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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1335362
審判番号 不服2017-5311  
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-13 
確定日 2018-01-09 
事件の表示 特願2015-201397「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月14日出願公開、特開2016- 6801、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年4月11日に出願した特願2011-87706号の一部を平成27年10月9日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月15日付けで拒絶理由が通知され、同年11月24日に手続補正がされたが、同年12月6日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年4月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1、並びに引用文献2及び引用文献3に記載の周知技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平9-153380号公報
2.特開2003-317840号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2001-185318号公報(周知技術を示す文献)

なお、査定の対象外とした請求項2ないし5に係る発明に対して次の文献が提示された。
4.特許第2825144号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正のうち、請求項1において、発明を特定するために必要な事項である「ボトムサブカバー」について「先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第1突出部を有し、4つの前記第1突出部が前記ボトムカバーの角部に配置されたそれぞれの第1挿入孔に向かって突出する」との限定を付することは、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、請求項1における上記事項は願書に最初に添付した明細書の段落【0017】、段落【0021】、図面の図6に示されているから、いわゆる新規事項を追加するものではない。
審判請求時の補正のうち、請求項1において、発明を特定するために必要な事項である「トップサブカバー」について「先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第2突出部を有し、4つの前記第2突出部が前記トップカバーの角部に配置されたそれぞれの第2挿入孔に向かって突出する」との限定を付することは、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、請求項1における上記事項は願書に最初に添付した明細書の段落【0026】、段落【0031】、図面の図9に示されているから、いわゆる新規事項を追加するものではない。
審判請求時の補正のうち、補正前の請求項3の削除及び補正前の請求項3の削除にともない補正前の請求項5の引用する請求項を請求項4から請求項3に変更することは、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる特許法第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。また、補正前の請求項3の削除及び補正前の請求項5の引用する請求項を請求項4から請求項3に変更することは、いわゆる新規事項を追加するものではない。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし請求項4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成29年4月13日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりのものである。

「【請求項1】
一本以上の第1被覆導線を含む第1ケーブルが両端から延び且つ当該第1ケーブルの外周を包囲するように保持すると共に、上部および下部を有し2つの部材から成る第1保持部と、
一本以上の第2被覆導線が少なくとも一端から延び且つ当該第2被覆導線の外周を包囲するように保持すると共に、上部および下部を有し2つの部材から成る第2保持部と、
前記第1保持部の前記下部に設けられた一以上の第1開口部を介して前記一本以上の第1被覆導線の一以上の導体に接続し、且つ前記第2保持部の前記上部に設けられた一以上の第2開口部を介して前記一本以上の第2被覆導線の一以上の導体に接続するための所定の数の端子を有し、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する本体部と、を備え、
前記第1保持部は、
前記第1ケーブルの一方側に配置されるボトムカバーであって、当該ボトムカバーの一の面において互いに対向する位置に配置された2つの側壁部を有する該ボトムカバーと、
前記第1ケーブルの他方側に配置されると共に前記端子が挿入される前記第1開口部を有し、前記ボトムカバーの前記2つの側壁部によって形成される空洞に嵌合するように構成されたボトムサブカバーであって、先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第1突出部を有し、4つの前記第1突出部が前記ボトムカバーの角部に配置されたそれぞれの第1挿入孔に向かって突出する該ボトムサブカバーと、を有し、
前記ボトムカバー及び前記ボトムサブカバーによって、前記第1ケーブルを前記一方側及び前記他方側から挟持することが可能にされており、
前記第2保持部は、
前記第2被覆導線の一方側に配置されるトップカバーであって、当該トップカバーの一の面において互いに対向する位置に配置された2つの側壁部を有する該トップカバーと、
前記第2被覆導線の他方側に配置されると共に前記端子が挿入される前記第2開口部を有し、前記トップカバーの前記2つの側壁部によって形成される空洞に嵌合するように構成されたトップサブカバーであって、先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第2突出部を有し、4つの前記第2突出部が前記トップカバーの角部に配置されたそれぞれの第2挿入孔に向かって突出する該トップサブカバーと、を有し、
前記トップカバー及び前記トップサブカバーによって、前記第2被覆導線を前記一方側及び前記他方側から挟持することが可能にされている、コネクタ。」

