発明では、それらの工程を含まない点。


(2-3) 相違点1-5についての当審の判断
本件発明2が備えている上記相違点1-5の発明特定事項は、上記(1-2)カ.に示したとおりの、ファイアースルーというプロセスであるところ、甲第1号証に記載されている厚膜導電ペーストをファイアースルーというプロセスに使用することは、上記(1-2)オ.?ス.での検討と同様にして、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到できたとはいえないし、また、上記(1-2)ソ.?タ.での検討と同様にして、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できたともいえない。

(2-4) 小括
よって、本件発明2の特許は、[無効理由2]によっては、無効とすることはできない。


(3) 上記第4の1.の[無効理由2](3)に示した、本件発明3に関する無効理由について検討する。

(3-1) 甲第1号証に記載された発明
ハ. 上記(1-1)に示した甲1b発明の厚膜導電ペーストを使用して得られる物に関して、甲第1号証には、上記1.(1d)によれば、「本発明の低融点組成物は、…結合される基板表面に適用されてもよいし、あるいは、基板に塗布するために用いられる、ガラスペーストを形成する有機ビヒクルと混合された、ガラス粉末として、結合される基板表面に適用されてもよい。まず最初に、基板は有機ビヒクルが「焼失する」温度まで加熱され、次いで、ガラスが溶融されてシールが形成されるのに十分な温度に加熱される。一般的に、組成物は、ガラスを溶融して結合を形成するために、300?450℃の範囲の温度に加熱される。…本発明のガラスは、ガラスが接着結合の全体または一部として働く、…ダイアタッチ又は同様の電子ペースト製剤に、効率的に使用される。」との記載があり、
上記1.(1e)によれば、「金属-ガラス混合物は、有機ビヒクルと混合したペーストとしてもよい。…金属-ガラス混合物は、「厚膜」導電ペーストのような電子用途及びアルミナのようなセラミック基板と半導体装置とを結合するダイアタッチ用途に、好適である。」との記載があり、
また、上記1.(1j)によれば、その特許請求の範囲に、
「…
請求項25. 請求項1?14のいずれか一項に記載の低融点ガラス組成物によって形成される、ガラス、金属またはセラミックの組み合わせの間の接着層。
請求項26. 請求項25に記載の接着層の少なくとも一つを含む構造物。
…」という発明が記載されている。

ヒ. そして、上記1.(1e)の「「厚膜」導電ペーストのような電子用途」とは、上記3.の(3-2)シ.での検討と同様にして、セラミック基板と半導体装置とを「厚膜」導電ペーストで結合する電子用途を意味していると解される。また、ダイアタッチ用途の際の「ダイ」が「半導体装置」を意味していることは技術常識である。

フ. 上記ハ.?ヒ.の検討から、甲第1号証には、甲1b発明の厚膜導電ペーストを使用して得られる物に注目すると、次の発明が記載されているといえる。
「厚膜導電ペーストによって形成される、セラミック基板と半導体装置との間の接着層の少なくとも一つを含む電子用途の構造物であって、
前記厚膜導電ペーストは、固形成分が60?95%の範囲内となるような量で有機ビヒクルを付加的に含む、前記厚膜導電ペーストであって、
前記固形成分は、25?95重量%のフレーク状又は粉末状の金属充填剤と、5?75重量%の微粉の形態の酸化物の低融点ガラス組成物とからなり、
前記低融点ガラス組成物は、酸化物ベースで計算されるモルパーセントで、
i) 50?85%のTeO_(2)
ii)0.1?30%の銀の酸化物
iii)5?30%の鉛の酸化物及び/又は亜鉛の酸化物
iv)任意に、0.1?44.9%のMg、Ti、Ta、Mo、B、W、
Tl、V、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Zr、Hf、
Si、Ge、Al、Ga、In、P、Sn、Sb、Bi、La、又は
希土類金属の1種以上の酸化物とを含み、但し、組成物にVが含まれて
いる場合は、5モル%未満の量で存在し、
典型的には、熱膨張計的軟化温度Tsが380℃以下の、半田ガラス組成物である、
前記電子用途の構造物。」に係る発明(以下、「「甲1d発明」という。)


(3-2) 本件発明3と甲1d発明との対比
本件発明3と甲1d発明とを対比するに、甲1d発明における「厚膜導電ペーストによって形成される、セラミック基板と半導体装置との間の接着層の少なくとも一つを含む電子用途の構造物」は、上記(1-2)ア.?ウ.での検討を踏まえると、
本件発明3における「伝導性金属と鉛-テルル-リチウム-酸化物とを含む箇所を含む物品。」との発明特定事項を備えていると認められる。
してみると、両者は、次に示す相違点1-6の点で相違し、その余の点で一致していると認められる。

相違点1-6:物品が、本件発明3では、「
(a)半導体基板と、
(b)前記半導体基板上の1つまたは複数の絶縁層と、
(c)前記1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触する電極と
を含む」のに対し、
甲1d発明では、それらを含まない点。

(3-3) 相違点1-6についての当審の判断
本件発明3が備えている上記相違点1-6の発明特定事項は、本件特許の明細書を参照すると、上記(1-2)カ.に示したとおりのファイアースルーを行うために厚膜ペーストを用いることで得られたものであることを特定した事項といえるところ、甲第1号証に記載されている厚膜導電ペーストをファイアースルーを行うために用いることは、上記(1-2)オ.?ス.での検討と同様にして、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到できたとはいえないし、また、上記(1-2)ソ.?タ.での検討と同様にして、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できたともいえない。
そうすると、甲1d発明に上記相違点1-6に係る本件発明3の発明特定事項を備えさせることは、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術から容易に想到できたとはいえないし、また、甲第1号証に記載された発明と、甲第3及び7号証に記載の発明と、甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアスルーの周知技術とから容易に想到できたともいえない。

(3-4) 小括
よって、本件発明3の特許は、[無効理由2]によっては、無効とすることはできない。


(4) まとめ
以上の検討により、[無効理由2]によっては、本件訂正発明1、本件発明2、及び、本件発明3の特許を無効とすることはできない。


5.[無効理由3]について
(1) 上記第4の1.の[無効理由3](1)に示した、本件訂正発明1に関する無効理由について検討する。

(1-1)甲第2号証に記載された発明
ア. 上記1.(2a)からすると、甲第2号証には、「多結晶Si太陽電池用の導電性ペーストにおいて、該ペーストに含まれる低融点ガラスの組成が、質量%で
SiO_(2) 1?10、
B_(2)O_(3) 5?15、
Al_(2)O_(3) 1?15、
PbO 68?89、
CuO 0?10、
TiO_(2) 0?10
含むSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスであることを特徴とする導電性ペースト」に係る発明が記載されていると認められる。

イ. 上記ア.に示した導電性ペーストに係る発明は、上記1.(2b)?(2d)によれば、多結晶Si太陽電池に形成される受光面電極において、良好なオーミック接触が得られる導電性ペーストに関し、受光面電極を形成する場合に、反射防止膜をファイアースルーして半導体基板と受光面電極との良好なオーミック接触をえることのできる導電性ペーストを提供することを発明が解決しようとする課題としており、その課題を、ペーストに含まれる低融点ガラスを上記ア.に示した所定組成のSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスにすることで解決したという発明であって、そして、上記1.(2f)によれば、その導電性ペーストは、具体的には、αテルピネオールとブチルカルビトールアセテートからなるペーストオイルにバインダーとしてのエチルセルロースと上記ア.に示した低融点ガラスの粉、導電性粉末としての銀粉末を所定比で混合し、粘度500±50ポイズ程度に調製した導電性ペーストであるとされており、また、ペーストに含まれる低融点ガラスが上記ア.に示した所定組成のSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスではない比較例の導電性ペーストは、多結晶Si太陽電池用の導電性ペーストとしては適用し得ないとされている。

ウ. 上記ア.?イ.の検討から、甲第2号証には、導電性ペーストに注目すると、次の発明が記載されていえるといえる。
「多結晶Si太陽電池の受光面電極形成用の導電性ペーストであり、αテルピネオールとブチルカルビトールアセテートからなるペーストオイルにバインダーとしてのエチルセルロースと低融点ガラスの粉、導電性粉末としての銀粉末を所定比で混合し、粘度500±50ポイズ程度に調製した導電性ペーストであって、
前記低融点ガラスが、質量%で、SiO_(2) を1?10、B_(2)O_(3) を5?15、Al_(2)O_(3) を1?15、PbOを68?89、CuOを0?10、TiO_(2)を0?10含むSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスである、導電性ペースト。」に係る発明(以下、「甲2a発明」という。)。


(1-2) 本件訂正発明1と甲2a発明との対比
本件訂正発明1と甲2a発明と対比するに、上記1.(9ウ)に示される、厚膜組成物は、通常、機能相、バインダー及びビヒクルを含有するとの技術常識を考慮すると、甲2a発明における「導電性ペースト」は、機能相である「導電性粉末としての銀粉末」、バインダーである「エチルセルロースと低融点ガラスの粉」及びビヒクルである「αテルピネオールとブチルカルビトールアセテートからなるペーストオイル」を含有しているから、厚膜組成物に属しており、本件訂正発明1における「厚膜ペースト組成物」に相当するといえ、また、甲2a発明における「結晶Si太陽電池の受光面電極形成用の」、「αテルピネオールとブチルカルビトールアセテートからなるペーストオイル」、「低融点ガラスの粉」と「導電性粉末としての銀粉末」は、それぞれ、本件訂正発明1における「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための」、「有機媒体」、「固形分」に相当するといえ、甲2a発明における「低融点ガラスの粉」、「導電性粉末としての銀粉末」は、それぞれ、本件訂正発明1における「酸化物」、「伝導性金属」に相当するといえる。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<一致点>
a)伝導性金属と、
b)酸化物と、
c)有機媒体と
を含み、
1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物。

<相違点>
相違点2-1:厚膜ペースト組成物中に、本件訂正発明1では、「全固形分に基づいて伝導性金属85?99.75重量%と、」「固形分に基づいて酸化物0.25?15重量%と、」「を含む」のに対して、甲2a発明では、固形分が低融点ガラスの粉と導電性粉末としての銀粉末とからなり、前記低融点ガラスの粉と前記銀粉末とを所定比で混合しているものの、それらの具体的な混合比が不明である点。

相違点2-2:酸化物が、本件訂正発明1では、「鉛-テルル-リチウム-酸化物」であって、「前記鉛-テルル-リチウム-酸化物が23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含む」のに対して、甲2a発明では、SiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系であり、鉛-テルル-リチウム-酸化物ではない点。


(1-3) 上記相違点2-1についての当審の判断
カ. 上記1.(2a)?(2f)を参照しても、甲2a発明の1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物(以下、「甲2a発明の厚膜ペースト」という。)における、低融点ガラスの粉と導電性粉末としての銀粉末との具体的な混合比は、甲第2号証からでは、明らかではない。

キ. そこで、甲第4、5、9?16号証に記載のファイアースルーに用いられる厚膜ペーストに関する周知技術が甲2a発明に適用し得る技術事項かにつき、検討する。

ク. ここで、上記4.(1-2)ク.での指摘と同様、甲第4、5、9?16号証のうち、甲第9?10、13?14号証は、本件特許に係る出願の優先権主張の日前に公知の文献とはいえないので、甲第4、5、9?16号証に記載のファイアースルーに用いられる厚膜ペーストに関する周知技術について、周知技術の内容把握は、実質的には、甲第4、5、11?12、15?16号証から行うこととなる。

ケ. また、甲2a発明は、上記(1-1)イ.に示したように、厚膜ペーストに含まれる低融点ガラスを上記(1-1)ア.に示した所定組成のSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスにするという発明であるから、甲2a発明に適用し得る厚膜ペーストに関する技術事項は、上記(1-1)ア.に示した所定組成のSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラス(以下、「甲第2号証に記載された所定組成のガラス」という。)と整合するガラスを備える、厚膜ペーストに限られているといえる。

コ. 甲第4、5、11?12、15?16号証には、ファイアースルーに用いられる厚膜ペーストに関し、次の技術事項が記載されている。
(コ-1) 甲第4号証に記載されているのは、上記2.(2ア)?(2イ)によれば、太陽電池デバイスの正面に使用される導電性銀ペーストにおけるガラスフリット組成物が、重量%で、SiO_(2)を21?29、Al_(2)O_(3)を0.1?8、PbOを50?62、B_(2)O_(3)を7?10、ZnOを0?4、Li_(2)Oを0?0.1、およびTiO_(2)を2?7含むペーストに関する技術事項であるから、SiO_(2)とPbOの含有範囲が甲第2号証に記載された所定組成のガラスとは明らかに異なる。

(コ-2) 甲第5号証に記載されているのは、上記1.(3a)?(3e)によれば、太陽電池の前面コンタクトの製造に用いられる導電性ペーストにおける固体部分が約85?約99重量%の銀成分、及び、約1?約15重量%のガラス成分を含み、該ガラス成分が、約15?約75mol%のPbO、約5?50mol%のSiO_(2)を含み、B_(2)O_(3)を含まないペーストに関する技術事項であり、B_(2)O_(3)の含有量が甲第2号証に記載された所定組成のガラスとは明らかに異なるし、また、上記1.(3f)に示されている具体的ガラス組成物のうち、前記技術事項にもかかわらずB_(2)O_(3)を含んでいる、mol%で、PbOが61.5、SiOが27.2、Al_(2)O_(3)が5.6、B_(2)O_(3)が2.4、ZrO_(2)が2.0、Sb_(2)O_(5)が1.4からなるガラス組成物Cについて、上記3.(3-1)エ.と同じ要領で重量%に換算してみても、PbOが81.7、SiOが9.7、Al_(2)O_(3)が3.4、B_(2)O_(3)が1.0、ZrO_(2)が1.5、Sb_(2)O_(5)が2.7からなるガラス組成であるから、B_(2)O_(3)の含有量が甲第2号証に記載された所定組成のガラスとは明らかに異なる。

(コ-3) 甲第11号証に記載の技術事項は、上記2.(4ア)?(4イ)によれば、蛍光表示管の製造にあたって、スルホールを通じて導体配線層と導通接続させる陽極導体層に関する技術事項であって、ファイアースルーに用いられる厚膜ペーストに関する技術事項ではない。

(コ-4) 甲第12号証に記載の技術事項は、上記2.(5ア)?(5ウ)によれば、太陽電池の前面コンタクトの形成に使用される厚膜フィルムペーストにおける固体部分が、導電性金属成分約85?約99重量%と、ガラス成分約1?約15重量%とを含み、該ガラス成分が、Bi_(2)O_(3)約5?約85モル%と、SiO_(2)約1?約70モル%とを含み、PbOを含まないペーストに関する技術事項であるから、PbOの含有範囲が甲第2号証に記載された所定組成のガラスとは明らかに異なる。

(コ-5) 甲第15号証に記載の技術事項は、上記2.(6ア)?(6エ)によれば、光起電力電池の反射防止膜を突き抜けて、導電グリッド又は金属接点を形成する導電性インクであって、TeO_(2)、並びにBi_(2)O_(3)及びSiO_(2)の1種以上を含み、更に、B_(2)O_(3)を含む、無鉛のガラスフリットと銀とを含む導電性インクに関し、固形分を基準として、無鉛のガラスフリットを3質量%、銀を97質量%の含有量で有するという技術事項であるから、PbOの含有範囲が甲第2号証に記載された所定組成のガラスとは明らかに異なる。

(コ-6) 甲第16号証に記載の技術事項は、上記2.(7ア)?(7オ)によれば、太陽電池のフロントグリッドを印刷するための導電性ペーストは、Ag粉末と、酸化鉛等の金属酸化物と二酸化珪素との混合物であるガラスフリット及びGe等の単体金属である改質剤と、揮発性溶媒と、不揮発性ポリマー又は樹脂とで構成されるという技術事項であるから、甲第2号証に記載された比較例の導電性ペーストで用いられているガラスフリットも包含する技術事項が示されているといえる。

サ. 上記(コ-1)?(コ-6)の検討から、甲第4、5、11?12、15?16号証には、ファイアースルーに用いられる厚膜ペーストに関し、甲第2号証に記載された所定組成のガラスと整合するガラスを備えた厚膜ペーストに関する技術事項は記載されていないといえる。

シ. ただ、上記コ.に示した甲第5、12及び15号証の記載事項からすると、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物においては、そのペースト組成物に含まれている、ガラスの組成によらずに、ガラスを3重量%、導電性粒子を97重量%の含有量で有するということが周知の技術事項であるともいえる。

ス. そして、上記シ.に示した周知の技術事項を、甲2a発明に適用すると、低融点ガラスの粉を3重量%、銀粉末を97重量%の含有量で有することとなるところ、甲2a発明においては、固形分は、低融点ガラスの粉と銀粉末とからなっているため、全固形分に基づいて銀粉末は97重量%、固形分に基づいて低融点ガラスの粉は3重量%用いることとなり、上記相違点2-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えることとなる。


(1-4) 上記相違点2-2についての当審の判断
タ. 上記(1-1)ウ.に示されるように甲2a発明が備える低融点ガラスは、質量%で、SiO_(2) を1?10、B_(2)O_(3) を5?15、Al_(2)O_(3) を1?15、PbOを68?89、CuOを0?10、TiO_(2)を0?10含むSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスであるから、当該ガラスがTeO_(2)とLi_(2)Oと有することは明らかではないところ、上記1.(2e)によれば、甲2a発明が備える低融点ガラスには、「一般的な酸化物で表すRO(MgO、CaO、SrO、BaO)、R_(2)O(Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O)、In_(2)O_(3)、Bi_(2)O_(3)、SnO_(2)、TeO_(2)などを加えてもよい」とされている。

チ. しかしながら、上記2.(8)に示されている、太陽電池用として得られる厚膜ペーストの性質の制御は、容易な作業ではなく、マイクロ構造⇔性質⇔処理の関係の十分な理解が必要になるとの技術常識を考慮すると、甲第2号証に「一般的な酸化物で表すRO(MgO、CaO、SrO、BaO)、R_(2)O(Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O)、In_(2)O_(3)、Bi_(2)O_(3)、SnO_(2)、TeO_(2)などを加えてもよい」との記載があるだけでは、マイクロ構造⇔性質⇔処理の関係の十分な理解がされているとはいえず、前記低融点ガラスにTeO_(2)とR_(2)O(Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O)といった複数種の成分を添加し得るまでの実質的な開示があると認定することはできない。
そのため、甲2a発明に、上記1.(2e)に示される、「一般的な酸化物で表すRO(MgO、CaO、SrO、BaO)、R_(2)O(Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)O)、In_(2)O_(3)、Bi_(2)O_(3)、SnO_(2)、TeO_(2)などを加えてもよい」との甲第2号証記載の技術事項を適用しても、甲第2号証に記載された所定組成のガラスを鉛-テルル-リチウム-酸化物にすることはできない。

ツ. また、甲第4、5、9?16号証に記載のファイアースルーに用いられる厚膜ペーストに関する周知技術が、甲第2号証に記載された所定組成のガラスを備える、甲2a発明の厚膜ペーストに適用し得る技術事項かにつき検討してみても、上記(1-3)ク.?サ.での検討のとおり、甲第4、5、11?12、15?16号証記載のいずれの技術事項も、甲第2号証に記載された所定組成のガラスと整合するガラスを備えた厚膜ペーストに関する技術事項ではないから、甲第4、5、9?16号証に記載のファイアースルーに用いられる厚膜ペーストに関する周知技術は、甲2a発明には適用し得ない。

テ. また、甲第1号証に記載の厚膜ペーストに関する技術事項が甲2a発明の厚膜ペーストに適用し得る技術事項かにつき検討してみても、上記4.(1-2)オ.?ス.で検討したとおり、甲第1号証に記載の厚膜ペーストは、甲第2号証に記載された所定組成のガラスと整合するガラスを備えた厚膜ペーストに関する技術事項ではないから、甲第1号証に記載の厚膜ペーストに関する技術事項を甲2a発明に適用することもできない。

ト. さらに、甲第3及び7号証記載の技術事項が、甲第2号証に記載された所定組成のガラスを備える、甲2a発明に適用し得る技術事項かにつき検討してみても、上記4.(1-2)ソ.?タ.に示したように、甲第3号証に記載されているのは、PbO:50?60重量%、SiO_(2):25?35重量%、ZrO_(2)、TiO_(2)の合計3?8重量%含むガラスに関する技術事項であるし、甲第7号証に記載されているのは、モールドプレスにより製造されるレンズにおいて用いられる光学ガラスに関する技術事項であり、いずれの技術事項も、甲第2号証に記載された所定組成のガラスと整合するガラスを備えた厚膜ペーストに関する技術事項ではないから、甲第3及び7号証記載の技術事項を甲2a発明に適用することもできない。

ナ. 上記タ.?ト.での検討を踏まえると、甲第4、5、9?16号証に記載のファイアースルーの周知技術を考慮しても、甲2a発明に上記相違点2-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えさせることが容易に想到できたとはいえないし、甲第1号証に記載の発明と甲第3、7号証に記載の発明と甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアースルーの周知技術とを考慮しても、甲2a発明に上記相違点2-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項を備えさせることが容易に想到できたともいえない。


(1-5) 小括
よって、本件訂正発明1は、[無効理由3]によっては、無効とすることはできない。


(2) 上記第4の1.の[無効理由3](2)に示した、本件発明2に関する無効理由について検討する。

(2-1) 甲第2号証に記載された発明
ナ. 上記(1-1)に示した甲2a発明の導電性ペーストに関して、甲第2号証には、上記1.(2c)によれば、「【背景技術】
従来、多結晶Si太陽電池はp型シリコン基板の一方の面にn型シリコン基板層を設けた構造となっており、そのn型シリコン層側を受光面とし、受光面側表面に受光効率をあげるための窒化珪素膜などの反射防止膜を設け、さらにその反射防止膜側に半導体と接続した表面電極と、その裏面に裏面電極を設けることで受光により半導体のpn接合に生じた電力を取り出していた。
このとき、表面電極を形成する場合、受光効率をあげるために形成された窒化珪素膜などの反射防止膜が比較的高い電気抵抗値を持つことから、これら反射防止膜をあらかじめエッチングし、そこへ導電性ペーストなどの電極材料を印刷・焼成することで半導体と電極とを接続していた。
しかしこのようなエッチングによる方法は工程増によるコストアップなどの理由から、このようなエッチングは行わず、電極材料を直接反射防止膜上に印刷・焼成することで同時に反射防止膜を熔融・除去し電極と半導体とを接続する方法がとられるようになってきた。このとき、表面電極材料の導電性ペーストにリン等の周期表第V族に属する元素を含有したり(特許文献1参照)、Ti、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr成分を含有したり(特許文献2参照)、様々な添加剤を種々配合し高いオーミック接触を得ようとする方法が提案されている。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように表面電極材料に種々金属を含有する添加剤を配合して焼成した場合、半導体と表面電極の間に安定したオーミック接触をえることができなかった。
そこで本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたもので、反射防止膜をファイアースルーして半導体基板と表面電極との良好なオーミック接触をえることのできる導電性ペーストを提供することにある。」との記載があり、
上記1.(2f)によれば、「表面に窒化珪素層…が形成された1辺30mmの多結晶シリコンを準備し、その窒化珪素層上部に上記…導電性ペーストをスクリーン印刷した。これらの試験片を、140℃のオーブンで10分間乾燥させ、次に電気炉で800℃条件下で焼成し、サンプルを得た。」との記載がある。