本願発明2ないし本願発明4は、概略、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-153380号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面(特に、図1、図4ないし図6を参照)とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1)「【0026】図1は、本発明の一つの実施の形態に係るケーブル接続用コネクタの分解斜視図であり、このケーブル接続用コネクタは、フラットケーブル同士を相互に電気的に接続するものである。
【0027】この実施の形態のケーブル接続用コネクタ1は、基本的には、相互に接続すべきケーブル2,3をそれぞれ挟持する第1,第2の挟持手段としての第1,第2のカバー4,5と、各カバー4,5に挟持されたケーブル2,3を導通状態で電気的に接続するための接続手段としてのコンタクトブロック6とを備えており、この実施の形態では、第1のカバー4に挟持される支線ケーブル2と、第2のカバー5に挟持される幹線ケーブル3とを相互に接続して幹線ケーブル3の分岐を行うものである。
【0028】例えば合成樹脂製のコンタクトブロック6は、図2の側面図および図3の断面図にも示されるように、第1,第2のカバー4,5を、後述のようにして上下両面側にそれぞれ保持する基板部7を有しており、この基板部7を貫通して上下に突出する導電性の接続部材としてのコンタクト8が、複数、この実施の形態では、4つ圧入によって設けられている。なお、本発明の他の実施の形態として、コンタクト8は、インサート成形によって設けてもよい。
【0029】このコンタクト8は、例えば、銅合金からなり、手前側および奥側にそれぞれ2つずつ並設されており、各コンタクト8の先端部には、間隔をあけて2つの対向する刃部8aが形成されており、後述のように、第1,第2のカバー4,5を、コンタクトブロック6に圧接したときに、この刃部8aによってケーブル2,3の絶縁被覆が剥ぎ取られてケーブル2,3の導体が該コンタクト8に圧接されるように構成されている。
【0030】このコンタクトブロック6の基板部7の上側の面におけるケーブルの長手方向(図2の左右方向)の一方側の端部には、支線ケーブル2の端部の位置決め用の規制壁7aが突設されており、また、この基板部7には、コンタクトブロック6を治具に保持してコンタクト8を圧入する際の方向性を間違えないように、貫通孔7bが形成されている。さらに、基板部7のケーブルの長手方向に直交する方向(図3の左右方向)の両側の端部には、第1,第2のカバー4,5に形成されている後述の係合突起11d,12d,13d,14dに係合して各カバー4,5を所要の位置に保持する門形の係合ロック7cが上下に突設されている。
【0031】また、コンタクトブロック6の基板部7の上下両面には、装着すべきカバー4,5を特定するための番号「1」,「2」がそれぞれ付されている。
【0032】各ケーブル2,3をそれぞれ挟持する合成樹脂製の第1,第2のカバー4,5は、図4の開放状態の平面図、図5の背面図および図6の断面図にも示されるように、連結部としての2箇所のヒンジ部9で開閉自在に連結された一対の第1,第2の挟持部材11,12;13,14をそれぞれ有しており、各挟持部材11,12;13,14の対向面には、ケーブル2,3の外形に応じた断面円弧状の位置決め用溝11a,12a;13a,14aが、複数、この実施の形態では4つそれぞれケーブルの長手方向に沿って並設されている。なお、図4?図6では、第1のカバー4のみを示しているが、第2のカバー5の構成も基本的に同様である。
【0033】各カバー4,5のコンタクトブロック6に近接する側の第2の挟持部材12,14には、各カバー4,5をコンタクトブロック6に保持したときに、基板部7に突設された4つのコンタクト8がそれぞれ挿通する矩形の挿通孔12b,14bが形成されるとともに、第1の挟持部材11,13には、第2の挟持部材12,14と対向する面に、コンタクト8の先端の刃部8aを収納するための凹部11b,13bが形成されている。
【0034】また、第2の挟持部材12,14の開放端の2箇所には、係合片としてのフック12c,14cが突設される一方、第1の挟持部材11,13の開放端の対応する2箇所には、前記フック12c,14cが係合する係合孔11c,13cが形成されており、前記フック12c,14cを前記係合孔11c,13cに係合させることにより、第1,第2の挟持部材11,12;13,14を閉止状態に保持できるように構成されている。
【0035】なお、本発明は、フック12c,14cと係合孔11c,13cとに限定されるものではなく、両挟持部材11,12;13,14を閉止状態を保持できればよく、例えば、係合突起と係合凹部といったような他の構成であってもよい。」