ニ. 上記ナ.の記載から、甲2a発明の導電性ペーストの使用方法は、上記1.(2f)によれば、
「表面に窒化珪素層が形成された1辺30mmの多結晶シリコンを準備」する工程と、「その窒化珪素層上部に導電性ペーストをスクリーン印刷して試験片を得る」工程と、「得られた試験片を、140℃のオーブンで10分間乾燥させ、次に電気炉で800℃条件下で焼成し、サンプルを得」るという工程とからなると認められるところ、
上記1.(2c)によれば、「窒化珪素層」は、比較的高い電気抵抗値を持つ反射防止膜とされているし、「多結晶シリコン」は、半導体基板とされているし、この発明の「導電性ペースト」は、直接反射防止膜上に印刷・焼成することで反射防止膜をファイアースルーして半導体基板と表面電極との良好なオーミック接触をえることのできる導電性ペーストであるとされている。

ヌ. 上記ナ.?ニ.の検討から、甲第2号証には、甲2a発明の導電性ペーストの使用方法に注目すると、次の発明が記載されていると認められる。
「表面に比較的高い電気抵抗値を持つ反射防止膜が形成された1辺30mmの半導体基板を準備する工程と、
前記反射防止膜上部に導電性ペーストをスクリーン印刷して試験片を得る工程と、
前記試験片を、140℃のオーブンで10分間乾燥させ、次に電気炉で800℃条件下で焼成して、前記反射防止膜窒化珪素層をファイアースルーして半導体基板と表面電極との良好なオーミック接触をえる工程とからなる方法であって、
前記導電性ペーストが、αテルピネオールとブチルカルビトールアセテートからなるペーストオイルにバインダーとしてのエチルセルロースと低融点ガラスの粉、導電性粉末としての銀粉末を所定比で混合し、粘度500±50ポイズ程度に調製した導電性ペーストであって、
前記低融点ガラスが、質量%で、SiO_(2) を1?10、B_(2)O_(3) を5?15、Al_(2)O_(3) を1?15、PbOを68?89、CuOを0?10、TiO_(2)を0?10含むSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスである、前記方法。」に係る発明(以下、「甲2b発明」という。)。


(2-2) 本件発明2と甲2b発明との対比
本件発明2と甲2b発明とを対比するに、甲2b発明における「比較的高い電気抵抗値を持つ反射防止膜」、「導電性ペースト」、「試験片」、「αテルピネオールとブチルカルビトールアセテートからなるペーストオイル」、「低融点ガラス」、「導電性粉末としての銀粉末」は、上記(1-2)での検討を踏まえると、それぞれ、本件発明2における「絶縁膜」、「厚膜ペースト組成物」、「層状構造物」、「有機溶媒」、「酸化物」、「伝導性金属」に相当するし、また、甲2b発明における「表面に比較的高い電気抵抗値を持つ反射防止膜が形成された1辺30mmの半導体基板を準備する工程」、「前記反射防止膜上部に導電性ペーストをスクリーン印刷して試験片を得る工程」、「前記試験片を、140℃のオーブンで10分間乾燥させ、次に電気炉で800℃条件下で焼成して、前記反射防止膜窒化珪素層をファイアースルーして半導体基板と表面電極との良好なオーミック接触をえる工程」は、それぞれ、本件発明2における「半導体基板の少なくとも1つの表面上に堆積された1つまたは複数の絶縁膜を含む前記半導体基板を提供する工程」、「厚膜ペースト組成物を前記絶縁膜の少なくとも一部の上に適用して層状構造物を形成する工程」、「前記半導体基板、1つまたは複数の絶縁膜、および厚膜ペーストを焼成して前記厚膜ペーストの前記有機媒体が揮発させられ、1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触している電極を形成する工程」に相当するといえる。
してみると、両者は、次に示す一致点で一致し、次に示す相違点で相違していると認められる。

<一致点>
(a)半導体基板の少なくとも1つの表面上に堆積された1つまたは複数の絶縁膜を含む前記半導体基板を提供する工程と、
(b)厚膜ペースト組成物を前記絶縁膜の少なくとも一部の上に適用して層状構造物を形成する工程であって、前記厚膜ペースト組成物が、
i)伝導性金属と、
ii)酸化物と、
iii)有機媒体とを含む工程と、
(c)前記半導体基板、1つまたは複数の絶縁膜、および厚膜ペーストを焼成して前記厚膜ペーストの前記有機媒体が揮発させられ、1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触している電極を形成する工程とを含む方法。

<相違点>
相違点2-3:厚膜ペースト組成物が、本件発明2では、「前記組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属85?99.75重量%と、」「固形分に基づいて酸化物0.25?15重量%と、」「を含む」のに対して、甲2b発明では、固形分が低融点ガラスの粉と導電性粉末としての銀粉末とからなり、前記低融点ガラスの粉と前記銀粉末とを所定比で混合しているものの、それらの具体的な混合比が不明である点。

相違点2-4:酸化物が、本件発明2では、「鉛-テルル-リチウム-酸化物」であるのに対して、甲2b発明では、SiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系であり、鉛-テルル-リチウム-酸化物ではない点。


(2-3) 相違点についての当審の判断
上記相違点2-3は、上記(1-2)に示した相違点2-1に相当し、また、上記相違点2-4は、上記(1-2)に示した相違点2-2にほぼ相当する。
そして、上記相違点2-3については、上記(1-3)カ.?ス.での検討と同様にして、甲第5、12及び15号証に記載のファイアースルーに用いられる厚膜ペーストに関する周知技術を甲2b発明における厚膜ペースト組成物に適用することで、甲2b発明は上記相違点2-3に係る本件発明2の発明特定事項を備えるようになるといえる。

また、上記相違点2-4については、上記(1-4)タ.?ト.での検討と同様にして、甲第4、5、9?16号証に記載のファイアースルーの周知技術を考慮しても、甲2b発明に上記相違点2-4に係る本件発明2の発明特定事項を備えさせることが容易に想到できたとはいえないし、甲第1号証に記載の発明と甲第3、7号証に記載の発明と甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアースルーの周知技術とを考慮しても、甲2b発明に上記相違点2-4に係る本件発明2の発明特定事項を備えさせることが容易に想到できたともいえない。

(2-4) 小括
よって、本件発明2は、[無効理由3]によっては、無効とすることはできない。


(3) 上記第4の1.の[無効理由3](3)に示した、本件発明3に関する無効理由について検討する。

(3-1) 甲第2号証に記載された発明
ハ. 上記(1-1)に示した甲2a発明の導電性ペーストに関して、甲第2号証には、上記1.(2c)によれば、「…従来、多結晶Si太陽電池はp型シリコン基板の一方の面にn型シリコン基板層を設けた構造となっており、そのn型シリコン層側を受光面とし、受光面側表面に受光効率をあげるための窒化珪素膜などの反射防止膜を設け、さらにその反射防止膜側に半導体と接続した表面電極と、その裏面に裏面電極を設けることで受光により半導体のpn接合に生じた電力を取り出していた。
このとき、表面電極を形成する場合、受光効率をあげるために形成された窒化珪素膜などの反射防止膜が比較的高い電気抵抗値を持つことから、これら反射防止膜をあらかじめエッチングし、そこへ導電性ペーストなどの電極材料を印刷・焼成することで半導体と電極とを接続していた。
しかしこのようなエッチングによる方法は工程増によるコストアップなどの理由から、このようなエッチングは行わず、電極材料を直接反射防止膜上に印刷・焼成することで同時に反射防止膜を熔融・除去し電極と半導体とを接続する方法がとられるようになってきた。…
しかしながら、上記のように表面電極材料に種々金属を含有する添加剤を配合して焼成した場合、半導体と表面電極の間に安定したオーミック接触をえることができなかった。
…本発明は、上述の問題点を解決すべくなされたもので、反射防止膜をファイアースルーして半導体基板と表面電極との良好なオーミック接触をえることのできる導電性ペーストを提供する」との記載があるところ、
このような記載からは、「窒化珪素層」は、比較的高い電気抵抗値を持つ反射防止膜とされているし、「多結晶シリコン」は、半導体基板とされていることは明らかである。

ヒ. 上記ハに示したことから、甲第2号証には、甲2a発明の導電性ペーストを使用して得られる物品に注目すると、次の発明が記載されていると認められる。
「半導体基板の受光面側表面に設けられた比較的高い電気抵抗値を持つ反射防止膜の上に導電性ペーストを印刷・焼成することで前記反射防止膜をファイアースルーして半導体基板と表面電極とが良好にオーミック接触するようになった物品であって、
前記導電性ペーストが、αテルピネオールとブチルカルビトールアセテートからなるペーストオイルにバインダーとしてのエチルセルロースと低融点ガラスの粉、導電性粉末としての銀粉末を所定比で混合し、粘度500±50ポイズ程度に調製した導電性ペーストであって、
前記低融点ガラスが、質量%で、SiO_(2) を1?10、B_(2)O_(3) を5?15、Al_(2)O_(3) を1?15、PbOを68?89、CuOを0?10、TiO_(2)を0?10含むSiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系低融点ガラスである、前記物品。」に係る発明(以下、「甲2c発明」という。)。


(3-2) 本件発明3と甲2c発明との対比
本件発明3と甲2c発明とを対比するに、上記(2-2)での検討と同様にして、両者は、次に示す一致点で一致し、次に示す相違点で相違していると認められる。

<一致点>
(a)半導体基板と、
(b)前記半導体基板上の1つまたは複数の絶縁層と、
(c)前記1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触し、伝導性金属と酸化物とを含む電極と
を含む物品。

<相違点>
相違点2-5:酸化物が、本件発明3では、「鉛-テルル-リチウム-酸化物」であるのに対して、甲2c発明では、SiO_(2)-B_(2)O_(3)-Al_(2)O_(3)-PbO系であり、鉛-テルル-リチウム-酸化物ではない点。


(3-3) 相違点2-5についての当審の判断
上記相違点2-5は、上記(2-2)に示した相違点2-4と同じであり、上記(1-4)タ.?ト.での検討と同様にして、甲第4、5、9?16号証に記載のファイアースルーの周知技術を考慮しても、甲2c発明に上記相違点2-5に係る本件発明3の発明特定事項を備えさせることが容易に想到できたとはいえないし、甲第1号証に記載の発明と甲第3、7号証に記載の発明と甲第2、4、5、9?16号証に記載のファイアースルーの周知技術とを考慮しても、甲2c発明に上記相違点2-5に係る本件発明3の発明特定事項を備えさせることが容易に想到できたともいえない。


(3-4) 小括
よって、本件発明3は、[無効理由3]によっては、無効とすることはできない。


(4) まとめ
以上の検討により、[無効理由3]によっては、本件訂正発明1、本件発明2、及び、本件発明3の特許を無効とすることはできない。


6.[無効理由4]について
上記第4の1.の[無効理由4]に示した、本件発明3に関する無効理由について検討する。

(1) 甲第5号証に記載された発明
ア. 上記1.(3a)からすると、甲第5号証には、「 混合物から製造される太陽電池コンタクトであって、該混合物が、
a.固体部分、及び
b.有機部分を含み、
c.該固体部分が、
i.約85?約99重量%の銀成分、及び
ii.約1?約15重量%のガラス成分を含み、
iii.該ガラス成分が
a.約15?約75mol%のPbO、
b.約5?50mol%のSiO_(2)を含み、
c.B_(2)O_(3)を含まない
ことを特徴とする太陽電池コンタクト。」に係る発明が記載されている。

イ. 上記ア.に示した太陽電池コンタクトに係る発明は、上記1.(3b)?(3e)によれば、太陽光を有用な電気エネルギーに変換するシリコン(Si)のような半導体によって製造される太陽電池において、通常反射防止膜(ARC)で覆われている、太陽光の入射側に形成する前面コンタクトに関し、ガラス媒体を通じて最適な相互作用、結合、及び接触の形成を促進することによって、従来技術の欠点を克服するものであって、ガラス及び銀を含有する混合物が、導電ペーストとして、シリコン基板上に印刷された後に焼成され、ガラスが熔融し、金属が焼結した後、Ag/Siの導電性単独系統が形成され、バルクペーストとシリコンウェハーの間に導電性のブリッジを作るところ、焼成中に反射防止膜がガラスによって酸化、腐食され、シリコン基板との反応によってAg/Si単独系統が形成し、これがシリコンに対してエピタキシャルに結合すると考えられている。

ウ. 上記イ.に示したことからすると、上記ア.に示した太陽電池コンタクトは、絶縁体である反射防止膜で覆われているシリコン基板上に、上記ア.に示した混合物が、印刷された後に焼成されて、焼成中に反射防止膜がガラスによって酸化、腐食され、シリコン基板との反応によってAg/Si単独系統が形成され、バルクペーストとシリコン基板の間に導電性のブリッジが作られた太陽電池の前面コンタクトであるといえ、また、上記ア.に示した混合物は導電ペーストであるといえ、また、前面コンタクトは太陽電池に備わっていると認められる。

エ. 上記ア.?ウ.の検討から、甲第5号証には、次の発明が記載されているといえる。
「絶縁体である反射防止膜で覆われているシリコン基板上に、導電ペーストが、印刷された後に焼成されて、焼成中に反射防止膜がガラスによって酸化、腐食され、シリコン基板との反応によってAg/Si単独系統が形成され、バルクペーストとシリコン基板の間に導電性のブリッジが形成された前面コンタクトを備える太陽電池であって、
前記導電ペーストが、固体部分、及び有機部分を含み、前記固体部分が、約85?約99重量%の銀成分、及び、約1?約15重量%のガラス成分を含み、前記ガラス成分が約15?約75mol%のPbO、約5?50mol%のSiO_(2)を含み、B_(2)O_(3)を含まない、前記太陽電池。」に係る発明(以下、「甲5発明」という。)。


(2) 本件発明3と甲5発明との対比
本件発明3と甲5発明とを対比するに、甲5発明における「絶縁体である反射防止膜」、「シリコン基板」、「前面コンタクト」、「太陽電池」、「銀成分」、「ガラス成分」は、それぞれ、本件発明3における「1つまたは複数の絶縁層」、「半導体基板」、「電極」、「物品」、「伝導性金属」、「酸化物」に相当するし、甲5発明における「シリコン基板」を覆う「絶縁体である反射防止膜」は、本件発明3における「半導体基板上の1つまたは複数の絶縁層」に相当する。そして、甲5発明における「絶縁体である反射防止膜で覆われているシリコン基板上に、導電ペーストが、印刷された後に焼成されて、焼成中に反射防止膜がガラスによって酸化、腐食され、シリコン基板との反応によってAg/Si単独系統が形成され、バルクペーストとシリコン基板の間に導電性のブリッジが形成された前面コンタクト」は、「前面コンタクト」がファイアースルーにより形成された「電極」であることを意味していることから、本件発明3における「前記1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触し、伝導性金属と酸化物とを含む電極」に相当する。
してみると、両者は、次に示す一致点で一致し、次に示す相違点で相違していると認められる。

<一致点>
(a)半導体基板と、
(b)前記半導体基板上の1つまたは複数の絶縁層と、
(c)前記1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触し、伝導性金属と酸化物とを含む電極と
を含む物品。

<相違点>
相違点3-1:酸化物が、本件発明3では、「鉛-テルル-リチウム-酸化物」であるのに対して、甲5発明では、B_(2)O_(3)を含まず、約15?約75mol%のPbO、約5?50mol%のSiO_(2)を含んでおり、鉛-テルル-リチウム-酸化物ではない点。


(3) 相違点3-1についての当審の判断
カ. 甲5発明における、酸化物は、B_(2)O_(3)を含まず、約15?約75mol%のPbO、約5?50mol%のSiO_(2)を含んでおり、その酸化物の具体例が、ガラス組成物A?B、D?Eとして、上記1.(3f)に示されているところ、いずれの具体例も、PbOは含んでいるが、TeO_(2)とLi_(2)Oとを含んでおらず、鉛-テルル-リチウム-酸化物ではない。
また、甲5発明には属しない発明における酸化物の具体例が、ガラス組成物Cとして、上記1.(3f)に示されているところ、その具体例は、PbOとB_(2)O_(3)とを含んでいるが、TeO_(2)とLi_(2)Oとを含んでおらず、鉛-テルル-リチウム-酸化物ではない。

キ. ここで、甲第5号証には、上記1.(3g)?(3h)によれば、「ガラス組成物からの銀の溶解及び沈殿の反応速度は、アルカリ金属酸化物の存在によって大きく変化する。この点から、本発明の組成物は、さらに、例えば、Na_(2)O、K_(2)O及びLi_(2)O及びそれらの組み合わせのようなアルカリ金属酸化物を含んでいてもよい。特に、本発明の一実施例のガラス成分は、約0.1?約15mol%のNa_(2)O+K_(2)O+Li_(2)O、もしくはさらに好適には、約0.1?約5mol%のこれらのアルカリ金属酸化物を含んでいてもよい。
前面コンタクトペースト又はインク中のガラスは、効率的な前面コンタクト銀-シリコン界面を形成するために、多くの主要な役割を果たす。前面コンタクトペーストガラスは、焼成を通じて下部のSiとのコンタクトを形成するため、一般に窒化ケイ素(SiN_(X))又は二酸化チタン(TiO_(2))から作られる反射防止膜を腐食させる。…ガラスはまた、ガラスに溶解しているAg金属を溶解し、Agイオンをシリコン界面へ移動させ、有益なAg/Si単独系統を界面で形成するために、ガラスからAgを沈殿させる。…」との記載があることから、
甲5発明における酸化物は、約0.1?約5mol%のNa_(2)O+K_(2)O+Li_(2)Oを含んでいてもよいとされている。

ク. しかしながら、甲第5号証の全体の記載を参照しても、甲5発明における酸化物にTeO_(2)を含ませ得ることは記載も示唆もされていない。

ケ. そこで、甲5発明における酸化物に約0.1?約5mol%のNa_(2)O+K_(2)O+Li_(2)Oを含ませた場合に、甲第1または甲第2号証に記載された発明を組み合わせることで、上記相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項を備えさせることが容易に想到できたといえるか否かにつき検討する。
(ケ-1) 上記4.(3-1)?(3-3)での検討と同様にして、甲第1号証に記載された発明を、「半導体基板と、前記半導体基板上の1つまたは複数の絶縁層と、前記1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触し、伝導性金属と酸化物とを含む電極とを含む物品」に適用することは容易に想到し得ないことであるから、甲5発明におけるガラスに甲第1号証に記載された発明を適用することに合理性はない。

(ケ-2) 上記5.(1-3)カ.?サ.での検討と同様にして、R_(2)O(Li_(2)O,Na_(2)O、K_(2)O)、TeO_(2)などを加えてもよいとされる甲第2号証に記載された発明における所定組成のガラスは、B_(2)O_(3)の含有量が、甲5発明におけるガラスとは異なっているから、甲5発明におけるガラスに甲第2号証に記載された発明を適用することに合理性はない。

コ. 上記ケ.での検討を踏まえると、甲5発明に甲第1または甲第2号証に記載された発明を組み合わせることに合理性があるとはいえないから、甲5発明おけるガラスに上記相違点3-1に係る本件発明3の発明特定事項を備えさせることは、容易に想到できたとはいえない。


(4) 小括
よって、本件発明3は、[無効理由4]によっては、無効とすることはできない。


7.[無効理由5]について
上記第4の1.の[無効理由5]に示した、本件訂正発明1に関する無効理由について検討する。

(1) 請求人の主張
請求人は、上記[無効理由5]について、甲第8号証を提出して、「特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであ」る(甲第8号証第24?25頁)との判示の観点に立って、本件について検討すると、本件明細書の記載では、鉛、テルル、リチウムおよび酸化物の含有量が規定されることのない、本件訂正発明1が課題を解決できることを当業者が認識できるように記載されているとはいえない旨主張している(平成27年12月 9日付けの上申書第53頁第29行?第59頁下から4行)。

(2) 当審の判断
(2-1) 判断手法
特許法第36条第6項第1号の規定する要件については、特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断する(知的財産高等裁判所特別部判決平成17年(行ケ)第10042号)。

(2-2) 発明の詳細な説明の記載及び図面の記載
上記第2のとおり本件訂正がされたのは、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明のうちの、請求項1に係る発明だけであって、本件特許の発明の詳細な説明の記載及び図面の記載については本件訂正がされなかったことから、それらの記載は本件特許時の明細書の発明の詳細な説明の記載及び図面の記載のとおりであるところ、以下の記載がある。
ア.「【技術分野】
【0001】
本発明は、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペーストを提供する。厚膜ペーストは、有機媒体中に分散された伝導性金属またはその誘導体の供給源と鉛-テルル-リチウム-酸化物とを含む。」

イ.「【背景技術】
【0002】
p型ベースを有する従来の太陽電池構造は典型的に電池の前面(太陽側の面)上にある陰極と裏面上の陽極とを有する。半導体本体のp-n接合に当たる適切な波長の放射は、電子-正孔対電荷担体を発生させるための外部エネルギー源として作用する。これらの電子・正孔対電荷担体はp-n半導体接合によって発生された電界内で移動し、半導体の表面に適用された導電性グリッドまたは金属コンタクトによって集められる。発生された電流は外部回路に流れる。
【0003】
典型的に、導電性ペースト(インクとしても知られる)を用いて導電性グリッドまたは金属コンタクトを形成する。導電性ペーストは典型的に、ガラスフリット、導電性種(例えば、銀粒子)、および有機媒体を含有する。金属コンタクトを形成するために、導電性ペーストをグリッドラインまたは他のパターンとして基板上に印刷し、次に焼成し、その間にグリッドラインと半導体基板との間に電気的接触が形成される。」

ウ.「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、典型的に、結晶シリコンPV電池を窒化ケイ素、酸化チタン、または酸化ケイ素などの反射防止コーティングでコートして光の吸着を促進し、電池の効率を増加させる。また、このような反射防止コーティングは絶縁体として作用し、金属コンタクトの基板からの電子の流れを損なう。この問題を克服するためには、導電性ペーストは、焼成の間に反射防止コーティングを貫通して半導体基板との電気的接触を有する金属コンタクトを形成しなくてはならない。また、金属コンタクトと基板との間の強い結合の形成(すなわち、接着性)およびはんだぬれ性も望ましい。
【0005】
反射防止コーティングを貫通して焼成時に基板との強い結合を形成する能力は導電性ペーストの組成および焼成条件に非常に依存している。また、効率、PV電池の性能の基本的尺度は、焼成された導電性ペーストと基板との間に形成された電気的接触の特性によっても影響される。
【0006】
良い効率を有するPV電池を製造するための経済的な方法を提供するために、低温において焼成されて反射防止コーティングを貫通し、半導体基板との良い電気的接触を提供することができる厚膜ペースト組成物が必要とされている。」

エ.「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
a)厚膜ペースト組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属またはその誘導体85?99.75重量%と、
b)固形分に基づいて鉛-テルル-リチウム-酸化物0.25?15重量%と、
c)有機媒体と
を含む厚膜ペースト組成物である。
…」

オ.「【発明を実施するための形態】

【0021】
鉛-テルル-リチウム-酸化物組成物
本発明の態様は、鉛-テルル-リチウム-酸化物(Pb-Te-Li-O)組成物に関する。実施形態において、これらの組成物はガラス組成物であってもよい。さらなる実施形態において、これらの組成物は結晶性、部分的に結晶性、非晶質、部分的に非晶質、またはそれらの組合せであってもよい。実施形態において、Pb-Te-Li-O組成物は2つ以上のガラス組成物を含有してもよい。実施形態において、Pb-Te-Li-O組成物は、ガラス組成物と結晶性組成物などの付加的な組成物とを含有してもよい。用語「ガラス」または「ガラス組成物」は、非晶質および結晶性材料の上記の組み合わせのいずれかを表わすために使用される。
【0022】
実施形態において、本明細書に記載されたガラス組成物は鉛-テルル-リチウム-酸化物を含有する。また、ガラス組成物は、ケイ素、銀、スズ、ビスマス、アルミニウム、セリウム、ジルコニウム、ナトリウム、バナジウム、フッ素(flourine)、ニオブ、ナトリウム、タンタル、カリウム、マグネシウム、リン、セレン、コバルト、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、マンガン、クロム等の付加的な成分を含有してもよい。