(2)「【0061】上述の各実施の形態では、挟持手段としての各カバーは、一対の挟持部材およびヒンジ部が一体成形されていたけれども、本発明の他の実施の形態として、個別の挟持部材を連結部材で開閉自在に連結するように構成してもよい。」

(3)図1から、幹線ケーブル3が両端から延び且つ当該幹線ケーブル3の外周を包囲するように保持する第2のカバー5と、支線ケーブル2が少なくとも一端から延び且つ支線ケーブル2の外周を包囲するように保持する第1のカバー4が看取される。

上記記載事項、図面の図示内容、及び認定事項を総合して、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
なお、本願発明1においては、図1ないし図3におけるZ軸の向きから、紙面下側が上方向、紙面上側が下方向と定義されていると解されるため、引用発明においても、本願発明1に合わせて、引用文献1の図1における紙面下側を上方向、紙面上側を下方向として認定した。

「4本の絶縁被覆された導体を含む幹線ケーブル3が両端から延び且つ当該幹線ケーブル3の外周を包囲するように保持すると共に、上部および下部を有し第1の狭持部材13と第2の狭持部材14から成る第2のカバー5と、
4本の絶縁被覆された導体を含む支線ケーブル2が少なくとも一端から延び且つ当該支線ケーブル2の外周を包囲するように保持すると共に、上部および下部を有し、第1の狭持部材11と第2の狭持部材12から成る第1のカバー4と、
前記第2のカバー5の前記下部に設けられた4つの挿通孔14bを介して前記幹線ケーブル3の4本の導体に接続し、且つ第1のカバー4の前記上部に設けられた4つの挿通孔12bを介して前記支線ケーブル2の4本の導体に接続するための4つのコンタクト8を有し、前記第2のカバー5と前記第1のカバー4とを接続するコンタクトブロック6と、を備え、
前記第2のカバー5は、
前記幹線ケーブル3の一方側に配置される第1の狭持部材13と、
前記幹線ケーブル3の他方側に配置されると共に前記コンタクト8が挿入される前記挿通孔14bを有し、前記第1の狭持部材13と連結部としての2箇所のヒンジ部9で開放自在に連結される第2の狭持部材14であって、開放端の2箇所には係合片としてのフック14cが突設され、2箇所の前記フック14cが前記第1の狭持部材13の開放端に形成された対応する係合孔13cに係合される該第2の狭持部材14と、を有し、
前記第1の狭持部材13及び前記第2の狭持部材14によって、前記幹線ケーブル3を前記一方側及び前記他方側から狭持することが可能にされており、
前記第1のカバー4は、
前記支線ケーブル2の一方側に配置される第1の狭持部材11と、
前記支線ケーブル2の他方側に配置されると共にコンタクト8が挿入される前記挿通孔12bを有し、前記第1の狭持部材11と連結部としての2箇所のヒンジ部9で開放自在に連結される第2の狭持部材12であって、開放端の2箇所には係合片としてのフック12cが突設され、2箇所の前記フック12cが前記第1の狭持部材11の開放端に形成された対応する係合孔11cに係合される該第2の狭持部材12と、を有し、
前記第1の狭持部材11及び前記第2の狭持部材12によって、前記支線ケーブル2を前記一方側及び前記他方側から狭持することが可能にされている、ケーブル接続用コネクタ1。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「絶縁被覆された導体」は絶縁被覆導線を形成していることは明らかなので、後者の「4本の絶縁被覆された導体を含む幹線ケーブル3」は、前者の「一本以上の第1被覆導線を含む第1ケーブル」に相当し、同様に、「4本の絶縁被覆された導体を含む支線ケーブル2」は、「一本以上の第2被覆導線」に相当する。