【0024】
実施形態において、Pb-Te-Li-Oを製造するために使用された出発混合物は、(全出発混合物の重量に基づいて)、
30?60重量%、40?55重量%、または45?50重量%であってもよいPbO、40?65重量%、45?60重量%、または50?55重量%であってもよいTeO_(2)、0.1?5重量%、0.2?3重量%、または0.3?1重量%であってもよいLi_(2)Oを含有してもよい。
【0025】
さらなる実施形態において、上記のPbO、TeO2、およびLi2Oに加えて、Pb-Te-Li-Oを製造するために使用された出発混合物はSiO2、SnO2、B2O3、Ag2O、BiF3、V2O5、Na2O、ZrO2、CeO2、Bi2O3、Nb2O5、Ta2O5、K2O、MgO、P2O5、SeO2、Co3O4、PdO、RuO2、NiO、MnO、Cr2O3、またはAl2O3の1つまたは複数を含有してもよい。…

【0029】
さらなる実施形態において、本明細書におけるガラスフリット組成物は、第3の組の成分、すなわち、GeO2、Ga2O3、In2O3、NiO、CoO、ZnO、CaO、MgO、SrO、MnO、BaO、SeO2、MoO3、WO3、Y2O3、As2O3、La2O3、Nd2O3、Bi2O3、Ta2O5、V2O5、FeO、HfO2、Cr2O3、CdO、Sb2O3、PbF2、ZrO2、Mn2O3、P2O5、CuO、La2O3、Pr2O3、Nd2O3、Gd2O3、Sm2O3、Dy2O3、Eu2O3、Ho2O3、Yb2O3、Lu2O3、CeO2、BiF3、SnO、SiO2、Ag2O、Nb2O5、TiO2、および金属ハロゲン化物(例えば、NaCl、KBr、NaI、LiF)の1つまたは複数を含有してもよい。
【0030】
したがって、本明細書中で用いられるとき、用語「Pb-Te-Li-O」はまた、Si、Sn、Ti、Ag、Na、K、Rb、Cs、Ge、Ga、In、Ni、Zn、Ca、Mg、Sr、Ba、Se、Mo、W、Y、As、La、Nd、Co、Pr、Gd、Sm、Dy、Eu、Ho、Yb、Lu、Bi、Ta、V、Fe、Hf、Cr、Cd、Sb、Bi、F、Zr、Mn、P、Cu、Ce、およびNbからなる群から選択された1つまたは複数の元素を含有する金属酸化物を含めてもよい。
【0031】
表1、2、および4は、PbO、TeO_(2)、Li_(2)Oおよび、鉛-テルル-リチウム-酸化物を製造するために使用することができるその他の任意選択の化合物を含有する粉末混合物のいくつかの例を列挙する。この一覧は例示目的であり、限定的であることを意図しない。表1、2、および4において、化合物の量は全ガラス組成物の重量に基づいて重量パーセントとして示される。

【0033】
ガラスフリットとも呼ばれるガラス組成物が、特定の成分のパーセンテージを含有するものとして本明細書において説明される。具体的には、パーセンテージは、本明細書に説明されるように後で加工されてガラス組成物を形成する出発原料において使用された成分のパーセンテージである。このような専門用語は当業者には慣用的である。換言すれば、組成物は特定の成分を含有し、それらの成分のパーセンテージは、相当する酸化物の形態のパーセンテージとして表わされる。…

【0046】
図1(a)は単結晶シリコンまたは多結晶シリコンp型基板10を示す。
【0047】
図1(b)において、逆極性のn型拡散層20を形成してp-n接合を作る。n型拡散層20が、リン源としてオキシ塩化リン(POCl_(3))を使用してリン(P)の熱拡散によって形成されてもよい。一切の特定の改良がない場合、n型拡散層20は、シリコンp型基板の表面全体の上に形成される。拡散層の深さは、拡散温度および時間を制御することによって変化させられてもよく、一般に、約0.3?0.5ミクロンの厚さの範囲において形成される。n型拡散層は、数十オーム/平方?約120オーム/平方までのシート抵抗率を有し得る。
【0048】
レジスト等を有するn型拡散層20の1つの表面を保護した後、図1(c)に示されるように、n型拡散層20をエッチングによって大部分の表面から除去し、その結果、それは1つの主表面上にだけ残る。次に、有機溶剤等を用いてレジストを除去する。
【0049】
次に、図1(d)において、反射防止コーティングとしても機能する絶縁層30がn型拡散層20上に形成される。絶縁層は通常は窒化ケイ素であるが、SiNx:H膜(すなわち、絶縁膜が、後続の焼成加工の間の不活性化のための水素を含む)、酸化チタン膜、酸化ケイ素膜、炭素を含有する窒化ケイ素膜、炭素を含有する酸化ケイ素膜、炭素を含有するオキシ窒化ケイ素膜、または酸化ケイ素/酸化チタン膜であってもよい。窒化ケイ素膜の約700?900Åの厚さは、約1.9?2.0の屈折率のために適している。絶縁層30の堆積はスパッタリング、化学蒸着、または他の方法によって行われてもよい。
【0050】
次に、電極が形成される。図1(e)に示されるように、本発明の厚膜ペースト組成物を絶縁膜30上にスクリーン印刷し、次に乾燥させる。さらに、アルミニウムペースト60および裏面銀ペースト70を基板の裏面上にスクリーン印刷し、連続的に乾燥させる。 焼成は、数秒?数十分の間750?850℃の温度において行われる。
【0051】
従って、図1(f)に示されるように、焼成の間にアルミニウムがアルミニウムペーストからシリコン基板の裏面上に拡散し、それによって、高濃度のアルミニウムドーパントを含有するp+層40を形成する。この層は一般に裏面電界(BSF)層と呼ばれ、太陽電池のエネルギー変換効率を改良するのを助ける。焼成は、乾燥されたアルミニウムペースト60をアルミニウム後部電極61に変換する。裏面銀70は同時に焼成され、銀または銀/アルミニウム後部電極71になる。焼成の間、裏面アルミニウムと裏面銀との間の境界は合金の状態を呈し、それによって電気接続を達成する。後部電極の大部分の領域は、一つにはp+層40を形成する必要のために、アルミニウム電極によって占められる。同時に、アルミニウム電極へのはんだ付けは不可能なので、銀または銀/アルミニウム後部電極が、銅リボン等によって太陽電池を相互接続するための電極として裏面の限られた領域の上に形成される。
【0052】
前面上に、本発明の厚膜ペースト組成物500は焼成の間に焼結して絶縁膜30を貫通し、それによってn型拡散層20との電気的接触を達成する。このタイプのプロセスは一般に「ファイアスルー(fire through)」と呼ばれる。このファイアスルーされた状態、すなわち、ペーストが溶融して絶縁膜30を通過する程度は、絶縁膜30の特質および厚さ、ペーストの組成、および焼成条件に依存する。焼成されたとき、図1(f)に示されるようにペースト500は電極501になる。

【0059】
厚膜ペースト組成物は、一パターンとして、例えば、接続線を有する母線として絶縁膜上に印刷されてもよい。印刷は、スクリーン印刷、めっき、押出、インクジェット、造形印刷またはマルチプル印刷、またはリボンによって行われてもよい。
【0060】
この電極形成プロセスにおいて、厚膜ペースト組成物が加熱されて有機媒体を除去し、金属粉末を焼結する。加熱は、空気中でまたは酸素含有雰囲気中で行わうことができる。この工程は通常、「焼成」と称される。焼成温度プロファイルは典型的に、乾燥された厚膜ペースト組成物からの有機バインダー材料、並びに存在する一切の他の有機材料の焼尽を可能にするように設定される。一実施形態において、焼成温度は750?950℃である。焼成は、高い輸送速度、例えば100?600cm/分を用いて、結果として0.05?5分のホールドアップ時間でベルト炉内で行うことができる。複数の温度領域、例えば3?11の領域を用いて、所望の熱プロファイルを制御することができる。

【実施例】
【0064】
厚膜ペースト組成物の具体的な調製および評価を以下に説明する。
【0065】
実施例I
鉛-テルル-リチウム-酸化物の調製
表1のガラス1?7、および表2および3のガラスの鉛-テルル-リチウム-酸化物の調製
表1の鉛-テルル-リチウム-酸化物(Pb-Te-Li-O)組成物を調製するために、Pb_(3)O_(4)、TeO_(2)、およびLi_(2)CO_(3)粉末を混合およびブレンドした。ブレンドされた粉末バッチ材料を白金合金るつぼ内に充填し、次に、空気またはO_(2)含有雰囲気を使用する900?1000℃の炉内に入れた。成分の完全溶液を得た後、熱処理の時間は20分であった。次に、成分の融解から生じる得られた低粘度液体を金属ローラーによって急冷した。次に、急冷されたガラスを粉砕し、選別して0.1?3.0ミクロンのD_(50)を有する粉末を得た。
【0066】
表2の鉛-テルル-酸化物(Pb-Te-Li-O)組成物を調製するために、Pb_(3)O_(4)、TeO_(2)、およびLi_(2)CO_(3)粉末および任意選択により、表2に示されるように、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、ZrO_(2)、B_(2)O_(3)、Nb_(2)O_(5)、Na_(2)CO_(3)、Ta_(2)O_(5)、K_(2)CO_(3)、Ag_(2)O、AgNO_(3)、CeO_(2)、および/またはSnO_(2)を混合およびブレンドした。
【0067】
表1のガラス8?14、および表4のガラスの鉛-テルル-リチウム-酸化物の調製
TeO_(2)粉末(99+%純度)、PbO粉末、およびLi_(2)CO_(3)粉末(ACS試薬用、99+%純度)の混合物を適した容器内で15?30分にわたって混転して表1のガラス組成物8?14のための出発粉末を混合した。表4の組成物のために、TeO_(2)、PbOまたはPb_(3)O_(4)、およびLi_(2)CO_(3)および任意選択により、表4に示されるように、SiO_(2)、Bi_(2)O_(3)、BiF_(3)、SnO_(2)、Al_(2)O_(3)、MgO、Na_(2)O、Na_(2)CO_(3)、NaNO_(3)、P_(2)O_(5)、リン酸アルミニウム、リン酸鉛、SeO_(2)、PbSeO_(3)、Co_(3)O_(4)、CoO、PdO、PdCO_(3)、Pd(NO_(3))_(2)、RuO_(2)、ZrO_(2)、SiZrO_(4)、V_(2)O_(5)、NiO、Ni(NO_(3))_(2)、NiCO_(3)、MnO、MnO_(2)、Mn_(2)O_(3)、Cr_(2)O_(3)の混合物を適した容器内で15?30分にわたって混転して出発粉末を混合した。出発粉末混合物を白金るつぼ内に置き、空気中で10℃/分の加熱速度において900℃まで加熱し、次に900℃に1時間保持して混合物を溶融した。白金るつぼを炉から取り出して溶融物をステンレス鋼プラテン上に流し込むことによって溶融物を900℃から急冷した。得られた材料を乳鉢および乳棒で100メッシュ未満に微粉砕した。次に、D_(50)が0.5?0.7ミクロンになるまで、微粉砕された材料をジルコニアボールとイソプロピルアルコールとを有するポリエチレン容器内でボールミル粉砕した。次に、ボールミル粉砕された材料をミル粉砕ボールから分離し、乾燥させ、230メッシュのスクリーンに通して、厚膜ペーストの調製試料において使用されるフラックス粉末を得た。
【0068】
【表1】


【0069】
【表2】


【0070】
【表3】


【0071】
【表4】



【0072】
実施例II
ペーストの調製
表6、7、8、9、10、および11の実施例のペーストの調製
一般的に、ペーストの調製試料を以下の手順を用いて調製した。表5の溶剤、バインダー、樹脂、および界面活性剤の適切な量を秤量し、混合缶内で15分間混合して有機媒体を形成した。
【0073】
【表5】