後者の「第1の狭持部材13と第2の狭持部材14から成る第2のカバー5」は、その機能からみて前者の「2つの部材から成る第1保持部」に相当し、同様に、
後者の「第1の狭持部材11と第2の狭持部材12から成る第1のカバー4」は、前者の「2つの部材から成る第2保持部」に相当する。
後者の「第2のカバー5の前記下部に設けられた4つの挿通孔14b」は、前者の「第1保持部の前記下部に設けられた一以上の第1開口部」に相当し、同様に、「第1のカバー4の前記上部に設けられた4つの挿通孔12b」は「第2保持部の前記上部に設けられた一以上の第2開口部」に相当する。
後者の「幹線ケーブル3の4本の導体に接続」することは、前者の「一本以上の第1被覆導線の一以上の導体に接続」することに相当し、同様に、「支線ケーブル2の4本の導体に接続」することは「一本以上の第2被覆導線の一以上の導体に接続」することに相当し、以上を踏まえると後者の幹線ケーブル3及び支線ケーブル2に接続する「4つのコンタクト8」は、前者の第1被覆導線及び第2被覆導線に接続する「所定の数の端子」に相当する。
後者の「前記第2のカバー5と前記第1のカバー4とを接続するコンタクトブロック6」は、前者の「前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する本体部」に、
後者の「ケーブル接続用コネクタ1」は、前者の「コネクタ」に相当する。

後者の「前記幹線ケーブル3の一方側に配置される第1の狭持部材13」は、前者の「前記第1ケーブルの一方側に配置されるボトムカバーであって、当該ボトムカバーの一の面において互いに対向する位置に配置された2つの側壁部を有する該ボトムカバー」と、「前記第1ケーブルの一方側に配置されるボトムカバー」である限りにおいて共通する。
後者の「前記幹線ケーブル3の他方側に配置されると共に前記コンタクト8が挿入される前記挿通孔14bを有し、前記第1の狭持部材13と連結部としての2箇所のヒンジ部9で開放自在に連結される第2の狭持部材14であって、開放端の2箇所には係合片としてのフック14cが突設され、2箇所の前記フック14cが前記第1の狭持部材13の開放端に形成された対応する係合孔13cに係合される該第2の狭持部材14」は、前者の「前記第1ケーブルの他方側に配置されると共に前記端子が挿入される前記第1開口部を有し、前記ボトムカバーの前記2つの側壁部によって形成される空洞に嵌合するように構成されたボトムサブカバーであって、先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第1突出部を有し、4つの前記第1突出部が前記ボトムカバーの角部に配置されたそれぞれの第1挿入孔に向かって突出する該ボトムサブカバー」と、「前記第1ケーブルの他方側に配置されると共に前記端子が挿入される前記第1開口部を有するボトムサブカバー」である限りにおいて共通する。
後者の「前記第1の狭持部材13及び前記第2の狭持部材14によって、前記幹線ケーブル3を前記一方側及び前記他方側から狭持することが可能にされて」いることは、前者の「前記ボトムカバー及び前記ボトムサブカバーによって、前記第1ケーブルを前記一方側及び前記他方側から挟持することが可能にされて」いることに相当する。

後者の「前記支線ケーブル2の一方側に配置される第1の狭持部材11」は、前者の「前記第2被覆導線の一方側に配置されるトップカバーであって、当該トップカバーの一の面において互いに対向する位置に配置された2つの側壁部を有する該トップカバー」と、「前記第2被覆導線の一方側に配置されるトップカバー」である限りにおいて共通する。
後者の「前記支線ケーブル2の他方側に配置されると共にコンタクト8が挿入される前記挿通孔12bを有し、前記第1の狭持部材11と連結部としての2箇所のヒンジ部9で開放自在に連結される第2の狭持部材12であって、開放端の2箇所には係合片としてのフック12cが突設され、2箇所の前記フック12cが前記第1の狭持部材11の開放端に形成された対応する係合孔11cに係合される該第2の狭持部材12」は、前者の「前記第2被覆導線の他方側に配置されると共に前記端子が挿入される前記第2開口部を有し、前記トップカバーの前記2つの側壁部によって形成される空洞に嵌合するように構成されたトップサブカバーであって、先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第2突出部を有し、4つの前記第2突出部が前記トップカバーの角部に配置されたそれぞれの第2挿入孔に向かって突出する該トップサブカバー」と、「前記第2被覆導線の他方側に配置されると共に前記端子が挿入される前記第2開口部を有するトップサブカバー」である限りにおいて共通する。
後者の「前記第1の狭持部材11及び前記第2の狭持部材12によって、前記支線ケーブル2を前記一方側及び前記他方側から狭持することが可能にされている」ことは、前者の「前記トップカバー及び前記トップサブカバーによって、前記第2被覆導線を前記一方側及び前記他方側から挟持することが可能にされている」ことに相当する。