【0075】
表6、7、8、9、10、および11のデータを生じるために使用された最終ペーストを製造するために、表1のフリット2?3重量%をAgペースト分に混合し、粉砕機として当業者に公知の回転ガラス板間の剪断によって分散させた。あるいは、2つの別個のペーストを製造し、すなわち、1)Agの適切な量を表5の媒体と共にロールミル粉砕し、および2)表1のフリットの適切な量を表5の媒体と共にロールミル粉砕した。次に、Agペーストおよびフリットペーストの適切な量を遊星形遠心ミキサー(日本、東京の株式会社シンキー)を用いて共に混合して、試験されたペーストを形成した。
【0076】
以下の詳細によって表に列挙されたペースト組成物を製造するために上に記載された手順を用いて表6、7、8、9、10、および11のペーストの実施例を製造した。試験されたペーストは85?88%の銀粉末を含有した。実施例はD_(50)=2.0μmを有する球状銀を使用した。
【0077】
表10および11の最終ペーストを製造するために3つの別個のペーストを製造し、すなわち、1)Agの適切な量を表5のビヒクルの適切な量に添加し、ロールミル粉砕した、2)表1の第1のガラスフリットの適切な量を表5のビヒクルの適切な量に添加し、ロールミル粉砕した、および3)表2の第2のガラスフリットの適切な量を表5のビヒクルの適切な量に添加し、ロールミル粉砕した。表10および11のペースト組成物によって示されるようにAgペーストおよびフリットペーストの適切な量を遊星形遠心ミキサー(日本、東京の株式会社シンキー)を用いて共に混合した。
【0078】
表3は、表10および11の実施例の組み合わせられたフリット組成物を示す。表3に示された組み合わせられたフリット組成物は、表1および2のフリット組成物を使用して表10および11のブレンディング比において計算される。
【0079】
表12、13、14、および15の実施例の厚膜ペーストの調製
厚膜ペーストの有機成分および相対量を表5に示す。
【0080】
有機成分(約4.6g)をThinky混合ジャー(Thinky USA,Inc.)内に入れ、十分にブレンドされるまで2000RPMにおいて2?4分間Thinky方式で混合した。無機成分(Pb-Te-Li-O粉末および銀導電性粉末)をガラスジャー内で15分にわたって混転により混合した。無機成分の全重量は44gであり、その42.5?43.5gは銀粉末であり、0.5?1.5gは表1のPb-Te-Li-O粉末であった。…
【0081】
実施例III
太陽電池の作製
表6、7、8、9、10、および11に記載された実施例の太陽電池の作製
p型ベース上にリンドープトエミッターを有する1.1インチ×1.1インチのダイシングソーカット多結晶シリコン太陽電池にペーストを適用した。実施例1および13?22のペーストを65Ω/□エミッターを有するDeutscheCell(DeutscheCell,Germany)多結晶ウエハに適用し、実施例#2?#6のペーストを55Ω/□エミッターを有するGintech(Gintech Energy Corporation(Taiwan))多結晶ウエハに適用した。使用された太陽電池はイソトロパ酸のエッチングによってテクスチャー化され、SiNx:Hの反射防止コーティング(ARC)を有した。表6、7、8、9、10、および11に示されるように、効率および充填比を各々の試料について測定した。各々のペーストについて、5?10の試料の効率および充填比の平均値および中央値が示される。各々の試料は、250mm/秒のスキージー速度を有するETPモデルL555プリンターセットを使用してスクリーン印刷することによって製造された。使用されたスクリーンは、325メッシュおよび23μmのワイヤを有するスクリーンの20μmのエマルション上に100μmの開口を有する11の指線および1.5mmの開口を有する1つの母線のパターンを有した。市販のAlペースト、DuPont PV381をデバイスの照明されない(裏)面上に印刷した。
【0082】
次に、印刷されたパターンを両面に有するデバイスを10分間、250℃のピーク温度の乾燥炉内で乾燥させた。次に、560cm/分のベルト速度および550-600-650-700-800-905?945℃の温度設定値を用いてCF7214Despatch 6領域IR炉で基板を太陽側の面を上にして焼成した。加工品の実際の温度を加工の間に測定した。各々の加工品の推定ピーク温度は740?780℃であり、各々の加工品は4秒の全時間の間650℃を超えていた。次に、較正されたST-1000試験機を用いて、完全に加工された試料をPV性能について試験した。
【0083】
表12、13、14および15の実施例の太陽電池の作製
厚膜ペーストの性能を試験するための太陽電池は、酸によってエッチングされたテクスチャー化表面を有する65ohm/sq.のリンドープトエミッター層と厚さ70nmのPECVD SiNx反射防止コーティングとを有する200ミクロンのDeutscheCell(DeutscheCell,Germany)多結晶シリコンウエハから製造された。ダイアモンドウエハ用ソーを用いてウエハを28mm×28mmのウエハに切断した。ウエハは、切断された後にAMI-Presco MSP-485スクリーン印刷機を用いてスクリーン印刷されて母線、0.254cmのピッチの11本の導体線、および完全研磨面、スクリーン印刷されたアルミニウム裏面導体を提供した。印刷および乾燥後に、電池をBTU国際急速熱処理ベルト炉内で焼成した。表12、13、14および15に示された焼成温度は最後のピーク領域の炉の設定温度であり、実際のウエハ温度よりも約125℃高い。焼成された導体線の線幅の中央値は120ミクロンであり、平均の線の高さは15ミクロンであった。線の抵抗率の中央値は3.0×10^(-6)ohm cmであった。28mm×28mmの電池の性能は、太陽電池の全充填比(FF)を約5%低減するエッジ効果によって影響されることが予想される。
【0084】
実施例IV
太陽電池の性能:効率および充填比
試験手順:表6、7、8、9、10、および11の効率および充填比
本明細書に記載された方法によって製造された太陽電池を変換効率について試験した。効率を試験する例示的な方法を以下に示す。
【0085】
実施形態において、本明細書に記載された方法によって製造された太陽電池を効率を測定するための商用I-V試験機(Telecom STV、モデルST-1000)内に置いた。I-V試験機のXeアーク灯が公知の強度、AM1.5を有する直射日光をシミュレートし、電池の前面を照射した。試験機は多点接触方法を用いて約400の負荷抵抗の設定において電流(I)および電圧(V)を測定し、電池のI-V曲線を求めた。充填比(FF)と効率(Eff)との両方をI-V曲線から計算した。
【0086】
表12、13、14、および15の実施例の太陽電池の電気的測定
表12および13の実施例の太陽電池の性能をST-1000、Telecom STV Co.IV試験機を用いて25℃±1.0℃において測定した。IV試験機のXeアーク灯は公知の強度を有する直射日光をシミュレートし、電池の前面を照射した。試験機は4接触法を使用して約400の負荷抵抗の設定において電流(I)および電圧(V)を測定し、電池のI-V曲線を求めた。太陽電池効率(Eff)、充填比(FF)、および直列抵抗(Rs)(Rsについてデータは示されない)をI-V曲線から計算した。
【0087】
これらの実施例の効率および充填比の中央値および平均値を表12、13、14、および15に示す。
【0088】
【表6】



【0089】
【表7】


【0090】
【表8】


【0091】
【表9】

【0092】
【表10】

【0093】
【表11】

【0094】
【表12】

【0095】
【表13】

【0096】
【表14】

【0097】
【表15】

【0098】
比較例I:ビスマス-テルル-リチウム-酸化物
ビスマス-テルル-リチウム-酸化物の調製
表16に示されたビスマス-テルル-リチウム-酸化物(Bi-Te-Li-O)を含有する組成物は、酸化ホウ素(B_(2)O_(3))、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO_(2))、酸化ビスマス(Bi_(2)O_(3))、酸化テルル(TeO_(2))、炭酸リチウム(LiCO_(3))、およびリン酸リチウム(LiPO_(4))を使用して、そして上の実施例Iにおいて記載された手順、すなわち、表1のガラス1?7と表2および3のガラスの鉛-テルル-リチウム-酸化物の調製によって調製された。
【0099】
【表16】


【0100】
ペーストの調製
ガラスAを使用するペーストを以下の手順によって製造した。適切な量の有機ビヒクル(表5)とAg粉末とを混合することによってペーストを製造した。0?75psiに徐々に圧力を増加させながらAgペーストを3本ロール練り機を通過させた。B型粘度計を用いてAgペーストの粘度を測定し、溶剤および樹脂の適切な量を添加してペーストの粘度を230?280Pa-secの目標に向けて調節した。別のペーストを製造するために適切な量の有機ビヒクル(表5)およびガラス粉末Aを混合した。0?250psiに徐々に圧力を増加させながらフリットペーストを3本ロール練り機を通過させた。各々のペーストの分散度を磨砕度(FOG)によって測定した。…
【0101】
遊星形遠心ミキサー(日本、東京の株式会社シンキー)を用いてAgおよびフリットペーストを混合物と一緒に混合して、表17に示された最終ペーストの配合を実施した。
【0102】
太陽電池の作製と効率および充填比の測定
p型ベース上にリンドープトエミッターを有する1.1インチ×1.1インチのダイシングソーカット多結晶シリコン太陽電池にペーストを適用した。62Ω/□のエミッターを有するDeutscheCell(DeutscheCell,Germany)多結晶ウエハにペーストを適用した。使用された太陽電池はイソトロパ酸のエッチングによってテクスチャー化され、SiNx:Hの反射防止コーティング(ARC)を有した。表17に示されるように、効率および充填比を各々の試料について測定した。200mm/秒のスキージー速度を有するETPモデルL555プリンタセットを用いてスクリーン印刷することによって各々の試料を製造した。使用されたスクリーンは、325メッシュおよび23μmのワイヤを有するスクリーンの20μmのエマルション上に100μmの開口を有する11の指線および1.5mmの開口を有する1つの母線のパターンを有した。市販のAlペースト、DuPont PV381をデバイスの照明されない(裏)面上に印刷した。
【0103】
次に、印刷されたパターンを両面に有するデバイスを10分間、250℃のピーク温度の乾燥炉内で乾燥させた。次に、560cm/分のベルト速度および500-550-610-700-800-HZ6の温度設定値を用いてCF7214 Despatch 6領域IR炉で基板を太陽側の面を上にして焼成し、そこにおいてHZ6=885、900および915℃であった。加工品の実際の温度を加工の間に測定した。各々の加工品の推定ピーク温度は745?775℃であり、各々の加工品は4秒の全時間の間650℃を超えていた。次に、較正されたST-1000試験機を用いて、完全に加工された試料をPV性能について試験した。
【0104】
表17に示された効率および充填比を各々の試料について測定した。各々のペーストについて、6つの試料について効率および充填比の平均値および中央値を示す。
【0105】

…」

カ.「





(2-3) 特許請求の範囲に記載された発明と発明の詳細な説明に記載された発明との対応関係の検討

上記(2-1)に示した判断手法に従い、まず、上記(2-2)に示した、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明について、その発明が解決すべき課題(以下、単に、「課題」ということもある。)を確認し、次に、本件特許の発明の詳細な説明の記載に基づき出願時の技術常識に照らして当業者が課題を解決できると認識できる発明の範囲(以下、「課題を解決できると認識できる発明の範囲」という。)を整理した後、最後に、上記第3に示した、本件訂正発明1との対応関係の検討を行うこととする。

サ. 本件特許の発明が解決すべき課題
(ア) 本件特許の発明の詳細な説明における、上記(2-2)ウ.に示した、【発明が解決しようとする課題】についての【0006】には、「良い効率を有するPV電池を製造するための経済的な方法を提供するために、低温において焼成されて反射防止コーティングを貫通し、半導体基板との良い電気的接触を提供することができる厚膜ペースト組成物が必要」であるとの課題が記載されている。

(イ) ここで、上記(ア)に示した課題における、「PV電池」、「厚膜ペースト」とは、上記(2-2)イ.?ウ.に示した、本件特許の発明の詳細な説明の【背景技術】、【発明が解決しようとする課題】についての記載(【0002】?【0005】)からすると、それぞれ、「結晶シリコン太陽電池」、「ガラスフリット、導電性種(例えば、銀粒子)、および有機媒体を含有する導電性ペースト」と言い換えることができる。

(ウ) ところで、上記(ア)に示した課題には「良い効率」、「低温」、「良い電気的接触」との程度を表す事項が含まれているから、それらの程度を明確化して、前記課題を明確に確認するため、まず、上記(ア)に示した課題の対象となっている、「結晶シリコン太陽電池を製造するための、ガラスフリット、導電性種(例えば、銀粒子)、および有機媒体を含有する、導電性ペースト」(以下、単に「太陽電池製造用の導電性ペースト」と称することもある。)についての技術的意義を確認した後、前記課題の明確化につき、本件特許の出願時の技術常識を踏まえた検討を行うこととする。

(ウ-1) 太陽電池製造用の導電性ペーストについて、本件特許の発明の詳細な説明を参照してみると、上記(2-2)ア.に示した、【技術分野】には、「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物。」(【0001】)との記載があり、そのような導電性ペーストを用いた太陽電池デバイスの製造プロセスフローが、上記(2-2)カ.に示したように記載され、その製造プロセスフローの説明が、上記(2-2)オ.のうちの【0046】?【0052】に記載されている。それらの記載によれば、太陽電池製造用の導電性ペーストとしては、上記(2-2)ア.に示した、【技術分野】に記載されるような、焼成されて反射防止コーティングを貫通し、半導体基板との電気的接触を提供する、太陽電池デバイスの前面を印刷するための導電性ペーストがあるが、それ以外に、焼成されて拡散し裏面電界層を形成する、太陽電池デバイスの裏面を印刷するための導電性ペーストもあるところ、上記(ア)に示した課題の対象となっているのは、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための導電性ペーストであるということが理解される。

(ウ-2) そして、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための導電性ペーストに対し、上記(ア)に示した課題における「良い効率」、「低温」、「良い電気的接触」との程度について、本件特許の発明の詳細な説明全体を参照しても、それらの程度についての明確な基準は見当たらないものの、上記(2-2)オ.の実施例(【0064】?【0105】)には、種々の焼成温度に設定されて製造された太陽電池について、効率(Eff%)を評価したことは記載され、また、上記(2-2)ウ.の「反射防止コーティングを貫通して焼成時に基板との強い結合を形成する能力は導電性ペーストの組成および焼成条件に非常に依存している。また、効率、PV電池の性能の基本的尺度は、焼成された導電性ペーストと基板との間に形成された電気的接触の特性によっても影響される。」(【0005】)との記載からすると、本件特許の発明の詳細な説明においては、製造された太陽電池について、効率(Eff%)を評価することで、半導体基板との電気的接触も評価していることが理解される。

(ウ-3) 1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための導電性ペーストについて、本件特許の優先権主張の日前に公知の文献である、甲第2、4、5、12、15?16号証には、上記4.(1-2)ケ.(ケ-1)?(ケ-7)に示したとおり、焼成時にガラスフリットが反射防止コーティングと反応することで前記反射防止コーティングを貫通して、半導体基板と導電性グリッドまたは金属コンタクトとの電気的接触を形成する旨の記載があることから、当該太陽電池デバイスの前面を印刷するための導電性ペーストは、本件特許の優先権主張の日前に、すでに、公知となっていたところ、さらに、上記1.(2f)、上記2.(6ウ)によれば、甲第2号証、甲第15号証には、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための導電性ペーストにおけるガラスフリットに、所定の組成のガラスフリットを用いた実施例によると、所定の組成とは異なる組成のガラスフリットを用いた比較例と比べて、良い効率を有する太陽電池を製造することができた旨の記載があることから、本件特許の出願時において、「良い効率」とは、比較例と比べて良い効率であることを意味しているといえる。

(ウ-4) 上記(ウ-3)に示したことからすると、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための導電性ペーストは、本件特許の優先権主張の日前に公知となっていたことから、本件特許の出願時に、その導電性ペーストを提供することだけでは課題とはなり得ないところ、例えば、「良い効率を有する結晶シリコン太陽電池を製造することができる、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための、太陽電池製造用の導電性ペーストを提供する」との課題は、比較例と比べて良い効率を有する結晶シリコン太陽電池を製造することができる、太陽電池デバイスの前面を印刷するための、太陽電池製造の導電性ペーストを提供することを課題としていることを意味しているといえる。

(ウ-5) 上記(ウ-1)?(ウ-4)での検討を踏まえると、上記(ア)に示した課題は、「比較例と比べて良い効率を有する結晶シリコン太陽電池を製造するための経済的な方法を提供するため、低温において焼成されて反射防止コーティングを貫通し、半導体基板との良い電気的接触を提供することができる、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物が必要」であることを意味していると確認できる。

(エ) 小括
上記(ア)?(ウ)での検討から、本件特許の発明が解決すべき課題は、比較例と比べて良い効率を有する結晶シリコン太陽電池を製造するための経済的な方法を提供するため、低温において焼成されて反射防止コーティングを貫通し、半導体基板との良い電気的接触を提供することができる、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物が必要であることであると確認できる。


シ. 課題を解決できると認識できる発明の範囲
(カ) 上記サ.(エ)で確認した課題について、本件特許の発明の詳細な説明には、上記(2-2)エ.に示したように、【課題を解決するための手段】として、「a)厚膜ペースト組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属またはその誘導体85?99.75重量%と、
b)固形分に基づいて鉛-テルル-リチウム-酸化物0.25?15重量%と、
c)有機媒体と
を含む厚膜ペースト組成物である」(【0007】)との記載があるところ、この記載のうちの、「厚膜ペースト組成物」は、上記(2-2)ア.に示した、【技術分野】についての記載(【0001】)を参酌すると、「1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物」を意味していると認められる。

(キ) しかしながら、上記(カ)に示した【課題を解決するための手段】としての、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物では、本件特許の発明が解決すべき課題を解決し得ないことは、本件特許の発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識に照らし、明らかである。その理由は、以下の(キ-1)?(キ-4)のとおりである。
すなわち、
(キ-1) 上記(カ)に示した【課題を解決するための手段】である、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物は、本件特許の発明の詳細な説明における、上記(2-2)オ.の実施例の記載(【0064】?【0105】)によれば、鉛-テルル-リチウム-酸化物としてガラス17のガラスフリット組成物(表2(【0069】))を備える実施例15の厚膜ペースト(表8(【0090】))を包含しているところ、その実施例15の厚膜ペーストを反射防止コーティングを有する太陽電池用半導体基板に適用し、焼成温度を920℃、940℃にそれぞれ設定して製造された太陽電池(以下、それぞれ、「実施例15の太陽電池1」、「実施例15の太陽電池2」という。また、これらの太陽電池を「実施例15の太陽電池」とまとめて称することがある。)は、それらの太陽電池の効率(Eff%)を測定すると、実施例15の太陽電池1の効率(Eff%)の平均値は11.80で、実施例15の太陽電池2の効率(Eff%)の平均値は10.95であった(【0081】?【0082】、【0084】?【0085】、表8(【0090】))のに対し、比較例のガラスを備える厚膜ペーストを反射防止コーティングを有する太陽電池用半導体基板に適用し、焼成温度を900℃、915℃、930℃にそれぞれ設定して製造された太陽電池(以下、それぞれ、「比較例の太陽電池1」、「比較例の太陽電池2」、「比較例の太陽電池3」という。また、これらの太陽電池を「比較例の太陽電池」とまとめて称することがある。)は、その太陽電池の効率(Eff%)を測定すると、比較例の太陽電池1、2、3の効率(Eff%)の平均値は、それぞれ、10.04、12.46、12.61であった(【0098】?【0104】、表17(【0105】))ことが記載されている。

(キ-2) ここで、本件特許の発明の詳細な説明における、上記(2-2)オ.の実施例の記載(【0064】?【0105】)のうちの、比較例の太陽電池についての記載(【0098】?【0105】)を参照すると、その太陽電池は、比較例の厚膜ペーストを用いて製造された(【0098】?【0101】)ところ、その比較例の厚膜ペーストにおけるガラスは、TeO_(2)とBi_(2)O_(3)とB_(2)O_(3)とLi_(2)Oとを含有し、Pbを含まないとの、ガラスの組成(表16(【0099】))からみて、本件特許の優先権主張の日前に公知の文献である甲第15号証に開示された、太陽電池製造用の導電性ペースト(上記2.(6エ))に該当するため、本件特許の優先権主張の日前に公知となった太陽電池であると認められる。

(キ-3) そして、本件特許の発明の詳細な説明における、上記(2-2)オ.の実施例(【0064】?【0105】)には、上記(キ-1)で指摘した事項、すなわち、焼成温度が920℃、940℃にそれぞれ設定されて製造された、実施例15の太陽電池1?2は、効率(Eff%)の平均値(以下、単に「効率の平均値」という。)が、それぞれ、11.80、10.95であったのに対し、焼成温度が915℃に設定されて製造された比較例の太陽電池2は、効率の平均値が12.46であったとの事項が記載されているところ、このような事項からすると、実施例15の太陽電池は、比較例の太陽電池2よりも高温で焼成して製造したにもかかわらず、比較例の太陽電池2よりも効率が悪いといえる。また、上記サ.(ウ-2)、上記(キ-2)で指摘した事項を踏まえると、実施例15の太陽電池は、比較例の太陽電池2、すなわち、本件特許の優先権主張の日前に公知となった太陽電池よりも、半導体基板との電気的接触が悪いといえる。

(キ-4) 上記(キ-1)?(キ-3)での検討を踏まえると、鉛-テルル-リチウム-酸化物としてガラス17(表2(【0069】))を備える実施例15の厚膜ペースト(表8(【0090】))を包含している、上記(カ)に示した【課題を解決するための手段】としての、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物では、本件特許の発明が解決すべき課題を解決し得ない場合があることは、本件特許の発明の詳細な説明の記載から、明らかであるといえる。


(ク) そこで、上記(カ)に示した【課題を解決するための手段】としての、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物のうちの、本件特許の発明が解決すべき課題を解決できる、厚膜ペースト組成物について、発明の詳細な説明にどのような記載があるかにつき、以下に検討する。


(ケ) 本件特許の発明の詳細な説明における、上記(2-2)オ.の実施例の記載(【0064】?【0105】)によれば、鉛-テルル-リチウム-酸化物としてガラス1、2、4、5、9?16、18?20、22?24、28?34、38?44(表1?4(【0068】?【0071】)を備える実施例1?14、16?22、24?40(表6?15(【0088】?【0097】))の厚膜ペーストを反射防止コーティングを有する太陽電池用半導体基板に適用して焼成して作製された太陽電池は、それらの太陽電池(以下、それらの太陽電池を「実施例15、23以外の太陽電池」という。)の効率(Eff%)を測定すると、実施例15、23以外の太陽電池は、上記(キ-1)?(キ-3)での検討と同様にして、比較例の太陽電池よりも低温で焼成して製造しても、太陽電池の効率の平均値は、比較例の太陽電池よりも高いといえ、鉛-テルル-リチウム-酸化物としてガラス1、2、4、5、9?16、18?20、22?24、28?34、38?44のガラス(以下、「特定のガラスフリット組成物」という。)を備える実施例の厚膜ペーストによると、本件特許の発明が解決すべき課題を解決できているといえる。


(コ) 小括
してみると、上記(カ)に示した【課題を解決するための手段】としての、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物のうち、鉛-テルル-リチウム-酸化物として特定のガラスフリット組成物を備える厚膜ペースト組成物は、課題を解決できると認識できる発明の範囲であるといえる。


ス. 特許請求の範囲に記載された発明との対応関係の検討
(サ) そこで、上記第3に示した本件訂正発明1と、上記シ.(ク)?(コ)で検討した、課題を解決できると認識できる発明の範囲との対応関係を検討する。


(シ) 上記第3に示した本件訂正発明1を再掲すると、次のとおりものである。
「【請求項1】
a)厚膜ペースト組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属またはその誘導体85?99.75重量%と、
b)固形分に基づいて鉛-テルル-リチウム-酸化物0.25?15重量%と、
c)有機媒体と
を含み、
前記鉛-テルル-リチウム-酸化物が23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含む、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物。」