したがって、両者は、
「一本以上の第1被覆導線を含む第1ケーブルが両端から延び且つ当該第1ケーブルの外周を包囲するように保持すると共に、上部および下部を有し2つの部材から成る第1保持部と、
一本以上の第2被覆導線が少なくとも一端から延び且つ当該第2被覆導線の外周を包囲するように保持すると共に、上部および下部を有し2つの部材から成る第2保持部と、
前記第1保持部の前記下部に設けられた一以上の第1開口部を介して前記一本以上の第1被覆導線の一以上の導体に接続し、且つ前記第2保持部の前記上部に設けられた一以上の第2開口部を介して前記一本以上の第2被覆導線の一以上の導体に接続するための所定の数の端子を有し、前記第1保持部と前記第2保持部とを連結する本体部と、を備え、
前記第1保持部は、
前記第1ケーブルの一方側に配置されるボトムカバーと、
前記第1ケーブルの他方側に配置されると共に前記端子が挿入される前記第1開口部を有するボトムサブカバーと、を有し、
前記ボトムカバー及び前記ボトムサブカバーによって、前記第1ケーブルを前記一方側及び前記他方側から挟持することが可能にされており、
前記第2保持部は、
前記第2被覆導線の一方側に配置されるトップカバーと、
前記第2被覆導線の他方側に配置されると共に前記端子が挿入される前記第2開口部を有するトップサブカバーと、を有し、
前記トップカバー及び前記トップサブカバーによって、前記第2被覆導線を前記一方側及び前記他方側から挟持することが可能にされている、コネクタ。」
である点で一致し、次の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明1は、第1保持部は、第1ケーブルの一方側に配置される「一の面において互いに対向する位置に配置された2つの側壁部を有する」ボトムカバーと、第1ケーブルの他方側に配置される「前記ボトムカバーの前記2つの側壁部によって形成される空洞に嵌合するように構成された」ボトムサブカバーであって、「先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第1突出部を有し、4つの前記第1突出部が前記ボトムカバーの角部に配置されたそれぞれの第1挿入孔に向かって突出する」ボトムサブカバーと、を有するものであるのに対し、
引用発明は、第2のカバー5は、幹線ケーブル3の一方側に配置される第1の狭持部材13と、幹線ケーブル3の他方側に配置され、前記第1の狭持部材13と連結部としての2箇所のヒンジ部9で開放自在に連結される第2の狭持部材14であって、開放端の2箇所には係合片としてのフック14cが突設され、2箇所の前記フック14cが前記第1の狭持部材13の開放端に形成された対応する係合孔13cに係合される該第2の狭持部材14と、を有するものであり、前記の「2つの側壁部」及び「先端がテーパ状を呈する円柱状の4つの第1突出部」に関する構成を備えていない点。

〔相違点2〕
本願発明1は、第2保持部は、第2被覆導線の一方側に配置される「一の面において互いに対向する位置に配置された2つの側壁部を有する」トップカバーと、第2被覆導線の他方側に配置される「前記トップカバーの前記2つの側壁部によって形成される空洞に嵌合するように構成された」トップサブカバーであって、「先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第2突出部を有し、4つの前記第2突出部が前記トップカバーの角部に配置されたそれぞれの第2挿入孔に向かって突出する」トップサブカバーと、を有するものであるのに対し、
引用発明は、第1のカバー4は、支線ケーブル2の一方側に配置される第1の狭持部材11と、支線ケーブル2の他方側に配置され、前記第1の狭持部材11と連結部としての2箇所のヒンジ部9で開放自在に連結される第2の狭持部材12であって、開放端の2箇所には係合片としてのフック12cが突設され、2箇所の前記フック12cが前記第1の狭持部材11の開放端に形成された対応する係合孔11cに係合される該第2の狭持部材12と、を有するものであり、前記の「2つの側壁部」及び「先端がテーパ状を呈する円柱状の4つの第2突出部」に関する構成を備えていない点。