(ス) ここで、上記(シ)に示した本件訂正発明1は、請求項1の記載からして、上記サ.(エ)に示した課題の対象となっている、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物に限定されていることは明らかである。


(セ) また、上記(シ)に示した本件訂正発明1における、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含む」「鉛-テルル-リチウム-酸化物」は、次の検討により、特定のガラスフリット組成物を備える実施例のペーストに基づいて、課題を解決できると認識できる発明の範囲に限定されているといえる。

(セ-1) 上記(2-2)オ.の実施例の記載(【0064】?【0105】)によれば、鉛-テルル-リチウム-酸化物としての特定のガラスフリット組成物(ガラス1、2、4、5、9?16、18?20、22?24、28?34、38?44のガラス)は、23.85?62.25重量%のTeO_(2)を含んでいるものの、63.06重量%までのTeO_(2)は含んでいない。

(セ-2) ところで、上記(2-2)オ.の実施例には、TeO_(2)が、本件訂正発明1のTeO_(2)の含有量の範囲内である、62.25重量%含まれる、ガラス12を備える厚膜ペースト、及び、TeO_(2)が、本件訂正発明1のTeO_(2)の含有量の範囲内である、60.55重量%含まれる、ガラス19を備える厚膜ペーストについて、それぞれの厚膜ペーストを、反射防止コーティングを有する太陽電池用半導体基板に適用した例が、それぞれ、実施例10(【0083】、【0086】?【0087】、表12(【0094】))、実施例19(【0081】?【0082】、【0084】?【0085】、表8(【0090】))として記載されており、そして、実施例10については、焼成温度を920℃に設定して製造された太陽電池(以下、「実施例10の太陽電池」という。)は、効率の平均値が15.39であり、実施例19については、焼成温度を905℃に設定して製造された太陽電池(以下、「実施例19の太陽電池」という。)は、効率の平均値が14.25であったとされているのに対し、比較例のガラスを備える厚膜ペーストを反射防止コーティングを有する太陽電池用半導体基板に適用し、焼成温度を900℃、915℃、930℃にそれぞれ設定して製造された比較例の太陽電池1、2、3について効率(Eff%)を測定すると、比較例の太陽電池1?3の効率の平均値は、それぞれ、10.04、12.46、12.61であった(【0098】?【0105】)という事項が記載されている。
このような事項からすると、実施例10、実施例19のいずれの実施例の太陽電池も、比較例の太陽電池より低温で焼成して製造しても、比較例の太陽電池よりも効率がかなり良く、また、実施例10の太陽電池と実施例19の太陽電池とを比較すると、TeO_(2)の含有量が多い、ガラス12を備える厚膜ペーストを適用した、実施例10の太陽電池の方が効率が良いということが把握される。

(セ-3) そして、63.06重量%という、ガラス6中のTeO_(2)含有量と、62.25重量%という、ガラス12中のTeO_(2)含有量との差は、62.25重量%という、ガラス12中のTeO_(2)含有量と、60.55重量%という、ガラス19中のTeO_(2)含有量との差よりも小さいという事項と、上記(セ-2)の検討とを勘案すると、当該ガラス6を備える厚膜ペーストを、反射防止コーティングを有する太陽電池用半導体基板に適用して製造された太陽電池は、比較例の太陽電池よりも低温で焼成して製造されても、比較例の太陽電池よりも効率が良いことが推認できるといえる。

(セ-4) また、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物におけるガラスフリット組成物が、PbOを含む場合、上記4.(1-2)の(ケ-1)?(ケ-7)によれば、PbOは主成分として含まれるということは、本件特許の出願時の技術常識といえるし、Li_(2)Oを含む場合、上記1.(3g)?(3h)、上記2.(2ア)によれば、副成分として、本件特許の発明の詳細な説明の比較例(上記(2-2)オ.の表16(【0099】))のように、Li_(2)Oは少量含まれるということも、本件特許の出願時の技術常識といえる。

(セ-5) 上記(セ-4)からすると、上記(シ)に示した本件訂正発明1における、「23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含む」「鉛-テルル-リチウム-酸化物」は、主成分としてPbOを含み、副成分として、Li_(2)Oを少量含み、そして、23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含む、「鉛-テルル-リチウム-酸化物」を意味しているといえ、そして、このような「鉛-テルル-リチウム-酸化物」は、特定のガラスフリット組成物を包含しているものの、本件特許の出願時の技術常識に反するガラスフリット組成物は包含していないといえる。

(セ-6) 上記(セ-1)?(セ-5)の検討を踏まえると、上記(シ)に示した本件訂正発明1における、「鉛-テルル-リチウム-酸化物」は、上記シ.(ク)?(コ)で検討した、特定のガラスフリット組成物を備える実施例のペーストに基づいて、課題を解決できると認識できる発明の範囲に限定されているといえる。


(ソ) したがって、本件訂正発明1は、上記サ.(エ)に示した課題の対象に限定されているし、上記シ.(ク)?(コ)で検討した、課題を解決できると認識できる発明の範囲に限定されているものであり、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であるから、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしており、本件訂正発明1の特許は、上記[無効理由5]によって無効にすることはできない。


セ. 補足
(タ) 平成28年 8月 2日付け審判事件弁駁書での請求人の主張
請求人は、上記ス.(シ)に示した本件訂正発明1についての、上記[無効理由5]に関し、次の主張をしている(第2頁第8行?第4頁末行)。

(タ-1) 本件特許の発明が解決すべき課題を解決できている、特定のガラスフリット組成物(ガラス1、2、4、5、9?16、18?20、22?24、28?34、38?44)を備える実施例のペーストは、23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含むだけではなくて、PbOおよびLi_(2)Oの含有量も特定の範囲に限定されており、PbOおよびLi_(2)Oの含有量が前記範囲外であると課題が解決できているものでないところ、本件訂正発明1では、PbOおよびLi_(2)Oの含有量は全く限定されていない。

(タ-2) 本件訂正発明1のTeO_(2)の含有量の上限値は63.06重量%に限定されたが、このような本件訂正発明1は、発明の効果が実証されていない、ガラス6を備える厚膜ペーストや、効率(Eff)の平均値及び中央値が、比較例よりも劣っている、ガラス2を備える厚膜ペースト(実施例3)を含んでおり、本件訂正発明1は、本件特許の発明が解決すべき課題を解決できないものも含んでいる。


(チ) 当審の判断
しかしながら、請求人の上記(タ)の主張は、次の検討により、妥当な主張とはいえず、採用し得ない。

(チ-1) 上記(2-2)オ.の実施例には、本件訂正発明1に含まれる、ガラス2を備える実施例3の厚膜ペーストについては、その厚膜ペーストを反射防止コーティングを有する太陽電池用半導体基板に適用し、焼成温度を905℃に設定して製造された太陽電池(以下、「実施例3の太陽電池」という。)は、効率の平均値が12.88であった(表6【0088】)のに対し、上記ス.(セ-2)に示したように、比較例のガラスを備える厚膜ペーストを反射防止コーティングを有する太陽電池用半導体基板に適用し、焼成温度を900℃、920℃、940℃にそれぞれ設定して製造された、比較例の太陽電池1、2、3は、太陽電池1の効率の平均値は、それぞれ、10.04、12.46、12.61であったという事項が記載されているところ、このような事項からすると、実施例3の太陽電池の効率は、比較例の太陽電池1?3のいずれの太陽電池よりも効率が良いことは明らかである。
してみると、本件訂正発明1に含まれる、ガラス2を備える実施例3の厚膜ペーストを、反射防止コーティングを有する太陽電池用半導体基板に適用して製造された太陽電池は、本件特許の発明の詳細な説明の記載によれば、比較例の太陽電池よりも低温で焼成して製造されても、比較例の太陽電池よりも効率が良いことが明らかであるといえ、本件訂正発明1に含まれる、ガラス2を備える実施例の厚膜ペーストによると、本件特許の発明が解決すべき課題を解決できているといえる。

(チ-2) また、TeO_(2)が、本件訂正発明1のTeO_(2)の含有量の上限値である、63.06重量%含まれる、ガラス6を備える厚膜ペーストについても、上記ス.(セ-1)?(セ-3)で検討したとおり、本件特許の発明が解決すべき課題を解決できる範囲に含まれるといえる。

(チ-3) また、本件訂正発明1では、PbOおよびLi_(2)Oの含有量についての明示の規定はないが、上記ス.(セ-4)?(セ-5)の検討を踏まえると、本件訂正発明1における、「鉛-テルル-リチウム-酸化物」は、上記シ.(ク)?(コ)で検討した、特定のガラスフリット組成物を備える実施例のペーストに基づいて、課題を解決できると認識できる発明の範囲に限定されているといえ、本件訂正発明1について、本件特許の明細書全体の記載を見渡しても、あるいは、甲第2?23号証を参照しても、本件特許の発明が解決すべき課題を解決できない範囲を含んでいると認定し得る根拠は見出し得ない。

(チ-4) さらに、請求人は、上記(タ)の主張を行うにあたり、その主張を裏付け得る証拠としては、ガラス6を備える厚膜ペーストやガラス2を備える厚膜ペースト(実施例3)以外には、客観的かつ具体的な証拠を提出してはいないところ、それらの厚膜ペーストは、上記(チ-1)?(チ-2)に示したとおり、いずれも、本件特許の発明が解決すべき課題を解決できる範囲に含まれるといえる。


(3) まとめ
よって、本件訂正発明1は、[無効理由5]によっては、無効とすることはできない。


第6 むすび
以上のとおり、[無効理由1]?[無効理由3]、[無効理由5]によっては、本件訂正発明1の特許は無効にすべきとはいえないし、[無効理由2]?[無効理由3]によっては本件発明2の特許は無効にすべきとはいえないし、[無効理由2]?[無効理由4]によっては、本件発明3の特許は無効にすべきとはいえない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)厚膜ペースト組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属またはその誘導体85?99.75重量%と、
b)固形分に基づいて鉛-テルル-リチウム-酸化物0.25?15重量%と、
c)有機媒体と
を含み、
前記鉛-テルル-リチウム-酸化物が23.85?63.06重量%のTeO_(2)を含む、1つまたは複数の絶縁層を有する太陽電池デバイスの前面を印刷するための厚膜ペースト組成物。
【請求項2】
(a)半導体基板の少なくとも1つの表面上に堆積された1つまたは複数の絶縁膜を含む前記半導体基板を提供する工程と、
(b)厚膜ペースト組成物を前記絶縁膜の少なくとも一部の上に適用して層状構造物を形成する工程であって、前記厚膜ペースト組成物が、
i)前記組成物中の全固形分に基づいて伝導性金属またはその誘導体85?99.75重量%と、
ii)固形分に基づいて鉛-テルル-リチウム-酸化物0.25?15重量%と、
iii)有機媒体とを含む工程と、
(c)前記半導体基板、1つまたは複数の絶縁膜、および厚膜ペーストを焼成して前記厚膜ペーストの前記有機媒体が揮発させられ、1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触している電極を形成する工程とを含む方法。
【請求項3】
(a)半導体基板と、
(b)前記半導体基板上の1つまたは複数の絶縁層と、
(c)前記1つまたは複数の絶縁層と接触し且つ前記半導体基板と電気的接触し、伝導性金属と鉛-テルル-リチウム-酸化物とを含む電極と
を含む物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2016-11-25 
結審通知日 2016-11-29 
審決日 2016-12-13 
出願番号 特願2013-509212(P2013-509212)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (H01B)
P 1 113・ 113- YAA (H01B)
P 1 113・ 121- YAA (H01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 板谷 一弘
特許庁審判官 宮澤 尚之
小川 進
登録日 2014-02-21 
登録番号 特許第5480448号(P5480448)
発明の名称 鉛-テルル-リチウム-酸化物を含有する厚膜ペーストと半導体デバイスの製造においてのそれらの使用  
代理人 小林 浩  
代理人 古橋 伸茂  
代理人 特許業務法人谷・阿部特許事務所  
代理人 北原 潤一  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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