(2)相違点についての判断
ア 相違点1について
相違点1について検討する。

本願発明1は、ボトムカバーに設けられた2つの側壁部によって形成された空洞にボトムサブカバーを嵌合することにより両者の大雑把な位置決めを行いつつ、ボトムサブカバーに設けられた先端がテーパ状を呈する円柱状の4つの第1突出部をボトムカバーの角部に配置されたそれぞれの第1挿入孔に嵌合することで、ボトムカバーとボトムサブカバーを一体化して固定するものといえるから、相違点1に係る「2つの側壁部」及び「先端がテーパ状を呈する円柱状の4つの第1突出部」を設けることは一体不可分なものと解される。

原査定の拒絶の理由に引用された、特開2003-317840号公報(以下「引用文献2」という。)の段落【0014】、図1ないし図3や、特開2001-185318号公報(以下「引用文献2」という。)の段落【0011】、段落【0012】、段落【0015】、図1、図3、図4に例示されるように、電線の一方側に配置される上ケースであって、当該上ケースの一の面において互いに対向する位置に配置された側板を有する該上ケースと、前記電線の他方側に配置されると共に、前記上ケースの前記側板によって形成される空洞に嵌合するように構成された下ケースを有する電線接続器は周知技術(以下「周知技術1」という。)である。

また、原査定において提示された特許第2825144号(以下「引用文献4」という。)の段落【0010】、段落【0015】、段落【0016】、図1、図12に例示されるように、絶縁シートに先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの固定ピンを設け、4つの前記固定ピンを板状体の四隅に配置されたそれぞれの位置決め孔に挿入して絶縁シートと板状体とを固着させること、すなわち固定ピンと位置決め孔による固着は周知技術(以下「周知技術2」という。)である。

しかしながら、周知技術1または周知技術2は、相違点1に係る本願発明1の構成そのものを示唆するものではないので、引用発明に周知技術1または周知技術2を適用しても相違点1に係る本願発明1の構成とすることはできない。また、引用文献1の段落【0061】の「上述の各実施の形態では、挟持手段としての各カバーは、一対の挟持部材およびヒンジ部が一体成形されていたけれども、本発明の他の実施の形態として、個別の挟持部材を連結部材で開閉自在に連結するように構成してもよい。」(「第5(2)」を参照)との示唆に基き引用発明に周知技術1を適用したものに、第1の狭持部材13と第2の狭持部材14の連結手段として、さらに周知技術2を適用することが当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。

そうしてみると、引用発明において、周知技術1及び周知技術2から、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

イ 相違点2について
相違点2について検討する。
相違点2は、相違点1のボトムカバーとボトムサブカバーを、それぞれトップカバーとトップサブカバーに置き換えたことを除けば、実質的には相違点1と同一の相違点であるから、相違点1についての検討のとおり、 引用発明において、周知技術1及び周知技術2から、相違点2に係る本願発明1の上記事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本願発明1は、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様に、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
審判請求時の補正により、本願発明1ないし4は、「先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第1突出部を有し、4つの前記第1突出部が前記ボトムカバーの角部に配置されたそれぞれの第1挿入孔に向かって突出する該ボトムサブカバー」及び「先端がテーパ形状を呈する円柱状の4つの第2突出部を有し、4つの前記第2突出部が前記トップカバーの角部に配置されたそれぞれの第2挿入孔に向かって突出する該トップサブカバー」という事項を備えるものとなっており、上記第6で述べたとおり、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、いずれも、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-12-18 
出願番号 特願2015-201397(P2015-201397)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前田 仁  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 内田 博之
滝谷 亮一
発明の名称 コネクタ  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 池田 成人  
代理人 清水 義憲  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 阿部 寛  

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